【解決手段】歯周ポケット洗浄装置1は、注射筒21と、該注射筒の液体出口に着脱自在に取り付けられ可撓性を有するフッ素樹脂からなる留置針の外筒11と、を備える。外筒の先端を折り曲げられた折曲部13aとし、該折曲部の先端を、略扁平な形状に押しつぶされた押しつぶし部位としてもよい。また、押しつぶし部位は、最先端のみが略閉じた略くさび状の形状であるものとしてもよい。
請求項1に記載の歯周ポケット洗浄装置において、前記外筒の先端は折り曲げられた折曲部とされており、該折曲部の先端は、略扁平な形状に押しつぶされた押しつぶし部位とされていることを特徴とする歯周ポケット洗浄装置。
請求項1〜3に記載の歯周ポケット洗浄装置において、前記注射筒と、前記留置針の外筒とは、それぞれ複数種類のものが組み合わせ可能とされていることを特徴とする歯周ポケット洗浄装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態に係る歯周ポケット洗浄装置1は、
図1に示すように、注射筒21と、該注射筒21の液体出口24に着脱自在に取り付けられる留置針10の外筒11と、を備えたものである。
【0013】
注射筒21は、円筒状の筒部(シリンジ)22と、該筒部22内の中空部に移動可能に挿入されるプランジャ部25と、を備えている。
筒部22は、その先端に、中空部内の液体の出口(液体出口)24が設けられており、その基端部には鍔状部23が設けられている。
液体出口24は、円筒状とされており、その径寸法は、筒部22の径寸法よりも小さい。
【0014】
筒部22としては、ポリプロピレン(PP)などの樹脂や、ガラス、金属などから構成されたものとしてもよい。また、筒部22の長さは50mm〜120mm程度、容量は0.3mL〜2mL程度、胴径寸法は5mm〜20mm程度、液体出口24の外径寸法は2mm〜10mm程度としてもよい。
プランジャ部25は、筒部22の中空部に挿入される軸部27と、軸部27の基端部に設けられた指当て部28とを有している。また、軸部27の先端には、エラストマーなどからなるシール部26が設けられている。
【0015】
筒部22の中空部における、該中空部に挿入したプランジャ部25のシール部26の先側の空間内に、歯周ポケット洗浄用の液体が溜められ、プランジャ部25を中空部内に押し込むことで、シール部26が筒部22の先端方向に移動し、液体が液体出口24から噴出する構成となっている。このシール部26の存在により、中空部内の液体が、軸部27の基端側に漏れ出ない構成となっている。
なお、注射筒21としては、注射筒21単独で製造されたものを用いてもよく、または、注射筒21と注射針(不図示)とにより構成された注射器20から取り外した注射筒21を用いてもよい。また、既製品の注射筒21を用いてもよい。
【0016】
当該歯周ポケット洗浄装置1を構成する留置針10の外筒11は、
図2に示すように、留置針10の構成部材としての外筒(カテーテル部)11である。
【0017】
留置針10は、内針部14と、外筒(カテーテル部)11とからなる。内針部14は、棒状の基部15と、その先端に設けられた内針ハブ16と、その内針ハブ16の先端に設けられた内針17と、によって構成されている。外筒11は、チューブ状のカテーテル13と、そのカテーテル13の基端部に一体的に設けられたカテーテルハブ12と、によって構成されている。
カテーテルハブ12は、その先側(カテーテル13側)から基端側に向かうに従い次第に径寸法が大きくなる略円錐状とされており、内部に中空部を有している。
【0018】
留置針10は、内針17がカテーテル13のチューブ内に挿通され、内針ハブ16がカテーテルハブ12の中空部内に収納された状態で、外筒11が内針部14に装着されて構成されている。
なお、留置針10とは、輸液などの動静脈留置用や、人工腎臓の動静脈瘻(内シャント)留置用などに使用されるものである。
【0019】
外筒11のカテーテル13は、その長手方向の略全体に亘って略同径寸法とされており、その径寸法は、カテーテルハブ12よりも小さい。
また、カテーテル13は、可撓性を有する軟質な材料で構成されており、例えば、フッ素樹脂(ETFE)などからなるものとしてもよい。カテーテル13としては、操作性の観点から、ある程度の硬度と弾性力を兼ね備えたものが望ましい。
【0020】
外筒11の長さは、30mm〜90mm程度、カテーテル13の外径寸法は、0.5mm〜3.0mm程度、内径寸法は、0.5mm〜2.5mm程度としてもよい。また、カテーテル13の先端は、先細り状としてもよく、また、先端を研磨して、滑らかな仕上げとしてもよい。
【0021】
外筒11としては、例えば、サーフロー留置針(登録商標)などの既製品の外筒(カテーテル部)を用いてもよい。このサーフロー留置針(登録商標)の外筒11を用いる場合には、種々のカテーテルゲージ(14G、16G、18G、20G、22G、24Gなど)の外筒11を用いてもよく、望ましくは、カテーテルゲージが16Gの外筒11を用いるのがよい。その場合、カテーテル13の外径=1.7mm、内径=1.30mm、外筒11の長さ=51mmまたは64mmとなる。
【0022】
なお、外筒11としては、既製品に限られず、チューブ状のカテーテル13と、略円錐状で中空部を有するカテーテルハブ12とを備えた外筒11を、各部位が所定の寸法となるように成形などにより製造したものを用いてもよい。
【0023】
本実施形態では、歯周ポケット洗浄装置1は、注射筒21と留置針10の外筒11とが、それぞれ複数種類のものが組み合わせ可能とされている。
例えば、長さや中空部の容積などを異ならせた複数種類の注射筒21,21と、長さや外径寸法、硬度などを異ならせた複数種類の外筒11,11と、を予め準備しておき、適宜これらの組み合わせを異ならせた歯周ポケットの洗浄装置1を作成するようにしてもよい。
【0024】
次に、歯周ポケット洗浄装置1の製造方法について説明する。
一実施形態に係る歯周ポケット洗浄装置1の製造方法は、
図2に示すように、留置針10の外筒11を注射筒21に連結させる工程(第1工程)を備えたものである。
【0025】
この第1工程では、留置針10から外筒11を取り外し、その取り外した外筒11を、注射筒21の液体出口24に連結させる。具体的には、この第1工程は、留置針10の構成部材としての外筒11を、内針17の軸方向に沿って引き抜いて取り外す工程Aと、この取り外した外筒11を、注射筒21の液体出口24に連結させる工程Bと、を含む。
【0026】
工程Bでは、取り外した外筒11の一端のカテーテルハブ12の中空部内に、注射筒21の液体出口24の略全体を嵌合させる。ここで、カテーテルハブ12の中空部の径寸法、及び注射筒21の液体出口24の外径寸法は、カテーテルハブ12と液体出口24とが嵌合し得る寸法となっている。
【0027】
本実施形態では、歯周ポケット洗浄装置1の製造方法は、
図2に示すように、外筒11(カテーテル13)の先端を折り曲げてつぶす工程(第2工程)を更に備えている。
カテーテル13における折り曲げ対象の部位(折曲部)13aとしては、例えば、カテーテル13の最先端から2mm〜60mm程度の長さの部位としてもよい。
当該折曲部13aの折り曲げ角度αとしては、例えば、カテーテル13の軸方向から2度〜90度程度ずれた角度としてもよい。
図1〜3では、先端を軸方向から30度程度ずれるように折り曲げたものを例示している。
【0028】
この第2工程では、
図3(a)及び(b)に示すように、折曲部13aは、さらにその径方向(カテーテル13チューブの径方向)に沿って押しつぶされる。その押しつぶし部位(つぶし部)13bは、略扁平な形状となり、当該部位の中空部体積は、カテーテル13における当該つぶし部13b以外の部位のそれよりも小さい。
このように、つぶし部13bを設けることによって、歯と歯茎の間の接合してない密着状態とされた部位である狭い歯周ポケット内に、カテーテル13(当該つぶし部13bの先端)を挿入し易くなる。
【0029】
図3(a)では、折曲部13aの軸方向に見て、つぶし部13bの横断面における長径方向が、カテーテル13の基端側部位(折曲部13aを除いた部位)の軸方向と略直交するように押しつぶしたつぶし部13b(
図3(a))示している。また、
図3(b)では、折曲部13aの軸方向に見て、つぶし部13bの横断面における短径方向が、カテーテル13の基端側部位の軸方向と略直交するように押しつぶしたつぶし部13b(
図3(a))示している。
【0030】
図例(
図3(a)及び(b))のような、押しつぶし方向が互いに略直交するような2種類のつぶし部13bを設けたカテーテル13を製造するようにしてもよい。これにより、これらのいずれかを用いることによって、種々の方向に開口している略全ての歯周ポケット内に、つぶし部13bの先端を滑り込ませることができる。
【0031】
また、つぶし部13bは、折曲部13aの先端側の部位のみ(例えば、当該部位13aの最先端から、1mm〜10mm程度の長さの部位)としてもよい。図例では、つぶし部13bを、折曲部13aの略1/10程度の長さの部位とした例を示している(
図3(a)、(b))。このように、折曲部13aの先端側の部位のみをつぶし部13bとした場合、当該部位13bは、略くさび状となり、その最先端から基部側に向かうに従い次第に厚さ寸法が増大し、最先端のみが略閉じた形状となっている。くさび状部位の先端を構成する角度は、2度〜80度程度としてもよく、望ましくは、15度前後である。
このように、当該部位13bにおける断面積の小さい部位を少なくすることにより(図例では、最先端のみが略閉じた形状)、プランジャ部25を押し込む際の抵抗を極力小さくすることができる。
【0032】
なお、つぶし部13bを、折曲部13aの先端側の部位のみとする態様に限定されず、折曲部13aの先端から長手方向途中位置に亘る部位としたり、折曲部13aの略全体に亘る部位としたりしてもよい。
また、つぶし部13bの形状は、図例に限定されず、種々のものとしてもよい。また、つぶし部13bは、指でつぶす態様に限られず、例えば、ペンチなどの器具を用いてそのようにしてもよい。
また、このような外筒11の先端を折り曲げてつぶす工程(第2工程)を備えないものとしてもよく、また、先端を折り曲げるのみとしたり、先端を押しつぶすのみとしてもよい。
また、第2工程を備えない場合は、予め成形などによって、外筒11の先端を折り曲がりつぶされた形状としてもよい。
【0033】
一実施形態に係る歯周ポケット洗浄方法は、留置針10の外筒11を注射筒21に連結させて構成した歯周ポケット洗浄装置1(
図1参照)を用いて歯周ポケットを洗浄するものである。
【0034】
本実施形態では、エタノール水溶液(16%(v/v)(体積%濃度であり、混合液体の全体積中でエタノールの体積が占める割合を示す))とカテキン4−5mg/mlを含有する液体のうち少なくとも一種類を充填した歯周ポケット洗浄装置1を用いて、歯周ポケットを洗浄するようにしている。
【0035】
エタノール水溶液の濃度としては、16%(v/v)〜24%(v/v)としてもよいが、好ましくは、16%(v/v)である。なお、エタノール水溶液は、種々の文献にも報告がある通り、濃度の高いものを用いるほど口腔癌のリスクが増す。従って、歯周ポケットの洗浄効果を奏する最低濃度が、歯周ポケット洗浄に用いる濃度としての最適値となる。ここで、エタノール水溶液の最適濃度を16%(v/v)としたが、これは、複数回の歯周ポケット洗浄の実験結果に基づく。
また、エタノール水溶液の濃度としては、16%(v/v)〜24%(v/v)としてもよいと述べたが、これは、16%(v/v)未満にすると、洗浄効果が薄れて歯茎が腫れるリスクが高まるため、下限値を16%(v/v)とした。また、むやみな高濃度は回避すべきであることと、次の論文Aのデータに基づき、24%(v/v)を上限値とした。当該論文Aは、「Mouthwash Use and Oral Conditions in the Risk of Oral and Pharyngeal Cancer」(CANCER RESEARCH 51,3044−3047,June 1,1991)であり、ここのTable2には、25%(v/v)未満の濃度のアルコールを含有したマウスウォッシュでは、口腔癌のリスクは上がっていないというデータが開示されている。
【0036】
カテキンを含有した液体としては、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピカテキン、ガロカテキンなどの茶カテキンを含有した緑茶が望ましい。また、液体のカテキン濃度としては、4−5mg/mlに限られず、2−10mg/ml程度としてもよい。
【0037】
なお、緑茶以外としては、紅茶やウーロン茶などを用いてもよい。また、液体としては、エタノール水溶液や、カテキンを含有する液体に限られず、例えば、20ppm〜30ppm程度の次亜塩素酸水溶液や、2.5%〜3.5%程度の過酸化水素水、炭酸水素ナトリウム水溶液としてもよい。
さらには、バクテリオシンやナイシンなどの、細菌類が産生する抗生物質を溶解した水溶液や、クラリスロマイシンなどの抗生物質を溶解した水溶液、乳酸菌けんだく液、逆性石鹸の水溶液、プロポリスを希釈した水溶液、既製品のうがい薬などとしてもよい。
【0038】
上記構成とされた本実施形態に係る歯周ポケット洗浄装置1及び歯周ポケット洗浄方法によれば、歯周ポケットを洗浄する際の操作性及び安全性を向上させることができる。
つまり、当該歯周ポケット洗浄装置1は、注射筒21と、該注射筒21の液体出口24に着脱自在に取り付けられる留置針10の外筒11とを備えたものであり、外筒11は、可撓性を有する軟質な材料で構成されている。従って、口腔内に挿入した外筒11を操作して、外筒11の先端を歯周ポケット内、又はその近傍などの適所に位置させる際の操作性に優れる。また、外筒11の先端は、さほど鋭利ではなく、十分な弾性と可塑性を備えているため、外筒11の先端が歯肉などに当接した場合でも、歯肉などが傷つき難く、安全性に優れる。
また、外筒11のカテーテル13はその長手方向の略全体に亘って略同径寸法となっているので、例えば、先端側から基端側に向かうに従い次第に径寸法が増大する形状のものと比べると、歯肉などに先端が当接した際の歯肉などに対する圧力がより小さい。さらには、プランジャ部25を筒部22内に押し込んで、注射筒21内の液体を外筒11の先端から噴射させる構成であるので、ノズル先端を歯肉縁付近に当てて高い水圧により液体を歯肉ポケットに注ぎ込む従来の製品よりも、噴射させる液体の圧力を比較的に低く抑えることができる。従って、歯肉などを傷つけ難く安全性に優れる。さらに、液体の圧力を低く抑えることができるだけでなく、必要に応じて低圧域内で液体の圧力を即時的に直感的にコントロールすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、歯周ポケット洗浄装置1は、注射筒21と留置針10の外筒11とが、それぞれ複数種類のものが組み合わせ可能とされている。従って、注射筒21と外筒11の組み合わせのバリエーションを増やすことができるので、口の大きさや、操作時の状況などに応じて、最適な注射筒21と外筒11との組み合わせを選択することができる。
また、歯周ポケット洗浄装置1は、複雑な構造物ではなく、簡易な構造のディスポーザブル素材となっている。従って、注射筒21の各部位や外筒11などが消耗した際に、消耗部位の交換が容易であり安価に行なえる。
【0040】
また、歯周ポケット洗浄方法は、上記歯周ポケット洗浄装置1を用いたものであるので、上記効果を奏する。
また、本実施形態では、歯周ポケット洗浄方法は、エタノール水溶液(16%(v/v))とカテキン4−5mg/mlを含有する液体のうち少なくとも一種類を充填した歯周ポケット洗浄装置1を用いて洗浄を行うものである。従って、これらエタノール水溶液や、カテキンを含有する緑茶などの液体は、天然に存在する物質だけで構成されており、非天然の化学物質が含有されていないので、アレルギー反応や化学物質に対する過敏症などの反応が出難く、安全性に優れる。
また、エタノールは、歯肉の炎症や歯牙の多少の不安定さを改善する能力に優れるので、16%(v/v)エタノール水溶液を用いて歯周ポケットを洗浄することにより、歯周病菌の産生するジメチルスルフィドやリポ多糖などの脂溶性の歯周病進行毒素が洗い流されて、歯肉の炎症や歯牙の多少の不安定さが改善される効果が期待できる。
また、茶カテキンは、歯肉の炎症再燃抑制効果に優れるので、茶カテキンを用いた歯周ポケットの洗浄により、歯周ポケット内にカテキンが少量残存することになるので、歯肉の炎症再燃までの時間を延長することができる。
また、これらエタノール水溶液や茶カテキンは、上記同様の作用を持つ逆性石鹸水溶液などと異なり、体内組織に誤注入されたときの毒性が小さい。
また、エタノール水溶液、茶カテキンともに、歯周病菌への抗菌力が十分であるだけでなく、抗生物質などと異なり、病原菌の抗菌力への耐性が生じ難く、永続的に使用することが可能である。
【0041】
上記構成とされた本実施形態に係る歯周ポケット洗浄装置1の製造方法によれば、簡易な方法で、操作性及び安全性に優れた歯周ポケット洗浄装置1を製造することができる。
つまり、当該歯周ポケット洗浄装置1の製造方法は、留置針10の外筒11を注射筒21に連結させる工程(第1工程)を備えたものである。従って、留置針10から取り外した外筒11の一端を、注射筒21の液体出口24に連結させるだけで、歯周ポケット洗浄装置1を製造することができるので、例えば、留置針10の外筒11に相当する部位と、注射筒21に相当する部位とを別個に成形などにより製造し、これらを連結させて装置1を製造するような場合と比べて、より簡易な方法で当該装置1を製造することができる。
また、当該歯周ポケット洗浄装置1の製造方法にて製造した歯周ポケット洗浄装置1は、上述のように操作性及び安全性に優れる。
【0042】
また、本実施形態では、歯周ポケット洗浄装置1の製造方法は、外筒11の先端を折り曲げてつぶす工程(第2工程)を更に備えている。これにより、注射筒21の軸方向からずれた方向に、外筒21の先端から液体を噴射することができるので、液体を歯周ポケット内へ注入し易くなり、歯周ポケットの洗浄効率を高めることができる。
また、指などを用いて簡単に外筒の先端を折り曲げてつぶすことができる。従って、例えば、予め成形などによって、外筒の先端を折れ曲がった形状とするような場合と比べて、より簡易に当該装置1を製造することができる。