【解決課題】嫌気性消化装置を小型化するとともにリン、シロキサン等の析出物発生を低減し、廃水処理設備等で発生する汚泥を安定的かつ効率的に嫌気性消化すると共に、バイオガス(特にメタンガス)を効率良く回収することができ、かつ消化汚泥を効率的に脱水することのできる低コスト化が図れる嫌気性処理方法および装置を提供する。
【解決手段】汚泥に凝集剤を添加して調製した凝集汚泥を、汚泥濃度4〜12%の汚泥濃縮物と分離液とに固液分離する前処理工程、該汚泥濃縮物を嫌気性消化するとともにバイオガスを回収する嫌気性消化工程、該嫌気性消化工程で調製された嫌気性消化汚泥に凝集剤と、前記分離液及び水の少なくとも何れかと、を混合して消化汚泥凝集物を調製する工程、該消化汚泥凝集物を固液分離して得られる消化汚泥濃縮物を脱水する工程を含む、嫌気性処理方法。
前記嫌気性消化工程は、前記汚泥濃縮物を、処理温度30〜60℃、HRT1〜3日の条件で可溶化および酸発酵処理する前段消化工程と、該前段消化工程で処理された消化汚泥をメタン発酵処理し、前記嫌気性消化汚泥を調製するメタン発酵工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項の嫌気性処理方法。
前記メタン発酵工程は、処理温度30〜60℃、かつHRT12〜20日で、かつSSに対する粗浮遊物含有率が5〜18%となるように嫌気性消化汚泥が調製される、請求項4の嫌気性処理方法。
外部から搬入した有機性廃液または廃棄物をスラリーTS濃度1〜15%に調整し、前記嫌気性消化工程に送り、前記汚泥濃縮物のTSに対して120%以下のスラリーTS比となる混合条件で嫌気性消化する、請求項1〜5のいずれか1項の嫌気性処理方法。
前記消化汚泥濃縮物は、凝集剤注入工程とそれに続く固液分離工程からなる工程の内、凝集剤注入工程を少なくとも2回行うことにより調製される、請求項1〜6のいずれか1項の嫌気性処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明を更に詳細に説明する。
【0017】
本発明の嫌気性処理方法は、汚泥に凝集剤を添加して調製した凝集汚泥を、汚泥濃度4〜12wt%の汚泥濃縮物と分離液とに固液分離する前処理工程、該汚泥濃縮物を嫌気性消化するとともにバイオガスを回収する嫌気性消化工程、該嫌気性消化工程で調製された嫌気性消化汚泥に、凝集剤と、前記分離液及び水の少なくとも何れかと、を混合して消化汚泥凝集物を調製する工程、及び該消化汚泥凝集物を固液分離して得られる消化汚泥濃縮物を脱水する工程を含む。
【0018】
本発明において、「汚泥」とは、下水、屎尿、厨芥などの有機性物質を処理する工程で排出される汚泥を意味する。
【0019】
本発明で処理される汚泥としては、廃水処理設備の最初沈殿池から発生する初沈汚泥と最終沈殿池から発生する余剰汚泥とから選択される少なくとも1種であることが好ましく、両者からの混合汚泥であることが更に好ましい。該汚泥は、貯留槽に貯留され、重力濃縮されることが好ましい。
【0020】
貯留槽から排出された汚泥に凝集剤が添加され、凝集汚泥が調製される。凝集剤の添加量は、汚泥のSS(Suspended Solids、懸濁粒子)に対して0.2〜1.0wt%が好ましく、0.3〜0.6wt%が更に好ましい。
【0021】
凝集剤としては、通常用いられる凝集剤を特に限定せずに用いることができる。例えば、ポリ硫酸第二鉄またはPAC、硫酸バンド等の無機系凝集剤、及び有機高分子凝集剤(以下、高分子凝集剤ともいう)などが挙げられ、各々、単独または組み合わせて用いることができるが、少なくとも高分子凝集剤を含むことが好ましい。高分子凝集剤としては、カチオン系、アニオン系、両性系、等が挙げられ、例えば、アミジン系凝集剤、アクリルアミド系凝集剤、アクリル酸系凝集剤等が挙げられる。
【0022】
以下、本発明の嫌気性処理方法を工程別に説明する。
【0023】
<前処理工程>
この前処理工程は、汚泥に凝集剤を添加して調製した凝集汚泥を、汚泥濃度4〜12wt%の汚泥濃縮物と、分離液と、に固液分離する汚泥濃縮工程である。従来の処理方法では、高分子凝集剤を添加して汚泥を濃縮していたため、3〜4wt%、高くても4〜5wt%程度の汚泥濃度に濃縮することが限界であった。本発明では、汚泥濃度4〜12wt%までの高濃度化が可能である。一方、分離液には、リン、カルシウム、シロキサン等が含まれる。
【0024】
<嫌気性消化工程>
次に、上記汚泥濃縮物は、嫌気性消化工程に送られ、嫌気性消化されるとともに発生するバイオガスが回収される。汚泥濃縮物の消化は、30〜60℃、好ましくは30〜40℃の中温消化領域または50〜60℃の高温消化領域で行うことが好ましい。嫌気性消化時の好適なpHはpH6〜8.5、最も好ましくはpH6.5〜8.0である。
【0025】
油脂成分が多く含まれる後述の有機性廃液または廃棄物を混合消化する場合には、温度が高いほうが中性脂肪や高級脂肪酸の分散性が増すため、50〜60℃の高温消化方法を選択することが好ましい。一方、汚泥の嫌気性消化で生成されるアンモニアは高pHと高温域で解離しやすいことから、高温消化ではアンモニア阻害を受けやすくなる点に注意が必要である。消化液中NH
4+−N濃度としては、中温消化で3,500mg/L以上、高温消化で2,000mg/L以上となるとメタン生成反応が阻害される。これらの操作条件は、濃縮汚泥の汚泥濃度や汚泥性状、嫌気性消化時の水量変動、目標処理水質を加味した上で決定される。
【0026】
嫌気性消化工程は、前記汚泥濃縮物を、処理温度30〜60℃、HRT(水理学的滞留時間:Hydraulic retention time)1〜3日の条件で可溶化および酸発酵処理する前段消化工程と、該前段消化工程で処理された消化汚泥をメタン発酵処理し、嫌気性消化汚泥を調製するメタン発酵工程を含むことがより好ましい。
【0027】
この前段消化工程は、後段のメタン発酵工程の嫌気性処理を促進する機能を有し、メタン発酵工程でのHRTを低減し、バイオガスの回収を効率化・安定化し、粗浮遊物含有率を高く安定に維持し、発酵液粘度を低減するために寄与する。また、前段消化工程でSS濃度の調整を行っても良い。
【0028】
メタン発酵工程は、処理温度30〜60℃、かつHRT12〜20日の条件で行われることが好ましく、SSに対する粗浮遊物含有率が3〜20%となるように嫌気性消化汚泥が調製されることが好ましい。上記粗浮遊物含有率の粗浮遊物とは、セルロース等の繊維状物質、粒状物質等を意味する。該HRTは12〜15日が更に好ましく、粗浮遊物含有率は5〜18%が更に好ましい。粗浮遊物含有率を上記範囲とすることにより、消化汚泥濃縮物の脱水性を改善し、脱水ケーキの含水率低減を図ることができる。
【0029】
また、本発明の嫌気性消化工程では、外部、すなわち、本発明において実施する廃水処理場の系外から搬入した有機性廃液または廃棄物を汚泥とともに処理することができる。外部からの有機性廃液または廃棄物とは、工場、下水処理場等の設備から排出される有機化合物を少なくとも含み、汚泥、草本類等を含んでもよい。外部からの有機性廃液または廃棄物は、前処理工程、前段消化工程及びメタン発酵工程のいずれに搬入してもよい。外部からの有機性廃液または廃棄物を汚泥と一緒に嫌気性消化する場合には、該有機性廃液又は廃棄物のスラリーTS(Total solids)濃度を1〜15%(更に好ましくは3〜10%)に調整し、汚泥濃縮物のTSに対して120%以下(更に好ましくは5〜100%)のスラリーTS比となる混合条件で添加することが好ましい。ここで、スラリーTS濃度とは、スラリー中のTS濃度を意味し、スラリーTS比とは、スラリーに含まれる搬入物質のTS比率を意味する。スラリーTS濃度は、有機性廃液または廃棄物の種類、濃度、状態、搬入頻度などを加味して決定される。また、外部から搬入される有機性廃液または廃棄物は、必要に応じて物理的、化学的、生物的分解処理された後に嫌気性消化工程に導入されると消化反応を安定化させることができるので好ましい。処理方式の一例としては、湿式破砕、乾式粉砕、熱処理、高温高圧処理、酸またはアルカリ処理、生物的可溶化または酸発酵処理などを好適に挙げることができる。
【0030】
<消化汚泥凝集物調製工程>
次に、嫌気性消化工程で調製された嫌気性消化汚泥に凝集剤と、前処理工程の分離液及び水の少なくとも何れかと、を混合して消化汚泥凝集物を調製する。
【0031】
嫌気性消化汚泥に添加する凝集剤としては、高分子凝集剤等が好適である。また、ポリ硫酸第二鉄またはPAC等の無機系凝集助剤と高分子凝集剤の併用も分離液の清澄度を高めるために有効な場合がある。高分子凝集剤としては、高価なアミジン系凝集剤も使用できるが、比較的安価なカチオンポリマー系凝集剤、例えば、アクリル酸エステル系、メタアクリル酸エステル系、アニオン度よりもカチオン度の高い両性系凝集剤等を用いることができる。アクリル酸エステル系としては、分子量が300〜600万のものが沈降分離性の高い消化汚泥凝集物を得る上で好ましい。
【0032】
凝集剤の添加量は、嫌気性消化汚泥の性状によって変動するが、消化汚泥凝集物の沈降分離性を高めるため、凝集物のフロック径が数ミリ程度になる添加量とすることが好ましい。具体的には、凝集物のフロック径が5〜20mmの範囲、好ましくは10〜20mmの範囲となるように、凝集剤を嫌気性消化汚泥中のSSあたり1.0〜2.5%の範囲、好ましくは1.5〜2.0%の範囲で添加する。
【0033】
消化汚泥凝集物調製工程で用いる分離液又は水(「希釈水」ともいう)は、嫌気性消化汚泥を希釈する機能を有する。分離液又は水による濃縮汚泥の希釈により、汚泥の電気伝導度を1200mS/m以下、好ましくは750mS/m以下、汚泥のMアルカリ度を4000mg/l以下、好ましくは2500mg/l以下、汚泥の温度を35℃以上、好ましくは50〜75℃に調整する。希釈された汚泥の温度は、上記範囲の温度の分離液又は水を添加することによって調整してもよく、あるいは添加後に加熱してもよい。希釈水は、前処理工程で得られる分離液、通常の飲用水等の他、溶解成分等の濃度が比較的小さい等の水質条件(電気伝導度500mg/L以下、Mアルカリ度1500mg/L以下、SS1500mg/L以下、COD
Cr15000mg/L以下)を満たす水であれば処理プラント内のどのプロセス水を使用しても良い。また、活性汚泥処理水、生物脱臭装置廃液といった生物処理水を使用することも可能である。
【0034】
得られた消化汚泥凝集物を固液分離して消化汚泥濃縮物と分離液とを調製する。消化汚泥濃縮物の濃縮倍率は2.5〜8倍程度が好ましい。ここで、濃縮倍率とは、消化汚泥凝集物の容積を消化汚泥濃縮物の容積で除した値を意味する。
【0035】
固液分離された消化汚泥濃縮物に、再び、凝集剤及び必要に応じて希釈水を添加して再濃縮凝集汚泥を調製する。この際用いられる凝集剤及び希釈水は、消化汚泥凝集物調製工程で用いる凝集剤及び希釈水でよい。再濃縮凝集汚泥が、十分な脱水性を有する場合(濃縮凝集汚泥のTS濃度として4〜15wt%の範囲、好ましくは6〜10wt%)は、最終的な消化汚泥凝集物として脱水工程に送る。しかし、該再濃縮凝集汚泥が十分な脱水性を有しない場合、又は当初の設計上必要とされる場合(濃縮凝集汚泥のTS濃度として4wt%未満の場合)等は、例えば、上記凝集剤再注入とそれに続く固液分離又は固液分離のみを繰り返してもよい。凝集剤再注入に用いる凝集剤は、消化汚泥凝集物調製工程において用いた凝集剤と同じ凝集剤を用いてもよいし、異なる凝集剤を用いてもよい。
【0036】
最終的な消化汚泥凝集物は、後段の脱水工程におけるせん断力を受けた後もその粒状のフロック形状がわずかに残る程度の強度を持つフロックであることが好ましい。このような消化汚泥凝集物を得るための凝集剤としては、特に限定されるべきものではないが、高分子凝集剤が好ましい。高分子凝集剤としては、上記凝集汚泥調製工程に使用するものが挙げられ、前処理工程の凝集剤と同一でも異なっていてもよい。
【0037】
<脱水工程>
次に、消化汚泥凝集物を脱水して、脱水ケーキと分離液に固液分離す。本発明において、脱水ケーキの濃縮倍率は4〜10倍程度が好ましい。ここで、濃縮倍率とは、消化汚泥凝集物の容積を脱水ケーキの容積で除した値を意味する。脱水ケーキ調製工程で分離された分離液は、SS濃度、Mアルカリ度、及び電気伝導度が小さいため、消化汚泥凝集物を調製する工程で使用する希釈水として好適である。脱水ケーキは、低含塩かつ低含水率であるため、再資源化が可能であり、コンポスト化、炭化、燃料化などの二次加工等にも好適である。
【0038】
<リン及びシロキサン回収>
前処理工程で得られる分離液には、リン、カルシウム、シロキサン等が含まれている。本発明では、これらを含む分離液のすべて又は一部をリン、カルシウム、シロキサン等を回収乃至除去する工程に送ることができる。リンの回収には、ヒドロキシアパタイトを用いる接触脱リン法、リン酸マグネシウムアンモニウムを用いるMAP法等が適用できる。
【0039】
MAP法では、反応槽、例えば、上向流槽内に予めMAPの種晶を充填し、また、所望により不足するMAP成分を補うための薬剤、例えば、MgCl
2、Mg(OH)
2等を分離液に添加し、更に、所望により分離液のpHを7.8〜8.5に調整して、分離液を上向流で反応槽に通水し、MAPの粒径を増大させ、この増大した粒径を有するMAPを適宜、反応槽から抜き出し、分離・回収する方法が挙げられる。反応槽で生成した微細なMAPは槽上部から回収し、反応槽に戻される。
【0040】
シロキサンの回収は、分離液をガス乃至噴霧状として、又はそのままの状態で、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、ポリマー(例えば、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体等)等の吸着剤により、吸着させる方法により行うことができる。また、所望により窒素ガスを、適宜、加温して、シロキサンを吸着した吸着剤に通すことにより、シロキサンを脱離、回収することもできる。後述のバイオガスに対しても上記と同様の吸着剤を用いてシロキサンを処理することが可能であり、同様の方法でシロキサンを脱離、回収することができる。
【0041】
本発明は、上述のように分離液と汚泥濃縮物に固液分離する工程を有するため、嫌気性消化装置へのリン、シロキサン等の導入量が従来よりも低減し、ひいては同装置でのリン、シロキサン等を含む析出物の発生が低減し、同装置又は配管等の維持、管理費用の低減化に寄与する効果がある。
【0042】
<嫌気性処理装置>
本発明の嫌気性処理装置は、汚泥に凝集剤を添加して凝集汚泥を調製する凝集槽、汚泥濃度4〜12wt%の汚泥濃縮物と分離液とに固液分離する前処理汚泥濃縮装置、該汚泥濃縮物を嫌気性消化するとともにバイオガスを回収する嫌気性消化装置、該嫌気性消化装置で調製された嫌気性消化汚泥に、凝集剤と、前記分離液及び水の少なくとも何れかと、を混合して消化汚泥凝集物を調製する消化汚泥凝集装置、及び該消化汚泥凝集物を固液分離して得られる消化汚泥濃縮物を脱水する装置を含む。
【0043】
凝集槽は、通常用いられる凝集槽でよい。
【0044】
前処理汚泥濃縮装置は、凝集汚泥を汚泥濃縮物と分離液とに固液分離する固液分離槽でよい。固液分離槽としては、特に限定されず、重力濃縮法が適用される単なる槽、遠心濃縮法が適用される遠心分離機、浮上濃縮法が適用される分離機、スクリーンを用いた分離機、スリット型濃縮機等が挙げられる。中でも、スリット型濃縮機は好ましく、例えば、前記特開2003−211293号公報(特許文献3)に記載の、処理物をスリット板で受け止め、多数のスリットを形成したスリット板上に周面を突出せしめた多数の円板が、処理物排出方向に回転軸により偏心回転することによって、処理物はスリット板上を排出側に送られ、この過程でスリット内の円板との隙間から液体成分が落下して濾過され、処理物中の固体成分は分離捕集され、さらにスリット板の上面に近接して処理物の排出方向に回転し、スリット板上の捕集物を圧搾して脱液するベルトコンベアを上記スリット板上に設けた機械構造が挙げられる。スリット型濃縮機を適用すると、安価なランニングコストで安定して確実に4〜12wt%の高濃度化が可能である。
【0045】
嫌気性消化装置は、少なくとも嫌気性消化槽を含む。嫌気性消化槽としては、特に限定されないが、完全混合型消化槽を適用することが好ましい。嫌気性消化槽は、槽内液の均質化や温度分布の均一化とともに、スカムの発生を防止するために攪拌が必須であり、本発明では機械攪拌方式が最も効率的であるが、設備環境や処理条件に応じてポンプ攪拌方式、ガス攪拌方式を付属することも効果的である。さらに、これらの要件を備えた水密かつ気密な構造の消化槽であれば鉄筋コンクリート造りまたは鋼板製のいずれでも良く、既設の嫌気性消化槽を処理条件に合わせて改造・更新することでも適用可能である。また、嫌気性消化装置は、汚泥濃縮物を可溶化および酸発酵処理する可溶化・酸発酵処理槽と、該槽で処理された消化汚泥をメタン発酵処理するメタン発酵槽と、を含む構成とすることが好ましい。嫌気性消化装置は、外部からの有機性廃液または廃棄物を貯留する外部バイオマス貯留装置と、該外部バイオマス貯留装置から排出されるバイオマスを、前記貯留装置、可溶化および酸発酵処理する装置、及びメタン発酵装置からなる群から選択される少なくとも1つに導入する機構及び配管を含むことが好ましい。
【0046】
消化汚泥凝集装置は、消化汚泥凝集槽と、適宜、希釈した汚泥を導入する手段、凝集剤添加手段、攪拌手段、加温手段、凝集汚泥の引き抜き手段等を備える。また、別途、希釈のための配管内混合装置を具備していてもよい。
【0047】
本発明の嫌気性処理装置は、消化汚泥凝集物から消化汚泥濃縮物を調製する装置を具備することが好ましい。
【0048】
消化汚泥濃縮物を調製する装置は、凝集剤により凝集汚泥を調製する汚泥凝集処理装置、該凝集汚泥を固液分離して濃縮凝集汚泥を調製する凝集汚泥分離濃縮装置、該濃縮凝集汚泥に凝集剤を添加して再濃縮凝集汚泥を調製する装置を備えることが好ましい。
【0049】
凝集汚泥分離濃縮装置は、凝集汚泥を濃縮凝集汚泥と分離液に固液分離する装置である。凝集汚泥分離濃縮装置は、特に限定されず、重力濃縮法が適用される単なる槽、遠心濃縮法が適用される遠心分離機、浮上濃縮法が適用される分離機、スクリーンを用いた分離機等が挙げられる。中でも、スクリーンを備えた固液分離装置が好ましく、例えば、一定間隔で平行に並ぶ複数のスクリーンと隣り合う該スクリーンの間で回転する複数の円盤により隣り合う該スクリーン間の隙間の凝集汚泥を物理的に排除するとともに濃縮凝集汚泥と分離水とに分別することが可能な固液分離装置が挙げられる。ここで、スクリーンのスリット幅は原理的に消化汚泥凝集物のフロック径未満であり、0.1〜2.5mmが好ましい。
【0050】
再濃縮凝集汚泥調製装置は、適宜、濃縮凝集汚泥導入手段、凝集剤添加手段、攪拌手段、再濃縮凝集汚泥の引き抜き手段等を備える。
【0051】
消化汚泥濃縮物を脱水する装置は、特に限定されず、通常、凝集汚泥分離濃縮装置と原理的に同じものを用いることができるが、凝集汚泥分離濃縮装置よりも脱水ケーキを分離するための消化汚泥凝集物への応力は高くすることが一般的であり、公知手段を用いることができる。脱水ケーキ調製装置は、再濃縮凝集汚泥へ応力を付与する手段と分離液を透過し、消化汚泥凝集物を保持するろ過手段から構成されることが好ましい。消化汚泥凝集物へ応力を付与する手段としては、プレス、遠心等が挙げられる。ろ過手段としては、開孔径が0.1〜2.5mmのスクリ−ン等が挙げられる。
【0052】
次に、本発明の一例を、図を参照して更に説明する。
【0053】
図1は、本発明の第一の実施形態を示すブロックフロー図で、嫌気性処理装置の構成を表す説明図である。
【0054】
汚泥1は、貯留装置2に送られる。次いで、汚泥1は、貯留装置2から排出され、配管を介して凝集槽3に送られる。凝集槽3において、汚泥1に凝集剤4が添加されて、凝集汚泥5が調製される。凝集汚泥5は、前処理汚泥濃縮槽6に送られ、汚泥濃度4〜12%の汚泥濃縮物7と分離液8とに固液分離される。汚泥濃縮物7は、嫌気性消化装置9に送られ、汚泥の嫌気性消化によりバイオガス10及び嫌気性消化汚泥11を生成する。バイオガス10は、バイオガスタンク101に送られ、次いでバイオガス10は、ガス利用設備102(例えば、ガスタービン、バイオガスボイラ、ガス燈、乾燥機熱源等)、あるいは余剰ガス燃焼装置103に送られる。嫌気性消化汚泥11は、消化汚泥凝集装置12に送られる。消化汚泥凝集装置12には、前処理汚泥濃縮槽6にて形成される分離液8の一部が導入される。消化汚泥凝集装置12において、嫌気性消化汚泥11に分離液8と凝集剤13が添加され、消化汚泥凝集物15と分離液14が形成される。消化汚泥凝集装置12からの消化汚泥凝集物15は、脱水装置16に送られ、分離液17を分離するとともに脱水ケーキ18が調製される。分離液8の一部、分離液14、及び分離液17は、リン回収等の廃水処理設備104等に送られる。なお、バイオガスタンクの前にシロキサン除去乃至回収装置を設けても良い。
【0055】
次に
図2は、本発明の第二の実施形態を示すブロックフロー図で、嫌気性処理装置の構成を表す説明図であり、嫌気性消化の前段で可溶化および酸発酵処理を行うものである。
【0056】
図1のフローにおいて、前処理泥濃縮槽6にて分離された汚泥濃縮物7は、嫌気性消化装置8に送られる前に可溶化および酸発酵処理装置9aに送られ、可溶化および酸発酵処理が施された消化汚泥7aが生成される。消化汚泥7aは、嫌気性消化装置9に送られ、以降は
図1のフローに従って、処理される。
【0057】
次に
図3は、本発明の第三の実施形態を示すブロックフロー図で、嫌気性処理装置の構成を表す説明図であり、嫌気性消化汚泥の凝集剤による汚泥凝集処理を2回に分割して行うものである。
【0058】
本フローでは、
図2のフローにおいて、嫌気性消化汚泥11及び分離液8の一部が、消化汚泥凝集槽12に送られ、添加される凝集剤13により分離液14を分離するとともに消化汚泥凝集物15が調製される工程を以下のように変更する。
【0059】
嫌気性消化汚泥11及び分離液8の一部は、汚泥凝集処理装置12aに送られ、添加される凝集剤13aにより凝集汚泥12cが調製される。凝集汚泥12cは、凝集汚泥分離濃縮装置14Aに導入され、分離液14と濃縮凝集汚泥12dに固液分離される。次いで、濃縮凝集汚泥12dは、再濃縮凝集汚泥調製装置12bに送られ、添加される凝集剤13bにより再濃縮凝集汚泥が調製され、これを最終的な消化汚泥凝集物15とする。
【0060】
次に
図4は、本発明の第四の実施形態を示すブロックフロー図で、嫌気性処理装置の構成を表す説明図であり、
図3のフローにおいて、汚泥凝集処理装置12aに生物処理水19を添加して汚泥を希釈するものであり、他の処理は、
図3と同じである。
【0061】
この生物処理水としては、活性汚泥処理水、生物脱臭処理水、硝化脱窒処理水等が挙げられる。生物処理水の含有成分の種類、及びその濃度は、凝集剤の種類又は添加量、ひいては費用に影響するため、処理目的に応じて、適宜決定される。
【0062】
次に
図5は、本発明の第五の実施形態を示すブロックフロー図で、嫌気性処理装置の構成を表す説明図であり、
図4のフローにおいて、外部から搬入した有機性廃液または廃棄物も嫌気性消化処理を行うものであり、他の処理は、
図4と同じである。
【0063】
本フローでは、有機性廃液または廃棄物20は、スラリーとしてバイオマス貯槽21に貯留される。バイオマス貯槽21からのスラリー22は、所望によりTS濃度を調整した後、貯留槽2、可溶化および酸発酵処理装置9a、及び嫌気性消化装置9の少なくとも何れかに導入され、処理が施される。
【0064】
上記
図1〜5の嫌気性処理装置は、自動制御であってよいし、バッチ処理であってもよいし、その組み合わせであってもよい。また、各種汚泥の温度制御も自動化してもよい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例を説明する。A下水処理場から発生した下水汚泥について、本発明の嫌気性処理試験を行った。なお、本発明はこの実施例により何等制限されるものではない。
【0066】
試験では汚泥にカチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)を0.4%(対SS比)添加混合して凝集処理後、背圧板付き機械濃縮機で汚泥濃縮物と分離液とに固液分離した。表1に汚泥、汚泥濃縮物、分離液の性状を示す。
【0067】
表2に嫌気性消化装置における嫌気性消化試験条件を示す。嫌気性処理試験では、耐熱塩化ビニル製の完全混合型消化試験装置(総容積30L、有効容積25L、ジャケット温水循環式)を用いた。また、可溶化および酸発酵装置では、東京理化器械(株)製ジャーファーメンターMDLを用いた(総容積10Lの完全混合型、4L水深で運転)。試験では、嫌気性消化装置(消化槽)は37℃、可溶化及び酸発酵装置(可溶化槽)では45℃で運転した。なお、比較例2では55℃の高温嫌気性処理試験を行った。原料投入は、チューブポンプRP−60型(東京理化器械株式会社製)を用い、1日あたり4〜8回に分けてタイマー制御で投入した。
【0068】
[実施例1]
図1のフローに従って、実施した。
【0069】
[実施例2]
図2のフローに従って、実施した。なお、嫌気消化汚泥の脱水処理については、
図3と
図4に示す処理方法も併せて行った。
【0070】
[比較例]
図6のフローに従って、実施した。なお、消化汚泥凝集物15は、高分子凝集剤による汚泥凝集により調製した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
なお、分析方法は下記の方法で行った。
・TS(Total solids、全蒸発残留物);105℃蒸発残留物重量(JIS K 0102)
・VTS(Volatile total solids、強熱減量);600℃強熱減量(JIS K 0102)
・SS(Suspended solids、懸濁粒子);遠心分離法による回転数3,000rpm,10分間での沈殿物重量(JIS K 0102)
・VSS(Volatile suspended solids、揮発性懸濁粒子);懸濁粒子の600℃強熱減量(JIS K 0102)
・COD
Cr(化学的酸素消費量);重クロム酸カリウム法(JIS K 0102)
・BOD(生物化学的酸素消費量);ウインクラー・アジ化ナトリウム変法(JIS K 0102)
・タンパク質;(ケルダール窒素−アンモニア性窒素)×6.25
・揮発性有機酸(VFA);高速液体クロマトグラフ(エルマ光学ERC-8710、検出器 RI、カラムShodex RSpak KC-811、カラム温度60℃、移動相0.1%りん酸)
・メタンガス、炭酸ガス;ガスクロマトグラフ(GLサイエンスGC-323、検出器TCD、TCD電流値120A、分離カラム Active Carbon 30/60、カラム温度 95℃、キャリアガス He)
・消化ガス中のシロキサン:消化ガスを流通速度0.6L/分でヘキサン溶液に通液させてシロキサンを捕集後、濃縮してガスクロマトグラフ質量分析計GC/MSで定量分析。ここでは、下水汚泥消化ガス中に最も多く含まれるとされる環状シロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)濃度を定量分析により評価。
・溶解性画分;GF/B(1μm)でのろ液
・Mアルカリ度;遠心分離機による回転数3,000rpm、3分間での上澄液を0.1mol/Lの塩酸溶液でpH4.8まで滴定(下水試験方法)
・粗浮遊物;呼び寸法74μmふるいでの粗浮遊物分析(下水試験方法)
【0074】
【表3】
【0075】
表3の嫌気性処理試験結果に示すように、実施例1及び2による嫌気性処理では従来技術と同等のTS分解率、VTS分解率、メタンガス発生率の性能が出ていることがわかる。
【0076】
また、消化ガス中のシロキサンD5濃度を比較すると、実施例1と2において含有率が低くなっており、高濃度に保持された消化汚泥SS分にシロキサン化合物が吸着されることで消化ガス中へのシロキサン濃度が低くなったものと考えられる。
【0077】
さらに、粗浮遊物を比較すると、実施例1と2において含有率が高くなっており、従来の消化汚泥よりも汚泥脱水には有利な汚泥条件となっていることがわかる。
【0078】
なお、比較例、実施例の何れの消化槽でも揮発性有機酸の残留は認められておらず、嫌気性処理反応は問題なく進行していたものと考えられる。
【0079】
上記の比較例1および2、実施例1および2で得られた嫌気性消化汚泥を用いて、汚泥脱水処理性能を検討した。汚泥脱水にはカチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)を用いた。また、脱水機はベルトプレス式脱水機を用い、脱水処理条件は、ろ布緊張力4.9kN/m、ろ布スピード1.0m/分で行った。
【0080】
先ず、比較例1および2の嫌気性消化汚泥について脱水処理した結果、高分子凝集剤注入率と脱水ケーキ含水率は表4の結果であった。
【0081】
【表4】
【0082】
次に、実施例1および2で得られた嫌気性消化汚泥について脱水処理した結果、高分子凝集剤注入率と脱水ケーキ含水率の結果は表5の結果であった。何れの脱水方法でも従来法よりも高性能であったが、中でも、
図4に示される凝集剤を2回に分けて注入して生物処理水を併用する処理方式では最も効率的であることが分かる。なお、実施例1で得られた嫌気性消化汚泥を分離水で希釈することなく、そのままの状態で高分子凝集剤を注入して汚泥を凝集・脱水処理した場合は、高分子凝集剤注入率3.8%(対SS)、脱水ケーキ含水率83%であった。
【0083】
【表5】
【0084】
[実施例3]
次に、
図5に基づいて、下水汚泥と食品製造廃棄物(廃糖液およびデザート系廃製品)と河川敷刈草の嫌気性処理を行った実施例について示す。
【0085】
<処理条件>
・下水汚泥量(初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥) 30m
3/日(TS濃度3.1%)
・食品製造廃棄物搬入量 1.35t/日(TS濃度9.9%)
・河川敷刈草搬入量 0.15t/日(含水率70.0%)
・バイオマス貯槽 3m
3×2槽
<前処理固液分離装置(下水混合汚泥用)>
・スリット型濃縮機(スクリーンスリット幅1.0mm、背圧板付帯)
・カチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)注入率0.4%(対SS比)
・汚泥濃縮物量 12t/日(TS濃度7.9%)
・分離液量 19.5m
3/日(SS濃度395mg/L)
・SS回収率97%
・刈草用粉砕装置
<嫌気性消化:可溶化および酸発酵装置(縦型機械式攪拌機)>
・食品製造廃棄物、河川敷刈草、汚泥濃縮物の混合物の可溶化および酸発酵装置への投入量3m
3/日(スラリーTS濃度10%)
・汚泥濃縮物のTSに対する食品製造廃棄物・河川敷刈草のTS比 19%
・HRT 2日
・有効容積6m
3
・水温45℃
<嫌気性消化:嫌気性消化装置(縦型機械式攪拌機)>
・嫌気性消化装置への投入量13.5m
3/日
・HRT 14.8日
・有効容積200m
3
・水温37℃
<嫌気性消化汚泥の凝集処理工程>
・スリット型濃縮機(スクリーンスリット幅1.0mm)
・汚泥分離液の混合量 10.5m
3/日(Mアルカリ度690mgCaCO
3/L)
・生物脱臭装置廃液の混合量 3.5m
3/日(Mアルカリ度1250mg/L)
・カチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)注入率1.7%(対SS比)
(注入率内訳;前段凝集槽の注入率1.3%、再凝集槽の注入率0.4%)
<脱水機>
・スクリュープレス型脱水機
<発電機>
・マイクロガスタービン発電機
<処理結果>
・嫌気性消化汚泥性状(TS濃度3.9%、VTS68%、SS濃度3.0%、Mアルカリ度8900mgCaCO
3/L、粗浮遊物含有率16.7%(対SS比))
・バイオガス発生量 570m
3/日(NTP)
・メタンガス発生量 365m
3/日(NTP)
・メタンガス濃度 64%
・メタンガス発生率 0.37m
3/投入kgVTS(NTP)
・バイオガス中のシロキサンD5濃度 2.3mg/m
3
・発電量 686kwh/日
・脱水ケーキ発生量 2.1t/日(含水率77%)
・廃水量 37.6m
3/日
【0086】
以上のように、本発明によって従来よりも大幅に小型化した嫌気性消化装置によって汚泥や有機性廃棄物を嫌気性処理して良質なバイオガスを安定的に発生せしめることができ、バイオガス発電できることも明らかとなった。従来法のHRT20〜30日での処理方式では嫌気性消化槽630〜945m
3を設ける必要があったのに対して、本発明では206m
3の嫌気性消化装置であるので嫌気槽規模は従来の1/3〜1/4に縮小されたシステムで嫌気性処理が可能である。さらには、発生した嫌気性消化汚泥は容易な操作によって低コストで凝集・脱水でき、得られた脱水ケーキ含水率77%は従来の82%程度と比較して低含水率であり(表4参照)、外観も従来品と変わりなく、不快臭もなく衛生的であった。
【0087】
[実施例4]
実施例3と同様に、
図5に基づいて、下水処理場において下水汚泥と食品製造廃棄物(ジュース用の蜜柑絞り粕)の嫌気性処理を行った。下水汚泥は重力濃縮した初沈濃縮汚泥と余剰汚泥の混合汚泥として、汚泥濃縮を実施した。嫌気性消化は下水汚泥と蜜柑絞り粕の各固形物量をほぼ等量の混合比率で実施した。
【0088】
<処理条件>
・下水汚泥量(初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥) 35m
3/日
(初沈汚泥: TS濃度3.88%、余剰汚泥: TS濃度0.93%、混合汚泥: TS濃度1.39%)
・食品製造廃棄物搬入量 4.0t/日(TS濃度12.5%)
・バイオマス貯槽 3m
3×2槽
<前処理固液分離装置(下水混合汚泥用)>
・スリット型濃縮機(スクリーンスリット幅1.0mm、背圧板付帯)
・カチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万、溶液濃度2.0g/L)注入量0.95m
3/日
・高分子凝集剤注入率 0.44%(対SS比)
・汚泥濃縮物量 6.2t/日(TS濃度7.5%)
・分離液量 29.8m
3/日(SS濃度230mg/L)
・SS回収率98%
<食品製造廃棄物の可溶化・酸発酵装置>
・6.0m
3×1槽、縦型機械攪拌機、37℃加温
・汚泥濃縮物のTSに対する食品製造廃棄物のTS比 102%
<嫌気性消化装置(縦型機械式攪拌機)>
・嫌気性消化装置への投入量10.2m
3/日
・HRT 19.6日
・有効容積200m
3
・水温37℃
<嫌気性消化汚泥の凝集処理工程>
・スリット型濃縮機(スクリーンスリット幅1.0mm)
・汚泥分離液の混合量 2.0m
3/日(Mアルカリ度320mgCaCO
3/L)
・カチオン性高分子凝集剤(平均分子量300万)注入率1.6%(対SS比)
・凝集剤注入工程 1回
<脱水機>
・スクリュープレス型脱水機
<発電機>
・マイクロガスタービン発電機
<処理結果>
・嫌気性消化汚泥性状(TS濃度3.8%、VTS70%、SS濃度3.2%、Mアルカリ度4490mgCaCO
3/L、粗浮遊物含有率 12.1%(対SS比))
・バイオガス発生量 591m
3/日(NTP)
・メタンガス発生量 349m
3/日(NTP)
・メタンガス濃度 59%
・メタンガス発生率 0.38m
3/投入kgVTS(NTP)
・バイオガス中のシロキサンD5濃度 1.2mg/m
3
・発電量 656kwh/日
・脱水ケーキ発生量 1.6t/日(含水率78%)
・廃水量 41.5m
3/日
【0089】
以上のように、本発明による下水汚泥濃縮では、機械濃縮してない重力濃縮のみの初沈濃縮汚泥および余剰汚泥の混合生汚泥に対して(TS濃度1.39%)、TS濃度7.5%にまで効率的に濃縮処理でき(汚泥濃縮倍率約5.4倍)、従来から多く適用されている各種機械濃縮設備を省略することが可能である。そして、本発明では大幅に小型化した嫌気性消化装置で濃縮汚泥と蜜柑絞り粕の各固形物量をほぼ等量の混合比率で嫌気性消化処理しても良質なバイオガスを安定的に発生せしめることができる。さらには、発生した嫌気性消化汚泥は実施例3と同様に容易な操作によって低コストで凝集・脱水でき、得られた脱水ケーキ含水率78%は従来と比較して低含水率である。
【0090】
[実施例5]
実施例3及び4で発生した廃液および脱水ケーキについて、有効利用を検討した。本発明の前処理工程にあたる下水汚泥の固液分離から発生した分離液および脱水工程の脱水分離液からはリンの回収、嫌気性消化汚泥濃縮物の脱水工程から発生した脱水ケーキについてはコンポスト化した。
【0091】
<処理条件>
(1)汚泥の固液分離廃液のリン回収(MAP法)
・反応時のpH8.3、Mg濃度を30mg/l以上
・1槽式リアクタ(反応部:直径35cm×高さ2.2m、沈殿部:直径80cm×高さ1.8m、粒径約0.4〜1.0mmの種晶を予め充填)
・リン容積負荷20kg−P/m
3・日
(2)脱水ケーキのコンポスト化
・コンポスト化試験装置 15m
3(高速堆肥化縦型発酵槽)
・脱水汚泥の水分調整 汚泥を機械乾燥して含水率45〜55%
・副資材添加ナシ
・コンポスト化時の通気速度0.15m
3/t・分
<処理結果>
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
以上のように、本発明において実施例3及び4で発生した廃液からはリン回収され、脱水ケーキについてはコンポスト化できて品質上も従来製品(比較例として生ごみ系中温メタン発酵汚泥のコンポスト性状を列挙)と殆ど変わりないことも明らかとなった。コンポスト化にける有機物分解率は、実施例3の汚泥で24%、実施例4では28%だった。なお、脱水ケーキの高位発熱量は、実施例3の汚泥で17MJ/kg−dry、実施例4の汚泥では17.3MJ/kg−dryであることから、この脱水汚泥を機械乾燥して汚泥燃料としても有効活用できる品質である〔燃料化物(造流乾燥化物)の品質基準として、発熱量4000kal/kg以上(16.7MJ/kg以上)とされている〕。