【実施例】
【0022】
以下において、実施例により本発明のアルミニウム合金の鋳造方法を詳細に説明する。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例(本発明例1〜12及び比較例1〜8)
Al−2.3mass%Cu−1.5mass%Mgの組成となるよう、各必要添加元素を純金属、又は、Al母合金より配合した後に溶解炉内で溶解した。成分を調整した溶融アルミニウム合金を溶解炉からトラフ内を通過させ、半連続鋳造鋳型に供給して鋳造した。ψ145mmのビレットを、鋳造速度90mm/minで鋳造した。なお、Al−2.3mass%Cu−1.5mass%Mg合金の液相線温度は647℃であった。
【0025】
表1のS
a/S
A欄に示す比となるよう、トラフの流路の形状を変更した。
【0026】
本発明例1〜12及び比較例2〜8において、超音波ホーンを超音波発信器に取り付け、トラフ内を流動する溶融アルミニウム合金へ予熱した超音波ホーンの先端を浸漬させ、溶融アルミニウム合金に対して超音波振動を印加した。
【0027】
比較例1において、上記超音波ホーンを超音波発信器に取り付け、トラフ内を流動する溶融アルミニウム合金へ予熱した超音波ホーンの先端を浸漬させ、溶融アルミニウム合金に対して超音波振動を印加しなかった。
【0028】
表1の振幅Dとは、超音波振動を印加した際の超音波ホーンの先端の振幅である。
【0029】
なお、この際に使用した超音波ホーンは窒化珪素セラミック製であり、形状は円柱状であり、その直径はWと等しい。表1のホーン幅欄にWを示す。超音波ホーンの振動周波数は20.0kHzであり、超音波の溶融アルミニウム合金中における超音波振動の波長λ
1は200mmであり、超音波ホーン内部の超音波振動の波長λ
2は476mmである。
【0030】
断面aを通過する溶融アルミニウム合金温度が、表1の溶融アルミニウム合金温度T欄に示す温度になるよう、鋳造温度を調整した。
【0031】
表1の平均結晶粒径dとは、上記アルミニウム合金鋳塊の中心からの距離が0,20,40,60mmの位置の各部位の結晶粒径の平均である。結晶粒径とは、アルミニウム合金鋳塊の長手方向断面を光学顕微鏡によって偏光観察し、全観察視野面積と結晶粒の数で結晶粒の円相当径を算出した値となる。なお、観察視野は6mm×8mmとした。
【0032】
表1の微細化程度とは、鋳塊の凝固組織の微細化の程度を評価したものであり、溶融アルミニウム合金に対して超音波振動を印加していない比較例1の平均結晶粒径をd
0としたとき、d
0とdとの比d/d
0を示す。
【0033】
表1の微細化の評価とは、上記の微細化程度を評価したものであり、微細化程度が0.6未満を「○」、微細化程度が0.6以上を「×」とした。
【0034】
表1の標準偏差とは、鋳塊の凝固組織の結晶粒径の均一性を評価したものであり、上記の各部位の結晶粒径の標準偏差である。
【0035】
表1の標準偏差の評価とは、標準偏差を評価したものであり、標準偏差が10μm未満を「○」、標準偏差が10μm以上を「×」とした。
【0036】
表1の異物混入とは、超音波振動の印加による、溶融アルミニウム合金への異物の混入を評価したものであり、異物が混入した場合を「無し」、異物が混入しなかった場合を「有り」とした。
【0037】
表1のその他問題点とは、微細化の評価、標準偏差、及び、異物混入の評価以外の問題点がある場合に記載している。
【0038】
表1の総合評価とは、微細化の評価、標準偏差の評価、異物混入、及び、その他問題点を総合的に評価したものである。微細化の評価欄が「○」、かつ、標準偏差の評価欄が「○」、かつ、異物混入欄が「無し」、かつ、その他問題点が無い場合は総合評価を「○」とした。微細化の評価欄が「○」、かつ、標準偏差の評価欄が「○」、かつ、異物混入欄が「無し」、かつ、その他問題点が有る場合は総合評価を「△」とした。一方で、微細化の評価欄が「×」、標準偏差の評価欄が「×」、異物混入欄が「有り」の項目を、一つ以上を満たす場合は総合評価を「×」とした。
【0039】
本発明例1〜10では、S
A及びS
aの比S
a/S
A、断面aを通過する溶融アルミニウム合金温度、及び、超音波ホーンの先端の振幅が請求の範囲内であることにより、微細化程度は良好であり、標準偏差も良好であり、異物混入も無く、その他問題点もなかった。従って、良好な結果であり、総合評価は「○」となった。
【0040】
本発明例11では、S
A及びS
aの比S
a/S
A、断面aを通過する溶融アルミニウム合金温度、及び、超音波ホーンの先端の振幅が請求の範囲内であることにより、微細化程度は良好であり、標準偏差も良好であり、異物混入も無かったが、Wがλ
2/4より大きいため、超音波発信器の負荷が大きかった。従って、総合評価は「△」となった。
【0041】
本発明例12では、S
A及びS
aの比S
a/S
A、断面aを通過する溶融アルミニウム合金温度、及び、超音波ホーンの先端の振幅が請求の範囲内であることにより、微細化程度は良好であり、標準偏差も良好であり、異物混入も無かったが、Wがλ
2/16より小さいため、超音波ホーンを溶融アルミニウム合金に浸漬させ、超音波振動を長時間印加すると、超音波ホーンが折損した。従って、総合評価は「△」となった。
【0042】
比較例1では、超音波振動を印加していないため、凝固組織が微細化しなかった。従って、総合評価は「×」となった。
【0043】
比較例2では、断面aを通過する溶融アルミニウム合金温度が液相線温度+3℃より大きいため、凝固組織が微細化しなかった。従って、総合評価は「×」となった。
【0044】
比較例3では、断面aを通過する溶融アルミニウム合金温度が液相線温度より小さいため、凝固組織が微細化しなかった。従って、総合評価は「×」となった。
【0045】
比較例4では、微細化程度は良好であり、標準偏差も良好であり、その他問題点も無かったが、超音波ホーンの先端の振幅が40μm(p−p)より大きいため、超音波振動の強度が大きく、トラフを形成する耐火物が削れ、溶融アルミニウム合金に異物が混入した。従って、総合評価は「×」となった。
【0046】
比較例5では、超音波ホーンの先端の振幅が10μm(p−p)より小さいため、超音波振動の強度が小さいため、凝固組織は微細化しなかった。従って、総合評価は「×」となった。
【0047】
比較例6では、微細化程度は良好であり、標準偏差も良好であり、その他問題点も無かったが、S
A及びS
aの比S
a/S
Aが1であるため、超音波ホーンとトラフ表面が接触して、トラフを形成する耐火物が削れ、溶融アルミニウム合金に異物が混入した。従って、総合評価は「×」となった。
【0048】
比較例7では、S
A及びS
aの比S
a/S
Aが0.5より小さいため、凝固組織は微細化しなかった。従って、総合評価は「×」となった。
【0049】
比較例8は、距離Lが1/2λ
1より大きいため、S
a/Sが0.5より小さくなり、凝固組織は微細化しなかった。従って、総合評価は「×」となった。
【0050】
比較例9は、微細化程度は良好であり、標準偏差も良好であり、その他問題点も無かったが、距離Lが1/4λ
1より小さいため、トラフを形成する耐火物が削れ、溶融アルミニウム合金に異物が混入した。従って、総合評価は「×」となった。