特開2016-117388(P2016-117388A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-117388(P2016-117388A)
(43)【公開日】2016年6月30日
(54)【発明の名称】車両の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/06 20060101AFI20160603BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20160603BHJP
   H05F 3/04 20060101ALI20160603BHJP
【FI】
   B60R16/06 P
   B60K11/04 Z
   H05F3/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-257972(P2014-257972)
(22)【出願日】2014年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】兼原 洋治
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
【テーマコード(参考)】
3D038
5G067
【Fターム(参考)】
3D038AC01
3D038AC12
3D038AC15
5G067AA18
5G067DA01
5G067DA14
(57)【要約】
【課題】帯電電荷量を低下させて冷却効率を向上させる。
【解決手段】車両おいて、ラジエータ(2)と、ラジエータ(2)を冷却するためのファン(1a )を備えたファンカバー(1)とを具備する。非導電性壁面上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器(10)を備えている。この自己放電式除電器(10)が、ラジエータ(2)とファンカバー(1)とを接続する接続部の非導電性壁面上に設置され、それによりラジエータ(2)が除電される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータ又はコンデンサの少なくとも一方と、ラジエータ又はコンデンサを冷却するためのファンを備えたファンカバーとを具備しており、ラジエータ、コンデンサおよびファンカバーに正の電荷が帯電する車両の冷却装置において、非導電性壁面上に設置すると該設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器を備えており、ラジエータ又はコンデンサとファンカバーとを接続する接続部の非導電性壁面上に該自己放電式除電器を設置し、それによりラジエータ又はコンデンサを除電するようにした車両の冷却装置。
【請求項2】
該ファンカバーが非導電性の合成樹脂材料からなる請求項1に記載の車両の冷却装置。
【請求項3】
該自己放電式除電器が上記接続部周りのファンカバーの壁面上に設置されている請求項2に記載の車両の冷却装置。
【請求項4】
ラジエータ又はコンデンサとファンカバーとが着脱可能な接続器を介して接続されており、該自己放電式除電器が該接続器上に設置されている請求項1に記載の車両の冷却装置。
【請求項5】
ラジエータのタンクが非導電性の合成樹脂材料から形成されており、ラジエータのタンクがファンカバーに接続されており、該自己放電式除電器が上記接続部周りのラジエータタンクの壁面上に設置されている請求項1に記載の車両の冷却装置。
【請求項6】
該自己放電式除電器は、該非導電性壁面上に導電性接着剤により接着された金属箔からなる請求項1に記載の車両の冷却装置。
【請求項7】
該自己放電式除電器は、自己放電を生じさせるための角部を有している請求項6に記載の車両の冷却装置。
【請求項8】
該自己放電式除電器は、細長い矩形状の平面形状を有している請求項6に記載の車両の冷却装置。
【請求項9】
該自己放電式除電器は、該非導電性壁面上に一体的に形成された導電性薄膜からなる請求項1に記載の車両の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン又はエンジンと関連する部材に放電アンテナ等の放電装置を取り付けて、エンジン部に生じ又は蓄積される高圧電気、静電気等を外部に放電、放出せしめ、それによって燃費を向上させるようにした車両が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−238438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されているように、車両に静電気が帯電すること、およびこの車両に帯電した静電気が車両の運転に何らかの影響を与えていることは、従来より知られている。しかしながら、車両に帯電した静電気が具体的にいかなる理由でどのような影響を車両の運転に与えているかはよく分かっていない。このように車両に帯電した静電気が具体的にいかなる理由でどのような影響を車両の運転に与えているかがよく分からないと、車両への静電気の帯電に対して適切に対処することはできない。
【0005】
そこで、本発明者は,特にラジエータ、コンデンサおよびこれらラジエータおよびコンデンサを冷却するためのファンを備えたファンカバーに注目して、これらラジエータ又はコンデンサに帯電した静電気が具体的にいかなる理由でどのような影響を車両の運転に与えているかを追求した。その追求の結果、本発明者は,ラジエータ又はコンデンサに帯電した静電気が冷却効率に大きな影響を与えていることを見出し、この見出した事実に基づいて、冷却効率を向上させるのに必要な適切な除電手法を見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明によれば、ラジエータ又はコンデンサの少なくとも一方と、ラジエータ又はコンデンサを冷却するためのファンを備えたファンカバーとを具備しており、ラジエータ、コンデンサおよびファンカバーに正の電荷が帯電する車両の冷却装置において、非導電性壁面上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器を備えており、ラジエータ又はコンデンサとファンカバーとを接続する接続部の非導電性壁面上に自己放電式除電器を設置し、それによりラジエータ又はコンデンサを除電するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記自己放電式除電器を、ラジエータ又はコンデンサとファンカバーとを接続する接続部の非導電性壁面上に設置することによりラジエータ又はコンデンサが除電され、それにより冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ファンカバー、ラジエータおよびコンデンサを図解的に示した分解斜視図である。
図2図2Aおよび2Bは、夫々ファンカバーおよびラジエータの正面図である。
図3図3は、図1および2に示されるファンカバーとラジエータとの接続器の側面断面図である。
図4図4Aおよび4Bは、図1および2に示されるファンカバーとラジエータとの接続器を示す図である。
図5図5Aおよび5Bは、ラジエータのコアにおける空気流を説明するための図である。
図6図6Aおよび6Bは、空気流の変化を説明するための図である。
図7図7A、7Bおよび7Cは、自己放電式除電器を示す図である。
図8図8Aおよび8Bは、自己放電式除電器による除電作用を説明するための図である。
図9図9Aおよび9Bは、自己放電作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、ファンカバー1、ラジエータ2およびコンデンサ3を具備した車両の冷却装置を図解的に表した分解斜視図を示している。
図1を参照すると、ファンカバー1にはファン1a と、ファン1a を駆動するための電気モータ1b (図2A)とが取り付けられている。このファンカバー1は実際には複雑な構造を有しているが、図1ではこのファンカバー1が極めて簡略化して示されている。なお、図1に示される実施例では、このファンカバー1は非導電性の合成樹脂材料から形成されている。
【0010】
一方、図1に示されるラジエータ2はエンジン冷却水用のラジエータを示しており、図1に示される実施例では、このラジエータ2は、上部および下部タンク2a と、これら上部および下部タンク2a 間に配置されたコア2b から構成される。図1に示される実施例では、上部および下部タンク2a は非導電性の合成樹脂材料から形成されており、コア2b は金属材料から形成されている。また、図1に示される実施例において、コンデンサ3はエアコンディショナ用のコンデンサであって、このコンデンサ3は、上部および下部タンク3a と、これら上部および下部タンク3a 間に配置されたコア3b から構成される。このコンデンサ3は全体が金属材料から形成されている。更に、図1に示される実施例では、コンデンサ3の下側に、電気モータを備えたハイブリッドエンジンに用いるインバータ、コンバータラジエータ4が配置されている。なお、4a はインバータ、コンバータラジエータ4のコアを示している。
【0011】
ラジエータ2は 例えばゴム材料からなる支持部材を介して車両ボディー又はシャシにより支持されている。このラジエータ2の一側には、ファンカバー1およびラジエータ2の上端部両側に配置された連結器5、およびファンカバー1およびラジエータ2の下端部両側に配置された連結器6によってファンカバー1が連結され、ラジエータ2の他側には、コンデンサ3の上端部両側および下端部両側に配置された連結器7によってコンデンサ3がインバータ、コンバータラジエータ4と共に連結される。ファン1a が電気モータ1b によって駆動されると、ファン1a の吸引力により外気が最初はコンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4内を流通せしめられ、このとき夫々コンデンサ3内およびインバータ、コンバータラジエータ4内を流れる冷媒が冷却される。次いで、外気はラジエータ2内を流通せしめられ、このときラジエータ2内の冷却水が冷却される。
【0012】
図2Aは、図1の矢印Aに沿ってみたファンカバー1の正面図を示しており、図2Bは、図1の矢印Bに沿ってみたラジエータ2の正面図を示している。図2Aに示されるようにファンカバー1の上端部両側からは上方に向けて薄板状のフランジ8a が延びており、このフランジ8a 上に連結器5の片方が形成されている。一方、図2Aに示されるようにファンカバー1の下端部両側からは下方に向けて薄板状のフランジ8b が延びており、このフランジ8b 上に連結器6の片方が形成されている。図3に連結器5の平面断面図を示す。図3に示されるように、この連結器5はフランジ8a に形成されている開口8c とこの開口8c 内にスナップ嵌合しうる一対の弾性フック部材8d から構成される。この一対の弾性フック部材8d は非導電性の合成樹脂材料から形成されており、ラジエータ2の上部タンク2a に一体形成されている。
【0013】
図4Aおよび4Bに, 連結器6を示す。連結器6は、ラジエータ2の下部タンク2a に形成されかつ図4Aに示されるような拡大頭部と小径軸部とを有する掛け止め部8f と,ファンカバー1のフランジ8b の下端部に形成されかつ小径軸部に嵌合可能なU字型溝部8e とにより構成される。この掛け止め部8f は非導電性の合成樹脂材料から形成されており、ラジエータ2の下部タンク2a に一体形成されている。ファンカバー1をラジエータ2に固定する際には、最初にファンカバー1のフランジ8b の下端部に形成されたU字型溝部8e を、ラジエータ2の下部タンク2a に形成された掛け止め部8f の小径軸部に嵌着し、次いで、ラジエータ2の上部タンク2a に一体形成されている一対の弾性フック部材8d にファンカバー1のフランジ8a に形成されている開口8c を嵌め込むことによって、ファンカバー1がラジエータ2に連結される。
【0014】
さて、車両が走行せしめられると、タイヤの各部が路面に対して接触、剥離を繰り返すことによって静電気が発生し、またエンジンの構成部品やブレーキ装置の構成部品が相対運動することによっても静電気が発生する。また、車両の走行時に空気が車両の外周面上を摩擦接触しつつ流れることによっても静電気が発生する。これらの発生した静電気によって車両のボディー、エンジン等には電荷が帯電し、ファンカバー1、ラジエータ2、コンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4にも電荷が帯電する。更に、ファンカバー1により支持されているファン用電機モータ1b が回転すると、それによって静電気が発生する。その結果、非導電性合成樹脂材料からなるファンカバー1の表面上には多量の電荷が帯電することになる。
【0015】
このようにファンカバー1には多量の電荷が帯電すると、ファンカバー1の表面の電圧値が高くなり、ファンカバー1の表面の電圧値が高くなると、連結器5,6を介してファンカバー1に連結されているラジエータ2の表面の電圧値が高くなる。ラジエータ2の表面の電圧値が高くなると、連結器7を介してラジエータ2に連結されているコンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4の表面の電圧値が高くなる。事実、ファンカバー1の表面上、ラジエータ2の表面上、コンデンサ3の表面上、およびインバータ、コンバータラジエータ4の表面上には、正の電荷が帯電することが確認されており、しかもファンカバー1、ラジエータ2、コンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4の表面の電圧値は1000(v)以上の高電圧になる場合があることが確認されている。
【0016】
ところで、非導電性合成樹脂材料からなる薄肉壁の表面の電圧値が高くなると、薄肉壁の表面に沿う空気の流れが変化することが確認されている。そこで、まず初めに、薄肉壁の表面に沿う空気の流れが、薄肉壁の表面の電圧値によってどのように変化するかということについて、本発明者が実験により確認した現象から説明を行う。図6Aは、正の電荷が帯電している薄肉壁9の表面に沿って空気が流れている場合を示している。この場合、空気は正に帯電する傾向にあるので、図6Aは、正に帯電した空気が、正の電荷が帯電している薄肉壁9の表面に沿って流れている場合を示している。さて、図6Aにおいて、実線の矢印は、薄肉壁9の表面の電圧値が低い場合を示しており、この場合には空気は薄肉壁9の表面に沿って流れる。これに対し、破線の矢印は、薄肉壁9の表面の電圧値が高い場合を示しており、この場合には空気は薄肉壁9の表面が下方に向け湾曲したところで、即ち空気流が薄肉壁9の表面から離れやすいところで、薄肉壁9の表面から離れるように流れる。
【0017】
図6Bは、図6Aにおいて薄肉壁9の表面に沿って流れる空気の主流の流速U と、薄肉壁9の表面から距離Sだけ離れた位置での流速Uとの速度比U/U のX地点(図6A)における実測値を示している。なお、図6Bにおいて黒塗りの菱形で示される各点は、薄肉壁6の表面に正の電荷が帯電していない場合を示しており、図6Bにおいて黒塗りの四角形で示される各点は、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合を示している。図6Bから、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合に比べて、速度境界層が薄肉壁9の表面から離れ、従って薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には、図6Aにおいて破線の矢印で示されるように、空気が薄肉壁6の表面から離れるように流れていることがわかる。
【0018】
上述したように、空気は正に帯電する傾向があり、従って空気の一部は正の空気イオン(丸内に+で表示)となっている。従って、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していると正の空気イオンと薄肉壁9の表面との間には斥力が作用するために、図6Aにおいて破線の矢印で示されるように、空気は薄肉壁9の表面が下方に向け湾曲したところで、即ち空気流が壁面9の表面から離れやすくなったところで、薄肉壁9の表面から離れるように流れることになる。このように薄肉壁9の表面への正の電荷の帯電により薄肉壁9の表面に沿って流れる空気流が薄肉壁9の表面から離れることは実験により確かめられており、この場合、薄肉壁9の表面の電圧値が高くなるほど、薄肉壁9の表面に沿って流れる空気流が薄肉壁9の表面から離れることがわかっている。
【0019】
また、薄肉壁9の表面形状が空気流の剥離を生じやすい形状を有している場合において、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していないときには空気流の剥離が生じないが、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、空気流の剥離が生じる場合があることが確認されている。更に、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合に比べて、空気流の剥離の大きさが増大することも確認されている。このように、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、電気的な反発力に基づいて、空気流が薄肉壁9の表面から離れ、或いは空気が剥離を生じることが確かめられている。
【0020】
このように、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、空気の流れが本来意図していた流れと異なる流れになってしまう。この場合、薄肉壁9の表面に帯電している正の電荷の全部或いは一部を除去し、即ち薄肉壁9の表面を除電し、薄肉壁9の表面の電圧値を低下させると、薄肉壁9の表面に沿う空気の流れを、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合の空気の流れに戻すことができる。即ち、除電することによって、空気の流れを本来意図していた流れに戻すことができることになる。そこで本発明者は、空気の流れを本来意図していた流れに戻すための簡便な除電方法について検討し、自己放電式除電器を用いた簡便な除電方法を見出したのである。この自己放電式除電器の一例が図7Aから図7Cに示されている。なお、図7Aおよび図7Bは、代表的な自己放電式除電器10の平面図および側面断面図を夫々示しており、図7Cは、別の自己放電式除電器10の側面断面図を示している。
【0021】
図7Aおよび図7Bに示される例では、この自己放電式除電器10は細長い矩形状の平面形状をなすと共に、薄肉壁9の表面上に導電性接着剤12により接着せしめられる金属箔11からなる。一方、図7Cに示される例では、この自己放電式除電器10は薄肉壁9の表面上に一体的に形成された導電性薄膜からなる。本発明では、この自己放電式除電器10を用いてファンカバー1の一部、ラジエータ2、コンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4を除電するようにしている。なお、これらファンカバー1の一部、ラジエータ2、コンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4の除電方法について説明を行う前に、本発明による、自己放電式除電器10を用いた基本的な除電の仕方について、自己放電式除電器10により薄肉壁9の表面を除電する場合を例にとって、先に説明する。
【0022】
図8Aは、図7Aおよび7Bに示される自己放電式除電器10を薄肉壁9の表面に設置した場合を示している。このように自己放電式除電器10を薄肉壁9の表面に設置すると、図8Bに示されるように、自己放電式除電器10の設置箇所を中心とした破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の帯電電荷量が低下せしめられ、その結果図8Bにおいて破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の電圧が低下せしめられることが確認されている。
【0023】
この場合、自己放電式除電器10により薄肉壁9の表面の除電が行われるときの除電メカニズムについては明らかではないが、おそらく自己放電式除電器10からの正の電荷の放電作用によって自己放電式除電器10の設置箇所周りの薄肉壁9の表面の除電作用が行われているものと推測される。次に、薄肉壁9の拡大断面図を示す図9Aと、図9Aに示す自己放電式除電器10の端部の拡大図を示す図9Bを参照しつつ、薄肉壁9の表面において行われていると推測される除電メカニズムについて説明する。
【0024】
前述したように、薄肉壁9は非導電性の合成樹脂材料から形成されている。このように薄肉壁9が非導電性の合成樹脂材料から形成されていると、薄肉壁9の内部には電荷が帯電せず、薄肉壁9の表面に電荷が帯電する。なお、前述したように、図1に示されるファンカバー1やラジエータ2のタンク2a の表面には正の電荷が帯電することが確かめられている。本発明による実施例では、ラジエータ2等を除電するためにファンカバー1等の表面の一部を除電するようにしており、従ってファンカバー1等の表面の一部を除電する場合を想定して、図9Aには、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合が示されている。一方、前述したように、自己放電式除電器10は、導電性接着剤12により薄肉壁9の表面に接着された金属箔11からなる。金属箔11および導電性接着剤12は共に導電性であり、従って、金属箔11の内部、即ち自己放電式除電器10の内部には正の電荷が帯電することになる。
【0025】
ところで、自己放電式除電器10の電圧は自己放電式除電器10の周りの薄肉壁9の表面の電圧とほぼ等しくなっており、従って自己放電式除電器10の電圧はかなり高くなっている。一方、前述したように、空気は正に帯電する傾向があり、従って空気の一部は正の空気イオン(丸内に+で表示)となっている。この場合、空気イオンの電位と自己放電式除電器10の電位とを比べると、自己放電式除電器10の電位の方が空気イオンの電位に比べてかなり高くなっている。従って、空気イオンが図9Bに示されるように、例えば自己放電式除電器10の角部13に近づくと、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間の電界強度が高くなり、その結果、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずることになる。
【0026】
空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずると、図9Bに示されるように、空気イオンの電子の一部が自己放電式除電器10内に移動するため、空気イオンの正の帯電量が増大し(丸内に++で表示)、自己放電式除電器10内に移動した電子によって自己放電式除電器10に帯電している正の電荷が中和される。一旦、放電が行われると放電が生じやすくなり、別の空気イオンが自己放電式除電器10の角部13に近づくと空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間でただちに放電が生ずることになる。即ち、自己放電式除電器10の周りの空気が移動していると、空気イオンが次から次へと自己放電式除電器10の角部13に近づき、従って空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間で継続的に放電が生ずることになる。
【0027】
空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間で継続的に放電が生ずると、自己放電式除電器10に帯電している正の電荷が次から次へと中和され、その結果自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少する。自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少すると、自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面上に帯電している正の電荷が自己放電式除電器10内に移動し、従って自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面上に帯電している正の電荷も減少する。その結果、自己放電式除電器10および自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面の電圧が徐々に低下していくことになる。このような自己放電式除電器10および自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面の電圧の低下作用は、自己放電式除電器10の電圧が低くなって放電作用が停止するまで継続し、その結果、図8Bに示されるように、自己放電式除電器10の設置箇所を中心とした破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の電圧が低下することになる。
【0028】
一方、前述したように、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずると、図9Bに示される如く、正の帯電量の増大した空気イオン(丸内に++で表示)が生成され、この正の帯電量の増大した空気イオンは周囲の空気中に飛散する。この正の帯電量の増大した空気イオンの量は、自己放電式除電器10の周囲を流動する空気の量に比べれば極めて少量である。なお、自己放電式除電器10の周りの空気が停滞しており、空気イオンが移動しない場合には、継続して放電が生じず、薄肉壁9の表面の電圧は低下しない。即ち、薄肉壁9の表面の電圧を低下させるには、自己放電式除電器10の周りの空気を流動させることが必要となる。
【0029】
空気イオンと自己放電式除電器10間の放電は、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間、或いは空気イオンと自己放電式除電器10の周辺部の尖端部14との間で生ずる。従って、空気イオンと自己放電式除電器10との間で放電を生じさせ易くずるには、自己放電式除電器10の周辺部に角部13に加え、多数の尖端部14を形成しておくことが好ましいといえる。従って、自己放電式除電器10を作成する際には、大きな寸法の金属箔を切断することによって金属箔11を作成する際に、切断面に尖端部14のようなバリが生ずるように、金属箔を切断することが好ましいことになる。
【0030】
図7Aおよび7Bに示される自己放電式除電器10の金属箔11は、延性金属、例えばアルミニウム又は銅からなり、本発明による実施例では金属箔11はアルミニウム箔からなる。また、本発明による実施例において用いられているアルミニウム箔11の長手方向の長さは50mmから100mm程度であり、厚みは0.05mmから0.2mm程度である。この場合、図8Bにおいて電圧の低下する破線で示す限られた範囲の直径Dは、150mmから200mm程度となる。なお、自己放電式除電器10として、アルミニウム箔11に導電性接着剤12の層が形成されているアルミニウムテープを切断して用いることもできる。更に、自己放電式除電器10は、図7Cに示されるように、薄肉壁9の表面上に一体的に形成された導電性薄膜から構成することもできる。この場合でも、導電性薄膜の周辺部には、図9Bに示されるような角部13に加え、多数の尖端部14を形成しておくことが好ましい。
【0031】
さて、前述したように、ファンカバー1、ラジエータ2、コンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4の表面の電圧値は1000(v)以上の高電圧になることが確認されている。この場合、図6Aおよび6Bに示される実験結果から判断すると、この高電圧によりラジエータ2のコア2b 、コンデンサ3のコア3b 、およびインバータ、コンバータラジエータ4のコア4a 内を流れる外気の流れ、即ち空気の流れが変化せしめられており、それにより冷却効率に影響が出ていると推測される。そこで、冷却効率について実験を行った結果、ラジエータ2のコア2b 、コンデンサ3のコア3b 、およびインバータ、コンバータラジエータ4のコア4a の外周表面の電圧値が高電圧になると冷却効率が低下することが判明し、この場合、ラジエータ2とファンカバー1とを接続する接続部の非導電性壁面上に自己放電式除電器10を設置すると冷却効率が向上することが判明したのである。
【0032】
そこでまず初めに、ラジエータ2のコア2b の表面の電圧値が高電圧になった場合を例にとって、冷却効率が低下する理由について、図5Aおよび5Bを参照しつつ簡単に説明する。なお、図5Aは、ラジエータ2のコア2b の一部断面拡大斜視図を示しており、図5Bは、図5AのB−B線に沿ってみた縦断面図を示している。さて、図5Aおよび5Bにおいて、20は互いに間隔を隔てて配置された水管を示しており、21は水管20の間に配置された波型冷却フィンを示している。空気は波型冷却フィン21の間を流れ、それにより水管20内を流れる冷却水が冷却される。
【0033】
図5Bにおいて実線の矢印は、ラジエータ2のコア2b の表面の電圧、即ち水管20および波型冷却フィン21の表面の電圧が低いときの空気の流れを示しており、このとき空気は波型冷却フィン21の表面に沿って流れる。しかしながら、静電気の帯電によりラジエータ2のコア2b の表面の電圧、即ち水管20および波型冷却フィン21の表面の電圧が高くなると、図5Bにおいて破線の矢印で示されるように、波型冷却フィン21の表面に沿って流れる空気は、電気的な反発力によって、波型冷却フィン21の表面から引き離され、その結果、空気は波型冷却フィン21の表面から離れたところを流れざるを得なくなる。
【0034】
このように空気が波型冷却フィン21の表面から離れたところを流れざるを得なくなると、波型冷却フィン21の表面から空気への熱伝達率が低下し、その結果、水管20内を流れる冷却水の温度を良好に低下させることができなくなる。従って、冷却効率が低下することになる。この場合、ラジエータ2のコア2b の表面の電圧、即ち水管20および波型冷却フィン21の表面の電圧を低下させれば、図5Bにおいて実線で示されるように、空気が波型冷却フィン21の表面に沿って流れるようになり、その結果、波型冷却フィン21の表面から空気への熱伝達率が上昇するために、冷却効率が向上せしめられることになる。そこで本発明では、ラジエータ2のコア2b の表面の電圧、即ち水管20および波型冷却フィン21の表面の電圧を低下させるために、自己放電式除電器10をラジエータ2とファンカバー1とを接続する接続部に設置するようにしている。この場合、本発明による一実施例では、図2Aに示されるように、自己放電式除電器10はファンカバー1のフランジ8a ,8b の外壁面上に設置される。
【0035】
このように自己放電式除電器10がファンカバー1のフランジ8a ,8b の外壁面上に設置されると、自己放電式除電器10による除電作用によって、自己放電式除電器10を中心とした一定範囲内の帯電電荷が除去され、自己放電式除電器10を中心とした一定範囲内の電圧が低下する。その結果、ファンカバー1とラジエータ2とを接続する接続部の電圧が低下し、図1および図2Aに示される実施例では、ファンカバー1とラジエータ2とを接続する接続器5,6の電圧が低下する。ファンカバー1とラジエータ2とを接続する接続器5,6の電圧が低下すると、接続器5,6を介してファンカバー1に接続されているラジエータ2の電圧が低下し、その結果ラジエータ2のコア2a の電圧が低下することになる。
【0036】
ラジエータ2のコア2a の電圧が低下すると、水管20および波型冷却フィン21の表面の電圧が低下し、その結果、図5Bにおいて実線で示されるように、空気が波型冷却フィン21の表面に沿って流れるようになる。従って、波型冷却フィン21の表面から空気への熱伝達率が高くなるために、冷却効率が向上せしめられることになる。一方、前述したように、ファンカバー1により支持されたファン用電気モータ1b が駆動されると静電気が発生し、従って、ファン用電気モータ1b が駆動され続けているとファンカバー1には多量の正の電荷が帯電し続けることになる。その結果。ファンカバー1の電圧値は高電圧に維持されることになる。
【0037】
しかしながら、このようにファンカバー1の電圧値が高電圧に維持されたとしても、自己放電式除電器10がファンカバー1のフランジ8a ,8b の外壁面上に設置されていると、自己放電式除電器10を中心とした一定範囲内のファンカバー1の表面の電圧が低下せしめられる。従って、このとき、この一定範囲内に位置する接続器5,6の電圧は低下し、それによりラジエータ2の電圧が低下せしめられる。即ち、自己放電式除電器10により接続器5,6の電圧が低下せしめられるとラジエータ2の電圧値はファンカバー1の電圧値に比べて大きく低下せしめられ、それによりラジエータ2の冷却効率が向上せしめられることになる。
【0038】
一方、図2Bに示されるように、自己放電式除電器10を各接続器5,6周りのラジエータ2の上部および下部タンク2a の外壁面上に設置しても、自己放電式除電器10によって接続器5,6の電圧を低下させることができる。従って、図2Bに示されるように、自己放電式除電器10を各接続器5,6周りのラジエータ2の上部および下部タンク2a の外壁面上に設置しても、ラジエータ2のコア2a の電圧値を低い電圧値に維持することができ、従ってこの場合でも、ラジエータ2の冷却効率が向上せしめられることになる。
【0039】
また、自己放電式除電器10を接続器5,6の外壁面に設置しても、ラジエータ2のコア2a の電圧値を低い電圧値に維持することができ、従って、ラジエータ2の冷却効率が向上せしめられることになる。即ち、ファンカバー1とラジエータ2とを接続する接続部に自己放電式除電器10を設置すれば、接続器5,6の電圧を低下させてラジエータ2の電圧を低下させることができる。従って、本発明による実施例では、ラジエータ2とファンカバー1とを接続する接続部の非導電性壁面上に自己放電式除電器10を設置するようにしている。なお、ラジエータ2の電圧が低下すると、接続器7を介してラジエータ2に連結されたエアコンデンサ3の電圧も低下し、インバータ、コンバータラジエータ4の電圧も低下する。従って、エアコンデンサ3のコア2b およびインバータ、コンバータラジエータ4のコア4a における空気への熱伝達率が上昇し、その結果、エアコンデンサ3およびインバータ、コンバータラジエータ4における冷却効率が向上せしめられることになる。
【0040】
さて、上述したように、本発明による実施例では、ラジエータ2とファンカバー1とを接続する接続部の非導電性壁面上に自己放電式除電器10を設置するようにしている。しかしながら、車両の型式によっては、ラジエータ2にファンカバー1を接続せず、コンデンサ3を冷却するためにコンデンサ3に直接、ファンカバー1を連結する場合もある。この場合には、コンデンサ3とファンカバー1とを接続する接続部の非導電性壁面上に自己放電式除電器10が設置される。なお、車両の型式によっては、インバータ、コンバータラジエータ4を用いない場合もある。
【0041】
従って、本発明によれば、ラジエータ2又はコンデンサ3の少なくとも一方と、ラジエータ2又はコンデンサ3を冷却するためのファン1b を備えたファンカバー1とを具備しており、ラジエータ2、コンデンサ3およびファンカバー1に正の電荷が帯電する車両において、非導電性壁面上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器10を備えており、ラジエータ2又はコンデンサ3とファンカバー1とを接続する接続部の非導電性壁面上に自己放電式除電器10を設置し、それによりラジエータ2又はコンデンサ3を除電するようにしている。
【0042】
この場合、本発明による一実施例では、自己放電式除電器10が上述の接続部周りのファンカバー1の壁面上に設置される。また、ラジエータ2又はコンデンサ3とファンカバー1とが着脱可能な接続器5,6を介して接続されており、本発明による別の実施例では、自己放電式除電器10がこれら接続器5,6上に設置されている。また、ラジエータ2のタンク2a が非導電性の合成樹脂材料から形成されると共にラジエータ2のタンク2a がファンカバー1に接続されており、本発明による更に別の実施例では、自己放電式除電器10が上述の接続部周りのラジエータタンク2a の壁面上に設置される。
【符号の説明】
【0043】
1 ファンカバー
2 ラジエータ
3 コンデンサ
4 インバータ、コンバータラジエータ
5,6,7 接続器
10 自己放電式除電器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9