特開2016-117615(P2016-117615A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-117615光ファイバ母材製造装置のガス供給ノズルとこれを使用した光ファイバ母材製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-117615(P2016-117615A)
(43)【公開日】2016年6月30日
(54)【発明の名称】光ファイバ母材製造装置のガス供給ノズルとこれを使用した光ファイバ母材製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20160603BHJP
【FI】
   C03B37/018 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-258162(P2014-258162)
(22)【出願日】2014年12月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(72)【発明者】
【氏名】西川 慎二
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朋也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】Edson 晴彦 関谷
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021EA02
4G021EB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】MCVD法を用いて希土類が添加された光ファイバ母材を製造する際、先端への反応生成物の付着による汚れや、母材のコアへの不純物混入を抑制するガス供給ノズルおよび光ファイバ母材製造装置を提供する。
【解決手段】加熱ヒータ11を中心軸として、間隔をおいて内側筒部12と少なくとも1つの外側筒部13を同心円状に設けることで、反応性ガス9a流路14と添加剤ガス9b流路15とが形成されたガス供給ノズルにおいて、内側筒部12の先端部を外側筒部13の先端部より飛び出させる光ファイバ母材製造装置。内側筒部12の先端に先細りのテーパー状になった石英ガラス製のキャップを設けられているガス供給装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MCVD法によって光ファイバ母材を製造する装置に使用されるガス供給ノズルであって、該ガス供給ノズルは、加熱ヒータを中心軸として、間隔をおいて内側筒部と少なくとも1つの外側筒部を同心円状に設けることで、ガラススート生成用の反応性ガス流路と、添加剤ガス流路とがそれぞれ形成されており、該内側筒部の先端部は、該外側筒部の先端部より飛び出した位置に存在することを特徴とする、ガス供給ノズル。
【請求項2】
該内側筒部の先端に、キャップが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
該キャップの先端が先細りのテーパー状になっていることを特徴とする、請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
該キャップが石英ガラス製であることを特徴とする、請求項3または4に記載のガス供給装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のガス供給装置を使用した光ファイバ母材製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MCVD法によって光ファイバ母材を製造する装置に用いられる、原料ガスの供給ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ、特に石英を主成分とする光ファイバは、コア及びクラッドが形成された棒状の光ファイバ母材を製造し、この母材を加熱線引きすることで製造される。この光ファイバ用母材を合成する方法の1つにMCVD法(Modified Chemical Vapor Deposition)がある。
【0003】
MCVD法による従来の光ファイバ母材製造装置1の構成を図1に示す。
図1において、2はクラッドとなるガラス管(石英管)、3は石英管1の両端を把持するチャック、4は石英管1内にその一端部側からガラススート生成用の反応性ガス9a(原料ガス)を供給するためのガス供給ノズル、5はガス排気管、6はガラス管2を加熱するための加熱源(バーナー)、7はチャック3を支える支柱、8は支柱6を支えると共に、加熱源6が設置される基台である。
チャック3はガラス管2を回転可能とする構造をしており、加熱源6はガラス管2の長さ方向に往復移動できるよう基台8上に設けられている。
【0004】
図2に、MCVD法による光ファイバ母材製造方法の説明図を示す。
ガラス管2を回転させながら、加熱源6をガラス管2の長さ方向に往復移動させてガラス管2を加熱し、ガラス管2の一端部側からガラススート生成用の反応性ガス9aであるSiCl 、GeCl 、Oなどを供給する。反応性ガスが加熱によって気相酸化反応を起こし、SiOやGeOなどのガラス微粒子が生成する。このガラス微粒子はガラス管2の内壁に堆積し、透明ガラス化され、光ファイバ母材のコアとなるガラス層10が形成される。
【0005】
反応性ガスの気相酸化反応により、Clを主体とする排ガスが生成し、この排ガスはガラス管2の他端からガス排気管5を通じて排気される。ガラス層10の堆積が終了する
と、反応性ガス9aの供給を停止し、加熱源6によりガラス管2を強熱し、ガラス管2を中心軸方向につぶして棒状の光ファイバ母材とする。
ガラス管2に供給する反応性ガスの成分、組成を変化させることにより、屈折率分布など、所望の特性を有する光ファイバ母材が得られることになる。
【0006】
近年、金属加工用途などのためファイバレーザ装置の研究開発が盛んとなっている。ファイバレーザ装置においては、レーザ増幅器として、コアにYb、Erなどのレーザ活性希土類元素を添加した増幅用ファイバが使用される。
この増幅用光ファイバは高エネルギーを有するレーザに対する耐久性が要求されるため、石英ガラスが使用されることが多く、製造にはMCVD法が使用される。
【0007】
コアに希土類元素を添加するためには、ガラススート生成用の反応性ガスを供給する際に、希土類元素のガスを同時に供給する必要がある。
コアに添加剤を入れるために複数の種類のガスを供給する方法として、特許文献2に記載の方法が知られている。特許文献2においては、加熱ヒータを中心軸として、間隔をおいて内側筒部と外側筒部を同心円状に設けることで、複数のガス流路が形成されたガス供給ノズルを使用し、反応性ガスであるSiClガス、Oガスと共に、添加剤ガスであるAlClガスを供給して、ガラス層にAlを添加している。
【0008】
ところで、加熱源6がガス供給ノズル4に接近した際、ガス供給ノズル4の先端付近で反応性ガス9aが反応し、反応生成物がガス供給ノズル4先端に付着することがある。
付着量が多くなると、ガスの供給の妨げになる他、付着物がガス供給ノズル4から剥離場合は、ガラス層の中に不純物として混入することもある。
特に、添加剤ガスも供給される場合は、添加剤も反応に関わることになり、反応生成物は単純なガラス微粒子とならないため、不純物としての悪影響が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−1328号公報
【特許文献2】特開2010−155780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、MCVD法を用いて光ファイバ母材を製造する際、ガス供給ノズル先端への反応生成物の付着や、ガラス層への不純物混入を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、加熱ヒータを中心軸として、間隔をおいて内側筒部と少なくとも1つの外側筒部を同心円状に設けることで、ガラススート生成用の反応性ガス流路と、添加剤ガス流路とが形成されたガス供給ノズルにおいて、内側筒部の先端部を、外側筒部の先端部より飛び出した位置とすることで、従来の問題を解消できることを究明した。
【0012】
本発明によって提供されるガス供給ノズルは、加熱ヒータを中心軸として、間隔をおいて内側筒部と少なくとも1つの外側筒部を同心円状に設けることで、ガラススート生成用の反応性ガス流路と、添加剤ガス流路とがそれぞれ形成されていると共に、内側筒部の先端部は、外側筒部の先端部より飛び出した位置に存在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス供給ノズルにおいては、以下に記載した優れた効果が期待できる。

(1)内側筒部の先端部を飛び出させることにより、各ガスがガラス管に供給される位置が変化するため、外側筒部先端部から内側筒部先端部に掛けての範囲で、全てのガスが関係する反応が発生しにくくなり、ガス供給ノズル先端付近における反応生成物の付着を抑制することができる。

(2)これに伴い、ガラス層への不純物の混入も抑制できる。

(3)内側筒部の先端部が飛び出すことで、後述のキャップを容易に設けることが可能となり、このキャップが反応生成物の付着抑制効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】MCVD法を使用した、従来の光ファイバ母材製造装置である。
図2】MCVD法による光ファイバ母材製造の説明図である。
図3】本発明のガス供給ノズルの基本構成である。
図4】本発明のガス供給ノズルであり、キャップを設けたものである。
図5】先端先細りテーパー状のキャップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図3において、11は加熱ヒータ、12は内側筒部、13は外側筒部、14は反応性ガス流路、15は添加剤ガス流路である。
本発明で特徴的なことは、内側筒部12の先端部を、外側筒部13の先端部より飛び出させたことである。
【0016】
内側筒部12の先端部が飛び出ることにより、反応性ガス流路14の出口と添加剤ガス流路15の出口が、ガラス管2の長さ方向の異なる場所に形成され、各ガス流路を通る各ガスの、ガラス管2への供給位置が変化することになる。
【0017】
反応性ガス流路14を通じてSiCl、GeCl、Oの混合ガス(反応性ガス9a)を、添加剤ガス流路15を通じて希土類元素ガス(添加剤ガス9b)を供給する場合、添加剤ガス流路15の出口から反応性ガス流路14の出口にかけての領域、すなわち内側筒部12が外側筒部13から飛び出している領域Aでは、内側筒部12の周囲には実質的に希土類元素ガスのみが存在する状態となる。
また加熱源6がガス供給ノズルに接近する際も、接近するのは内側筒部12の先端付近までであるので、領域Aに存在するガスは十分に加熱されず、領域Aにおいては反応が発生しにくい。
この結果、ガス供給ノズル先端付近への反応生成物の付着・堆積を抑制することができ、堆積が無くなることでガラス層への不純物混入も抑制できる。
【0018】
内側筒部12を飛び出させることによって、領域Aにおける反応生成物の付着を抑制できるが、加熱源6が接近し、かつ反応性ガス流路14、添加剤ガス流路15からそれぞれ供給されるガスが混合して存在する内側筒部12の先端部においては反応が起きやすく、反応生成物も付着しやすい。これを改善するために内側筒部12の先端に、キャップ16を設けるのが好ましい。
内側筒部12の先端にキャップ16を設けることで、加熱源6が接近した際に特に反応が起きやすい領域付近での反応生成物の付着を抑制できる。
【0019】
キャップ16を交換可能な状態で設けることで、長期間使用してキャップ16上への反応生成物の堆積が進行した場合でも、キャップ16の交換によって堆積した反応生成物を容易に除去することができる。
【0020】
キャップ16の形状は図5に示すような先端先細りのテーパー状とするのが好ましい。
キャップ16の形状を先端先細りのテーパー状とすることで、反応性ガス流路14から供給されるガスと添加剤ガス流路15から供給されるガスとが、ガス供給ノズル先端付近で混合しにくくなり、ノズル先端付近における、各供給ガスが関わる不用意な反応を抑制することができる。
【0021】
キャップ16の材料は特に限定されないが、内側筒部12の材料よりも反応生成物が付着しにくいものが好ましく、耐熱性、加工性も考慮すると、石英ガラス製とするのが好ましい。
石英ガラス製のキャップ16とすることで、必要十分な耐熱性を確保でき、石英ガラス製光ファイバ母材の製造に用いられるMCVD装置においては、キャップ16の成分が不純物として母材に混入した場合でも、同系統の材料であるため、母材への悪影響を最小限に抑える効果も得ることができる。
なお、キャップ16の寸法は、内側筒部12の外径や、ガスの流量に応じて、適宜好ましいものとすれば良い。
【実施例】
【0022】
以下、本発明のガス供給装置を使用して、MCVD法により光ファイバ母材を製造した一例を示す。
【0023】
図4に示したように、MCVD法により、石英管の内壁にガラス微粒子を堆積させてガラス層を形成し、光ファイバ母材の製造を行った。
内側筒部の先端には、基端部の内径が内側筒部の外径に略等しく、先端部の内径が内側筒部の外径の半分となっている、テーパー形状のシリカガラス製キャップを被せた。
図4に示されていない、MCVD法に必要な装置は、公知のものから適宜選択して使用する。
【0024】
加熱ヒータで加熱しながら、SiCl、GeCl、Oの混合ガスを、反応性ガス流路を通じてガラス管内へ供給すると共に、希土類元素ガスとしてYbを含むガスを、添加剤ガス流路を通じてガラス管内へ供給した。
ガス中の成分濃度、ガス流量は、所望する光ファイバ母材の特性に応じて、適宜選択する。
【0025】
光ファイバ母材の製造中、図3に示した領域Aに相当する部分、及びキャップの表面を観察した所、反応生成物の付着は確認されず、内側筒部を飛び出させたこと、及びその先端にキャップを設けることによる、ガス供給ノズル先端への反応生成物付着抑制効果が確認できた。
【0026】
以上の方法で製造した光ファイバ母材を光ファイバへと加工し、特性を評価したところ、コア内への不純物の混入による悪影響は確認されず、ファイバレーザ装置のレーザ増幅器として使用するのに好適な増幅用光ファイバが得られた。
【0027】
以上の例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明のガス供給装置は、MCVD法に使用することを想定したものだが、ノズルが同軸状となっており、ノズル先端付近で反応が発生し、反応生成物がノズルに堆積する環境においても、中心ノズルの飛出し量、キャップの材料、形状等を適宜変更して、好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 光ファイバ母材製造装置
2 ガラス管
3 チャック
4 ガス供給ノズル
5 ガス排気管
6 加熱源
7 支柱
8 基台
9a 反応性ガス
9b 添加剤ガス
10 ガラス層
11 加熱ヒータ
12 内側筒部
13 外側筒部
14 反応性ガス流路
15 添加剤ガス流路
16 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5