【解決手段】環状のリム4とリム4に装着される環状のタイヤ殻5とで形成される環状空間部7に収容されるタイヤ用充填体1であって、発泡熱可塑性エラストマーにより断面略円形の棒状に形成され、一端面に嵌合部11が形成され、他端面に被嵌合部12が形成され、複数本のタイヤ用充填体1が、嵌合部11が隣接するタイヤ用充填体1の被嵌合部12に嵌合されることにより、長さ方向に組み合わされて、環状空間部7を略満たすように環状に配置されるタイヤ用充填体1。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のノーパンクタイヤは、タイヤ外皮とリムとで形成される環状空間部の中心の周長の1〜1.03倍といった長い1本の直状のチューブを、円環状に曲げつつ、環状空間部に押し込むものであり、チューブが長いため、重く扱い難く、チューブの装着が容易でないという問題があり、また、チューブの保管や運搬も困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するものであり、タイヤ殻とリムとで形成される環状空間部への装着が容易であり、保管や運搬も容易なタイヤ用充填体及びその製造方法、並びに、そのようなタイヤ用充填体を用いたタイヤ及び車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイヤ用充填体は、環状のリムと当該リムに装着される環状のタイヤ殻とで形成される環状空間部に収容されるタイヤ用充填体であって、発泡熱可塑性エラストマーにより断面略円形の棒状に形成され、一端面に嵌合部が形成され、他端面に被嵌合部が形成され、複数本の前記タイヤ用充填体が、前記嵌合部が隣接する前記タイヤ用充填体の前記被嵌合部に嵌合されることにより、長さ方向に組み合わされて、前記環状空間部を略満たすように環状に配置されることを特徴とする。
【0008】
これによれば、複数本のタイヤ用充填体が長さ方向に組み合わされて、タイヤ殻とリムとで形成される環状空間部を略満たすように環状に配置されることから、1本1本のタイヤ用充填体の長さは、環状空間部の周長よりもかなり短いものとなる。このように本発明のタイヤ用充填体は、1本の長さが短いことから、1本1本は軽く扱い易く、また、先に収容した充填体の被嵌合部に次に収容する充填体の嵌合部を嵌合することにより、充填体同士が組み合わされ、端面同士がずれ難いため、環状空間部への装着が容易である。また、多数本のタイヤ用充填体を保管したり運搬したりする場合にも、コンパクトに纏めることができるため、保管や運搬も容易である。
【0009】
ここで、前記発泡熱可塑性エラストマーが発泡熱可塑性ポリウレタンであることが好ましい。
【0010】
熱可塑性ポリウレタン(以下、「TPU」と表記する。)は、優れた反発弾性、耐摩耗性、耐屈曲性及び強度を有しているため、乗り心地がよく、長期間の使用に耐え得るタイヤを提供可能となる。また、発泡TPUとすることにより、タイヤが軽量化され、気泡内の空気により、空気入りチューブを用いた場合と同様の乗り心地を実現可能となる。
【0011】
また、前記嵌合部は、先端部に向かって縮径し当該先端部が丸まった略円錐形状の凸状とされ、前記被嵌合部は、内周面がテーパ面とされた凹状とされていることが好ましい。
【0012】
環状空間部に最後のタイヤ用充填体を押し込むときには、隣接するタイヤ用充填体に嵌合するために、その最後のタイヤ用充填体を圧縮しなければならないが、上記のような嵌合部及び被嵌合部の形状であれば、嵌合部が滑って被嵌合部に容易に入り込むこととなり、タイヤ用充填体を強く圧縮しなくても嵌合可能であり、タイヤ用充填体の装着がより容易となる。
【0013】
また、周壁部に多数の小突起が形成されていることが好ましい。
【0014】
これによれば、タイヤ殻内面とタイヤ用充填体との摩擦が大きくなるため、環状空間部内のタイヤ用充填体の位置ずれや捩れを防止可能であり、タイヤの変形や乗り心地の悪化を防止可能である。
【0015】
本発明のタイヤ用充填体の製造方法は、発泡TPU粒子を型の内部に充填する充填工程と、前記型の内部に充填された前記粒子を圧縮する圧縮工程と、圧縮された前記粒子を、前記型の前記周壁部に対応する面に形成された多数の小孔から前記型の内部に蒸気を供給することにより加熱し、互いに融着させる加熱工程と、前記型を冷却後、前記型から前記粒子が融着することにより形成されたタイヤ用充填体を取り出す冷却・取出し工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
これによれば、蒸気を供給するための小孔に、溶融したTPUが入り込むため、タイヤ用充填体の周壁部に多数の小突起が形成される。すなわち、加熱工程における蒸気供給用の小孔により周壁部の小突起が形成されるため、型に小突起形成用の孔を別途設ける必要がなく、小突起形成用の工程を別途設ける必要もない。したがって、製造コストを抑制できる。また、原料のTPU粒子の発泡倍率、型に入れる粒子の量、圧縮率等を調整することにより、様々なサイズのタイヤについて、空気入りチューブを用いた場合と同様の乗り心地を実現可能な充填体を製造できる。
【0017】
本発明のタイヤは、環状のリムと、環状のタイヤ殻と、本発明のタイヤ用充填体とを備えるタイヤであって、複数本の前記タイヤ用充填体が、前記嵌合部を隣接する前記タイヤ用充填体の前記被嵌合部に嵌合することにより、長さ方向に組み合わされて、前記リムと前記リムに装着された前記タイヤ殻とで形成される環状空間部を略満たすように環状に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のタイヤは、充填体の環状空間部への装着が容易であるため、製造容易でパンクの虞がない。
【0019】
本発明の車椅子は、本発明のタイヤを備えるため、製造容易でパンクの虞がない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
1.タイヤ用充填体1の説明
まず、実施形態のタイヤ用充填体(以下、「充填体」と略す。)1について説明する。
図1の(a)及び
図2の(a)(b)に示すように、充填体1は、独立気泡型の発泡熱可塑性エラストマー、具体的には、独立気泡型の発泡TPUにより断面略円形の棒状(すなわち、中実の略円柱状)に形成され、一端面に嵌合部11が形成され、他端面に被嵌合部12が形成されている。一般に、気泡一つ一つが隣り合う気泡とその隔膜で連通することなく樹脂により閉じ込められた状態を、独立気泡というが、ここで「独立気泡型」とは、独立気泡を主として有するものをいい、必ずしも全部が独立気泡であることを要しない意である。すなわち、例えば物理的な圧縮等により隔壁等が破損し、連通された複数の気泡が含まれていてもよい。
【0023】
嵌合部11は、先端部11aに向かって縮径し先端部11aが丸まった略円錐形状の凸状とされている。被嵌合部12は、内周面12aが、嵌合部11の外周面に合わさるようなテーパ面とされた凹状とされている。嵌合部11の基端面11bからの突出高さと、被嵌合部12の基端面12bからの凹み深さは、同等とされている。
【0024】
充填体1の周壁部14には、多数の小突起13が形成されている。小突起13は、周壁部14の全面に略均等に形成されている。なお、充填体1の各断面図では、小突起13は省略されている。
【0025】
充填体1の基端面11bから基端面12bまでの長さLは、後述する環状空間部7の中心の周長(以下、「中心周長」という。)の約1/4とされ、具体的には、中心周長の1/4よりも若干長くされ、より具体的には、中心周長の1/4の1倍超1.1倍以下とされている。なお、長さLは、充填体1が隣接する充填体1に組み合わされることにより、隣接する充填体1に吸収される長さを除いた長さといえる。前述したように、嵌合部11の基端面11bからの突出高さと、被嵌合部12の基端面12bからの凹み深さは、同等とされているため、充填体1の中心の長さ(すなわち、被嵌合部12の底部12cから嵌合部11の先端部11aまでの長さ)も、上記長さLと同等となる。充填体1は、
図3に示すように、4本が、嵌合部11が隣接する充填体1の被嵌合部12に嵌合されることにより、長さ方向に組み合わされて、後述する環状空間部7内に収容される。
【0026】
2.充填体1の製造方法の説明
次に、充填体1の製造方法について、
図4,5に基づいて説明する。
【0027】
(1)充填工程
まず、
図4の(a)に示すように、可動型21及び固定型22からなる金型2の、可動型21を固定型22に対して軽く合わせた状態で、発泡TPU粒子(発泡TPUビーズ)Bを、金型2に設けられた充填孔(図示せず)から、圧縮空気により金型2の内部に送り込んで充填する。発泡TPU粒子Bは、粒子径が約3〜4mmのものを用いたが、かかる大きさのものに限られない。なお、発泡倍率は充填工程以前、粒子ペレットの状態で調整されているため、調整倍率に応じて粒子径も異なり得る。
【0028】
(2)圧縮工程
次に、
図4の(b)に示すように、金型2の内部が最終的に得たい充填体1の大きさになるまで、型締めすることにより、発泡TPU粒子Bを圧縮する。この圧縮状態では、粒子B間にはまだ隙間が残っている状態である。
【0029】
(3)加熱工程
圧縮工程後、加熱工程を行う。可動型21及び固定型22には、金型2を貫通する多数の小孔23が、最終的に得たい充填体1の周壁部14に対応する面に形成されており、加熱工程において、図示しない蒸気供給装置から蒸気が各小孔23を介して金型2内部に供給され、この蒸気により各粒子Bは加熱される。
【0030】
詳しくは、
図4の(c)に示すように、まず、可動型21及び固定型22の一方(
図4の(c)では、可動型21)の各小孔23から金型2の内部に蒸気を供給する。蒸気は粒子B間を通過して粒子Bを加熱して他方(
図4の(c)では、固定型22)の各小孔23から抜け、粒子Bは熱により軟化して、粒子B同士の融着が開始し、粒子B間の隙間が埋まり始める。
【0031】
図4の(c)に示す一方からの蒸気供給によって、蒸気の入口側(
図4の(c)では、可動型21側)と出口側(
図4の(c)では、固定型22側)では、粒子Bの融着程度に差が生じている。したがって、反対側から蒸気を供給して、融着を均等にする。すなわち、
図4の(d)に示すように、他方(
図4の(d)では、固定型22)の各小孔23から蒸気を供給する。これにより、粒子Bの融着が均等となる。
【0032】
そして、
図4の(e)に示すように、可動型21及び固定型22の両方の各小孔23から、蒸気を供給する。なお、加熱工程の初めから可動型21及び固定型22の両方から蒸気を供給しないのは、金型2内のまだ温度が上昇していない中央部で両側からの蒸気がぶつかることにより、水が発生してしまうことを回避するためである。両側からの蒸気供給により、金型2の温度がさらに高められて、充填体1の表面となる部分の融着が促進され滑らかになる。
【0033】
さらに
図5を用いて加熱工程を説明すると、可動型21及び固定型22には、蒸気を通過させる通路211,221がそれぞれ設けられ、通路211には入口部に弁212、出口部に弁213が設けられ、通路221には入口部に弁222、出口部に弁223が設けられている。
【0034】
まず、加熱工程では、
図5の(a)に示すように、弁212,213,222,223をいずれも開弁して、蒸気を通路211,221の入口部から供給して、予備加熱を行う。これは、後述する冷却・取出し工程で金型2を冷却したことにより通路211,221内に存在する低温の空気やドレンを排出し、金型2を全体に温めるためである。
【0035】
次に、
図5の(b)に示すように、弁212,223を開弁し、弁222,213を閉弁して、通路211の入口部から蒸気を供給する。すると、可動型21側から金型2の内部に蒸気が供給され、固定型22側に抜けて、通路221の出口部から排出される。
図4の(c)に示す一方からの加熱工程である。なお、
図5では、小孔23の図示を省略している。
【0036】
次に、
図5の(c)に示すように、弁222,213を開弁し、弁212,223を閉弁して、通路221の入口部から蒸気を供給する。すると、固定型22側から金型2の内部に蒸気が供給され、可動型21側に抜けて、通路211の出口部から排出される。
図4の(d)に示す他方からの加熱工程である。
【0037】
そして、
図5の(d)に示すように、弁222,212を開弁し、弁213,223を閉弁して、通路211,221の入口部から蒸気を供給する。すると、可動型21及び固定型22の両方から金型2の内部に蒸気が供給される。
図4の(e)に示す両方からの加熱工程である。
【0038】
(4)冷却・取出し工程
蒸気の供給を停止して加熱工程を終了した後、金型2を水により冷却する。これにより、粒子Bの溶融部分が冷却されて固化し、充填体1が形成される。金型2の冷却後、
図4の(f)に示すように、金型2を開いて、充填体1を取り出す。
【0039】
取り出された充填体1には、周壁部14に多数の小突起13が形成されているが、これは、蒸気加熱で粒子Bが軟化し、粒子B間の隙間が埋まるとともに各小孔23に入り込むことにより、形成される。
【0040】
なお、乗り心地のよいタイヤを提供するためには、嵩比重が100〜600g/Lの範囲にある発泡TPU粒子Bを用い、充填体1の密度を0.2〜0.6g/cm
3の範囲とすればよい。
【0041】
3.タイヤTの説明
次に、実施形態のタイヤTについて説明する。
図6,7に示すように、タイヤTは、環状のリム4と、環状のタイヤ殻5と、4本の充填体1とを備え、リム4にタイヤ殻5が両側のビード部51,51を係止することにより装着され、リム4とタイヤ殻5とで、環状空間部7が形成されている。
【0042】
タイヤTは、空気が充填された従来のインナーチューブを環状空間部7に収容可能な既存のタイヤであり、スポーク80(
図8の(a)参照)を取り付けるためのニップル9がリム4の内側(環状空間部7側)に突出するため、ニップル9がインナーチューブに接触しないように、凹溝41がリム4の全周に亘って設けられている。
【0043】
また、凹溝41の底壁部には、上述した従来のインナーチューブのバルブが挿通される貫通孔が形成されているが、タイヤTでは、水等が浸入しないように、かかる貫通孔は防水シールで閉塞されている。
【0044】
環状空間部7には、4本の充填体1が、嵌合部11が隣接する充填体1の被嵌合部12に嵌合されることにより、長さ方向に組み合わされて、環状に配置されている。環状空間部7に充填体1を収容したとき、充填体1は環状空間部7の内面形状に沿って弾性変形する。充填体1の径方向に沿った断面積は、このように弾性変形したときに環状空間部7を略満たすような面積とされている。したがって、4本の充填体1によって、環状空間部7は略満たされることとなる。ここで、「略満たす」としたのは、
図6に示すように、ビード部51付近や凹溝41内等には充填体1が入り込まず、空間が残るため、完全に満たすとはいえないからである。
【0045】
なお、充填体1を、断面円形状とせず、予め凹溝41をも略満たすような断面形状に形成すると、充填体1の凹溝41に配置される部分を凹溝41側に向けて環状空間部7に挿入しなければならず、すなわち、充填体1を環状空間部7に挿入するときの向きが制限され、充填体1の装着が容易ではなくなる。このため、タイヤTでは、充填体1を断面円形状として、凹溝41内には、別体のスペーサ3を配置して、凹溝41内の空間を小さくするようにしている。
【0046】
スペーサ3は、発泡熱可塑性エラストマー(具体的には、発泡TPU)で形成され、
図1の(b)に示すように、断面矩形状の棒状(すなわち、細長い直方体)をなしている。そして、
図7に示すよう複数本(ここでは、3本)のスペーサ3が、ステープラー等で互いに連結されることにより、凹溝41の周長と略同じ周長の環状に形成された状態で、凹溝41内に配置されている。なお、スペーサ3は、凹溝41の長さに合わせて適宜切断して用いられるものであり、凹溝41内に配置される本数は3本に限らず、また、長さの異なるものを組み合わせて用いる場合もある。
【0047】
次に、
図8〜10に基づいて、環状空間部7への充填体1の装着工程について説明する。
図8〜10では、環状空間部7に配置される充填体1を区別するために、1本目に配置するものから順に、充填体1a,1b,1c,1dと符号を併記する。まず、
図8〜10では図示していないが、上述したように環状としたスペーサ3を、リム4の縁を乗り越えるように弾性変形させて、リム4の凹溝41に嵌合する。そして、リム4にタイヤ殻5の一方のビード部51を装着し、他方のビード部51は装着しない状態として、環状空間部7の一方の側を開放した状態とする。
【0048】
次に、
図8の(a)に示すように、環状空間部7の開放された部分から、1本目の充填体1aを環状空間部7に挿入する。なお、各充填体1には、タイヤ殻5に対して滑りがよくなるように、全体的に石けん水を付けてから、挿入する。石けん水中の水分が蒸発すると、小突起13のタイヤ殻5内面に対する摩擦力が発揮されることから、充填体1の位置ずれや捩れが防止されることとなる。なお、常温で蒸発するものであれば石けん水以外の潤滑剤を用いてもよい。
【0049】
次に、
図8の(b)に示すように、環状空間部7の開放された部分から、2本目の充填体1bを、その嵌合部11を1本目の充填体1aの被嵌合部12に嵌合するようにして、環状空間部7に挿入する。すると、充填体1aの基端面12bと充填体1bの基端面11bとが合わさった状態で、充填体1a,1bが長さ方向に組み合わされることとなる。同様に、3本目の充填体1cを、その嵌合部11を2本目の充填体1bの被嵌合部12に嵌合するようにして、環状空間部7に挿入する。
【0050】
4本目の充填体1dは、
図9の(a)に示すように、その嵌合部11を3本目の充填体1cの被嵌合部12に嵌合するとともに、
図9の(b)に示すように、その被嵌合部12を1本目の充填体1aの嵌合部11に嵌合するようにして、環状空間部7に挿入する。上述したように各充填体1の長さLは、環状空間部7の中心周長の1/4より若干長く、また、1〜3本目の充填体1a,1b,1cは、互いに押し合っている状態ではないため、4本目の充填体1dについては、長さを圧縮して挿入することとなる。4本目の充填体1dは、圧縮して挿入されると、その弾性により元の長さに戻ろうとし、このため、4本の充填体1a,1b,1c,1dは、互いに押し合うこととなって、しっかりと組み合わされることとなる。そして、4本の充填体1a,1b,1c,1dは、環状空間部7を略満たすように環状に配置されることとなる。
【0051】
4本の充填体1を環状空間部7に収容後、
図10の(a)に示すように、リム4に装着していないビード部51を、適宜工具Dを用いて、リム4と充填体1との間に差し込むことにより、リム4に装着する。ビード部51が装着されると、
図10の(b)に示すように、タイヤTが完成することとなる。
【0052】
なお、充填体1の原料となるTPU粒子の発泡倍率、金型2に入れる発泡TPU粒子の量、金型2における圧縮率は、タイヤTと同種のタイヤを適正空気圧の通常の空気入りタイヤとし、そのタイヤとタイヤTとが、所定の荷重を掛けたときに同等の撓み量となるように、決定する。これにより、適正空気圧のタイヤと同等の乗り心地を実現できる。
【0053】
4.車椅子Wの説明
次に、実施形態に係る車椅子Wについて、
図11に基づいて説明する。車椅子Wは、後輪(駆動輪)100に上述したタイヤTを備えるものである。
【0054】
車椅子Wは、左右両側に、それぞれ、座席フレーム101、座席フレーム101の前端部から前方かつ下方に延設される脚フレーム102、座席フレーム101より上方に配置される腕フレーム103、腕フレーム103の前端部から下方に延設される前フレーム104、座席フレーム101より下方に配置される下部フレーム105、及び、背フレーム106を備えている。
【0055】
左右の座席フレーム101,101間には、座シート107が、座席フレーム101に支持される座シート支持杆115に左右両側を装着されて、配置されている。座シート107の下方には、車椅子Wを車幅方向に折り畳むためのクロスバー113,113が、下端部を下部フレーム105に、上端部を座シート支持杆115に回動可能に連結することにより、前後に並設されている。
【0056】
左右の腕フレーム103,103の上面には、それぞれ、アームサポート111が装着され、左右の脚フレーム102,102の下端部には、それぞれ、フットサポート112が装着されている。左右の前フレーム104,104の下端部には、それぞれ、前輪114が取り付けられている。
【0057】
左右の背フレーム106,106は、それぞれ、対応する側の下部フレーム105の後部と座席フレーム101の後端部と腕フレーム103の後端部とに連結されて、上下方向に延び、上端部には、介護者が車椅子Wを操作するためのハンドル110が装着されている。左右の背フレーム106,106には背シート108が装着されている。
【0058】
左右の後輪100,100は、それぞれ、タイヤTと、タイヤTのリム4に一端が取り付けられた複数のスポーク80と、各スポーク80の他端が取り付けられるとともに、車軸82を有するハブ81とを備え、車軸82は、背フレーム106の下部に連結されている。なお、
図11では、見易さのために、スポーク80を適宜省略している。また、左右の後輪100,100のリム4の外側には、それぞれ、リム4と同心円状の環状をなす自走用のハンドリム83が取り付けられている。このハンドリム83は、リム4の外側壁に取り付けられ、環状空間部7とは独立しているため、ハンドリム83の取付け構造が環状空間部7に影響することはない。
【0059】
5.実施形態の効果
上述したように、1本の充填体1の長さは、環状空間部7の中心の周長よりもかなり短く、約1/4である。このように充填体1は1本の長さが短いことから、軽く扱い易く、また、先に収容した充填体1の被嵌合部12又は嵌合部11に、次に収容する充填体1の嵌合部11又は被嵌合部12を嵌合することにより、充填体1同士が組み合わされ、端面同士がずれ難いため、環状空間部7への装着が容易である。また、多数本を保管したり運搬したりする場合にも、コンパクトに纏めることができるため、保管や運搬が容易である。さらに、使用中に充填体1に捩れが発生した場合にも、捩れ部分の復元力が復元すべき充填体1の長さに比して相対的に大きいため、復元し易い。したがって、捩れによる充填体1の破損やタイヤTの変形の虞が少ない。
【0060】
また、充填体1は、周壁部14に多数の小突起13を有することから、タイヤ殻5内面との摩擦が大きい。このため、環状空間部7内における充填体1の位置ずれや捩れが生じ難く、タイヤTの変形や乗り心地の悪化を防止可能である。
【0061】
また、充填体1は、嵌合部11が先端部の丸まった略円錐形状の凸状とされ、被嵌合部12は内周面がテーパ面とされているため、嵌合部11が滑って被嵌合部12に容易に入り込むこととなって、充填体1を強く圧縮しなくても嵌合可能であり、特に環状空間部7に最後に挿入される充填体1の挿入が容易となる。また、充填体1を環状空間部7に挿入するときの充填体1の径方向に沿った向きが嵌合部11及び被嵌合部12によって制限されないため、かかる点からも充填体1の挿入が容易である。
【0062】
また、発泡TPU粒子を金型2に充填し圧縮・加熱することにより充填体1を製造することから、原料のTPU粒子の発泡倍率、金型2に入れる粒子の量、圧縮率等を調整することにより、様々なサイズのタイヤTについて、空気入りチューブを用いた場合と同様の乗り心地を実現できる。そして、上述したように、充填体1は長さが短いことから、金型2等の製造設備を小型化でき、金型2に発泡TPU粒子を充填するときの充填孔からの距離が短くて済むことから、発泡TPU粒子が金型2内に均等に充填され易く、圧縮が不均一になり難い。このため、弾性や強度等の性質を充填体1全体で均一化できる。
【0063】
また、押し出し成型により充填体1を製造する場合には、切断加工が必要であるが、上記の製造方法によれば、切断加工が不要であるため、製造コストを抑制できる。
【0064】
さらに、充填体1を製造するときに、金型2の充填体1の周壁部14に対応する面に形成された多数の小孔23から蒸気を供給するため、充填体1の原料である発泡TPUに対する加熱が均一になされるとともに、かかる小孔23により周壁部14に多数の小突起13が形成されることとなる。すなわち、小突起13を形成するための別途の孔や、別途の工程を必要としないため、製造コストを抑制できる。
【0065】
そして、タイヤTは、空気入りチューブの代わりに、充填体1を4本組み合わせたものが、環状空間部7を略埋めているため、タイヤTに釘等が刺さっても、充填体1内のごく僅かの空気が抜けるだけであり、パンクの虞がない。また、充填体1の環状空間部7への装着が容易であるため、タイヤTは製造容易である。また、充填体1は発泡TPUにより形成されており、TPUは、優れた反発弾性、耐摩耗性、耐屈曲性及び強度を有しているため、乗り心地がよく、長期間の使用に耐え得るタイヤTを提供可能となる。さらに、充填体1は、密度の小さい発泡TPUからなるため、タイヤTを軽量化できる。
【0066】
車椅子Wは、かかるタイヤTを後輪100に用いているので、パンクの虞がなく、空気入りチューブを用いた場合と同様の乗り心地とすることができる。また、タイヤTが製造容易であることから、車椅子Wも製造容易であり、タイヤT内の空気の管理が不要であることから、メンテナンスも容易である。
【0067】
5.変形例
(1)車椅子W以外の乗り物(例えば、自転車)のタイヤに、充填体1を用いることとしてもよい。特に、宅配用に用いられる業務用の自転車において、パンクは業務の停滞を招くことからノーパンクとなる充填体1は重宝である。
【0068】
(2)環状空間部7に収容する充填体1の数は、4本に限らず、2本又は3本でもよいし、5本以上であってもよい。環状空間部7に収容する充填体1の数をn本(nは2以上の整数)としたとき、充填体1の長さLは、環状空間部7の中心周長の約1/nとすればよいが、好ましくは、環状空間部7の中心周長の1/nより若干長いものとする。使用中に充填体1に位置ずれや捩れが生じる虞を、環状空間部7に収容された充填体1同士が押圧し合うことにより、低減できるからである。より具体的には、車椅子Wに通常用いられるタイヤ幅約40mm以下のタイヤTに充填体1を用いる場合、長さLは、環状空間部7の中心周長の1/nの1倍超1.1倍以下の範囲で、環状空間部7のリム4側と反対側の部分において充填体1同士の間に隙間が生じないように定める。1.1倍を超えると、環状空間部7のリム4側の部分において圧縮の程度を高めなければならず、装着が困難になるからである。
【0069】
(3)充填体1の原料として、TPU以外の熱可塑性エラストマーを用いてもよい。例えば、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)や熱可塑性ポリアミド系エラストマー(TPAE)であってもよい。これらは、反発弾性や強度に優れているからである。
【0070】
(4)充填体1の形状は上述したものに限られず、嵌合部11及び被嵌合部12の形状、小突起13の有無やその形成範囲(周壁部14の全面ではなく、一部にのみ形成する等)も任意である。また、1つのタイヤTに対して、異なる長さLの充填体1を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(5)スペーサ3の原料は、充填体1と異なるものでもよく、熱可塑性エラストマーに限られるものでもない。例えば、加硫ゴムであってもよい。但し、発泡TPUを用いれば、軽量で強靭でありへたり難いため、有利であり、また、TPUは引裂抵抗にも優れるため、上述したようにステープラーで連結しても破れる虞が少ない。
【0072】
(6)上述した車椅子Wの構成は、代表的なものであり、勿論、車椅子Wの構成は上述したものに限られるものではない。