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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-121289(P2016-121289A)
(43)【公開日】2016年7月7日
(54)【発明の名称】接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20160610BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20160610BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160610BHJP
   C09J 171/10 20060101ALI20160610BHJP
【FI】
   C09J175/04
   C09J163/00
   C09J11/06
   C09J171/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-262570(P2014-262570)
(22)【出願日】2014年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000238256
【氏名又は名称】浮間合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩正
(72)【発明者】
【氏名】梅津 基昭
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC002
4J040EC062
4J040EC072
4J040EE062
4J040EF001
4J040EF041
4J040EF081
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF291
4J040EF301
4J040GA07
4J040GA23
4J040HB01
4J040HB02
4J040HB03
4J040HB08
4J040HB15
4J040HB19
4J040HB31
4J040HC10
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長時間の耐熱性に優れ、且つ、密着性に優れるポリウレタン系の接着剤の提供。
【解決手段】ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有し、前記ポリウレタン樹脂(A)が、カルボキシル基を有し、前記ポリウレタン樹脂(A)の酸価が、5〜30mgKOH/gである接着剤。前記エポキシ樹脂(B)として、エポキシ当量が5,000g/eq.以上であるフェノキシ樹脂と、3官能以上の多官能エポキシ樹脂とを含有する接着剤。前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜100質量部である接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、カルボキシル基を有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)の酸価が、5〜30mgKOH/gである接着剤。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(B)として、エポキシ当量が5,000g/eq.以上であるフェノキシ樹脂と、3官能以上の多官能エポキシ樹脂とを含有する請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜100質量部である請求項1又は2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、1,000〜500,000である請求項1〜3の何れか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
イソシアネート系架橋剤を更に含有し、
前記イソシアネート系架橋剤の含有量が、前記ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して2〜10質量部である請求項1〜4の何れか1項に記載の接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種プラスチック用の接着剤として、低温域での接着安定性、並びに、常温域での接着性、柔軟性、加工性、及び、各種分子設計の容易さから、ポリウレタン系の接着剤が多く使われている。ポリウレタン系の接着剤としては、ポリエステルポリオールや、アクリルポリオールを主剤として、ポリイソシアネートを架橋剤として用いてこれらの反応によりウレタン結合を生成させるものや、ある程度の鎖長を有するポリウレタンを主剤とし、該主剤をイソシアネート架橋剤で硬化させたものがある。
【0003】
また、ウレタン結合に代えてウレア結合を多く系内に導入させたポリウレタン−ウレア樹脂をポリウレタン樹脂の代わりに用い、更に、エポキシ樹脂を含有させた接着剤も知られている(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4806944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの接着剤は、一の基材上に接着剤層を形成し、一の基材と他の基材とを接着剤層で貼り合わせた後、熱によって接着剤層を硬化させて架橋構造体にすることによって基材どうしを接着させるタイプの接着剤である。
【0006】
ところで、このようなタイプの接着剤は、基材どうしの積層直後においては、基材どうしの密着性に優れることが望まれ、また、接着剤層の硬化後においては、耐熱性及び接着性に優れることが望まれる。
【0007】
ポリウレタン−ウレア樹脂を含有する引用文献1の接着剤は、ポリウレタン−ウレア樹脂がエポキシ樹脂で架橋されることにより耐熱性に優れるという利点を有する。
しかし、引用文献1の接着剤は、ポリウレタン−ウレア樹脂を用いることにより接着剤層が硬くなり、加工性が悪いものとなりやすいので、ポリウレタン樹脂を用いる場合に比べて、フィルム等各種材料との初期密着力に劣る傾向にある。
さらに、引用文献1の接着シートでは、耐熱性として280℃のオーブンで90秒放置、260℃のハンダ浴に1分浸漬する等の短い時間での耐熱試験で耐熱性について判断しているが、より長期の耐熱性についてはこれまで十分に検討されていない。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、長時間の耐熱性に優れ、且つ、密着性に優れる接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、カルボキシル基を有し、
前記ポリウレタン樹脂(A)の酸価が、5〜30mgKOH/gである接着剤である。
【0010】
また、本発明に係る接着剤においては、好ましくは、前記エポキシ樹脂(B)として、エポキシ当量が5,000g/eq.以上であるフェノキシ樹脂と、3官能以上の多官能エポキシ樹脂とを含有する。
【0011】
さらに、本発明に係る接着剤においては、好ましくは、前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して20〜100質量部である。
【0012】
また、本発明に係る接着剤においては、好ましくは、前記ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、1,000〜500,000である。
【0013】
さらに、本発明に係る接着剤は、好ましくは、イソシアネート系架橋剤を更に含有し、
前記イソシアネート系架橋剤の含有量が、前記ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して2〜10質量部である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長時間の耐熱性に優れ、且つ、密着性に優れる接着剤を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態の接着剤は、ポリウレタン樹脂(A)、及び、エポキシ樹脂(B)を含んでなる。
本明細書における「ポリウレタン樹脂」とは、「ポリウレタン−ウレア樹脂」を含む広義の「ポリウレタン樹脂」を意味するものではなく、ウレア結合を実質的に含んでいない「ポリウレタン樹脂」を意味する。
【0017】
(ポリウレタン樹脂(A))
前記ポリウレタン樹脂(A)は、1分子に2以上の水酸基を有するポリオール成分(a)と、1分子に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分(b)とを含む反応成分をウレタン結合させて得られるものである。
【0018】
前記ポリウレタン樹脂(A)は、酸価が5〜30mgKOH/g、好ましくは9〜25mgKOH/gである。
本実施形態の接着剤は、ポリウレタン樹脂(A)の酸価が小さすぎると、ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とが反応した後での架橋密度が低くなり、硬化物が長時間の耐熱性に優れたものとなり難い。一方で、本実施形態の接着剤は、酸価が大きすぎると架橋密度が高くなりすぎて歪を発生し易くなり、柔軟性に優れたものとなり難い。
なお、ポリウレタン樹脂(A)の酸価は、ポリウレタン樹脂(A)をメチルエチルケトン(MEK)などで溶液化して、JIS K1557−5:2007の方法に従って測定したものを意味する。
【0019】
また、前記ポリウレタン樹脂(A)は、カルボキシル基を有する。前記カルボキシル基は、ポリオール成分(a)やポリイソシアネート成分(b)によってポリウレタン樹脂に備えさせることができる。
【0020】
本実施形態に係る接着剤は、前記ポリウレタン樹脂(A)がカルボキシル基を有するので、このカルボキシル基と、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基とを反応させることができ、ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とを架橋反応させることができる。その結果、本実施形態の接着剤は、その硬化物が長時間の耐熱性に優れたものとなる。
なお、引用文献1では、耐熱性(耐ハンダリフロー性等)を向上させるという観点から、接着剤に無機充填剤(シリカ等)や金属充填剤(アルミニウム等)を含有させているが、本実施形態の接着剤は、無機充填剤や金属充填剤を含有しなくても、ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とを架橋反応させることで、耐熱性を十分に発揮することができる。また、接着剤は、無機充填剤や金属充填剤を多く含有すると、初期密着強度が低下し得るが、本実施形態の接着剤は、無機充填剤や金属充填剤を含有しなくても、耐熱性を十分に発揮することができるので、初期密着強度及び耐熱性の双方に優れたものとしやすいものとなる。
【0021】
前記カルボキシル基は、例えば、ポリオール成分(a)に、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)を含有させることでポリウレタン樹脂(A)に備えさせることができる。この場合には、ポリオール成分(a)は、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)と共に一般的なポリオール(a2)を含有することが好ましい。
【0022】
前記カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)は、1分子に2以上の水酸基を有する。
また、前記カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)は、1分子に2以上の水酸基を有するので、1分子に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分(b)と反応し、ポリウレタン樹脂が得られる。
【0023】
カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)としては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、それらのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)やγ−カプロラクトン低モル付加物(数平均分子量500未満)、酸無水物とグリセリンから誘導されるハーフエステル類、水酸基と不飽和基を含有するモノマーとカルボキシル基と不飽和基を含有するモノマーとをフリーラジカル反応により誘導される化合物などが挙げられる。これらの化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。なお、本明細書における数平均分子量は、末端官能基定量法で測定した値を意味する。
なお、以上は本発明において使用される好ましい化合物の例示であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示化合物のみならず、その他現在市販されていて、市場から容易に入手できる、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)は、いずれも本発明に使用することができる。
これらの化合物の中で好ましいものは、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸であり、特に好ましいものは、ジメチロールプロパン酸である。
【0024】
ポリウレタン樹脂(A)を生成する際、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)の使用量は、ポリウレタン樹脂(A)の酸価を5〜30mgKOH/gの範囲内となるようにする。
【0025】
ポリオール(a2)は、ポリウレタン樹脂の合成の際に用いられる従来公知のポリオールを用いることができる。
ポリオール(a2)の具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオールなどを挙げることができる。
【0026】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)及び/又は芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)と、低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール,1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)と、を縮重合したものが例示される。
【0027】
このようなポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどを挙げることができる。
ポリエステルポリオールは、ポリエーテルポリオールに比べ、耐熱性に優れている。従って、ポリエステルポリオールは、耐熱性に優れた接着剤を得る上においてポリエーテルポリオールよりも有利である。
【0028】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールは、ポリエステルポリオールに比べ、耐加水分解性に優れている。従って、ポリエーテルポリオールは、耐加水分解性に優れた接着剤を得る上においてポリエステルポリオールよりも有利である。
【0029】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールは、耐加水分解性、耐熱性に優れるので、ポリオールとして好適に用いることができる。
ポリカーボネートポリオールの中でも、ポリヘキサメチレンカーボネートが、コストの観点や、材料としての入手のし易さから好適である。
【0030】
その他のポリオールの具体例としては、ダイマージオールやその水素添加物、ポリブタジエンポリオールやその水素添加物、ポリイソプレンポリオールやその水素添加物、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、シロキサン変性ポリオール、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオール、シロキサン変性ポリオールなどを挙げることができる。
これらのうちダイマージオールの水素添加物、ポリブタジエンポリオールの水素添加物から得られるジオールは、ポリカーボネートジオールと同様に、耐加水分解性、耐熱性に優れるので、ポリオールとして好適に用いることができる。
【0031】
ポリオール(a2)の数平均分子量(Mn、末端官能基定量法による)は、特に限定されないが、500〜6,000であることが好ましい。
ポリオール(a2)の数平均分子量(Mn)が大きすぎると、ウレタン結合の凝集力が発現し難くなって機械特性が低下する傾向にある。
また、結晶性ポリオールは、Mnが大きすぎると、本実施形態の接着剤を被膜化した際に被膜が白化現象を引き起こす場合があるので、単独で使用する場合には、Mnが3,000以下のものを使用するのが好ましい。
なお、ポリオール(a2)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
ポリオール成分(a)としては、上述したポリオール(a2)に加えて、必要に応じて、短鎖ジオール(a3)を用いることができる。
短鎖ジオール(a3)の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量法による数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);キシリレングリコールなどの芳香族グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上)などを挙げることができる。
【0033】
なお、ポリウレタン樹脂(A)を生成する際には、ポリウレタン樹脂(A)の材料として、短鎖ジオール成分(a3)と同様に、多価アルコール系化合物を用いることもできる。多価アルコール系化合物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。
【0034】
短鎖ポリオール(a3)をポリオール(a2)と併用して用いる場合には、短鎖ポリオール(a3)が短鎖ジオールであることが好ましい。
短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが好ましく、特に好ましいのはエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールである。
これらの短鎖ジオールは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
ポリイソシアネート成分(b)としては、ポリウレタン樹脂の製造に用いられている従来公知のポリイソシアネート成分を用いることができる。
ポリイソシアネート成分(b)の具体例としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、それらの混合体、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、及びクルード又はポリメリックMDI、ジュリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソフォロンンジイソシアネート、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートと、低分子量のポリオールとを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどを挙げることができる。
【0036】
これらポリイソシアネート成分(b)のうち、工業上安定的に廉価で耐熱性に優れる接着剤を得るといった観点からは、芳香族イソシアネートが好ましく、特に好ましいのは、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、それらの混合体、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、及びクルード又はポリメリックMDIである。これらのポリイソシアネート成分(b)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、引用文献1の接着剤のようにポリウレタン−ウレア樹脂を含有する接着剤の場合には、ポリウレタン−ウレア樹脂の材料として用いるポリイソシアネート成分としては、上述したような廉価なものを用いることが困難なため、コストがかかるという問題がある。
【0037】
なお、ポリウレタン−ウレア樹脂を製造する際には、原料としてポリアミン類を用いるが、引用文献1の接着剤のようにポリウレタン−ウレア樹脂を含有する接着剤には、通常、ポリアミン類が微量に残存する。そして、このポリアミン類は、エポキシ樹脂と反応するので、接着剤にエポキシ樹脂が含まれる場合には、この反応により、溶液状の接着剤の安定性を著しく低下させることがあるという問題がある。
しかし、本実施形態に係る接着剤は、ポリウレタン−ウレア樹脂を実質上含有しないので、このような問題が生じ得ない。
【0038】
(ポリウレタン樹脂(A)の製造方法)
ポリウレタン樹脂(A)は、従来公知のポリウレタンの製造方法により製造することができる。
具体的には、先ず、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下又は不存在下で、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物(a1)と、ポリオール(a2)及び、ポリイソシアネート成分(b)と、鎖伸長剤として必要に応じて用いられる短鎖ポリオール(a3)からなる反応成分を反応させてポリウレタン樹脂(A)を得る。反応成分は、一般的にはイソシアネート基と水酸基の当量比が0.8〜1.25の配合組成とすればよい。また、反応はワンショット法又は多段法により、通常20〜150℃、好ましくは60〜110℃で反応させればよい。
【0039】
上記のようにして得られるポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜500,000であることが、ポリウレタン樹脂の柔軟性、接着性、及び耐熱性などの特性がより有効に発揮されるために好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した値を意味する。例えば、以下の装置、条件にて測定することができる。
(1)機器装置:商品名「HLC−8020」(東ソー社製)
(2)カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、「G4000GXL」(東ソー社製)
(3)溶媒:THF
(4)流速:1.0ml/min
(5)試料濃度:2g/L
(6)注入量:100μL
(7)温度:40℃
(8)検出器:型番「RI−8020」(東ソー社製)
(9)標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0040】
本実施形態では、ポリウレタン樹脂の合成において、必要に応じて触媒を使用できる。
触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機酸又は無機酸との塩、有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。前記触媒は、ポリウレタン樹脂の合成の反応を促進する。しかし、前記触媒を過剰に使用すると、ポリウレタン樹脂以外の物質を分解する分解反応を誘発するおそれがあり、その結果、得られる接着剤が、高温域での耐熱性、長期での耐熱性が劣るものとなるおそれがあるので、前記触媒を用いる場合には、前記触媒を適量用いることが好ましい。
【0041】
ポリウレタン樹脂(A)は、溶剤を用いずに合成しても、有機溶剤を用いて合成してもよい。
有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤、又はイソシアネート基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。
有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテ−ト、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
特にトルエン、メチルエチルケトンが、ポリウレタン樹脂の溶解性、接着剤の乾燥性等から好ましい。
【0042】
(エポキシ樹脂(B))
本実施形態の接着剤では、エポキシ樹脂(B)の含有量が、ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20〜100質量部、より好ましくは30〜80質量部である。
本実施形態の接着剤は、エポキシ樹脂が少なすぎると、架橋濃度が低くなり、耐熱性能が十分とならないおそれがあり、一方で、エポキシ樹脂が多すぎると、硬化後の塗膜が歪んだり、脆くなり、ウレタン樹脂系としてのフレキシブル性が失われてしまうおそれがある。
【0043】
エポキシ樹脂(B)は、エポキシ当量が5,000g/eq.以上であるフェノキシ樹脂(h)と、3官能以上の多官能エポキシ樹脂(i)とを含有することが好ましい。本実施形態の接着剤は、エポキシ当量が5,000g/eq.以上であるフェノキシ樹脂(h)を含有することにより長期の耐熱性により一層優れたものとなる。また、本実施形態の接着剤は、3官能以上の多官能エポキシ樹脂(i)を含有することにより、架橋密度が高くなり、長期の耐熱性により一層優れたものとなる。
【0044】
フェノキシ樹脂(h)としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、1分子にビスフェノールA型の骨格とビスフェノールF型の骨格とを有するフェノキシ樹脂を使用することが出来、これらを一種単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
フェノキシ樹脂(h)は、好ましくはエポキシ当量が5,000以上、更に好ましくは7,000以上である。
【0045】
3官能以上の多官能エポキシ樹脂(i)とは、1分子にエポキシ基を3つ以上有するエポキシ樹脂である。
3官能以上の多官能エポキシ樹脂(i)としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能型フェノールエポキシ樹脂等を使用できる。
具体的には、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(jER152、jER154:三菱化学製)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(jER157S65、jER157S70:三菱化学製)、3官能フェノール型エポキシ樹脂(jER1032S50、jER1032H60)、4官能フェノール型エポキシ樹脂(jER1031S)等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
本実施形態に係る接着剤は、エポキシ当量が5,000g/eq.以上であるフェノキシ樹脂(h)100質量部に対して、3官能以上の多官能エポキシ樹脂(i)を、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは30〜70質量部含有する。
【0047】
エポキシ樹脂(B)としては、フェノキシ樹脂(h)と、3官能以上の多官能エポキシ樹脂(i)とに加えて、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ゴム変性型等のエポキシ樹脂を併用することが可能である。
【0048】
エポキシ樹脂(B)は、有機溶剤に溶解した状態で、ポリウレタン樹脂(A)と混合することが好ましい。
有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテ−ト、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
特にトルエン、メチルエチルケトンが、エポキシ樹脂の溶解性、接着剤の乾燥性等から好ましい。
また、トルエン、メチルエチルケトンは、アルコール系の溶剤に比べて、イソシアネート基を失活し難いという観点で好ましい。
なお、引用文献1の接着剤のようにポリウレタン−ウレア樹脂を含有する接着剤の場合には、通常、アルコール系の溶剤を用いるので、アルコールによってイソシアネート基を失活させてしまう懸念がある。このイソシアネート基の失活は、ポリイソシアネート成分だけでなく、後述するようなブロックタイプのイソシアネート系架橋剤にも生じ得ることである。
【0049】
本実施形態の接着剤は、イソシアネート系架橋剤を更に含有することが好ましい。
本実施形態の接着剤は、イソシアネート系架橋剤を含有することによって、ポリウレタン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とが架橋反応するよりも早く、エポキシ樹脂の水酸基とイソシアネート系架橋剤のイソシアネート基が反応し、架橋構造を形成することが出来る。
【0050】
イソシアネート系架橋剤としては、特に限定されるものではないが、イソシアヌレート体、ビューレット体、アダクト体、ポリメリック体とした多官能のイソシアネート基を有するもの等、従来から使用されている公知のものを使用することができる。
例えば、2,4−トルイレンジイソシアネートの二量体、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス−(p−イソシアネートフェニル)チオフォスファイト、多官能芳香族イソシアネート、多官能芳香族脂肪族イソシアネート、多官能脂肪族イソシアネート、脂肪酸変性多官能脂肪族イソシアネート、ブロック化多官能脂肪族イソシアネートなどのブロック型ポリイソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマーなどが挙げられる。
【0051】
これらのイソシアネート系架橋剤のうち、芳香族系のものであれば、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネートが好ましい。脂肪族系のものであれば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどの変性体が好ましい。
また、イソシアネート系架橋剤としては、1分子中にイソシアネート基を3個以上含むものが好ましい。
さらに、イソシアネート系架橋剤としては、前記ポリイソシアネートの多量体や他の化合物との付加体、さらには低分子量のポリオールやポリアミンとを末端イソシアネートになるように反応させたウレタンプレポリマーなども好ましく使用される。
イソシアネート系架橋剤の好ましい態様として、下記化合物(1)〜(8)を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化1】
【0053】
【化2】
【0054】
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
【化5】
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
【化8】
【0060】
イソシアネート架橋剤は、接着剤たる塗工液の可使時間との関係によりブロックタイプにすることが好ましい。
イソシアネート架橋剤をブロックタイプにするためのブロック剤としては、メタノール、フェノール、メチルエチルケトオキシム、ジメチルマロネート、3,5-ジメチルピラゾール等が好適に用いられる。
これらの中でも特に好ましいのは、メチルエチルケトオキシム、3,5-ジメチルピラゾールである。メチルエチルオキシムは、比較的低温で脱ブロック化が進行し、3,5−ジメチルピラゾールは、更に低温で脱ブロック化が進行する。
【0061】
イソシアネート架橋剤は、適量であれば耐熱性や耐候性の向上に有効である。
但し、イソシアネート架橋剤の使用量が多すぎると塗膜が硬脆くなり接着剤としての性能が低下する。この為、本実施形態の接着剤は、ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量100質量部に対して、イソシアネート架橋剤を2〜10質量部含有することが好ましい。
【0062】
本実施形態の接着剤は、必要に応じて添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系など)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系など)、ガス変色安定剤(ヒドラジン系など)、金属不活性剤などが挙げられる。これらの添加剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
(耐熱接着剤組成物及びその製造方法)
以上の様にして得られたポリウレタン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、必要に応じてイソシアネート架橋剤を混合することによって本実施形態の接着剤を得ることができる。
【0064】
本実施形態の接着剤は、ポリウレタン樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有し、前記ポリウレタン樹脂(A)が、カルボキシル基を有し、前記ポリウレタン樹脂(A)の酸価が、5〜30mgKOH/gである。
これにより、本実施形態の接着剤は、長時間の耐熱性に優れ、且つ、密着性に優れたものとなる。
【0065】
このようにして得られた本実施形態の接着剤は、プラスチックフィルム、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの接着に好適に適用される。
本実施形態の接着剤は、従来公知の塗工方法、例えば、グラビア、スプレーなど種々の塗工方法によって塗工することで、長時間の耐熱性に優れ、且つ、密着性に優れるという効果を発揮する。
塗工量については、乾燥後の厚みが1〜50μmとなるように接着剤を塗工することが好ましい。
【0066】
なお、本発明に係る接着剤は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る接着剤は、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明に係る接着剤は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0068】
<ポリウレタン樹脂(A)の合成例>
<ポリウレタン樹脂の合成例:A1>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、ネオペンチルグリコール(NPG)25.3g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)4.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)98.2gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃下で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)93.2gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂A1の樹脂溶液AA1を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が420dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が5.2mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂A1の重量平均分子量は83,000であった。
【0069】
<ポリウレタン樹脂の合成例:A2>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、ネオペンチルグリコール(NPG)25.3g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)8.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)100.0gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃で4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100.8gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂A2の樹脂溶液AA2を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が410dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が10.0mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂A2の重量平均分子量は79,000であった。
【0070】
<ポリウレタン樹脂の合成例:A3>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、1,3−ブタンジオール15.0g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)16.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)99.0gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)96.3gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂A3の樹脂溶液AA3を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が500dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が20.5mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂A3の重量平均分子量は86,000であった。
【0071】
<ポリウレタン樹脂の合成例:A4>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、1,4−ブタンジオール7.0g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)22.5gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)98.4gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)86.4gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂A4の樹脂溶液AA4を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が450dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が29.8mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂A4の重量平均分子量は83,000であった。
【0072】
<ポリウレタン樹脂の合成例:A5>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、1,4−ブタンジオール7.0g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)22.5gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)89.6gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃でトルエン−2,4−ジイソシアネートとトルエン−2,6−ジイソシアネートとの(80/20wt%)混合体48.3gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂A5の樹脂溶液AA5を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が200dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が20.9mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂A5の重量平均分子量は70,000であった。
【0073】
<ポリウレタン樹脂の合成例:A6>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のダイマー酸ジオールの水素添加物(プリポール2033:クローダジャパン(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=542)200.0g、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)10.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)90.0gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)110.9gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂A6の樹脂溶液AA6を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が300dPa・s/20℃、固形分が40%、ポリウレタン樹脂は、酸価が13.0mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂A6の重量平均分子量は62,000であった。
【0074】
<ポリウレタン樹脂の合成比較例:X1>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、ネオペンチルグリコール(NPG)28.5g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)2.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)98.8gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)97.2gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂X1の樹脂溶液XX1を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が380dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が2.6mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂X1の重量平均分子量は75,000であった。
【0075】
<ポリウレタン樹脂の合成比較例:X2>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、1,4−ブタンジオール7.0g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)29.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)101.1gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、50℃で4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)98.5gを仕込み、80℃で反応させて反応液を得た。反応液を溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈することにより反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させ、ポリウレタン樹脂X2の樹脂溶液XX2を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が470dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン樹脂は、酸価が36.3mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン樹脂X2の重量平均分子量は85,000であった。
【0076】
<ポリウレタン−ウレア樹脂の合成比較例:X3>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、両末端水酸基のポリヘキサメチレンカーボネートジオール(デュラノール:T6002旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量法による数平均分子量=2,000)200.0g、1,3−ブタンジオール5.0g、及びジメチロールプロピオン酸(DMPA)15.0gを仕込んだ。次いで、溶剤としてトルエン145.2gを仕込み、系内を撹拌した。系内が均一となった後、60℃下でイソフォロンジイソシアネート(IPDI)118.8gを仕込み、80℃で3時間反応させて反応液を得た。反応液におけるプレポリマーのNCO%を測定したところ、NCO%が4.64%であるプレポリマーが得られた。その後、反応液にトルエン303.2gを添加し、反応液の温度が30℃となるまで冷却した。
次いでイソフォロンジアミン(IPDA)45.5gを計りとり、イソプロパノールアルコール(IPA)448.4gで希釈した。次いでこのIPDAとIPAの混合液をよく撹拌した後、プレポリマーを含有する反応液に徐々に添加した。反応液の粘度が適切な状態となるまで混合液の添加を進め、IPDAとIPAの総量の90%の混合液が入ったところで、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収を確認すると、ほぼ消失していた。溶剤たるメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、ポリウレタン−ウレア樹脂X3の樹脂溶液XX3を得た。得られた樹脂溶液は、粘度が310dPa・s/20℃、固形分が30%、ポリウレタン−ウレア樹脂は、酸価16.3mgKOH/gであった。また、GPCにより測定したポリウレタン−ウレア樹脂X3の重量平均分子量は76,000であった。
【0077】
<エポキシ樹脂(B)の溶解例>
<エポキシ樹脂の溶解例:h1>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(エポキシ当量:7,800g/eq.、jER1256:三菱化学(株)製)400.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)600.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。フェノキシ樹脂h1の溶解品hh1を得た。得られたフェノキシ樹脂の溶液の固形分は40%であった。
【0078】
<エポキシ樹脂の溶解例:h2>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、1分子にビスフェノールA型の骨格とビスフェノールF型の骨格とを有するフェノキシ樹脂(エポキシ当量:9,000g/eq.、jER4275:三菱化学(株)製)400.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)600.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。フェノキシ樹脂h2の溶解品hh2を得た。得られたフェノキシ樹脂の溶液の固形分は40%であった。
【0079】
<エポキシ樹脂の溶解例:i1>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂(3官能以上)(エポキシ当量:177g/eq.、jER154:三菱化学(株)製)800.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)200.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。エポキシ樹脂i1の溶解品ii1を得た。得られたエポキシ樹脂の溶液の固形分は80%であった。
【0080】
<エポキシ樹脂の溶解例:i2>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂(3官能以上)(エポキシ当量:208g/eq.、jER157S70:三菱化学(株)製)800.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)200.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。エポキシ樹脂i2の溶解品ii2を得た。得られたエポキシ樹脂の溶液の固形分は80%であった。
【0081】
<エポキシ樹脂の溶解例:i3>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、3官能フェノール型のエポキシ樹脂(エポキシ当量:169g/eq.、jER1032H60:三菱化学(株)製)800.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)200.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。エポキシ樹脂i3の溶解品ii3を得た。得られたエポキシ樹脂の溶液の固形分は80%であった。
【0082】
<エポキシ樹脂の溶解例:i4>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、4官能フェノール型のエポキシ樹脂(エポキシ当量:200g/eq.、jER1031S:三菱化学(株)製)800.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)200.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。エポキシ樹脂i4の溶解品ii4を得た。得られたエポキシ樹脂の溶液の固形分は80%であった。
【0083】
<エポキシ樹脂の溶解例:Y1>
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素で置換しながら、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(エポキシ当量:2,850g/eq.、jER1009:三菱化学(株)製)400.0gを仕込み、撹拌しながら溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)600.0gを仕込み、系内を60℃に昇温し完全溶解させた。エポキシ樹脂Y1の溶解品YY1を得た。得られたエポキシ樹脂の溶液の固形分は40%であった。
【0084】
<接着剤の作製>
[実施例の接着剤、及び比較例の接着剤]
前記及び後記の各種材料を使用して接着剤を得た。
ポリウレタン樹脂(A)を含有する樹脂溶液として、前記合成例A1〜A6の樹脂溶液AA1〜AA6を使用し、合成比較例X1、X2の樹脂溶液XX1、及びXX2を使用した。
また、ポリウレタン−ウレア樹脂を含有する樹脂溶液として、合成比較例X3の樹脂溶液XX3を使用した。
【0085】
エポキシ樹脂(B)を含有するエポキシ樹脂溶液として、前記エポキシ樹脂の溶解例h1、h2から得られたフェノキシ樹脂溶液hh1及びhh2、i1〜i4から得られたエポキシ樹脂溶液ii1〜ii4、Y1から得られたエポキシ樹脂溶液YY1、更に低分子のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(エポキシ当量:186g/eq.、jER828:三菱化学(株)製)を使用した。
【0086】
ブロックイソシアネート型架橋剤として、メチルエチルケトオキシムブロックタイプ(C1)(BI 7984:バクセンデン社)、3,5−ジメチルピラゾールタイプ(C2)(BI 7951:バクセンデン社)を使用した。
【0087】
以上の各種試料を下記表1の配合割合で混合し、実施例及び比較例の接着剤を作製した。なお、実施例及び比較例の接着剤は、固形分が30%となるようにメチルエチルケトン(MEK)で調整したものである。
【0088】
【表1】
【0089】
[接着剤のPETフィルムへの塗工]
接着剤をメチルエチルケトン(MEK)で固形分25%に希釈した。そして、希釈した接着剤をPETフィルム(縦:210mm、横:150mm、厚み:100μm、ルミラー:パナック(株)製)の片面側全面に塗布し、その後、100℃で1分間乾燥させることにより、接着剤層付きPETフィルムを作製した。なお、塗工は、乾燥後の接着剤層の厚みが12μmとなる様に行った。
【0090】
[初期密着1]
前記接着剤層付きPETフィルムの接着剤層と、該PETフィルムと同形状の別途用意したPETフィルムの未塗布面とが接するように、接着剤層付きPETフィルムと、別途用意したPETフィルムとを重ね合わせ、10秒間放置した。そして、接着剤層付きPETフィルムから、別途用意したPETフィルムを剥がし、以下の基準で密着性を評価した。
◎:剥離時に強い抵抗を感じ、音がする。
○:剥離時に音がする。
×:容易に剥離し、剥離時に音がしない。
【0091】
[初期密着2]
前記接着剤層付きPETフィルムの接着剤層と、アラミド紙(該接着剤層付きPETフィルムと同形状)の面とが接するように、接着剤層付きPETフィルムと、アラミド紙とを重ね合わせ、80℃に調整されているラミネーターを用いて貼り付けた。そして、常温下で、接着剤層付きPETフィルムから、アラミド紙を剥がし、以下の基準で密着性を評価した。
◎:アラミド紙が材料破壊する。
○:一部接着層にアラミド紙が残存して剥離する。
×:簡単に剥離する。
【0092】
[加工適性]
前記接着剤層付きPETフィルムの接着剤層と、アラミド紙(該接着剤層付きPETフィルムと同形状)の面とが接するように、接着剤層付きPETフィルムと、アラミド紙とを重ね合わせ、80℃に調整されているラミネーターを用いて貼り付けた。そして、以下の基準で加工適性を評価した。
◎:きれいに貼り付けられた。
○:歪は確認できるが、皺や浮きはない。
×:歪や皺により貼り付けが上手くいかず、浮きがある。
【0093】
[耐熱評価 255℃]
前記接着剤層付きPETフィルムの接着剤層と、アラミド紙(該接着剤層付きPETフィルムと同形状)の面とが接するように、接着剤層付きPETフィルムと、アラミド紙とを重ね合わせ、80℃に調整されているラミネーターを用いて貼り付けた。
希釈した接着剤(固形分25%)を前記接着剤層付きPETフィルムの接着剤層側とは反対側全面に塗布し、その後、100℃で1分間乾燥させた。なお、塗工は、乾燥後の接着剤層の厚みが12μmとなる様に行った。そして、前記接着剤層付きPETフィルムの新たに形成した接着剤層と、アラミド紙(該接着剤層付きPETフィルムと同形状)の面とが接するように、接着剤層付きPETフィルムと、アラミド紙とを重ね合わせ、80℃に調整されているラミネーターを用いて貼り付けた。
これにより、アラミド紙/PET/アラミド紙の構成となる積層シートを得た。
そして、この積層シートを100℃のオーブン中に12時間放置し、硬化反応を進行させた。
次に、この積層シートを5cm×5cmに切り出し、255℃のオーブンに24時間放置し、以下の基準で耐熱評価を行った。
◎:255℃の処理後変化なし。
○:255℃の処理で変形するが剥離や膨れは認められない。
×:255℃の処理後剥離や膨れが認められる。
【0094】
[耐熱評価 TG-DTA]
接着剤(固形分30%)を離型紙の一面側全面上に塗布し、その後、100℃で1分間乾燥させた。なお、塗工は、乾燥後の接着剤層の厚みが12μmとなる様に行った。
そして、接着剤層付き離型紙を100℃にて12時間加熱して硬化させ、試験片を得た。
次に、TG−DTA((株)リガク製、TG8120)を用い、空気100ml/分の雰囲気下、常温から5℃/分で昇温を行ってTG−DTA曲線を得た。そして、5%の重量が減少した温度(5%減温度)、50%の重量が減少した温度(50%減温度)に注目し、耐熱性を判断した。尚、TG−DTAの5%減温度は短期的な耐熱性を示し、50%減温度は長期的な耐熱性を示す。評価は以下の様にTG−DTAより耐熱性を判断した。
◎:5%減温度が280℃以上、及び50%減温度が350℃以上である。
○:◎以外で、且つ、5%減温度が200℃以上、及び50%減温度が300℃以上である。
×:◎又は○以外
【0095】
[溶液安定性(貯蔵安定性)]
接着剤たる塗工液を容器に入れて密栓し、40℃のオーブン中で4週間保管を行った。
また、オーブンに投入前の接着剤たる塗工液の初期粘度(25℃)と、40℃のオーブン中で4週間保管した後、25℃に戻した時の接着剤たる塗工液の粘度(処理後の粘度)とを測定した。
なお、粘度は、単一円筒形回転粘度計を用い、JIS Z8803:2011に準拠した方法で測定した。
そして、以下の基準で貯蔵安定性の評価を行った。
○:処理後の粘度が、初期粘度の2倍未満である。
×:処理後の粘度が、初期粘度の2倍以上である。
【0096】
結果を下記表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
以上より、本発明に係る接着剤は、接着剤として、特にプラスチックフィルム用接着剤として、良好な耐熱性を有する接着剤であることがわかる。