【解決手段】クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管であって、該継目無管の材質が、0.01〜0.06質量%のFe又は0.04〜0.06質量%のNiのいずれかと、0.004〜0.040質量%のPと、を含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、該継目無管の外径D(mm)に対する肉厚(mm)(t)の比(t/D)が0.04以下であり、継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、伸び(δ)が40%以上である継目無管。更にFeの含有量が0.025〜0.040質量%であることが好ましく、継目無管の寿命
前記レベルワウンドコイルが、コイル軸を垂直に配置して、前記コイルの円筒状の内面側から前記継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルであることを特徴とする請求項4又は5いずれか1項記載のレベルワウンドコイル。
請求項1〜3いずれか1項記載の継目無管又は請求項4又は5いずれか1項記載のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られたクロスフィンチューブ型熱交換器。
請求項1〜3いずれか1項記載の継目無管又は請求項4又は5いずれか1項記載のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法。
前記レベルワウンドコイルが、コイル軸を垂直に配置して、前記コイルの円筒状の内面側から前記継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルであることを特徴とする請求項11記載のレベルワウンドコイル。
請求項9又は10いずれか1項記載の継目無管又は請求項11又は12いずれか1項記載のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られたクロスフィンチューブ型熱交換器。
請求項9又は10いずれか1項記載の継目無管又は請求項11又は12いずれか1項記載のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は2に記載されているような銅合金製の継目無管が用いられているルームエアコン、パッケージエアコン等の空調機用熱交換器、冷凍機等では、それらの廃却の際、機器を分解して、各材料をリサイクルする場合に、銅合金製の継目無管のリサイクル先が、銅以外に添加されている多量の合金元素の存在により制限され、銅合金製の継目無管のリサイクル材としての価値が低くなってしまう。また、銅合金製の継目無管を製造する際、製造工程で発生する屑を再溶解して使用するときに、その使用先が制限されると共に、添加されている合金元素による溶解炉の汚染が生じる。
【0006】
このようなことから、継目無管を構成する銅材料として、リサイクル性に支障をきたすような多量の合金元素を含まない銅材料を採用した上で、耐圧強度を高くしつつ、薄肉化したいという要求がある。
【0007】
りん脱酸銅には、銅合金のように、固溶強化又は析出強化という手段を用いることはできないが、加工硬化という手段を用いて高強度化することが、従来より行われていた。例えば、銅管を加工する最終工程にて、所定の加工度を、引き抜き加工(抽伸加工)で加えることが、従来より行われていた。
【0008】
しかしながら、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管の場合、熱交換器に組み付ける工程で、ヘアピン曲げ(U曲げ)と呼ばれる強加工を行う際に、加工硬化により強度を向上させた薄肉のりん脱酸銅継目無管を使用すると、耐力が200MPa程度、伸びが30%未満程度となって、正常な曲げが行えなくなるという問題が生じる。具体的には、曲げの内側部分にしわが発生したり、曲げ部分が扁平化したり、外観品質上の価値を著しく損なう。極端な場合、破断が生じる。
【0009】
特に、伝熱管の細径化及び薄肉化がなされ、ヘアピン曲げピッチが小さく厳しいヘアピン曲げ条件で行われている現状では、具体的には、外径に対する肉厚の比(t/D)が0.04以下まで薄肉化がなされ、ヘアピン曲げピッチが小さく厳しいヘアピン曲げ条件で行われる場合には、正常なヘアピン曲げを行うことが益々難しくなっている。
【0010】
また、特許文献3には、継目無管にFeを添加することにより、強度を高く、且つ、ヘアピン曲げ等の加工性を良好することが記載されている。しかし、特許文献3の銅合金製の継目無管は、外径が太く且つt/Dも0.04よりも大きいものであり、近年要求されるような細径化及び薄肉化がなされたものではなかった。
【0011】
そして、特に、強度が280MPa以上と高くなると、より細径化及び薄肉化は難しくなり、ヘアピン曲げピッチが小さく厳しいヘアピン曲げ条件での加工が難しかった。
【0012】
従って、本発明の目的は、径が細く且つ薄肉化がなされた継目無管において、強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる継目無管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、銅材料を、りん脱酸銅に特定の元素を微量に特定量添加したものとすることにより、引張強さ(σB)が高いにも関わらず、0.2%耐力(σ0.2)が低く、伸び(δ)が高い継目無管が得られること、そして、引張強さ(σB)が特定の範囲にされ且つ0.2%耐力(σ0.2)や伸び(δ)が特定の範囲にされている継目無管は、強度が高いにも関わらず、ヘアピン曲げを正常に行うことができること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管であって、
該継目無管の材質が、0.01〜0.06質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とする継目無管を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、継目無管を巻き回し、円筒状に整列多層巻きにして作製されたレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.01〜0.06質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルを提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、本発明(1)の継目無管又は本発明(2)のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られたクロスフィンチューブ型熱交換器を提供するものである。
【0017】
また、本発明(4)は、本発明(1)の継目無管又は本発明(2)のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明(5)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管であって、
該継目無管の材質が、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とする継目無管を提供するものである。
【0019】
また、本発明(6)は、継目無管を巻き回し、円筒状に整列多層巻きにして作製されたレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルを提供するものである。
【0020】
また、本発明(7)は、本発明(5)の継目無管又は本発明(6)のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られたクロスフィンチューブ型熱交換器を提供するものである。
【0021】
また、本発明(8)は、本発明(5)の継目無管又は本発明(6)のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、径が細く且つ薄肉化がなされた継目無管において、強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる継目無管を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第一の形態の継目無管(以下、本発明の継目無管(1)とも記載する。)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管であって、
該継目無管の材質が、0.01〜0.06質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とする継目無管である。
【0025】
本発明の継目無管(1)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管である。つまり、本発明の継目無管(1)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のときに、ヘアピン曲げ加工がなされ、フィン材に組み付けられることにより、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造に用いられる継目無管である。
【0026】
本発明の継目無管(1)の材質は、りん脱酸銅に微量のFeを添加した銅合金であり、リサイクル性に支障をきたすような多量の合金元素を含まない。
【0027】
本発明の継目無管(1)に係る銅合金は、0.01〜0.06質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる。
【0028】
本発明の継目無管(1)に係る銅合金が、Feを0.01〜0.06質量%含有すること、好ましくはFeを0.025〜0.040質量%含有することにより、引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が適正にバランスされた継目無管となる。Feを含有しないりん脱酸銅では、加工硬化により必要な引張強さ(σB)を満たすようにすると、0.2%耐力(σ0.2)が高くなり、伸び(δ)が低くなってしまうため、これらをバランスさせることは非常に難しかった。そこで、本発明の継目無管では、銅材料の加工硬化による引張強さ(σB)の向上を若干抑え、Feを0.01〜0.06質量%含有することにより、Fe添加による強度増加で、引張強さ(σB)の不足分を補うことによって、0.2%耐力(σ0.2)の上昇及び伸び(δ)の低下を抑えることが可能となる。このようなことから、Fe元素を上記範囲で含有する本発明の継目無管(1)は、りん脱酸銅製の継目無管とは異なり、継目無管の製造において、引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を、本発明の継目無管(1)に規定の範囲に調節することが容易となる。一方、りん脱酸銅製の継目無管では、引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を、本発明に規定の範囲に調節することが、製造上難しい。銅合金中のFe含有量が、0.01質量%未満では、強度増加が不十分であり、薄肉化を図るという本発明の効果が得られず、また、0.06質量%を超えると、リサイクル性に障害となるとともに、耐力の増大によってヘアピン曲げ等の曲げ加工性に支障をきたす。更に、本発明の継目無管に係る銅合金のFe含有量が、0.025〜0.040質量%であることが、0.2%耐力(σ0.2)の上昇及び伸び(δ)の低下を抑えつつ、引張強さ(σB)を向上させる効果を高くすることができるので、継目無管を極めて薄肉化すること、例えば、t/Dを0.035以下とすることが可能となる点で、好ましい。
【0029】
銅合金中のPは、脱酸目的で添加される。本発明の継目無管に係る銅合金のP含有量が、0.004〜0.040質量%であることにより、材料中の脱酸が十分になる。一方、銅合金中のP含有量が、0.004質量%未満だと、脱酸が不十分となり、また、0.040質量%を超えると、銅合金の熱伝導性が低くなる。
【0030】
本発明の継目無管(1)の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.04以下、好ましくは0.02〜0.04、特に好ましくは0.02〜0.035である。t/Dが上記範囲にあることにより、継目無管として細径及び薄肉化に十分対応したものとなる。
【0031】
本発明の継目無管(1)の外径D(mm)は、3〜8mm、特に好ましくは4〜7mmである。また、本発明の継目無管の肉厚t(mm)は、継目無管の外径(D)と外径に対する肉厚の比(t/D)により、定められるが、通常、肉厚は0.15〜0.30mmが好ましい。
【0032】
本発明の継目無管(1)の引張強さ(σB)は、245MPa以上、好ましくは245〜265MPaである。継目無管の引張強さが上記範囲にあることにより、薄肉化によっても十分な耐圧強度を有することができる。一方、継目無管の引張強度が上記範囲未満だと、薄肉化したときに、耐圧強度が不足する。また、継目無管の引張強さが265MPaを超えると、0.2%耐力(σ0.2)を130MPa以下、且つ、伸び(δ)を40%以上とすることが困難となり易くなる。
【0033】
本発明の継目無管(1)の0.2%耐力(σ0.2)は、130MPa以下、好ましくは80〜120MPaである。また、本発明の継目無管(1)の伸び(δ)は、40%以上、好ましくは40〜55%である。継目無管の0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が上記範囲にあることにより、ヘアピン曲げ加工性が良好となる。一方、継目無管の0.2%耐力が上記範囲を超え、伸びが上記範囲を下回ると、曲げピッチPが小さい強加工(例えば、
図1に示す曲げピッチPが20mm以下のヘアピン加工)を行うことが困難となり、ヘアピン曲げ加工のときに、曲げ内側部分にしわが発生したり、管が扁平化したり、極端な場合には破損する。また、継目無管の0.2%耐力が80MPa未満だと、曲げ加工に供する以前に材料のたわみや曲がりの程度が増加することで、曲げ加工工程における座屈や詰まりなどの不具合が生じ易くなる。なお、曲げピッチPとは、
図1に示すように、ヘアピン曲げにより略平行に並ぶ2つ継目無管の管軸(符号1)間の距離である。
【0034】
本発明の継目無管(1)の形態例としては、内面溝が形成されていない内面平滑管(ベアー管)及び内面溝が形成されている内面溝付管がある。内面平滑管の場合、継目無管の外径Dとは、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面における管の外径であり、継目無管の肉厚tとは、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面における管の肉厚である。また、内面溝付管の場合、継目無管の外径Dとは、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面における管の外径であり、継目無管の肉厚tとは、
図2に示すように、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面において、内面溝の最も深い位置sの管の厚み(底肉厚)である。
【0035】
t/Dが大きい継目無管、具体的には、t/Dが0.04を超える継目無管は、比較的ヘアピン曲げ加工がし易いため、t/Dが大きい場合、具体的には、t/Dが0.04を超える場合は、0.2%耐力及び伸びを厳密に規定しなくとも、強度が高く且つヘアピン曲げ加工性が良好な継目無管を得ることは容易である。ところが、継目無管のt/Dが小さくなると、ヘアピン曲げ加工をし難くなるため、t/Dが0.04以下の場合には、0.2%耐力及び伸びを規定しないと、ヘアピン曲げ加工性が良好な継目無管を得ることは困難となる。そして、径が細くなると、具体的には、外径が3〜8mm(あるいは外径が4〜7mm)になると、ヘアピン曲げ加工性が良好な継目無管を得ることは更に困難となる。
【0036】
本発明の継目無管(1)は、Feの含有量が上記範囲であり且つ0.2%耐力及び伸びが上記範囲であることにより、t/Dが0.04以下と肉厚が薄くても、強度が高く且つヘアピン曲げ加工性が良好となる。更に、本発明の継目無管(1)は、Feの含有量が上記範囲であり且つ0.2%耐力及び伸びが上記範囲であることにより、t/Dが0.04以下と肉厚が薄く且つ外径が3〜8mm(あるいは、外径が4〜7mm)と細くても、強度が高く且つヘアピン曲げ加工性が良好となる。特に、本発明の継目無管(1)のFeの含有量が0.025〜0.040質量%であることにより、強度が280MPa以上と非常に高くても、ヘアピン曲げ加工性が良好となる。
【0037】
本発明の第一の形態のレベルワウンドコイル(以下、本発明のレベルワウンドコイル(1)とも記載する。)は、継目無管を巻き回し、円筒状に整列多層巻きにして作製されたレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.01〜0.06質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0038】
クロスフィンチューブ型熱交換器の製造では、通常、継目無管を巻き回したコイルから、継目無管を巻き解き、巻き解いた継目無管を、ヘアピン曲げ加工に供するが、コイルが円筒状に整列多層巻きされたレベルワウンドコイルであることが多い。つまり、クロスフィンチューブ型熱交換器に用いられる継目無管は、多くの場合、レベルワウンドコイルから巻き解かれた継目無管である。
【0039】
レベルワウンドコイルとは、ボビンに継目無管が円筒状に整列多層巻きされたものであり、円筒形状の内面側から円筒状に巻かれた第一層、第二層、第三層・・・第n層と順に、円筒形状の外側面の最終第n層まで整列多層巻きされたものである。レベルワウンドコイルには、内面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルと、外面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルとがある。外面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルとしては、例えば、特開2002−370869号公報の
図11等に開示されているレベルワウンドコイルが挙げられる。また、内面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルとしては、例えば、特開2002−370869号公報の
図14等に開示されているレベルワウンドコイルが挙げられる。
【0040】
レベルワウンドコイルは、クロスフィンチューブ型熱交換器を製造するときに、レベルワウンドコイルの内面側又は外面側から継目無管が巻き解かれるが、レベルワウンドコイルから継目無管が巻き解かれるときに、継目無管には、管を伸ばすことによる加工硬化が加わるため、巻き解かれた後の継目無管の0.2%耐力が、巻き解かれる前の継目無管の0.2%耐力に比べ、増加する。そのため、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管(レベルワウンドコイルから巻き解かれる前の継目無管)の0.2%耐力は、クロスフィンチューブ型熱交換器を製造するときにヘアピン曲げ加工に供される継目無管(レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管)の0.2%耐力より低くなければならない。そのため、レベルワウンドコイルは、巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)が、巻き解かれるときの増加分を加味した範囲に設計されたものでなければならない。
【0041】
本発明のレベルワウンドコイル(1)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の材質は、0.01〜0.06質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金である。本発明のレベルワウンドコイル(1)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管のFe含有量は、好ましくは0.025〜0.040質量%である。本発明のレベルワウンドコイル(1)に係る銅合金は、本発明の継目無管(1)に係る銅合金と同様である。また、本発明のレベルワウンドコイル(1)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径D及び肉厚tは、本発明の継目無管(1)の外径D及び肉厚tと同様である。
【0042】
本発明のレベルワウンドコイル(1)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.04以下、好ましくは0.02〜0.04、特に好ましくは0.02〜0.035である。
【0043】
本発明のレベルワウンドコイル(1)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)は、245MPa以上、好ましくは、245〜265MPaである。レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のためにヘアピン曲げ加工に供される継目無管の引張強さ(σB)を、245MPa以上、好ましくは245〜265MPaとすることができる。
【0044】
本発明のレベルワウンドコイル(1)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)は、好ましくは120MPa以下、特に好ましくは80〜110MPaである。レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のためにヘアピン曲げ加工に供される継目無管の0.2%耐力(σ0.2)を、130MPa以下、好ましくは80〜120MPaにすることができる。
【0045】
特に、レベルワウンドコイルが、内面側から巻き解かれるレベルワウンドコイルの場合は、継目無管が巻き解かれるときに、継目無管に加わる加工硬化が大きいため、レベルワウンドコイルから巻き解いた後の継目無管の0.2%耐力を130MPa以下とするためには、内面側から巻き解かれるレベルワウンドコイルは、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の材質が、0.01〜0.06質量%のFe、好ましくは0.025〜0.040質量%のFe及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下、好ましくは0.02〜0.04、特に好ましくは0.02〜0.035であり、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上、好ましくは245〜265MPaであり、0.2%耐力(σ0.2)が110MPa以下、好ましくは80〜100MPaであり、伸び(δ)が40%以上、好ましくは40〜55%であるレベルワウンドコイルであることが好ましい。
【0046】
そして、本発明のレベルワウンドコイル(1)では、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が上記範囲に設定されていることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、ヘアピン加工に供される継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上、好ましくは245〜265MPaであり、0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下、好ましくは80〜120MPaであり、且つ、伸び(δ)が40%以上、好ましくは40〜55%となる。
【0047】
本発明の第一の形態のクロスフィンチューブ型熱交換器(以下、本発明のクロスフィンチューブ型熱交換器(1)とも記載する。)は、前記本発明の継目無管(1)又は前記本発明のレベルワウンドコイル(1)から巻き解かれた継目無管をヘアピン曲げ加工し、アルミニウムフィンに組み付けて得られるクロスフィンチューブ型熱交換器である。
【0048】
本発明の第一の形態のクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法(以下、本発明のクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法(1)とも記載する。)は、前記本発明の継目無管(1)又は前記本発明のレベルワウンドコイル(1)から巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法である。
【0049】
本発明の第二の形態の継目無管(以下、本発明の継目無管(2)とも記載する。)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管であって、
該継目無管の材質が、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とする継目無管である。
【0050】
本発明の継目無管(2)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の継目無管である。つまり、本発明の継目無管(2)は、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のときに、ヘアピン曲げ加工がなされ、フィン材に組み付けられることにより、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造に用いられる継目無管である。
【0051】
本発明の継目無管(2)の材質は、りん脱酸銅に微量のNiを添加した銅合金であり、リサイクル性に支障をきたすような多量の合金元素を含まない。
【0052】
本発明の継目無管(2)に係る銅合金は、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる。
【0053】
本発明の継目無管(2)に係る銅合金が、Niを0.04〜0.06質量%含有することにより、引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が適正にバランスされた継目無管となる。Niを含有しないりん脱酸銅では、加工硬化により必要な引張強さ(σB)を満たすようにすると、0.2%耐力(σ0.2)が高くなり、伸び(δ)が低くなってしまう。そのため、これらをバランスさせることは非常に難しかった。そこで、本発明の継目無管(2)では、銅材料の加工硬化による引張強さ(σB)の向上を若干抑え、Niを0.04〜0.06質量%含有することにより、Ni添加による強度増加で、引張強さ(σB)の不足分を補うことによって、0.2%耐力(σ0.2)の上昇及び伸び(δ)の低下を抑えることが可能となる。このようなことから、Ni原子を上記範囲で含有する本発明の継目無管(2)は、りん脱酸銅製の継目無管とは異なり、継目無管の製造において、引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を、本発明の継目無管(2)に規定の範囲に調節することが容易となる。一方、りん脱酸銅製の継目無管では、引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を、本発明に規定の範囲に調節することが、製造上難しい。銅合金中のNi含有量が、0.04質量%未満では、強度増加が不十分であり、薄肉化を図るという本発明の効果が得られず、また、0.06質量%を超えると、リサイクル性に障害となるとともに、耐力の増大によってヘアピン曲げ等の曲げ加工性等に支障をきたす。
【0054】
銅合金中のPは、脱酸目的で添加される。本発明の継目無管(2)に係る銅合金のP含有量が、0.004〜0.040質量%であることにより、材料中の脱酸が十分になる。一方、銅合金中のP含有量が、0.004質量%未満だと、脱酸が不十分となり、また、0.040質量%を超えると、銅合金の熱伝導性が低くなる。
【0055】
本発明の継目無管(2)の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.04以下、好ましくは0.02〜0.04、特に好ましくは0.02〜0.035である。t/Dが上記範囲にあることにより、継目無管として細径及び薄肉化に十分対応したものとなる。
【0056】
本発明の継目無管(2)の外径D(mm)は、3〜8mm、特に好ましくは4〜7mmである。また、本発明の継目無管の肉厚t(mm)は、継目無管の外径(D)と外径に対する肉厚の比(t/D)により、定められるが、通常、肉厚は0.15〜0.30mmが好ましい。
【0057】
本発明の継目無管(2)の引張強さ(σB)は、245MPa以上、好ましくは245〜265MPaである。継目無管の引張強さが上記範囲にあることにより、薄肉化によっても十分な耐圧強度を有することができる。一方、継目無管の引張強度が上記範囲未満だと、薄肉化したときに、耐圧強度が不足する。また、継目無管の引張強さが265MPaを超えると、0.2%耐力(σ0.2)を130MPa以下、且つ、伸び(δ)を40%以上とすることが困難となり易くなる。
【0058】
本発明の継目無管(2)の0.2%耐力(σ0.2)は、130MPa以下、好ましくは80〜120MPaである。また、本発明の継目無管(2)の伸び(δ)は、40%以上、好ましくは40〜55%である。継目無管の0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が上記範囲にあることにより、ヘアピン曲げ加工性が良好となる。一方、継目無管の0.2%耐力が上記範囲を超え、伸びが上記範囲を下回ると、曲げピッチPが小さい強加工を行うことが困難となり、ヘアピン曲げ加工のときに、曲げ内側部分にしわが発生したり、管が扁平化したり、極端な場合には破損する。また、継目無管の0.2%耐力が80MPa未満だと、曲げ加工に供する以前に材料のたわみや曲がりの程度が増加することで、曲げ加工工程における座屈や詰まりなどの不具合が生じ易くなる。
【0059】
本発明の継目無管(2)の形態例としては、内面溝が形成されていない内面平滑管(ベアー管)及び内面溝が形成されている内面溝付管がある。
【0060】
本発明の継目無管(2)は、Niの含有量が上記範囲であり且つ0.2%耐力及び伸びが上記範囲であることにより、t/Dが0.04以下と肉厚が薄くても、強度が高く且つヘアピン曲げ加工性が良好となる。更に、本発明の継目無管(2)は、Niの含有量が上記範囲であり且つ0.2%耐力及び伸びが上記範囲であることにより、t/Dが0.04以下と肉厚が薄く且つ外径が3〜8mm(あるいは、外径が4〜7mm)と細くても、強度が高く且つヘアピン曲げ加工性が良好となる。
【0061】
本発明の第二の形態のレベルワウンドコイル(以下、本発明のレベルワウンドコイル(2)とも記載する。)は、継目無管を巻き回し、円筒状に整列多層巻きにして作製されたレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上であり、
0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下であり、
伸び(δ)が40%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルである。
【0062】
本発明のレベルワウンドコイル(2)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の材質は、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金である。本発明のレベルワウンドコイル(2)に係る銅合金は、本発明の継目無管(2)に係る銅合金と同様である。また、本発明のレベルワウンドコイル(2)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径D及び肉厚tは、本発明の継目無管(2)の外径D及び肉厚tと同様である。
【0063】
本発明のレベルワウンドコイル(2)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.04以下、好ましくは0.02〜0.04、特に好ましくは0.02〜0.035である。
【0064】
本発明のレベルワウンドコイル(2)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)は、245MPa以上、好ましくは、245〜265MPaである。レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のためにヘアピン曲げ加工に供される継目無管の引張強さ(σB)を、245MPa以上、好ましくは245〜265MPaとすることができる。
【0065】
本発明のレベルワウンドコイル(2)において、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)は、好ましくは120MPa以下、特に好ましくは80〜110MPaである。レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のためにヘアピン曲げ加工に供される継目無管の0.2%耐力(σ0.2)を、130MPa以下、好ましくは80〜120MPaにすることができる。
【0066】
特に、レベルワウンドコイルが、内面側から巻き解かれるレベルワウンドコイルの場合は、継目無管が巻き解かれるときに、継目無管に加わる加工硬化が大きいため、レベルワウンドコイルから巻き解いた後の継目無管の0.2%耐力を130MPa以下とするためには、内面側から巻き解かれるレベルワウンドコイルは、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の材質が、0.04〜0.06質量%のNi及び0.004〜0.040質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.04以下、好ましくは0.02〜0.04、特に好ましくは0.02〜0.035であり、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上、好ましくは245〜265MPaであり、0.2%耐力(σ0.2)が110MPa以下、好ましくは80〜100MPaであり、伸び(δ)が40%以上、好ましくは40〜55%であるレベルワウンドコイルであることが好ましい。
【0067】
そして、本発明のレベルワウンドコイル(2)では、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が上記範囲に設定されていることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、ヘアピン加工に供される継目無管の引張強さ(σB)が245MPa以上、好ましくは245〜265MPaであり、0.2%耐力(σ0.2)が130MPa以下、好ましくは80〜120MPaであり、且つ、伸び(δ)が40%以上、好ましくは40〜55%となる。
【0068】
本発明の第二の形態のクロスフィンチューブ型熱交換器(以下、本発明のクロスフィンチューブ型熱交換器(2)とも記載する。)は、前記本発明の継目無管(2)又は前記本発明のレベルワウンドコイル(2)から巻き解かれた継目無管をヘアピン曲げ加工し、アルミニウムフィンに組み付けて得られるクロスフィンチューブ型熱交換器である。
【0069】
本発明の第二の形態のクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法(以下、本発明のクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法(2)とも記載する。)は、前記本発明の継目無管(2)又は前記本発明のレベルワウンドコイル(2)から巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法である。
【0070】
本発明の継目無管(1)又は(2)を製造する方法について述べる。本発明の第一の形態の継目無管の製造方法は、継目無管が内面平滑管である場合の製造方法である。また、本発明の第二の形態の継目無管の製造方法は、継目無管が内面溝付管である場合の製造方法である。
【0071】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法は、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、最終熱処理工程と、を順に行い、熱間押出工程と最終熱処理工程との間には中間焼鈍処理を行わない継目無管の製造方法である。
【0072】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法では、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、最終熱処理工程と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、鋳造工程の直後に熱間押出工程を、熱間押出工程の直後に冷間加工工程を、冷間加工工程の直後に最終熱処理工程を行うということではなく、鋳造工程より後に熱間押出工程を、熱間押出工程より後に冷間加工工程を、冷間加工工程より後に最終熱処理工程を行うということ指す。
【0073】
また、本発明の第二の形態の継目無管の製造方法は、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、最終熱処理工程と、を順に行い、熱間押出工程と中間焼鈍処理(A)との間には他の中間焼鈍処理を行わない継目無管の製造方法である。
【0074】
本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、最終熱処理工程と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、鋳造工程の直後に熱間押出工程を、熱間押出工程の直後に冷間加工工程を、冷間加工工程の直後に中間焼鈍処理(A)を、中間焼鈍処理(A)の直後に転造加工工程を、転造加工工程の直後に最終熱処理工程を行うということではなく、鋳造工程より後に熱間押出工程を、熱間押出工程より後に冷間加工工程を、冷間加工工程より後に中間焼鈍処理(A)を、中間焼鈍処理(A)より後に転造加工工程を、転造加工工程より後に最終熱処理工程を行うということ指す。
【0075】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法の鋳造工程から冷間加工工程までと、本発明の第二の形態の継目無管の製造方法の鋳造工程から冷間加工工程までとは、同様である。
【0076】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の継目無管の製造方法に係る鋳造工程は、常法に従って、溶解、鋳造し、所定の元素が所定の含有量で配合されているビレットを得る工程である。鋳造工程では、本発明の継目無管(1)の製造方法の場合、例えば、銅の地金、工程内リサイクル材、Cu−Fe母合金、Cu−P母合金等を配合して、Fe及びP含有量が所定の含有量となるように成分調整を行い、また、本発明の継目無管(2)の製造方法の場合、例えば、銅の地金、工程内リサイクル材、Cu−Ni母合金、Cu−P母合金等を配合して、Ni及びP含有量が所定の含有量となるように成分調整を行い、次いで、高周波溶解炉等を用いて、ビレットを鋳造する。
【0077】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、次いで、鋳造工程を行うことにより得られたビレットを熱間押出加工する熱間押出工程を行う。熱間押出工程では、熱間押出加工前にビレットを所定の温度で加熱した後、熱間押出加工を行う。熱間押出加工は、マンドレル押出によって行われる。すなわち、加熱前に、冷間で予め穿孔したビレット、あるいは、押出前に熱間で穿孔したビレットに、マンドレルを挿入した状態で、熱間押出を行なって、継目無熱間押出素管を得る。
【0078】
熱間押出工程を行うことにより得られた継目無熱間押出素管を、熱間押出工程後、速やかに冷却する。冷却は、継目無熱間押出素管を水中へ押し出すこと又は熱間押出後の継目無熱間押出素管を水中へ投入することによって、行われる。
【0079】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、次いで、冷却後の継目無押出素管の冷間加工を行い、管の外径及び肉厚を減じていく冷間加工工程を行う。冷間加工は、冷間での抽伸加工(引き抜き加工)か、あるいは、チューブレーザーによる冷間での圧延加工と冷間での抽伸加工(引き抜き加工)の組み合わせである。冷間加工工程では、圧延加工や抽伸加工等の冷間加工を、複数回行うことができる。なお、本発明の第一の形態の継目無管の製造方法及び本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、冷間加工工程とは、冷間で行う加工の全てを指す。
【0080】
冷間加工工程より後は、本発明の第一の形態の継目無管の製造方法と、本発明の第二の形態の継目無管の製造方法とでは、異なるので、それぞれ説明する。
【0081】
本発明の第一の形態の継目無管の製造方法では、冷間加工工程に次いで、冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管の最終熱処理工程を行う。最終熱処理工程の保持温度及び保持時間は、継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が所定の範囲となるように、適宜選択される。特に、保持温度については、400〜650℃の範囲にて行うことが好ましい。保持温度が400℃未満だと、長時間の熱処理を必要とするため生産性の低下を招き、場合によっては焼鈍が不十分となることがあり、また、650℃を超えると、著しい粒成長が生じ、強度低下や加工性の低下を招く。
【0082】
そして、本発明の第一の形態の継目無管の製造方法では、熱間押出工程と最終熱処理工程との間には、中間焼鈍処理を行わない。この間の冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を99.5%以上とすることが好ましい。なお、冷間加工工程の総加工度とは、冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する冷間加工工程で行う最後の冷間加工後の継目無素管の加工度を指し、下記式(1)に示す断面減少率で表す。
断面減少率(%)=((管の加工前の断面積−管の加工後の断面積)/(管の加工前の断面積))×100 (1)
【0083】
本発明の第一の継目無管の製造方法では、熱間押出工程を行った後、最終熱処理工程を行う前までの間には、中間焼鈍処理を行わず、冷間加工工程の総加工度を上記範囲とし、且つ、最終熱処理工程の保持温度を上記範囲とすることにより、最終熱処理を行い得られる継目無管の引張強さ(σB)を245MPa以上、好ましくは245〜265MPa、0.2%耐力(σ0.2)を130MPa以下、好ましくは80〜120MPa、且つ、伸び(δ)を40%以上、好ましくは40〜55%とすることができる。
【0084】
このように、本発明の第一の形態の継目無管の製造方法を行うことにより、本発明の継目無管(1)又は(2)を得ることができる 。
【0085】
本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、冷間加工工程に次いで、冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管を、400〜700℃の保持温度で加熱する中間焼鈍処理(A)を行う。中間焼鈍処理(A)を行うことにより、転造加工工程での転造加工をし易くする。中間焼鈍処理(A)における保持温度及び保持時間は、転造加工工程によって所定の内面溝形成の加工が可能となる最低限の条件、すなわち、できるだけ温度を低く、できるだけ時間を短くすることが好ましい。本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、中間焼鈍処理(A)を行った後、転造加工工程を行うまでは、他の熱処理を行わない。つまり、中間焼鈍処理(A)は、転造加工工程の前の熱処理である。
【0086】
本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、次いで、中間焼鈍処理(A)後の継目無素管を転造加工する転造加工工程を行う。転造加工は、管材料の内面に、内面溝を形成させる転造加工を行う工程であり、中間焼鈍処理(A)後の
継目無素管内に、外面にらせん状の溝加工を施した転造プラグを配置して、高速回転する複数の転造ボールによって、管の外側から押圧して、管の内面に転造プラグの溝を転写することにより行われる。また、通常、中間焼鈍処理(A)を行った後、縮径加工を行ってから、転造加工工程を行う。
【0087】
本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、次いで、転造加工工程を行うことにより得られた転造加工後の内面溝付管の最終熱処理工程を行う。最終熱処理工程の保持温度は、400〜650℃の温度とすることが好ましい。また、最終熱処理工程の処理時間は、継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が所定の範囲となるように、適宜選択される。
【0088】
そして、本発明の第二の形態の継目無管の製造方法では、熱間押出工程と中間焼鈍処理(A)との間には他の中間焼鈍処理等の熱処理を行わない。この間の冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を99.5%以上とすることが好ましく、且つ、最終熱処理工程の保持温度を上記範囲とすることにより、最終熱処理工程を行い得られる継目無管の引張強さ(σB)を245MPa以上、好ましくは245〜265MPa、0.2%耐力(σ0.2)を130MPa以下、好ましくは80〜120MPa、且つ、伸び(δ)を40%以上、好ましくは40〜55%とすることができる。なお、冷間加工工程の総加工度とは、冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する冷間加工工程で最後に行う冷間加工後の継目無素管の加工度を指す(前記式(1))。
【0089】
このように、本発明の第二の形態の継目無管の製造方法に行うことにより、本発明の継目無管(1)又は(2)を得ることができる。
【0090】
なお、継目無管が内面溝付管の場合、内面溝の寸法パラメータを以下の範囲に設定することにより、管の伝熱性能と曲げ加工性の両方を良好に維持することが可能となり、より好ましい。
・フィン高さをh(mm)、肉厚(底肉厚)をt(mm)としたとき、
h/tが、0.50〜1.2
・リード角をθ(°)、フィン頂角をα(°)としたとき、
θ/αが、0.70以上
なお、フィン高さh、肉厚(底肉厚)t、フィン頂角αは、
図2中の符号h、t及びαである。また、リード角θとは、継目無管の管軸方向に対する内面溝の傾斜角である。
【実施例】
【0091】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0092】
以下に、継目無管が内面溝付管である場合の実施例を示す。
(1)表1〜表4に示す銅合金鋳塊を溶解及び鋳造し、熱間押出用のビレットを作製した。
(2)上記ビレットを加熱し、850℃にて熱間押出を行い、押出素管を得た。次いで、熱間押出した押出素管を、水中に押出して急冷した。
・押出前に熱間で内径約75mm穿孔した。
・押出素管の外径は102mm、内径は75mmであった。
(3)上記押出素管を、ビルガーミル圧延機によって冷間圧延し、圧延素管を得た。
・圧延素管の外径は46mm、内径は39.8mmであった。
・冷間圧延での加工度(断面減少率)は、88.9%であった。
断面減少率(%)=((加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積)×100
(4)上記の圧延素管を、冷間にて抽伸を複数回行い、抽伸素管を得た。
・抽伸素管の寸法(管外径、内径)、冷間抽伸全体での加工度(断面減少率)及び冷間加工の総加工度(断面減少率)を、表1〜表4に示す。
(5)上記の抽伸素管を中間焼鈍し、転造工程に供するための原管を得た。
・中間焼鈍の保持温度を、表1〜表4に示す。
・原管の0.2%耐力(σ0.2)を、表1〜表4に示す。
(6)上記の原管を、ボール転造加工して、内面溝付管Aを得た。
<内面溝付管Aの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(
図2中、符号t):0.26mm
・フィン高さ(
図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(
図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
なお、一部の実施例では、原管の寸法を外径12.7mm、内径11.1mmとし、冷間抽伸全体での加工度は、断面減少率で92.4%、冷間圧延及び冷間抽伸の総加工度、すなわち、冷間加工の総加工度は、断面減少率で99.2%として、同様にボール転造加工して下記寸法諸元の内面溝付管Bとした。
<内面溝付管Bの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(
図2中、符号t):0.23mm
・フィン高さ(
図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(
図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
また、参考例1では、原管の寸法を外径12.7mm、内径11.1mmとし、冷間抽伸全体での加工度は、断面減少率で92.4%、冷間圧延及び冷間抽伸の総加工度、すなわち、冷間加工の総加工度は、断面減少率で99.2%として、同様にボール転造加工して下記寸法諸元の内面溝付管Cとした。
<内面溝付管Cの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(
図2中、符号t):0.32mm
・フィン高さ(
図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(
図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
(7)上記の内面溝付管を、円筒状の整列多層巻きに巻き取り、内面側から巻き解かれる方式のLWCを作製した。その後、下記の条件の最終熱処理を行い、継目無管(レベルワウンドコイル(LWC))を得た。
・熱処理方法:ローラーハース連続焼鈍炉にて行った。
・条件:保持温度は表1〜表4に示す通りであり、昇温速度は25℃から保持温度まで5.0℃/分であり、冷却速度は保持温度から25℃まで2.2℃/分であった。
・最終熱処理後の継目無管(LWC)の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0 .2)、伸び(δ)を表1〜表4に示す。
(8)上記のLWCの内面側から継目無管を巻き解き、継目無管(クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用)を得た。
・継目無管(クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用)の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を表1〜表4に示す。
(9)上記の継目無管(クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用)を用い、下記の条件にてヘアピン曲げ加工試験を行い、加工性を評価した。その結果を表1に示す。
・ヘアピン曲げ加工試験の方法:片首振りボールマンドレルの肩部と曲げ金型の曲げ開始位置が一直線上に並んだ位置を0点とし、曲げ型R部から遠ざかる方向へマンドレル位置を2.0〜5.5mmの範囲でずらしながら、ヘアピン加工性の評価を行った。
・ヘアピン曲げ加工試験の条件:ボールマンドレル外径が5.90mm、曲げピッチが20mm
・各実施例及び比較例の継目無管について、20本ずつ試験を行った。
<評価>
(I)しわ発生
ヘアピン曲げの内側部分にしわが発生している継目無管の数を数え、下記式にて、しわ発生率を求めた。しわ発生率が0%の場合を合格(○)とした。
しわ発生率(%)=(しわが発生した管の本数/試験した管の本数)×100
(II)扁平率
ヘアピン曲げ後の曲げ部の扁平率を下記にて算出した。
扁平率(%)=((最大外径−最小外径)/呼称外径)×100
なお、測定位置は、ヘアピン曲げ部の45°、90°、135°位置であり、呼称外径は、本例では7.0mmである。なお、ヘアピン曲げ部の45°、90°、135°とは、
図1に示すように、継目無管を45°曲げた位置(符号a)、90°曲げた位置(符号b)、135°曲げた位置(符号c)である。
試験した各継目無管の扁平率を求め、扁平率の平均値が15%以下の場合を合格(○)とした。
<引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)>
継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)は、JIS Z2241に準拠して測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
更に、より厳しい条件でのヘアピン曲げ加工試験を行った。この厳しい条件でのヘアピン曲げ加工試験では、曲げピッチを20mmとすることに代えて、曲げピッチを15mmとすること以外は、前記(9)のヘアピン曲げ加工試験と同様にして、ヘアピン曲げ加工試験を行った。その結果、Feが0.037質量%の場合、t/Dが0.037である実施例4でも、t/Dが0.033である実施例5でも、しわ発生はなかった。一方、Feが0.042質量%の場合、t/Dが0.037である実施例6では、しわ発生はなかったが、t/Dが0.033である実施例7では、軽度のしわ発生(20本中2本)が見られた。
前記レベルワウンドコイルが、コイル軸を垂直に配置して、前記コイルの円筒状の内面側から前記継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルであることを特徴とする請求項4又は5いずれか1項記載のレベルワウンドコイル。
請求項1〜3いずれか1項記載の継目無管又は請求項4又は5いずれか1項記載のコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られたクロスフィンチューブ型熱交換器。