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特開2016-121409パルプ製造用浸透促進剤及びこれを用いるクラフトパルプの製造方法
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  • 特開2016121409-パルプ製造用浸透促進剤及びこれを用いるクラフトパルプの製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-121409(P2016-121409A)
(43)【公開日】2016年7月7日
(54)【発明の名称】パルプ製造用浸透促進剤及びこれを用いるクラフトパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 1/00 20060101AFI20160610BHJP
【FI】
   D21C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-260919(P2014-260919)
(22)【出願日】2014年12月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】松村 陽平
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AB14
4L055AC06
4L055BA25
4L055BA34
4L055EA32
4L055FA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蒸解液の原料チップへの浸透性を向上させて、蒸解効率を改善できるパルプ製造用浸透促進剤の提供。
【解決手段】疎水性シリカ、脂肪酸アミド、ワックス及び合成樹脂から選ばれる少なくとも1種の核剤A及び基油Bを含有し、核剤A及び基油Bの重量に基づいて、核剤Aの含有量が0.1〜20重量%、基油Bの含有量が80〜99.9重量%であるパルプ製造用浸透促進剤。チップビン、スチーミングベッセル、メタルトラップ、チップシュート、高圧フィーダーを経てクラフト蒸解釜へ原料チップを供給する原料チップ供給工程を含むクラフトパルプの製造方法において、高圧フィーダーからメタルトラップへ循環するチップシュート循環液に上記の浸透促進剤を添加する添加工程;又は高圧フィーダーから蒸解釜頂部へ循環する蒸解釜頂部循環液に上記の浸透促進剤を添加する添加工程を含むクラフトパルプの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性シリカ(Aa)、脂肪酸アミド(Ab)、ワックス(Ac)及び合成樹脂(Ad)からなる群より選ばれる少なくとも1種の核剤(A)及び基油(B)を含有してなり、
核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、核剤(A)の含有量が0.1〜20重量%、基油(B)の含有量が80〜99.9重量%であることを特徴とするパルプ製造用浸透促進剤。
【請求項2】
さらに界面活性剤(C)を含有してなり、界面活性剤(C)の含有量が、核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.01〜20重量%である請求項1に記載の浸透促進剤。
【請求項3】
チップビン(C23)、スチーミングベッセル(C26)、メタルトラップ(C28)、チップシュート(C29)、高圧フィーダー(C30)を経てクラフト蒸解釜へ原料チップを供給する原料チップ供給工程を含むクラフトパルプの製造方法において、
高圧フィーダー(C30)からメタルトラップ(C28)へ循環するチップシュート循環液(1)に請求項1若しくは2に記載のパルプ製造用浸透促進剤を添加する添加工程(1);又は
高圧フィーダー(C30)から蒸解釜頂部へ循環する蒸解釜頂部循環液(2)に請求項1若しくは2に記載のパルプ製造用浸透促進剤を添加する添加工程(2)を含むことを特徴とするクラフトパルプの製造方法。
【請求項4】
浸透促進剤の添加量が、原料チップの絶乾重量に基づいて、0.001〜0.1重量%である請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ製造用浸透促進剤及びこれを用いるクラフトパルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ製造用浸透促進剤として、水溶性ジヒドロキシアントラセン化合物と、これをリグノセルロース物質への浸透を促進させるための浸透促進剤(ポリエチレンオキシドの多環フェノール付加物又はポリエチレンオキサイドポリプロピレンオキサイドコポリマーの高級脂肪酸、アルコール、アルキルフェノール、多環フェノール付加物及びこれらの硫酸エステル塩、燐酸エステル塩)とを添加することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−20276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の浸透促進剤では、添加しても蒸解液の原料チップへの浸透性の向上が不十分であり、蒸解効率を大きく改善することは出来ないという問題がある。さらに、蒸解工程で得られるパルプの白色度が低く、漂白工程における漂白剤{酸素、二酸化塩素、塩素、次亜塩素、過酸化水素、水酸化ナトリウム及びオゾン等}を大量に必要とするという問題がある。
本発明の目的は、蒸解液(循環液を含む。)の原料チップへの浸透性を向上させて、蒸解効率を改善できる浸透促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のパルプ製造用浸透促進剤の特徴は、疎水性シリカ(Aa)、脂肪酸アミド(Ab)、ワックス(Ac)及び合成樹脂(Ad)からなる群より選ばれる少なくとも1種の核剤(A)及び基油(B)を含有してなり、
核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、核剤(A)の含有量が0.1〜20重量%、基油(B)の含有量が80〜99.9重量%である点を要旨とする。
【0006】
本発明のクラフトパルプの製造方法の特徴は、チップビン(C23)、スチーミングベッセル(C26)、メタルトラップ(C28)、チップシュート(C29)、高圧フィーダー(C30)を経てクラフト蒸解釜へ原料チップを供給する原料チップ供給工程を含むクラフトパルプの製造方法において、
高圧フィーダー(C30)からメタルトラップ(C28)へ循環するチップシュート循環液(1)に上記のパルプ製造用浸透促進剤を添加する添加工程(1);又は
高圧フィーダー(C30)から蒸解釜頂部へ循環する蒸解釜頂部循環液(2)に上記のパルプ製造用浸透促進剤を添加する添加工程(2)を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパルプ製造用浸透促進剤は、蒸解液(循環液を含む。)の原料チップへの浸透性を著しく向上できるので、蒸解効率を大きく改善できる。さらに、白色度の高いパルプが効率よく得られる。
【0008】
本発明のクラフトパルプの製造方法は、上記の浸透促進剤を使用するため、高い蒸解効率を発現し、優れた品質(白色度等)を持つクラフトパルプを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例において浸透性を試験するための浸透性試験装置を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
核剤(A)としては、基油(B)に溶解せず、この基油(B)に分散できるものが含まれ、疎水性シリカ(Aa)、脂肪酸アミド(Ab)、ワックス(Ac)及び合成樹脂(Ad)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0011】
疎水性シリカ(Aa)としては、シリカ粉末を疎水化剤で疎水化処理した疎水性シリカが含まれる。
【0012】
疎水化剤としては、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーン樹脂、ハロシラン及びアルコキシシラン等が含まれる。シリコーンオイルとしては、動粘度10〜3000(mm/s、25℃)のジメチルポリシロキサン等が挙げられ、シクロテトラジメチルシロキサン等も使用できる。変性シリコーンとしては、上記のジメチルポリシロキサンのメチル基の一部を炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜4のアルコキシル基、フェニル基、水素原子、ハロゲン(塩素及び臭素等)原子及び/又は炭素数2〜6のアミノアルキル基等に置き換えたもの等が含まれる。シリコーン樹脂としては、RSiO(4−n)/2(式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基又はフェニル基、nは0〜3の整数を表し、RSiO1/2単位、RSiO単位、RSiO3/2単位及び/又はSiO単位の適当な組み合わせから構成される樹脂である。)で表されるシリコーン樹脂等が挙げられる。ハロシランとしては、炭素数1〜12のアルキル基及び/又はアリール基を有するアルキルハロシラン及びアリールハロシランが含まれ、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン及びt−ブチルジメチルクロロシラン等が挙げられる。アルコキシシランとしては、炭素数1〜12のアルキル基若しくはアリール基及び炭素数1〜2のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、並びに炭素数1〜2のアルコキシ基を有するアルコキシシランが含まれ、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0013】
疎水性シリカとしては、市場からも容易に入手でき、たとえば、商品名として、Nipsil SS−10、SS−40、SS−50及びSS−100(東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は東ソー・シリカ株式会社 の登録商標である。)、AEROSIL R972、RX200及びRY200(日本アエロジル株式会社、「AEROSIL」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。 )、SIPERNAT D10、D13及びD17(デグサジャパン株式会社、「SIPERNAT」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。 )、TS−530、TS−610、TS−720(キャボットカーボン社)、AEROSIL R202,R805及びR812(デグサジャパン株式会社)、REOLOSIL MT−10、DM−10及びDM−20S (株式会社トクヤマ、「REOLOSIL」は同社の登録商標である。)、並びにSYLOPHOBIC100、702、505及び603(富士シリシア化学株式会社、「SYLOPHOBIC」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0014】
脂肪酸アミド(Ab)としては、炭素数1〜6のアルキレンジアミン若しくはアルケニレンジアミンと炭素数10〜22の脂肪酸との反応物(脂肪酸ジアミド)及び/又は炭素数1〜22のアルキルアミン、アルケニルアミン若しくはアンモニアと炭素数10〜22の脂肪酸との反応物(脂肪酸モノアミド)が含まれる。
【0015】
脂肪酸ジアミドとしては、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド、エチレンビスミリスチルアミド、エチレンビスラウリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、プロピレンビスステアリルアミド、プロピレンビスパルミチルアミド、プロピレンビスミリスチルアミド、プロピレンビスラウリルアミド、プロピレンビスオレイルアミド、ブチレンビスステアリルアミド、ブチレンビスパルミチルアミド、ブチレンビスミリスチルアミド、ブチレンビスラウリルアミド、ブチレンビスオレイルアミド、メチレンビスラウリルアミド、メチレンビスステアリルアミド及びヘキサメチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。
【0016】
脂肪酸モノアミドとしては、N−ステアリルステアリルアミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド及びステアリルアミド等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、蒸解液の原料チップへの浸透性の観点から、脂肪酸ジアミドが好ましく、さらに好ましくはエチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド、エチレンビスラウリルアミド、メチレンビスステアリルアミド及びヘキサメチレンビスステアリルアミド、特に好ましくはエチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド及びエチレンビスミリスチルアミドである。これらのアミドは、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、上記の好ましいものが主成分として含まれていることが好ましい。
【0018】
なお、主成分とは、脂肪酸アミド(Ab)の重量に基づいて、少なくとも40重量%を含まれる成分を意味し、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上含まれることである。
【0019】
脂肪酸アミド(Ab)中の副成分(主成分以外に含まれる成分)としては、上記の好ましい範囲以外のアミドの他に、未反応アミン及び未反応カルボン酸が含まれる。副成分の含有量(重量%)は、脂肪酸アミド(Ab)の重量に基づいて、60未満が好ましく、さらに好ましくは50未満、特に好ましくは40未満、次に好ましくは30未満、最も好ましくは20未満である。
【0020】
ワックス(Ac)としては、石油精製から副生するワックス、化学合成により得られるワックス、植物から抽出されるワックスが含まれ、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アルコール変性ワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、カルナウバワックス及び木蝋等等が挙げられる。
【0021】
合成樹脂(Ad)としては、エチレン性不飽和モノマー(m1)を構成単位とする合成樹脂(Ad1)及び重縮合・重付加モノマー(m2)を構成単位とする合成樹脂(Ad2)が含まれる。
【0022】
エチレン性不飽和モノマー(m1)としては、公知のエチレン性不飽和モノマー等が含まれ、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル{(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸(2−エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸ステアリル及び(メタ)アクリル酸ベヘニル等};炭素数1〜18のアルコールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体の(メタ)アクリレート{メタノールのプロピレンオキシド30モル付加体の(メタ)アクリル酸エステル、2−エチルヘキサノールのプロピレンオキシド30モル付加体の(メタ)アクリル酸エステル及びステアリルアルコールのエチレンオキシド30付加体の(メタ)アクリル酸エステル等};(メタ)アクリロニトリル;モノビニルアリール{スチレン、メチルスチレン及びヒドロキシスチレン等};(メタ)アクリル酸ジアミノエチル;多官能ビニルモノマー{ジビニルベンゼン、エチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(重合度14)ジ(メタ)アクリレート等};アリルアルコール;アリルアルコールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体{アリルアルコールのプロピレンオキシド2モル付加物等};2−ブテンー1−オール;(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル);(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)のアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体{(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)のプロピレンオキシド4モル付加体等};ブタジエン;イソプレン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;及び酢酸ビニル等が挙げられる。
【0023】
これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、少なくともポリオキシアルキレン基を含有するモノマー{炭素数1〜18のアルコールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体の(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(重合度14)ジ(メタ)アクリレート;アリルアルコールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体;及び(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)のアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体等}を用いることが好ましい。
【0024】
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを示し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
【0025】
エチレン性不飽和モノマー(m1)を構成単位とする合成樹脂(Ad1)は、公知の方法で重合して得ることができる。これらは基油(B)中で反応させてそのまま使用してもよいし、あらかじめ反応して得た合成樹脂(Ad1)と基油(B)とを混合してもよい。
【0026】
重縮合・重付加モノマー(m2)としては、公知の重縮合・重付加モノマーが含まれ、ポリイソシアネート(m21)、ポリアミン(m22)、ポリオール(m23)及びポリカルボン酸(m24)が含まれる。
【0027】
ポリイソシアネート(m21)としては、炭素数8〜16のジイソシアネート{ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び4−4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等}及びこれらの変性体{ジイソシアネートのトリメチロールプロパンの付加体、ビウレット縮合物及びイソシアヌレート縮合物等}等が挙げられる。
【0028】
ポリアミン(m22)としては、炭素数1〜6のポリアミンが含まれ、尿素、メラミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0029】
ポリオール(m23)としては、炭素数2〜6の多価アルコール{エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ジグリセリン及びペンタエリスリトール等};及びこれらの多価アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを水酸基1つ当たり1〜50モル付加した付加体{多価アルコールのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、ブチレンオキシド付加体、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック付加体及びプロピレンオキシド/ブチレンオキシドブロック付加体等}等が挙げられる。
【0030】
ポリカルボン酸(m24)としては、炭素数4〜14のポリカルボン酸が含まれ、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸及びダイマー酸等が挙げられる。
【0031】
重縮合・重付加モノマー(m2)を構成単位とする合成樹脂(Ad2)には、上記のモノマーを構成単位とするポリウレア、ポリウレタン及びポリエステル等が含まれ、公知の方法で反応して得ることができる。これらは基油(B)中で反応させてそのまま使用してもよいし、あらかじめ反応して得た合成樹脂(Ad2)と基油(B)とを混合してもよい。
【0032】
合成樹脂(Ad)は、市場から入手可能であり、たとえば、以下の商品等が使用できる。
アルティフロー FS−7301(三洋化成工業株式会社、エチレン性不飽和モノマー共重合物のポリエーテル分散体、「アルティーフロー」は同社の登録商標である)、ダイミックビーズ UCN−8070CMクリヤー(大日精化工業株式会社、ポリウレタンビーズ、「ダイナミックビーズ」は同社の登録商標である)及びタフチック F−120、F−167(東洋紡株式会社、エチレン性不飽和モノマー共重合物の水分散体;「タフチック」は同社の登録商標である)。
【0033】
これらの核剤のうち、疎水性シリカ(Aa)、脂肪酸アミド(Ab)及び合成樹脂(Ad)が好ましく、さらに好ましくは疎水性シリカ(Aa)及び脂肪酸アミド(Ab)である。
【0034】
核剤(A)の含有量(重量%)は、核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.1〜20が好ましく、さらに好ましくは0.2〜17、特に好ましくは0.3〜14、最も好ましくは0.4〜10である。この範囲であると、蒸解液の原料チップへの浸透性がさらに良好となる。
【0035】
基油(B)としては、鉱油、油脂、モノアルコール脂肪酸エステル、シリコーン及び/又はポリエーテルを用いることができる。
【0036】
鉱油としては、減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製及び水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものを用いることができ、商品名として、コスモピュアスピンG、コスモピュアスピンE、コスモSP−10、コスモニュートラル700及びコスモSC22(以上、コスモ石油株式会社、「コスモ」及び「ピュアスピン」は同社の登録商標である。)、MCオイル P−22、S−10S(以上、出光興産株式会社)、並びにスタノール40(エクソンモービルコーポレーション)等が挙げられる。
【0037】
油脂としては、炭素数6〜22の脂肪酸又はこの混合物とグリセリンとのエステルが含まれ、植物油(なたね油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等)、中鎖脂肪酸グリセライド(商品名として、たとえば、パナセート875;日油株式会社、「パナセート」は同社の登録商標である。)、魚油等が挙げられる。
【0038】
モノアルコール脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜22の脂肪酸と炭素数1〜22のモノアルコールとのエステルが含まれ、オレイン酸メチル、オレイン酸ブチル及びイソステアリン酸メチル等が挙げられる。
【0039】
シリコーンとしては、シリコーンオイル及び変性シリコーンオイルが含まれる。
シリコーンオイルとしては、動粘度10〜50000(mm/s、25℃)のポリジメチルシロキサン等が挙げられ、シクロオクタメチルテトラシロキサン等も含まれる。
変性シリコーンとしては、上記のジメチルシロキサンのメチル基の一部を炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜4のアルコキシル基、フェニル基、水素原子、ハロゲン(塩素及び臭素等)原子、アルコキシポリオキシアルキレンオキシプロピル基(アルコキシの炭素数1〜6、アルキレンの炭素数2〜3、重合度2〜50、オキシエチレン基の重量がオキシアルキレン基全体の重量の20重量%未満、HLB0〜3.4)、アルコキシポリオキシアルキレン基(アルコキシの炭素数1〜6、アルキレンの炭素数2〜3、重合度2〜50、オキシエチレン基の重量がオキシアルキレン基全体の20重量%未満、HLB0〜3.4)及び/又は炭素数2〜6のアミノアルキル基等に置き換えたもの等が含まれる。
【0040】
ポリエーテルとしては、HLB0〜3.4(好ましくは0〜2.9、さらに好ましくは0〜2.4、特に好ましくは0〜1.9)のポリエーテル化合物が使用できる。なお、HLBは、「新・界面活性剤入門」(藤本武彦著、三洋化成工業株式会社、昭和56年10月1日発行)の128〜131頁に記載されている手法(グリフィンのHLB)で求められる。
【0041】
ポリエーテルとしては、炭素数1〜22のモノアルコール、炭素数1〜22のモノカルボン酸又は炭素数1〜22のモノアミンの1モルと炭素数2〜4のアルキレンオキシドの1〜100モルとの反応物や、炭素数2〜6のポリオールの1モルと炭素数2〜4のアルキレンオキシドの1〜300モルとの反応物、(炭素数2〜6のポリオールの1モルと炭素数2〜4のアルキレンオキシドの1〜300モルとの反応物)と炭素数1〜22の脂肪酸とのエステル化物、(炭素数1〜22のモノアルコールの1モルと炭素数2〜4のアルキレンオキシドの1〜300モルとの反応物)と炭素数1〜22の脂肪酸とのエステル化物等が挙げられる。
【0042】
これらの基油(B)のうち、鉱油、油脂及びシリコーンが好ましく、さらに好ましくはこれらの組合せである。
【0043】
基油(B)の含有量(重量%)は、核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、80〜99.9が好ましく、さらに好ましくは83〜99.8、特に好ましくは86〜99.7、最も好ましくは90〜99.6である。この範囲であると、蒸解液の原料チップへの浸透性がさらに良好となる。
【0044】
本発明のパルプ製造用浸透促進剤には、さらに界面活性剤(C)を含有することができる。界面活性剤(C)を含有すると、蒸解液の原料チップへの浸透性がさらに良好となる。
【0045】
界面活性剤(C)としては、アニオン型界面活性剤、非イオン型界面活性剤及びこれらの混合が含まれる。
非イオン型界面活性剤としては、HLB3.5〜20(好ましくは3.6〜19、さらに好ましくは3.7〜18、特に好ましくは4〜17)のノニオンが使用できる。
【0046】
非イオン型界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、植物油のエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物及びポリオキシアルキレン変性シリコーン等が含まれる。
【0047】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンと炭素数12〜22の脂肪酸とのエステルが含まれ、ソルビタンモノラウレート(HLB8.6、たとえば、ノニオンLP−20R;日油株式会社)、ソルビタンモノパルミテート(HLB6.7、たとえば、ノニオンPP−40Rペレット;日油株式会社)、ソルビタンモノステアレート(HLB4.7、たとえば、ノニオンSP−60Rペレット;日油株式会社)、ソルビタンモノオレエート(HLB4.3、たとえば、ノニオンOP−80R;日油株式会社)、ソルビタントリオレエート(HLB1.8、たとえば、ノニオンOP−85R;日油株式会社)、ソルビタンモノオレエート(HLB4.3、たとえば、イオネットS−80;三洋化成工業株式会社、「イオネット」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0048】
ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物としては、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド1〜40モル付加物が含まれ、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(HLB16.7、たとえば、ノニオンLT−221;日油株式会社)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(HLB15.7、たとえば、ノニオンST−221;日油株式会社)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(HLB15.7、たとえば、ノニオンOT−221;日油株式会社)及びポリオキシエチレンソルビタンモノヤシ油脂肪酸エステル(HLB16.7、たとえば、ノニオンT−20C;三洋化成工業株式会社)等が挙げられる。
【0049】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしては、エチレンオキシド5〜200モルとプロピレンオキシド5〜200モルとの共重合体が含まれ、ポリオキシエチレン(25モル)ポリオキシプロピレン(30モル)ブロックポリマー(たとえば、ニューポールPE−64;三洋化成工業株式会社、「ニューポール」は同社の登録商標である。)及びポリオキシエチレン(48モル)ポリオキシプロピレン(35モル)ブロックポリマー(たとえば、ニューポールPE−75;三洋化成工業株式会社)等が挙げられる。
【0050】
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルとしては、炭素数6〜18のアルキル基を有するアルキルアリールのポリオキシエチレンエーテルが含まれ、ポリオキシエチレン(4モル)ノニルフェノールエーテル(たとえば、ノニポール40;三洋化成工業株式会社、「ノニポール」は同社の登録商標である。)、ポリオキシエチレン(10モル)ノニルフェノールエーテル(たとえば、ノニポール100;三洋化成工業株式会社)等が挙げられる。
【0051】
植物油のエチレンオキシド付加物としては、植物油のエチレンオキシド1〜200モル付加物が含まれ、ひまし油のエチレンオキシド付加物(たとえば、ユニオックスHC−40;日油株式会社、「ユニオックス」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0052】
ポリオキシエチレンの脂肪酸エステルとしては、数平均分子量200〜4000のポリオキシエチレンと炭素数6〜22の脂肪酸とのモノエステル及びジエステルが含まれ、数平均分子量600のポリオキシエチレングリコールとオレイン酸とのジエステル(たとえば、イオネットDO−600;三洋化成工業株式会社)及び数平均分子量600のポリオキシエチレングリコールとオレイン酸とのモノエステル(たとえば、イオネットMO−600;三洋化成工業株式会社)等が挙げられる。
【0053】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素数6〜22のアルカノールのオキシエチレン1〜100モル付加物が含まれ、ナロアクティーCL−40(HLB8.9、三洋化成工業株式会社、「ナローアクティー」は同社の登録商標である。)、ナロアクティーCL−100(HLB13.3、三洋化成工業株式会社)等が挙げられる。
【0054】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜22の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルが含まれ、グリセロールモノステアレート(たとえば、モノグリMD、HLB5.5、日油株式会社)等が挙げられる。
【0055】
グリセリン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物としては、グリセリン脂肪酸エステルのエチレンオキシド1〜100モル付加物が含まれ、グリセリンヤシ油脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物(たとえば、ユニグリMK−207、HLB13.0、日油株式会社、「ユニグリ」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0056】
ポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、ジメチルシロキサンのメチル基の一部をアルコキシポリオキシアルキレンオキシプロピル基(アルコキシの炭素数1〜6、アルキレンの炭素数2〜3、重合度2〜50、オキシエチレン基の重量がオキシアルキレン基全体の20重量%以上)、アルコキシポリオキシアルキレン基(アルコキシの炭素数1〜6、アルキレンの炭素数2〜3、重合度2〜50、オキシエチレン基の重量がオキシアルキレン基全体の20重量%以上)等に置き換えたもの等が含まれる。
【0057】
これらのうち、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンと脂肪酸とのモノエステル及びジエステル、グリセリン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0058】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルビフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホン酸エステル塩及びポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩が含まれる。
【0059】
アルキルアリールスルホン酸塩としては、炭素数6〜18のアルキルアリールスルホン酸塩が含まれ、ドデシルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
塩としては特に制限されないが、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)塩、アンモニウム塩及び炭素数1〜18のアミン塩(トリエタノールアミン、トリメチルアミン、プロピルアミン等)塩等が含まれる(以下同じ)。
【0060】
アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩としては、アルキル基の炭素数が6〜18であるアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が含まれ、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
【0061】
ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩としては、アルキル基の炭素数が6〜22であるポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が含まれ、ポリオキシエチレンラウリル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0062】
ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩としては、アルキル基の炭素数が6〜22であるポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルが含まれ、ポリオキシエチレンステアリルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0063】
これらのうち、アルキルアリールスルホン酸塩及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が好ましく、さらに好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸塩及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、特に好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム塩及びドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸カルシウム塩である。
【0064】
界面活性剤(C)を含有する場合、界面活性剤(C)の含有量(重量%)は、核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.02〜19、特に好ましくは0.03〜18、最も好ましくは0.04〜16である。この範囲であると、蒸解液の原料チップへの浸透性がさらに良好となる。
【0065】
本発明のパルプ製造用浸透促進剤には、さらに金属石鹸(F)及び/又は油溶性ポリマー(G)を含有することができる。
【0066】
金属石鹸(F)としては、炭素数12〜22の脂肪酸と金属(アルカリ土類金属、アルミニウム、マンガン、コバルト、鉛、クロム、銅、鉄及びニッケル等)との塩を含み、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛及びベヘニン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0067】
金属石鹸(F)を含有する場合、金属石鹸(F)の含有量(重量%)は、核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.1〜20が好ましく、さらに好ましくは0.2〜16、特に好ましくは0.3〜12、最も好ましくは0.5〜10である。
【0068】
油溶性ポリマー(G)としては、基油(B)に均一に溶解するポリマーを用いることができ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのコポリマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとビニルピロリドンとのコポリマー、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのコポリマー、石油樹脂、液状ゴム、ポリジエンブロックとポリスチレンブロックとを含むブロックコポリマー等が挙げられる。油溶性ポリマー(G)は市場から容易に入手でき、商品名として、たとえば、サンエリス702、823、934(ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、いずれも三洋化成工業株式会社、「サンエリス」は同社の登録商標である。)、アクルーブ136、728、812(ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、三洋化成工業株式会社、「アクルーブ」は同社の登録商標である)、アルコンM−135、P−125(石油樹脂、いずれも荒川化学工業株式会社、「アルコン」は同社の登録商標である)、クラプレンLIR30、LIR310、L−SBR(液状ゴム、いずれも株式会社クラレ、「クラプレン」は同社の登録商標である)、セプトン(水添ポリジエンブロックとポリスチレンブロックとからなるブロックコポリマー、株式会社クラレ、「セプトン」は同社の登録商標である)等が挙げられる。
【0069】
油溶性ポリマー(G)を含有する場合、油溶性ポリマー(G)の含有量(重量%)は、核剤(A)及び基油(B)の重量に基づいて、0.1〜50が好ましく、さらに好ましくは0.2〜40、特に好ましくは0.3〜30、最も好ましくは0.4〜20である。
【0070】
本発明のパルプ製造用浸透促進剤は、核剤(A)及び基油(B)を均一混合できれば製造方法に制限はないが、含有する核剤(A)によって、以下のようにより好ましい製造方法で製造することができる。
【0071】
疎水性シリカ(Aa)を含む場合、乳化分散機(ビーズミル、ディスパーミル、ホモジナイザー又はゴーリンホモジナイザー、超音波分散機等)等を用いて、疎水性シリカ(Aa)を基油(B)に分散することが好ましい。
【0072】
脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)を含む場合、次の方法によって、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)を基油(B)に分散することが好ましい。
【0073】
脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)と、基油(B)の一部とを加熱攪拌しながら、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)を溶解させて溶解液を得る溶解工程(ai)、
基油(B)の残部を攪拌しながら、この残部に溶解液を投入して混合物を得る混合工程(aii)、並びに
混合物を均質化処理して脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)の分散液を得る分散工程(aiii)を含む方法(1)。
【0074】
加熱攪拌の温度(℃)としては、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)が溶解できれば制限がないが、100〜180が好ましく、さらに好ましくは110〜160、特に好ましくは120〜150、最も好ましくは125〜145である。
【0075】
加熱攪拌の時間としては、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)が溶解できれば制限がないが、基油(B)の酸化や蒸発等を防ぐため、できるだけ短時間とすることが好ましい。
【0076】
加熱攪拌は、密閉下で行ってもよいし(加圧下でもよい)、開放下で行ってもよい。
【0077】
混合工程(aii)において、溶解液を投入している間も溶解液を加熱攪拌し、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)を溶解させた状態を保つことが好ましい。
【0078】
均質化処理は、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)を均質化できれば制限はないが、乳化分散機(ビーズミル、ディスパーミル、ホモジナイザー又はゴーリンホモジナイザー、超音波乳化機等)を用いて均質化処理することが好ましい。
【0079】
合成樹脂(Ad)を含有する場合、乳化分散機(ビーズミル、ディスパーミル、ホモジナイザー又はゴーリンホモジナイザー、超音波分散機等)等を用いて、合成樹脂(Ad)を基油(B)に分散することが好ましい。
【0080】
界面活性剤(C)を含む場合、他の成分と均一混合されていればよく、界面活性剤(C)を混合する方法に制限はない。
【0081】
金属石鹸(F)を含む場合、次の方法によって、金属石鹸(F)を基油(B)に分散することが好ましい。
【0082】
金属石鹸(F)と、基油(B)の一部とを加熱攪拌しながら、金属石鹸(F)を溶解させて溶解液を得る溶解工程(aiv)、
基油(B)の残部を攪拌しながら、この残部に溶解液を投入して混合物を得る混合工程(av)、並びに
混合物を均質化処理して金属石鹸(C)の分散液を得る分散工程(avi)を含む方法(2)。
【0083】
脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)と金属石鹸(C)とを含む場合、脂肪酸アミド(Ab)及び/又はワックス(Ac)を溶解させて溶解液を得る溶解工程(ai)で、これと共に金属石鹸(F)を溶解させてもよい。
【0084】
金属石鹸(F)と基油(B)とを加熱攪拌しながら、金属石鹸(F)を溶解させて溶解液を得る溶解工程(avii)、
溶解液を冷却しながら、又は冷却した後、均質化処理して金属石鹸(C)の分散液を得る分散工程(aviii)を含む方法(3)。
【0085】
油溶性ポリマー(G)を含有する場合、他の成分と均一混合されていればよく、油溶性ポリマー(G)を混合する方法に制限はない。
【0086】
本発明のパルプ製造用浸透促進剤は、チップを化学処理してパルプを製造する工程であればどの工程で添加使用してもよいが、クラフトパルプの製造工程に添加使用することが好ましく、さらに好ましくは原料チップ供給工程〜クラフトパルプ蒸解工程に添加使用すること、特に好ましくはチップビン(C23)、スチーミングベッセル(C26)、メタルトラップ(C28)、チップシュート(C29)、高圧フィーダー(C30)を経てクラフト蒸解釜へ原料チップを供給する原料チップ供給工程、最も好ましくは高圧フィーダー(C30)からメタルトラップ(C28)へ循環するチップシュート循環液(1)又は高圧フィーダー(C30)から蒸解釜頂部へ循環する蒸解釜頂部循環液(2)に添加使用することである。
【0087】
本発明のクラフトパルプの製造方法は、上記のパルプ製造用浸透促進剤をチップシュート循環液(1)又は蒸解釜頂部循環液(2)に添加する添加工程を含んでいれば、蒸解工程等は公知の方法(温度や液比、有効アルカリ添加率等;たとえば、蒸解最高温度:160℃、有効アルカリ添加率:16重量%、液比:4.0L/kg、蒸解時間:120分)がそのまま適用できる。
【0088】
原料チップとしては、木材{針葉樹及び広葉樹等}、非木材{草木類(ケナフ、バガス及び竹等)}及びこれらに由来するパルプ等が挙げられる。
【0089】
蒸解設備としては、連続式又はバッチ式のいずれでもよい。また、蒸解システムとして、従来の連続蒸解式以外に、修正クラフト蒸解(MCC)、アイソサーマル蒸解(ITC)及びローソリッド(Lo−solid)蒸解の方式にも適用できる。
【0090】
上記のパルプ製造用浸透促進剤の添加量(重量%)は、原料チップの絶乾重量に基づいて、0.001〜0.1が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.09、特に好ましくは0.01〜0.8である。この範囲であると、蒸解液の原料チップへの浸透性がさらに良好となる。なお、絶乾重量は、105±5℃で恒量になるまで乾燥させたときの重量である(以下同じである。)。
【0091】
本発明のクラフトパルプの製造方法において、蒸解効率を向上させる目的で、必要により、キノン(D)を添加してもよい。
キノン(D)としては、キノン化合物及びヒドロキノン化合物が含まれる。
【0092】
キノン化合物としては、アントラキノン、ジヒドロアントラキノン(たとえば、1,4−ジヒドロアントラキノン)、テトラヒドロアントラキノン(たとえば、1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン及び1,2,3,4−テトラヒドロアントラキノン)、メチルアントラキノン(たとえば、1−メチルアントラキノン及び2−メチルアントラキノン)、メチルジヒドロアントラキノン(たとえば、2−メチル−1,4−ジヒドロアントラキノン)及びメチルテトラヒドロアントラキノン(たとえば、1−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン及び2−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロアントラキノン)等が挙げられる。
【0093】
ヒドロキノン化合物としては、アントラヒドロキノン(たとえば、9,10−ジヒドロキシアントラセン)、メチルアントラヒドロキノン(たとえば、2−メチルアントラヒドロキノン)、ジヒドロアントラヒドロアントラキノン(たとえば、1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセン)及びこれらのアルカリ金属塩(たとえば、アントラヒドロキノンのジナトリウム塩及び1,4−ジヒドロ−9,10−ジヒドロキシアントラセンのジナトリウム塩)等が挙げられる。
【0094】
キノン(D)を添加する場合、キノン(D)の添加量(重量%)は、原料チップの絶乾重量に基づいて、0.005〜3が好ましく、さらに好ましくは0.01〜2、特に好ましくは0.05〜1である。
【0095】
キノン(D)を添加する場合、上記のパルプ製造用浸透促進剤とキノン(D)とを別々に添加してもよいし、又はこれらを均一混合してから添加してもよく、さらに、キノン(D)又は浸透促進剤をそれぞれ別々に循環液と均一混合してから混合液を別々に添加してもよく、又はこれらと循環液とを均一混合してから添加してもよい。
【実施例】
【0096】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、部及び%は特に断りのない限り重量部及び重量%を意味する。
【0097】
<製造例1>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で、シリカ{シリカ、Nipsil G−300、東ソー・シリカ株式会社}135部、シリコーン樹脂{シリコーン樹脂、BY 11−908、東レ・ダウコーニング株式会社製}20部、ジメチルシリコーンオイル{SH200−50CS、東レ・ダウコーニング株式会社製}20部及び基油(b1){鉱物油、コスモSC22、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製}825部を加熱攪拌しながら120℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱攪拌を続けた後、約25℃まで冷却して疎水性シリカ(aa1)17.5重量%を含む疎水性シリカ分散液(e1)を得た。
【0098】
<製造例2>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で、疎水性シリカ(aa2){疎水性シリカ、ニップシール SS−15、東ソー・シリカ株式会社}135部及び基油(b1)865部を加熱攪拌しながら120℃まで昇温し、この温度にてさらに3時間加熱攪拌した後、約25℃まで冷却して疎水性シリカ(aa2)13.5重量%を含む疎水性シリカ分散液(e2)を得た。
【0099】
<実施例1>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で、核剤(ab1){アルフローH−50S、日油株式会社製、エチレンビスステアリルアミド}30部、基油(b2){鉱物油、コスモピュアスピン G、コスモ石油ルブリカンツ株式会社}300部、及び界面活性剤溶液(1)[界面活性剤(c1){ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム}の70%メタノール溶液}、テイカパワー BC−2070M、テイカ株式会社、「テイカパワー」は同社の登録商標である。]10部を加熱攪拌しながら145℃まで昇温し、この温度にてさらに15分間加熱攪拌を続けて、メタノール3部を留去して、溶解液(1)を得た。
【0100】
次いで、基油(b1)260部、基油(b3){鉱物油、スタノール40、エクソンモービルコーポレーション}210部及び疎水性シリカ分散液(e1)200部を15℃に調節して冷却攪拌して受け液(1)を調製し、この受け液(1)を冷却攪拌しながら、溶解液(1)を少量ずつ受け液(1)に投入し、15分間攪拌して分散液(1)を得た。溶解液の投入中及び投入後の混合物(分散液)の温度は15〜60℃であった。
【0101】
分散液(1)を、40℃以下まで冷却攪拌し、40℃以下でゴーリンホモジナイザーを用いて3500psi(24.1MPa)にて均質化処理して本発明の浸透促進剤(1)を得た。
【0102】
<実施例2〜6>
溶解液(1)を表1の溶解液(X)に変更したこと、受け液(1)を表2の受け液(X)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明の浸透促進剤(X)を得た。なお、浸透促進剤(X)は、溶解液(X)と受け液(X)と{「X」は2〜6の数字であり、実施例X、浸透促進剤(X)、溶解液(X)、受け液(X)のそれぞれが同じ数字となる}を用いて作成したものである。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
核剤(aa3):疎水性シリカ、AEROSIL R972、日本アエロジル株式会社製
【0106】
核剤(ab2):エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミド、ITOWAX J−530、伊藤製油株式会社製
核剤(ab3):ステアリルアミド、アマイドAP−1、日本化成株式会社製
【0107】
核剤(ac1):酸化ポリエチレンワックス、エポレンE−10、イーストマンケミカル社製
【0108】
ポリマーポリオール(1):特開2009−7506号公報の実施例1に準じて作成した合成樹脂微粒子(ad1){(スチレン)/(アクリロニトリル)/(ジビニルベンゼン)/(グリセリンのプロピレンオキシド付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとをトリレンジイソシアネート(TDI)でジョイントして得られる反応性分散剤)/(アリルアルコールにプロピレンオキシド(PO)を付加させたポリオキシアルキレンエーテル)を構成単位とする共重合物(粒子径0.7μm)}75部、基油(b4){ペンタエリスリトールにプロピレンオキシド−エチレンオキシド(エチレンオキシドの割合12重量%)の順にアルキレンオキシドをブロック付加させた水酸基価32のポリオール}65部及び基油(b5){特開2000−344881号公報に準じて作成したグリセリンプロピレンオキシド付加体、水酸基価56}3.4部の混合液
【0109】
核剤(ad2):ポリメタクリル酸メチル、タフチック FH−S008、東洋紡株式会社
【0110】
基油(b6):ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシプロピレン(30モル)(HLB=2.3)、ニューポールPE−61、三洋化成工業株式会社製)
基油(b7):蔗糖ポリオキシプロピレン80モル付加物(HLB=1.4)
基油(b8):トリメチロールプロパンのエチレンオキシド(10モル)/プロピレンオキシド(68モル)ブロック付加体(HLB=2.0)、ニューポールTL−4500N、三洋化成工業株式会社製
基油(b9):ブタノールポリオキシプロピレン(40モル)付加体(HLB=0.1、ニューポールLB−1715、三洋化成工業株式会社製
基油(b10):ポリプロピレングリコール(34モル)(HLB=0.3)、ニューポールPP−2000、三洋化成工業株式会社製
基油(b11):食用菜種油、ニッコー製油株式会社製
基油(b12):ジメチルシリコーンオイル(動粘度50(mm/s、25℃))、KF−96−50CS、信越化学工業株式会社製
基油(b13):ジメチルシリコーンオイル、(動粘度3000(mm/s、25℃))、KF−96−3,000CS、信越化学工業株式会社製
基油(b14):ジメチルシリコーン(数平均分子量1800)のメチル基のうち、平均して1分子あたり4つがポリオキシプロピレン(25モル)オキシプロピル基に置換されたシリコーン化合物
基油(b15):ポリオキシプロピレン(40モル)グリコールモノブチルエーテルのオレイン酸エステル(HLB=0)
基油(b16):ひまし油のエチレンオキシド4モル付加体(HLB=3.2)
【0111】
界面活性剤(c2):ポリオキシエチレンジオレート(HLB=10.4)、イオネット DO−600、三洋化成工業株式会社製
界面活性剤(c3):ポリオキシエチレンアルキレンエーテル(HLB=10.7、ナロアクティー CL−70、三洋化成工業株式会社製
界面活性剤(c4):ソルビタンモノオレート(HLB=4.3)、イオネット S−80、三洋化成工業株式会社製
界面活性剤(c5):ポリオキシエチレンアルキレンエーテル(HLB=8.9、ナロアクティー CL−40、三洋化成工業株式会社製
界面活性剤(c6):グリセロールモノオレート(HLB=3.5)、エキセルO−95N、花王株式会社製
界面活性剤(c7):ポリオキシエチレンモノオレート(HLB=11.8)、イオネット MO−400、三洋化成工業株式会社製
【0112】
金属石鹸(f1):ステアリン酸アルミニウム、SA−1500、堺化学工業株式会社製
【0113】
油溶性ポリマー溶液(1):油溶性ポリマー溶液[油溶性ポリマー(g1){(メタ)アクリル酸アルキルコポリマー}79%、基油(b17){鉱油}21%]、アクルーブ812、三洋化成工業株式会社製
【0114】
<実施例7>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で、疎水性シリカ分散液(e3){疎水性シリカとジメチルポリシロキサンの混合物、疎水性シリカ含有量6%、PULPSIL 150C、ワッカー ケミー社、ポリジメチルシロキサン(25℃での動粘度は10〜50000mm/sである。「PULPSIL」は同社の登録商標である。}300部、基油(b12)700部及び界面活性剤(c8){ジメチルシリコーン(数平均分子量2800)のメチル基のうち、平均して1分子あたり3つがポリオキシエチレン(16モル)ポリオキシプロピレン(16モル)オキシプロピル基に置換されたシリコーン化合物、HLB=5.3}50部を30分間攪拌し、本発明の浸透促進剤(7)を得た。
【0115】
<浸透性試験>
浸透性試験装置(図1)のガラス製透明容器(10、高さ35cm、直径8cm)に90℃に温度調整した蒸解液{硫化度:25%、有効アルカリ:18%(有効アルカリとは、JIS P0001:1998において定義される「クラフト蒸解液の蒸解作用をするアルカリ量の表示方法、有効アルカリ=NaOH+NaS×1/2、NaO又はNaOHに換算して表す。)を意味する。}320mL及び原料チップ{国内産広葉樹材50%とユーカリ材50%とからなる広葉樹混合木材チップ(絶乾重量)、長径5cm以下、短径3cm以下、厚さ1cm以下}80gを投入し、ポンプ (20)でガラス製透明容器の底部(12)から試験液を2500ml/分で循環しながらガラス製透明容器の上部{試験液出口(40)の高さはガラス製容器の開口部(11)から2cm}から落下させることにより試験液を循環させた。循環開始して30秒後に、評価試料(浸透促進剤)20μgを添加し、そのまま15分間循環を続けた。なお、試験中の蒸解液の温度は90℃に保った。
【0116】
次いで、チップを目開き150μmの金網でろ別してから、金網上のチップを500mLの水で洗浄した後、105℃で恒量になるまで乾燥して、乾燥後のチップ重量を測定した。乾燥後のチップ重量が大きいほど、蒸解液がチップ中に浸透していることを示す。
また、評価試料を水に変更したこと以外、上記と同様にブランク試験した。これらの結果を下表に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
<実施例8>
国産広葉樹チップを用いて、クラフトパルプ連続蒸解し、次いで酸素脱リグニンを行なっている国内製紙工場にて、上記の浸透促進剤(1)をチップシュート循環液に添加して操業した(浸透促進剤(1)の添加量は原料チップの重量に基づいて0.015%)。得られた酸素脱リグニン後のクラフトパルプのカッパー価、白色度について、浸透促進剤(1)を添加した場合と無添加の場合とを比較して以下の結果を得た。
【0119】
【表4】
【0120】
<カッパー価>
JIS P8211:1998に準拠して測定した。
【0121】
<白色度(%)>
JIS P8212:1998に準拠して測定した。
【0122】
浸透促進剤(1)を添加した場合、同一カッパー価でも白色度の高いパルプが得られた。これは、より均一にチップが蒸解されたためと考えられ、本発明の浸透促進剤によって、蒸解液がチップに均一に浸透しやすくなった結果と考えられる。
【符号の説明】
【0123】
10 ガラス製透明容器
11 ガラス製透明容器の開口部
12 ガラス製透明容器の底部
20 ポンプ
30 目盛り
40 試験液出口

図1