特開2016-121671(P2016-121671A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-121671(P2016-121671A)
(43)【公開日】2016年7月7日
(54)【発明の名称】車両の吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/024 20060101AFI20160610BHJP
【FI】
   F02M35/024 521Z
   F02M35/024 511A
   F02M35/024 511B
   F02M35/024 511E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-263679(P2014-263679)
(22)【出願日】2014年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】兼原 洋治
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
(57)【要約】
【課題】帯電電荷量を低下させて吸気効率を向上させる。
【解決手段】車両のエアクリーナにおいて、エアクリーナケース(1,2)の壁面上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内のエアクリーナケース壁表面の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器(10)を備えている。エアフィルタ(3)の周縁部がエアクリーナケース(1,2)のエアフィルタ保持部によって保持されており、自己放電式除電器(10)がエアクリーナケース(1,2)のエアフィルタ保持部外壁面上に設置される。それによりエアフィルタ(3)が除電される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナケースおよび該エアクリーナケース内に配置されたエアフィルタに正の電荷が帯電する車両の吸気装置において、エアクリーナケースの壁面上に設置すると該設置箇所を中心とした限られた範囲内のエアクリーナケース壁表面の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器を備えており、エアフィルタの周縁部がエアクリーナケースのエアフィルタ保持部によって保持されており、該自己放電式除電器をエアクリーナケースの該エアフィルタ保持部外壁面上に設置し、それによりエアフィルタを除電するようにした車両の吸気装置。
【請求項2】
該エアクリーナケースが、空気流入側エアクリーナケースと空気流出側エアクリーナケースとからなると共に、空気流入側エアクリーナケースと空気流出側エアクリーナケースの接続部において該エアフィルタの周縁部が保持されており、該自己放電式除電器が、該空気流入側エアクリーナケースと空気流出側エアクリーナケースの接続部の外壁面上に設置される請求項1に記載の車両の吸気装置。
【請求項3】
該空気流入側エアクリーナケースおよび該空気流出側エアクリーナケースは、空気流入側エアクリーナケースと空気流出側エアクリーナケースの接続部に夫々、空気流入側エアクリーナケースの外壁面および空気流出側エアクリーナケースの外壁面から外方に突出する接続用フランジを具備しており、空気流入側エアクリーナケースの接続用フランジと空気流出側エアクリーナケースの接続用フランジ間において該エアフィルタの周縁部が保持されており、該自己放電式除電器は、空気流入側エアクリーナケースの接続用フランジの外壁面上又は空気流出側エアクリーナケースの接続用フランジの外壁面上の少なくとも一方に設置される請求項2に記載の車両の吸気装置。
【請求項4】
該エアフィルタが、フィルタ濾紙とフィルタ濾紙の周囲を支持するフィルタ濾紙支持枠からなり、該フィルタ濾紙支持枠が、空気流入側エアクリーナケースの接続用フランジと空気流出側エアクリーナケースの接続用フランジ間において保持されている請求項3に記載の車両の吸気装置。
【請求項5】
該エアクリーナケースが非導電性の合成樹脂材料からなる請求項1に記載の車両の吸気装置。
【請求項6】
該自己放電式除電器は、エアクリーナケースの壁面上に導電性接着剤により接着された金属箔からなる請求項1に記載の車両の吸気装置。
【請求項7】
該自己放電式除電器は、自己放電を生じさせるための角部を有している請求項6に記載の車両の吸気装置。
【請求項8】
該自己放電式除電器は、細長い矩形状の平面形状を有している請求項6に記載の車両の吸気装置。
【請求項9】
該自己放電式除電器は、エアクリーナケースの壁面上に一体的に形成された導電性薄膜からなる請求項1に記載の車両の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン又はエンジンと関連する部材に放電アンテナ等の放電装置を取り付けて、エンジン部に生じ又は蓄積される高圧電気、静電気等を外部に放電、放出せしめ、それによって燃費を向上させるようにした車両が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−238438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されているように、車両に静電気が帯電すること、およびこの車両に帯電した静電気が車両の運転に何らかの影響を与えていることは、従来より知られている。しかしながら、車両に帯電した静電気が具体的にいかなる理由でどのような影響を車両の運転に与えているかはよく分かっていない。このように車両に帯電した静電気が具体的にいかなる理由でどのような影響を車両の運転に与えているかがよく分からないと、車両への静電気の帯電に対して適切に対処することはできない。
【0005】
そこで、本発明者は,車両の吸気装置、特にエアクリーナに注目して、エアクリーナに帯電した静電気が具体的にいかなる理由でどのような影響を車両の運転に与えているかを追求した。その追求の結果、本発明者は,エアクリーナのエアフィルタに帯電した静電気が吸入空気の吸気効率に大きな影響を与えていることを見出し、この見出した事実に基づいて、吸入空気の吸気効率を向上させるのに必要な適切な除電手法を見出したのである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明によれば、エアクリーナケースおよびエアクリーナケース内に配置されたエアフィルタに正の電荷が帯電する車両の吸気装置において、エアクリーナケースの壁面上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内のエアクリーナケース壁表面の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器を備えており、エアフィルタの周縁部がエアクリーナケースのエアフィルタ保持部によって保持されており、上述の自己放電式除電器をエアクリーナケースのエアフィルタ保持部外壁面上に設置し、それによりエアフィルタを除電するようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記自己放電式除電器をエアクリーナケースのエアフィルタ保持部外壁面上に設置することによりエアフィルタが除電され、それにより吸入空気の吸気効率が格段に向上せしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、エアクリーナの分解斜視図である。
図2図2は、図1に示される空気流入側エアクリーナケースを下方から見た図である。
図3図3は、図1に示される空気流出側エアクリーナケースを上方から見た図である。
図4図4は、図2のA−A線の沿って見たエアクリーナの一部の拡大断面図である。
図5図5Aおよび5Bは、エアフィルタのフィルタ濾紙内における吸入空気流を説明するための図である。
図6図6Aおよび6Bは、吸入空気流の変化を説明するための図である。
図7図7A、7Bおよび7Cは、自己放電式除電器を示す図である。
図8図8A,8Bおよび8Cは、自己放電式除電器による除電作用を説明するための図である。
図9図9Aおよび9Bは、自己放電作用を説明するための図である。
図10図10Aおよび10Bは、夫々別の実施例を示すエアクリーナの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1にエアクリーナの分解斜視図を示す。
図1を参照すると、1は外気取入口1aを有する空気流入側エアクリーナケースを示しており、2は空気流出口2aを有する空気流出側エアクリーナケースを示している。即ち、図1に示されるエアクリーナでは、エアクリーナケースが空気流入側エアクリーナケース1と空気流出側エアクリーナケース2とにより構成されている。なお、空気流入側エアクリーナケース1および空気流出側エアクリーナケース2、即ちエアクリーナケースは非導電性合成樹脂材料から形成されている。一方、図1において、3はエアフィルタを示している。このエアフィルタ3は、蛇腹状のフィルタ濾紙4とフィルタ濾紙4の周囲をその全周に亘って支持するフィルタ濾紙支持枠5からなる。図1に示される実施例では、このフィルタ濾紙支持枠5はゴム材料から形成されている。
【0010】
図1に示されるように、空気流入側エアクリーナケース1の上端部にはその全周に亘って、空気流出側エアクリーナケース1の上端部外壁面から外方に突出する接続用フランジ6が形成されており、空気流出側エアクリーナケース2の下端部にはその全周に亘って、空気流出側エアクリーナケース2の下端部外壁面から外方に突出する接続用フランジ7
が形成されている。空気流入側エアクリーナケース1と空気流出側エアクリーナケース2は、それらの接続用フランジ6,7を締着することによって一体化される。このように一体化されたときの図2のA−A線に沿って見たエアクリーナケースの一部の拡大断面図が図4に示されている。
【0011】
図4からわかるように、このとき、空気流入側エアクリーナケース1の接続用フランジ6と空気流出側エアクリーナケース2の接続用フランジ7間においてフィルタ濾紙支持枠5が、即ちエアフィルタ3の周縁部が保持される。なお、図4に示されるように、接続用フランジ6の外周縁からは上方に向けて、即ち接続用フランジ7に向けてフランジ端部6aが延びており、接続用フランジ7の外周縁からは下方に向けてフランジ端部6aの外周面を覆うようにフランジ端部7aが延びている。
【0012】
エンジンの運転が開始されると、外気が外気取入口1aから空気流入側エアクリーナケース1内に吸入され、次いでこの外気、即ち空気はフィルタ濾紙4を通って空気流出側エアクリーナケース2内に吸入され、次いで空気流出口2aを通ってエンジンの吸気系、例えばサージタンク内に吸入される。なお、図2は、図1に示される空気流入側エアクリーナケース1を下方から見たときの空気流入側エアクリーナケース1の底面図を示しており、図3は、図1に示される空気流出側エアクリーナケース2を上方から見たときの空気流出側エアクリーナケース2の平面図を示している。
【0013】
さて、車両が走行せしめられると、タイヤの各部が路面に対して接触、剥離を繰り返すことによって静電気が発生し、またエンジンの構成部品やブレーキ装置の構成部品が相対運動することによっても静電気が発生する。また、車両の走行時に空気が車両の外周面上を摩擦接触しつつ流れることによっても静電気が発生する。これらの発生した静電気によって車両のボディー、エンジン等には電荷が帯電し、エアクリーナにも電荷が帯電する。このとき、非導電性合成樹脂材料からなるエアクリーナケースの表面上、即ち、空気流入側エアクリーナケース1および空気流出側エアクリーナケース2の表面上、並びにエアフィルタ3に正の電荷が帯電することが確認されており、しかもエアクリーナケース1,2およびエアフィルタ3の表面の電圧値は1000(v)以上の高電圧になる場合があることが確認されている。
【0014】
ところで、非導電性合成樹脂材料からなる薄肉壁の表面の電圧値が高くなると、薄肉壁の表面に沿う空気の流れが変化することが確認されている。そこで、まず初めに、薄肉壁の表面に沿う空気の流れが、薄肉壁の表面の電圧値によってどのように変化するかということについて、本発明者が実験により確認した現象から説明を行う。図6Aは、正の電荷が帯電している薄肉壁9の表面に沿って空気が流れている場合を示している。この場合、空気は正に帯電する傾向にあるので、図6Aは、正に帯電した空気が、正の電荷が帯電している薄肉壁9の表面に沿って流れている場合を示している。さて、図6Aにおいて、実線の矢印は、薄肉壁9の表面の電圧値が低い場合を示しており、この場合には空気は薄肉壁9の表面に沿って流れる。これに対し、破線の矢印は、薄肉壁9の表面の電圧値が高い場合を示しており、この場合には空気は薄肉壁9の表面が下方に向け湾曲したところで、即ち空気流が薄肉壁9の表面から離れやすいところで、薄肉壁9の表面から離れるように流れる。
【0015】
図6Bは、図6Aにおいて薄肉壁9の表面に沿って流れる空気の主流の流速U と、薄肉壁9の表面から距離Sだけ離れた位置での流速Uとの速度比U/U のX地点(図6A)における実測値を示している。なお、図6Bにおいて黒塗りの菱形で示される各点は、薄肉壁6の表面に正の電荷が帯電していない場合を示しており、図6Bにおいて黒塗りの四角形で示される各点は、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合を示している。図6Bから、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合に比べて、速度境界層が薄肉壁9の表面から離れ、従って薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には、図6Aにおいて破線の矢印で示されるように、空気が薄肉壁6の表面から離れるように流れていることがわかる。
【0016】
上述したように、空気は正に帯電する傾向があり、従って空気の一部は正の空気イオン(丸内に+で表示)となっている。従って、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していると正の空気イオンと薄肉壁9の表面との間には斥力が作用するために、図6Aにおいて破線の矢印で示されるように、空気は薄肉壁9の表面が下方に向け湾曲したところで、即ち空気流が壁面9の表面から離れやすくなったところで、薄肉壁9の表面から離れるように流れることになる。このように薄肉壁9の表面への正の電荷の帯電により薄肉壁9の表面に沿って流れる空気流が薄肉壁9の表面から離れることは実験により確かめられており、この場合、薄肉壁9の表面の電圧値が高くなるほど、薄肉壁9の表面に沿って流れる空気流が薄肉壁9の表面から離れることがわかっている。
【0017】
また、薄肉壁9の表面形状が空気流の剥離を生じやすい形状を有している場合において、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していないときには空気流の剥離が生じないが、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、空気流の剥離が生じる場合があることが確認されている。更に、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合に比べて、空気流の剥離の大きさが増大することも確認されている。このように、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、電気的な反発力に基づいて、空気流が薄肉壁9の表面から離れ、或いは空気が剥離を生じることが確かめられている。
【0018】
このように、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、空気の流れが本来意図していた流れと異なる流れになってしまう。この場合、薄肉壁9の表面に帯電している正の電荷の全部或いは一部を除去し、即ち薄肉壁9の表面を除電し、薄肉壁9の表面の電圧値を低下させると、薄肉壁9の表面に沿う空気の流れを、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合の空気の流れに戻すことができる。即ち、除電することによって、空気の流れを本来意図していた流れに戻すことができることになる。そこで本発明者は、空気の流れを本来意図していた流れに戻すための簡便な除電方法について検討し、自己放電式除電器を用いた簡便な除電方法を見出したのである。この自己放電式除電器の一例が図7Aから図7Cに示されている。なお、図7Aおよび図7Bは、代表的な自己放電式除電器10の平面図および側面断面図を夫々示しており、図7Cは、別の自己放電式除電器10の側面断面図を示している。
【0019】
図7Aおよび図7Bに示される例では、この自己放電式除電器10は細長い矩形状の平面形状をなすと共に、薄肉壁9の表面上に導電性接着剤12により接着せしめられる金属箔11からなる。一方、図7Cに示される例では、この自己放電式除電器10は薄肉壁9の表面上に一体的に形成された導電性薄膜からなる。本発明では、この自己放電式除電器10を用いてエアフィルタ3を除電するようにしている。なお、このエアフィルタ3の除電方法について説明を行う前に、本発明による、自己放電式除電器10を用いた基本的な除電の仕方について、自己放電式除電器10により薄肉壁9の表面を除電する場合を例にとって、先に説明する。
【0020】
図8Aは、図7Aおよび7Bに示される自己放電式除電器10を薄肉壁9の表面に設置した場合を示している。このように自己放電式除電器10を薄肉壁9の表面に設置すると、図8Bに示されるように、自己放電式除電器10の設置箇所を中心とした破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の帯電電荷量が低下せしめられ、その結果図8Bにおいて破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の電圧が低下せしめられることが確認されている。一方、図8Cは薄肉壁9の端部9a の近傍に自己放電式除電器10を設置した場合を示している。この場合には、自己放電式除電器10によって、薄肉壁9の表面の帯電電荷量、即ち電圧が低下せしめられることはもとより、薄肉壁9の裏面の帯電電荷量、即ち電圧も低下せしめられることが確認されている。
【0021】
この場合、自己放電式除電器10により薄肉壁9の表面および裏面の除電が行われるときの除電メカニズムについては明らかではないが、おそらく自己放電式除電器10からの正の電荷の放電作用によって自己放電式除電器10の設置箇所周りの薄肉壁9の表面および裏面の除電作用が行われているものと推測される。次に、図8Cに示される薄肉壁9の拡大断面図を示す図9Aと、図9Aに示す自己放電式除電器10の端部の拡大図を示す図9Bを参照しつつ、薄肉壁9の表面において行われていると推測される除電メカニズムについて説明する。
【0022】
前述したように、薄肉壁9は非導電性の合成樹脂材料から形成されている。このように薄肉壁9が非導電性の合成樹脂材料から形成されていると、薄肉壁9の内部には電荷が帯電せず、薄肉壁9の表面に電荷が帯電する。なお、図1に示されるエアクリーナケース1,2は、表面および裏面のいずれにも正の電荷が帯電することが確かめられている。本発明による実施例では、エアフィルタ3を除電するためにエアクリーナケース1,2の表面および裏面の一部を除電するようにしており、従ってエアクリーナケース1,2の表面および裏面に一部を除電する場合を想定して、図9Aには、薄肉壁9の表面および裏面のいずれにも正の電荷が帯電している場合が示されている。一方、前述したように、自己放電式除電器10は、導電性接着剤12により薄肉壁9の表面に接着された金属箔11からなる。金属箔11および導電性接着剤12は共に導電性であり、従って、金属箔11の内部、即ち自己放電式除電器10の内部には正の電荷が帯電することになる。
【0023】
ところで、自己放電式除電器10の電圧は自己放電式除電器10の周りの薄肉壁9の表面の電圧とほぼ等しくなっており、従って自己放電式除電器10の電圧はかなり高くなっている。一方、前述したように、空気は正に帯電する傾向があり、従って空気の一部は正の空気イオン(丸内に+で表示)となっている。この場合、空気イオンの電位と自己放電式除電器10の電位とを比べると、自己放電式除電器10の電位の方が空気イオンの電位に比べてかなり高くなっている。従って、空気イオンが図9Bに示されるように、例えば自己放電式除電器10の角部13に近づくと、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間の電界強度が高くなり、その結果、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずることになる。
【0024】
空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずると、図9Bに示されるように、空気イオンの電子の一部が自己放電式除電器10内に移動するため、空気イオンの正の帯電量が増大し(丸内に++で表示)、自己放電式除電器10内に移動した電子によって自己放電式除電器10に帯電している正の電荷が中和される。一旦、放電が行われると放電が生じやすくなり、別の空気イオンが自己放電式除電器10の角部13に近づくと空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間でただちに放電が生ずることになる。即ち、自己放電式除電器10の周りの空気が移動していると、空気イオンが次から次へと自己放電式除電器10の角部13に近づき、従って空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間で継続的に放電が生ずることになる。
【0025】
空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間で継続的に放電が生ずると、自己放電式除電器10に帯電している正の電荷が次から次へと中和され、その結果自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少する。自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少すると、自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面上に帯電している正の電荷が自己放電式除電器10内に移動し、従って自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面上に帯電している正の電荷も減少する。その結果、自己放電式除電器10および自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面の電圧が徐々に低下していくことになる。このような自己放電式除電器10および自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面の電圧の低下作用は、自己放電式除電器10の電圧が低くなって放電作用が停止するまで継続し、その結果、図8Bに示されるように、自己放電式除電器10の設置箇所を中心とした破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の電圧が低下することになる。この場合、図8Cに示される例では、自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少すると、自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面および裏面上に帯電している正の電荷が自己放電式除電器10内に移動し、その結果、薄肉壁9の表面および裏面の電圧が低下することになる。
【0026】
一方、前述したように、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずると、図9Bに示される如く、正の帯電量の増大した空気イオン(丸内に++で表示)が生成され、この正の帯電量の増大した空気イオンは周囲の空気中に飛散する。この正の帯電量の増大した空気イオンの量は、自己放電式除電器10の周囲を流動する空気の量に比べれば極めて少量である。なお、自己放電式除電器10の周りの空気が停滞しており、空気イオンが移動しない場合には、継続して放電が生じず、薄肉壁9の表面の電圧は低下しない。即ち、薄肉壁9の表面の電圧を低下させるには、自己放電式除電器10の周りの空気を流動させることが必要となる。
【0027】
空気イオンと自己放電式除電器10間の放電は、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間、或いは空気イオンと自己放電式除電器10の周辺部の尖端部14との間で生ずる。従って、空気イオンと自己放電式除電器10との間で放電を生じさせ易くずるには、自己放電式除電器10の周辺部に角部13に加え、多数の尖端部14を形成しておくことが好ましいといえる。従って、自己放電式除電器10を作成する際には、大きな寸法の金属箔を切断することによって金属箔11を作成する際に、切断面に尖端部14のようなバリが生ずるように、金属箔を切断することが好ましいことになる。
【0028】
図7Aおよび7Bに示される自己放電式除電器10の金属箔11は、延性金属、例えばアルミニウム又は銅からなり、本発明による実施例では金属箔11はアルミニウム箔からなる。また、本発明による実施例において用いられているアルミニウム箔11の長手方向の長さは50mmから100mm程度であり、厚みは0.05mmから0.2mm程度である。この場合、図8Bにおいて電圧の低下する破線で示す限られた範囲の直径Dは、150mmから200mm程度となる。なお、自己放電式除電器10として、アルミニウム箔11に導電性接着剤12の層が形成されているアルミニウムテープを切断して用いることもできる。更に、自己放電式除電器10は、図7Cに示されるように、薄肉壁9の表面上に一体的に形成された導電性薄膜から構成することもできる。この場合でも、導電性薄膜の周辺部には、図9Bに示されるような角部13に加え、多数の尖端部14を形成しておくことが好ましい。
【0029】
さて、前述したように、エアクリーナケース1,2の表面およびエアフィルタ3の表面の電圧値は1000(v)以上の高電圧になることが確認されている。この場合、図6Aおよび6Bに示される実験結果から判断すると、この高電圧によりエアフィルタ3のフィルタ濾紙4内を流れる吸入空気の流れが変化せしめられており、それにより吸入効率に影響が出ていると推測される。そこで、吸入効率について実験を行った結果、フィルタ濾紙4の表面の電圧値が高電圧になると吸入効率が低下することが判明し、この場合、エアクリーナケースのエアフィルタ保持部に自己放電式除電器10を設置すると吸入効率が向上することが判明したのである。
【0030】
そこでまず初めに、フィルタ濾紙4の表面の電圧値が高電圧になると吸入効率が低下する理由について、図5Aおよび5Bを参照しつつ簡単に説明する。なお、図5Aおよび5Bはフィルタ濾紙4の断面の拡大図を示しており、図5Aおよび5Bにおいて8はフィルタ濾紙4を構成している繊維を示している。図5Bは、フィルタ濾紙4の電圧が低いときの吸入空気の流れを示しており、このとき吸入空気は矢印で示されるように繊維8の周壁面に沿って流れる。しかしながら、静電気の帯電によりフィルタ濾紙4の電圧が高くなると、図5Aにおいて矢印で示されるように、繊維8の周壁面に沿って流れる吸入空気は、電気的な反発力によって、繊維8の周壁面から引き離され、その結果、吸入空気は繊維8の周壁面から離れたところを流れざるを得なくなる。
【0031】
このように吸入空気が繊維8の周壁面から離れたところを流れざるを得なくなると、吸入空気の流路断面が縮小されることになり、吸入抵抗が増大する。その結果、吸入効率が低下することになる。この場合、フィルタ濾紙4の電圧を低下させれば、図5Aに示されるように、吸入空気の流路断面が増大し、吸入効率が向上せしめられることになる。そこで本発明では、フィルタ濾紙4の電圧を低下させるために、自己放電式除電器10をエアクリーナケースのエアフィルタ保持部外壁面上に設置するようにしている。この場合、本発明による一実施例では、図2および図4に示されるように、自己放電式除電器10は空気流入側エアクリーナケース1の接続用フランジ6の外壁面上に設置される。
【0032】
このように自己放電式除電器10が空気流入側エアクリーナケース1の接続用フランジ6の外壁面上に設置されると、自己放電式除電器10による除電作用によって、自己放電式除電器10を中心とした一定範囲内の帯電電荷が除去されるために、接続用フランジ6の表面および裏面の電圧、およびフランジ端部6aの表面および裏面の電圧が低下する。接続用フランジ6の裏面の電圧およびフランジ端部6aの裏面の電圧が低下すると、これら接続用フランジ6よびフランジ端部6aと接触しているフィルタ濾紙支持枠5の電圧が低下し、更にフィルタ濾紙支持枠5により支持されているフィルタ濾紙4の電圧が低下する。即ち、エアフィルタ3の電圧が低下することになり、その結果、吸入効率が向上せしめられることになる。
【0033】
一方、図3および図4に示されるように、自己放電式除電器10を空気流出側エアクリーナケース2の接続用フランジ7の外壁面上に設置しても、自己放電式除電器10による除電作用によって、自己放電式除電器10を中心とした一定範囲内の帯電電荷が除去されるために、接続用フランジ7の表面および裏面の電圧、およびフランジ端部7aの表面および裏面の電圧が低下する。接続用フランジ7の裏面の電圧およびフランジ端部7aの裏面の電圧が低下すると、接続用フランジ7と接触しているフィルタ濾紙4の電圧およびフィルタ濾紙支持枠5の電圧が低下し、即ち、エアフィルタ3の電圧が低下し、その結果、吸入効率が向上せしめられることになる。
【0034】
この場合、自己放電式除電器10を接続用フランジ6の外壁面上又は接続用フランジ7の外壁面上のいずれか一方に設置すればフィルタ濾紙4の電圧を低下させることができ、従って自己放電式除電器10は接続用フランジ6の外壁面上又は接続用フランジ7の外壁面上のいずれか一方に設置すれば十分である。なお、自己放電式除電器10の設置場所は、自己放電式除電器10を設置したときに、フィルタ濾紙4又はフィルタ濾紙支持枠5と接触する空気流入側エアクリーナケース1の内壁面部分又は空気流出側エアクリーナケース2の内壁面部分の電圧を低下させることのできる場所である。この場所は、包括的に表現すると、エアクリーナケースのエアフィルタ保持部外壁面上であり、従って本発明では、自己放電式除電器10がエアクリーナケースのエアフィルタ保持部外壁面上に設置されている。
【0035】
即ち、本発明では、エアクリーナケースおよびエアクリーナケース内に配置されたエアフィルタ3に正の電荷が帯電する車両のエアクリーナにおいて、エアクリーナケースの壁面上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内のエアクリーナケース壁表面の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器10を備えており、エアフィルタ3の周縁部がエアクリーナケースのエアフィルタ保持部によって保持されており、自己放電式除電器10をエアクリーナケースのエアフィルタ保持部外壁面上に設置し、それによりエアフィルタを除電するようにしている。
【0036】
この場合、本発明による実施例では、エアクリーナケースが、空気流入側エアクリーナケース1と空気流出側エアクリーナケース2とからなると共に、空気流入側エアクリーナケース1と空気流出側エアクリーナケース2の接続部においてエアフィルタ3の周縁部が保持されており、自己放電式除電器10が、空気流入側エアクリーナケース1と空気流出側エアクリーナケース2の接続部の外壁面上に設置されている。
【0037】
また、本発明による実施例では、図4に示されるように、空気流入側エアクリーナケース1および空気流出側エアクリーナケース2は、空気流入側エアクリーナケース1と空気流出側エアクリーナケース2の接続部に夫々、空気流入側エアクリーナケース1の外壁面および空気流出側エアクリーナケース2の外壁面から外方に突出する接続用フランジ6,7を具備しており、空気流入側エアクリーナケース1の接続用フランジ6と空気流出側エアクリーナケース2の接続用フランジ7間においてエアフィルタ3の周縁部が保持されており、自己放電式除電器10は、空気流入側エアクリーナケース1の接続用フランジ6の外壁面上又は空気流出側エアクリーナケース2の接続用フランジ7の外壁面上の少なくとも一方に設置されている。
【0038】
なお、図2に示されるように、自己放電式除電器10は、空気流入側エアクリーナケース1の接続用フランジ6の外壁面上に等間隔で複数個設置することが好ましく、或いは、図3に示されるように、自己放電式除電器10は、空気流出側エアクリーナケース2の接続用フランジ7の外壁面上に等間隔で複数個設置することが好ましい。
【0039】
次に、図10Aおよび10Bを参照しつつ、エアクリーナの夫々別の実施例について説明する。図10Aは、シリンダヘッドカバーと一体的に形成されたエアクリーナの分解斜視図を示している。図10Aを参照すると、この実施例では、エアクリーナは、非導電性合成樹脂製シリンダヘッドカバー20に一体形成された空気流入側エアクリーナケース21と、非導電性合成樹脂材料製の空気流出側エアクリーナケース22と、エアフィルタ23とにより構成されている。この実施例においても、空気流入側エアクリーナケース21の接続用フランジ24と空気流出側エアクリーナケース22の接続用フランジ25間においてエアフィルタ23の周縁部が保持される。
【0040】
また、この実施例においても、図2に示される実施例と同様に、自己放電式除電器10が空気流入側エアクリーナケース21の接続用フランジ24の外壁面上に設置される。或いは、図3に示される実施例と同様に、自己放電式除電器10が空気流出側エアクリーナケース22の接続用フランジ25の外壁面上に設置される。このように自己放電式除電器10が設置されると、自己放電式除電器10による除電作用によって、接続用フランジ24又は25の表面および裏面の電圧が低下し、それによりエアフィルタ23の電圧が低下する。その結果、吸入効率が向上せしめられることになる。
【0041】
図10Bは、ラジエータに取り付けられるファンカバーと一体的に形成されたエアクリーナの分解斜視図を示している。図10Bを参照すると、この実施例では、エアクリーナは、非導電性合成樹脂製ファンカバー30に一体形成された空気流入側エアクリーナケース31と、非導電性合成樹脂材料製の空気流出側エアクリーナケース32と、エアフィルタ33とにより構成されている。この実施例においても、空気流入側エアクリーナケース31の接続用フランジ34と空気流出側エアクリーナケース32の接続用フランジ35間においてエアフィルタ33の周縁部が保持される。
【0042】
また、この実施例においても、図2に示される実施例と同様に、自己放電式除電器10が空気流入側エアクリーナケース31の接続用フランジ34の外壁面上に設置される。或いは、図3に示される実施例と同様に、自己放電式除電器10が空気流出側エアクリーナケース32の接続用フランジ35の外壁面上に設置される。このように自己放電式除電器10が設置されると、自己放電式除電器10による除電作用によって、接続用フランジ34又は35の表面および裏面の電圧が低下し、それによりエアフィルタ33の電圧が低下する。その結果、吸入効率が向上せしめられることになる。
【符号の説明】
【0043】
1,21,31 空気流入側エアクリーナケース
2,22,32 空気流出側エアクリーナケース
3,23,33 エアフィルタ
4 フィルタ濾紙
5 フィルタ濾紙支持枠
6、7 接続用フランジ
10 自己放電式除電器
図1
図2
図3
図4
図5
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図10