【解決手段】複数の電極板4により、一対の電極板4S,4Mからなる第1の電極対Aと、一対の電極板4L,4Mからなる第2の電極対Bとを構成する。第1の電極対Aと第2の電極対Bとを、電極板4に沿う方向に間隔Dを設けて配置する。第1の電極対Aの一対の電極板4S,4Mの対向間隔を広くし、第2の電極対Bの一対の電極板4L,4Mの対向間隔を狭くする。第1の電極対Aで液体が有ると検出されているときに、第2の電極対Bで静電容量を検出する。
前記第1の電極対の前記一対の電極板の対向間隔が第1の間隔とされ、前記第2の電極対の前記一対の電極板の対向間隔が前記第1の間隔より狭い第2の間隔とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体検知器。
前記複数の電極板が少なくとも3枚の電極板を含み、この3枚の電極板の内の1枚の電極板を、前記第1の電極対と前記第2の電極対との共通電極としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体検知器。
室内熱交換器、室外熱交換器、膨張弁及び圧縮機を含む冷媒回路を備えた空気調和機であって、前記圧縮機が、請求項6に記載の圧縮機で構成されていることを特徴とする空気調和機。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室外熱交換器及び室内熱交換器と、これらの間に設けられた膨張弁と圧縮機とを備えている。空気調和機の冷凍サイクルでは、一例として、室外熱交換器を通過した液状の冷媒が、膨張弁でガス状になることにより温度が低下して冷気となり室内熱交換器に導かれる。そして、室内熱交換器により室内の空気に熱(低温)を移したガス状の冷媒は、圧縮機で圧縮されて高温・高圧状態となり、室外熱交換器により室外の空気に熱(高温)を移すことにより再び液状になる。
【0003】
このような空気調和機に用いられる圧縮機として、ロータリー方式やスクロール方式などを採用したものがある。例えば、特許文献1に開示されたロータリー方式の圧縮機は、作動室が形成されたシリンダと当該作動室に収容された環状ピストンとを有する圧縮部がタンク状の圧縮機筐体内に配設されており、この環状ピストンが外周面の一部を作動室の周壁面に当接しながら回転されることにより、作動室内に導入された冷媒の圧縮が行われる。
【0004】
特許文献1に開示された圧縮機では、シリンダやピストンなどの摺動部品の潤滑及び微小隙間のシール(封止)などのために圧縮機筐体内に潤滑油が収容されている。そして、この潤滑油が何らかの原因により所定量より少なくなると圧縮機の動作に支障をきたすため、潤滑油の量を監視する必要がある。また、潤滑油は冷媒と混合されるので、どの程度冷媒が混合されているか、すなわち混合比を監視する必要がある。このような液体の検知に用いることができるセンサが、例えば、特許文献2に開示されている。
【0005】
図16は特許文献2と同様な従来のセンサの正面図及び断面図である。
図16に示すように、このセンサ901は、ベース部材902に取り付けられた一対の導電ピン904の端部に、互いに間隔をあけて平行に配置された一対の帯状の電極板905が取り付けられている。そして、一対の電極板905の間の潤滑油の有無により導電ピン904間の静電容量が変化するので、このセンサ901を圧縮機筐体内の適切な高さ位置に設けることで、潤滑油の量が所定量以上あるか否かを検知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のセンサは、一対の電極板の間の静電容量の変化により潤滑油等の液体の有無を検出するものである。しかしながら、このようなセンサにより、静電容量から液体の液面レベルや液体の状態(例えば潤滑油の冷媒の混合比等)を検出しようとすると、正確に検出することができない。
【0008】
すなわち、センサで検出される静電容量は、一対の電極の対向間隔と、この対向面における液体と電極板との接触面積と、液体の誘電率によって決まる。このため、液面レベル(接触面積)を検出できるのは、液体の誘電率が既知で一定の値の場合であって、液体の状態に応じて誘電率が変化する場合は、静電容量から液面レベル(接触面積)を特定することができない。例えば潤滑油の冷媒の混合比により誘電率は変化する。また、静電容量から液体の混合比(あるいは誘電率)を検出する場合も同様に、液面レベルが変化すると静電容量から混合比(あるいは誘電率)を特定できない。
【0009】
そこで、本発明は、例えば潤滑油の冷媒の混合比のように液体の誘電率に応じた液体の状態を精度良く検出できる静電容量式の液体検知器、この液体検知器を有する圧縮機、及び、この圧縮機を備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の液体検知器は、複数の電極板の間の静電容量により液体を検知する液体検知器であって、前記複数の電極板が、それぞれ一対の電極板からなる第1の電極対と第2の電極対とを構成しており、前記液体の液面に対する上下方向において前記第1の電極対が前記第2の電極対に対して上方の位置となるように、当該第1の電極対と第2の電極対とが配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の液体検知器は、請求項1に記載の液体検知器であって、前記第1の電極対と前記第2の電極対とが、当該電極対の電極板に沿う方向に間隔を設けて配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の液体検知器は、請求項1または2に記載の液体検知器であって、前記第1の電極対の前記一対の電極板の対向間隔が第1の間隔とされ、前記第2の電極対の前記一対の電極板の対向間隔が前記第1の間隔より狭い第2の間隔とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の液体検知器は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体検知器であって、前記複数の電極板が少なくとも3枚の電極板を含み、この3枚の電極板の内の1枚の電極板を、前記第1の電極対と前記第2の電極対との共通電極としたことを特徴とする。
【0014】
請求項5の液体検知器は、筐体内に収容された液体の検知に用いられる請求項1乃至4のいずれか一項の液体検知器であって、前記筐体の壁部に設けられた貫通穴を塞ぐように当該壁部に取り付けられるベースと、前記筐体内に少なくとも一部が配置されるように前記ベースの一つの面から突出して取り付けられた複数の導電端子と、を有し、前記複数の電極板が、前記複数の導電端子のうちの対応する導電端子の前記一部にそれぞれ取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6の圧縮機は、筐体と、前記筐体内に設けられた圧縮部と、前記筐体内に収容された潤滑油を検知する液体検知部とを有する圧縮機であって、前記液体検知部が、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体検知器を含んで構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項7の空気調和機は、室内熱交換器、室外熱交換器、膨張弁及び圧縮機を含む冷媒回路を備えた空気調和機であって、前記圧縮機が、請求項6に記載の圧縮機で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、6、7に記載された発明によれば、液体の液面に対する上下方向において第1の電極対を第2の電極対の上方にされ、第1の電極対で液体の有無を検出し、液体が有ると検知されたときに第2の電極対で液面のレベルに関係なく液体の状態(例えば混合比や誘電率)を検出することができる。
【0018】
請求項2に記載された発明によれば、液体の液面に対する上下方向において第1の電極対を隙間を挟んで第2の電極対の上方に配置することができ、請求項1と同様に、第1の電極対で液体の有無を検出し、液体が有ると検知されたときに第2の電極対で液面のレベルに関係なく液体の状態(例えば混合比や誘電率)を検出することができる。
【0019】
請求項3に記載された発明によれば、請求項1または2と同様な効果が得られるとともに、対向間隔の広い第1の電極対では液体の切れがよいので、この第1の電極対により潤滑油等の液体の有無を誤検知することなく検知でき、かつ、対向間隔の狭い第2の電極対では所望の静電容量を得ることができるので、静電容量を精度良く検出でき、例えば液体の混合比や誘電率を検出することができる。
【0020】
請求項4に記載された発明によれば、請求項1乃至3の効果に加えて、電極板の数を少なくできる。
【0021】
請求項5に記載された発明によれば、複数の電極板が、ベースに沿って互いに平行に配置されるように、複数の導電端子のうちの対応する導電端子における一部にそれぞれ取り付けられている。このようにしたことから、請求項1と同様な効果が得られるとともに、以下の効果が得られる。複数の電極板が導電端子からこの導電端子の軸方向に大きく突出することがなくなり、例えば振動等により導電端子に加わるモーメント(あるいは荷重)を抑えることができるので、導電端子をベースに取り付ける部分に集中する荷重を小さくすることができる。そのため、取付スペースを小さくできるとともに、破損による故障を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(液体検知器の実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態に係る液体検知器について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る液体検知器の正面図、
図2は
図1のX−X線に沿う断面図、
図3は同液体検知器の背面図、
図4は同液体検知器を備えた液体検知回路の概略を示す図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1乃至
図3、
図5乃至
図7の図面における上下に対応する。
【0024】
この実施形態の液体検知器1は、ベース2と、複数の導電端子3と、3枚の電極板4と、を有している。ベース2は、例えば、ステンレス鋼などの金属を材料として構成されており、円盤状のベース本体部21と、すり鉢状のフレア部22とを一体に有しており、さらに、後述する複数の導電端子3を固定するハーメチックガラス23を有している。
【0025】
フレア部22は、ベース本体部21と同軸となるようにベース本体部21の一方の面21aの端部の全周に突出して設けられている。ベース本体部21には、一方の面21aと他方の面21bとを貫通する複数の貫通穴21cが形成されている。フレア部22の外周の取付面22aは円錐台状の面であって、後述する圧縮機101の筐体102に取り付ける際に、当該筐体102の「壁部」としての側壁部103に設けられた貫通穴103aに対して筐体102の内側から嵌合される。そして、このフレア部22と貫通穴103aの外周とが溶接により固着される。ハーメチックガラス23は、複数の貫通穴21c内に固着されている。
【0026】
複数の導電端子3は、例えば、ニッケル合金などの導電性の金属を材料とし構成されており、それぞれが真っ直ぐに伸びる棒状に形成されている。複数の導電端子3のそれぞれは、対応する上記貫通穴21cに挿通されており、ハーメチックガラス23によりベース本体部21と電気的に絶縁された状態で当該ベース本体部21に固定して取り付けられている。なお、導電端子3をベース本体部21に固定するために、ハーメチックガラス23に代えて別の絶縁材を用いてもよい。これにより、複数の導電端子3は、それぞれの一部31がベース本体部21のフレア部22内の一方の面21aから垂直に突出して配置され、他の一部32が他方の面21bから垂直に突出して配置されている。各導電端子3の他の一部32は、図示しないコネクタを介してリード線と接続される。
【0027】
本実施形態においては、3種類の長さの導電端子3を3本有し、導電端子3Lは最も長く、導電端子3Mが導電端子3Lより短く、導電端子3Sがさらに短く形成されている。各導電端子3L,3M,3Sは、正面方向から見て中央に縦に配置されている。そして、複数の導電端子3(3L,3M,3S)は、それぞれの他の一部32の長さが同一となるように、ベース本体部21に固定されており、これにより、各導電端子3L,3M,3Sの一部31は、互いの長さが異なるようにされている。
【0028】
3枚の電極板4は、例えば、ステンレス鋼などの導電性の金属を材料として構成されており、この3枚の電極板4は、例えば、溶接やろう付けなどによって対応する各導電端子3に取り付けられている。また、各電極板4は、対応する各導電端子3に対して直角に配置されるとともに、ベース本体部21の一方の面21aに沿って、この一方の面21aと平行に配置されている。
【0029】
3枚の電極板4のうちの一番内側の電極板4Sは上方端部に円弧を有する略半円状に形成され、導電端子3Sの一部31の先端に固定して取り付けられている。中央の電極板4Mは円板状に形成され、導電端子3Mの一部31の先端に固定して取り付けられている。一番外側の電極板4Lは下方端部に円弧を有する略半円状に形成され、導電端子3Lの一部31の先端に固定して取り付けられている。
【0030】
これにより、電極板4Sと電極板4Mとの間、及び、電極板4Lと電極板4Mとの間に間隔が設けられるとともに、互いに平行に配置される。なお、電極板4Mにおける導電端子3Lに対応する箇所には、この導電端子3Lを挿通する貫通穴4aが設けられている。この貫通穴4aは、導電端子3Lと電極板4Mとが接触しないように形成したものであるが、この貫通穴4aは、導電端子3Lを挿通した状態で絶縁材で塞がれていてもよい。
【0031】
また、略半円状の電極板4Sの上方端部の円弧の半径と、略半円状の電極板4Lの下方端部の円弧の半径とは、円板状の電極板4Mの外周の半径と等しくなっている。また、電極板4Sと電極板4Mとは、それぞれの上端の高さを一致させて配置され、電極板4Lと電極板4Mとは、それぞれの下端の高さを一致させて配置されている。さらに、これらの電極板4S,4M,4Lは左右方向の中心を一致させて配置されている。
【0032】
これにより、電極板4Sの全面が電極板4Mの略上半分の面に正面で対向し、電極板4Lの全面が電極板4Mの略下半分の面に正面で対向している。そして、電極板4Sの全面とこれに対向する電極板4Mの略上半分の面とが第1の電極対Aを構成し、電極板4Lの全面とこれに対向する電極板4Mの略下半分の面とが第2の電極対Bを構成している。
【0033】
この例では、
図2に示すように、第1の電極対の電極板4S,4Mの対向間隔は広く、第2の電極対Bの電極板4L,4Mの対向間隔は狭くなっている。すなわち、複数の電極板4において電極板4Mは共通電極であり、対向間隔を広くした一第1の電極対Aと、対向間隔を狭くした第2の電極対Bとが構成されている。また、第1の電極対Aと第2の電極対Bとは、電極板4Sの水平な下端と、電極板4Lの水平な上端との、上下方向の距離に対応して、電極板4に沿う方向に間隔Dを設けて配置されている。なお、一番内側の電極板4Sとベース本体部21の一方の面21aとの対向間隔は、第1の電極対Aの電極板4S,4Mの対向間隔よりも広くなっている。
【0034】
図4に示すように、第1の電極対Aと第2の電極対Bは導電端子3S,3M,3Lを介して検知回路10に接続される。第1の電極対Aと第2の電極対Bは、電極板4S,4M間と電極板4L,4M間とに、それぞれ電荷を蓄える2つのキャパシタとみなすことができる。そして、検知回路10は、一対の電極板4S,4M間の静電容量と、一対の電極板4L,4M間の静電容量とをそれぞれ検知して、検知した静電容量に応じた二種の検知信号を出力する。そして、この検知信号に基づいて、第1の電極対Aが取り付けられた高さにおける液体の有無を検出することができる。また、第2の電極対Bに対応する検知信号が示す静電容量の値によって液体に混入している不純物の混合比(例えば潤滑油と冷媒の混合比)等を検出することができる。なお、この第1実施形態では、電極板4Mは、「GND」で示すグランド端子(フレームグランド)に接続され、電極板4L,4Sは、「+」で示す信号端子に接続されている。
【0035】
以上の構成により、対向間隔の広い第1の電極対Aに対応する検知信号により、液体の有無を検出する。これにより、この実施形態では、圧縮機の油の切れを検出することができる。なお、油の切れが検出されたら、圧縮機は停止させる。また、対向間隔の狭い第2の電極対Bに対応する検知信号により、液体に混入している不純物の割合を検出する。この不純物の割合は、この実施形態では圧縮機の潤滑油の冷媒の混合比を検出する。これにより、圧縮機において、冷媒と潤滑油がどの程度混合されているかを判定する。
【0036】
このように、液体の有無の検出には、対向間隔の広い第1の電極対Aを用いているので、液体が無くなった場合には、一対の電極板4S,4Mの間から液体が確実に無くなり、さらに、電極板4Sと一方の面21aとの間からも液体が確実に無くなり、液体の無し状態を確実に検出することができる。すなわち、第1の電極対Aにおいて、電極板4S,4Mの間に液体が無い場合は、この第1の電極対Aで検出される静電容量は、電極板4S,4Mの面積と対向間隔、空気等の誘電率で決まる一定の値(以下、「下限規定値」という。)である。そして、電極板4S,4Mの間に液体が有る場合の静電容量は、液体の誘電率と液体と電極板4S,4Mとの接触面積に応じて、上記下限規定値よりも大きくなる。したがって、第1の電極対Aで検出される静電容量が上記下限規定値になったときに、液体が無いと判定できる。また、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より大きい場合は液体が有ると判定できる。
【0037】
第2の電極対Bで不純物の混合比を検出するときは、第1の電極対Aで液体が検出されている状態のときとする。すなわち、この状態では、液体の液面は、前記間隔Dより上にあり、第2の電極対Bは液体中に完全に浸った状態となっている。したがって、第2の電極対Bで検出される静電容量は、電極板4L,4Mの対向している面の面積と対向間隔、液体の誘電率で決まる。この電極板4L,4Mの対向している面の面積と対向間隔は一定の値(設計上既知の値)である。したがって、検出される静電容量から液体の誘電率を一義的に求めることができる。また、この誘電率を求めるために、対向間隔の狭い第2の電極対Bを用いているので、静電容量すなわち誘電率を精度良く検出することができ、不純物の割合(潤滑油と冷媒の混合比等)を精度良く検出することができる。
【0038】
なお、この実施形態では、信号端子(+)に接続された電極板4Sがベース本体部21側に配置されているので、ベース本体部21等における浮遊電荷の影響を受ける可能性もあるが、仮に浮遊電荷の影響を受けても、この電極板4Sは液体の有無の検出に用いるものであり、静電容量を精度良く検出する必要がなく、問題はない。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る液体検知器について、
図5〜
図8を参照して説明する。
図5は本発明の第2実施形態に係る液体検知器の正面図、
図6は
図5のX−X線に沿う断面図、
図7は同液体検知器の背面図、
図8は同液体検知器を備えた液体検知回路の概略を示す図である。なお、第2実施形態において第1実施形態と同じ要素あるいは対応する要素には同符号を付記して詳細な説明は省略する。
【0040】
第1実施形態では電極板4Mと導電端子3Mにより、第1の電極対Aと第2の電極対Bについての共通電極を構成しているのに対して、この第2実施形態では第1の電極対Aは、電極板4Sに対向する電極板4M1を有し、第2の電極対Bは、電極板4Lに対向する電極板4M2を有している。電極板4M1は電極板4Sと合同な形状であり、電極板4M2は電極板4Lと合同な形状である。また、電極板4M1,4M2も、他の電極板と同様に、例えば、ステンレス鋼などの導電性の金属を材料として構成されている。さらに、4枚の電極板4は、例えば、溶接やろう付けなどによって対応する各導電端子3に取り付けられている。
【0041】
本実施形態においては、第1実施形態の導電端子3より太さが僅かに細い3種類の長さの導電端子3を4本有している。導電端子3Lは最も長く、2本の導電端子3M1,3M2が導電端子3Lより短く、導電端子3Sがさらに短く形成されている。各導電端子3S,3M1,3M2,3Lは、正面方向から見て中央に縦に配置されている。
【0042】
そして、電極板4Sは導電端子3Sの一部31の先端に固定して取り付けられ、電極板4M1は導電端子3M1の一部31の先端に固定して取り付けられている。また、電極板4Lは導電端子3Lの一部31の先端に固定して取り付けられ、電極板4M2は導電端子3M2の一部31の先端に固定して取り付けられている。なお、電極板4Sにおける導電端子3M1に対応する箇所には、この導電端子3M1を挿通する貫通穴4aが設けられている。この貫通穴4aは、導電端子3M1と電極板4Sとが接触しないように形成したものであるが、この貫通穴4aは、導電端子3M1を挿通した状態で絶縁材で塞がれていてもよい。
【0043】
図8に示すように、第1の電極対Aと第2の電極対Bは導電端子3S,3M1,3M2,3Lを介して検知回路10に接続される。第1実施形態と同様に、第1の電極対Aと第2の電極対Bは電荷を蓄える2つのキャパシタとみなすことができ、検知回路10は、一対の電極板4S,4M1間の静電容量と、一対の電極板4L,4M2間の静電容量とをそれぞれ検知して、検知した静電容量に応じた二種の検知信号を出力する。なお、電極板4S,4Lは、「GND」で示すグランド端子(フレームグランド)に接続され、電極板4M1,4M2は、「+」で示す信号端子に接続されている。
【0044】
この第2実施形態でも、対向間隔の広い第1の電極対Aに対応する検知信号により、液体の有無を検出することができる。また、対向間隔の狭い第2の電極対Bに対応する検知信号により、液体に混入している不純物の割合(潤滑油と冷媒の混合比)を検出することができる。
【0045】
前記第1実施形態では、電極板4Mが円板状に形成され、電極板4S,4Lが略半円状の形状であり、また、第2実施形態では、電極板4M1,4M2,4S,4Lが略半円状の形状であるが、これらの電極板4の形状はこれに限定されるものではなく、正方形、長方形、多角形など、形状や大きさなどについて任意である。
【0046】
次に、
図9乃至
図13に基づいて実施形態と変形例の作用について説明する。なお、
図9乃至
図14では第1の電極対A、第2の電極対B及び液面Sのみを図示しており、斜線は電極対の中の液体を示している。
【0047】
図9は第1実施形態の作用を説明する図であり、
図9(A)は液体の液面Sが第1の電極対Aの範囲内にあり、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より大きくなる。したがって、この場合は、第2の電極対Bは液面Sの下方にあって液体中に完全に浸った状態となっていると判断でき、第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定できる。
図9(B)の場合は、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より僅かに大きな値となり、この場合も第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定できる。
【0048】
図9(C)及び
図9(D)の場合は、液面Sが第1の電極対Aの下にあり、第1の電極対Aで検出される静電容量はいずれも下限規定値となる。したがって、
図9(C)のように第2の電極対Bが液体に完全に浸った状態であるので、これを判別できれば測定可能である。しかし、第1の電極対Aからは
図9(D)の場合と区別できないので、第2の電極対Bによる液体の誘電率(混合比等)の測定は行わない。
【0049】
図10は、第1の電極対Aと第2の電極対Bとが、共通電極に対して他方の電極が同じ側に有るような液体検知器の例である、この場合も
図9と同様である。
【0050】
図11は第1の電極対Aと第2の電極対Bとに重なり部分があるような液体検知器の例である。
図11(A)は液面Sが第1の電極対Aの範囲内にあり、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より大きくなる。この静電容量が下限規定値よりも所定量だけ十分大きな場合は、
図11(A)のように第2の電極対Bは液面Sの下方にあると想定できるので、第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定する。
図11(B)の場合は、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より僅かに大きな値となる。この場合は、第2の電極対Bは液面Sの完全に下とはならないが、第1の電極対Aとの重なり部分の面積を見越した第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定できる。
図11(C)の場合は、液面Sが第1の電極対Aの下にあり、第1の電極対Aで検出される静電容量は下限規定値となる。したがって、第2の電極対Bによる液体の誘電率(混合比等)の測定は行わない。
【0051】
図12は第1実施形態の液体検知器を電極板が液面Sに対して平行となるように配置した例である。
図12(A)の場合は、液体の液面Sが第1の電極対Aの範囲内にあり、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より大きくなる。したがって、この場合は、第2の電極対Bは液面Sの下方にあって液体中に完全に浸った状態となっていると判断でき、第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定できる。また、
図12(B)の場合は、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値より僅かに大きな値となり、この場合も第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定できる。そして、第1の電極対Aで検出される静電容量が下限規定値の場合は、第2の電極対Bにより液体の誘電率(混合比等)を測定しない。このように、電極板が液面Sに対して平行となる場合は、例えば
図13のように各電極板が鉛直方向で同軸となっている場合でもよい。
図13(A)の場合は
図12(A)と同様な処理をすることができ、
図13(B)の場合は
図12(B)と同様な処理をすることができる。
【0052】
以上の
図9乃至
図13のいずれの場合も、液面Sに対する上下方向において第1の電極対Aが第2の電極対Bに対して上方の位置となるように配置されている。これらの液体検知器も、図示しない導電端子及びベースを備えており、各電極板は導電端子に固定されるとともに導電端子を介してベースに取付られている。
【0053】
(圧縮機の実施形態)
以下に、本発明の一実施形態に係る圧縮機について、
図14を参照して説明する。
図14は、本発明の一実施形態に係る圧縮機の断面図である。この圧縮機は、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられて、冷媒回路内の冷媒の循環等のために用いられる。
【0054】
圧縮機101は、ロータリー方式を採用しており、筐体102内に、モータ固定子111及びモータ回転子112を有するモータ部110と、シリンダ121及びシリンダ121に形成された作動室122に収容された環状ピストン125を有する圧縮部120と、が配設されている。モータ回転子112と環状ピストン125とは、クランク軸130によって連結されている。また、筐体102内に、圧縮部120等の潤滑等のための潤滑油Kが収容されている。
【0055】
圧縮機101は、モータ部110によってクランク軸130が回転されると、環状ピストン125が、その外周面の一部を作動室122の周壁面に接しながら回転される。環状ピストン125の回転に応じて、吸入管141から吸入マフラ142、導入管143を通じて、作動室122内に冷媒が導入される。そして、この冷媒が作動室122内において環状ピストン125によって圧縮されて、吐出マフラ144、筐体102、吐出管145を通じて圧縮機101外部に導出される。
【0056】
また、圧縮機101は、上述した液体検知器1を有している。液体検知器1は、筐体102における鉛直方向に沿う側壁部103に取り付けられている。具体的には、液体検知器1は、側壁部103に設けられた貫通穴103aに複数の導電端子3の一部31及び第1の電極対Aと第2の電極対Bが挿入されるとともに、ベース2のフレア部22の取付面22aが貫通穴103aの周囲において側壁部103の内面に接した状態で、当該フレア部22が溶接により固定されている。
【0057】
液体検知器1の第1の電極対Aと第2の電極対Bを構成する3枚の電極板4は、筐体102内において鉛直方向に沿って互いに平行に配置されている。液体検知器1は、潤滑油Kが適量となる正常状態において3枚の電極板4の全体が液面下に沈み、潤滑油Kが不足している異常状態において第1の電極対Aの一部又は全体が液面上に露出するように配置されている。さらに、液体検知器1は、潤滑油K(液体)の液面に対する上下方向において第1の電極対Aが第2の電極対Bに対して、間隔Dを取って上方の位置となるように配置されている。
【0058】
以上より本実施形態によれば、上述した液体検知器1を有しているので、液体検知器1の取付スペースを小さくできるとともに、破損による故障を抑制でき、そのため、小型で故障の少ないものとすることができる。なお、
図14は第1実施形態の液体検知器1を有している例を示しているが、第2実施形態の液体検知器1も同様に圧縮機101に対して取り付けられるものである。
【0059】
上述した実施形態では、ロータリー方式を採用した構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、スクロール方式など他の方式を採用した構成のものであってもよい。
【0060】
(空気調和機の実施形態)
以下に、本発明の一実施形態に係る空気調和機について、
図15を参照して説明する。
図15は、本発明の一実施形態に係る空気調和機の概略構成を示す図である。この空気調和機は、例えば、家屋や商業施設などに設けられるエアコン等として用いられる。
【0061】
空気調和機201は、室内熱交換器211と、室外熱交換器212と、膨張弁213と、上述した圧縮機101と、流路切換弁215とを含む冷媒回路210を備えている。
【0062】
空気調和機201の冷凍サイクルの流路は流路切換弁215により「冷房モード」および「暖房モード」の2通りの流路に切換えられる。冷房モードでは、
図15に実線の矢印で示すように、圧縮機101で圧縮された冷媒は流路切換弁215から室外熱交換器212に流入され、膨張弁213に流入される。そして、この膨張弁213で冷媒が膨張され、室内熱交換器211に流入される。この室内熱交換器211に流入された冷媒は、流路切換弁215を介して圧縮機101に流入される。一方、暖房モードでは、
図15に破線の矢印で示すように、圧縮機101で圧縮された冷媒は流路切換弁215から室内熱交換器211に流入され、膨張弁213に流入される。そして、この膨張弁213で冷媒が膨張され、室外熱交換器212、流路切換弁215、圧縮機101の順に循環される。
【0063】
冷房モードでは、室外熱交換器212が凝縮器として機能し、室内熱交換器211が蒸発器として機能し、室内の冷房がなされる。また、暖房モードでは、室外熱交換器212が蒸発器として機能し、室内熱交換器211が凝縮器として機能し、室内の暖房がなされる。
【0064】
以上より、本実施形態によれば、上述した液体検知器1を有する圧縮機101を備えているので、小型で故障の少ない空気調和機201とすることができる。
【0065】
以上の実施形態では、導電端子3は棒状のものであるが、これに限らず、導電端子は、電極板4と一体に形成した、あるいは別体に形成した、帯状のものでもよい。
【0066】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の液体検知器、圧縮機及び空気調和機の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。