【実施例】
【0025】
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
【0026】
原料鋼を真空溶解し、鍛造、圧延、伸線、焼鈍し、ワイヤ表面に銅めっきした後、1.2mmの製品径まで仕上伸線し、20kg巻きスプールとしたものを試作品とした。試作したソリッドワイヤの化学成分を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
試作したソリッドワイヤを用いて、溶接作業性及び溶着金属性能の調査を行った。
【0029】
溶接作業性および溶着金属性能は、JIS G3127 SL3N440に規定される板厚20mmの鋼板を用いて、JIS Z3111に準じて表2に示す溶接条件で溶着金属試験を実施した。
【0030】
溶接作業性の調査項目は、溶着金属試験時のアークの安定性、スパッタの発生状況および高温割れの有無について調査した。なお、溶接時のワイヤ送給は、6m長さのコンジットケーブルを用いた。
【0031】
【表2】
【0032】
溶着金属試験は、AW後の溶着金属、および表3に示す溶接後熱処理条件によるPWHT後の溶着金属を評価し、各溶着金属部からA0号引張試験片および衝撃試験を採取して各々の機械的性能を調査した。
【0033】
【表3】
【0034】
溶着金属の引張試験の評価は、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さが600〜700MPaを良好とした。また、衝撃試験の評価は、−60℃におけるシャルピー衝撃試験を実施し、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの平均値が80J以上、最低値が60J以上を良好とした。これらの結果を表4にまとめて示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表1および表4中のワイヤ記号W1〜W5が本発明例、ワイヤ記号W6〜W19は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1〜W5は、ワイヤ中のC、Si、Mn、Cu、Ni、Mo、Ti、B量が適正なので、ワイヤ送給性が良好でアークが安定してスパッタ発生量が少なく、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さおよび吸収エネルギーの平均値および最低値ともに良好であり、極めて満足な結果であった。
【0037】
比較例中ワイヤ記号W6は、Cが少ないので、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さが低かった。また、Cuが少ないので、PWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低く、アークが不安定でスパッタ発生量が多かった。
【0038】
ワイヤ記号W7は、Cが多いので、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの平均値および最低値が低かった。また、クレータ部に割れが生じた。
【0039】
ワイヤ記号W8は、Siが少ないので、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの平均値が低かった。また、Cuが多いので、クレータ部に割れが生じた。
【0040】
ワイヤ記号W9は、Siが多いので、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
【0041】
ワイヤ記号W10は、Mnが少ないので、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さが低く、吸収エネルギーの平均値が低かった。
【0042】
ワイヤ記号W11は、Mnが多いので、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
【0043】
ワイヤ記号W12は、Niが少ないので、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
【0044】
ワイヤ記号W13は、Niが多いので、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの平均値及が低かった。また、クレータ部に割れが生じた。
【0045】
ワイヤ記号W14は、Moが少ないので、PWHT後の溶着金属の引張強さが低く、吸収エネルギーの平均値および最低値が低かった。
【0046】
ワイヤ記号W15は、Moが多いので、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの最低値が低かった。
【0047】
ワイヤ記号W16は、Tiが少ないので、アークが不安定でスパッタ発生量が多く、AWおよびPWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの最低値が低かった。
【0048】
ワイヤ記号W17は、Tiが多いので、AWおよびPWHT後の溶着金属の引張強さが高く、吸収エネルギーの平均値および最低値が低かった。
【0049】
ワイヤ記号W18は、Bが少ないので、PWHT後の溶着金属の吸収エネルギーの平均値および最低値が低かった。
【0050】
ワイヤ記号W19は、Bが多いので、AWおよびPWHT後の吸収エネルギーの平均値および最低値が低かった。また、クレータ部に割れが生じた。