【解決手段】路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、走行時に車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、帯電した車体の表面に沿った流れから表面から離れた流れに変化し始める窓枠7(8)の正の電位を、正の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により中和除電して低下させる自己放電式除電器9を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたようにシートを車体の表面に貼り付けると、車体の外表面に凹凸が形成されることになるため、車両の外観が損なわれる。また、そのシートは、シリコンゴムにより形成されているので、走行に伴ってそのシートに静電気が帯電しやすい。そのため、空気イオンとシートに帯電した静電気とにより生じる斥力によって、車体の外表面から空気が剥離する可能性がある。
【0006】
また、特許文献2に記載された導電性不織布は、車体の表面の全周に貼り付けられているので、搭載性が低下するばかりか、見栄えが損なわれる可能性がある。また、意図的に空気を剥離させる箇所で、空気が剥離しにくくなるなどにより、意図した空力特性とならず走行性能が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は上記の技術的課題に着目して成されたものであり、車体が正の静電気を帯電することに起因して、正の電荷を帯びた空気流が、車体の外表面から意図しない位置で剥離することを抑制することができる車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、走行時に前記車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める窓枠の正の電位を、前記正の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により中和除電して低下させる自己放電式除電器を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、前記窓枠が形成されたドアフレームを更に備え、前記自己放電式除電器は、前記ドアフレームのうちの前記窓枠を形成する部位の前記車体の内側の面に取り付けてもよい。
【0010】
本発明では、前記窓枠が形成されたボディを更に備え、前記自己放電式除電器は、前記ボディのうちの前記窓枠を形成する部位の前記車体の内側の面に取り付けてもよい。
【0011】
本発明では、前記窓枠が形成されたドアフレームと、前記ドアフレームが嵌め込まれるボディとを更に備え、前記自己放電式除電器は、前記ドアフレームを前記ボディに嵌め込んだ際に、前記ドアフレームのうちの前記窓枠を形成する部位が接触する前記ボディのいずれかの箇所に取り付けてもよい。
【0012】
本発明では、前記窓枠を形成するフレーム部材と、前記フレーム部材に取り付けられる内装部材とを備え、前記自己放電式除電器は、前記内装部材の外縁部のうち前記車体の内側に取り付けてもよい。
【0013】
本発明では、前記内装部材は、樹脂材料によって構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の走行時に車体の周囲を流れる正に帯電した空気流が、車体の表面に沿う流れから車体の表面から離れた流れに変化し始める窓枠の正の電位を、その電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により中和除電して低下させる自己放電式除電器を備えている。したがって、車体の表面に帯電した静電気を減じて正の電位を低下させることができるので、正に帯電している空気流との間に生じる斥力(反発力)を低下させることができる。そのため、車体の表面近傍から正に帯電した空気流が剥離することを抑制することができる。その結果、車体の表面に作用する空圧が想定を超えて変化したり、それに伴って車体の空力特性が悪化したりすることを抑制することができるので、操縦安定性などの走行性能が低下することを抑制することができる。
【0015】
また、車体の窓枠は、通常、乗員の視線の高さに形成されており、車高方向で比較的高い位置に形成されている。そのような車高方向における高い位置で空気流が剥離することを抑制することにより、特に車体のローリング方向やピッチング方向での空力特性が変化もしくは低下することを効率よく抑制することができる。
【0016】
さらに、車体の内側に自己放電式除電器を取り付けることにより、搭載性が低下することや、見栄えが損なわれることを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で対象とすることができる車両の一例を
図8に示している。
図8に示す車両1は、車輪2がゴムなどの絶縁体(または、電気伝導率が小さい材料)により構成されており、車体3と路面とが絶縁状態に保持されている。この車両1が走行する際には、走行風や吸排気管内を流動する空気流などと車体3の表面との摩擦などに伴う電気的な作用によって正(+)の静電気が生じて、車体3に帯電する。また、エンジンやモータなどの動力源あるいは変速機もしくはサスペンションなどが駆動すると、それらの装置を構成する複数の部材が摺動し、その摺動に伴う電気的な作用によって正(+)の静電気が生じて、車体3に帯電する。さらに、ゴムで構成された車輪2と路面との摩擦や、車輪2のゴムが回転して路面に接触していた面が、路面から離れることなどによる電気的な作用により正(+)の静電気が生じて、車体3に帯電する。あるいは、車両1に搭載された電気機器や車両1の外部の送電線などの電気機器の電気を要因として正(+)の静電気が帯電する場合がある。
【0019】
その静電気は、電気伝導率が小さい材料に拘わらず、電気伝導率が比較的高い金属材料によって構成されたボディやパネルなどにも帯電する。これは、結合部位には、少なからず電気抵抗があるためである。
【0020】
通常、空気は正(+)の電荷を帯びているため、車体3に正(+)の静電気が帯電すると、空気との間で斥力(反発力)が生じる。
図9は、車体モデルを正(+)の電荷で帯電させた状態と、車体モデルを帯電させていない状態との、車体モデルの表面に垂直な方向での流速分布を測定した結果を示している。なお、
図9における縦軸は、モデル表面からの距離を示し、横軸は、車体モデルに吹き付けた空気の流速U∞に対する、車体モデルからの距離毎に測定した流速Uの割合(U/U∞)を示している。また、車体モデルを正(+)の電荷で帯電させた状態で測定した結果を正方形でプロットし、車体モデルを帯電させていない状態で測定した結果を菱形でプロットしている。
【0021】
図9に示すように、車体モデルを正(+)の電荷で帯電させた場合における境界層厚さ(U/U∞がほぼ「1」になる際の車体モデル表面からの距離)が、車体モデルを正(+)の電荷で帯電させていない場合における境界層厚さよりも大きくなっている。これは、車体モデルを正(+)の電荷で帯電させた場合には、車体モデルを正(+)の電荷で帯電させていない場合に比べて剥離が大きくなることを意味する。上述したように空気流は、通常、正(+)の電荷を帯びているので、車体モデルに帯電した正(+)の電荷と空気流の正(+)の電荷とによって斥力が生じ、その結果、車体モデルの表面からの空気流の剥離が助長されたものと考えられる。
【0022】
一方、車両1の構造上、走行時に車体3の周囲に流れる空気流が、車体3の表面に沿った流れから、車体3の表面から離れた流れに変化しやすい箇所がある。具体的には、車体3の前方から見た場合に、車体3の外面が車体の内側方向に屈曲する箇所である。より具体的には、フロントガラス4が嵌め込まれる窓枠やリヤガラスが嵌め込まれる窓枠などの空気流の流線方向に対して車体3の表面が車体3の内側に屈曲する箇所や、サイドガラス5が嵌め込まれる窓枠などの空気流の流線方向に対して突出した箇所である。
【0023】
このような箇所に正(+)の静電気が帯電すると、上述したように空気流の剥離が助長される。そのため、本発明に係る車両は、窓枠の正(+)の電位を低下させるように構成されている。具体的には、窓枠に帯電した正(+)の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電式除電器を車体3に取り付けている。この自己放電式除電器は、金、銀、銅、アルミニウムなどの電気伝導率が比較的高い材料により構成されたシートであって、そのシートの電位に応じてコロナ放電するように構成されている。コロナ放電は、従来知られているように鋭利もしくは尖っている部位から生じる。したがって、シートは、鋭利なエッジが形成された多角形状が好ましい。また、その外周面である切断面は、ギザギザの切断面となるように形成することが好ましい。さらに、シートの表面にローレット加工などによって鋭利もしくは尖った凹凸を形成することが好ましい。
【0024】
なお、本発明に係る自己放電式除電器は、例えば、電気伝導率が比較的高い塗料やメッキを窓枠に塗布してもよい。また、自己放電式除電器は、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子、導電性プラスチックなどにより構成してもよい。
【0025】
図1には、リアサイドドア6を車両1の内側から見た図を示している。
図1に示すリアサイドドア6には、乗員の視線の高さに合わせて車高方向におけるほぼ中央部よりも上方に窓枠7が形成されている。その窓枠7における車高方向に延びる側面部8に自己放電式除電器であるシート9が、車高方向に所定の間隔を空けて三つ取り付けられている。なお、
図1における「●」を付している部分に、アルミニウム製の薄片を長方形に切断したシート9が貼り付けられている。また、通常、車幅方向における両側の部材は、空力特性が同一になるように構成するものであるから、その両側のリアサイドドア6にシート9を取り付けることが好ましい。さらに、
図1に示すように車両前方側の側面部以外に、車両後方側の側面部10や、上面部11にシート9を取り付けてもよい。
【0026】
図1におけるII-II線に沿う断面図を
図2に模式的に示している。
図2に示すようにリアサイドドア6の窓枠7における側面部8は、窓枠7の内側に開口した樋状に形成されており、その開口した部分にゴムによって形成された第1シールゴム12が嵌め込まれている。この第1シールゴム12は、ドアガラス13との間から雨水が車室内に侵入することを抑制するため、または車室内を気密状にするために設けられたものであって、窓枠7における側面部8と同様に樋状に形成されている。そして、第1シールゴム12の開口部にドアガラス13が密着して設けられている。なお、図示しないモータなどによりドアガラス13は、車高方向に動くことができる。
【0027】
また、
図1に示すリアサイドドア6は、図における左側の部分を支点として、図における右側の部分が車外側に回動して開くように構成されており、そのリアサイドドア6が閉じたときに図示しないボディに接触する部分に、第2シールゴム14が設けられている。具体的には、リアサイドドア6における車両1の内側に、そのリアサイドドア6の外周縁に沿って第2シールゴム14が設けられており、窓枠7部分では、上記樋状に形成された部分の外周縁に沿って第2シールゴム14が設けられている。そして、第2シールゴム14の外周面に接触するようにシート9がリアサイドドア6における車両1の内側の面に貼り付けられている。すなわち、上述したようにシート9は、第2シールゴム14よりも外側に貼り付けられているので、シート9の上面が外気に曝された状態となる。
【0028】
ここで、窓枠7にシート9にを貼り付けて帯電した正(+)の静電気を自己放電すること、すなわち電気的に中和除電することによる作用について説明する。上述したように空気流が正(+)の電荷を帯び、かつ窓枠7にも同様に正(+)に帯電している場合には、空気流が窓枠7の外表面から剥離するように斥力が生じる。一方、窓枠7の表面を流れる空気流には、車体3との相対速度差に応じて、コアンダ効果により、窓枠7およびドアガラス13の表面に沿った流れとなる。しかしながら、上記の斥力は、そのような空気流の流線の変化を阻害するように作用する。この斥力の原因となる車体3の正(+)の電荷が増大すると、ついにはシート9でコロナ放電が生じ、それに伴ってシート9およびその近傍の部分の正(+)の電位が低下する。その際には、各シールゴム12,14を介してドアガラス13の正(+)の電位も低下する。上記のようにシート9およびその近傍の部分の正(+)の電位が低下することにより、斥力が小さくなる。また、シート9での正(+)の電荷が増大することに伴って、その周囲に空気のマイナスイオンを生じさせ、これをシート9およびその周囲の正(+)の電荷が吸引することにより空気流が窓枠7およびドアガラス13の表面におけるシート9の周囲に吸引される。このようにして、空気流が窓枠7やドアガラス13から剥離することを抑制することができる。なお、シート9により電位が低下する範囲は、シート9を中心として、直径が約150〜200mmの範囲である。
【0029】
なお、上述したようにシート9から静電気を放電するためには、シート9のいずれかの面が空気に曝されていればよい。シート9は、リアサイドドア6の内面に貼り付けられているので、車両1の外観として現れない。一方、第2シールゴム14の外側にシート9が貼り付けられているので、シート9の上面が外気に曝されている。したがって、シート9から外気に静電気を放電することができる。そのため、シート9を中心とした所定の範囲の正(+)の静電気を中和除電することができる。すなわち、窓枠7や各シールゴム12,14あるいはドアガラス13などの正(+)の静電気を中和除電することができる。その結果、窓枠7およびその近傍から空気流が剥離することを抑制することができる。
【0030】
上述したように車幅方向における両側面を流動する空気流の剥離が抑制されるので、ローリング方向やヨー方向での空力特性が変化、もしくは悪化することを抑制することができる。特に、上述したように窓枠7は車高方向で比較的高い位置に形成されているので、その部分での空気流の剥離を抑制することにより、ローリング方向での空力特性の変化、もしくは悪化を効率的に抑制することができる。その結果、回頭性や操縦安定性などの走行性能を向上させることができる。例えば、旋回時に空気流に対して車体3が偏向した場合であっても、車体3の内輪側と外輪側とにおける空圧の相違が抑制され、設計上想定した所定の回頭性や旋回性能を得ることができる。また、上述したようにシート9を中心として、所定の範囲の電位を低下させることができるので、横風を受けているときや旋回走行時など車両1に斜め前方から空気流が流れた場合であっても、上述したような効果を奏することができる。
【0031】
ドアガラス13が嵌め込まれる窓枠7は、上述したようにリヤサイドドア6に一体に形成されたものに限らず、2ドアタイプの車両などでは、
図3に示すようにサイドドア15の上縁部16、サイドドア15から上方に向けて形成された側壁部17、車両の前後方向における中央部または中央部よりも後方側から車高方向に形成されたセンターピラー(Bピラー)18、車両の上部の外形を成すルーフサイドパネル19に囲われた空間にドアガラス13が嵌まり込むように構成されたものもある。
図3に示す車両は、サイドドア15が、図における左側を支点として回動するように構成されていて、そのサイドドア15の上縁部16からドアガラス13が上昇するように構成されている。そのドアガラス13における左側の縁部は、側壁部17に沿って上昇し、右側の縁部は、Bピラー18に沿って上昇するように構成されている。また、ドアガラス13における上縁部は、ルーフサイドパネル19に当接するように構成されている。なお、Bピラー18とルーフサイドパネル19の後端部20とに囲われた空間に、固定ガラス21が嵌め込まれている。
【0032】
図3におけるIV-IV線に沿う断面図を
図4に模式的に示している。
図4に示す例では、Bピラー18は、車両1の前後方向に幅が広い外壁部22と、その外壁部22から車両1の外側に突出したリブ部23とにより形成されている。このBピラー18における外壁部22の内側にリブ部23と隙間を空けてドアガラスシールゴム24が取り付けられている。このドアガラスシールゴム24は、サイドドア15が閉じられた際に、ドアガラス13とサイドドア15とに挟まれることにより外部から雨水などが車室内に侵入しないように構成されている。また、リブ部を23挟んでドアガラスシールゴム24とは反対側の部分に、固定ガラス21と密着する固定ガラスシールゴム25が取り付けられている。この固定ガラスシールゴム25も上記ドアガラスシールゴム24と同様に雨水などが車室内に侵入しないように設けられている。そして、ドアガラスシールゴム24とリブ部23との間、および固定ガラスシールゴム25とリブ部23との間で、外壁部22の内面に自己放電式除電器となるシート9が貼り付けられている。なお、
図3には、シート9を貼り付ける位置を「●」でプロットしており、ドアガラスシールゴム24とリブ部23との間には、車高方向に所定の間隔を空けて三つ設けられ、固定ガラスシールゴム25とリブ部23との間には、車高方向に所定の間隔を空けて三つ設けられている。
【0033】
このように構成された車両は、サイドドア15を閉じたときには、ドアガラスシールゴム24およびBピラー18(外壁部22)を介してドアガラス13とシート9とが連結される。そして、シート9が自己放電することにより、シート9およびその近傍の正(+)の電荷が低下する。したがって、
図3に示す車両も、
図1に示す車両1と同様の効果を奏することができる。なお、
図3に示す例では、シート9の上面は、外気に曝されており、その外気に静電気が放電される。
【0034】
つぎに、ミニバンタイプにおける窓枠7の静電気を除電する構成について
図5を参照して説明する。
図5に示す車両は、後部座席のドアがスライド式のドア(以下、スライドドアと記す)26であって、そのスライドドア26に窓枠7が形成されている。また、スライドドア26は、Bピラー27、車両の前後方向におけるBピラー27よりも後方側から車高方向に形成されたリアピラー(Cピラー)28、ルーフサイドパネル29、ロッカーパネル30とに囲われた空間に嵌め込まれるように構成されている。そのようにスライドドア26が閉じられたときに、スライドドア26の外部から車室内に雨水が浸入することを抑制するために、Bピラー27、Cピラー28、ルーフサイドパネル29、車両の下端部の外形を構成するロッカーパネル30には、ウェザーストリップが取り付けられ、スライドドア26が閉じられたときに、スライドドア26の内面とウェザーストリップとが接触するように構成されている。
【0035】
上記のようにスライドドア26が閉じられたときに、スライドドア26に形成された窓枠7の部分が位置する箇所に、自己放電式除電器となるシート9が取り付けられている。具体的には、
図5に「●」をプロットしてあるように、Bピラー27の上方部分、Bピラー27とルーフサイドパネル29とが連結された部分、ルーフサイドパネル29のうちのBピラー27とCピラー28とに連結された部分のほぼ中央の部分、Cピラー28とルーフサイドパネル29とが連結された部分、Cピラー28の上方部分の車外側の面にシート9が貼り付けられている。より具体的には、ウェザーストリップよりも外側の部分にシート9が貼り付けられている。
【0036】
このように窓枠7自体にシート9を貼り付けていない場合であっても、スライドドア26を閉じたときには、ウェザーストリップを介してシート9と窓枠7とが連結されるので、窓枠7の正(+)の電荷を低減することができる。したがって、
図1に示す車両1と同様の効果を奏することができる。ここで、ウェザーストリップよりも外側の部分にシート9が貼り付けられているので、シート9の上面は、外気に曝されている。したがって、シート9から外気に静電気が放電される。
【0037】
なお、
図5に示すようにBピラー27などスライドドア26が閉じられたときに接触する部材にシート9を設けずに、
図6に示すようにスライドドア26の車室側の面にシート9を貼り付けてもよい。その場合には、スライドドア26を閉じた際に、シート9の上面にウェザーストリップが接触して密封することがない位置にシート9を取り付けることが好ましい。なお、
図6は、スライドドア26を車室内から見た図である。
【0038】
つぎに、空気流の流線方向に対して車体の表面が車体の内側方向に屈曲する箇所となる窓枠の静電気を除電する構成について説明する。
図7は、フロントガラス31が嵌め込まれる窓枠7の静電気を除電する構成を説明するための断面図である。なお、リアガラスが嵌め込まれる窓枠の静電気も同様に除電することができる。
図7に示すようにフロントガラス31の上部は、樹脂材料により構成されたリップ部32を介してルーフパネル33に連結されている。このルーフパネル33は、車両の天井として機能するものであって、その内側には、樹脂材料により構成されたフェルト状の内装材34が嵌め合わされている。そして、ルーフパネル33の前端部の静電気を放電するために、内装材34の前端部のエッジ(
図7におけるa点)、または内装材34の前端部よりも前方側のルーフパネル33の内面(
図7におけるb点)に自己放電式除電器となるシート9が貼り付けられている。なお、シート9は、車室内の空気に曝されている。また、車幅方向における中央部、またはその中央部を中心として左右対象の位置にシート9を貼り付けることが好ましい。
【0039】
上記のように内装材34やルーフパネル33の内面にシート9を貼り付けることにより、フロントガラス31の窓枠7となるルーフパネル33の前端部およびフロントガラス31の上端部の静電気を車室内に放電して、その部位の正(+)の電荷を低減することができる。したがって、空気流の流線方向に対して車体3の表面が車体3の内側方向に屈曲する窓枠の静電気を除電することにより、その窓枠7で空気流が剥離することを抑制することができる。そのため、ピッチング方向に作用する空力特性が変化、または悪化することを抑制することができる。その結果、車体3を路面方向に押し付けるダウンホースが低下することを抑制することができるので、回頭性や操縦安定性などの走行性能を向上させることができ、また加速性を向上させることができる。
【0040】
上述したいずれの構成であっても、窓枠となる部分の正(+)の電荷に帯電した静電気を除電することにより、その部分で空気流が剥離することを抑制することができる。また、窓枠は、車高方向における乗員の視線に併せた位置であって比較的高い位置に形成されている。その結果、窓枠の静電気を除電することにより、ローリング方向やピッチング方向に作用する空力特性が変化、または悪化することを抑制することによる車両の回頭性や操縦安定性あるいは加速性などの走行性能をより一層向上させることができる。さらに、上述したようにドアの内側の面や、内装材など車外から見えない位置にシートを貼り付けることにより、外観が損なわれることを抑制することができる。