:REはY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb又はPrのうち一つ以上)のピークの比率が0.02以下を満たす誘電体磁器組成物である積層セラミックキャパシタ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0015】
本発明は、誘電体磁器組成物に関するもので、誘電体磁器組成物を含む電子部品には、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどがあり、以下では、誘電体磁器組成物及び電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0016】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、主成分及び副成分を含み、上記主成分はBa及びTiを含むチタン酸バリウム系化合物である。
【0017】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の焼結後のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3の(110)ピークに対する回折角(2θ)30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち一つ以上)のピークの比率は0.02以下を満たすことができる。
【0018】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、EIA(Electronic Industries Association)規格に明示されたX5R(−55℃〜85℃)、X7R(−55℃〜125℃)、そしてX8R(−55℃〜150℃)特性を満たすことができる。
【0019】
また、XRD分析において、パイロクロア(Pyrochlore)相の相対強度を制御することにより、信頼性に優れた誘電体磁器組成物、誘電体材料及びそれを含む積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、ニッケル(Ni)を内部電極として使用し、1300℃以下、上記ニッケル(Ni)が酸化されない還元雰囲気で焼成することができる誘電体磁器組成物を提供する。
【0021】
また、本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物を焼結して形成した誘電体材料及び上記誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックキャパシタを提供する。
【0022】
本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタは、上記温度特性を満たすとともに優れた信頼性を具現することができる。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の焼結後のX線回折(X−Ray Diffraction、XRD)グラフである。
【0024】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、焼結後のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、BaTiO
3の(110)ピークに対する30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち一つ以上)のピークの比率が0.02以下を満たす。
【0025】
特に、
図2を参照すると、上記パイロクロア(Pyrochlore)相は、Y
2Ti
2O
7であってもよい。
【0026】
高温温度特性(X8R特性)を満たすために、BaTiO
3にCaZrO
3及び過量の希土類元素を添加すると、上記高温温度特性は具現されても、主成分自体のキュリー温度が125℃であるため、高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)の改善には限界がある。
【0027】
また、過量の希土類元素が添加されることによってパイロクロア(Pyrochlore)相が生成されて信頼性が低下する問題がある。
【0028】
しかし、本発明の一実施形態によると、高温温度特性(X8R特性)を満し、良好な高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)を具現することができる。
【0029】
また、希土類元素の含量を調節してパイロクロア(Pyrochlore)相のピークのサイズを調節し、信頼性を保証することができる。
【0030】
また、Mgの含量を制御して高温でのTCC向上及びX8R温度特性を具現することができる。
【0031】
従って、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を適用した積層セラミックキャパシタは、高温温度特性(X8R特性)を満たし、良好な高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)を具現することができる。
【0032】
また、適正誘電率と焼結性を具現する副成分の(Ba+Ca)/Siの比率を調節することにより、誘電率及び焼結性が具現され、高温温度特性(X8R特性)を満たすことができる。
【0033】
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、主成分及び副成分を含み、上記副成分は第1〜第6副成分を含んでもよい。
【0034】
以下、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0035】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物は、Ba及びTiを含む主成分を含んでもよい。
【0036】
本発明の一実施形態によると、上記主成分は、BaTiO
3、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yCa
y)O
3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba
1−xCa
x)(Ti
1−yZr
y)O
3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti
1−yZr
y)O
3(ここで、0<y≦0.5)からなる群より選択される一つ以上を含んでもよいが、これに限定されず、チタン酸バリウムから変形した固溶体が用いられてもよい。
【0037】
上記主成分は粉末であることができ、平均粒径は特に制限されないが、1000nm以下であってもよい。
【0038】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第1副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnからなる群より選択される一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含んでもよい。
【0039】
上記第1副成分は、上記主成分100モル部に対して0.2〜2.0モル部含まれてもよい。
【0040】
上記第1副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような形態に関わらず、第1副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上の元素の含量であることができる。
【0041】
例えば、上記第1副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも一つ以上の原子価可変アクセプタ元素の含量の和は、上記主成分100モル部に対して0.2〜2.0モル部であってもよい。
【0042】
上記第1副成分の含量及び後述する第2〜第4副成分及び第6〜第7副成分の含量は、主成分100モル部に対する相対的な量であって、特に各副成分が含む金属または半金属(Si)のモル部と定義することができる。上記金属または半金属のモル部は、イオン状態の金属または半金属のモル部を含んでもよい。
【0043】
上記第1副成分の含量が主成分100モル部に対して0.2〜2.0モル部の場合は、耐還元特性が具現されてRC値が確保され、高温耐電圧特性に優れた誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0044】
上記第1副成分の含量が0.2モル部未満では、RC値が非常に低いか、高温耐電圧が低下する恐れがある。
【0045】
上記第1副成分の含量が2.0モル部を超えると、RC値が減少する現象が発生する恐れがある。
【0046】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第2副成分として、Mgを含む原子価固定アクセプタ(fixed−valence acceptor)元素の、酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含んでもよい。
【0047】
上記第2副成分は、上記主成分100モル部に対して0.5モル部以下含まれてもよい。
【0048】
上記第2副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような形態に関わらず、第2副成分に含まれたMg元素の含量であることができる。
【0049】
例えば、上記第2副成分に含まれたMg元素の含量は、上記主成分100モル部に対して0.5モル部以下であることができる。
【0050】
上記第2副成分の含量が主成分100モル部に対して0.5モル部を超えると、X8R温度規格から外れることがあるため、好ましくない。
【0051】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群より選択される一つ以上を含む第3副成分を含んでもよい。
【0052】
上記第3副成分は、上記主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部含まれてもよい。
【0053】
上記第3副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような形態に関わらず、第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち少なくとも一つ以上の元素の含量であることができる。
【0054】
例えば、上記第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち少なくとも一つ以上の元素の含量の和は、上記主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部であることができる。
【0055】
本発明の一実施形態において、上記第3副成分は、誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシタの信頼性の低下を防ぐ役割をする。
【0056】
具体的には、上記第3副成分の含量を調節することにより、焼結された誘電体のXRD分析において、上記BaTiO
3結晶相の(110)面ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3のピークに対する30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、 La、Ce、Nd、Tb、Pr のうち一つ以上)のピークの比率が0.02以下を満たすようにすることができる。
【0057】
上記第3副成分の含量が上記主成分100モル部に対して0.2モル部未満では、高温でのTCCの改善効果が大きくない恐れがあり、上記第3副成分の含量が上記主成分100モル部に対して5.0モル部を超えると、パイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REは、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち少なくとも一つ以上の元素)が生成されて高温耐電圧特性が低下する恐れがある。
【0058】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、CaZrO
3を含む第4副成分を含んでもよい。
【0059】
上記CaZrO
3は、上記主成分100モル部に対して0.25〜5.0モル部以下含まれてもよい。
【0060】
上記CaZrO
3の含量が主成分100モル部に対して0.25モル部未満であるか、5.0モル部を超えると、高温でのTCCがX8R規格を満たさない恐れがある。
【0061】
f)第5副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群より選択される一つ以上を含む第5副成分を含んでもよい。
【0062】
上記第5副成分は、上記主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部含まれてもよい。
【0063】
上記第5副成分の含量は、酸化物または炭酸塩のような形態に関わらず、第5副成分に含まれたBa及びCaのうち少なくとも一つ以上の元素の含量であることができる。
【0064】
例えば、上記第5副成分に含まれたBa及びCaのうち少なくとも一つ以上の元素の含量の和は、上記主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部であることができる。
【0065】
上記第5副成分が上記主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部含まれると、誘電率及び高温耐電圧特性が向上することができる。
【0066】
g)第6副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Si元素の酸化物、Si元素の炭酸塩及びSi元素を含むガラスからなる群より選択される一つ以上を含む第6副成分を含んでもよい。
【0067】
上記第6副成分は、上記主成分100モル部に対して0.5〜3.0モル部含まれてもよい。
【0068】
上記第6副成分の含量は、ガラス、酸化物または炭酸塩のような形態に関わらず、第6副成分に含まれたSi元素の含量であることができる。
【0069】
上記第6副成分の含量が主成分100モル部に対して0.5モル部未満では、誘電率及び高温耐電圧が低下する恐れがあり、3.0モル部を超えると、焼結性及び緻密度の低下、二次相の生成などの問題があり得るため、好ましくない。
【0070】
図2は本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタを示す概略的な斜視図であり、
図3は
図2のA−A'に沿って切開した積層セラミックキャパシタを示す概略的な断面図である。
【0071】
図2及び
図3を参照すると、本発明の他の実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部には、セラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2外部電極131、132が形成されてもよい。
【0072】
セラミック本体110の形状は特に制限されないが、通常、六面体状である。また、その寸法も特に制限されず、用途に応じて適切な寸法にしてもよく、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であることができる。
【0073】
誘電体層111の厚さは、キャパシタの容量設計に合わせて任意に変更してもよいが、本発明の一実施形態における焼成後の誘電体層の厚さは、1層が0.1μm以上であることが好ましい。
【0074】
誘電体層が薄すぎると、一層内に存在する結晶粒の数が少なくて信頼性に悪い影響を与えるため、誘電体層の厚さは0.1μm以上であることができる。
【0075】
第1及び第2内部電極121、122は、その各端面がセラミック本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層されてもよい。
【0076】
上記第1及び第2外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、第1及び第2内部電極121、122の露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成する。
【0077】
上記第1及び第2内部電極121、122に含まれる導電性材料としては、特に限定されないが、ニッケル(Ni)を用いることが好ましい。
【0078】
上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途等に応じて適宜選択でき、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜5μmまたは0.1〜2.5μmであることができる。
【0079】
上記第1及び第2外部電極131、132に含まれる導電性材料としては、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、またはこれらの合金を用いることができる。
【0080】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を含んでもよい。
【0081】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物を焼結して形成してもよい。
【0082】
上記誘電体磁器組成物の焼結後のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3のピークに対する30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REはY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち一つ以上)のピークの比率は0.02以下を満たすことができる。
【0083】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層のXRD分析において、BaTiO
3の(110)ピークを1.00に換算したとき、上記BaTiO
3の(110)ピークに対する30.5度付近のパイロクロア(Pyrochlore)相(RE
2Ti
2O
7、ここで、REはY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce、Nd、Tb及びPrのうち一つ以上)のピークの比率は、0.02以下を満たす。
【0084】
その他、上記誘電体磁器組成物に対する具体的な説明は、上述した本発明の一実施形態による誘電体磁器組成物の特徴と同様であるため、ここでは省略する。
【0085】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、これは発明の理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実験例に限定されるものではない。
【0086】
実験例
表1、表3及び表5に明示された組成で、エタノールとトルエンを溶媒として分散剤とともに混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを作製した。作製されたセラミックシートにNi電極を印刷して積層、圧着、切断したチップを脱バインダーのためにか焼した後、1200〜1300℃で焼成して、容量、DF、RC、TCC、150℃での電圧増加による抵抗劣化挙動などを評価した。
【0087】
主成分としては、平均粒径が400nmであるBaTiO
3粉末を使用した。ジルコニアボールを混合/分散メディアとして使用し、主成分と副成分が含まれた原料粉末にエタノール/トルエン、分散剤及びバインダーを混合した後、20時間ボールミルした。
【0088】
製造したスラリーは、ドクターブレード式コーターを用いて10μmの厚さに成形シートを製造した。成形シートにNi内部電極を印刷した。カバー用シートをそれぞれ25層積層した上下カバー、及びNi内部電極が印刷されたシートを21層積層した活性層を積層及び加圧してバー(bar)を作製した。圧着バーは切断機を用いて3216(長さ×幅×厚さが約3.2mm×1.6mm×1.6mm)サイズのチップに切断した。
【0089】
製作が完了したチップをか焼した後、還元雰囲気(0.1%H
2/99.9%N
2、H
2O/H
2/N
2雰囲気)下、1200〜1300℃の温度で2時間焼成してから、1000℃の窒素(N
2)雰囲気で、再酸化を3時間行った。
【0090】
焼成したチップに、Cuペーストを塗布及び焼成することで外部電極を形成した。
【0091】
上記のように完成したプロトタイプ積層セラミックキャパシタ(proto−type MLCC)のサンプルに対して、容量、DF、絶縁抵抗、TCC、150℃での電圧増加による抵抗劣化挙動などを評価した。
【0092】
積層セラミックキャパシタ(MLCC、チップ)の常温静電容量及び誘電損失は、LCRメーターを用いて1kHz、AC0.2V/μmの条件で容量を測定した。静電容量、積層セラミックキャパシタの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数から積層セラミックキャパシタの誘電体の誘電率を計算した。
【0093】
常温絶縁抵抗(IR)は、サンプル毎に10個の試料を取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒経過後に測定した。
【0094】
温度による静電容量の変化は、−55℃から150℃の温度範囲で測定した。
【0095】
高温IR昇圧実験は、150℃で電圧を5V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定したが、各段階での時間は10分で、5秒間隔で抵抗値を測定した。
【0096】
高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導出した。ここで、高温耐電圧とは、焼成後の厚さ7μmの20層の誘電体を有する3216サイズのチップにおいて、150℃で電圧(voltage step)DC5V/μmを10分間印加し、この電圧を増加させながら測定したとき、IRが10
5Ω以上に耐える電圧を意味する。
【0097】
上記誘電体材料内のパイロクロア(Pyrochlore)相(Y
2Ti
2O
7)の有無は、X線回折(X−Ray Diffraction、XRD)分析を通じた回折角(2θ)30.5度付近において該当相のピーク(peak)があるか否かで確認した。
【0098】
下記表1、表3及び表5は実験例の組成表であり、表2、表4及び表6は表1、表3及び表5に明示された組成のプロトタイプ積層セラミックキャパシタ(Proto−type MLCC)の特性を示したものである。
【0101】
表1のサンプル1〜9は、BaTiO
3(以下、BT)100モルに対する元素比率で、第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の和が0.4モル、第2副成分のMgの含量が0モル、第4副成分のCaZrO
3の含量が2モル、第5副成分の(Ba、Ca)の和が2.2モル、第6副成分のSiの含量が1.25モルであり、また、第5副成分の和(Ba+Ca)と第6副成分のSiの比率(Ba+Ca)/Siが1.76のとき、第3副成分のYの含量変化による実験例であり、表2のサンプル1〜9には、これに該当する試料の特性が示されている。
【0102】
第3副成分のYを含まない場合(サンプル1)には、TCC(150℃)が±15%から外れており、高温耐電圧特性が50V/μm未満と脆弱である。また、第3副成分の含量が元素比5モル以上と過量である場合(サンプル8、9)には、パイロクロア(Y
2Ti
2O
7)相が生成されて高温耐電圧特性が悪くなる。特に、パイロクロア相の含量が2.0%まで(サンプル8)は、高温耐電圧が50V/μm以上の水準を維持するため、製品が具現できる特性が維持されるが、その含量が5.0%に増加(サンプル9)すると、高温耐電圧特性が急に悪くなることが分かる。従って、第3副成分のYの適正含量の範囲は、主成分100モルに対する元素比率で0.2モル≦Y≦5.0モルとすることができ、このとき、パイロクロア相の含量が2.0%以下の微細構造を得ることができる。
【0103】
表1及び表2のサンプル10〜15には、第2副成分のMgの含量変化による特性変化が示されている。Mgの含量が増加するにつれて、150℃でのTCCの絶対値が大きくなるが、Mgの含量が0.5モルまではX8R温度規格を満たし、0.5モルを超えると、X8R温度規格から外れ(サンプル15)て、Mgの含量による高温耐電圧特性は大きく変化しないことが分かる。従って、第2副成分のMgの適正含量は、主成分100モルに対する元素比率でMg≦0.5モルとすることができる。
【0104】
表1及び表2のサンプル16〜23には、第4副成分のCaZrO
3(以下、CZ)の含量変化による特性変化が示されている。CZが添加されない場合(サンプル16)は、150℃でのTCCがX8R温度規格を満たさず、CZの含量が増加するにつれて、150℃でのTCC値が低くなってから上昇する挙動を示し、高温耐電圧特性は向上する傾向を示す。CZの含量がBT100モルに対して7モルと過量である場合(サンプル23)には、150℃でのTCCがX8R温度規格から外れる。従って、第4副成分のCaZrO
3(CZ)の適正含量は、主成分100モルに対して0.25モル≦CaZrO
3≦5.0モルとすることができる。
【0105】
表1及び表2のサンプル24〜31は、第1副成分のMnの含量変化による特性変化が示されている。Mnの含量が0.1%以下である場合(サンプル24、25)には、耐還元特性が具現されないため、RC値が極めて低く、高温耐電圧が低くなる。Mnの含量が増加するにつれて、150℃でのTCC値は大きく変化せずに高温耐電圧特性は向上する傾向があり、この含量が過度に増加する(サンプル31)と、RC値が減少する現象が生じる。従って、第1副成分のMnの適正含量は、主成分100モルに対して0.2モル≦Mn≦2.0モルとすることができる。
【0106】
表1及び表2のサンプル32〜34には、第1副成分のMn及びVの和が0.4モルであるときの、MnとVの比率による特性変化が示されている。Mnの一部または全部がVに変わることにより、RC値は多少低くなるが、高温耐電圧及び150℃でのTCC特性は大きく変化せず、X8R特性を満たすことが分かる。従って、第1副成分は、Mn、V、及び原子価可変アクセプタ元素である遷移金属元素Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Znのうち少なくとも一つ以上を含むことができる。
【0109】
表3及び表4のサンプル35〜38には、サンプル5の組成から第5副成分のBaの含量の一部または全部をCaに変えたときの特性変化が示されている。サンプル5の試料と比較すると、誘電率、DF、RC、TCC、及び高温耐電圧特性がほぼ同一であることが分かる。従って、第5副成分は、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0110】
表3及び表4のサンプル39〜44には、第6副成分のSiO
2の含量が1.25モルのときの、第5副成分のBaの含量変化及びそれによる(Ba+Ca)/Si比率変化による特性が示されている。(Ba+Ca)/Si比率が1.28と小さい場合(サンプル39)には、誘電率が3000以上と極めて高いが、150℃でのTCC特性が低下し、高温耐電圧特性も40V/μmと低い。Baの含量及び(Ba+Ca)/Siの比率が増加するにつれて、誘電率が減少し、高温耐電圧特性が上昇する傾向を示すが、Baの含量及び(Ba+Ca)/Siの比率が2.88と大きすぎると(サンプル44)、誘電率が2000以下に再び低くなり、高温耐電圧も40V/μmに再び低くなる。従って、Siの含量が1.25at%のときの(Ba+Ca)/Siの適正比率は1.44〜2.56であり、このとき、第5副成分(Ba+Ca)の適正範囲は1.8〜3.2モルとすることができる。
【0111】
表3及び表4のサンプル45には、(Ba+Ca)/Siの比率が1.76であり、(Ba+Ca)及びSiの含量がそれぞれ0.527及び0.3に減少した場合の特性が示されている。このようにSiの含量が0.3と小さい場合には、(Ba+Ca)/Siの比率が適正範囲に含まれても誘電率が1548と低く、高温耐電圧も40V/μmと低い。
【0112】
表3及び表4のサンプル46〜50には、第6副成分のSiO
2の含量が0.5モルのときの、第5副成分のBaの含量変化及びそれによる(Ba+Ca)/Si比率の変化による特性が示されている。(Ba+Ca)/Si比率が1.2と小さすぎるか(サンプル46)、2.88と大きすぎる(サンプル50)場合には、高温耐電圧が45V/μm以下の低い値となる。従って、Siの含量が0.5モルのときの(Ba+Ca)/Siの適正比率は1.44〜2.56であり、このとき、第5副成分の(Ba+Ca)の適正範囲は0.72〜1.28モルとすることができる。
【0113】
表3及び表4のサンプル51〜54、55〜59、及び60〜64は、SiO
2の含量がそれぞれ1.0モル、2.0モル、3.0モルのときの、Baの含量変化及びそれによる(Ba+Ca)/Si比率変化による特性が示されている。SiO
2の含量が上記3つの場合、(Ba+Ca)/Siの比率が1.44未満であるか、2.56を超えるときのBaの含量の条件(サンプル54、55、59、60、64)では、高温耐電圧が45V/μm以下と低いか、TCC(150℃)が±15%から外れる。従って、これらの実施例において、(Ba+Ca)/Siの適正比率は、1.44≦(Ba+Ca)/Si≦2.56とすることができる。
【0114】
表3及び表4のサンプル65には、(Ba+Ca)/Siの比率が1.76であり、(Ba+Ca)及びSiの含量がそれぞれ61.6及び3.50と過量のときの特性が示されている。このようにSiの含量が3.50と過量の場合には、(Ba+Ca)/Siの比率が適正範囲に含まれても誘電率が2000以下と低く、パイロクロア相が生成されて、高温耐電圧も40V/μm以下の低い値となる。
【0115】
サンプル39〜65の結果から、第5副成分及び第6副成分の適正範囲は、第5副成分(Ba+Ca)の含量の範囲は主成分100モルに対して元素比率で0.72モル≦(Ba+Ca)≦7.68モル、第6副成分のSiの含量の範囲は主成分100モルに対して元素比率で0.5モル≦Si≦3.0モルの範囲でありながら、(Ba+Ca)/Siの含量比が1.44≦(Ba+Ca)/Si≦2.56を満たす条件であることが分かる。
【0118】
表5及び表6のサンプル66〜93には、第3副成分のYを他の希土類元素に変えたときの試料の特性が示されている。サンプル66〜69、サンプル70〜73、サンプル74〜77、サンプル78〜81、サンプル82〜85は、Yの代わりにそれぞれDy、Ho、Sm、Gd、Erを適用したものである。これらのサンプルの特性とサンプル6〜9(Yを適用した場合)の特性を比較すると、誘電率、DF、RC、TCC、及び高温耐電圧特性がほぼ同一であることが分かる。一方、サンプル86〜89及びサンプル90〜93は、Yの代わりにそれぞれTm及びYbを適用したものであり、希土類元素であるY、Dy、Ho、Sm、Gd、Erとは異なり、TmまたはYbを適用した場合には、XRD分析において、パイロクロア相のピークの比率が0.02以下であるにもかかわらず、高温耐電圧特性が50V/μm未満(サンプル87、91)であり、残りは、同じ含量の条件でY、Dy、Ho、Sm、Gd、Erを適用した場合に比べて、XRD分析において、パイロクロア相のピークの比率が高く、高温耐電圧特性は低くなる傾向を示す。従って、第3副成分は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Erのうち少なくとも一つまたはそれ以上を含むことができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。