【課題】種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができ、かつ、ドライラミネーション法等の方法を採用することでリチウムイオン電池用の外装体等を簡便に製造しうる接着剤やバインダーとして有用な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ダイマージアミン等のポリアミンに由来する構成単位を含む、下記(1)〜(3)の少なくともいずれかの樹脂を含有する樹脂組成物である。(1)ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレタンウレア樹脂(A)(2)ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレア樹脂(B)(3)ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリアミド樹脂(C)
ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンに由来する構成単位を50〜98質量%含む、下記(1)〜(3)の少なくともいずれかの樹脂を含有する樹脂組成物。
(1)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレタンウレア樹脂(A)
(2)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレア樹脂(B)
(3)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリアミド樹脂(C)
前記ポリウレタンウレア樹脂(A)が、前記ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及び末端イソシアネートプレポリマーを含むモノマー成分を反応させて得られる樹脂(A−1)であり、
前記ポリウレア樹脂(B)が、前記ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及びポリイソシアネートを含むモノマー成分を、アミノ基とイソシアネート基のモル比(NH2/NCO)が0.5〜2となる範囲で反応させて得られる樹脂(B−1)であり、
前記ポリアミド樹脂(C)が、前記ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及びジカルボン酸を含むモノマー成分を、アミノ基とカルボキシ基のモル比(NH2/COOH)が0.5〜2となる範囲で反応させて得られる樹脂(C−1)である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
前記樹脂(A−1)を得る際に用いる前記末端イソシアネートプレポリマーが、ダイマーポリオール、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸からなる群より選択される少なくとも一種のポリオールと、ダイマージイソシアネートとを反応させて得られるものであり、
前記樹脂(B−1)を得る際に用いる前記ポリイソシアネートが、ダイマージイソシアネートであり、
前記樹脂(C−1)を得る際に用いる前記ジカルボン酸が、ダイマー酸である請求項3に記載の樹脂組成物。
イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート接着剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤をさらに含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
前記内層と前記バリア層の間及び前記外層と前記バリア層の間に前記樹脂組成物が塗工された後、ドライラミネーションによって各層が相互に接着された請求項8に記載の外装体。
内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有するとともに、前記バリア層よりも外側の任意の位置に配置される意匠層と、最外側に配置される保護層の少なくともいずれかをさらに備え、
前記意匠層及び前記保護層の少なくともいずれかが、請求項7に記載の樹脂組成物と、無機フィラー、有機フィラー、及び着色剤の少なくともいずれかを含有するバインダー組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示された包装材料を製造するには複雑な装置が必要であるため、製造効率が低いといった問題がある。また、引用文献2及び3で開示された接着剤は、ポリエステルウレタンを使用するため、リチウムイオン電池用の外装体を形成するための接着剤としては耐電解液性が未だ不十分である。また、引用文献4で開示された接着剤は、ポリブタジエンジオール等の比較的高価なポリオレフィンポリオールを用いているため、コスト面に課題を有する。なお、特許文献4においては、耐熱性やラミネート強度等の具体的な物性については触れられていない。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができ、かつ、ドライラミネーション法等の方法を採用することでリチウムイオン電池用の外装体等を簡便に製造しうる接着剤やバインダーとして有用な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンを必須の構成成分として用いて合成した樹脂を配合することによって上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば以下に示す樹脂組成物が提供される。
[1]ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンに由来する構成単位を50〜98質量%含む、下記(1)〜(3)の少なくともいずれかの樹脂を含有する樹脂組成物。
(1)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレタンウレア樹脂(A)
(2)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレア樹脂(B)
(3)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリアミド樹脂(C)
[2]前記樹脂の重量平均分子量が2,000〜200,000である前記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記ポリウレタンウレア樹脂(A)が、前記ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及び末端イソシアネートプレポリマーを含むモノマー成分を反応させて得られる樹脂(A−1)であり、前記ポリウレア樹脂(B)が、前記ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及びポリイソシアネートを含むモノマー成分を、アミノ基とイソシアネート基のモル比(NH
2/NCO)が0.5〜2となる範囲で反応させて得られる樹脂(B−1)であり、前記ポリアミド樹脂(C)が、前記ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及びジカルボン酸を含むモノマー成分を、アミノ基とカルボキシ基のモル比(NH
2/COOH)が0.5〜2となる範囲で反応させて得られる樹脂(C−1)である前記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記樹脂(A−1)を得る際に用いる前記末端イソシアネートプレポリマーが、ダイマーポリオール、ジメチロールプロピオン酸、及びジメチロールブタン酸からなる群より選択される少なくとも一種のポリオールと、ダイマージイソシアネートとを反応させて得られるものであり、前記樹脂(B−1)を得る際に用いる前記ポリイソシアネートが、ダイマージイソシアネートであり、前記樹脂(C−1)を得る際に用いる前記ジカルボン酸が、ダイマー酸である前記[3]に記載の樹脂組成物。
[5]前記樹脂100質量部に対して、酸変性ポリオレフィン樹脂を1,000質量部以下さらに含有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート接着剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤からなる群より選択される少なくとも一種の架橋剤をさらに含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]接着剤又はバインダーとして用いられる前記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0012】
また、本発明によれば以下に示すリチウムイオン電池用外装体が提供される。
[8]内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有し、前記接着層が、前記[7]に記載の樹脂組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。
[9]前記内層と前記バリア層の間及び前記外層と前記バリア層の間に前記樹脂組成物が塗工された後、ドライラミネーションによって各層が相互に接着された前記[8]に記載の外装体。
[10]内層、バリア層、外層、及びこれらの層を相互に接着する接着層を備えた積層構造を有するとともに、前記バリア層よりも外側の任意の位置に配置される意匠層と、最外側に配置される保護層の少なくともいずれかをさらに備え、前記意匠層及び前記保護層の少なくともいずれかが、前記[7]に記載の樹脂組成物と、無機フィラー、有機フィラー、及び着色剤の少なくともいずれかを含有するバインダー組成物により形成されたリチウムイオン電池用外装体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、オレフィン樹脂、金属箔、ナイロン、及びポリエステル等の種々の材質からなる基材に対して良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等に優れた接着層やバインダー層を形成することができる。また、本発明の樹脂組成物は、塗布及び乾燥後、ドライラミネーション法によって基材同士を接着して均一な接着層やバインダー層を形成することが可能である。このため、本発明の樹脂組成物は、リチウムイオン電池用の外装体を簡便に製造するための材料(接着剤及びバインダー等)として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンに由来する構成単位を50〜98質量%含む樹脂(以下、「ダイマージアミン由来樹脂」とも記す)を含有する。そして、このダイマージアミン由来樹脂は、下記(1)〜(3)の少なくともいずれかの樹脂である。以下、本発明の樹脂組成物の詳細について説明する。
(1)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレタンウレア樹脂(A)
(2)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリウレア樹脂(B)
(3)前記ポリアミンをモノマー成分として用いて得られるポリアミド樹脂(C)
【0016】
(ダイマージアミン由来樹脂)
本発明の樹脂組成物は、ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンに由来する構成単位を含む樹脂(ダイマージアミン由来樹脂)を含有する。ダイマージアミンは、ダイマー酸のカルボキシ基をアミノメチル基に変換して得られる炭素数36のポリアミンである。ダイマージアミンは、その分子中に不飽和結合を有しても、有していなくてもよい。トリマートリアミンは、トリマー酸のカルボキシ基をアミノメチル基に変換して得られる炭素数54のポリアミンである。トリマートリアミンは、その分子中に不飽和結合を有しても、有していなくてもよい。市販のダイマージアミンは、通常、ダイマージアミンとトリマートリアミンを含む混合物である。
【0017】
ダイマージアミンの原料(前駆体)であるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数36のジカルボン酸であり、植物由来の脂肪酸である。ダイマー酸の代表的な構造は下記式(1)で表される。また、トリマートリアミンの原料(前駆体)であるトリマー酸は、上記炭素数18の不飽和脂肪酸を三量化して得られる炭素数54のトリカルボン酸であり、ダイマー酸製造の際にも副生する。このため、市販のダイマー酸は、通常、ダイマー酸とトリマー酸を含む混合物である。また、ダイマー酸は、水素付加などによって不飽和結合の一部又は全部が飽和されたものであってもよい。不飽和結合の一部又は全部が飽和されたダイマー酸を用いて得たダイマージアミン等を用いることで、形成される接着層やバインダー層が淡色になる或いは紫外線劣化しにくくなる等の利点がある。
【0019】
本発明の樹脂組成物に用いられるダイマージアミン由来樹脂は、ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかのポリアミンをモノマー成分として用いて得られた樹脂であり、ポリアミンに由来する構成単位をその主骨格中に有する。すなわち、上記のダイマージアミン由来樹脂は、その分子構造中に、ダイマージアミン等のポリアミンに由来する柔軟性の高い炭化水素部分をソフトセグメントとして含むものである。このため、このダイマージアミン由来樹脂を含有する本発明の樹脂組成物は、一般に接着困難とされるポリオレフィン樹脂や金属等の材質からなる種々のフィルムやシート等の基材に対して良好な接着性及び密着性を示す。
【0020】
また、ダイマージアミン由来樹脂のうち、ポリウレタンウレア樹脂(A)、ポリウレア樹脂(B)、及びポリアミド樹脂(C)は、それぞれ、極性の高いウレタン結合、ウレア結合、及びアミド結合を有する。このため、これらの樹脂を主成分として含有する本発明の樹脂組成物は、ポリエステルや金属等の材質からなる種々の基材に対して良好な接着性及び密着性を示すとともに、基材の変形や熱膨張等に追従しうる柔軟性を示す接着層やバインダー層を形成することができる。
【0021】
さらに、ダイマージアミン由来樹脂は、その主骨格中に分解性の結合を有しないため、このダイマージアミン由来樹脂を含有する本発明の樹脂組成物により形成された接着層やバインダー層は、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、及び耐熱性に優れている。また、ダイマージアミン由来樹脂中の炭化水素部分は疎水性が高いため、このダイマージアミン由来樹脂を含有する本発明の樹脂組成物により形成された接着層やバインダー層は、水蒸気バリア性に優れている。
【0022】
本発明の樹脂組成物に含有されるダイマージアミン由来樹脂の割合は、10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがさらに好ましい。ダイマージアミン由来樹脂の含有割合を上記の範囲とすることで、種々の材質からなる基材に対してより良好な接着性を示すとともに、耐溶剤性、耐加水分解性、耐薬品性、耐電解液性、水蒸気バリア性、及び耐熱性等にさらに優れた接着層やバインダー層を形成することができる。
【0023】
以上より、本発明の樹脂組成物は、オレフィン樹脂、金属、ナイロン、及びポリエステル等の材料からなる種々の基材に対し良好な接着性及び密着性を示すことから、リチウムイオン電池用外装体を製造するための接着剤及びバインダーとして好適に用いることができる。さらに、本発明の樹脂組成物は、例えば、車両等の内装材を接着するために用いられる耐熱性接着剤;電子基板用の耐熱性接着剤;太陽電池等の構成材料として用いられる各種バリアフィルム用の接着剤;TPO(Thermo Plastic Olefin)素材用及び塩化ビニルシート用のプライマー;ポリオレフィン製の加飾シート又は成型シートを接着するために用いられる接着剤等として好適である。
【0024】
(ポリウレタンウレア樹脂(A))
ポリウレタンウレア樹脂(A)は、ダイマージアミン等のポリアミンをモノマー成分として用いて得られる樹脂である。具体的には、ポリオール及びポリイソシアネートを重合反応(プレポリマー反応)させて得られる末端イソシアネートプレポリマーと、ダイマージアミン等のポリアミンとを反応(伸長反応)等させることによって製造される。
【0025】
末端イソシアネートプレポリマーを合成する際に用いられるポリオールの種類は特に限定されず、公知のポリオールを用いることができる。ポリオールの具体例としては、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有する両末端ポリオール(ポリカーボネートポリオール)、ダイマージオール等のダイマーポリオール、ポリオレフィンポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、脂肪族ポリエステルポリオール、脂環族ポリエステルポリオール、シリコーンポリオール、アクリルポリオール、及びエポキシポリオール等を挙げることができる。なかでも、ダイマージオール等のダイマーポリオールを用いると、ダイマー酸に由来する、ソフトセグメントとなる柔軟性の高い炭化水素部分を多く含むポリウレタンウレア樹脂が得られるために好ましい。
【0026】
さらに、粘度や形成される接着層の強度を調整するため、必要に応じて、短鎖ジオールをさらに反応させてもよい。短鎖ジオールの具体例としては、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオール等を挙げることができる。なお、ポリウレタンウレア樹脂(A)中の短鎖ジオールに由来する構成単位の導入量については限定されないが、導入量が多すぎるとダイマージアミンを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。
【0027】
また、密着性を向上させるとともに架橋点を付与するため、必要に応じて、カルボキシ基を有する短鎖ジオールをさらに反応させてもよい。カルボキシ基を有する短鎖ジオールの具体例としては、ジメチロールプロパン酸及びジメチロールブタン酸等を挙げることができる。なお、ポリウレタンウレア樹脂(A)中のカルボキシ基を有する短鎖ジオールに由来する構成単位の導入量が多すぎると、ダイマージアミンを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。
【0028】
末端イソシアネートプレポリマーを合成する際に用いられるポリイソシアネートの種類は特に限定されず、公知のポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートの具体例としては、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート類;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ダイマージオール(DDI)等の脂環式ポリイソシアネート類を挙げることができる。なかでも、芳香族ポリイソシアネート類が、形成される接着層やバインダー層の耐電解液性を向上させることができるために好ましい。一方、ダイマーイソシアネートを使用した場合、オレフィン樹脂、金属、ナイロン、及びポリエステル等の材料からなる種々の基材に対し良好な接着性と密着性を示すために好ましい。
【0029】
ポリオールとポリイソシアネートとの重合反応(プレポリマー反応)の条件は特に限定されず、公知のプレポリマー反応の条件を適用させることができる。例えば、活性水素を含まない溶剤の存在下又は非存在下、ポリオール及び必要に応じて用いられる短鎖ジオールと、ポリイソシアネートとを反応させることで末端イソシアネートプレポリマーを得ることができる。なお、イソシアネート基(NCO)とポリオールの水酸基(OH)の量比(モル比)を調整することで、得られる末端イソシアネートプレポリマーの性能を適宜変えることができる。
【0030】
末端イソシアネートプレポリマーとダイマージアミン等のポリアミンとの反応(伸長反応)の条件は特に限定されず、公知の伸長反応の条件を適用させることができる。例えば、末端イソシアネートプレポリマーにポリアミンを徐々に添加して反応させ、所望の分子量になったところで反応を終了させればよい。伸長反応は、プレポリマー反応から連続的に行っても、プレポリマーを一旦取り出して別のバッチで行ってもよい。
【0031】
伸長反応に用いるポリアミンは、ダイマージアミン及びトリマートリアミンの少なくともいずれかを必須成分とするが、樹脂性能を損なわない範囲で、その他のアミン類を使用することもできる。その他のアミン類の種類は特に限定されず、公知のポリアミン類を用いることができる。その他のアミン類の具体例としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ペンタメチレンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン類;ピペラジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン類;キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン類;ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン及びその誘導体などを挙げることができる。ただし、これらその他のアミン類の導入量が多すぎると、ダイマージアミンやトリマートリアミンを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。
【0032】
重合反応後、得られたポリマーの末端にイソシアネート基が残った場合には、イソシアネート末端の停止反応を行ってもよい。具体的には、モノアルコールやモノアミン等の単官能性の化合物;イソシアネートに対して異なる反応性を有する二種の官能基を有する化合物を反応させればよい。このような化合物の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のモノアルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。なかでも、反応制御しやすい点でアルカノールアミンが好ましい。また、重合反応の温度は、通常20〜150℃、好ましくは30〜110℃である。
【0033】
ポリウレタンウレア樹脂(A)は、無溶剤又は有機溶剤の存在下で合成することができる。有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な溶剤や、反応成分よりも低活性な溶剤等を用いることが好ましい。このような有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサン等の脂肪族系炭化水素溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶剤等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ポリウレタンウレア樹脂(A)を合成するに際しては、必要に応じて触媒を用いることができる。触媒の具体例としては、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネート等の金属と有機又は無機酸との塩;有機金属誘導体;トリエチルアミンなどの有機アミン;ジアザビシクロウンデセン系触媒等を挙げることができる。
【0035】
好ましいポリウレタンウレア樹脂(A)の具体例としては、ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及び末端イソシアネートプレポリマーを含むモノマー成分を反応させて得られる樹脂(A−1)を挙げることができる。このような樹脂(A−1)は、ダイマージアミンに由来する構成単位を有するため、柔軟性及びポリオレフィンなどに対する接着性により優れている。また、ウレタン−ウレア結合を有するため、強度、耐熱性、及び種々の基材に対する接着性により優れている。したがって、接着剤やバインダーとしてより好ましい特性が発現する。
【0036】
(ポリウレア樹脂(B))
ポリウレア樹脂(B)は、ダイマージアミン等のポリアミンをモノマー成分として用いて得られる樹脂である。具体的には、ダイマージアミン等のポリアミンとポリイソシアネートとを重合反応(ウレア化反応)等させることによって製造される。なお、重合反応は、ワンショット法と多段法のいずれの方式であってもよい。ポリイソシアネートの種類は特に限定されず、前述の公知のポリイソシアネートを用いることができる。
【0037】
また、ダイマージアミン以外のジアミンをさらに反応させることもできる。ただし、ダイマージアミン以外のジアミンの導入量が多すぎると、ダイマージアミンを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。
【0038】
好ましいポリウレア樹脂(B)の具体例としては、ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及びポリイソシアネートを含むモノマー成分を、アミノ基とイソシアネート基のモル比(NH
2/NCO)が0.5〜2となる範囲で反応させて得られる樹脂(B−1)を挙げることができる。このような樹脂(B−1)は、ダイマージアミンに由来する構成単位を有するため、柔軟性及びポリオレフィンなどに対する接着性により優れている。また、ウレア結合を有するため、強度、耐熱性、及び種々の基材に対する接着性により優れている。したがって、接着剤やバインダーとしてより好ましい特性が発現する。なお、アミノ基とイソシアネート基のモル比(NH
2/NCO)が上記の範囲外であると、得られる樹脂(B−1)の分子量を十分に大きくすることが困難になる。このため、低粘度となって塗工性が低下する、或いはウレア結合に由来する特性が発現しにくくなる場合がある。
【0039】
(ポリアミド樹脂(C))
ポリアミド樹脂(C)は、ダイマージアミン等のポリアミンをモノマー成分として用いて得られる樹脂である。具体的には、ダイマージアミン等のポリアミンと、ポリカルボン酸又はその誘導体等とを重合反応(アミド化反応)等させることによって製造することができる。ポリカルボン酸の種類は特に限定されず、公知のポリカルボン酸を用いることができる。ポリカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることができる。また、ポリカルボン酸の誘導体としては、上記のポリカルボン酸のメチルエステルや酸塩化物等を挙げることができる。なお、分岐構造とするため、或いは酸価を調整するために、プロパントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、トリメリット酸などの三官能以上のポリカルボン酸を用いてもよい。ただし、三官能以上のポリカルボン酸の導入量が多すぎると、得られるダイマージアミン由来樹脂がゲル化する可能性がある。
【0040】
重合反応(アミド化反応)の条件は特に限定されず、公知のアミド化反応の条件を適用させることができる。より具体的な重合方法としては、例えば、(i)ダイマージアミンと、ポリカルボン酸又はその誘導体とを高温で加熱溶融し、脱水反応(又は脱アルコール反応)させる方法;及び(ii)ダイマージアミンと、ポリカルボン酸の塩化物とを界面重合反応又は溶液重合反応させ方法等を挙げることができる。
【0041】
好ましいポリアミド樹脂(C)の具体例としては、ダイマージアミン、必要に応じて用いられるジアミン(但し、ダイマージアミンを除く)、及びジカルボン酸を含むモノマー成分を、アミノ基とカルボキシ基のモル比(NH
2/COOH)が0.5〜2となる範囲で反応させて得られる樹脂(C−1)を挙げることができる。このような樹脂(C−1)は、ダイマージアミンに由来する構成単位を有するため、柔軟性及びポリオレフィンなどに対する接着性により優れている。また、アミド結合を有するため、強度、耐熱性、及び種々の基材に対する接着性により優れている。したがって、接着剤やバインダーとしてより好ましい特性が発現する。なお、アミノ基とカルボキシ基のモル比(NH
2/COOH)が上記の範囲外であると、得られる樹脂(C−1)の分子量を十分に大きくすることが困難になる。このため、低粘度となって塗工性が低下する、或いはアミド結合に由来する特性が発現しにくくなる場合がある。
【0042】
(ダイマー酸由来樹脂の物性等)
ダイマージアミン由来樹脂に含まれる、ダイマージアミン等のポリアミンに由来する構成単位の割合は、50〜98質量%であり、好ましくは55〜90質量%である。ダイマージアミン由来樹脂中のポリアミンに由来する構成単位の含有割合が50質量%未満であると、樹脂組成物を接着剤として用いた場合に十分な接着力を得ることができない。一方、ダイマージアミン由来樹脂中のポリアミンに由来する構成単位の含有割合が98質量%超であると、ポリマー化が実質的に困難となる。
【0043】
ダイマージアミン由来樹脂を合成する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、ダイマージアミン以外のジアミンをモノマー成分として用いてもよい。ジアミンの具体例としては、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等を挙げることができる。ダイマージアミン由来樹脂中のジアミンに由来する構成単位の含有割合については特に限定されないが、含有割合が多すぎるとダイマージアミンを用いた効果が小さくなるため、適宜調整することが好ましい。
【0044】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、ダイマージアミン由来樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましく、4,000〜100,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるダイマージアミン由来樹脂を用いることで、接着剤やバインダーとしてより好ましい物性の樹脂組成物とすることができる。
【0045】
(酸変性ポリオレフィン樹脂)
本発明の樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂をさらに含有することが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂を含有させることで、ポリオレフィンフィルムとの接着性をさらに向上させることができる。酸変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等を挙げることができる。なお、酸変性ポリオレフィン樹脂は、溶剤に可溶であるものが好ましい。また、酸変性オレフィン樹脂の融点は、耐熱性及びラミネーション加工の容易さ等を考慮すると、60〜160℃が適当である。このような酸変性ポリオレフィン樹脂の市販品としては、商品名「アウローレン」(日本製紙社製)、商品名「ハードレン」(東洋紡社製)等を挙げることができる。ダイマージアミン由来樹脂100質量部に対する酸変性ポリオレフィン樹脂の量は、1,000質量部以下であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の量が、ダイマージアミン由来樹脂100質量部に対して1,000質量部を超えると、ラミネーション温度が高くなる、或いは形成される接着層やバインダー層の柔軟性が低下する傾向にある。
【0046】
(架橋剤)
本発明の樹脂組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。架橋剤を含有させることで、耐電解液性、耐溶剤性、耐薬品性及び耐熱性をさらに向上させることが可能であるとともに、初期密着性及び高温下での接着力を向上させることができる。架橋剤としては、公知のものを用いることができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、ブロックイソシアネート接着剤、カルボジイミド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、シランカップリング剤、及びチタンカップリング剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
イソシアネート架橋剤の具体例としては、MDI、TDI、HDI、IPDI、並びにこれらのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット変性体、及びヌレート変性体;ポリメリックMDI、末端イソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。ブロックイソシアネート接着剤の具体例としては、イソシアネート架橋剤のオキシム又はラクタム等によるブロック体を挙げることができる。カルボジイミド架橋剤の市販品としては、商品名「カルボジライト」(日清紡ケミカル社製)等を挙げることができる。オキサゾリン架橋剤の市販品としては、商品名「エポクロス」(日本触媒社製)等を挙げることができる。エポキシ架橋剤の市販品としては、商品名「jER」(三菱化学社製)等を挙げることができる。アジリジン架橋剤の市販品としては、商品名「ケミタイト」(日本触媒社製)等を挙げることができる。シランカップリング剤の具体例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。また、チタンカップリング剤の具体例としては、チタニウム ジ2−エチルヘキソキシビス(2−エチル−3−ヒドロキシヘキソキシド)等を挙げることができる。
【0048】
樹脂100質量部に対する架橋剤の量は、0.1〜50質量部であることが好ましい。樹脂100質量部に対する架橋剤の量が50質量部を超えると、形成される接着層やバインダー層が脆くなる、或いは架橋剤の官能基が残留しやすくなる傾向にある。
【0049】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物には、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂等の粘着付与剤を添加することができる。
【0050】
(リチウムイオン電池用外装体)
次に、本発明のリチウムイオン電池用外装体について説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン電池用外装体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池用外装体1は、内層2、バリア層4、外層6、並びにこれらの層を相互に接着する接着層である内層側接着層3及び外層側接着層5を備えた積層構造を有する。そして、接着層(内層側接着層3及び外層側接着層5)が、接着剤として用いた前述の樹脂組成物により形成されている。
【0051】
内層2は、耐電解液性を有するとともに、包装材として有用な熱融着性をも有する層である。内層2としては、ポリオレフィンフィルムが好ましい。ポリオレフィンフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物、及びこれらの混合物からなる無延伸の熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。なお、密着性を向上させるため、内層2にはコロナ処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
【0052】
バリア層4は、酸素や水分等のリチウムイオン電池内部への侵入を阻止するバリア性を有する層である。バリア層4としては、純アルミニウム、アルミニウム−鉄合金、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔;アルミニウム、ニッケル、シリカ、アルミナ等の蒸着フィルムが好ましい。なお、耐腐食性及び密着性を向上させるため、バリア層4にはクロメート処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
【0053】
外層6は、リチウムイオン電池用外装体に包装材としての成型性を付与するとともに、電池製造時(熱融着工程)及び使用時に要求される耐熱性を有する層である。外層6としては、単層又は複層の耐熱性樹脂フィルムが好ましい。このような耐熱性樹脂フィルムを構成する耐熱性樹脂としては、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド等を挙げることができる。
【0054】
内層側接着層3及び外層側接着層5は、内層2及び外層6をそれぞれ構成する樹脂フィルム、又はバリア層4を構成する金属箔等に、前述の樹脂組成物を接着剤として塗布した後、乾燥することで形成することができる。乾燥後の接着層の厚さは、1〜20μmであることが好ましく、1.5〜10μmであることがさらに好ましい。接着層の厚さが1μm未満であると、接着力が不足するとともに、ピンホールが生じやすくなる傾向にある。一方、接着層の厚さが20μmを超えると成型性が低下する傾向にある。
【0055】
接着層を形成した金属箔等と樹脂フィルム、又は接着層を形成した樹脂フィルムと金属箔等を積層し、ドライラミネーションすることで、
図1に示すような積層体であるリチウムイオン電池用外装体1を得ることができる。ドライラミネーションの温度は、内層及び外層のそれぞれを構成するフィルムの材質等により適宜決定される。また、架橋反応を完結させるため、ドライラミネーション後にエージングすることが好ましい。
【0056】
なお、必要に応じて、バリア層よりも外側の任意の位置に意匠層を配置する、或いは最外側に保護層を配置することもできる。意匠層は、着色や艶消し等の意匠性をリチウムイオン電池用外装体に付与する層である。前述の本発明の樹脂組成物と、シリカ等の無機フィラー、有機フィラー、及びカーボン等の顔料をはじめとする着色剤の少なくともいずれかを含有するバインダー組成物を用いることによって、意匠層や保護層を形成することができる。
【0057】
保護層は、電池外部からの衝撃や電池内部からの液漏れを防止するための層である。従来の保護層は、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等のフィルムを外層のさらに外側に配置することで形成されていた。これに対して、前述の本発明の樹脂組成物を最外側に塗布して乾燥すれば、耐電解液性等に優れた保護層を容易に形成することができる。なお、保護層を形成するための樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、スリップ剤、フィラー、有機ビーズ、フッ素パウダー等の各種添加剤を配合することもできる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0059】
<ポリウレタンウレア樹脂(A)の合成>
(合成例1:R1の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージオール(商品名「Pripol2033」、クローダジャパン社製、OHv=207mgKOH/g)100g、及びジメチルホルムアミド(DMF)82.4gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)92.2gを添加した。80℃に昇温して反応させ、所定のNCO%になったところでDMF 109.8gを添加し、40℃まで冷却した。さらに、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)100.3gをDMF 100.3gに溶解したものを滴下して反応させ、ダイマージアミンに由来する構成単位(以下、「ダイマージアミン単位」とも記す)の含有率68%、及び重量平均分子量55,000のポリウレタンウレア樹脂R1の溶液(固形分50%)を得た。
【0060】
<ポリウレア樹脂(B)の合成>
(合成例2:R2の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)100g、及びDMF 100gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、40℃でMDI 46.6gをDMF 46.6gに溶解したものを滴下した。FT−IRスペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ダイマージアミン単位の含有率68%、及び重量平均分子量60,000のポリウレア樹脂R2の溶液(固形分50%)を得た。
【0061】
<ポリアミド樹脂(C)の合成>
(合成例3:R3の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)100g、及びセバシン酸37.1gを仕込んだ。加熱撹拌を開始し、発生する水を留出させながら200℃まで昇温した。水の発生が止まったところで200℃に保持し、10mmHgに減圧して1時間反応を続けた。その後、100℃まで冷却してからDMF 130.5gを添加して、ダイマージアミン単位の含有率76%、及び重量平均分子量45,000のポリアミド樹脂R3の溶液(固形分50%)を得た。
【0062】
<ポリウレタン樹脂の合成>
(比較合成例1:R4の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマー酸由来のポリエステルポリオール(商品名「Priplast3199」、クローダジャパン社製、分子量2,000、ダイマー酸に由来する構成単位の含有率87%)100g、トルエン33.8g、及びメチルエチルケトン(MEK)14.5gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、50℃でMDI 12.5gを添加し、次いで、80℃に昇温して反応させた。FT−IRスペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基に相当する2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を続けた。その後、トルエン45.0g及びMEK 19.2gを添加して、ダイマー酸に由来する構成単位の含有率77%、及び重量平均分子量50,000のポリウレタン樹脂R4の溶液(固形分50%)を得た。
【0063】
<ポリウレタンウレア樹脂の合成>
(比較合成例2:R5の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリカーボネートポリオール(商品名「ETERNACOLL UH−50」、宇部興産社製、OHv=220mgKOH/g)100g、及びDMF 84.9gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でMDI 98.0gを添加した。80℃に昇温して反応させ、所定のNCO%になったところでDMF 113.1gを添加し、40℃まで冷却した。さらに、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)106.6gをDMF 106.6gに溶解したものを滴下して反応させ、ダイマージアミン単位の含有率35%、及び重量平均分子量65,000のポリウレタンウレア樹脂R5の溶液(固形分50%)を得た。
【0064】
<ポリウレア樹脂の合成>
(比較合成例3:R6の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)50g、ヘキサメチレンジアミン21.3g、及びDMF 71.3gを仕込んだ。加熱撹拌を開始した後、40℃でMDI 68.9gをDMF68.9gに溶解したものを滴下した。FT−IRスペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
-1の吸収が消失するまで反応を進行させて、ダイマージアミン単位の含有率36%、及び重量平均分子量60,000のポリウレア樹脂R6の溶液(固形分50%)を得た。
【0065】
<ポリアミド樹脂の合成>
(比較合成例4:R7の合成)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ダイマージアミン(商品名「Priamine1074」、クローダジャパン社製、AHEW=136g/eq)50g、ヘキサメチレンジアミン32.0g、及びセバシン酸74.3gを仕込んだ。加熱撹拌を開始し、発生する水を留出させながら200℃まで昇温した。水の発生が止まったところで200℃に保持し、10mmHgに減圧して1時間反応を続けた。その後、100℃まで冷却してからDMF 143.1gを添加して、ダイマージアミン単位の含有率35%、及び重量平均分子量45,000のポリアミド樹脂R7の溶液(固形分50%)を得た。
【0066】
<内層側接着剤1〜15(実施例1〜11、比較例1〜4)の調製>
表1に示す処方にしたがって各成分を配合して内層側接着剤を調製した。なお、表1中の配合量(単位:部)は固形分である。
【0067】
【0068】
なお、表1中の略号の意味を以下に示す。
・350S:酸変性ポリオレフィン樹脂、商品名「アウローレン350S」、日本製紙社製(MEK/メチルシクロヘキサン=2/8の混合溶媒にNV=15%となるように溶解したもの)
・HX:ポリイソシアネート架橋剤、商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製、NV=100%、NCO=21.5%
・7960:ブロックイソシアネート、品番「7960」、Baxenden社製、NV=70%、NCO=10.2%
・V−05:ポリカルボジイミド架橋剤、商品名「カルボジライトV−05」、日清紡ケミカル社製、NV=100%、カルボジイミド当量=260
・jER 1001:エポキシ樹脂、商品名「jER 1001」、三菱化学社製、エポキシ当量=470
・RPS−1005:オキサゾリン基含有樹脂、商品名「エポクロス RPS−1005」、日本触媒社製
・PZ−33:アジリジン架橋剤、商品名「ケミタイト PZ−33」、日本触媒社製
【0069】
<電池外装体用の積層体>
(実施例12)
以下に示す配合処方の外層側接着剤を、両面クロメート処理した厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面に塗布した後、乾燥して、厚さ4μmの外層側接着層を形成した。形成した外層側接着層の表面に厚さ25μmの延伸ナイロンフィルムを配置し、ドライラミネートによって貼合した。次いで、内層側接着剤1をアルミニウム箔の他方の面(延伸ナイロンフィルムを貼合した面の反対側の面)に塗布した後、乾燥して、厚さ3μmの内層側接着層を形成した。形成した内層側接着層の表面に厚さ40μmのコロナ処理した無延伸ポリプロピレンフィルムを配置し、ドライラミネートによって貼合して電池外装体用の積層体を製造した。
[外層側接着剤]
・R1(NV=50%) 20.0部
・ポリイソシアネート架橋剤 0.5部
(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製、
NV=100%、NCO=21.5%)
・DMF 49.5部
【0070】
(実施例13〜22、比較例5〜8)
内層側接着剤1に代えて、表1に示す種類の内層側接着剤をそれぞれ用いたこと以外は、前述の実施例12と同様にして電池外装体用の積層体を製造した。
【0071】
<評価>
(接着強度)
製造した電池外装体用の積層体から接着強度測定用の試料片を採取した。引張試験装置(型名「オートグラフ AGS−100A」、島津製作所社製)を使用し、25℃の温度条件下、引張速度100mm/minで試料片のアルミニウム箔と無延伸ポリプロピレンフィルムをT剥離して、内層側接着層の接着強度を測定した。結果を表2に示す。
【0072】
(接着強度保持率)
製造した電池外装体用の積層体から接着強度保持率測定用の試料片を採取した。採取した試料片をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。上記「接着強度」の測定方法と同様の手順で、浸漬前後の試料片のアルミニウム箔と無延伸ポリプロピレンフィルムをT剥離して、内層側接着層の接着強度を測定した。そして、下記式(A)より接着強度保持率を算出し、耐電解液性の指標とした。結果を表2に示す。
接着強度保持率(%)
=(浸漬後の接着強度/浸漬前の接着強度)×100 ・・・(A)
【0073】
【0074】
(水蒸気バリア性)
実施例1及び11で調製した内層側接着剤1及び11を、離型紙上にそれぞれ塗布した後、乾燥して、厚さ15μmのフィルムを作製した。離型紙から剥離したフィルムを用いて、以下に示す条件で透湿度試験を行って水蒸気バリア性を評価した。結果を表3に示す。
測定法:JIS Z 0208 防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)
測定条件:温度40℃、相対湿度90%
【0075】
【0076】
<意匠層の配置>
(実施例23)
R1 100部、意匠用フィラー(商品名「サイリシア 420」、富士シリシア化学社製、湿式法シリカ、平均粒子径3.1μm)10部、及びDMF 90部を混合した後、ガラスビーズを添加し、ペイントシェーカーを使用して分散させて分散液を得た。得られた分散液100部、DMF 60部、及びポリイソシアネート架橋剤(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)2.5部を混合し、均一になるまで撹拌して艶消しの意匠層用配合液を調製した。得られた意匠層用配合液を実施例12で製造した積層体の延伸ナイロンフィルムの表面に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの意匠層を形成し、意匠層つき積層体を製造した。製造した積層体をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。浸漬後の積層体を観察したところ、意匠層の状態に変化は認められなかった。
【0077】
(実施例24)
R1 100部、カーボンブラック16部、及びDMF 214部を混合した後、ガラスビーズを添加し、ペイントシェーカーを使用して分散させて分散液を得た。得られた分散液100部、R1 360部、DMF 400部、及びポリイソシアネート架橋剤(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製)20部を混合し、均一になるまで撹拌して黒色の意匠層用配合液を調製した。得られた意匠層用配合液を実施例12で製造した積層体の延伸ナイロンフィルムの表面に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの意匠層を形成し、意匠層つき積層体を製造した。製造した積層体をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。浸漬後の積層体を観察したところ、意匠層の状態に変化は認められなかった。
【0078】
<保護層の配置>
(実施例25)
以下に示す配合処方の保護層用配合液を、実施例12で製造した積層体の延伸ナイロンフィルムの表面に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの保護層を形成し、保護層つき積層体を製造した。製造した積層体をヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1/1)溶液(LiPF
6濃度=1mol/L)に浸漬し、85℃で4週間放置した。浸漬後の積層体を観察したところ、保護層の状態に変化は認められなかった。
[保護層用配合液]
・R1(NV=50%) 10.0部
・ポリイソシアネート架橋剤 0.5部
(商品名「コロネートHX」、日本ポリウレタン社製、
NV=100%、NCO=21.5%)
・DMF 17.0部