【課題】貯蔵安定性に優れるとともにインクジェットプリンタのノズルでの目詰まりやコンタミネーション等を生じにくい上、各種の溶剤に対する耐溶剤性や強度等に優れた被膜を形成できる光硬化性インクジェットインクを提供する。
【解決手段】ラジカル重合性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性の少なくとも1種のモノマー、および光ラジカル重合開始剤に、非反応性希釈剤として式(1):
ラジカル重合性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性の少なくとも1種のモノマー、光ラジカル重合開始剤、および非反応性希釈剤を含み、前記非反応性希釈剤は式(1):
CnH2n+1O−[CH2CH(CH3)O]m−H (1)
〔式中、nは1〜3、mは1〜3の数を示す。〕
で表されるグリコールエーテル類である光硬化性インクジェットインク。
前記ラジカル重合性のモノマーは1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2に記載の光硬化性インクジェットインク。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷法によって形成した被膜の各種溶剤に対する耐性、すなわち耐溶剤性を向上するために、インクジェットインクとして、ラジカル重合性のオリゴマーやモノマーに光ラジカル重合開始剤を配合した光硬化性インクジェットインクを用い、印刷後の被膜に光を照射して上記オリゴマー等を光硬化反応(重合、架橋)させることが提案されている。
【0003】
ラジカル重合性のオリゴマーとしては、例えばウレタンアクリレートオリゴマーやウレタンメタクリレートオリゴマー〔以下「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー」と総称する場合がある。〕が主として用いられる(特許文献1、2等)。
発明者の検討によると、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いた光硬化性インクジェットインクを使用することで、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系の溶剤などに対する耐溶剤性に優れた被膜を形成できる。
【0004】
しかしウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子中でアミド結合を構成するC=O基の酸素原子とN−H基の水素原子とが同一分子中もしくは異なる分子間で水素結合を生じやすいため、当該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを単体で使用したのでは光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎてインクジェット印刷に使用できないおそれがある。
【0005】
そこでウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとともに、反応性希釈剤として機能する各種のラジカル重合性のモノマーを併用するのが一般的である。
例えば特許文献1では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとともに単官能もしくは2官能以上の多官能の各種のモノマーを併用することが提案されている。
しかし粘度が低いため反応性希釈剤として良好に機能しうる単官能モノマーのみを使用した場合は、その配合割合を多くするほど光硬化反応後の被膜の架橋密度が低下して当該被膜の耐溶剤性や強度が低下するという問題がある。
【0006】
一方、2官能以上の多官能モノマーを用いると被膜の架橋密度を高めてその耐溶剤性や強度を向上できる。
特に発明者の検討によると、例えば被膜に接触する可能性のある溶剤の種類や組み合わせに応じて多官能モノマーの種類や組み合わせを使い分けることにより、特定の溶剤に特化して耐溶剤性が向上された被膜や、2種以上の異なる系統の溶剤に対する耐溶剤性がいずれも向上された被膜等を形成すること等が可能となる。
【0007】
しかし多官能モノマーは単官能モノマーより粘度が高いため、反応性希釈剤としては十分に機能しえない。
そこで光硬化性インクジェットインクの粘度をインクジェット印刷に適した範囲に調整するべく、特許文献1ではさらにアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類やメタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類などの非反応性希釈剤を適宜配合してもよい旨の記載がある。
【0008】
ところが発明者の検討によると特許文献1に記載の各種の非反応性希釈剤を含む光硬化性インクジェットインクは保存安定性が不十分であり、例えば高温で長期間保管すると暗所でもラジカル重合反応が促進され、粘度が上昇してインクジェットプリンタのノズルで目詰まり等を生じたり、ひどい場合には保管中に固化してしまったりするといった問題がある。
【0009】
また、例えばMEKやメタノール、エタノール、IPA等は蒸発速度が速すぎるため、保管中の粘度上昇があまり大きくなかった場合でも、インクジェット印刷に使用した際にインクジェットプリンタのノズルで目詰まり等を生じやすいという問題もある。
さらにアセトンやMEKはプラスチック等に対する溶解性が強すぎるため、インクジェットプリンタのヘッドのプラスチック部品等を溶解したり、溶解したプラスチック等の混入による光硬化性インクジェットインクのコンタミネーションを生じやすくなったりするといった問題もある。
【0010】
また特許文献2では、ポリウレタン(メタ)アクリレート自体の改質によって光硬化性インクジェットインクの吐出性を向上したり、塗膜の耐溶剤性を改善したりすることが検討されているが、ポリウレタン(メタ)アクリレートの改質だけでは、上記の特性を改善する効果には限界がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光硬化性インクジェットインクは、ラジカル重合性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ラジカル重合性のモノマー、光ラジカル重合開始剤、および非反応性希釈剤を含み、前記非反応性希釈剤は式(1):
C
nH
2n+1O−[CH
2CH(CH
3)O]
m−H (1)
〔式中、nは1〜3、mは1〜3の数を示す。〕
で表されるグリコールエーテル類であることを特徴とする。
【0016】
上記式(1)のグリコールエーテル類は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーや各種のモノマー、さらには顔料、分散剤その他、光硬化性インクジェットインクを構成する各成分に対していずれも適度の溶解性や分散性を有しており、当該光硬化性インクジェットインクの貯蔵安定性を向上して、例えば長期間に亘って高温で保管しても粘度上昇したり固化したりしにくくできる。
【0017】
また式(1)のグリコールエーテル類はMEKやIPAに比べて蒸発速度が遅く、光硬化性インクジェットインク用の非反応性希釈剤として適度の蒸発速度(酢酸ブチルの蒸発速度を1とした相対評価で0.1〜1程度)を有するため、上記のように粘度上昇を生じにくいことと相まって、インクジェット印刷に使用した際にインクジェットプリンタのノズルでの目詰まり等を生じにくくできる。
【0018】
さらに式(1)のグリコールエーテル類はプラスチック等に対する溶解性がアセトンやMEKのように強くないため、インクジェットプリンタのヘッドのプラスチック部品等を溶解したり、溶解したプラスチック等の混入による光硬化性インクジェットインクのコンタミネーションを生じたりしにくくできる。
その上、本発明の光硬化性インクジェットインクによればウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーやラジカル重合性のモノマーの種類や組み合わせ等を調整することで、各種の溶剤に対する耐性や強度等に優れた被膜を形成することが可能となる。
【0019】
〈グリコールエーテル類〉
本発明で非反応性希釈剤として用いる前記式(1)のグリコールエーテル類としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル(n=1、m=1)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(n=1、m=2)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(n=1、m=3)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(n=3、m=1)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(n=3、m=2)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0020】
特に光硬化性インクジェットインクを構成する各成分に対する溶解性や分散性、蒸発速度、あるいはプラスチック等に対する溶解性等の点で、式(1)中のn=1、m=1であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(別名:1−メトキシ−2−プロパノール)が好ましい。
グリコールエーテル類の配合割合は、以下に説明する他の成分の残量である。すなわちウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー他の各成分を所定の割合で配合し、さらにグリコールエーテル類を加えた総量が100質量%となるように配合割合を設定すればよい。
【0021】
なお被反応性希釈剤としては、式(1)のグリコールエーテル類を使用することによる先述した効果を阻害しない範囲、具体的には非反応性希釈剤の総量の20質量%以下の範囲で、他の非反応性希釈剤を併用してもよい。かかる他の非反応性希釈剤としては、例えば前述したケトン類やアルコール類、さらには水等が挙げられる。
この場合、非反応性希釈剤の配合割合は、(1)のグリコールエーテル類と他の非反応性希釈剤の合計が上述した範囲となるように設定すればよい。
【0022】
ただし非反応性希釈剤として式(1)のグリコールエーテル類を使用することの効果をできるだけ良好に発現させるためには、当該式(1)のグリコールエーテル類のみを単独(2種以上のグリコールエーテル類を併用する場合を含む)で、非反応性希釈剤として使用するのが好ましい。
〈ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー〉
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばポリエステル系もしくはポリエーテル系のベース樹脂に(メタ)アクリルモノマーをウレタン結合してなり、分子中に上記(メタ)アクリルモノマーの残基である(メタ)アクロイルオキシ基を官能基として有する種々のオリゴマーが使用可能である。
【0023】
特に、光硬化によって耐溶剤性や強度に優れた被膜を形成することを考慮するとウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、分子中に官能基としての(メタ)アクロイルオキシ基を1つのみ有する単官能のものよりも、2以上有する多官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、特に6官能程度のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0024】
またウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、光硬化性インクジェットインクの粘度上昇を抑制するために、それ自体の粘度ができるだけ小さいものを用いるのが好ましい。
かかるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例としては、例えばいずれもサートマー(SARTOMER)社製の脂肪族ウレタンアクリレートであるCN985〔ポリエステル系、2官能、粘度(60℃):0.205Pa・s〕、CN968〔ポリエステル系、6官能、粘度(60℃):0.350Pa・s〕、CN984〔ポリエステル系、2官能、粘度(60℃):0.660Pa・s〕、CN991〔ポリエステル系、2官能、粘度(60℃):0.660Pa・s〕等の1種または2種以上が挙げられる。
【0025】
中でもCN968は官能基数が多い上、低粘度であるため好適に使用される。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合割合は、光硬化性インクジェットインクの総量の10質量%以上、特に13質量%以上であるのが好ましく、18質量%以下、特に15質量%以下であるのが好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合割合がこの範囲未満では、特にクロロホルム等のハロゲン化アルキル系の溶剤などに対する耐溶剤性に優れた被膜を形成できないおそれがある。
【0026】
一方、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合割合が上記の範囲を超える場合には光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎてインクジェット印刷に使用できないおそれがある。
〈ラジカル重合性のモノマー〉
ラジカル重合性のモノマーとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと共重合しうる、単官能ないし多官能の種々のモノマーが使用可能である。特にアクリレートモノマーやメタクリレートモノマー〔以下「(メタ)アクリレートモノマー」と総称する場合がある。〕が好ましい。
【0027】
このうち単官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニルフェノール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
また2官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアネート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、例えば下記の各製品が挙げられる。
日本化薬(株)製のKAYARAD(登録商標)シリーズのうちTC−110S、R−128H、R−526、NPGDA、PEG400DA、MANDA、R−167、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−604、R−684、GPO、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、PET−30、RP−1040、T−1420、DPHA、DPHA−2C、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475。
【0031】
日本化薬(株)製のKAYAMER(登録商標)シリーズのうちPM−2、PM−21、KSシリーズのうちHDDA、TPGDA、TMPTA、SRシリーズのうち256、257、285、335、339A、395、440、495、504、111、212、213、230、259、268、272、344、349、601、602、610、9003、368、415、444、454、492、499、502、9020、9035、295、355、399E494、9041203、208、242、313、604、205、206、209、210、214、231E239、248、252、297、348、365C、480、9036、350。
【0032】
荒川化学工業(株)製のビームセット(登録商標)770。
サートマー社製のSRシリーズのうち212、213、238、247、259、268、272、306、344、349、508、601、602606、610、833、9003、9038、9043、9045、9209、351、368、415、444、454、492、499、502、9020、9035、295、355、494、399、203、242、313、324、340、423、493、550、101、150、205、206、210、214、231、239、248、252、297、348、480、540、541、603、644、740、9036、350。
【0033】
サートマー社製のDPHA、CDシリーズのうち9075、9087、9088、406、536、560、561、562、563、564、595、9038、9043、501、9021、421、535、545、552、612、730、401、542。
これら単官能ないし多官能の(メタ)アクリレートモノマーをいずれか1種単独で使用するか、あるいは2種以上を併用することができる。
【0034】
特に塗膜の耐溶剤性や強度を向上することを考慮すると、2官能以上の多官能の(メタ)アクリレートモノマーの1種または2種以上を使用するのが好ましい。
特に好適な多官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば1,6−ヘキサンジオールジアクリレート〔サートマー社製のSR238等〕、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート〔サートマー社製のSR247等〕、ジプロピレングリコールジアクリレート〔サートマー社製のSR508等〕、エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート〔サートマー社製のSR601〕、エトキシ化(30)ビスフェノールAジアクリレート〔サートマー社製のCD9038等〕、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート〔サートマー社製のSR368〕、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート〔サートマー社製のSR454等〕、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート〔サートマー社製のSR492等〕、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート〔サートマー社製のSR399等〕、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔サートマー社製のDPHA等〕のうちの少なくとも1種が挙げられる。
【0035】
また先述したように被膜に接触する可能性のある溶剤の種類や組み合わせに応じて多官能モノマーの種類や組み合わせを使い分けることができる。
例えばエタノール等のアルコール系の溶剤と、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系の溶剤の両方に対する良好な耐溶剤性を塗膜に付与することを考慮すると、(メタ)アクリレートモノマーとしては、上記のうち1,6−ヘキサンジオールジアクリレートとジプロピレングリコールジアクリレートの2種を併用するのが好ましい。
【0036】
ラジカル重合性のモノマーの配合割合は、光硬化性インクジェットインクの総量の32質量%以上、特に34質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下、特に38質量%以下であるのが好ましい。
ラジカル重合性のモノマーの配合割合がこの範囲未満では相対的にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの割合が多くなって、光硬化性インクジェットインクの粘度が高くなりすぎてインクジェット印刷に使用できないおそれがある。
【0037】
一方、ラジカル重合性のモノマーの配合割合が上記の範囲を超える場合には相対的にウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの割合が少なくなって、特にクロロホルム等のハロゲン化アルキル系の溶剤などに対する耐溶剤性に優れた被膜を形成できないおそれがある。
〈光ラジカル重合開始剤〉
光ラジカル重合開始剤としては、任意の波長の光の照射によってラジカルを発生させて、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとモノマーとをラジカル重合反応させることができる種々の化合物がいずれも使用可能である。
【0038】
かかる光ラジカル重合開始剤としては、例えば下記化合物等の1種または2種以上が挙げられる。
ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、特開2008−280427号公報の一般式(1)で表されるベンゾフェノン化合物等のベンゾフェノン類またはその塩。
【0039】
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン、特許文献1の一般式(2)で表されるチオキサントン化合物等のチオキサントン類またはその塩。
【0040】
エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。
アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン、4′−ジメチルアミノアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン等のアセトフェノン類。
【0041】
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類。
【0042】
ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ‐1‐(4−モルホリノフェニルブタン)−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、9,10−フェナンスレンキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン類。
【0043】
9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体。
ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類。
【0044】
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリハロメチルトリアジン、ベンジル、メチルベンゾイル、ベンゾイル蟻酸メチル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルフォリノブチロフェノン等。
【0045】
光ラジカル重合開始剤の配合割合は任意に設定できるものの、光硬化性インクジェットインクに良好な光硬化性を付与することを考慮すると、当該光硬化性インクジェットインクの総量の0.1質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下、特に8質量%以下であるのが好ましい。
〈増感剤〉
本発明の光硬化性インクジェットインクには、必要に応じて増感剤を配合してもよい。
【0046】
増感剤は、紫外線の照射によって励起状態となって光ラジカル重合開始剤と相互作用して、当該光ラジカル重合開始剤におけるラジカルの発生を助けるために機能する。
例えば光源としてLEDを使用する場合にはその波長域が狭いことから、感度を有する波長域を広げて感度を向上する、すなわち増感するために増感剤を配合するのが好ましい。
【0047】
増感剤としては、上述した光ラジカル重合開始剤のうち、例えば2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物などのチオキサントン類またはその塩や、ベンゾフェノンと2,3−および4−メチルベンゾフェノンの共晶混合物、メチル−2−ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルフェニルサルファイド、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはその塩、2−エチルアントラキノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)などが挙げられる。
【0048】
またその他の増感剤としては、例えばエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチル−4−(ジメチルアミノベンゾエート)等のベンゾエート化合物、ナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2−イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、ピリドトリアゾール、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0049】
増感剤としては、以上で説明した各種の増感剤中から、光源からの光の波長域、および光ラジカル重合開始剤の吸収波長域に応じて増感に適した吸収波長域を有するものをそれぞれ1種単独で使用できる他、2種以上を併用してもよい。
増感剤の配合割合は任意に設定できるものの、良好な増感効果を得ることを考慮すると、光硬化性インクジェットインクの総量の0.01質量%以上、特に0.5質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下、特に4質量%以下であるのが好ましい。
【0050】
〈着色剤〉
本発明の光硬化性インクジェットインクには着色剤を配合してもよい。
着色剤としては、種々の顔料、染料等が挙げられる。着色剤としては、光硬化性インクジェットインクの色味に応じた各色の着色剤がいずれも使用可能である。特に印刷の耐光性、耐候性等を向上することを考慮すると、種々の無機顔料、および/または有機顔料が好ましい。
【0051】
このうち無機顔料としては、例えば酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された中性、酸性、塩基性等の種々のカーボンブラックの1種または2種以上が挙げられる。
また有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(例えば塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の1種または2種以上が挙げられる。
【0052】
顔料は、光硬化性インクジェットインクの色目に応じて1種または2種以上を用いることができる。また顔料は、光硬化性インクジェットインク中での分散安定性を向上するために表面を処理してもよい。
顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
着色剤の配合割合は、着色剤の種類、および光硬化性インクジェットインクの色味に応じて任意に設定できる。
【0053】
〈分散剤〉
着色剤が顔料である場合、光硬化性インクジェットインクには、上記顔料の分散性を向上するべく任意の分散剤を配合してもよい。
分散剤としては、特にポリアリルアミン/ポリカプロラクトン系分散剤が好ましい。
光硬化性インクジェットインクには、水性分散剤のような親水性基と疎水性基とを併せ持った分散剤は使用できず、通常はカーボンブラック等の顔料に酸化処理をしたものを、塩基性基を有する分散剤と組み合わせて分散させるのが一般的である。また塩基性基としては専らアミド、イミド等が用いられる。
【0054】
分散剤には、光硬化性インクジェットインクを形成する非反応性希釈剤に対して中溶、すなわち適度に溶解することが求められる。
しかし本発明で非反応性希釈剤として使用している式(1)のグリコールエーテル類に対して中溶である分散剤は少なく、多くの分散剤は分散剤として十分に機能できないため、顔料が短期間で析出したり凝集したりしやすいという問題がある。しかもアミド、イミドが遊離してちょうど増感剤等と同様の機能をして、光硬化性インクジェットインクを早期に粘度上昇させたりするおそれもある。
【0055】
これに対しポリアリルアミン/ポリカプロラクトン系分散剤は式(1)のグリコールエーテル類に対して中溶で、顔料を光硬化性インクジェットインク中に長期に亘って良好に分散させることができる上、アミドを遊離させないため当該光硬化性インクジェットインクを早期に粘度上昇させたりするおそれもない。
かかるポリアリルアミン/ポリカプロラクトン系分散剤としては、例えば味の素ファインテクノ(株)製のアジスパー(登録商標)シリーズの分散剤のうちPB821〔酸価:15〜18mgKOH/g、アミン価:8〜11mgKOH/g〕、PB822〔酸価:12〜15mgKOH/g、アミン価:12〜19mgKOH/g〕、PB881〔酸価:15〜18mgKOH/g、アミン価:12〜19mgKOH/g〕等の1種または2種以上が挙げられる。
【0056】
分散剤の配合割合は、顔料の量の0.2倍以上であるのが好ましく、0.8倍以下であるのが好ましい。
上記各成分を含む本発明の光硬化性インクジェットインクによれば、特に先に説明したように非反応性希釈剤として式(1)のグリコールエーテル類を用いることにより、貯蔵安定性に優れるとともにインクジェットプリンタのノズルでの目詰まりやコンタミネーション等を生じにくい上、各種の溶剤に対する耐溶剤性や強度等に優れた被膜を形成することが可能となる。
【実施例】
【0057】
〈実施例1〉
下記の各成分を表1に示す割合で配合して混合したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過して光硬化性インクジェットインクを調製した。
(ウレタンアクリレートオリゴマー)
サートマー社製の脂肪族ウレタンアクリレートCN968〔ポリエステル系、6官能、粘度(60℃):0.350Pa・s〕
(ラジカル重合性のモノマー)
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート〔16HDDA、2官能、サートマー社製のSR238〕
ジプロピレングリコールジアクリレート〔DPGDA、2官能、サートマー社製のSR508〕
(非反応性希釈剤)
式(1)で表され、式(1)中のn=1、m=1であるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
(光重合開始剤)
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔ランブソンジャパン(株)製のSpeedCureTPO〕
(顔料)
カーボンブラック
(分散剤)
ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン系分散剤〔味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーPB821、酸価:15〜18mgKOH/g、アミン価:8〜11mgKOH/g〕
【0058】
【表1】
【0059】
〈実施例2〉
ラジカル重合性のモノマーのうちDPGDAに代えて単官能のエトキシ化フェニルフェノールアクリレート(EPPA)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈実施例3〉
分散剤として、ポリアリルアミン/ポリカプロラクトン系分散剤に代えてイミド系分散剤〔ビックケミー・ジャパン(株)製のBYKJET2151〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
【0060】
〈実施例4〉
ウレタンアクリレートオリゴマーとして、2官能であるサートマー社製の脂肪族ウレタンアクリレートCN985〔ポリエステル系、粘度(60℃):0.205Pa・s〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
【0061】
〈比較例1〉
非反応性希釈剤として、PGMEに代えてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして光硬化性インクジェットインクを調製した。
〈高温での保存安定性評価〉
上記各実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインクを密閉容器に入れ、暗所で45℃に保温して1週間後、および1か月後にそれぞれ濾過した後の残渣の有無を確認した。そして下記の基準で高温での保存安定性を評価した。
【0062】
○:1か月後も残渣は見られなかった。
△:1週間後は残渣が見られなかったが1か月後には残渣が見られた。
×:1週間後に残渣が見られた。
〈耐溶剤性評価〉
上記各実施例、比較例で調製した光硬化性インクジェットインクを用いて基板の表面に印字をしてサンプルとした。
【0063】
次いでこのサンプルを溶剤としてのエタノールまたはクロロホルム中に基板ごと浸漬して23±2℃で24時間浸漬したのち引き上げ、さらに浸漬していたのと同じ溶剤を染み込ませたキムワイプで印字を3往復擦過させた後、下記の基準で耐溶剤性を評価した。
○:印字に変化は見られなかった。
△:印字にわずかな欠けが見られた。
×:印字が半分以上取れてしまった。
以上の結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の実施例1〜4、比較例1の結果より、非反応性希釈剤として式(1)で表されるグリコールエーテル類を選択して用いることにより、それ以外の非反応性希釈剤を用いた場合より高温での保存安定性を大幅に改善できることが判った。
また実施例1、2の結果より、ラジカル重合性のモノマーとしてはいずれも2官能である1,6−ヘキサンジオールジアクリレートおよびジプロピレングリコールジアクリレートを併用するのが、エタノール等のアルコール系の溶剤、およびクロロホルム等のハロゲン化アルキル系の溶剤の両方に対する耐溶剤性を向上する上で好ましいこと、ただし後者を単官能のエトキシ化フェニルフェノールアクリレートに変更した場合にはハロゲン化アルキル系の溶剤に対する耐溶剤性はわずかに低下するものの、アルコール系の溶剤に対しては良好な耐溶剤性を維持できることが判った。
【0066】
実施例1、3の結果より、分散剤としては通常のアミド系の分散剤よりもポリアリルアミン/ポリカプロラクトン系分散剤を使用するのが、高温での保存安定性をさらに向上する上で好ましいことが判った。
そして実施例1、4の結果より、ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、2官能のものよりも6官能のものを用いるのが、特にハロゲン化アルキル系の溶剤に対する耐溶剤性を向上する上で好ましいことが判った。