特開2016-1253(P2016-1253A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-1253(P2016-1253A)
(43)【公開日】2016年1月7日
(54)【発明の名称】弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/14 20060101AFI20151204BHJP
【FI】
   G10D3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-121157(P2014-121157)
(22)【出願日】2014年6月12日
(71)【出願人】
【識別番号】712002907
【氏名又は名称】大滝 統丈
(72)【発明者】
【氏名】大滝 統丈
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA00
5D002CC44
5D002CC45
5D002CC46
(57)【要約】

【課題】 従来、特にエレクトリックギターやフォークギターなどの弦楽器に於いて、楽器本体から糸巻き部を抜ける余った弦の処理については、そのままにしておくか、ニッパーなどで短く切断するなどの手段があったが、特にスティール弦の使用時にあっては、無処理のままにしておくと、その先端が自身、または周囲の目などを刺す場合があった。
【解決手段】 糸巻き部の形状に合わせた内部カバーと、該内部カバーを保護するための外部カバーの、2つからなる、糸巻き部の形状に合わせた構造の保護カバーを装着させることで、弦の飛び出しを防ぎ、自身を含む、周囲への安全を、より容易に確保することができる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦楽器の糸巻き部(4)に設けるキャップ(1)であって、該キャップ(1)は、その内部に糸巻き部(4)を格納するための糸巻き部収納スペース(2c)と弦の通り道(SR)が設けられていることを特徴とする弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項2】
前記キャップ(1)が、外壁部(G)と天井板部(C)とが連接した筒状体からなり、前記キャップ(1)は、それを、脱着自在とする脱着手段(J)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項3】
前記キャップ(1)が内部カバー(2)と、該内部カバー(2)に嵌着し内部カバー(2)を保護するための外部カバー(3)を備え、弦の通り道(SR)となるスリット(SL)を内部カバー(2)と外部カバー(3)の両方に設けた2重構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項4】
前記内部カバー(2)の上部の直径(L1)と内部カバー(2)の下部の直径(L3)の寸法に対して内部カバー(2)の中部の直径(L2)の寸法を小さくしたことを特徴とする請求項3に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項5】
前記内部カバー(2)は、外壁部分(2d)とその内側に設けられた内壁部分(2e)とが、内部カバーの天井板部(2t)で連接されており内壁部分(2e)の内側にヒダとなる凸条体(U)が設けられており、前記外部カバー(3)は上端部に天井板部(3t)が外部カバーの外壁部分(3b)と連接されて設けられていることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項6】
前記内部カバー(2)の内壁部分(2e)と内部カバーの天井板部(2t)で囲まれた空間に、糸巻き部(4)を格納するための糸巻き収納スペース(2c)を設けたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項7】
前記内部カバー(2)は、その外壁部分(2d)と内壁部分(2e)との間に、余った弦(S)を収納するための十分なスペース(2b)を設けたことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項8】
前記内部カバー(2)の外壁部分(2d)および外部カバー(3)の外壁部分(3b)に、脱着手段(J)を設けたことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項9】
前記脱着手段(J)が、内部カバー(2)と外部カバー(3)に設けられた一対の係止部(K)であることを特徴とする請求項8に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項10】
前記一対の係止部(K)が、内部カバー(2)に設けられた溝部分(2a)と、外部カバー(3)に設けられた爪部分(3a)との組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項11】
前記一対の係止部(K)が、内部カバー(2)に設けられた溝部分(2a)と、外部カバー(3)に設けられた突出部分(3d)との組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項12】
前記一対の係止部(K)が、内部カバー(2)に設けられた孔部分(2f)と、外部カバー(3)に設けられた突出部分(3d)との組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項13】
前記脱着手段(J)が、外部カバー(3)の内壁部分(3F)と内部カバー(2)の外壁部分(2d)との間に働く摩擦力(M)であることを特徴とする請求項8に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【請求項14】
前記脱着手段(J)が、外部カバー(3)と内部カバー(2)の少なくともいずれか一方に設けられたテーパー(TP)であることを特徴とする請求項8に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器の糸巻き部分に装着するキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特にエレクトリックギターやフォークギターなどの、楽器本体から糸巻き部を抜ける余った弦の処理については、そのままにしておくか、ニッパーなどで短く切断するなどの手段があったが、特にスティール弦の使用時にあっては、無処理のままにしておくと、その先端が自身、または周囲の手や目を刺す等の危害を加える場合があり、保護ケースに収納の際には、特に、素材がやわらかい生地のものであれば、弦の先端部によって、生地を痛める場合があったり、ケースを貫通して外部に露出する場合があり、外部に露出するような場合にあっては、大変危険であった。また、糸巻き部分に巻き取られずに余った弦について、ニッパーなどで、弦の長さを短くする場合には、伸びていた弦が目を刺す等の危険性は低くなるが、切断した都合上、先端部については、さらに鋭利な形状となり、調弦の際に指を刺しやすくするだけでなく、保護ケースの構造によっては、特に内側の生地に対する損傷について、より顕著となる。
【0003】
しかしながら、これまでは、それらを改善するためのアイデア、部品などについての対応がなく、例え保護ケースの損傷が著しくなったり、周囲を刺す等の可能性があったとしても、やむを得ないものとして、慢性的に常識となっており、改善の余地があった。通常、糸巻き部そのものの大きさや形状などの規格は、各楽器ごとに概ね同一であるが、糸巻き部をカバー等で覆うことを想定した場合、弦楽器の糸巻き部を有するヘッド部の形状は、製品によって様々であり、それによって糸巻き部の配置も異なるため、糸巻き部に合わせて密着するような個体であれば装着の実施は可能であるが、糸巻き部分や、弦を傷付けないためには、ゴムなどの柔軟性をもつ素材である必要があると考えられる。しかしながら、ゴムなどの柔軟性のある素材を1点のみ装着しての実施であれば、外部からのダメージを直接受けるため、劣化、破損のしやすくなるものと考えられ、より長く安全に使用するには、課題があった。
【0004】
従来の弦楽器のヘッド部分の一例を、図13に示す。図13の(a)、(b)は、糸巻き部を有する弦楽器の一例である。それぞれの例は、一般的に使用されているギターのヘッド部にて、異なるレイアウトで配置された糸巻き部、および糸巻き部から伸びる弦を示しているが、弦の先端部に対しての安全対策はとられていない。
【0005】
弦楽器の糸巻き部に関する先行技術文献に於いては、弦楽器に装着する糸巻き部についての説明がある。弦楽器に装着する糸巻き部そのものの構造について言及されている。(特許文献1参照)弦楽器用調律器の構造について述べられた記載がある。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−328245号公報
【特許文献2】実開平07−036194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、および特許文献2は、どちらも弦楽器に装着する糸巻き部そのものについての説明があるが、糸巻き部から伸びる弦の先端部の安全性について述べられたものはなかった。そこで本願発明の目的は、上記特許文献1、および特許文献2に於いて言及されていない、糸巻き部から伸びる弦の先端部の安全性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、第1発明は、弦楽器の糸巻き部4に設けるキャップ1であって、該キャップ1は、その内部に糸巻き部4を格納するための糸巻き部収納スペース2cと弦の通り道SRが設けられていることを特徴とする弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、周囲への安全性を向上させる効果がある。
【0009】
第2発明は、前記キャップ1が、外壁部Gと天井板部Cとが連接した筒状体からなり、前記キャップ1は、それを、脱着自在とする脱着手段Jを備えていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、周囲への安全性を向上させる効果がある。
【0010】
第3発明は、前記キャップ1が内部カバー2と、該内部カバー2に嵌着し内部カバー2を保護するための外部カバー3を備え、弦の通り道SRとなるスリットSLを内部カバー2と外部カバー3の両方に設けた2重構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、周囲への安全性と、キャップの耐久性を向上させる効果がある。
【0011】
第4発明は、前記内部カバー2の上部の直径L1と内部カバー2の下部の直径L3の寸法に対して内部カバー2の中部の直径L2の寸法を小さくしたことを特徴とする請求項3に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、周囲への安全性を向上させる効果がある。係る構成によれば、糸巻き部4への密着度を向上させる効果がある。
【0012】
第5発明は、前記内部カバー2は、外壁部分2dとその内側に設けられた内壁部分2eとが、内部カバーの天井板部2tで連接されており内壁部分2eの内側にヒダとなる凸条体Uが設けられており、前記外部カバー3は上端部に天井板部3tが外部カバーの外壁部分3bと連接されて設けられていることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、弦の保護と脱着の容易さを向上させる効果がある。
【0013】
第6発明は、前記内部カバー2の内壁部分2eと内部カバーの天井板部2tで囲まれた空間に、糸巻き部4を格納するための糸巻き収納スペース2cを設けたことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、糸巻き部4への密着度を向上させる効果がある。
【0014】
第7発明は、前記内部カバー2は、その外壁部分2dと内壁部分2eとの間に、余った弦Sを収納するための十分なスペース2bを設けたことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、弦の保護と糸巻き部4への密着度を向上させる効果がある。
【0015】
第8発明は、前記内部カバー2の外壁部分2dおよび外部カバー3の外壁部分3bに、脱着手段Jを設けたことを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【0016】
第9発明は、前記脱着手段Jが、内部カバー2と外部カバー3に設けられた一対の係止部Kであることを特徴とする請求項8に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【0017】
第10発明は、前記一対の係止部Kが、内部カバー2に設けられた溝部分2aと、外部カバー3に設けられた爪部分3aとの組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【0018】
第11発明は、前記一対の係止部Kが、内部カバー2に設けられた溝部分2aと、外部カバー3に設けられた突出部分3dとの組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【0019】
第12発明は、前記一対の係止部Kが、内部カバー2に設けられた孔部分2fと、外部カバー3に設けられた突出部分3dとの組み合わせであることを特徴とする請求項9に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【0020】
第13発明は、前記脱着手段Jが、外部カバー3の内壁部分3Fと内部カバー2の外壁部分2dとの間に働く摩擦力Mであることを特徴とする請求項8に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ糸巻き部4と該キャップ1との密着度の向上に効果がある。
【0021】
第14発明は、前記脱着手段Jが、外部カバー3と内部カバー2の少なくともいずれか一方に設けられたテーパーTPであることを特徴とする請求項8に記載の弦楽器の糸巻き部に装着するキャップである。係る構成によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【発明の効果】
【0022】
第1発明によれば、周囲への安全性を向上させる効果がある。
第2発明によれば、周囲への安全性を向上させる効果がある。
第3発明によれば、周囲への安全性と、キャップ1の耐久性を向上させる効果がある。
第4発明によれば、糸巻き部4への密着度を向上させる効果がある。
第5発明によれば、弦の保護と脱着の容易さを向上させる効果がある。
第6発明によれば、糸巻き部4への密着度を向上させる効果がある。
第7発明によれば、弦の保護と糸巻き部4への密着度を向上、及び内部カバー2と外部カバー3との密接が高くなり、抜けにくくなるという効果がある。
第8発明によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
第9発明によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
第10発明によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
第11発明によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
第12発明によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
第13発明によれば、脱着容易かつ糸巻き部4と該キャップ1との密着度の向上に効果がある。
第14発明によれば、脱着容易かつ確実な係止の向上に効果がある。
【0023】
上記の効果をまとめると、本発明の効果は、本発明キャップ1の容易な脱着を可能とする形状でありながら、余った弦Sが演奏者や周囲にいる人に、危害を及ぼす事なく糸巻き部4を保護する目的を有し、その使用によって糸巻き部分の役割である調弦の維持に対して、主立った悪影響のない保護カバーを、提供することができる。
【0024】
また、本発明によれば、糸巻き部4から伸びる余った弦Sに対する処理、無処理を問わず、保護ケースを痛めることがなく、自身を含む周囲への危険を大幅に軽減できる他、装着するキャップ1に対する色彩を工夫するなどによって、統一感や個性を演出するなどの効果に期待ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は本発明の弦楽器の糸巻き部キャップを示す、全体図である。(a)は斜視図である。(b)は、A−A´断面図である。(c)は、底面図である。
図2図2は本発明の外側カバーの全体図である。(a)は斜視図である。(b)は、B−B´断面図である。(c)は、底面図である。
図3図3は本発明の内側カバー全体図である。(a)は斜視図である。(b)は、C−C´断面図である。(c)は、底面図である。
図4図4は本発明の内部カバーにおける外径寸法の大小を示した説明図である。
図5図5は本発明の内部カバーに外部カバーを嵌着させた状態を示す模式図である。
図6図6は本発明の内部構造の縦方向の断面を示し、力の流れを示す説明図である。
図7図7は本発明における弦楽器の全体を示す説明図である。
図8図8は本発明での使用図を示す。
図9図9は本発明の弦楽器のキャップの使用された状態での縦方向の断面図である。
図10図10は本発明の弦楽器のキャップの使用された状態と使用されて いない状態での横方向の断面図である。(a)はキャップの装着された状態である。(b)は、キャップを装着しない状態である。
図11図11は本発明の弦楽器の外部カバーの形態のバリエーションを示す斜視図である。
図12図12は、本発明の弦楽器の外部カバーのバリエーションを示し、スリットを通して弦を糸巻き部に巻きつけた状態の説明図である。(a)は外部カバーA型の例を示す。(b)は外部カバーB型の例を示す。(c)は外部カバーC型の例を示す。(d)は外部カバーD型の例を示す。
図13図13は、従来の弦楽器の一例を示す。(a)は糸巻き部が一列に配置されたヘッド部の形状の一例である。(b)は糸巻き部が2列に配置されたヘッド部の形状の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施例と図面により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、図面により限定されるものではない。
【0027】
図1図3で示すように、本願発明は、糸巻き部4に直接装着する内部カバー2と、その上を覆い込む外部カバー3による2重構造の保護キャップにより構成されるが、内部カバー2の材質については、内部に格納する弦S、そして糸巻き部4については、通常の使用時ではキャップ1が外れることのないよう、糸巻き部4と内部カバー2の間で、可能なだけの高い密着度を有し、かつ、糸巻き部4や、その周囲を痛めることのない程度の柔軟性が求められる。
【0028】
内部カバー2が内設するヒダとなる凸条体Uの構造については、周方向に沿って延在する凸状の山部と凹状の谷部とが、軸方向に交互に連続して形成された凸凹形状や、らせん形状であるなどの他、凸条体Uとなる先端部の形状についても、様々なものが考えられると思われるが、いずれにしても、実施に際しては、その形状が、糸巻き部4に対して十分な密着度を持ち、かつ内部カバー2の脱着の容易な構造であれば好適であると思われる。
【0029】
実際の使用時において、外部カバー3を紛失または破損などの、何らかの事情により、外部カバー3を装着せずに実施される場合であっても、ある程度の強度を持って弦Sが内部カバー2を貫通させることのないように、内部カバー2の内部へ閉じ込めておく必要があるため、内部カバー2に使用する材質については、適度な硬度と柔軟性を持った、ゴムなどの弾性体を使用することが良いと思われる。
【0030】
外部カバー3を内部カバー2に固定するため、係止部Kが設けられている。前記係止部Kは、内部カバーの溝部分2aに外部カバーの爪部分3aが、篏合することで、外部カバー3を内部カバー2に固定できる。また、溝部分2aと、それに対応する外部カバー3を内部カバー2に固定するための爪部分3aのそれぞれを、内部カバー2と外部カバー3の略全周でも良いが、部分的でも良い。
【0031】
外部カバー3を内部カバー2に固定するための爪部分3aが、外部カバー3を内部カバー2に固定するための溝部分2aに装着されることによって、外部カバー3と、内部カバー2の密着度を高めているが、装着するその範囲については、必ずしも、外部カバー3と内部カバー2の全周を囲んでいる必要はなく、外部カバー3の形状によっては、爪部分3aが、溝部分2aに対して、およそ4分の3程度の範囲で、部分的に装着されているのが好適である。しかし、必ずしも、4分の3に限定されるものではない。
【0032】
前記係止部Kは、3通りある。第1は、内部カバーの溝部分2aと外部カバーの爪部分3aの組み合わせ、第2は、内部カバーの溝部分2aと外部カバーの突出部分3dの組み合わせ、第3は、内部カバーの孔部分2fと、外部カバーの突出部分3dの組み合わせである。これらのうち、第1の場合が最も好適である。前記爪部分3aとは、外部カバー3の下端に向けられた突条部分で、それは、全周のおよそ10%以上から略全周にわたって設けられている。また、前記突出部分3dは、外部カバー3の下端に設けられた点状の突起部である。
【0033】
内部カバーの溝部分2aは、内部カバー2の全周のおよそ10%以上が好適である。そして最大でもスリット部分SLを除いて略全周が好適である。またその約4分の3程度が、最も好適である。また、外部カバーの突出部分3dは、少なくとも、1個以上必要であり、2個、3個、4個程度あればより好適である。また、外部カバーの爪部分3aは、外部カバー3の全周のおよそ10%以上が好適である。また最大でも、スリット部分SLを除いて、外部カバー3の略全周が好適である。またその4分の3程度が最も好適である。前記内部カバーの溝部分2aの長さは、外部カバーの爪部分3aの長さと等しいか、またはそれよりも長いことが必要である。
【0034】
より詳しく説明する。前記内部カバーの孔部分2fと、外部カバーの突出部分3dの組み合わせ篏合においては、前記孔部分2fと突出部分3dが少なくとも、1個以上必要であり、2個、3個、4個程度あればより好適である。
【0035】
前記係止部Kにおいて、内部カバー2は溝部分2aと孔部分2fの少なくともいずれかを有し、外部カバー3には爪部分3aと突出部分3dのいずれかを有することが必要である。
【0036】
前記係止部Kにおいて、内部カバー2の溝部分2aに対して、外部カバーの爪部分3aである組み合わせ篏合は、最も好適である。
【0037】
前記係止部Kにおいて、内部カバー2の溝部分2aに対して、外部カバーの突出部分3dである組み合わせ篏合は、好適である。
【0038】
前記係止部Kにおいて、内部カバー2の孔部分2fに対して、外部カバーの爪部分3aである組み合わせ篏合は、互いに篏合することができないため、不適である。
【0039】
前記係止部Kにおいて、内部カバー2の孔部分2fに対して、外部カバーの突出部分3dである組み合わせ篏合は、好適である。
【0040】
また、前記係止部Kの設置場所については、必ずしも最下端部にあることに限定されず、内部カバー2と外部カバー3の接合部の組み合わせによる嵌着に問題がなく、かつ演奏上支障のない場合には、上端部や中部に位置する構造であっても、その実施が可能だと思われる。
【0041】
図4は、本発明の内部カバー2における外形寸法の大小を示す説明図である。内部カバー2の上部の直径L1、中部の直径L2、下部の直径L3の大きさを示している。弦Sとキャップ1との密着度をより効果的に高めるためには、上部の直径L1と下部の直径L3に対して、中部の直径L2の寸法を小さくすることが良いと思われる。
【0042】
図5は、本発明の内部カバー2に外部カバー3を嵌着させた状態を示す模式図である。(a)は、前記内部カバー2と外部カバー3の両方にテーパーTPを設けない場合を示す。それぞれを嵌着させたときに、内部カバー2の外壁部分2dと外部カバー3の内壁部分3Fとを密着させることで摩擦力Mが働き、前記係止部Kがなくても、また以下のテーパーTPがなくても、外部カバー3が外れることを防止できる。(b)は外部カバー3のみが上端部から下端部にかけて狭くなる方向のテーパーTPである状態を示す。(c)は内部カバー2のみが上端部から下端部にかけて狭くなる方向のテーパーTPである状態を示す。(d)は外部カバー3と内部カバー2の両方が上端部から下端部にかけて狭くなる方向のテーパーTPである状態を示す。(e)は外部カバー3と内部カバー2の両方が、上端部から下端部にかけて大きくなる方向のテーパーTPである状態を示す。(f)は内部カバー2のみが上端部から下端部にかけて大きくなる方向のテーパーTPである状態を示す。ただし、以上に例示した以外であってもよいものとする。
【0043】
図6は、本発明の実施の形態を示している。図6で示す断面図のように、糸巻き部4を締め付けることで生じる、内部カバー2の素材自体からの反発力としてのf1が生じ、内部カバー2の内部の隙間スペースである2bに格納されている弦Sによる反発であるf2に生じ、これに連れてf3が生じる。f3として内部カバー2と外部カバー3の密接面Rに向かうが、やがて押し返される力をf4が生じ、最終的には、f5として、糸巻き部に巻かれている弦Sへの密着力として帰ってくる。尚、それらは構造の概要として、力の動きを5つに区切った説明としたが、実際には、内部カバー2や外部カバー3の素材、弦の形状や素材、その格納状態等によって、力学上ではさらに細かな力の移動が存在しているはずだが、ここでは、あくまで本願発明の実施の形態における、考え方としての説明に止める。
内部に格納された弦Sを痛めずに反発を押さえ、かつ、弦Sを装着する際の内部カバー2の密着度を損なわないためにも、内部カバー2に使用する材質は、下記に示すような、適度な硬度と柔軟性を持った材質の使用が好ましい。
【0044】
外部カバー3の材質については、内部カバー2を補強する目的を有した上で、演奏面を損なうことのない程度の重量であれば良く、外部カバー3の材質としては、硬質の合成樹脂が好適である。ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等を例示できる。また、金属も好適である。アルミニウム、スチール、ステンレス、真鍮等を例示できる。木質材においては、堅木が好適である。ナラ材、黒檀、けやき、紫檀、チーク材等を例示できる。しかし、材質の種類については、これらに限定されるものではない。
【0045】
当該実施例に於いては、内部カバー2の材質であるゴムの硬度について、JIS K 6253に準拠した、タイプAのデュロメーターによる測定値を用いた。
【0046】
特に外部カバー3の上部、側面部に於いては、色合い、模様をはじめ、イラストなどの装飾を加えることで、従来にはなかったニーズを展開できると思われる。
【0047】
図7は、実施の一例を示しているが、外部カバー3の形状について、弦楽器のヘッド部分における、糸巻き部4の配置場所によって、糸巻き部4と楽器本体に伸びる弦に対して、様々な角度になるため、必ずしも円形の補強カバーである必要はなく、該当する糸巻き部4の配置に合わせて展開すれば良い。
【0048】
図8は、糸巻き部4によって巻かれた弦Sの先端部について、無処理の状態と、短く処理した状態における本発明品の装着方法を示しているが、どちらも同じ装着方法での実施が可能なため、一度ひとつの手順を覚えてしまえば、装着方法について迷わせることなく実行することができると思われる。
【0049】
図9は、糸巻き部4と、糸巻き部4に巻かれた弦が、共に格納されている様子を示した断面図であるが、例えば、糸巻き部4の形状が円柱ではなく、角柱とする形状であっても、内部カバー2の素材が柔軟性を持っていることから、実施の手順や内部の構造を変えることなく対応できるものと思われる。
【0050】
図10は、キャップ1の装着された状態(a)と、されていない状態(b)との比較について示しているが、(a)のように、キャップ1の装着された状態であっても、弦SがスリットSLを通り抜けることで、糸巻き部4の機能を十分に果たすものである。
【0051】
図11、および図12は、円形形状の外部カバー3および、円形ではない形状で実施される外部カバー3の一例を示しているが、図12に示すように、内部カバーの溝部分2aへ固定する外部カバーの爪部分3aを外部カバー3の略全周でも良いが、部分的な固定としても良い。その他、外部カバー3の突出部分である3dを、少なくとも1か所以上設けた構造でも良い。図12の(a)は、外部カバーのA型の例を示す。(b)は、外部カバーのB型の例を示す。(c)は外部カバーC型の例を示す。(d)は外部カバーD型の例を示す。実施に際しては、糸巻き部4の形状に合わせて、都度、最も安定する接合面を検討する必要性があると思われるが、A型、およびB型のような形状においては、内部カバーの溝部分2aの略全周に対して爪部分3aが、外部カバー3の円弧部分3eの略全周に設けられている。C型の形状例においては、内部カバー2の外周の溝である2aに対して、外部カバー3の内側に設けられた突出部分3dを2個備えているが、少なくとも1個以上必要であり、2個程度あればより好適である。前記外部カバー3の突出部分3dと、内部カバー2の孔2fは、数が一致するのが最適であるが、突出部分3dの数は、孔2fと等しいか、または少ない事が必要である。これらの組み合わせは、一対以上から4対程度が好適である。実施の形状によっては、D型のように、円形の内部カバー2の外周に設けられた孔2fと角形の外部カバー3の内側に設けられた突出部3dの組み合わせ篏合でも良い。またその場合、1カ所の固定、2カ所の固定、3カ所の固定、または4カ所の固定でも良い。いずれにしても、外部カバー3の突出部分3dの個数は、内部カバーの孔の個数と等しいか、または少ないことが必要である。
【0052】
実施上の可能性として、外部カバー3の形状について、円形でないものを検討する際には、外部カバーのD型のように、スリット部分SLを1つ以上設けることで、設置する糸巻き部4の設置場所が限定されにくい構造を提供できると考えられる。たとえば、ギターのヘッド部Hに左右縦列に配置される糸巻き部4に対して、左右兼用とすることができる。
【0053】
糸巻き部4にて巻きつけられなかった、先端部の弦Sの余剰部分については、内部カバーの外壁2dと内壁2cとの間に設けられたスペース2bに格納することができるが、内部カバー2の外壁部分となる2dの外周に巻きつけた上で、外部カバー3を装着する等の使い方も考えられる。
【0054】
以下、本願発明の実施例と比較例について詳しく述べる。
【0055】
実施例1について述べる。
実施例1に於いては、市場に流通している、ごく一般的な形状の糸巻き部を備えたギターに対応したものとし、外部カバー3の頂上部を、半径10mmの円形とし、底辺から上部までの高さを18mmの形状とした。また、内部カバー2については、円筒の頂上部となる円の半径を、8mmとし、中部分の最少となる半径を6.5mmとし、底辺から、外部カバー3との接合部となる溝部分を含めた、上部までの高さを18mmとした。また、弦の通り抜けるスリット部SLについては、幅4mm、高さを8mmとした。各部の材質は、外部カバー3の素材を硬質の塩ビ樹脂によるものとし、内部カバー2の素材を硬度45度の天然ゴムとした。また、内部カバー2の内壁部に内接する、ヒダとなる凸条体Uについては、周方向に沿って延在する凸状の山部と凹状の谷部とが、軸方向に交互に連続して形成された構造のものを採用した。
【0056】
実施例2について述べる。
内部カバー2の材質を硬度40度の天然ゴムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0057】
実施例3について述べる。
内部カバー2の材質を硬度50度の天然ゴムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0058】
実施例4について述べる。
内部カバー2の材質を硬度45度のウレタンゴムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0059】
実施例5について述べる。
外部カバー3の材質を木質材(ナラ材)とした。その他は、実施例1と同様にした。
【0060】
実施例6について述べる。
外部カバー3の材質を木質材(ナラ材)とし、内部カバー2の材質を硬度45度のウレタンゴムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0061】
実施例7について述べる。
外部カバー3の材質をアルミニウムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0062】
実施例8について述べる。
外部カバー3の材質をアルミニウムとし、内部カバー2の材質を硬度45度のウレタンゴムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0063】
実施例9について述べる。
外部カバー3の材質を真鍮とした。その他は、実施例1と同様にした。
【0064】
実施例10について述べる。
外部カバー3の材質を真鍮とし、内部カバー2の材質を硬度45度のウレタンゴムとした。その他は、実施例1と同様にした。
【0065】
比較例1について述べる。
内部カバー2の材質をアクリル樹脂とした。その他は、実施例1と同様にした。
【0066】
比較例2について述べる。
外部カバー3と内部カバー2の材質を真鍮とした。その他は、実施例1と同様にした。
【0067】
比較例3について述べる。
外部カバー3と内部カバー2のいずれも装着しない状態とし、その他は、実施例1と同様にした。
【0068】
以下に、本願発明のキャップ1の実施例と比較例について適正比較試験を行った。その結果を下記の表1まとめた。
【0069】
【表1】
【0070】
以下に、前記の試験について、試験方法と、試験結果の評価と、その試験結果の考察について述べる。
(試験方法)
該内部カバー2、および該外部カバー3の装着による、弦Sおよび糸巻き部4への負担の少なさと耐久性を基に、加工の容易さや重量のバランスなどの実用性を考慮したものを総合評価とした。耐久性のテストとしては、内部カバー2については、糸巻き部4への脱着を各100回繰り返すことによる、弦S、および糸巻き部4への負荷を、視覚的に判断した。外部カバー3については、ギターに装着した上で、装着面をコンクリートの壁面に向けて、30センチメートル離した位置から立てかける動作を100回繰り返した上での、外部カバー3に生じた傷を、視覚的に評価した。
(試験結果の評価)
5段階の相対評価とした。評価記号と、その意味については、以下の通りである。
◎ 極めて良好
○ 良好
△ やや不良
× 不良
×× 極めて不良
【0071】
(試験結果の考察)
実施例1では、外部カバー3に塩ビ樹脂、内部カバー2に硬度45度の天然ゴムを使用し、大変好ましい組み合わせであると評価した。内部カバー2に適度な硬度と柔軟性を持った天然ゴムを用いたことによって、弦や糸巻き部を傷つけることなく、適切に保護をすることが可能であった。外部カバーに使用した塩ビ樹脂は、適度に軽量であるため、楽器のバランスを大きく崩すことのない実施が可能であったほか、材質に対する加工の容易さも、高評価の一因とした。
【0072】
実験例2では、内部カバー2に使用した天然ゴムの硬度を40度を使用したほかは実施例1と同様である。使用感としても、実施例1と大差なく、好適であった。
【0073】
実験例3では、内部カバー2に使用した天然ゴムの硬度を50度を使用したほかは実施例1と同様である。使用感としても、実施例1と大差なく、好適であった。
【0074】
実施例4では、外部カバー3に塩ビ樹脂、内部カバー2に硬度45度のウレタンゴムを使用した。実施例1と同様に、大変好ましい組み合わせであると評価した。使用感としては、実施例1と同様に、好適であった。
【0075】
実施例5においては、外部カバー3にナラ材、内部カバー2に天然ゴムを使用した。使用に際しては、木質材を用いたが、天候や湿気の影響をできる限り軽減する必要があるため、十分に乾燥し、表面にラッカー塗装を施したものを用いることによって、好適な素材と判断できた。外部カバー3の材質として、耐久性についての実験方法の結果としては、大きな損傷、傷は見られず、実施上、なんら問題はなかったが、相対的にその他の金属類、樹脂と比較した際に、硬度の面で順位をつける必要性を考慮したものである。
【0076】
実施例6においては、内部カバー2にウレタンゴムを使用したが、その他は実施例5と同様であり、その使用感もまた、好適であった。
【0077】
実施例7では、外部カバー3にアルミニウム、内部カバー2に天然ゴムを使用し、大変好ましい組み合わせであると評価した。
【0078】
実施例8では、内部カバー2にウレタンゴムを使用したが、その他は、実施例7と同様であり、その使用感もまた、好適であった。
【0079】
実施例9では、外部カバー3に真鍮、内部カバー2に天然ゴムを使用した。真鍮の硬度については申し分のないものであった。しかしながら、実用に際しては、特に楽器のボディ部が軽量の場合には、真鍮の重量によって、楽器全体のバランスを損なう印象があり、また、木材や樹脂と比較して、加工や形成について手間がかかる点は、留意する必要があると思われる。
【0080】
実施例10では、内部カバー2にウレタンゴムを使用したが、その他は、実施例9と同様であった。
【0081】
次に比較例1として、外部カバー3を塩ビ樹脂、内部カバー2にアクリル樹脂を使用した。しかしながら、内部カバー2の材質としてのアクリル樹脂は、柔軟性がなく、弦Sや糸巻き部4への負担があり、実用に耐えうるものではなかった。
【0082】
比較例2では、外部カバー3、内部カバー2共に、真鍮を使用した。しかしながら、重量による負担だけでなく、内部カバー2としての真鍮は、弦Sや糸巻き部4に対して、摩擦によって、表面を傷つける可能性が顕著であるため、実用に耐えうるものではなかった。
【0083】
以上の実験例から、弦に直接触れる内部カバー2については、適度な弾性体であり、摩擦などの接触によって弦Sを痛めることの少なく、かつ巻き取られた弦Sが、容易に外部へ飛び出さないための最低限の強度を持っていることが求められ、外部カバー3については、内部カバー2を保護しうる強度を備えつつ、重量によって、楽器の重心バランスを大きく損なうことのない程度の重さであることが求められるものと思われる。また、内部カバー2に用いた、同じ硬度を持つ、天然ゴムとウレタンゴムによる使用感の違いは少なく、どちらの使用も同様に好適であると思われる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本願発明のキャップを用いることで、弦の先端部による怪我の予防をすることができ、安全性を向上させることができる。従って産業上の利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0085】
1 キャップ
C 天井板部
G 外壁部
2 内部カバー
2a 外部カバーを内部カバーに固定するための溝部分
2b 内部カバーの外壁と内壁の間に設けられたスペース
2c 糸巻き部収納スペース
2d 内部カバーの外壁部分
2e 内部カバーの内壁部分
2f 内部カバーの孔部分
2t 内部カバーの天井板部
L1 内部カバーの上部の直径
L2 内部カバーの中部の直径
L3 内部カバーの下部の直径
3 外部カバー
3a 外部カバーを内部カバーに固定するための爪部分
3b 外部カバーの外壁部分
3c 外部カバーと内部カバーの間のスペース
3d 外部カバーを内部カバーに固定するための突出部分
3e 外部カバーの円弧部分
3t 外部カバーの天井板部
4 糸巻き部
f1 力の流れ1
f2 力の流れ2
f3 力の流れ3
f4 力の流れ4
f5 力の流れ5
H ヘッド部分
S 弦
T 糸巻き部に空いた、弦が通る穴
P ペグ
N ナット
W ワッシャ
SL スリット
J 脱着手段
U 凸条体
K 一対の係止部
TP テーパー
M 摩擦力
SR 弦の通り道
R 密接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13