【解決手段】エンジンおいて、エンジン本体(1)およびエンジン本体(1)に取り付けられる非導電性エンジン部品に正の電荷が帯電する。非導電性エンジン部品上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性エンジン部品の壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器(10)を備えている。自己放電式除電器(10)がエンジン部品のエンジン本体への接続部の外壁面上に設置され、それによりエンジン本体(1)が除電される。
非導電性材料から形成されかつエンジン本体に取り付けられるエンジン部品を具備しており、エンジン本体および該エンジン部品に正の電荷が帯電するエンジンにおいて、非導電性エンジン部品上に設置すると該設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性エンジン部品の壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器を備えており、該自己放電式除電器をエンジン部品のエンジン本体への接続部の外壁面上に設置し、それによりエンジン本体を除電するようにしたエンジン。
該エンジン部品がエンジンのシリンダヘッドカバーを覆う騒音防止カバーからなり、該自己放電式除電器が該騒音防止カバーのシリンダヘッドカバーへの接続部の外壁面上に設置されている請求項1に記載のエンジン。
エンジンのシリンダヘッドカバー上に突起が形成されており、該騒音防止カバーのシリンダヘッドカバーへの接続部が、騒音防止カバーの裏面上に一体形成されかつ該突起と係合可能な筒状部からなり、該筒状部の外壁面上に該自己放電式除電器が設置される請求項3に記載のエンジン。
該エンジン部品が、エンジン本体の一部を構成する非導電性のエンジン構成部材からなり、該自己放電式除電器をエンジン構成部材のエンジン本体への接続部の外壁面上に設置した請求項1に記載のエンジン。
エンジン本体およびエンジン本体に取り付けられた非導電性のエンジン部品に正の電荷が帯電するエンジンの製造方法において、非導電性エンジン部品上に設置すると該設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性エンジン部品の壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器を用い、エンジン部品のエンジン本体への接続部の外壁面上であって該自己放電式除電器を設置するとエンジン本体を除電することのできる該自己放電式除電器の設置位置を求め、該自己放電式除電器を該求められた設置位置に設置するようにしたエンジンの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aは、図解的に示したエンジン本体の一部断面側面図である。
図1Aを参照すると、1は金属製エンジン本体、2は金属製シリンダヘッドカバー、3はエンジンの発する騒音が外部に広がるのを防止するための非導電性合成樹脂製騒音防止カバーを夫々示す。
図1に示されるように、この騒音防止カバー3は接続機構4を介してシリンダヘッドカバー2上に接続される。
図1Bはこの接続機構4の側面断面図を示している。
図1Bに示されるように、この接続機構4は、シリンダヘッドカバー2上に形成されて上方に突出する突起5と、騒音防止カバー3の下面上に一体形成されかつ騒音防止カバー3の下面上から下方の延びる筒状部6と、ゴム製リング7とにより構成される。この筒状部6も非導電性合成樹脂材料から形成されている。
【0010】
筒状部6の下端部には内方に向けて延びる環状のフランジ6a が形成されており、ゴム製リング7の外周面上には環状フランジ6a 上に嵌着可能な外周溝8a が形成されている。
図1Bに示されるように、ゴム製リング7はゴム製リング7の外周溝8a を筒状部6の環状フランジ6a 上に嵌着することによって筒状部6に固定される。一方、ゴム製リング7は、その中央部に突起5の球形頭部の直径よりも若干小さな直径の円筒孔8を有する。このゴム製リング7の円筒孔8を突起5の球形頭部周りに押し込むことによって、騒音防止カバー3がシリンダヘッドカバー2に接続される。このようにして、騒音防止カバー3はシリンダヘッドカバー2に着脱自在に取り付けられる。
【0011】
さて、車両が走行せしめられると、タイヤの各部が路面に対して接触、剥離を繰り返すことによって静電気が発生し、またエンジンの構成部品やブレーキ装置の構成部品が相対運動することによっても静電気が発生する。また、車両の走行時に空気が車両の外周面上を摩擦接触しつつ流れることによっても静電気が発生する。これらの発生した静電気によって車両のボディー、エンジン等には電荷が帯電し、非導電性合成樹脂材料からなる騒音防止カバー3にも電荷が帯電する。このとき、エンジン本体1、シリンダヘッドカバー2、および騒音防止カバー3の表面上に正の電荷が帯電することが確認されており、しかもエンジン本体1、シリンダヘッドカバー2、および騒音防止カバー3の表面の電圧値は1000(v)以上の高電圧になる場合があることが確認されている。
【0012】
ところで、非導電性合成樹脂材料からなる薄肉壁の表面の電圧値が高くなると、薄肉壁の表面に沿う空気の流れが変化することが確認されている。そこで、まず初めに、薄肉壁の表面に沿う空気の流れが、薄肉壁の表面の電圧値によってどのように変化するかということについて、本発明者が実験により確認した現象から説明を行う。
図6Aは、正の電荷が帯電している薄肉壁9の表面に沿って空気が流れている場合を示している。この場合、空気は正に帯電する傾向にあるので、
図6Aは、正に帯電した空気が、正の電荷が帯電している薄肉壁9の表面に沿って流れている場合を示している。さて、
図6Aにおいて、実線の矢印は、薄肉壁9の表面の電圧値が低い場合を示しており、この場合には空気は薄肉壁9の表面に沿って流れる。これに対し、破線の矢印は、薄肉壁9の表面の電圧値が高い場合を示しており、この場合には空気は薄肉壁9の表面が下方に向け湾曲したところで、即ち空気流が薄肉壁9の表面から離れやすいところで、薄肉壁9の表面から離れるように流れる。
【0013】
図6Bは、
図6Aにおいて薄肉壁9の表面に沿って流れる空気の主流の流速U
∞ と、薄肉壁9の表面から距離Sだけ離れた位置での流速Uとの速度比U/U
∞ のX地点(
図6A)における実測値を示している。なお、
図6Bにおいて黒塗りの菱形で示される各点は、薄肉壁6の表面に正の電荷が帯電していない場合を示しており、
図6Bにおいて黒塗りの四角形で示される各点は、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合を示している。
図6Bから、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合に比べて、速度境界層が薄肉壁9の表面から離れ、従って薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には、
図6Aにおいて破線の矢印で示されるように、空気が薄肉壁6の表面から離れるように流れていることがわかる。
【0014】
上述したように、空気は正に帯電する傾向があり、従って空気の一部は正の空気イオン(丸内に+で表示)となっている。従って、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していると正の空気イオンと薄肉壁9の表面との間には斥力が作用するために、
図6Aにおいて破線の矢印で示されるように、空気は薄肉壁9の表面が下方に向け湾曲したところで、即ち空気流が壁面9の表面から離れやすくなったところで、薄肉壁9の表面から離れるように流れることになる。このように薄肉壁9の表面への正の電荷の帯電により薄肉壁9の表面に沿って流れる空気流が薄肉壁9の表面から離れることは実験により確かめられており、この場合、薄肉壁9の表面の電圧値が高くなるほど、薄肉壁9の表面に沿って流れる空気流が薄肉壁9の表面から離れることがわかっている。
【0015】
また、薄肉壁9の表面形状が空気流の剥離を生じやすい形状を有している場合において、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していないときには空気流の剥離が生じないが、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、空気流の剥離が生じる場合があることが確認されている。更に、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合には薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電していない場合に比べて、空気流の剥離の大きさが増大することも確認されている。このように、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電すると、電気的な反発力に基づいて、空気流が薄肉壁9の表面から離れ、或いは空気が剥離を生じることが確かめられている。
【0016】
さて、前述したようにエンジン本体1、シリンダヘッドカバー2、および騒音防止カバー3の表面の電圧値は1000(v)以上の高電圧になる場合があることが確認されている。この場合、
図6Aおよび6Bに示される実験結果から判断すると、この高電圧によりエンジン本体1内を流れる吸入空気の流れおよび排気ガスの流れが変化せしめられており、それにより機関出力に影響が出ていると推測される。そこで、吸入空気の流入作用および排気ガスの流出作用について実験を行った結果、エンジン本体1の電圧値が高電圧になると吸気抵抗および排気抵抗が増大し、その結果、機関出力が低下することが判明したのである。
【0017】
次に、エンジン本体1の電圧値が高電圧になると機関出力が低下する理由について、
図5を参照しつつ簡単に説明する。なお、
図5は、エンジン本体1内に形成された吸気ポートAと吸気弁Bとを示しており、吸気ポートA内に流入した吸入空気は吸気弁Bを介して燃焼室内に供給される。
図5において実線の矢印は、エンジン本体1の電圧が低いときの吸気ポートA内における吸入空気の流れを示している。このときには、吸入空気は実線の矢印で示されるように吸気ポートAの内周壁面に沿って流れる。
【0018】
これに対し、静電気の帯電によりエンジン本体1の電圧が高くなると、
図5において破線の矢印で示されるように、吸気ポートAの内周壁面に沿って流れる正に帯電した吸入空気は、電気的な反発力によって、吸気ポートAの内周壁面から引き離され、その結果、吸入空気は吸気ポートA内の内周壁面から離れたところを流れざるを得なくなる。吸入空気が吸気ポートAの内周壁面から離れたところを流れざるを得なくなると、
図5における破線の矢印からわかるように、吸入空気の流路断面が縮小されることになり、吸気抵抗が増大する。その結果、吸入空気量が減少し、機関出力が低下することになる。
【0019】
一方、排気ポート内を流れる排気ガスについても同様なことが言える。即ち、静電気の帯電によりエンジン本体1の電圧が高くなると、排気ポートの内周壁面に沿って流れる正に帯電した排気ガスは、電気的な反発力によって、排気ポートの内周壁面から引き離され、その結果、排気ガスは排気ポート内の内周壁面から離れたところを流れざるを得なくなる。排気ガスが排気ポートの内周壁面から離れたところを流れざるを得なくなると、吸入空気流の場合と同様に、排気ガスの流路断面が縮小されることになり、排気抵抗が増大する。その結果、排圧が高くなり、機関出力が低下することになる。従って、この場合、エンジン本体1の電圧を低下させれば、吸入空気の流路断面および排気ガスの流路断面が増大し、機関出力が向上せしめられることになる。
【0020】
また、動弁機構やピストン作動機構を潤滑するための潤滑オイルは、潤滑オイルに加わる電圧が高くなると粘度が高くなることが知られている。従って、静電気の帯電によりエンジン本体1の電圧が高くなると、潤滑オイルに加わる電圧が高くなり、その結果、潤滑オイルの粘度が高くなる。潤滑オイルの粘度が高くなると、動弁機構やピストン作動機構を作動させるのに余分な動力が使用され、その結果、機関出力が低下することになる。従って、この場合、エンジン本体1の電圧を低下させれば、動弁機構やピストン作動機構を作動させるのに使用される動力が減少し、機関出力が向上せしめられることになる。
【0021】
このようにエンジン本体1の電圧を低下させると、機関出力を向上せしめることができる。そこで、本発明者は、エンジン本体1の電圧を低下させる方法について検討を重ね、その結果、非導電性エンジン部品のエンジン本体への接続部に帯電している電荷を減少させると、エンジン本体1の電圧を低下させ得ることを見出したのである。即ち、エンジン本体1は、車両ボディー又はシャシによりゴム製のエンジンマウントを介して支持されており、エンジン本体1の電圧は非導電性エンジン部品の電圧に応じて上下動する。一方、非導電性エンジン部品のエンジン本体への接続部に帯電している電荷を減少させるとエンジン部品のエンジン本体への接続部の電圧が低下する。エンジン部品のエンジン本体への接続部の電圧が低下すると、エンジン本体1の電圧が低下する。従って、エンジン部品のエンジン本体への接続部に帯電している電荷を減少させると、エンジン本体1の電圧が低下することになる。
【0022】
そこで本発明者は、エンジン部品のエンジン本体への接続部に帯電している電荷を減少させるための簡便な除電方法について検討し、自己放電式除電器を用いた簡便な除電方法を見出したのである。この自己放電式除電器の一例が
図7Aから
図7Cに示されている。なお、
図7Aおよび
図7Bは、代表的な自己放電式除電器10の平面図および側面断面図を夫々示しており、
図7Cは、別の自己放電式除電器10の側面断面図を示している。
【0023】
図7Aおよび
図7Bに示される例では、この自己放電式除電器10は細長い矩形状の平面形状をなすと共に、薄肉壁9の表面上に導電性接着剤12により接着せしめられる金属箔11からなる。一方、
図7Cに示される例では、この自己放電式除電器10は薄肉壁9の表面上に一体的に形成された導電性薄膜からなる。本発明では、この自己放電式除電器10を用いてエンジン本体1を除電するようにしている。なお、このエンジン本体1の除電方法について説明を行う前に、本発明による、自己放電式除電器10を用いた基本的な除電の仕方について、自己放電式除電器10により薄肉壁9の表面を除電する場合を例にとって、先に説明する。
【0024】
図8Aは、
図7Aおよび7Bに示される自己放電式除電器10を薄肉壁9の表面に設置した場合を示している。このように自己放電式除電器10を薄肉壁9の表面に設置すると、
図8Bに示されるように、自己放電式除電器10の設置箇所を中心とした破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の帯電電荷量が低下せしめられ、その結果
図8Bにおいて破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の電圧が低下せしめられることが確認されている。
【0025】
この場合、自己放電式除電器10により薄肉壁9の表面の除電が行われるときの除電メカニズムについては明らかではないが、おそらく自己放電式除電器10からの正の電荷の放電作用によって自己放電式除電器10の設置箇所周りの薄肉壁9の表面の除電作用が行われているものと推測される。次に、
図9Aと、
図9Aに示す自己放電式除電器10の端部の拡大図を示す
図9Bを参照しつつ、薄肉壁9の表面において行われていると推測される除電メカニズムについて説明する。
【0026】
前述したように、薄肉壁9は非導電性の合成樹脂材料から形成されている。このように薄肉壁9が非導電性の合成樹脂材料から形成されていると、薄肉壁9の内部には電荷が帯電せず、薄肉壁9の表面に電荷が帯電する。なお、
図1に示される騒音防止カバー3の表面には正の電荷が帯電することが確かめられている。
図1Aおよび1Bに示される実施例では、エンジン本体1を除電するために騒音防止カバー3のエンジン本体1への接続部の外壁面を除電するようにしており、従って騒音防止カバー3のエンジン本体1への接続部の外壁面を除電する場合を想定して、
図9Aには、薄肉壁9の表面に正の電荷が帯電している場合が示されている。一方、前述したように、自己放電式除電器10は、導電性接着剤12により薄肉壁9の表面に接着された金属箔11からなる。金属箔11および導電性接着剤12は共に導電性であり、従って、金属箔11の内部、即ち自己放電式除電器10の内部には正の電荷が帯電することになる。
【0027】
ところで、自己放電式除電器10の電圧は自己放電式除電器10の周りの薄肉壁9の表面の電圧とほぼ等しくなっており、従って自己放電式除電器10の電圧はかなり高くなっている。一方、前述したように、空気は正に帯電する傾向があり、従って空気の一部は正の空気イオン(丸内に+で表示)となっている。この場合、空気イオンの電位と自己放電式除電器10の電位とを比べると、自己放電式除電器10の電位の方が空気イオンの電位に比べてかなり高くなっている。従って、空気イオンが
図9Bに示されるように、例えば自己放電式除電器10の角部13に近づくと、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間の電界強度が高くなり、その結果、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずることになる。
【0028】
空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずると、
図9Bに示されるように、空気イオンの電子の一部が自己放電式除電器10内に移動するため、空気イオンの正の帯電量が増大し(丸内に++で表示)、自己放電式除電器10内に移動した電子によって自己放電式除電器10に帯電している正の電荷が中和される。一旦、放電が行われると放電が生じやすくなり、別の空気イオンが自己放電式除電器10の角部13に近づくと空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間でただちに放電が生ずることになる。即ち、自己放電式除電器10の周りの空気が移動していると、空気イオンが次から次へと自己放電式除電器10の角部13に近づき、従って空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間で継続的に放電が生ずることになる。
【0029】
空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間で継続的に放電が生ずると、自己放電式除電器10に帯電している正の電荷が次から次へと中和され、その結果自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少する。自己放電式除電器10に帯電している正の電荷量が減少すると、自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面上に帯電している正の電荷が自己放電式除電器10内に移動し、従って自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面上に帯電している正の電荷も減少する。その結果、自己放電式除電器10および自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面の電圧が徐々に低下していくことになる。このような自己放電式除電器10および自己放電式除電器10の周囲の薄肉壁9の表面の電圧の低下作用は、自己放電式除電器10の電圧が低くなって放電作用が停止するまで継続し、その結果、
図8Bに示されるように、自己放電式除電器10の設置箇所を中心とした破線で示す限られた範囲内の薄肉壁9の表面の電圧が低下することになる。
【0030】
一方、前述したように、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13間で放電が生ずると、
図9Bに示される如く、正の帯電量の増大した空気イオン(丸内に++で表示)が生成され、この正の帯電量の増大した空気イオンは周囲の空気中に飛散する。この正の帯電量の増大した空気イオンの量は、自己放電式除電器10の周囲を流動する空気の量に比べれば極めて少量である。なお、自己放電式除電器10の周りの空気が停滞しており、空気イオンが移動しない場合には、継続して放電が生じず、薄肉壁9の表面の電圧は低下しない。即ち、薄肉壁9の表面の電圧を低下させるには、自己放電式除電器10の周りの空気を流動させることが必要となる。
【0031】
空気イオンと自己放電式除電器10間の放電は、空気イオンと自己放電式除電器10の角部13との間、或いは空気イオンと自己放電式除電器10の周辺部の尖端部14との間で生ずる。従って、空気イオンと自己放電式除電器10との間で放電を生じさせ易くずるには、自己放電式除電器10の周辺部に角部13に加え、多数の尖端部14を形成しておくことが好ましいといえる。従って、自己放電式除電器10を作成する際には、大きな寸法の金属箔を切断することによって金属箔11を作成する際に、切断面に尖端部14のようなバリが生ずるように、金属箔を切断することが好ましいことになる。
【0032】
図7Aおよび7Bに示される自己放電式除電器10の金属箔11は、延性金属、例えばアルミニウム又は銅からなり、本発明による実施例では金属箔11はアルミニウム箔からなる。また、本発明による実施例において用いられているアルミニウム箔11の長手方向の長さは50mmから100mm程度であり、厚みは0.05mmから0.2mm程度である。この場合、
図8Bにおいて電圧の低下する破線で示す限られた範囲の直径Dは、150mmから200mm程度となる。なお、自己放電式除電器10として、アルミニウム箔11に導電性接着剤12の層が形成されているアルミニウムテープを切断して用いることもできる。更に、自己放電式除電器10は、
図7Cに示されるように、薄肉壁9の表面上に一体的に形成された導電性薄膜から構成することもできる。この場合でも、導電性薄膜の周辺部には、
図9Bに示されるような角部13に加え、多数の尖端部14を形成しておくことが好ましい。
【0033】
本発明による実施例では、
図1Bに示されるように、騒音防止カバー3のエンジン本体1への接続部の外壁面上、即ち騒音防止カバー3の筒状部6の外壁面上に自己放電式除電器10が設置される。この場合、
図1Bに示される実施例では、自己放電式除電器10が筒状部6の外周方向に延びるように筒状部6の外壁面上に設置される。このように筒状部6の外壁面上に自己放電式除電器10が設置されると、自己放電式除電器10による除電作用によって、自己放電式除電器10を中心とした一定範囲内の帯電電荷が除去されるために、筒状部6の外壁面全体およびゴム製リング7全体が除電される。その結果、筒状部6の外壁面全体およびゴム製リング7全体の電圧が低下する。筒状部6の外壁面全体およびゴム製リング7全体の電圧が低下すると、接続機構4に接続されているシリンダヘッドカバー2およびエンジン本体1の電圧が低下する。その結果、機関出力を向上せしめることができることになる。
【0034】
次に、
図2から
図4を参照しつつ、非導電性エンジン部品のエンジン本体への接続部に帯電している電荷を減少させることによってエンジン本体1の電圧を低下させるようにした他の実施例について説明する。
図2は、エアクリーナを一体形成した非導電性合成樹脂製シリンダヘッドカバーを示している。なお、
図2において、20はエンジン本体1上の取り付けられる非導電性合成樹脂製シリンダヘッドカバー本体を示しており、21はエアフィルタカバーを示しており、22はシリンダヘッドカバー本体20とエアフィルタカバー21との間に保持されるエアフィルタを示している。
【0035】
図2に示されるように、この実施例では、シリンダヘッドカバー本体20のエンジン本体1への接続部の外壁面上に複数個の自己放電式除電器10が設置されている。例えば、シリンダヘッドカバー本体20のエンジン本体1への接続用フランジの外壁面上に自己放電式除電器10が設置される。この実施例では、エアクリーナ全体の電圧は高電圧となるが、自己放電式除電器10によってシリンダヘッドカバー本体20のエンジン本体1への接続部に帯電している電荷が減少せしめる。その結果、シリンダヘッドカバー本体20のエンジン本体1への接続部の電圧が低下し、それにより機関出力を向上せしめることができることになる。
【0036】
図3は、非導電性合成樹脂製吸気マニホルド23を示している。なお、
図3において、24はエンジン本体1への、正確にはシリンダヘッドへの取り付けフランジを示しており、25は取り付けフランジ24と一体形成された吸気枝管を示している。
【0037】
図3に示されるように、この実施例では、非導電性合成樹脂製吸気マニホルド23のエンジン本体1への接続部の外壁面上に複数個の自己放電式除電器10が設置されている。具体的には、各吸気枝管25下流端の外壁面上に自己放電式除電器10が設置される。この実施例でも、吸気マニホルド23全体の電圧は高電圧となるが、自己放電式除電器10によって吸気マニホルド23のエンジン本体1への接続部に帯電している電荷が減少せしめる。その結果、吸気マニホルド23のエンジン本体1への接続部の電圧が低下し、それにより機関出力を向上せしめることができることになる。
【0038】
図4は、動弁機構の一部と非導電性合成樹脂製タイミングベルトカバーとを示している。なお、
図1Aおよび
図4において、26は夫々吸気弁および排気弁を駆動するためのカムシャフトを示しており、27は各カムシャフト26の端部に取り付けられたタイミングプーリを示しており、28はタイミングベルトを示しており、29はタイミングプーリ27を覆うための非導電性合成樹脂製タイミングベルトカバーを示している。
【0039】
図4に示されるように、この実施例では、非導電性合成樹脂製タイミングベルトカバー29のエンジン本体1への、正確にはシリンダヘッドへの接続部の外壁面上に複数個の自己放電式除電器10が設置されている。例えば、タイミングベルトカバー29のエンジン本体1への接続用フランジの外壁面上に自己放電式除電器10が設置される。この実施例でも、タイミングベルトカバー29全体の電圧は高電圧となるが、自己放電式除電器10によってタイミングベルトカバー29のエンジン本体1への接続部に帯電している電荷が減少せしめる。その結果、タイミングベルトカバー29のエンジン本体1への接続部の電圧が低下し、それにより機関出力を向上せしめることができることになる。
【0040】
このように本発明では、自己放電式除電器10を、非導電性エンジン部品のエンジン本体1への接続部の外壁面上に設置することによってエンジン本体1を除電し、エンジン本体1の電圧を低下させることができる。即ち、本発明によれば、非導電性材料から形成されかつエンジン本体1に取り付けられるエンジン部品を具備しており、エンジン本体1およびエンジン部品に正の電荷が帯電するエンジンにおいて、非導電性エンジン部品上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性エンジン部品の壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器10を備えており、自己放電式除電器10をエンジン部品のエンジン本体1への接続部の外壁面上に設置し、それによりエンジン本体1を除電するようにしている。
【0041】
この場合、
図1Aおよび1Bに示される実施例では、このエンジン部品がエンジンのシリンダヘッドカバー2を覆う騒音防止カバー3からなり、自己放電式除電器10が騒音防止カバー3のシリンダヘッドカバー2への接続部の外壁面上に設置されている。なお、この場合、
図1Bに示されるように、エンジンのシリンダヘッドカバー2上に突起5が形成されており、騒音防止カバー3のシリンダヘッドカバー2への接続部が、騒音防止カバー3の裏面上に一体形成されかつ突起5と係合可能な筒状部6からなり、筒状部6の外壁面上に自己放電式除電器10が設置される。
【0042】
一方、
図2から
図4に示される実施例では、エンジン部品が、エンジン本体1の一部を構成する非導電性のエンジン構成部材からなり、自己放電式除電器10をエンジン構成部材のエンジン本体1への接続部の外壁面上に設置している。この場合、
図2に示される実施例では、このエンジン構成部材が合成樹脂製シリンダヘッドカバーからなり、
図3に示される実施例では、このエンジン構成部材が合成樹脂製吸気マニホルド23からなり、
図4に示される実施例では、このエンジン構成部材が合成樹脂製タイミングベルトカバー29からなる。
【0043】
なお、本発明では、非導電性エンジン部品のエンジン本体1への接続部の外壁面上であって自己放電式除電器10を設置するとエンジン本体1を良好に除電することのできる自己放電式除電器10の設置位置が予め実験により求められ、自己放電式除電器10は予め実験により求められた設置位置に設置される。このように自己放電式除電器10を予め実験により求められた設置位置に設置することによって、自己放電式除電器10によりエンジン本体1を良好に除電することができる。
【0044】
即ち、本発明によれば、エンジン本体1およびエンジン本体1に取り付けられた非導電性のエンジン部品に正の電荷が帯電するエンジンの製造方法において、非導電性エンジン部品上に設置すると設置箇所を中心とした限られた範囲内の非導電性エンジン部品の壁面上の帯電電荷量を低下させることのできる自己放電式除電器10を用い、エンジン部品のエンジン本体1への接続部の外壁面上であって自己放電式除電器10を設置するとエンジン本体1を除電することのできる自己放電式除電器10の設置位置を求め、自己放電式除電器10をこの求められた設置位置に設置するようにしている。
【0045】
この場合でも、
図1Aおよび1Bに示される実施例では、このエンジン部品はエンジンのシリンダヘッドカバー2を覆う騒音防止カバー3からなり、
図2から
図4に示される実施例では、このエンジン部品は、エンジン本体1の一部を構成する非導電性のエンジン構成部材からなる。この場合、同様に、
図2に示される実施例では、このエンジン構成部材が合成樹脂製シリンダヘッドカバーからなり、
図3に示される実施例では、このエンジン構成部材が合成樹脂製吸気マニホルド23からなり、
図4に示される実施例では、このエンジン構成部材が合成樹脂製タイミングベルトカバー29からなる。