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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-125611(P2016-125611A)
(43)【公開日】2016年7月11日
(54)【発明の名称】電磁連結装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/112 20060101AFI20160613BHJP
   F16D 55/28 20060101ALI20160613BHJP
   F16D 65/12 20060101ALI20160613BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20160613BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20160613BHJP
【FI】
   F16D27/10 341
   F16D55/28 B
   F16D65/12 Z
   F16D65/16
   F16D121:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-843(P2015-843)
(22)【出願日】2015年1月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪野 啓太
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA57
3J058AA69
3J058AA79
3J058AA88
3J058BA41
3J058BA46
3J058CB22
3J058CC07
3J058CC72
3J058CC77
3J058FA42
(57)【要約】
【課題】摩擦板の慣性モーメントを抑制でき、摩擦板の摩耗を抑制できるようにする。
【解決手段】電磁連結装置20は、磁極体30と、アーマチュア50と、摩擦板70と、を備える。摩擦板70は、励磁コイル33の励磁の状態によってアーマチュア50を押圧する摩擦面71fを、軸方向Z(基準軸線方向)端面に有する。摩擦板70には、凹部80が設けられる。凹部80は、軸方向Zに直交する方向において摩擦板70の外側面を構成する摩擦板側面71sから、軸方向Zに直交する方向に凹む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークに励磁コイルを有する磁極体と、前記磁極体の基準軸線方向に摺動可能であって前記磁極体と共に磁気回路を形成するアーマチュアと、前記励磁コイルの励磁の状態によって前記アーマチュアを押圧する摩擦面を前記基準軸線方向端面に有する摩擦板と、を備え、
前記摩擦板には、前記基準軸線方向に直交する方向において前記摩擦板の外側面を構成する摩擦板側面から、前記基準軸線方向に直交する方向に凹む凹部が設けられることを特徴とする電磁連結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁連結装置であって、
前記摩擦板には、複数の直線部を有する多角形状からなる嵌合孔が前記基準軸線上に設けられ、
前記凹部は、前記直線部と前記摩擦板側面との間の領域内に配置される、電磁連結装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁連結装置であって、
前記凹部は、円柱状部を有する穴である、
電磁連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1および2に、従来の電磁連結装置が記載されている。
【0003】
[従来技術1]特許文献1には、電磁連結装置の一例である無励磁作動側ブレーキが記載されている(同文献の図1図2などを参照)。同文献の段落[0018]には、次の記載がある(なお、同文献に記載の符号には括弧を付した。他の文献についても同様)。「この無励磁作動形ブレーキ(X)は、・・・励磁コイル(12)を有する磁極体(1)と、・・・磁極体(1)と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア(3)と、・・・プレート(5)と、アーマチュア(3)とプレート(5)との間に配される摩擦板(6)とを備えたものである」。この電磁連結装置では、励磁コイル(12)の励磁の状態に応じて、アーマチュア(3)またはプレート(5)に摩擦板(6)が連結された状態と、アーマチュア(3)またはプレート(5)に摩擦板(6)が連結されない状態とに切り換わる。具体的には、同文献には次の記載がある。段落[0026]:「励磁コイル(12)が励磁されていない無励磁状態である場合・・・摩擦板(6)の第2摩擦面(6Sb)とプレート(5)のプレート摩擦面(5S)も相互に押圧し、その結果、ハブ(H)を介して被制動軸(2)に制動力が作用する」。段落[0027]:「一方、励磁コイル(12)が励磁状態である場合、・・・アーマチュア(3)は摩擦板(6)から離間し、・・・被制動軸(2)に対する制動力は働かない。」
【0004】
[従来技術2]特許文献2の段落[0022]には、「摩擦板芯材(41)の厚み方向に貫通する複数の孔(43)」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開第2010−255842号公報
【特許文献2】特開第2012−67883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記[従来技術1]には、摩擦板(6)の慣性モーメントが大きい(上記[従来技術2]の孔(43)を有する摩擦板と比べて大きい)という問題がある。そのため、摩擦板(6)の被制動軸(2)(シャフト)への取り付け部(嵌合孔)が摩耗しやすいおそれがある。特に、アーマチュア(3)またはプレート(5)と、摩擦板(6)と、が連結されていない状態のとき(被制動軸(2)が空転するとき、正逆転運転時)に嵌合孔が摩耗しやすい。
【0007】
上記[従来技術2]では、摩擦板(4)に孔(43)が形成されている。そのため、上記[従来技術1]に比べ、摩擦板(4)の質量が低減され、摩擦板(4)の慣性モーメントは低減される。しかし、孔(43)があることにより、摩擦板(4)の摩擦面が減少する。さらに詳しくは、プレート(3)またはアーマチュア(2)と、摩擦板(4)と、の接触面が減少する。そのため、摩擦板(4)に生じる応力が増え、摩擦板(4)に過度の応力がかかるおそれがある。また、孔(43)の部分で局所的に応力が集中し、この部分に過度の応力がかかるおそれがある。そのため、摩擦板(4)の摩擦面が摩耗しやすいおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、摩擦板の慣性モーメントを抑制でき、摩擦板の摩耗を抑制できる、電磁連結装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明の電磁連結装置は次のように構成される。電磁連結装置は、ヨークに励磁コイルを有する磁極体と、アーマチュアと、摩擦板と、を備える。前記アーマチュアは、前記磁極体の基準軸線方向に摺動可能であって前記磁極体と共に磁気回路を形成する。前記摩擦板は、前記励磁コイルの励磁の状態によって前記アーマチュアを押圧する摩擦面を前記基準軸線方向端面に有する。前記摩擦板には、前記基準軸線方向に直交する方向において前記摩擦板の外側面を構成する摩擦板側面から、前記基準軸線方向に直交する方向に凹む凹部が設けられる。
【0010】
この第1の発明では、摩擦板には、基準軸線方向に直交する方向において摩擦板の外側面を構成する摩擦板側面から、基準軸線方向に直交する方向に凹む凹部が設けられる。よって、摩擦板の慣性モーメントを減らすために、摩擦面に凹部を設ける必要がない。よって、慣性モーメントを減らすために、摩擦面の面積を減らす必要がない。よって、摩擦板の摩擦面の摩耗を抑制できる。
この第1の発明では、凹部は、摩擦板側面に設けられる。ここで、摩擦板の中心軸から遠い部分で質量を減らす方が、摩擦板の中心軸に近い部分で質量を減らすよりも、摩擦板の慣性モーメントをより減らせる。上記のように凹部は摩擦板側面に設けられるので、摩擦板側面に凹部が設けられない場合に比べ、摩擦板の慣性モーメントを減らしやすい。
したがって、第1の発明により、摩擦板の慣性モーメントを抑制でき、摩擦板の摩耗を抑制できる。
【0011】
この電磁連結装置は次のように構成されることが好ましい。
第2の発明の電磁連結装置は次のように構成される。前記摩擦板には、複数の直線部を有する多角形状からなる嵌合孔が前記基準軸線上に設けられる。前記凹部は、前記直線部と前記摩擦板側面との間の領域内に配置される。
この第2の発明では、凹部は、直線部と摩擦板側面との間の領域内に配置される。よって、多角形状の嵌合孔の角部と摩擦板側面との間の領域内に凹部が配置される場合に比べ、凹部と嵌合孔との間隔を確保しやすい。よって、摩擦板の強度を確保しやすい。
【0012】
第3の発明の電磁連結装置は次のように構成される。前記凹部は、円柱状部を有する穴である。
この第3の発明では、凹部が円柱状部を有さない場合に比べ、摩擦板に凹部を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電磁連結装置20の断面図である。
図2図1に示す摩擦板70を軸方向Zから見た図である。
図3図2に示す摩擦板70を径方向Rから見た図である。
図4図2に示す円錐状底部83−1を平面状底部83−2に代えた場合の図2相当図である。
図5】変形例1の図2相当図である。
図6】変形例2の図2相当図である。
図7】変形例3の図2相当図である。
図8】変形例4の図2相当図である。
図9】変形例4の図3相当図である。
図10】変形例5の図2相当図である。
図11】変形例6の図2相当図である。
図12】変形例7の図2相当図である。
図13】変形例8の図2相当図である。
図14図13に示すF14矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3を参照して、図1に示す本発明の実施形態の電磁連結装置20、および電磁連結装置20に取り付けられるシャフト10について説明する。
【0015】
シャフト10は、中心軸10aを回転中心として回転可能な回転軸である。シャフト10は、シャフト本体11と、ハブ15と、を備える。なお、図1では、中心軸10aに対して対称である部分について、中心軸10aに対する一方側に符号を付し、他方側の符号を省略している場合がある。
【0016】
シャフト本体11は、中心軸10aに沿って延びる棒状の部材である。
【0017】
ハブ15は、シャフト本体11と摩擦板70(下記)とを連結する。ハブ15は、シャフト本体11から径方向R外側に突出する。ハブ15は、シャフト本体11に固定される。ハブ15は、シャフト本体11に対して中心軸10a回りに回転不可能である。
【0018】
電磁連結装置20は、電磁力を用いた、クラッチ(電磁クラッチ)またはブレーキ(電磁ブレーキ)である。電磁連結装置20が電磁ブレーキの場合、シャフト10は、被制動軸である。電磁連結装置20が電磁クラッチの場合、シャフト10は、入力軸または出力軸である。電磁連結装置20は、例えばモータ(例えばサーボモータ)に、搭載または連結される。電磁連結装置20がモータに搭載または連結される場合、シャフト10はモータの出力軸である、または、シャフト10はモータの出力軸に連結される。電磁連結装置20は、無励磁作動型(非励磁作動型)、または、励磁作動型である(詳細は下記)。以下では、主に電磁連結装置20が無励磁作動型の場合について説明する。電磁連結装置20は、例えば無励磁作動型電磁ブレーキであり、例えば超小型無励磁作動型電磁ブレーキなどである。電磁連結装置20は、磁極体30と、プレート40と、アーマチュア50と、締結部材55と、付勢部材60と、摩擦板70と、を備える。
【0019】
磁極体30は、磁極を形成する部材(電磁石、フィールドコア)である。磁極体30は、シャフト10よりも径方向R(下記)外側に配置される。磁極体30に差し込まれたシャフト10の中心軸10aの軸線を、磁極体30の「基準軸線」とする。磁極体30は、シャフト10に直接には固定されない(磁極体30に対してシャフト10が中心軸10a回りに回転可能である)。磁極体30は、図示しないフレームなどに固定される。磁極体30は、ヨーク31と、励磁コイル33と、を備える。
【0020】
(方向)
このシャフト10および電磁連結装置20に関する方向には、軸方向Z(基準軸線方向)と、径方向Rと、周方向と、がある。軸方向Zは、磁極体30の基準軸線と平行な方向であり、中心軸10aと平行な方向である。軸方向Zにおいて、アーマチュア50(下記)から磁極体30(下記)に向かう側(向き)を軸方向Z1側とする。軸方向Zにおいて、軸方向Z1側とは逆側(向き)を軸方向Z2側とする。径方向Rは、中心軸10aに直交する平面上の円α(仮想的な円、図示なし)であって中心軸10aを中心とする円αの半径方向である。径方向Rにおいて、中心軸10aに近づく側(向き)を径方向R内側とする。径方向Rにおいて、中心軸10aから遠ざかる側(向き)を径方向R外側とする。周方向は、上記の円αの円周に沿う方向である。
【0021】
ヨーク31は、磁気回路を形成する。ヨーク31は、磁性体により構成される。ヨーク31は、略リング状である。ヨーク31は、シャフト用孔31aと、締結部材用ネジ穴31bと、励磁コイル用凹部31cと、付勢部材用凹部31dと、を備える。
【0022】
シャフト用孔31aは、シャフト10が通される孔(挿通孔)である。シャフト用孔31aは、シャフト10に接触しない(シャフト10との間に間隔があけられる)(下記のシャフト用孔40aおよびシャフト用孔50aについても同様)。シャフト用孔31aは、ヨーク31(の本体部)を軸方向Zに貫通する。
【0023】
締結部材用ネジ穴31bは、締結部材55(下記)が取り付けられる穴である。締結部材用ネジ穴31bは、締結部材55が螺着されるネジ穴である。締結部材用ネジ穴31bは、ヨーク31の軸方向Z2側の端面から軸方向Z1側に凹む(励磁コイル用凹部31cおよび付勢部材用凹部31dについても同様)。
励磁コイル用凹部31cは、内部に励磁コイル33が配置される部分である。
付勢部材用凹部31dは、内部に付勢部材60(の一部)が配置される部分である。
【0024】
励磁コイル33は、電流が供給されることで磁力を発生させる。励磁コイル33は、励磁状態(励磁した状態)と、無励磁状態(励磁していない状態)と、になることが可能である。励磁コイル33は、ヨーク31に設けられ、励磁コイル用凹部31cの内部に配置(収容)される。
【0025】
プレート40は、摩擦板70に接触可能な板である。プレート40は、シャフト10よりも径方向R外側に配置される。プレート40は、シャフト10に直接には固定されない。プレート40は、磁極体30よりも軸方向Z2側に配置される。プレート40は、磁極体30と軸方向Zに対向する(対向しなくてもよい、径方向Rの内側や外側にずれてもよい)。プレート40は、磁極体30との間に軸方向Zに間隔をあけて配置される。プレート40は、磁極体30に固定される(固定されなくてもよい)。例えば、プレート40は、締結部材55(下記)により磁極体30に固定される。なお、電磁連結装置20が電磁クラッチの場合、プレート40は磁極体30に固定されず、プレート40はシャフト10とは別の回転軸(図示なし)に固定される。プレート40は、板状であり、リング状である。プレート40は、シャフト用孔40aと、締結部材用孔40bと、を備える。
【0026】
シャフト用孔40aは、シャフト10が通される孔である(シャフト用孔31aと同様)。シャフト用孔40aは、プレート40(の本体部)を軸方向Zに貫通する。
締結部材用孔40bは、締結部材55が通される孔である。締結部材用孔40bは、プレート40(の本体部)を軸方向Zに貫通する。
【0027】
アーマチュア50は、磁極体30に対して軸方向Zに摺動可能である。アーマチュア50は、励磁コイル33の励磁の状態(励磁状態か、無励磁状態か)に応じて、軸方向Zに移動可能である。アーマチュア50は、磁極体30と共に磁気回路を形成可能である。アーマチュア50は、シャフト10よりも径方向R外側に配置される。アーマチュア50は、シャフト10に直接には固定されない。アーマチュア50は、磁極体30よりも軸方向Z2側に配置される。アーマチュア50は、磁極体30とプレート40との間(軸方向Zにおける間)に配置される。アーマチュア50は、磁極体30(励磁コイル33)と軸方向Zに対向する。アーマチュア50は、例えばプレート40と軸方向Zに対向する(対向しなくてもよい)。アーマチュア50は、板状であり、リング状である。アーマチュア50は、シャフト用孔50aと、締結部材配置部50bと、を備える。
【0028】
シャフト用孔50aは、シャフト10が通される孔である(シャフト用孔31aと同様)。シャフト用孔50aは、アーマチュア50(の本体部)を軸方向Zに貫通する。
締結部材配置部50bは、内部に締結部材55が配置される部分である。締結部材配置部50bは、締結部材55が通る孔である。孔である締結部材配置部50bは、アーマチュア50(の本体部)を軸方向Zに貫通する。なお、締結部材配置部50bは、溝でもよい。締結部材配置部50bは、アーマチュア50の側面(径方向R外側の端面)から径方向R内側に凹む溝(例えばU字状溝)でもよい。
【0029】
締結部材55は、磁極体30に対してプレート40を固定するための部材である。締結部材55は、例えばボルト55bと、ナット55nと、を備える。ボルト55bは、軸方向Zに沿って配置される。ボルト55bの軸部は、締結部材用孔40bおよび締結部材配置部50bに通される。ボルト55bは、締結部材配置部50bに通されることにより、中心軸10a回りのアーマチュア50の回転を規制する。ボルト55bの先端側部分(軸方向Z1側部分)は、磁極体30(ヨーク31、締結部材用ネジ穴31b)に固定(螺着)される。ボルト55bの頭部(軸方向Z2側部分)は、プレート40よりも軸方向Z2側に配置される。ナット55nは、ボルト55bの軸部に固定(螺着)される。ナット55nは、プレート40よりも軸方向Z1側に配置される。ナット55nとボルト55bの頭部とは、プレート40を軸方向Zに挟む。
【0030】
なお、ボルト55bと同様に配置されるピンが設けられてもよい。このピンは、磁極体30とプレート40とを連結するように配置される。このピンは、アーマチュア50を軸方向Zに移動可能とし、かつ、アーマチュア50の中心軸10a回りの回転を規制する。このピンの軸方向Z1側端部は、ヨーク31に固定(例えば圧入により固定)される。このピンが設けられる場合、アーマチュア50は、ピンが通されるピン配置部(図示なし)を備えてもよい。このピン配置部は、締結部材55が通される締結部材配置部50bと同様に構成される。
【0031】
付勢部材60は、電磁連結装置20が無励磁作動型の場合、アーマチュア50と摩擦板70とが互いに押圧されるように、付勢する。なお、電磁連結装置20が励磁作動型の場合、付勢部材60は、アーマチュア50と摩擦板70とが互いに押圧されない側(例えば互いに離れる側)に、付勢する。例えば、付勢部材60は、アーマチュア50を軸方向Z2側に付勢する。付勢部材60は、アーマチュア50を介して、摩擦板70を軸方向Z2側に付勢する。付勢部材60の軸方向Z2側端部は、アーマチュア50(の軸方向Z1側の面)に接触する。付勢部材60の軸方向Z1側端部は、磁極体30(ヨーク31)に取り付けられる。付勢部材60の軸方向Z1側端部は、付勢部材用凹部31dの内部に配置(収容)される。付勢部材60の付勢力は、例えばバネ力である。付勢部材60の付勢力は、例えば磁力など(例えば永久磁石による磁力など)でもよい。
【0032】
摩擦板70は、シャフト10と一体的に回転する(回転可能である)。摩擦板70は、中心軸10a回りに回転する。摩擦板70は、シャフト10に(ハブ15に)固定される。摩擦板70は、シャフト10に対して軸方向Zに移動不可能でも、移動可能でもよい。例えば、摩擦板70は、アーマチュア50とプレート40とに、軸方向Zに挟まれる。摩擦板70は、プレート40と軸方向Zに対向する。摩擦板70は、アーマチュア50と軸方向Zに対向する。摩擦板70は、アーマチュア50よりも軸方向Z2側に配置される。摩擦板70は、プレート40よりも軸方向Z1側に配置される。摩擦板70は、例えば磁極体30と軸方向Zに対向する(対向しなくてもよい)。摩擦板70は、シャフト10よりも径方向R外側に配置される。摩擦板70は、シャフト10と同軸に配置される。摩擦板70の中心軸は、中心軸10aと一致する。摩擦板70は、板状であり、リング状である。図2に示すように、摩擦板70は、摩擦板本体71と、嵌合孔73と、凹部80と、を備える。
【0033】
摩擦板本体71は、板状であり、リング状である。摩擦板70は、例えば、芯材と、硬化層と、を備える。芯材の材料は、金属であり、例えば非磁性の鋼材であり、例えばステンレス鋼であり、例えばオーステナイト系ステンレス鋼であり、例えばSUS304またはSUS303などである。硬化層は、芯材の表面(下記の摩擦面71fに対応する面)を硬化処理することによって形成される。上記硬化処理は、例えば窒化処理であり、例えば塩浴窒化処理やガス軟窒化処理などである。摩擦板本体71は、摩擦面71fと、摩擦板側面71sと、を備える。
【0034】
摩擦面71fは、図1に示すように、アーマチュア50およびプレート40に接触することが可能な面である。摩擦面71fは、アーマチュア50およびプレート40に接触することで摩擦力(動摩擦力、または、静摩擦力)が生じる面である。摩擦面71fは、軸方向Zに直交する。摩擦面71fには、プレート側摩擦面71f−aと、アーマチュア側摩擦面71f−bと、がある。プレート側摩擦面71f−aは、励磁コイル33の励磁の状態によって(に応じて)プレート40を押圧することが可能である。プレート側摩擦面71f−aは、摩擦板本体71(図2参照)の軸方向Z2側の端面である。アーマチュア側摩擦面71f−bは、励磁コイル33の励磁の状態によって(に応じて)アーマチュア50を押圧することが可能である。アーマチュア側摩擦面71f−bは、摩擦板本体71(図2参照)の軸方向Z1側の端面である。
【0035】
摩擦板側面71sは、図2に示す摩擦板70の(摩擦板本体71の)外周部を構成する。摩擦板側面71sは、軸方向Zに直交する方向において摩擦板70の外側面(中心軸10aから遠い側の面)を構成する。摩擦板側面71sは、摩擦板70の径方向R外側の端面である。軸方向Zから見たとき、摩擦板側面71sは、例えば円形状である(略円形状や多角形状などでもよい)。摩擦板側面71sは、摩擦面71fではない(図1に示すプレート40に接触しない、アーマチュア50に接触しない)。
【0036】
嵌合孔73(摩擦板開口部、軸孔、例えば内角部)には、図1に示すように、シャフト10が嵌め合わされる。シャフト10に対して摩擦板70が中心軸10a回りに回転不可能となるように、嵌合孔73にシャフト10が嵌め合わされる。嵌合孔73には、シャフト10が(ハブ15が)通される。嵌合孔73は、磁極体30の基準軸線上に設けられる。嵌合孔73は、摩擦板70(摩擦板本体71)を軸方向Zに貫通する。図2に示すように、軸方向Zから見たとき、嵌合孔73は、摩擦板本体71の中央部に配置される。軸方向Zから見たとき、嵌合孔73は、多角形状からなる。軸方向Zから見た嵌合孔73は、スプライン形状などでもよい(以下では多角形状からなる場合について説明する)。軸方向Zから見た嵌合孔73は、例えば四角形状(略四角形状を含む)である。軸方向Zから見た嵌合孔73は、例えば角の数が3または5以上の多角形状(略多角形状を含む)でもよい。この多角形状の図心は、中心軸10aと一致する。この多角形状は、中心軸10aに対して対称である。この多角形状は、中心軸10aを中心として回転対称(例えば点対称)である。軸方向Zから見た嵌合孔73(の内面、径方向R内側の端面)は、直線部73aと、角部73bと、を備える。
【0037】
直線部73aは、上記の多角形状を形成する直線部分である。直線部73aは、軸方向Zから見たとき、直線状に延びる部分である。直線部73aは複数設けられ、上記多角形状が四角形状の場合、直線部73aは4本設けられる。
【0038】
角部73bは、直線部73aどうしをつなぐ部分である。角部73bは、直線部73aと同じ数(例えば4)設けられる。角部73bは、軸方向Zから見たとき、直線部73aどうしをつなぐように曲がった曲線状である。軸方向Zから見た角部73bは、曲線状でなくてもよく、例えば点(直線部73aどうしの交点)でもよい。
【0039】
凹部80は、摩擦板70の慣性モーメントJを減らすために形成される。凹部80は、摩擦板側面71sから、軸方向Zに直交する方向に凹む部分である。凹部80は、摩擦板側面71sから、径方向R内側に凹む。凹部80は、摩擦面71fと平行に凹む(図3参照)。凹部80は、嵌合孔73に向かって凹む。凹部80は、中心軸10aに向かって凹む。凹部80の数は、図2に示す例では2であり、1でもよく(下記の変形例8参照)、3以上でもよい(下記の変形例2などを参照)。凹部80は、穴であり、溝でもよい(下記の変形例4などを参照)。凹部80は、円柱状部81と、底部83と、を備える。
【0040】
円柱状部81は、摩擦板本体71から円柱状部分を取り除くことで形成される部分(円柱状の穴の部分)である。円柱状部81は、ドリルを用いた穴あけ加工により形成される。円柱状部81は、直線状に延びる。円柱状部81は、径方向R(略径方向Rでもよい)に延びる。円柱状部81は、径方向Rから見たとき、円形状である。なお、凹部80は、径方向Rから見たとき、多角形(例えば四角形、例えば台形など)などでもよい。
【0041】
底部83は、凹部80の径方向R内側の端部である。底部83の形状は、ドリルの先端の形状(例えば先端角など)に応じたものである。例えば、底部83は、円錐状底部83−1である。円錐状底部83−1は、摩擦板本体71から円錐状部分を取り除くことで形成される形状の底部83である。図4に示すように、底部83は、平面状底部83−2でもよい。平面状底部83−2は、平面状(または略平面状)の底部83である。ドリルの先端角が大きくなるほど、図2に示す円錐状底部83−1の形状から図4に示す平面状底部83−2の形状に近づく。
【0042】
(凹部80の配置および寸法)
図2に示すように、摩擦板70の重心が中心軸10a上に配置されるように、凹部80が配置される。凹部80は、中心軸10aに対して対称に配置される。軸方向Zから見たとき、凹部80は、中心軸10aを中心として回転対称(例えば点対称)である。凹部80が複数設けられる場合、複数の凹部80は、等分に(周方向に等間隔に)配置される。
【0043】
(凹部80の深さ)
この凹部80の深さ(径方向Rの幅)は、摩擦板70の強度を確保できるように設定される。凹部80の深さの詳細は、例えば次の通りである。以下では、1つの凹部80について説明する。凹部80の深さとは、凹部80の最も径方向R外側の位置(摩擦板側面71sの位置)から、凹部80の最も径方向内側の位置(底)までの、径方向Rにおける距離である。凹部80の深さが最も深い位置を、最大深さ位置80aとする。例えば、最大深さ位置80aは、円錐状底部83−1の径方向R内側端部(先端部)などである。凹部80の深さに関する径方向Rの寸法には、距離L11と、深さL12と、肉厚L13と、がある。距離L11は、最大深さ位置80aを通る径方向Rにおける、摩擦板側面71sから嵌合孔73(の内面)までの距離である。深さL12は、最大深さ位置80aを通る径方向Rにおける、凹部80の深さである。肉厚L13は、最大深さ位置80aを通る径方向Rにおける、最大深さ位置80aから嵌合孔73までの長さ(厚さ)である。なお、距離L11=深さL12+肉厚L13、を満たす。このとき、深さL12は、距離L11の、例えば2/3以下である。肉厚L13は、0を越える(凹部80は嵌合孔73に貫通しない)。肉厚L13は、距離L11の1/3を超える(距離L11の約33%を超える肉厚が確保される)。なお、深さL12および肉厚L13に関する上記の数値は一例である。上記の数値は、必要な摩擦板70の強度に応じて、適宜変更されてもよい。
【0044】
(直線部73aに対する凹部80の位置)
この凹部80は、肉厚L13を確保しやすいように配置されることが好ましい。凹部80は、摩擦板側面71sから嵌合孔73までの径方向Rにおける距離が長い部分に配置される。凹部80は、角部73bを避けるように配置される。凹部80は、直線部73aの近傍に配置される。凹部80の少なくとも一部は、領域A1(下記)内に配置される。好ましくは、凹部80の全体が、領域A1内に配置される。軸方向Zから見たとき、凹部80(の少なくとも一部)は、最大肉厚領域A2(下記)と重なる位置に配置される。好ましくは、最大深さ位置80aは、最大肉厚領域A2と重なる位置に配置される。
【0045】
領域A1は、直線部73aと摩擦板側面71sとの間の領域である。さらに詳しくは、領域A1は、軸方向Zから見たとき、直線部73aに直交する方向(例えば径方向R)における、直線部73aと摩擦板側面71sとの間の領域である。
最大肉厚領域A2は、次の条件を満たす領域である。最大肉厚領域A2は、領域A1内の領域である。さらに、最大肉厚領域A2は、軸方向Zから見たとき、直線部73aと直交する方向における、摩擦板側面71sと嵌合孔73との距離が、最も大きい領域(線分状の部分)である。
【0046】
(軸方向Z(板幅方向)における凹部80の幅)
図3に示すように、軸方向Zにおける凹部80の幅L22(下記)は、摩擦板本体71の強度を確保できるように設定される。凹部80は、摩擦面71fを貫通しない。凹部80は、摩擦板本体71の板幅(軸方向Zの幅)の内側に配置される。凹部80の幅などに関する、軸方向Zの寸法には、板厚L21と、幅L22と、肉厚L23と、肉厚L24と、がある。板厚L21は、摩擦板本体71の板厚(軸方向Zの幅)である。幅L22は、凹部80の幅(軸方向Zの幅、最大幅)である。例えば、幅L22は、径方向Rから見た円柱状部81の直径である。肉厚L23および肉厚L24それぞれは、摩擦面71fと凹部80との肉厚(軸方向Zの距離、最小の肉厚)である。なお、板厚L21=幅L22+肉厚L23+肉厚L24、を満たす。このとき、幅L22は、板厚L21の、例えば1/2未満である。肉厚L23および肉厚L24それぞれは、0を超える(凹部80は、摩擦面71fに貫通しない)。肉厚L23および肉厚L24それぞれは、板厚L21の、例えば1/4未満である。なお、幅L22、肉厚L23、および肉厚L24に関する上記の数値は一例である。上記の数値は、必要な摩擦板70の強度に応じて、適宜変更されてもよい。また、摩擦板本体71の軸方向Z両端面(2面)のうち、一方の面のみに摩擦面71fが設けられる場合は、他方の面に凹部80が貫通してもよい。
【0047】
(作動)
図1に示す無励磁作動型の電磁連結装置20は、次のように作動する。励磁コイル33が無励磁状態(および弱い励磁状態(下記))のときに電磁連結装置20が連結状態になり、励磁コイル33が励磁状態(弱い励磁状態を除く)のときに電磁連結装置20が非連結状態になる。電磁連結装置20の作動の詳細は次の通りである。
【0048】
(励磁コイル33が無励磁状態のとき)
[作動a1]励磁コイル33が無励磁状態のとき、アーマチュア50には、軸方向Z1側への(磁極体30側への)磁気による吸引力が作用しない。[作動a2]付勢部材60は、アーマチュア50を軸方向Z2側に付勢する。[作動a3]上記[作動a1]および[作動a2]により、プレート40と摩擦板70とが互いに押圧された状態になると共に、アーマチュア50と摩擦板70とが互いに押圧された状態になる(押圧状態になる)。この作動の詳細は例えば次の通りである。[作動a3−1]上記[作動a2]により、アーマチュア50は、摩擦板70を軸方向Z2側に付勢する。[作動a3−2]その結果、摩擦板70は、プレート40を軸方向Z2側に付勢する。[作動a3−3]その結果、摩擦板70は、アーマチュア50とプレート40とにより軸方向Zに挟まれ、軸方向Zに圧縮される。[作動a4]上記[作動a3]により、摩擦板70の摩擦面71fに摩擦力が発生する。その結果、摩擦板70に、動摩擦トルクまたは静摩擦トルクが働く。[作動a5]上記[作動a4]の結果、摩擦板70を介して、プレート40およびアーマチュア50と、シャフト10(ハブ15)と、が連結される(連結状態になる)。具体的には、電磁連結装置20がブレーキの場合、プレート40およびアーマチュア50に対してシャフト10が制動される、または、プレート40およびアーマチュア50に対してシャフト10の回転が停止する。電磁連結装置20がクラッチの場合、プレート40およびアーマチュア50と、シャフト10と、の間で動力が伝達される。
【0049】
(励磁コイル33が励磁状態のとき)
励磁コイル33が無励磁状態から励磁状態になったときの電磁連結装置20の作動は次の通りである。[作動b1]励磁コイル33が励磁状態のとき、アーマチュア50には、軸方向Z1側への(磁極体30側への)磁気による吸引力が作用する。[作動b2]上記[作動b1]の吸引力が、付勢部材60の軸方向Z2側への付勢力よりも大きい場合は、アーマチュア50は軸方向Z1側に移動する。[作動b3]上記[作動b2]の結果、プレート40もアーマチュア50も摩擦板70を押圧しない(または、ほとんど押圧しない)状態になる(非押圧状態になる)。この作動の詳細は次の通りである。[作動b3−1]上記[作動b2]により、アーマチュア50は、摩擦板70から軸方向Z1側に離れる。[作動b3−2]その結果、摩擦板70とプレート40とは、軸方向Zに互いに離れた状態になる。または、摩擦板70とプレート40との間で摩擦力がほとんど生じることなく、摩擦板70に対してプレート40が摺動可能となる。[作動b4]上記[作動b3]の結果、プレート40およびアーマチュア50と、シャフト10と、が非連結状態(トルクが伝わらない状態)となる。その結果、プレート40およびアーマチュア50に対してシャフト10が回転自在(正逆回転可能な状態)となる。具体的には、電磁連結装置20がブレーキの場合、シャフト10が制動されない。電磁連結装置20がクラッチの場合、プレート40およびアーマチュア50と、シャフト10と、の間で動力が伝達されない。
【0050】
なお、上記[作動b2]において、上記[作動b1]の吸引力が、付勢部材60の付勢力を超えない場合は、励磁コイル33が励磁状態(弱い励磁状態)であっても、電磁連結装置20は連結状態となる。
【0051】
(摩擦板70の慣性モーメントJの低減について)
図2に示すように、摩擦板70に凹部80を設けることにより、摩擦板70が軽量化され、摩擦板70の慣性モーメントJが減る。さらに詳しくは、慣性モーメントJは、下記の(式1)のように表される。慣性モーメントJとトルクとの関係は、下記の(式2)および(式3)のように表される。
J=∫r2dm (式1)
T=J×(dω/dt) (式2)
dω/dt=T/J (式3)
J:慣性モーメント
r:半径(回転軸からの距離)
m:単位体積当たりの質量
T:トルク
ω:角速度
dω/dt:角加速度
【0052】
(摩擦板70の慣性モーメントJを減らすことによる作用1)
摩擦板70の慣性モーメントJを減らすと、図1に示すシャフト10に連結された装置(例えば図示しないモータ)の能力が発揮されやすい。さらに詳しくは、上記(式3)により、一般に、慣性モーメントJを減らすほど、同じトルクTでも角加速度dω/dtを大きくできる。具体的には例えば、摩擦板70の慣性モーメントJを減らすと、シャフト10に連結されたモータのトルクT(出力トルク)が同じでも、シャフト10の角加速度dω/dtを大きくできる。
【0053】
(摩擦板70の慣性モーメントJを減らすことによる作用2)
摩擦板70の慣性モーメントJを減らすと、嵌合孔73の摩耗が抑制される。さらに詳しくは、嵌合孔73には、シャフト10(ハブ15)が連結されている。そのため、シャフト10の角速度が変化すると、摩擦板70に慣性力が作用する。そのため、摩擦板70の嵌合孔73と、シャフト10(ハブ15)と、の接触部に応力が生じ、この接触部が摩耗する。特に、プレート40およびアーマチュア50に対してシャフト10が回転自在(正逆回転可能な状態)のときに、この摩耗が生じやすい。摩擦板70の慣性モーメントJを減らすほど、この摩耗が抑制される。この摩耗が抑制される結果、電磁連結装置20を有する装置(例えばモータなど)の寿命を延ばすことができる(例えばモータの高頻度運転が可能になる)。
【0054】
(摩擦板70の半径を減らすことによる慣性モーメントJの低減)
図2に示す摩擦板70の慣性モーメントJを減らすために、摩擦板70の回転中心(中心軸10a)から摩擦板側面71sまでの距離を減らすことも考えられる。ここで、上記「摩擦板70の回転中心(中心軸10a)から摩擦板側面71sまでの距離」は、径方向Rにおける距離であり、例えば摩擦板70の半径であり、上記(式1)における半径rの最大値である。しかし、摩擦板70の回転中心(中心軸10a)から摩擦板側面71sまでの距離を小さくすると、摩擦面71fの面積が減少する。そのため、摩擦面71fに生じる応力が増え、摩擦面71fに過度の応力がかかるおそれがある。そのため、摩擦面71fが摩耗しやすいおそれがある。一方、本実施形態では、摩擦板70の慣性モーメントJを減らすために、凹部80が設けられる。そのため、摩擦板70の回転中心(中心軸10a)から摩擦板側面71sまでの距離を減らす必要なく、慣性モーメントJを減らすことができる。
【0055】
(摩擦板70の板幅を減らすことによる慣性モーメントJの低減)
摩擦板70の慣性モーメントJを減らすために、図3に示す摩擦板70の軸方向Zの幅(板厚L21)を減らす(薄くする)ことも考えられる。しかし、摩擦板70の板厚L21を減らすと、嵌合孔73とシャフト10(ハブ15)(図1参照)との接触面積が減る。そのため、嵌合孔73での応力が増え、嵌合孔73に過度の応力がかかるおそれがある。そのため、嵌合孔73が摩耗しやすいおそれがある。一方、本実施形態では、摩擦板70の慣性モーメントJを減らすために、凹部80が設けられる。そのため、摩擦板70の軸方向Zの幅(板厚L21)を減らす必要なく、慣性モーメントJを減らすことができる。
【0056】
(効果1)
図1に示す電磁連結装置20による効果は次の通りである。電磁連結装置20は、ヨーク31に励磁コイル33を有する磁極体30と、アーマチュア50と、摩擦板70と、を備える。アーマチュア50は、軸方向Z(磁極体30の基準軸線方向)に摺動可能であって、磁極体30と共に磁気回路を形成する。摩擦板70は、励磁コイル33の励磁の状態によってアーマチュア50を押圧する摩擦面71fを、軸方向Z端面に有する。
[構成1]図2に示すように、摩擦板70には、凹部80が設けられる。凹部80は、軸方向Zに直交する方向において摩擦板70の外側面を構成する摩擦板側面71sから、軸方向Zに直交する方向に凹む。
【0057】
(効果1−1)
図1に示す電磁連結装置20は、上記[構成1]を備える。よって、摩擦板70の慣性モーメントJを減らすために、摩擦面71fに凹部80を設ける必要がない。よって、慣性モーメントJを減らすために、摩擦面71fの面積を減らす必要がない。よって、摩擦板70の摩擦面71fの摩耗を抑制できる。
【0058】
(効果1−2)
上記(式1)より、図2に示す摩擦板70の中心軸10aから遠い部分(上記(式1)におけるrが大きい部分)で質量を減らす方が、摩擦板70の中心軸10aに近い部分(rが小さい部分)で質量を減らすよりも、慣性モーメントJをより減らせる。上記[構成1]では、凹部80は、摩擦板側面71s(軸方向Zに直交する方向(例えば径方向R)における摩擦板70の外側端面)に設けられる。よって、摩擦板側面71sに凹部80が設けられない場合に比べ、摩擦板70の慣性モーメントJを減らしやすい。よって、摩擦板70の慣性モーメントJを抑制できる。
【0059】
(効果2)
摩擦板70には、複数の直線部73aを有する多角形状からなる嵌合孔73が基準軸線上(中心軸10aと一致する線上)に設けられる。
[構成2]凹部80は、直線部73aと摩擦板側面71sとの間の領域A1内に配置される。
【0060】
上記[構成2]により、角部73bと摩擦板側面71sとの間の領域内に凹部80が配置される場合に比べ、凹部80と嵌合孔73との間隔(肉厚L13)を確保しやすい。よって、摩擦板70の強度を確保しやすい。
【0061】
(効果3)
[構成3]凹部80は、円柱状部81を有する穴である。
【0062】
上記[構成3]により、凹部80が円柱状部81を有さない場合(下記の変形例4などを参照)に比べ、摩擦板70(摩擦板本体71)に凹部80を容易に形成できる。具体的には例えば、ドリルを用いた穴あけ加工により、凹部80を容易に形成できる。例えば、摩擦板70が小さいもの(例えば直径約10cm未満や5cm未満など)でも、容易に凹部80を形成できる。
【0063】
(変形例1)
図5を参照して、変形例1の摩擦板170について、上記実施形態の摩擦板70(図2参照)との相違点を説明する。なお、摩擦板170のうち、上記実施形態の摩擦板70(図2参照)との共通点については、上記実施形態と同一の符号を付し、説明を省略した(共通点の説明を省略することについては下記の変形例2〜8も同様)。図2に示すように、上記実施形態では、凹部80の数は2であった。図5に示すように、変形例1の摩擦板170では、凹部80の数は4である。
【0064】
(変形例2)
図6を参照して、変形例2の摩擦板270について、図5に示す変形例1の摩擦板170との相違点を説明する。変形例1の摩擦板170では、凹部80は、直線部73aに対向する領域A1(図2参照)内に配置された。図6に示す変形例2の摩擦板270では、凹部280(4つの凹部280それぞれ)は、領域A1外に配置される。凹部280は、径方向Rに角部73bと対向する位置に配置される。凹部280は、径方向Rにおける角部73bと摩擦板側面71sとの間の領域に配置される。
【0065】
(変形例3)
図7を参照して、変形例3の摩擦板370について、図5に示す変形例1の摩擦板170および図6に示す変形例2の摩擦板270との相違点を説明する。図7に示す摩擦板370は、図5に示す変形例1の4つの凹部80と、図6に示す変形例2の4つの凹部280と、を備える(凹部80および凹部280の合計数は8である)。なお、図7では、8つの凹部80および凹部280の深さ(図2の深さL12を参照)を統一させたものを示す。しかし、凹部80および凹部280の深さは、統一される必要はない。
【0066】
(変形例4)
図8および図9を参照して、変形例4の摩擦板470について、上記実施形態の摩擦板70(図2参照)との相違点を説明する。図2に示すように、上記実施形態では、凹部80は、穴(例えば円柱状部81を備える穴)であった。図8および図9に示すように、変形例4の凹部480は、溝である。
【0067】
凹部480は、摩擦板側面71sから、軸方向Zに直交する方向(径方向R)に凹む溝である。凹部480は、摩擦板側面71sに、周方向に延びるように配置される。凹部480は、底部483を備える。
【0068】
底部483(直線状底部)は、軸方向Zから見たときに直線状である。軸方向Zから見たとき、底部483を構成する線分は、嵌合孔73の直線部73aと平行である(平行でなくてもよい)。軸方向Zから見たとき、底部483を構成する線分の両端は、摩擦板側面71s上の2点である。なお、凹部480の配置、深さ(図2の深さL12参照)、および幅(図3の幅L22参照)については、例えば上記実施形態の凹部80(図2参照)と同様に設定される。
【0069】
(変形例5)
図10を参照して、変形例5の摩擦板570について、図8に示す変形例4の摩擦板470との相違点を説明する。変形例4では、凹部480の数は2であった。図10に示すように、変形例5では、凹部480の数は4である。
【0070】
(変形例6)
図11を参照して、変形例6の摩擦板670について、図8に示す変形例4の摩擦板470(凹部480)との相違点を説明する。変形例4では、凹部480の底部483は、軸方向Zから見たとき、直線状であった。図11に示すように、変形例6では、凹部680の底部683は、軸方向Zから見たとき、円弧状である。
【0071】
底部683は、径方向R内側に凸状である。軸方向Zから見たとき、底部683を構成する円弧の両端は、摩擦板側面71s上の2点である。例えば、この円弧の中心は、摩擦板側面71sよりも径方向R外側である。例えば、この円弧の中心角は、180°以下である。この円弧は、略円弧でもよい。
【0072】
(変形例7)
図12を参照して、変形例7の摩擦板770について、図11に示す変形例6の摩擦板670との相違点を説明する。変形例6では、凹部680の数は2であった。図12に示すように、変形例7では、凹部680の数は4である。
【0073】
(変形例8)
図13を参照して、変形例8の摩擦板870について、図2に示す上記実施形態の摩擦板70との相違点を説明する。上記実施形態では、凹部80は穴(例えば円柱状部81を備える穴)であった。図13に示す変形例8では、凹部880は、摩擦板側面71sの全周にわたって形成された溝である。例えば、凹部880の深さ(図2の深さL12を参照)は、全周にわたって一定である(一定でなくてもよい)。
【0074】
(その他の変形例)
上記実施形態および変形例1〜8は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態および変形例1〜8の構成要素どうしが適宜組み合わされてもよい。例えば、図2に示す摩擦板70は、孔である凹部80と、溝である凹部480(図8参照)と、を両方備えてもよい。また、上記実施形態や変形例1〜8の構成要素の一部がなくてもよい。
【0075】
図1に示す上記実施形態では、電磁連結装置20は、無励磁作動型であった。しかし、電磁連結装置20は、励磁作動型でもよい。この場合、電磁連結装置20は、励磁コイル33が無励磁状態のときに非連結状態になり、励磁コイル33が励磁状態のときに連結状態になる。
【0076】
図1に示す例では、摩擦板70の数は1であった。しかし、摩擦板70の数は複数でもよい。
【0077】
上記実施形態では、軸方向Z1側から軸方向Z2側に、磁極体30、アーマチュア50、摩擦板70、プレート40の順に配置された。しかし、この配置は適宜変更されてもよい。この配置は、電磁連結装置20の種類(クラッチまたはブレーキ)、電磁連結装置20の作動の方式(無励磁作動型または励磁作動型)、および摩擦板70の数などに応じて、適宜変更されてもよい。例えば、電磁連結装置20が励磁作動型の場合などには、プレート40よりも軸方向Z2側に、アーマチュア50および摩擦板70が配置されてもよい。この場合、プレート40は磁極体30と一体でもよい。
【0078】
上記実施形態では、摩擦板70はプレート40を押圧したが、摩擦板70はプレート40を押圧しなくてもよく、電磁連結装置20はプレート40を備えなくてもよい。この場合の具体例は次の通りである。摩擦板70は、シャフト10に対して軸方向Zに移動不可能とされる。アーマチュア50が軸方向Zに移動することで、アーマチュア50に対する摩擦板70の、押圧状態と非押圧状態とが切り換わる。
【0079】
(参考例)なお、上記実施形態では、摩擦板70はアーマチュア50を押圧した。しかし、摩擦板70は、プレート40を押圧し、アーマチュア50を押圧しなくてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 シャフト
20 電磁連結装置
30 磁極体
31 ヨーク
33 励磁コイル
50 アーマチュア
70、170、270、370、470、570、670、770、870 摩擦板
71s 摩擦板側面
73 嵌合孔
73a 直線部
80、280、480、680、880 凹部
81 円柱状部
A1 領域
Z 軸方向(基準軸線方向)
図1
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