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特開2016-125955電流検出器、コアホルダ、インバータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-125955(P2016-125955A)
(43)【公開日】2016年7月11日
(54)【発明の名称】電流検出器、コアホルダ、インバータ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20160613BHJP
【FI】
   G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-1396(P2015-1396)
(22)【出願日】2015年1月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA04
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】磁性体コアの磁性ギャップに対してホール素子の位置決めを容易に行うことができ、信頼性を向上させるとともに省スペース化をも実現可能な電流検出器を提供する。
【解決手段】両端部の間に磁性ギャップを形成したリング状の磁性体コア2を保持し且つプリント基板Pに取付可能なコアホルダ4を備え、コアホルダ4に、磁性ギャップに嵌まり込んで磁性体コア2の移動を規制する規制突起部4aと、規制突起部4aの内部に形成され且つ磁電変換素子を収容して保持する保護部とを設け、プリント基板Pに形成したバスバー挿通孔及び磁性体コア2の内側中空領域(コアホルダ4の内側中空領域4S)を貫通するバスバーBの電流を検出可能な電流検出器1にした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に実装される磁性体コア及び磁電変換素子を備え、前記プリント基板に形成したバスバー挿通孔及び前記磁性体コアの内周縁で仕切られる内側中空領域を貫通する導電部材であるバスバーの電流を検出する電流検出器であって、
両端部の間に磁性ギャップを形成した略リング状の磁性体コアを保持し且つ前記プリント基板に取付可能なコアホルダをさらに備え、
当該コアホルダは、前記磁性ギャップに嵌まり込んで前記磁性体コアの移動を規制する規制突起部と、当該規制突起部の内部に形成され且つ前記磁電変換素子を収容して保持する保護部とを有するものであることを特徴とする電流検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の電流検出器に適用され、両端部の間に磁性ギャップを形成した略リング状の磁性体コアを保持し且つ前記プリント基板に取付可能なコアホルダであり、
前記磁性ギャップに嵌まり込んで前記磁性体コアの移動を規制する規制突起部と、
当該規制突起部の内部に形成され且つ前記磁電変換素子を収容して保持する保護部とを有するものであることを特徴とするコアホルダ。
【請求項3】
前記プリント基板に形成したバスバー挿通孔に当該コアホルダを差し込んだ際に、弾性変形して前記バスバー挿通孔の開口縁に係合可能な第1弾性係合部を備えている請求項2に記載のコアホルダ。
【請求項4】
当該コアホルダに前記磁性体コアを保持させた際に、弾性変形して前記磁性体コアのうち露出している外表面の一部に係合可能な第2弾性係合部を備えている請求項2又は3に記載のコアホルダ。
【請求項5】
前記磁性体コアの内周縁の一部に当接して当該磁性体コアの移動を規制する内周規制壁部を備えている請求項2乃至4の何れかに記載のコアホルダ。
【請求項6】
前記磁性体コアの外周縁の一部に当接して当該磁性体コアの移動を規制する外周規制壁部を備えている請求項2乃至5の何れかに記載のコアホルダ。
【請求項7】
請求項1に記載の電流検出器を備えていることを特徴とするインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流値を検出する電流検出器、その電流検出器に適用可能なコアホルダ、さらにはそのコアホルダを備えた電流検出器を搭載したインバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント板に磁性体コア及び磁電変換素子(ホール素子)及び磁性体コアを直付け又は他のパーツ(基板等)を介して実装し、磁性体コアを貫通する導電部材であるバスバー(ブスバーとも称される)の電流を検出(電流値を測定)する電流検出器が知られている。例えば、ハイブリッド自動車又は電気自動車等の車両には、車載バッテリに接続されたバスバーに流れる電流を電流検出器で検出する構成が適用されていることが多い。
【0003】
ここで、磁性体コアは、バスバーが貫通する中空部を内部空間に形成する略リング状をなし、縁が切れている両端同士の間にギャップ部(磁性ギャップ)を形成したものである。また、磁電変換素子は、磁性体コアの磁性ギャップに配置され、中空部を貫通して配置されたバスバーを流れる電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。
【0004】
自動車の車載バッテリと車両電装品とを接続するバスバーに流れる電流値を検出するために車両に搭載される電流検出器としては、例えば、特許文献1に示されるように、磁性体コア及び磁電変換素子(磁気感応素子)を共通の筐体内に収容した状態で保持させて、これら磁性体コアと磁電変換素子の相対位置を位置決めした状態でユニット化或いはパッケージ化されたもの(以下では総じて「ユニットタイプ電流検出器」と称す)を挙げることができる。このようなユニット化された電流検出器は、磁性体コアの中空部に連通するバスバー挿通孔が筐体に形成されており、バスバー挿通孔及び磁性体コアの中空部にバスバーを挿通してネジ等の固定具によりバスバーに固定(ネジ止め)された状態で、バスバーに流れる電流値を検出するように構成されている。具体的に、特許文献1に開示されているユニットタイプ電流検出器は、電流検出装置を構成する磁性体コアや磁電変換素子等の部品を絶縁性の筐体によって一定の位置関係に位置決めした状態で保持すべく、相互に分離可能な第1分割ケース及び第2分割ケースからなる筐体を備え、第1分割ケースの分割面(第2分割ケースに対する接合面)に形成した素子搭載部に磁電変換素子を固着した状態で、第1分割ケースと第2分割ケースとを相互に組み付けて一体化し、第1分割ケース及び第2分割ケースに亘って形成した溝状のコア保持部(窪んだ部分)に、磁性ギャップを有する磁性体コアをインサート状態で固定するように構成されている。このような構成により、磁性体コアの狭い磁性ギャップに磁電変換素子を高精度で位置決めする緻密な作業工程が不要になり、磁性体コアの磁性ギャップにホール素子を容易に位置決めすることができる。
【0005】
このような筐体を備えたユニットタイプ電流検出器では、通常、磁電変換素子が信号増幅回路等とともにプリント基板に実装され、そのプリント基板は、筐体の一部に設けられたネジ座にネジ止めされる。その一例として、例えば、特許文献2には、磁電変換素子が実装されたプリント基板と磁性体コアとを共通の筐体内において支持しつつ収容し、筐体に設けたネジ座に、プリント基板を貫通するネジを締め込むことで、プリント基板を筐体に固定する構成が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の筐体は、開口部を有する箱状に形成された本体ケースと、磁性体コア及びプリント基板を支持する本体ケースに対し、磁性体コアとプリント基板とを挟み込みつつ、本体ケースの開口部を塞ぐ状態で本体ケースに取り付けられる蓋部材とを備え、本体ケース及び蓋部材に、バスバーを通す貫通孔が形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−128116号公報
【特許文献2】特開2013−101014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような筐体を備えた電流検出器は、相互に分離可能な2つのパーツ(特許文献1であれば第1分割ケース及び第2分割ケース、特許文献2であれば本体ケース及び蓋部材)が必須であり、これら2つのパーツ同士を相互に組み付ける作業が要求されるとともに、部品点数の増加に伴ってコストも高くなるという不具合があり、さらには、磁性体コア、プリント基板及び磁電変換素子を収容可能なスペースを筐体の内部空間に確保する必要があることによって筐体の大型化を招来し、電流検出器全体が嵩張り、導入現場において要求される電流検出器の小型化や省スペース化のニーズに応えることが困難である。
【0009】
そもそも、上述のような筐体を備えた電流検出器が発案された背景には、電流検出器を構成する磁性体コア及び磁電変換素子を共通のプリント基板上に一定の位置関係となるように位置決めして固定(実装)する作業が極めて煩雑であり、磁性体コアの両端部に形成した僅かな磁性ギャップの間における磁電変換素子の位置に僅かでも誤差が生じれば、電流検出機能の不安定化や低下の要因となり得るという事情がある。特に、磁電変換素子を磁性体コアの両端部同士の間である磁性ギャップに位置付けるようにした状態、具体的には、磁性ギャップにおいて磁束を検出する磁電変換素子が起立する状態で、この磁電変換素子をプリント基板にハンダで固着する処理を実施する際に、磁電変換素子がフリーの状態(適宜の治具等によって支持されていない状態)であれば、その磁電変換素子がずれたり、倒れてしまい、磁性体コアの磁性ギャップに対する磁電変換素子の位置がハンダ固着処理によって所定の適切な位置から外れてしまうおそれがある。このような事態が生じれば、供給された電流に対して比例した磁界を充分に得ることができず、出力電圧の精度が劣り、信頼性が低下することになる。
【0010】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、少ない部品点数でありながら、磁性体コアの磁性ギャップに対して磁電変換素子(磁界を電圧に変換する磁気−電圧変換素子)の位置決めを容易に行うことができ、信頼性を向上させるとともに省スペース化をも実現可能な電流検出器、及びその電流検出器に適用されるホルダ、さらには、その電流検出器を備えたインバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、プリント基板に実装される磁性体コア及び磁電変換素子を備え、プリント基板に形成したバスバー挿通孔及び磁性体コアの内周縁で仕切られる内側中空領域を貫通する導電部材であるバスバーの電流を検出する電流検出器に関するものである。
【0012】
そして、本発明に係る電流検出器は、両端部の間に磁性ギャップを形成した略リング状の磁性体コアを保持し且つプリント基板に取付可能なコアホルダをさらに備え、このコアホルダが、磁性ギャップに嵌まり込んで磁性体コアの移動を規制する規制突起部と、規制突起部の内部に形成され且つ磁電変換素子を収容して保持する保護部とを有するものであることを特徴としている。
【0013】
ここで、略リング状の磁性体コアは、両端部同士の間に磁性ギャップを形成しているものであればよく、略角筒状または略円筒状、あるいはその他の筒状の形態のものであってもよい。
【0014】
このような電流検出器であれば、磁性体コアをコアホルダに保持させた状態で、コアホルダの規制突起部が、磁性体コアの両端部同士の間に形成されている磁性ギャップに嵌まり込んで磁性体コアの移動を規制することで、コアホルダによる磁性体コアの適切な保持状態を維持することができるとともに、規制突起部の内部に形成した保護部に磁電変換素子を収容して保持することで、磁電変換素子を保護部によって保護しつつコアホルダによる磁電変換素子の適切な保持状態を維持することができる。その結果、煩雑な作業を要することなく、コアホルダを介して、磁性体コアの磁性ギャップに磁電変換素子を容易に位置決めすることができる。さらに、このようなコアホルダを、プリント基板に取り付けることによって、共通のプリント基板上における磁性体コア及び磁電変換素子の相対位置を、磁性体コアの磁性ギャップに磁電変換素子を配置した適正な相対位置に決めることができ、プリント基板に形成したバスバー挿通孔及び磁性体コアの内周縁で仕切られる内側中空領域に貫通するバスバーに流れる電流の検出精度にばらつきのない信頼性に優れた電流検出器を実現することができる。しかも、複数のパーツを組み付けて形成される筐体の内部に磁性体コア及び磁電変換素子を収容した状態で相互の位置決めを行う態様と比較して、部品点数及びコストの削減及び省スペース化を図ることができ、実用的である。さらに、本発明に係る電流検出器によれば、磁電変換素子を起立姿勢で磁性体コアの磁性ギャップに位置付けた状態で、この磁電変換素子をプリント基板にハンダで固着する処理を実施する際に、磁電変換素子が保護部に収容された状態で保持されているため、磁電変換素子が適宜の治具等によって支持されていないフリーな状態であれば生じる不具合、すなわち、磁電変換素子が倒れてしまい、磁性体コアの磁性ギャップに対する磁電変換素子の位置がハンダ固着処理によって所定の適切な位置から外れてしまうという不具合を防止することができ、磁性ギャップにおいて、供給された電流に対して比例した磁界を充分に得ることができ、出力電圧の精度を高め、信頼性の向上に寄与する。
【0015】
また、本発明に係るコアホルダは、プリント基板に形成したバスバー挿通孔及び磁性体コアの内周縁で仕切られる内側中空領域を貫通する導電部材であるバスバーの電流を検出する電流検出器に適用され、両端部の間に磁性ギャップを形成した略リング状の磁性体コアを保持し且つプリント基板に取付可能なものであり、磁性ギャップに嵌まり込んで磁性体コアの移動を規制する規制突起部と、規制突起部の内部に形成され且つ磁電変換素子を収容して保持する保護部とを有するものであることを特徴としている。
【0016】
このようなコアホルダであれば、上述したように、規制突起部が磁性体コアの両端部同士の間に形成されている磁性ギャップに嵌まり込んで磁性体コアの移動を規制し、磁性体コアの適切な保持状態を維持することができるとともに、規制突起部の内部に形成した保護部に磁電変換素子を収容して保持することで、磁電変換素子を保護部によって保護しながら磁電変換素子の適切な保持状態を維持することができる。したがって、本発明に係るコアホルダを介して、磁性体コアの磁性ギャップに磁電変換素子を容易に位置決めすることができ、磁性ギャップに磁電変換素子を位置付ける煩雑な作業が要求されず、作業の効率性を向上させることができる。さらに、本発明に係るコアホルダであれば、磁電変換素子が保護部に収容された状態で保持されているため、起立姿勢で磁性ギャップに位置付けた磁電変換素子をプリント基板にハンダで固着する処理を実施する際に、磁電変換素子が倒れて磁性ギャップに対する適切な規定位置から外れてしまう事態を防止することができる。そして、このような本発明に係るコアホルダをプリント基板に取り付ければ、共通のプリント基板上における磁性体コア及び磁電変換素子の相対位置を、磁性体コアの磁性ギャップに磁電変換素子を配置した適切な位置に決めることができ、プリント基板に形成したバスバー挿通孔及び磁性体コアの内周縁で仕切られる内側中空領域に貫通するバスバーに流れる電流を高い精度で検出すること可能な信頼性に優れた電流検出器になる。
【0017】
特に、本発明のコアホルダとして、プリント基板に形成したバスバー挿通孔に当該コアホルダを差し込んだ際に、弾性変形してバスバー挿通孔の開口縁に係合可能な第1弾性係合部を備えたものを適用すれば、ネジ等の適宜の固定具を用いることなく、第1弾性係合部を弾性変形させてバスバー挿通孔の開口縁に係合させることでプリント基板に取り付けることができる。しかも、バスバー挿通孔は、バスバーを貫通させるためにプリント基板に形成されているものであり、このようなバスバー挿通孔を利用してコアホルダを取り付ける構成を採用することで、プリント基板に、コアホルダを取り付けるための特別な加工を施したり、専用部品を設ける必要がなく、好適である。また、バスバー挿通孔にコアホルダを差し込むことでバスバー挿通孔の開口縁に弾性係合する第1弾性係合部は、適宜の操作によってその弾性係合状態を解除することが可能である。したがって、バスバー挿通孔の開口縁に対する第1弾性係合部の弾性係合状態を解除すれば、コアホルダをプリント基板から取り外すことも可能であり、コアホルダの交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0018】
加えて、本発明に係るコアホルダが、磁性体コアを保持する際に弾性変形して、磁性体コアのうち他の部材に覆われずに露出している外表面の一部に係合可能な第2弾性係合部を備えたものであれば、第2弾性係合部の弾性変形を利用してコアホルダに対して磁性体コアを保持させる処理をスムーズ且つ容易に行うことができ、磁性ギャップに嵌まり込む規制突起部と相俟って磁性体コアの移動を規制した良好な保持状態を維持することができる。また、磁性体コアの外表面の一部に弾性係合している第2弾性係合部は、適宜の操作によってその弾性係合状態を解除することが可能であり、弾性係合状態を解除すれば、磁性体コアをコアホルダから取り外すことができ、磁性体コア及びコアホルダの交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0019】
本発明のコアホルダは、磁性体コアの内周縁の一部に当接して磁性体コアの移動を規制する内周規制壁部を備えたものや、磁性体コアの外周縁の一部に当接して磁性体コアの移動を規制する外周規制壁部を備えたものであってもよい。このようなコアホルダであれば、内周規制壁部又は外周規制壁部が、磁性ギャップに嵌まり込む規制突起部と共に磁性体コアの移動を規制して、磁性体コアの良好な保持状態を維持することができる。
【0020】
また、本発明に係るインバータは、上述したコアホルダを有する電流検出器を備えていることを特徴としており、上述した本発明の電流検出器及びコアホルダにより得られる特性を有するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、磁電変換素子を磁性体コアの磁性ギャップに位置決めした状態でプリント基板に磁電変換素子及び磁性体コアを直接実装するという高い精度が要求される煩雑な作業を回避して、磁電変換素子を磁性体コアの磁性ギャップに容易に位置決めすることができ、電流検出精度及び信頼性を向上させるとともに、このような磁電変換素子及び磁性体コアの相対位置を、これら磁電変換素子及び磁性体コアを収容する内部空間を必要とする筐体を用いることなく位置決めすることができることで省スペース化をも実現可能な電流検出器、及びその電流検出器に適用されるコアホルダ、さらにはインバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る電流検出器を備えたインバータの所定部分の平面図。
図2図1においてプリント基板に対する電流検出器の実装位置を説明するための簡略図。
図3図2における矢印A方向矢視。
図4】同実施形態に係る電流検出器の実装状態を示す斜視図。
図5図4の分解斜視図。
図6図5の拡大図。
図7】同実施形態に係るコアホルダを図とは異なる方向から見た全体図。
図8図2のX−X断面図。
図9図2のY−Y断面図。
図10図3のZ−Z断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る電流検出器1は、図1に示すように、例えばハイブリッド自動車又は電気自動車などの車両に搭載されるインバータVの一部を構成するプリント基板Pに実装可能なものであり、バッテリとEVモータ等の電子機器とを電気的に接続するバスバーBに流れる電流を検出(測定)するものである。なお、バッテリと小型EVモータ等の電子機器とを電気的に接続するバスバーBは、例えば銅等などの金属からなる導電部材であり、本実施形態のインバータVでは、このバスバーBの両端を、予め敷設された他のバスバー(バッテリ側のバスバー及び小型EVモータ等の電子機器側のバスバー)に対して接続することで、このバスバーBに検出対象の電流が流れるように構成している。
【0025】
本実施形態では、電流検出用のバスバーBの端部(端子部)を、予め敷設された他のバスバーBに対してネジによって連結している。図1は、インバータVの所定部分の平面図であり、以下の説明で用いる図2は、図1においてプリント基板Pに対する電流検出器1の実装位置を説明するための簡略図であり、図3図2の矢印A方向矢視図であり、図4はプリント基板Pに対する電流検出器1の実装状態を示す斜視図である。なお、図2及び図3は隠線処理を施していない図であるが、これらの要部の詳細は、後出の図8図10によって把握することができる。
【0026】
本実施形態のインバータVでは、EVモータから出力されてバスバーBに流れる3相電流のうち、2相分の電流を電流検出器1で検出すべく、所定のバスバーBにそれぞれ電流検出器1を関連付けて配置している(図1図3参照)。具体的に、本実施形態のインバータVは、共通のプリント基板Pに複数のバスバー挿通孔P1を形成し、各バスバー挿通孔P1に貫通させたバスバーBのうち所定2相の電流が流れる2つのバスバーBに関連付けて電流検出器1をプリント基板P上に配置したものである。
【0027】
本実施形態に係る電流検出器1は、図4及び図5図5図4の分解斜視図である)に示すように、プリント基板Pに実装される磁性体コア2及び磁電変換素子3を備え、プリント基板Pに形成したバスバー挿通孔P1及び磁性体コア2の内周縁で仕切られる内側中空領域2Sを貫通するバスバーBの電流を検出するものである
【0028】
磁性体コア2は、C形リング状をなし、両端部の間に形成した隙間を磁性ギャップ21として機能させる磁性体である。この磁性体コア2の内周縁で仕切られる内側中空領域2Sを、被検出電流が通過する空間(電流検出空間)に設定し、この内側中空領域2SにバスバーBを貫通可能に構成している。内側中空領域2Sは、磁性体コア2のコア部分で囲まれた中空領域であると捉えることもできる。本実施形態では、四隅をアール形状に設定した概略四角筒状の磁性体コア2を適用している。
【0029】
磁電変換素子3は、図5に示すように、磁性体コア2の磁性ギャップ21に配置され、磁性体コア2の内側中空領域2Sを貫通して配置されたバスバーBを流れる電流に応じて変化する磁束を検出し、磁束の検出信号を電気信号として出力する素子である。本実施形態では、磁電変換素子としては、ホール素子3を採用している。ホール素子3は、図5の拡大図である図6に示すように、素子本体31と、素子本体31に接続されて足とも称される端子32とを備え、プリント基板Pに形成した端子挿通孔P2(図5参照)に端子32を通した姿勢でプリント基板Pにハンダ付け処理で固着(実装)されるものである。ホール素子3は、複数本(図示例では4本)の端子32を有し、各端子32のうち、下半領域には端子挿通孔P2に挿通可能なストレート部分321を形成し、上半領域にはストレート部分321に対して任意の角度をなす傾斜部分322を形成している。傾斜部分322の高さ寸法で、プリント基板Pに対するホール素子3の実装高さが決定されることになる。
【0030】
なお、プリント基板Pには、ホール素子3の他に、ホール素子3から出力される磁束の検出信号を増幅する回路等も実装されている。
【0031】
ここで、ホール素子3及び磁性体コア2をそれぞれ個別にプリント基板Pに固定しようとすると、その作業は、例えば、先ず磁性体コア2をプリント基板Pに固定し、続いてホール素子3をプリント基板Pに固定する順番、又は先ずホール素子3をプリント基板Pに固定し、続いて磁性体コア2をプリント基板Pに固定する順番、これら何れの順番(作業手順)であっても、磁性ギャップ21にホール素子3が位置付けられる規定の適切な位置に、ホール素子3及び磁性体コア2をプリント基板Pに固定する必要がある。このようなホール素子3及び磁性ギャップ21の適切な位置決めには高精度な作業が必要とされ、実装処理(固定処理)に多くの手間を要する。特に、磁性ギャップ21において磁束を検出するホール素子3が起立する状態で、このホール素子3をプリント基板Pにハンダで固着する処理を実施する際に、ホール素子3がフリーの状態(適宜の治具等によって支持されていない状態)であれば、そのホール素子3がぐらついたり、倒れて、磁性体コア2の磁性ギャップ21に対するホール素子3の位置がハンダ固着処理時に所定の適切な位置から外れてしまうおそれがある。このような事態が生じれば、供給された電流に対して比例した磁界を充分に得ることができず、出力電圧の精度が劣り、信頼性が低下することになるため、実質的に不良品となる。
【0032】
このような事情に鑑み、本実施形態に係る電流検出器1として、上述した磁性体コア2を保持するコアホルダ4を備えたものを適用している。
【0033】
コアホルダ4は、例えばハンダ固着処理時の高熱にも耐え得る高耐熱性の樹脂素材から一体に形成されたものであり、図4図10図7はコアホルダ4を図6とは異なる方向から見た全体図であり、図8図2のX−X断面図であり、図9図2のY−Y断面図であり、図10図3のZ−Z断面図である)に示すように、磁性ギャップ21に嵌まり込んで磁性体コア2の移動を規制する規制突起部4aと、ホール素子3を収容して保持する保護部4b(図9及び図10参照)と、プリント基板Pに形成したバスバー挿通孔P1にコアホルダ4を差し込んだ際に、弾性変形してバスバー挿通孔P1の開口縁に係合可能な第1弾性係合部4cと、コアホルダ4に磁性体コア2を保持させた際に、弾性変形して磁性体コア2のうち露出している外表面の一部に係合可能な第2弾性係合部4dと、磁性体コア2の内周縁の一部に当接して磁性体コア2の移動を規制する内周規制壁部4eと、磁性体コア2の外周縁の一部に当接して磁性体コア2の移動を規制する外周規制壁部4fとを備えている。
【0034】
以下の説明では、C形リング状の磁性体コア2を筒とみなした場合におけるその筒の軸心方向を「高さ方向」(図4等に示す矢印H方向)とし、さらに、プリント基板Pのうち電流検出器1を実装する面を上向き面とし、反対の面を下向き面とし、各部品の「高さ方向H」、「上下方向」もこれに準じた方向とする。なお、バスバー挿通孔P1に貫通させたバスバーBにおける電流通過方向は、高さ方向Hと一致ないし略一致する。
【0035】
コアホルダ4は、磁性体コア2の内周縁の平面寸法よりも僅かに小さい平面寸法に設定された略リング状の起立周壁部4gを主体としてなり、この起立周壁部4gの下端全域に亘って鍔部4hを形成している。鍔部4hは、コアホルダ4をプリント基板Pに取り付けた状態においてプリント基板Pの上向き面に接触する部分である。本実施形態のコアホルダ4は、四隅をアール形状に設定した概略四角筒状の磁性体コア2を外側に嵌めた状態で保持できるようにできるように、四隅をアール形状に設定した概略四角筒状の起立周壁部4gを適用している。このようなコアホルダ4は、起立周壁部4gの外側に磁性体コア2を上方から嵌め込むようにして取り付けることができ、この保持状態で、磁性体コア2の内側中空領域2S内に起立周壁部4gが収容され、コアホルダ4のうち起立周壁部4gによって囲まれて高さ方向Hに貫通している中空領域4Sも磁性体コア2の内側中空領域2S内に存在することになる。したがって、コアホルダ4によって磁性体コア2を保持した状態においても、磁性体コア2の内側中空領域2Sは、高さ方向Hに貫通して解放された領域である。また、本実施形態では、コアホルダ4によって磁性体コア2を保持した状態において、起立周壁部4gの上端と、磁性体コア2の上向き面22と略同一高さ位置になるように、起立周壁部4gの高さ寸法を設定している。
【0036】
規制突起部4aは、磁性体コア2を保持した際に磁性体コア2の両端部同士の隙間(磁性ギャップ21)を充填するように起立周壁部4gの所定箇所から、起立周壁部4gによって囲まれて高さ方向Hに貫通している中空領域4Sからその離間する方向(外方)に向かって突出させたものである。以下の説明では、起立周壁部4gに対して規制突起部4aが突出している方向を「前方」とし、これによって規定される前後方向及び前記高さ方向Hの何れにも直交する方向を「左右方向」とする。本実施形態の規制突起部4aは、起立周壁部4gと同じ高さ寸法に設定され、外方(前方)への突出寸法を、磁性体コア2の両端部における内周縁から外周縁までの寸法(この寸法は磁性体コア2の径方向におけるコア部分自体の厚み寸法と同義であると捉えることもできる)よりも僅かに大きく設定している。そして、規制突起部4aのうち突出方向における先端部(最も外方(前方)に突出している部分)の下端領域に、起立周壁部4gに対向する対向壁部4iを形成し、この対向壁部4iが、磁性体コア2の外周縁の一部に当接して磁性体コア2の移動を規制する外周規制壁部4fとして機能するように設定している。
【0037】
本実施形態のコアホルダ4では、対向壁部4iの上端部を、起立周壁部4gの上端部よりも低い位置に設定している。なお、対向壁部4iの上端部を、起立周壁部4gの上端部よりも高い位置、または同じ位置に設定した態様を採用することも可能である。起立周壁部4g及び規制突起部4aの上端部には、適宜のテーパ面を形成している。
【0038】
保護部4bは、図9及び図10に示すように、規制突起部4aの内部に形成されたものであり、ホール素子3のうち少なくとも素子本体31を保持した状態で収容可能なものである。本実施形態では、規制突起部4aのうち突出方向先端側領域に形成され且つ少なくとも下方に開放された中空部4jを利用して保護部4bを構成している。そして、ホール素子3に、保護部4bを被せることによって素子本体31を保護部4bに収めることができ、良好な保持状態になる。この保持状態では、ホール素子3のうち端子32の少なくとも前記ストレート部分321は、コアホルダ4の鍔部4hよりも下方の位置にある。本実施形態のコアホルダ4は、樹脂からなる一体成型品であり、型抜きの便宜上、図7に示すように、保護部4bのうち、ホール素子3本体を保持した状態において素子本体31が収容される領域よりも下方の領域を、側方スリット部4kによって左右何れか一方向(同図では紙面向かって左方向)にのみ開放させた領域に設定し、さらに、その領域は、前方スリット部4mによって前方にも開放させた領域となっている。
【0039】
第1弾性係合部4cは、図7図9に示すように、バスバー挿通孔P1の開口縁に係合可能なものであり、鍔部4hよりも下方に突出させた弾性変形可能な第1弾性係合爪4nを用いて構成している。本実施形態では、起立周壁部4gのうち内周面の下端領域における所定部分に、起立周壁部4gによって囲まれる中空領域4Sに向かう方向(内方)に突出させた内方突出部4pを形成し(図10参照)、第1弾性係合爪4nを内方突出部4pの下向き面から下方に向けて突出させて形成している。第1弾性係合爪4nの先端部には、第1弾性係合爪4n自体の弾性を利用して、バスバー挿通孔P1の開口縁(具体的には開口縁の下向き面)に係合可能な第1フック部4rを形成している。本実施形態のコアホルダ4は、平面視略四角筒状をなす起立周壁部4gの四隅のうち対向する2つの隅に内方突出部4pを形成し、各内方突出部4pにそれぞれ第1弾性係合部4cを設けている。各第1弾性係合部4cは、第1フック部4rの凸方向をバスバー挿通孔P1の開口縁の下向き面に係合する方向に設定している。したがって、上述の対をなす第1弾性係合部4cのうち、相対的に前方に配置される第1弾性係合部4c(本実施形態では相対的に規制突起部4aに近い方の第1弾性係合部4c)の第1フック部4rの凸方向は前方に設定し、相対的に後方に配置される第1弾性係合部4cの第1フック部4rの凸方向は後方に設定している。
【0040】
第2弾性係合部4dは、図4図9に示すように、磁性体コア2のうち露出している外表面の一部に係合可能なものであり、本実施形態では、起立周壁部4gの所定部分に形成したスリット部4t(図6及び図7参照)に挟まれる位置において、起立周壁部4gの上端部よりも上方に突出させた設けた弾性変形可能な第2弾性係合爪4uを用いて構成している。本実施形態のコアホルダ4は、平面視概略四角筒状をなす起立周壁部4gのうち、対向する2辺に相当する部分(図示例では長辺に相当する部分)に第2弾性係合爪4uを1又は複数(図示例では長辺に相当する部分にそれぞれ2つずつ)形成している。起立周壁部4gの所定部分に形成したスリット部4tは、起立周壁部4gの上端から下方に向かって所定寸法切り込まれたものであり、このようなスリット部4tによって起立周壁部4gとの縁が切られた部分が第2弾性係合爪4uとして機能するように構成している。起立周壁部4gの上端よりも高い位置に設定した各第2弾性係合爪4uの先端部(上端部)には、第2弾性係合爪4u自体の弾性を利用して、磁性体コア2の外表面のうち上向き面22に係合可能な第2フック部4wを形成している。第2フック部4wの凸方向は、磁性体コア2の上向き面22に係合する方向に設定している。したがって、起立周壁部4gの対辺(本実施形態では長辺)に形成した第2弾性係合部4dのうち、相対的に前方に配置される第2弾性係合部4d(本実施形態では相対的に規制突起部4aに近い方の第2弾性係合部4d)の第2フック部4wの凸方向は前方に設定し、相対的に後方に配置される第2弾性係合部4dの第2フック部4wの凸方向は後方に設定している。
【0041】
また、本実施形態に係るコアホルダ4は、鍔部4hの下向け面における所定箇所に、プリント基板Pに形成した位置決め用ガイド孔P3(図5参照)に嵌合可能なガイドピン4zを下方に突出させて設けている(図7図9参照)。本実施形態では、上述の第1弾性係合部4cの近傍にガイドピン4zを配置している。
【0042】
次に、このようなコアホルダ4を備えた電流検出器1を、プリント基板Pに実装する手順の一例及び作用について説明する。
【0043】
先ず、C形リング状の磁性体コア2をコアホルダ4の上方からコアホルダ4に差し込んで保持させる。この際、磁性体コア2の両端部同士の間の隙間である磁性ギャップ21に、コアホルダ4の規制突起部4aが嵌まる向きで、磁性体コア2をコアホルダ4に差し込む。この差し込み作業に伴い、コアホルダ4のうち第2弾性係合部4dが他の部分よりも優先して磁性体コア2の下向き面に当接し、弾性変形することで、磁性体コア2のそれ以上同一方向(コアホルダ4の鍔部4hに近付く方向)への移動を許容する。そして、磁性体コア2の下向き面がコアホルダ4の鍔部4hの上向き面に接触又は近接する位置まで磁性体コア2を移動させた時点またはその直前で、第2弾性係合部4dが弾性復帰して、先端部に設けた第2フック部4wが磁性体コア2の上向き面22に係合する。その結果、磁性体コア2は、第2弾性係合部4dの係合状態を解除する所定の操作力が付与されない限り、コアホルダ4から抜け外れる方向への移動が規制された状態でコアホルダ4に保持される。さらに、この保持状態では、図10に示すように、コアホルダ4の規制突起部4aが磁性体コア2の磁性ギャップ21に嵌まり込んでいること、及びコアホルダ4の起立周壁部4gの外周面が、磁性体コア2の内周縁の一部に当接していることによって、コアホルダ4に対する磁性体コア2の前後方向及び左右方向への移動を規制している。すなわち、本実施形態のコアホルダ4では、起立周壁部4gが、磁性体コア2の内周縁の一部に当接して磁性体コア2の移動を規制する内周規制壁部4eとして機能するように構成している。さらに、本実施形態では、コアホルダ4の対向壁部4i(外周規制壁部4f)が、磁性体コア2の外周縁の一部に当接または近接して磁性体コア2の移動をより一層効果的に規制している(図10参照)。以上のような構成により、磁性体コア2を移動不能な状態でコアホルダ4に保持することができる。なお、コアホルダ4の鍔部4hと磁性体コア2との接触部分を、例えばシリコン等の接着剤を介して相互に固着する処理を行ってもよい。
【0044】
次に、コアホルダ4の保護部4bでホール素子3を被せるようにして、保護部4bにホール素子3を収める。規制突起部4aの内部に形成した保護部4bに嵌めるように収容することでコアホルダ4に保持されるホール素子3は、図9及び図10に示すように、磁性体コア2の磁性ギャップ21に位置付けられることになり、コアホルダ4によって、磁性体コア2及びホール素子3の相対位置を所定の規定位置に決めることができる。なお、コアホルダ4の保護部4bとホール素子3との接触部分を、例えばシリコン等の接着剤を介して相互に固着する処理を行ってもよい。
【0045】
上述の説明では、コアホルダ4に対して磁性コア2を保持させてからホール素子3をコアホルダ4に保持させる作業手順を例示したが、コアホルダ4に対して先ずホール素子3を保持させて、その次に磁性コア2をコアホルダ4に保持させる作業手順であってもよい。
【0046】
続いて、磁性体コア2及びホール素子3を保持したコアホルダ4を、プリント基板Pに形成したバスバー挿通孔P1に差し込んで固定する。この差し込み作業に伴い、コアホルダ4のうち第1弾性係合部4cが他の部分よりも優先してバスバー挿通孔P1の開口縁近傍の上向き面に当接し、弾性変形することで、コアホルダ4のそれ以上同一方向(バスバー挿通孔P1に差し込む方向)への移動を許容する。そして、第1弾性係合部4cの先端部(下端部)がバスバー挿通孔P1を通過し終えた時点で、第1弾性係合部4cが弾性復帰して、先端部に設けた第1フック部4rがバスバー挿通孔P1の開口縁の下向き面に係合する。その結果、コアホルダ4は、第1弾性係合部4cの係合状態を解除する所定の操作力が付与されない限り、プリント基板P(バスバー挿通孔P1)から抜け外れる方向への移動が規制された状態でプリント基板Pに固定される。さらに、本実施形態では、コアホルダ4をプリント基板Pに取り付けた状態において、コアホルダ4の下向き面に設けたガイドピン4zが、プリント基板Pに形成した位置決め用ガイド孔P3に嵌合することで、プリント基板Pに対するコアホルダ4の前後方向及び左右方向への移動を規制している。以上のような構成により、コアホルダ4を移動不能な状態でプリント基板Pに取り付けることができる。
【0047】
また、コアホルダ4をプリント基板Pに取り付ける際に、コアホルダ4の保護部4bで保持しているホール素子3のうち、コアホルダ4の鍔部4hよりも下方に突出している端子32を、プリント基板Pに形成した端子挿通孔P2に挿し通すことで、その後に行うハンダ付け処理(プリント基板Pの下向き面側に露出している端子32をハンダ槽に浸す処理)により、ホール素子3を所定の起立姿勢で磁性ギャップ21に位置付けた状態でプリント基板Pに固着(実装)することができる。
【0048】
以上の手順によって、磁性体コア2及びホール素子3を適正な相対位置に位置決めした状態でコアホルダ4に保持させてなる電流検出器1をプリント基板Pに実装することができ、バスバー挿通孔P1と、このバスバー挿通孔P1に連通する領域、すなわち高さ方向Hに貫通して解放された領域であるコアホルダ4の中空領域4S、ひいては磁性体コア2の内側中空領域2Sとに貫通させてバスバーBを配置することで、バスバーBに流れる電流(バスバーBの高さ方向Hに流れる電流)を電流検出器1によって検出することができる。
【0049】
なお、上述とは異なる手順として、先ずホール素子3の端子32をプリント基板Pの端子挿通孔P2に挿し通し、このホール素子3に保護部4bを被せるようにしてコアホルダ4をプリント基板Pのバスバー挿通孔P1に差し込んで固定し、その後にハンダ付け処理(プリント基板Pの下向き面側に露出している端子32をハンダ槽に浸す処理)を行う手順を採用することも可能である。この場合、コアホルダ4に磁性体コア2を保持させる処理は、ホール素子3に保護部4bを被せるようにしてコアホルダ4をプリント基板Pのバスバー挿通孔P1に差し込んで固定する処理の前後何れであってもよい。このような作業手順であっても、磁性体コア2及びホール素子3を適正な相対位置に位置決めした状態でコアホルダ4に保持させてなる電流検出器1をプリント基板Pに実装することができ、バスバー挿通孔P1と、このバスバー挿通孔P1に連通する領域、すなわち高さ方向Hに貫通して解放された領域であるコアホルダ4の中空領域4S、ひいては磁性体コア2の内側中空領域2Sとに貫通させてバスバーBを配置することで、バスバーBに流れる電流(バスバーBの高さ方向Hに流れる電流)を電流検出器1によって検出することが可能である。
【0050】
本実施形態のように車両等のようにプリント基板P及び電流検出器1に比較的大きな振動が作用することが予想される使用態様においては、コアホルダ4の鍔部4hとプリント基板Pとの接触部分を、例えばシリコン等の接着剤を介して相互に固着することもできる。
【0051】
このように、本実施形態に係る電流検出器1は、略リング状の磁性体コア2を保持するコアホルダ4を備え、コアホルダ4に設けた規制突起部4aが、磁性体コア2の両端部同士の間に形成されている磁性ギャップ21に嵌まり込んで磁性体コア2の移動を規制することで、コアホルダ4による磁性体コア2の適切な保持状態を維持することができるとともに、規制突起部4aの底部から上方に向かう所定領域に形成され且つ底部(下端)に開放された保護部4bに磁電変換素子3を収容して保持することで、磁電変換素子3を少なくとも上方からカバーして保護しつつコアホルダ4による磁電変換素子3の適切な保持状態を維持することができる。その結果、煩雑な作業を要することなく、コアホルダ4を介して、磁性体コア2の磁性ギャップ21に磁電変換素子3を容易に位置決めすることができ、このようなコアホルダ4を、プリント基板Pに取り付けることによって、プリント基板P上における磁性体コア2及び磁電変換素子3の相対位置を、磁性体コア2の磁性ギャップ21に磁電変換素子3を配置した適正な相対位置に決めることができ、プリント基板Pに形成したバスバー挿通孔P1及び磁性体コア2の内周縁で仕切られる内側中空領域2Sに貫通するバスバーBに流れる電流を測定する性能が安定し、信頼性に優れた電流検出器1になる。しかも、複数のパーツを組み付けて形成される筐体の内部に磁性体コア及び磁電変換素子を収容した状態で相互の位置決めを行う態様と比較して、部品点数及びコストの削減及び省スペース化を図ることができる。特に、複数のパーツを組み付けて形成される筐体の内部に磁性体コア、磁電変換素子に加えてプリント基板も収容するタイプの電流検出装置(DCCT(DCカレントトランス)と称されるもの)は、各DCCTにおいて個別のプリント基板が筐体内に収容されているものであるため、本実施形態のように、磁性体コア2の磁性ギャップ21に磁電変換素子3を配置した適正な相対位置に決めした磁性体コア2及び磁電変換素子3の組を、バスバー挿通孔P1が形成されている共通のプリント基板Pに複数実装するという態様を採用することは不可能である。
【0052】
さらに、本実施形態に係る電流検出器1は、磁電変換素子3を起立姿勢で磁性体コア2の磁性ギャップ21に位置付けた状態で、この磁電変換素子3をプリント基板Pにハンダで固着する処理を実施する際に、磁電変換素子3は保護部4bによって良好な保持状態が維持されているため、磁電変換素子3が適宜の治具等によって支持されていないフリーな状態であれば生じる不具合、すなわち、ハンダ固着処理時に磁電変換素子3の位置が不意にずれたり、倒れてしまうことで、磁性体コア2の磁性ギャップ21に対する磁電変換素子3の位置が所定の適切な位置から外れてしまうという不具合を防止することができ、磁性ギャップ21において、供給された電流に対して比例した磁界を充分に得ることができ、出力電圧の精度を高め、信頼性が向上する。
【0053】
そして、本実施形態に係るコアホルダ4は、上述したように、規制突起部4aが磁性体コア2の両端部同士の間に形成されている磁性ギャップ21に嵌まり込んで磁性体コア2の移動を規制し、磁性体コア2の適切な保持状態を維持することができるとともに、規制突起部4aの内部に形成した保護部4bに磁電変換素子3を収容して保持することで、磁電変換素子3を保護部4bによって保護しながら磁電変換素子3の適切な保持状態を維持することができる。したがって、本実施形態に係るコアホルダ4を介して、磁性体コア2の磁性ギャップ21に磁電変換素子3を容易に位置決めすることができ、磁性ギャップ21に磁電変換素子3を位置付ける煩雑な作業が要求されず、作業の効率性を向上させることができる。さらに、本実施形態のコアホルダ4によれば、磁電変換素子3が保護部4bに収容された状態で保持されているため、起立姿勢で磁性ギャップ21に位置付けた磁電変換素子3をプリント基板Pにハンダで固着する処理を実施する際に、磁電変換素子3が倒れて磁性ギャップ21に対する適切な規定位置から外れてしまう事態を防止することができる。
【0054】
特に、本実施形態のコアホルダ4は、プリント基板Pに形成したバスバー挿通孔P1に差し込んだ際に、弾性変形してバスバー挿通孔P1の開口縁に係合可能な第1弾性係合部4cを備えたているため、ネジ等の適宜の固定具を用いることなく、第1弾性係合部4cを弾性変形させてバスバー挿通孔P1の開口縁に係合させることでプリント基板Pに簡単且つスムーズに取り付けることができる。しかも、バスバー挿通孔P1は、バスバーBを貫通させるためにプリント基板Pに元々形成されているものであり、このようなバスバー挿通孔P1を利用してコアホルダ4を取り付ける構成を採用することで、プリント基板Pに、コアホルダ4を取り付けるための特別な加工を施したり、専用部品を設ける必要がなく、好適である。また、バスバー挿通孔P1にコアホルダ4を差し込むことでバスバー挿通孔P1の開口縁に弾性係合する第1弾性係合部4cは、適宜の操作によってその弾性係合状態を解除することが可能であるため、バスバー挿通孔P1の開口縁に対する第1弾性係合部4cの弾性係合状態を解除すれば、コアホルダ4をプリント基板Pから取り外すことも可能であり、コアホルダ4の交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0055】
加えて、本実施形態に係るコアホルダ4は、磁性体コア2を保持する際に弾性変形して、磁性体コア2のうち他の部材に覆われずに露出している外表面の一部(具体的には磁性体コア2の上向き面22)に係合可能な第2弾性係合部4dを備えたものであるため、第2弾性係合部4dの弾性変形を利用してコアホルダ4に対して磁性体コア2を保持させる処理をスムーズ且つ容易に行うことができ、磁性ギャップ21に嵌まり込む規制突起部4aと相俟って磁性体コア2の移動を規制した良好な保持状態を維持することができる。また、磁性体コア2の外表面の一部に弾性係合している第2弾性係合部4dは、適宜の操作によってその弾性係合状態を解除することが可能であり、弾性係合状態を解除すれば、磁性体コア2をコアホルダ4から取り外すことも可能であり、磁性体コア2及びコアホルダ4の交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0056】
このように、本実施形態に係るコアホルダ4は、プリント基板Pに対する取付処理や、磁性体コア2を保持させる処理を、コアホルダ4の素材の弾性を利用したいわゆるスナップフィットによって嵌め込む処理で簡便に済ますことができる。
【0057】
さらに、本実施形態に係るコアホルダ4は、磁性体コア2の内周縁の一部に当接して磁性体コア2の移動を規制する内周規制壁部4eと、磁性体コア2の外周縁の一部に当接して磁性体コア2の移動を規制する外周規制壁部4fとを備えているため、これら規制壁部4e,4fによってもコアホルダ4に対する磁性体コア2の不意な移動を規制して、磁性体コア2の良好な保持状態を維持することができる。
【0058】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、第1弾性係合部や第2弾性係合部の具体的な形状や数、あるいはコアホルダにおける形成箇所は適宜変更することができる。特に、第2弾性係合部が係合可能な箇所は、磁性体コアのうち他の部材に覆われずに露出している外表面の一部であればよく、磁性体コアの上向き面に代えて、または加えて磁性体コアの外周面(起立面)であってもよい。
【0059】
本発明では、コアホルダをプリント基板に取り付ける処理や、コアホルダに磁性体コアを保持させる処理を、いわゆるスナップフィットによって嵌め込む処理以外の処理(例えばネジ止め等)によって行うように構成することもできる。このような構成を採用する場合、第1弾性係合部や第2弾性係合部を有しないコアホルダを適用することが可能である。
【0060】
また、上述した実施形態では、コアホルダとして、内周規制壁部及び外周規制壁部の両方を備えたものを例示したが、何れか一方または両方を備えていないコアホルダであってもよい。内周規制壁部を備えたコアホルダを適用する場合、内周規制壁部が接触(当接または近接)する磁性体コアの内周縁の箇所は、1箇所であってもあってもよいが複数箇所であることが好ましく、磁性体コアの内周縁における接触対象箇所も適宜選択することができる。同様に、外周規制壁部を備えたコアホルダを適用する場合、外周規制壁部が接触(当接または近接)する磁性体コアの外周縁の箇所は、1箇所であってもあってもよいが複数箇所であることが望ましく、磁性体コアの外周縁における接触対象箇所も適宜選択することが可能である。
【0061】
さらにまた、本発明では、コアホルダとして、鍔部を備えていないものや、プリント基板に対する位置決め用のガイドピンを備えていなものを適用してもよい。
【0062】
磁電変換素子として前記実施形態で述べたホール素子3以外のものを適用しても構わない。
【0063】
コアホルダの規制突起部の内部における保護部の形成箇所は、磁性ギャップに対する磁電変換素子の所期の相対位置に応じて適宜変更することができ、保護部に保持させた状態において磁電変換素子のうち保護部に覆われる部分の位置やサイズも適宜変更することが可能である。
【0064】
上述の実施形態では、コアホルダに磁性体コアを保持させた状態で、磁性体コアがコアホルダを包み込むような構成になる態様を例示したが、コアホルダに磁性体コアを保持させた状態で、コアホルダが磁性体コアを包み込むような構成になる態様を採用することも可能である。
【0065】
コアホルダの素材や形状も適宜変更することができる。
【0066】
また、本発明に係るコアホルダを備えた電流検出器、或いはそのような電流検出器を備えたインバータは、ハイブリッド自動車又は電気自動車などの車両以外のものに適用(搭載、実装)することもできる。
【0067】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…電流検出器
2…磁性体コア
21…磁性ギャップ
2S…内側中空領域
3…磁電変換素子(ホール素子)
4…コアホルダ
4a…規制突起部
4b…保護部
4c…第1弾性係合部
4d…第2弾性係合部
4e…内周規制壁部
4f…外周規制壁部
B…バスバー
P…プリント基板
P1…バスバー挿通孔
V…インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2015年5月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6