【課題】本件発明の課題は、従来と同程度のズーム比を有し、且つ、広角端において、110°以上の画角を実現すると共に、第1レンズ群を小さく構成することができ、光学全長の短い広角ズームレンズを提供することにある。
【解決手段】上記課題を解決するため、物体から順に、負の屈折力の第1レンズ群G1、正の屈折力の第2レンズ群G2、負の屈折力の第3レンズ群G3及び正の屈折力の第4レンズ群を有し、各レンズ群の間隔を変化させて変倍を行う広角ズームレンズとし、以下の条件式(1)を満足させる。
物体から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、
各レンズ群の間隔を変化させて変倍を行い、
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする広角ズームレンズ。
3.1<|BFw/F1|<5・・・(1)
但し、
F1 :第1レンズ群の焦点距離
BFw:広角端における無限遠合焦時の最も像面側のレンズ面と像面との距離
である。
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の広角ズームレンズと、当該広角ズームレンズによって形成される像を受光する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本件発明の実施例1の広角ズームレンズのレンズ断面図である。
【
図2】実施例1の広角ズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図3】実施例1の広角ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図4】実施例1の広角ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図5】実施例1の広角ズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態及び望遠端状態における無限遠合焦時の横収差図である。
【
図6】本件発明の実施例2の広角ズームレンズのレンズ断面図である。
【
図7】実施例2の広角ズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図8】実施例2の広角ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図9】実施例2の広角ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図10】実施例2の広角ズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態及び望遠端状態における無限遠合焦時の横収差図である。
【
図11】本件発明の実施例3の広角ズームレンズのレンズ断面図である。
【
図12】実施例3の広角ズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図13】実施例3の広角ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図14】実施例3の広角ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図15】実施例3の広角ズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態及び望遠端状態における無限遠合焦時の横収差図である。
【
図16】本件発明の実施例4の広角ズームレンズのレンズ断面図である。
【
図17】実施例4の広角ズームレンズの広角端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図18】実施例4の広角ズームレンズの中間焦点距離状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図19】実施例4の広角ズームレンズの望遠端状態における無限遠合焦時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図20】実施例4の広角ズームレンズの広角端状態、中間焦点距離状態及び望遠端状態における無限遠合焦時の横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本件発明に係る広角ズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。
【0021】
1.広角ズームレンズ
1−1.広角ズームレンズの光学構成
本件発明に係る広角ズームレンズは、物体から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、各レンズ群の間隔を変化させて変倍を行い、後述する条件式(1)を満足することを特徴とする。
【0022】
本件発明のズームレンズは、負・正・負・正のパワー配列を採用した4群構成の広角ズームレンズであり、変倍時に各レンズ群を移動させる自由度が高く、高変倍比を実現しやすい。これと同時に、ズーム全域における収差の変動を抑制することが容易になるため、結像性能の高いズームレンズを得ることができる。さらに、第1レンズ群の屈折力が負のネガティブリード型の広角ズームレンズとすることにより、バックフォーカスを確保することができ、一眼レフカメラの交換レンズ等、一定のバックフォーカスを要する撮像レンズに好適である。以下、各レンズ群の構成について説明し、条件式(1)等については後述する。
【0023】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は、上述のとおり負の屈折力を有し、後述する条件式(1)等を満足し得る構成であれば、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。しかしながら、最も物体側に配置されるレンズの少なくともいずれか一面は非球面であることが好ましく、その両面が非球面であることがさらに好ましい。最も物体側に配置されるレンズの少なくともいずれか一面を非球面とすることにより、いわゆる前玉の屈折力を強くすることができ、これにより前玉の小型化を図ることができ、コマ収差や歪曲収差を抑制することができる。特に、本件発明に係る光学ズームレンズでは、この最も物体側に配置されるレンズの両面を非球面とすることが好ましく、この場合、後述する条件式(3)を満足することが好ましい。また、この場合、当該レンズは、高屈折率の硝材からなり、レンズ面が非球面に加工された非球面レンズであることが好ましい。
【0024】
また、第1レンズ群を負の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群とから構成し、後群を物体側へ移動させて、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行うことが好ましい。本件発明に係る広角ズームレンズのような負先行型の広角ズームレンズでは、第1レンズ群を構成するレンズの外径は当該光学系全系の中でも最も大きくなる。第1レンズ群を上記前群と上記後群とにより構成し、フォーカスの際に、後群を物体側に移動させる場合、フォーカス移動量に応じて前群と後群との空気間隔を確保する必要がある。この場合、110°以上の広角化を図る場合も、前群に比して後群を外径の小さなレンズで構成することが容易になる。このため、フォーカス群の軽量化及び小型化を図ることができ、迅速なフォーカシングが可能になる。これと同時に第1レンズ群の後群以降のレンズ群の小型化を図ることができ、当該広角ズームレンズ全体の小型化及び軽量化を図ることができる。また、インナーフォーカス式を採用することによりフォーカシングの際に鏡筒長が変化するのを防止することができる。なお、第1レンズ群の後群をフォーカス群とする場合、後述する条件式(4)を満足させることがより好ましい。
【0025】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群は正の屈折力を有する限り、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。本件発明では、第2レンズ群内に開口絞りを配置すると共に、第2レンズ群を開口絞りを挟んで、物体側から順に正又は負の屈折力を有する前群と、正の屈折力を有する後群とから構成している。例えば、ネガティブリードタイプと称される負先行型の広角ズームレンズを4群構成とし、正の屈折力を有する第2レンズ群を当該構成とすることにより、第2レンズ群を構成するレンズの外径を小さくすることができ、当該広角ズームレンズ全体の小型化を図ることができる。また、開口絞りを第2レンズ群内に配置することにより、例えば、望遠端において第1レンズ群と第2レンズ群との光軸上の間隔を短くすることができ、望遠端における光学全長方向の小型化を図ることができる。すなわち、望遠端において第1レンズ群と第2レンズ群との間隔を狭めるように各レンズ群を移動させたときに、第1レンズ群と第2レンズ群との間に開口絞りが存在しないため、第1レンズ群と第2レンズ群との間に開口絞りが配置される場合と比較すると、両レンズ群の間隔を狭くすることができる。また、第2レンズ群を前群と正の屈折力を有する後群とから構成し、この前群と後群との間に開口絞りを配置することにより、入射瞳の位置と、射出瞳の位置のバランスが良好になり、110°以上の広角化を図った場合も、各レンズ群を構成するレンズの外径を小さくすることができ、前玉或いは後玉の有効径が大きくなりすぎるのを防止することができる。
【0026】
さらに、前群及び後群は、それぞれ、少なくとも一枚の負レンズと一枚の正レンズとから構成されることが好ましい。当該構成を採用することで、一層の広角化を図る上で、パワー配分を適切なものとし、当該広角ズームレンズ全体の小型化を図ることができる。
【0027】
(3)第3レンズ群
第3レンズ群は、負の屈折力を有し、条件式(1)等を満足し得る構成であれば、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではないが、本件発明に係る広角ズームレンズにおいて、第3レンズ群を防振群として用いることが好ましい。すなわち、防振時に当該第3レンズ群を光軸と垂直な方向に移動させて、像を移動させることが好ましい。第3レンズ群を防振群として用いることにより、撮像時の手振れ等の振動に起因して像ブレが生じたときに、第3レンズ群を光軸と垂直な方向に移動させることにより、像を移動させて像ブレを補正することができる。なお、この場合、後述する条件式(2)を満足することが好ましい。また、本件発明において、光軸と垂直な方向には、第3レンズ群の移動方向が光軸に対して垂直である場合に加えて、第3レンズ群の移動方向に光軸に対して垂直成分を含む場合も含まれるものとする。
【0028】
第3レンズ群は、負の屈折力を有するレンズと、正の屈折力を有するレンズとを含む構成とすることが好ましく、特に、負の屈折力を有するレンズと、正の屈折力を有するレンズとからなる接合レンズにより構成されることが好ましい。当該構成を採用することにより、防振時における色収差を良好に補正することができ、偏芯コマ収差の発生を抑制することができる。また、接合レンズにより第3レンズ群を構成することで、防振群の組み付けを容易にすることができ、製造誤差が発生するのを抑制することができる。これと同時に、第3レンズ群を軽量化することができ、防振時に第3レンズ群を駆動するためのアクチュエータ等の小型化及び軽量化を図ることができるため、第3レンズ群を防振群として用いる場合も当該広角ズームレンズの鏡筒径等が大型化するのを抑制することができる。
【0029】
(4)第4レンズ群
第4レンズ群は、正の屈折力を有し、条件式(1)等を満足し得る構成であれば、その具体的なレンズ構成は特に限定されるものではない。本件発明に係る広角ズームレンズにおいて、第4レンズ群の像側に、例えば、変倍時に固定の固定群等の他のレンズ群を配置してもよいが、当該広角ズームレンズの光学全長方向の小型化を図るという観点から、第4レンズ群を最終群とすることが好ましい。
【0030】
1−2.変倍時の各レンズ群の動作
次に、変倍時の各レンズ群の動作について説明する。本件発明に係る広角ズームレンズでは、各レンズ群の間隔を変化させて変倍する。例えば、広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔を狭く、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔を広く、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔を狭くするように各レンズ群の間隔を変化させることが好ましい。
【0031】
1−3.条件式
次に、各条件式について説明する。
【0032】
1−3−1.条件式(1)
上述したとおり、本件発明に係る広角ズームレンズは、上記構成を採用すると共に、下記条件式(1)を満足することを特徴とする。
【0033】
3.1<|BFw/F1|<5・・・(1)
但し、
F1 :第1レンズ群の焦点距離
BFw:広角端における無限遠合焦時の最も像面側のレンズ面と像面との距離
である。
【0034】
条件式(1)は、広角端における無限遠合焦時の最も像面側のレンズ面と像面との距離に対する第1レンズ群の焦点距離の比に関する式である。条件式(1)を満足させることにより、広角端において110°以上の画角を確保すると共に、第1レンズ群を構成するレンズの有効径の小型化を図ることができる。
【0035】
条件式(1)の数値が下限値以下になると、第1レンズ群の屈折力が弱く、広角端において110°以上の画角を確保した上で、第1レンズ群の小型化を図ることが困難になる。或いは、十分なバックフォーカスを確保することができず、一眼レフカメラの交換レンズ等として用いることができなくなる。これに対して、条件式(1)の数値が上限値以上になると、第1レンズ群の屈折力が適正な範囲を超えて強くなり過ぎる。第1レンズ群の屈折力が強いと、広画角化及び小型化を図る上では有利であるが、広角端における諸収差の補正が困難になる。このため、広角端における結像性能を良好にするには、収差補正に要するレンズ枚数が増加し、当該広角ズームレンズの小型化を図ることが困難になる。
【0036】
これらの効果を得る上で、当該広角ズームレンズは以下の条件式(1a)を満足することが好ましく、条件式(1b)を満足することがより好ましい。
【0037】
3.2<|F1/Yw|<4.5・・・(1a)
3.2<|F1/Yw|<3.5・・・(1b)
【0038】
1−3−2.条件式(2)
本件発明に係る広角ズームレンズにおいて、第3レンズ群を防振群として用いる場合、上記条件式(1)と共に、以下の条件式(2)を満足することが好ましい。
【0039】
0.5<|F3/Ft|<5・・・(2)
但し、
F3:第3レンズ群の焦点距離
Ft:望遠端における全系の焦点距離
である。
【0040】
条件式(2)は、望遠端における当該広角ズームレンズ全系の焦点距離に対する第3レンズ群の焦点距離の比に関する式である。条件式(2)を満足させることにより、第3レンズ群の屈折力が適正な範囲内となり、防振時に第3レンズ群を光軸に対して垂直方向に移動させたときの収差変動を抑制し、防振時も高い結像性能を維持することができる。これと同時に、第3レンズ群の移動量を適正な範囲内にすることができるため、鏡筒径が大きくなるのを抑制することができる。
【0041】
これに対して、条件式(2)の数値が下限値以下になると、第3レンズ群の屈折力が大きくなり過ぎる。この場合、防振時における第3レンズ群の移動量が小さくなるため、鏡筒径を小さくする上では有利であるが、極めて精密な位置制御が要求される。このため、第3レンズ群の駆動制御が困難になる。また、この場合、防振時における収差変動が大きくなり、高い結像性能を維持することが困難になる。一方、条件式(2)の数値が上限値以上になると、第3レンズ群の屈折力が小さく、防振時に第3レンズ群を移動させたときの収差変動を抑制することができるが、防振時における第3レンズ群の移動量が大きくなるため、鏡筒径の小型化を図ることが困難になる。
【0042】
これらの効果を得る上で、当該広角ズームレンズは以下の条件式(2a)を満足することが好ましく、条件式(2b)を満足することがより好ましい。
【0043】
0.6<|F3/Ft|<4・・・(2a)
0.8<|F3/Ft|<3・・・(2b)
【0044】
1−3−3.条件式(3)
本件発明に係る広角ズームレンズにおいて、第1レンズ群の最も物体側に配置されるレンズの像面側の面を非球面とすると共に、以下の条件式(3)を満足させることも好ましい。
【0045】
2.0<BFw/G1R2<5.0・・・(3)
但し、
BFw :広角端における無限遠合焦時の最も像面側のレンズ面と像面との距離
G1R2:最も物体側に配置されるレンズの像面側の面の近軸曲率半径
である。
【0046】
条件式(3)は、第1レンズ群の最も物体側に配置されるレンズの像面を非球面としたとき、その非球面の近軸曲率半径に対して、広角端における無限遠合焦時における最も像面側のレンズ面と像面との距離、すなわち広角端におけるバックフォーカスの比を規定した式である。条件式(3)を満足する場合、第1レンズ群の最も物体側に配置されるレンズの屈折力が比較的強く、広角端における画角の一層の広角化を図ると共に、当該広角ズームレンズの小型化を図ることができる。
【0047】
これに対して、条件式(3)の数値が下限値以下になると、良好な結像性能を維持させた上で、広角端における画角の広角化を図るには、この最も物体側に配置されるレンズの屈折力が小さすぎ、広角端における画角の広角化を図ると共に、第1レンズ群を構成するレンズの小型化を図ることが困難になる。一方、条件式(3)の数値が上限値以上になると、この最も物体側に配置されるレンズの屈折力が強くなりすぎるため、諸収差を補正が困難になる。これと同時に、レンズ面を非球面に加工することも困難となる。
【0048】
これらの効果を得る上で、当該広角ズームレンズは以下の条件式(3a)を満足することが好ましく、条件式(3b)を満足することがより好ましい。
【0049】
2.3<BFw/G1R2<4.5・・・(3a)
2.3<BFw/G1R2<4.0・・・(3b)
【0050】
1−3−4.条件式(4)
本件発明に係る広角ズームレンズにおいて、上述したように、第1レンズ群を物体から順に、負の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群とから構成し、後群を物体側へ移動させて、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行う場合、以下の条件式(4)を満足することが好ましい。
【0051】
0.2<|F1b|/BFw<0.8・・・(4)
但し、
F1b:第1レンズ群の後群の焦点距離
BFw:広角端における無限遠合焦時の最も像面側のレンズ面と像面との距離
である。
【0052】
条件式(4)は、広角端におけるバックフォーカスに対する第1レンズ群の後群の焦点距離の比を規定した式である。第1レンズ群の後群をフォーカス群とすると共に、条件式(4)を満足する場合、後群の屈折力が適正な範囲内となり、無限遠物体から近距離物体まで、物体距離によらずフォーカス全域において優れた結像性能を維持することができる。これと同時に、フォーカシングの際の第1レンズ群の移動量を適正な範囲内とすることができ、光学全長の小型化を図ることができる。
【0053】
これに対して、条件式(4)の数値が下限値以下になる場合、後群の屈折力が強くなりすぎ、フォーカシングの際の後群の移動量を小さくすることができるため、光学全長の小型化を図る上では有利である。しかしながら、後群の屈折力が強く、フォーカシングの際の収差変動が大きくなり、フォーカス全域において諸収差を良好に補正することが困難になる。一方、条件式(4)の数値が上限値以上になると、後群の屈折力が弱くなり過ぎ、フォーカシングの際の収差変動を抑制することはできるが、フォーカシングの際の後群の移動量が大きくなりすぎ、光学全長の小型化を図ることが困難になる。
【0054】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記広角ズームレンズと、当該広角ズームレンズによって形成される像を受光する撮像素子とを備えたことを特徴とする。ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子等も用いることができ、本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよいし、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラ等のレンズ交換式の撮像装置であってもよいのは勿論である。しかしながら、本件発明に係る広角ズームレンズのバックフォーカスは比較的長い。このため、本件発明に係る撮像装置は、特に、一眼レフカメラ等のバックフォーカスの比較的長い撮像装置であることが好ましい。
【0055】
次に、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下に挙げる各実施例のズームレンズは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置(光学装置)、特に、一眼レフカメラ等のバックフォーカスの比較的長い撮像装置に用いられる広角ズームレンズである。なお、レンズ断面図(
図1、
図6、
図11及び
図16)において、図面に向かって左方が物体側、右方が像側である。
【実施例1】
【0056】
(1)広角ズームレンズの構成
図1は、本件発明に係る実施例1の広角ズームレンズの構成を示すレンズ断面図である。当該広角ズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。
【0057】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群G1aと、負の屈折力を有する後群G1bとから構成される。この第1レンズ群G1において、最も物体側に配置されるレンズは、像面側が凹面の負の屈折力を有するメニスカスレンズであり、その両面は非球面に加工されている。また、後群G1bはフォーカス群として用いられ、後群G1bを物体側へ移動させて、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行う。なお、前群G1a及び後群G1bの具体的なレンズ構成は
図1に示すとおりである。
【0058】
第2レンズ群G2は、物体側から順に弱い正の屈折力を有する前群G2aと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成され、この前群G2aと後群G2bとの間に開口絞りSが配置される。前群G2a及び後群G2bと開口絞りSとは変倍時一体となって移動する。なお、前群G2a及び後群G2bの具体的なレンズ構成は
図1に示すとおりである。。
【0059】
第3レンズ群G3は、物体側から順に負レンズと正レンズとからなる接合レンズにより構成され、防振時、光軸に対して垂直方向に移動し、像を移動させる防振群としても用いられる。
【0060】
第4レンズ群G4は正の屈折力を有し、その具体的なレンズ構成は
図1に示すとおりである。
【0061】
広角端から望遠端へのズーミング(変倍)に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔を狭く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔を広く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔を狭くするように、各レンズ群がそれぞれ物体側に移動する。
【0062】
(2)数値実施例
次に、当該広角ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該広角ズームレンズのレンズデータを示す。表1において、「面NO.」は物体側から数えたレンズ面の順番(面番号)、「r」はレンズ面の曲率半径、「d」はレンズ面の光軸上の間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、「vd」はd線に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、レンズ面が非球面である場合には、面番号の次に*(アスタリスク)を付し、曲率半径rの欄には近軸曲率半径を示している。
【0063】
また、表2(2−1)は、表1に示した非球面について、その形状を次式で表した場合の非球面係数及び円錐定数を示す。
【0064】
z=ch
2/[1+{1-(1+k)c
2h
2}
1/2]+A4h
4+A6h
6+A8h
8+A10h
10・・・
(但し、cは曲率(1/r)、hは光軸からの高さ、kは円錐係数、A4、A6、A8、A10・・・は、各次数の非球面係数とする。)
【0065】
表2(2−2)において、「f」は、広角端、中間焦点距離、望遠端における当該広角ズームレンズの焦点距離を示す。また、「D(i)」(i=4,6,16,19)は、表1に示したレンズ面の光軸上の可変間隔であって、広角端、中間焦点距離、望遠端における無限遠合焦時の間隔である。これらの表中の長さの単位は全て「mm」であり、画角の単位は全て「°」である。また、各条件式(1)〜条件式(4)の数値を表9に示す。なお、これらの表に関する事項は実施例2〜実施例4で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0066】
また、以下に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端におけるF値(FNo.)、画角(2ω)をそれぞれ順に示す。
【0067】
FNO.= 3.6〜4.1〜4.6
2ω = 111.70〜86.59〜62.07
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
また、
図2、
図3及び
図4に、それぞれ広角端、中間焦点距離及び望遠端における当該広角ズームレンズの無限遠合焦時の縦収差図を示す。それぞれの縦収差図は、図面に向かって左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差を表している。球面収差図において、縦軸はF値を示し、実線dはd線(λ=587.6nm)の特性、波線gはg線(λ=435.8nm)の特性、一点鎖線CはC線(λ=656.3nm)の特性を示している。非点収差図において、縦軸は画角を表し、実線Sはd線におけるサジタル像面の特性、破線Tはd線におけるメリジオナル像面の特性を示している。また、歪曲収差において縦軸は画角を表し、d線における特性を示している。
【0071】
さらに、
図5に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における横収差図である。広角端、中間焦点距離及び望遠端における各横収差図において、上段から順に、最大像高の100%、90%、70%、50%における横収差である。また各横収差図において、横軸は瞳面上での主光線からの距離を表し、実線はd線(d−line)、短破線はg線(g−line)、長破線はC線(C−line)の特性である。
【0072】
これらの図に関する事項は実施例2〜実施例9で示す各図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【実施例2】
【0073】
(1)広角ズームレンズの構成
図6は、実施例2の広角ズームレンズの光学系の構成を示すレンズ断面図である。実施例2の広角ズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。
【0074】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群G1aと、負の屈折力を有する後群G1bとから構成される。この第1レンズ群G1において、最も物体側に配置されるレンズは、像面側が凹面の負の屈折力を有するメニスカスレンズであり、その両面は非球面に加工されている。また、後群G1bはフォーカス群として用いられ、後群G1bを物体側へ移動させて、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行う。なお、前群G1a及び後群G1bの具体的なレンズ構成は
図6に示すとおりである。
【0075】
第2レンズ群G2は、物体側から順に弱い正の屈折力を有する前群G2aと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成され、この前群G2aと後群G2bとの間に開口絞りSが配置される。前群G2a及び後群G2bと開口絞りSとは変倍時一体となって移動する。なお、前群G2a及び後群G2bの具体的なレンズ構成は
図6に示すとおりである。
【0076】
第3レンズ群G3は、物体側から順に負レンズと正レンズとからなる接合レンズにより構成され、防振時、光軸に対して垂直方向に移動し、像を移動させる防振群としても用いられる。
【0077】
第4レンズ群G4は正の屈折力を有し、その具体的なレンズ構成は
図6に示すとおりである。
【0078】
広角端から望遠端へのズーミング(変倍)に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔を狭く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔を広く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔を狭くするように、各レンズ群がそれぞれ物体側に移動する。
【0079】
(2)数値実施例
次に、当該広角ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表3は、当該広角ズームレンズのレンズデータである。表4(4−1)は、表3に示した非球面の非球面係数及び円錐定数であり、表4(4−2)は、当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるそれぞれの焦点距離(f)と、表3に示したレンズ面の光軸上の可変間隔である。また、下記に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端におけるF値(FNo.)、画角(2ω)をそれぞれ順に示す。また、各条件式(1)〜条件式(4)の数値を表9に示す。さらに、
図7、
図8及び
図9にそれぞれ望遠端、中間焦点距離及び広角端における当該広角ズームレンズの無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図10に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における横収差図を示す。
【0080】
FNO.= 3.6〜4.1〜4.6
2ω = 116.75〜91.87〜77.35
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【実施例3】
【0083】
(1)広角ズームレンズの構成
図11は、実施例3の広角ズームレンズの光学系の構成を示すレンズ断面図である。実施例3の広角ズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。
【0084】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群G1aと、負の屈折力を有する後群G1bとから構成される。この第1レンズ群G1において、最も物体側に配置されるレンズは、像面側が凹面の負の屈折力を有するメニスカスレンズであり、その両面は非球面に加工されている。また、後群G1bはフォーカス群として用いられ、後群G1bを物体側へ移動させて、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行う。なお、前群G1a及び後群G1bの具体的なレンズ構成は
図11に示すとおりである。
【0085】
第2レンズ群G2は、物体側から順に弱い正の屈折力を有する前群G2aと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成され、この前群G2aと後群G2bとの間に開口絞りSが配置される。前群G2a及び後群G2bと開口絞りSとは変倍時一体となって移動する。なお、前群G2a及び後群G2bの具体的なレンズ構成は
図11に示すとおりである。
【0086】
第3レンズ群G3は、物体側から順に負レンズと正レンズとからなる接合レンズにより構成され、防振時、光軸に対して垂直方向に移動し、像を移動させる防振群としても用いられる。
【0087】
第4レンズ群G4は正の屈折力を有し、その具体的なレンズ構成は
図11に示すとおりである。
【0088】
広角端から望遠端へのズーミング(変倍)に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔を狭く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔を広く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔を狭くするように、各レンズ群がそれぞれ物体側に移動する。
【0089】
(2)数値実施例
次に、当該広角ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表5は、当該広角ズームレンズのレンズデータである。表6(6−1)は、表5に示した非球面の非球面係数及び円錐定数であり、表6(6−2)は、当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるそれぞれの焦点距離(f)と、表5に示したレンズ面の光軸上の可変間隔である。また、下記に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端におけるF値(FNo.)、画角(2ω)をそれぞれ順に示す。また、各条件式(1)〜条件式(4)の数値を表9に示す。さらに、
図12、
図13及び
図14にそれぞれ望遠端、中間焦点距離及び広角端における当該広角ズームレンズの無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図15に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における横収差図を示す。
【0090】
FNO.= 3.6〜4.1〜4.6
2ω = 116.744〜91.582〜77.195
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【実施例4】
【0093】
(1)広角ズームレンズの構成
図16は、実施例4の広角ズームレンズの光学系の構成を示すレンズ断面図である。実施例4の広角ズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成される。
【0094】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、負の屈折力を有する前群G1aと、負の屈折力を有する後群G1bとから構成される。この第1レンズ群G1において、最も物体側に配置されるレンズは、像面側が凹面の負の屈折力を有するメニスカスレンズであり、その両面は非球面に加工されている。また、後群G1bはフォーカス群として用いられ、後群G1bを物体側へ移動させて、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシングを行う。なお、前群G1a及び後群G1bの具体的なレンズ構成は
図16に示すとおりである。
【0095】
第2レンズ群G2は、物体側から順に弱い正の屈折力を有する前群G2aと、正の屈折力を有する後群G2bとから構成され、この前群G2aと後群G2bとの間に開口絞りSが配置される。前群G2a及び後群G2bと開口絞りSとは変倍時一体となって移動する。なお、前群G2a及び後群G2bの具体的なレンズ構成は
図16に示すとおりである。
【0096】
第3レンズ群G3は、物体側から順に負レンズと正レンズとからなる接合レンズにより構成され、防振時、光軸に対して垂直方向に移動し、像を移動させる防振群としても用いられる。
【0097】
第4レンズ群G4は正の屈折力を有し、その具体的なレンズ構成は
図16に示すとおりである。
【0098】
広角端から望遠端へのズーミング(変倍)に際し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔を狭く、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔を広く、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔を狭くするように、各レンズ群がそれぞれ物体側に移動する。
【0099】
(2)数値実施例
次に、当該広角ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表7は、当該広角ズームレンズのレンズデータである。表8(8−1)は、表7に示した非球面の非球面係数及び円錐定数であり、表8(8−2)は、当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離、望遠端におけるそれぞれの焦点距離(f)と、表7に示したレンズ面の光軸上の可変間隔である。また、下記に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端におけるF値(FNo.)、画角(2ω)をそれぞれ順に示す。また、各条件式(1)〜条件式(4)の数値を表9に示す。さらに、
図17、
図18及び
図19にそれぞれ望遠端、中間焦点距離及び広角端における当該広角ズームレンズの無限遠合焦時の縦収差図を示し、
図20に当該広角ズームレンズの広角端、中間焦点距離及び望遠端における横収差図を示す。
【0100】
FNO.= 3.6〜4.1〜4.6
2ω = 116.774〜91.992〜77.507
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
各数値実施例における条件式(1)〜条件式(4)の数値及び各条件式の数値を得るために必要な数値を表9に示す。
【0104】
【表9】