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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-126821(P2016-126821A)
(43)【公開日】2016年7月11日
(54)【発明の名称】コンタクト構造及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20160613BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20160613BHJP
【FI】
   H01R24/38
   H01R13/648
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-263727(P2014-263727)
(22)【出願日】2014年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(72)【発明者】
【氏名】正木 克之
(72)【発明者】
【氏名】武田 英次
【テーマコード(参考)】
5E021
5E123
【Fターム(参考)】
5E021FA02
5E021FA08
5E021FA14
5E021FB07
5E021FC21
5E021LA09
5E021LA15
5E021LA21
5E123AB01
5E123AB59
5E123BA15
5E123CA13
5E123CC09
5E123GA08
5E123GA42
(57)【要約】
【課題】
カバーの外形が外周面から張り出す凸状部による拡大が抑制されたコンタクト構造及びコネクタを提供する。
【解決手段】
後方でシールド電線に電気的に接続する接続部32を有する軸方向に延びる導電性のコンタクト30と、この接続部32の周囲を覆う非導電性のカバー10と、コンタクト30の周囲を覆う導電性のシールドシェル50と、を備えるコンタクト構造5であって、非導電性のカバー10は軸方向に沿った分割面で組み合わせ可能に分割され、分割面は周面が面一で連なるように一方の分割縁部から上重ね部111が延出し、他方の分割縁部からは上重ね部111の下に重なり合う下重ね部113が延出する。下重ね部113には係合凸部114が備わり、上重ね部111には係合凸部114に係合可能な係合穴112が備わる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方でシールド電線に電気的に接続する接続部を有する軸方向に延びる導電性のコンタクトと、この接続部の周囲を覆う非導電性のカバーと、前記コンタクトの周囲を覆う導電性のシールドシェルと、を備えるコンタクト構造であって、前記非導電性のカバーは軸方向に沿った分割面で組み合わせ可能に分割され、前記分割面は周面が面一で連なるように一方の分割面を含む分割縁部が他方の分割面を含む分割縁部の下に潜り重なり合うところに特徴を有するコンタクト構造。
【請求項2】
前記一方の分割面を含む分割縁部または前記他方の分割面を含む分割縁部には凸部が備わり、前記他方の分割面を含む分割縁部または前記一方の分割面を含む分割縁部には前記凸部に係合可能な穴部あるいは凹部が備わるところに特徴を有する請求項1記載のコンタクト構造。
【請求項3】
前記分割が2分割であるところに特徴を有する請求項1又は2記載のコンタクト構造。
【請求項4】
前記一方の分割縁部および前記他方の分割縁部のうち少なくとも一つの分割縁部のうち一部が周方向に延出し、対応する分割縁部に重なり合うところに特徴を有する請求項1から3のうち一項記載のコンタクト構造。
【請求項5】
前記カバーは軸方向の端部で前記コンタクトの周面に周接可能な所定の幅を有する縮径部を備え、前記カバーは前記縮径部に少なくとも1箇所内向きの凸部を備え、前記コンタクトはこの凸部に対応する位置に穴部を備えるところに特徴を有する請求項1から4のうち一項記載のコンタクト構造。
【請求項6】
請求項1から5のうち一項記載のコンタクト構造が非導電性のハウジングに組み込まれたコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトが合成樹脂製のカバーで覆われたコンタクト構造及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電線とコンタクトとの接続部を保護する合成樹脂製のカバーを備える技術として特許文献1記載の技術が知られている。この技術によれば、電線を保護するカバーは筒状を半割にした半割りカバーの組み合わせから成る分割構造で、同じ形状の半割りカバーを組み合わせて一体形状のカバーを完成させることができる。
【0003】
これにより、カバーを組み付けるために必要な準備するべき部品は半割りカバーの1種類だけでよく、金型もそれに対応する1形状を備えればよい。また組み付けにおいても、同じ部品同士を組み付けるので、雌雄を区別することによる手間を省くことができ作業性の向上が図られる、というものである。
【0004】
しかし、このカバーの半割り構造において、半割りカバー同士の組み付けは、外周面から凸状に張り出すように外周面上に取り付けられた係合部と、同じく外周面上に取り付けられた受け部との係合によってなされるものであり、外周面上に係合構造(受け部構造)が備わる。これにより、半割りカバー同士を組み合わせ一つのカバーを組み付けたときには外形が拡大されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−27645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、電線とコンタクトとの接続部を保護するカバーを分割カバーの組み合わせ構造としつつ、分割カバーの組み合わせ後の一体化されたカバーの外形が外周面から張り出す凸状部による拡大が抑制されたコンタクト構造、及びコネクタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンタクト構造は、(1)後方でシールド電線に電気的に接続する接続部を有する軸方向に延びる導電性のコンタクトと、この接続部の周囲を覆う非導電性のカバーと、前記コンタクトの周囲を覆う導電性のシールドシェルと、を備えるコンタクト構造であって、前記非導電性のカバーは軸方向に沿った分割面で組み合わせ可能に分割され、前記分割面は周面が面一で連なるように一方の分割面を含む分割縁部のうち少なくとも一部が他方の分割面を含む分割縁部のうち少なくとも一部の下に潜り重なり合うところに特徴を有するものである。
【0008】
この発明によれば、一方の分割面を含む分割縁部のうち少なくとも一部は他方の分割面を含む分割縁部のうち少なくとも一部の下に潜り込む。これにより、周面が面一になるように分割面を組み合わせることができるので、2つの分割カバーを組み合わせた後の一つになったカバーの外形が外周面から張り出す凸状部による拡大が生じないコンタクト構造が得られる。
分割縁部は、一方の分割縁部全体が他方の分割縁部全体の下に潜る態様であってよく、
あるいは、一方の分割縁部の一部が他方の分割縁部の一部の下に潜る態様であってもよい。また、組み合わされる分割カバー毎に重なり合う分割縁部の雌雄一対となる構造を分割縁部のそれぞれに備えている態様であってよく、あるいは、雌雄同一構造の分割縁部を備えている態様であってもよい。
【0009】
カバーの分割に制限はなく、分割が2つの場合であってよく、3つ以上の場合であってもよい。また分割された各分割カバーは同じ形状のものから成る場合であってよく、あるいは、それぞれ異なる形状のものからなる場合であってもよい。同じ形状のものから成る場合は、カバーを構成する部品は分割カバーの1点でよく、金型もそれに対応する1形状を準備すれば足りる。
【0010】
好ましくは、本発明のコンタクト構造は、(2)前記一方の分割面を含む分割縁部または前記他方の分割面を含む分割縁部には凸部が備わり、前記他方の分割面を含む分割縁部または前記一方の分割面を含む分割縁部には前記凸部に係合可能な穴部あるいは凹部が備わるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0011】
この発明によれば、一方の分割縁部に備わる凸部と他方の分割縁部に備わる穴部あるいは凹部とが係合することで分割面同士が面一に組み合わされた状態が固定されるものである。1つの分割カバーは凸部と穴部あるいは凸部と凹部からなる1対の係合構造を分割縁部それぞれに備えるものであってよく、あるいは、同じ形状の係合構造を分割縁部それぞれに備えるものであってもよい。1つの分割カバーが1対の係合構造を分割縁部それぞれに備えるものである場合は、同じ形状の分割カバーの組み合わせから一つのカバーが組み付けられることとなる。
【0012】
好ましくは、本発明のコンタクト構造は、(3)前記分割が2分割であるところに特徴を有する(1)又は(2)記載のものである。
【0013】
この発明によれば、非導電性のカバーは2分割された分割カバーの組み合わせで構成される。これにより、分割カバーは一方の分割縁部には凸部を備え、他方の分割縁部には穴部あるいは凹部を備えるものである場合、カバーは同一形状の分割カバーの1回だけの組み合わせで組み立てられることとなる。
【0014】
好ましくは、本発明のコンタクト構造は、(4)前記一方の分割縁部および前記他方の分割縁部のうち少なくとも一つの分割縁部のうち一部が周方向に延出し、対応する分割縁部に重なり合うところに特徴を有する(1)から(3)のうち一項記載のものである。
【0015】
この発明によれば、一方の分割縁部のうち一部が周方向に延出し、他方の分割縁部の対応する部分が周方向に延出することで、分割カバー同士が組み合わされたとき、一方の延出部が他方の延出部の下に潜り重なり合う。または、一方の分割縁部のうち一部が周方向に延出し、この延出部分が他方の分割縁部の下に潜り重なり合う。
【0016】
好ましくは、本発明のコンタクト構造は、(5)前記カバーは軸方向の端部で前記コンタクトの周面に周接可能な所定の幅を有する縮径部を備え、前記カバーは前記縮径部に少なくとも1箇所内向きの凸部を備え、前記コンタクトはこの凸部に対応する位置に穴部を備えるところに特徴を有する(1)から(4)のうち一項記載のものである。
【0017】
この発明によれば、分割カバーの縮径部に備わる凸部がコンタクト周面に形成された穴部に嵌り込むことによってカバーはコンタクトの所定の位置に固定されることとなる。
【0018】
好ましくは、本発明のコネクタは、(6)上記(1)から(5)のうち一項記載のコン
タクト構造が非導電性のハウジングに組み込まれたものである。
【0019】
この発明によれば、上記(1)から(5)に記載されたコンタクト構造が組み込まれた電線コネクタが得られる。カバーの外形の拡大が抑制されているので、ハウジングの外形の拡大も抑制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコンタクト構造を示す外観斜視図である。
図2図2は、同コンタクト構造のカバーが分割された状態を示す外観斜視図である。
図3図3は、同コンタクト構造のカバーの外観斜視図である。
図4図4は、同コンタクト構造のカバーの6面図であって、(1)は正面図、(2)は上面図、(3)は後面図、(4)は底面図、(5)は左側面図、(6)は右側面図である。
図5図5は、同コンタクト構造のカバーの組み合わせ過程を示す図であって、(1)は組み合わせ前、(2)は組み合わせ後を示す図である。
図6図6は、図1に示すVI−VI線に沿って切断したコンタクト構造の断面図である。
図7図7は、図1に示すVII−VII線に沿って切断したコンタクト構造の断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係るコンタクト構造の周囲にシールドシェルが装着された状態の外観斜視図である。
図9図9は、図8に示すIX−IX線に沿って切断したコネクタ構造の断面図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態に係るコンタクト構造の軸方向に直交する方向に切断した断面図である。
図11図11は、本発明の第3実施形態に係るコンタクト構造の軸方向に直交する方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定的に解釈されるものではなく、発明の要旨を大きく逸脱しない範囲で実施することができる。図1は、本発明の実施形態に係るコンタクト構造を示す外観斜視図である。図2は、同コンタクト構造のカバーが分割された状態を示す外観斜視図である。図3は、同コンタクト構造のカバーの外観斜視図である。図4は、同コンタクト構造のカバーの6面図であって、(1)は正面図、(2)は上面図、(3)は後面図、(4)は底面図、(5)は左側面図、(6)は右側面図である。図5は、同コンタクト構造のカバーの組み合わせ過程を示す図であって、(1)は組み合わせ前、(2)は組み合わせ後を示す図である。なお説明中の指示方向は、図中に示される方向定義に従う。
【0022】
〈コンタクト構造〉 本実施形態に係るコンタクト構造5は、図1図2に示されるように、後端側で電線Wに接続する導電性のコンタクト30と、電線Wとコンタクト30との接続部を所定の長さに亘って環状に覆う非導電性のカバー10とを有している。コンタクト30は前後方向に軸状に延び、その後端の軸線上に電線Wが接続されている。カバー10は外観たる型で、軸方向に沿った2つの分割面で分割カバー10a単位に等しく2分割されている。
【0023】
導電性のコンタクト30は、銅合金の圧延材料からなり、所定の加工工程を経た後に図2に示されるような形が得られる。コンタクト30は、図示しない相手コンタクトと電気的に接続するための円形筒形の本体31と、その後方に電線Wと電気的に接続するためのかしめ機構からなる接続部32とを一体的に備えている。
【0024】
コンタクト30の本体31は、図2に示されるように、展開形状方形の圧延材料の対向する端面同士が突き合わされるように両辺を巻きつけ、端面同士を合わせて円形筒状に成形したのである。円形筒状の本体31後方寄りの位置に矩形の係止孔31aが形成されている。係止孔31aはカバー10を係止固定するための穴で本体31表面の180度反転位置に一対形成されている。
【0025】
コンタクト30の接続部32は、図2に示されるように、電線Wの中心にある導電性の芯線に電気的機械的に接続する。芯線の接続方式は、展開時方形の圧延材料の中央部に置かれた芯線を包むように両側から巻き込み最後にかしめて固定する、圧着方式である。
【0026】
〈カバー〉 本実施形態に係るカバー10は、図3図4に示されるように、合成樹脂製の非導電性材料の射出成形によって得られる外観たる状の中空体である。カバー10は軸方向に沿った2つの分割面で2分割され、2つの分割カバー10aの組み合わせで一つのカバー10が組み付けられる。カバー10の分割は等しく2分割で、形状、構造とも分割カバー10aは1種類のみで足りる。組み合わせ姿勢は、軸線に沿った180度反転の位置で互いに内側を対向させた姿勢である。
【0027】
分割カバー10aは、図3に示されるように、半割り筒状体からなり前後両端で縮径するように端部が絞られている。分割カバー10aは、周面方向に延びる周壁11、周壁11の前方を区切る前壁12、周壁11の後方を区切る後壁13からなる。
【0028】
分割面110は、図3に示されるように、同一平面を構成し、2つの分割カバー10aが組み合わされる時、対応する分割カバー10aの分割面は平行に重なり合う。分割カバー10aの前壁12には、前孔12aの半円部分が形成されている。前孔12aの大きさは、2つの分割カバー10aの組み合わせ時、間に挟むコンタクト本体31の直径に対応している。前孔12a周囲の前孔壁12aaには、中央部に内向きに突出する係止凸部121が形成されている。係止凸部121は、組み立て時、対応するコンタクト30を係止固定するためのものである。
【0029】
分割カバー10aの後壁13には、図3に示されるように、後孔13aの半円部分が形成されている。後孔13aの大きさは、2つの分割カバー10aの組み合わせ時、間に挟む電線Wの直径に対応するように、後孔壁13aaで形成されている。分割カバー10aは、周壁11の外周面に沿って周方向に突出する上重ね部111を一方の分割縁部に備え、他方の分割縁部には、2つの分割カバー10aの組み合わせ時、上重ね部111の下側に重ね合わされる下重ね部113を備える。
【0030】
上重ね部111は、図3図4に示されるように、周壁11の外周面にほぼ沿うようにして分割縁部から板状に延出する。上重ね部111は、先端にテーパーが形成され、中央に四角形の係合穴112が穿たれている。上重ね部111の上面は、2つの分割カバー10aの組み合わせ時、周壁11の外周面の一部を構成する。上重ね部111の下面は、周壁11の内周面から連なる。上重ね部111は、先端下面及び左右側面先端に対応する下重ね部113を案内容易なようにテーパーが形成されている。
【0031】
下重ね部113は、図3図4に示されるように、上重ね部111の下面に上面が重ね合わされるように周壁11の分割縁部から周方向に突出する。下重ね部113は、分割縁部の一部が周壁11の厚み相当分内側へ沈んだ状態で分割面から接線方向に延出している。下重ね部113は、上面中央に外向きに突出する係合凸部を備えている。係合凸部は、2つの分割カバー10aの組み合わせ時、上重ね部111の係合穴112に係合し、重ね合わせ部を固定する。下重ね部113は、周壁11との左右の段差部にガイド壁116を
備える。ガイド壁116は、分割カバー10aの組み合わせ時、上重ね部111を係合位置に案内する。分割カバー10aの内周面には、図4に示されるように、前壁から後壁に亘って連なる台状のコンタクト支持台115が備わる。
【0032】
〈カバーの組み合わせ〉 カバーの組み合わせを図面にしたがって説明する。図5は、本発明の実施形態に係るコンタクト構造のカバーの組み合わせ過程を示す図であって、(1)は組み合わせ前、(2)は組み合わせ後を示す図である。図6は、図1に示すVI−VI線に沿って切断したコンタクト構造の断面図である。図7は、図1に示すVII−VII線に沿って切断したコンタクト構造の断面図である。
【0033】
カバー10の組み合わせは、図5に示されるように、内面同士が向かい合う姿勢で2個の分割カバー10aを対向させると、軸線に対して180度反転位置にある2箇所で、一方の分割カバー10aの上重ね部111が他方の分割カバー10aの下重ね部113に向かい合う。上重ね部111は、先端下面及び左右側面先端に案内容易なようにテーパーが形成されている。軸線に対して180度反転位置にある2箇所で、一方の上重ね部111が他方の下重ね部113の上に位置する姿勢で組み合わされ、テーパーの誘いに沿うように、2つの分割カバー10a同士は一体化される。このとき、一方の上重ね部111の左右側面のテーパーは、他方の下重ね部113の左右に立設するガイド壁116に摺接しながら進み、同時に互いの位置を正規組み合わせ位置に導いていく。
【0034】
正規組み合わせ位置にある2つの分割カバー10aは、図5に示されるように、軸線に対して180度反転位置にある。一方の下重ね部113の上に他方の上重ね部111が重ね合わさり、下重ね部113の係合凸部114が上重ね部111の係合穴112に嵌り込む。正規組み合わせ位置にある2つの分割カバー10aは、軸線に対して180度反転位置にある2箇所の下重ね部113と上重ね部111との重ね合わせ部で、前後方向、及び回転方向の動きが規制される。これにより、組み合わされた2つの分割カバー10aは、不用意な力が作用しても大きなずれは生じず、また容易には解けない程度の力で結合している。
【0035】
正規組み合わせ位置で組み合わされたカバー10は、図5図6に示されるように、カバー10の外周面から外方へ張り出す凸状部を有せず、外周面の拡大が生じる部分はない。
2つの分割カバー10a同士の組み合わせは、図2に示されるように、後端の接続部32で電線Wに接続されたコンタクト30の接続部32周辺に組み付けられる。分割カバー10aの前壁12に備わる前孔12aがコンタクト本体31の後端に対応し、後壁13に備わる後孔13aが電線Wのシールド部に対応する。2つの分割カバー10a同士が組み合わされて完全な円形が形成される前孔12aの直径は、対応するコンタクト本体31の直径に比べて所定のクリアランスを備えた大きさである。また、後孔13aの直径は、対応する電線wの直径に比べて所定のクリアランスを備えた大きさである。
【0036】
2つの分割カバー10a同士が組み合わされた時、図7に示されるように、前孔壁12aaに備わる係止凸部121がコンタクト本体31後端に備わる係止孔31aに係止する。これにより、カバー10はコンタクト30に固定され、回転方向、前後方向の自由な動きが制限されることとなる。
【0037】
〈シールドシェルの組み付け〉 シールドシェルの組み付けについて図面にしたがって説明する。図8は、本発明の実施形態に係るコンタクト構造の周囲にシールドシェルが装着された状態の外観斜視図である。図9は、図8に示すIX−IX線に沿って切断したコネクタ構造の断面図である。
【0038】
シールドシェル50は、図8に示されるように、銅合金の圧延材料から成形される。シールドシェル50は、コンタクト30の周囲を覆う本体51と、コンタクト30の後方に位置する電線Wのシールド部と電気的に接続する接続部52とを有する。シールドシェル50は、図8に示されるように、本体51の後半部分がカバー10に巻きつきコンタクト30に対して同心円状の所定の位置で固定される。シールドシェル50は、図9に示されるように、シールドシェル50に形成される係止部53と、カバー10の周壁11に形成される被係止部117との係止によってカバー10に固定される。
【0039】
シールドシェル本体51の先端には、図8に示されるように、図示しないハウジングに対する位置決めキー54が備わる。合成樹脂製の図示しないハウジングに装着されたコンタクト構造5はこの位置決めキー54によって位置決めされる。また、本体51先端の周囲には、周方向に等間隔に図示しないハウジングに対する抜け防止のランス55が備わる。図示しないハウジングに装着されたコンタクト構造5は、このランス55によって抜け止めされる。シールドシェル50は、本体51の後方に位置する接続部52で非導電性の被覆部が剥がされた電線Wのシールド部に電気的に接続する。電気的接続はシールド部を周囲から覆う接続部52のかしめによっておこなわれる。
【0040】
シールドシェル50は、図9に示されるように、コンタクト30の軸方向に直行する断面中心に対して同心円上に備わり、カバー10の周壁11に対して密接に装着されている。カバー10は、周壁11の外周面に外向きに張り出す凸状物がないので、シールドシェル50は大きな隙間を生じることなくカバー10に密接に装着されうる。
【0041】
〈本実施形態の効果〉 本実施形態に係るコンタクト構造5及びコネクタ1は、カバー10が2分割された組み合わせ方式である。これにより、コンタクト30への組み付けが容易におこなえる。
本実施形態に係るコンタクト構造5及びコネクタ1は、カバー10が等分に2分割され、雌雄同形状である。これにより、1種類の分割カバー10aのみの組み合わせで一つのカバー10を組み付けることができる。
【0042】
本実施形態に係るコンタクト構造5及びコネクタ1は、カバー10が分割カバー10aの組み合わせからなる合体構造であって、一方の分割カバー10aの分割縁部から延出する下重ね部113は、他方の分割カバー10aの分割縁部から延出する上重ね部111の下に潜り込むようにして重ね合わされ、上重ね部111は、カバー10の外周面から外に張り出す凸状部を有しない。これにより、外形の拡大をともなうことのない分割カバー方式を備えたコンタクト構造5及びコネクタ1が得られる。
【0043】
本実施形態に係るコンタクト構造5及びコネクタ1は、下重ね部113には、係合凸部114が備わり、上重ね部111には、係合穴112が備わる。これにより、外形の拡大をともなうことのない、係合構造を備えたコンタクト構造5及びコネクタ1が得られる。
【0044】
本実施形態に係るコンタクト構造5及びコネクタ1は、分割カバー10aは前孔壁12aaに係止凸部121を備えるとともに、対応するコンタクト本体31の後端には、係止孔31aが備わる。これにより、コンタクト30の所定位置にカバー10が装着されうる。
【0045】
本実施形態に係るコンタクト構造5及びコネクタ1は、コンタクト30の周囲にシールドシェル50が備わる。これにより、高周波帯域の信号伝送の接続部に使用することができるコンタクト構造5及びコネクタ1が得られる。
【0046】
〈他の実施形態〉 以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上
述した実施形態に限定的に解釈されるものではなく、発明思想の範囲内で種々の変更が可能である。他の実施形態について、図面にしたがって説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係るコンタクト構造の軸方向に直交する方向に切断した断面図である。図11は、本発明の第3実施形態に係るコンタクト構造の軸方向に直交する方向に切断した断面図である。
【0047】
第2実施形態は、図10に示されるように、カバー1010の軸方向に直交する面の断面形状が矩形状である。カバー1010は、2つの分割カバー1010aに等分割され、一方の分割縁部からは、上重ね部1111が延出し、他方の分割縁部からは、下重ね部1113が延出する。下重ね部1113は、上重ね部1111の下に潜り込むように重ね合わせられる。これにより、外形が拡大されることなく、係合構造を備えた断面矩形状の分割カバー1010aを備えたコンタクト構造及びコネクタが得られる。
【0048】
第3実施形態は、図11に示されるように、カバー2010の軸方向に直交する面の断面形状が6角形状である。カバー2010は、2つの分割カバー2010aに等分割され、一方の分割縁部からは、上重ね部2111が延出し、他方の分割縁部からは、下重ね部2113が延出する。下重ね部2113は、上重ね部2111の下に潜り込むように重ね合わせられる。これにより、外形が拡大されることなく、係合構造を備えた断面矩形状の分割カバー2010aを備えたコンタクト構造及びコネクタが得られる。
このように、実施形態を変更した場合でも概ね上記した効果が得られる。
【符号の説明】
【0049】
1 コネクタ
5 コンタクト構造
10 カバー
10a 分割カバー
11 周壁
110 分割面
111 上重ね部
112 係合穴
113 下重ね部
114 係合凸部
115 コンタクト支持台
116 ガイド壁
12 前壁
13 後壁
12a 前孔
13a 後孔
121 係止凸部
30 コンタクト
31 本体
31a 係止孔
32 接続部
50 シールドシェル
51 本体
52 接続部
53 係止部
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11