【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の加工装置では、加工部材に清浄化かつ親水化処理を施す紫外光光源を用いて、微小な領域への加工、例えば、ダイヤモンド切刃を有する精密切削工具の加工や金型表面の高精度な研磨を行うことが困難であった。
【0011】
具体的には、紫外光は大気中で不安定であり、瞬間的に保有するエネルギーを消失してしまうため、加工部材に均一に照射することが難しかった。特に、数μm程度の微小な領域に対しては均一な照射が難しく、安定的に高い加工精度を実現し難いものであった。
【0012】
また、紫外光はエネルギー的に不安定な性質のため、紫外光光源を加工部材になるべく近接させて照射する必要があるが、紫外光光源のサイズ的な制約があった。即ち、一般的なUVランプ等を加工対象の微小な領域に近づけるには限度があり、充分な加工精度を担保するには特別仕様の加工装置を設ける必要があった。
【0013】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであって、ダイヤモンド等の難加工性の高機能材料表面の微小な領域を高能率かつ高精度に加工することができる加工方法及びこうした加工方法を実現可能な加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[加工方法について]
上記の目的を達成するために、本発明の加工方法は、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給し前記加工部材を清浄化かつ親水化処理すると共に、前記加工部材を前記被加工物に接触させた状態で変位させる工程を備える。
【0015】
ここで、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給し加工部材を清浄化かつ親水化処理することによって、加工部材の最表面部にOH基を表出させる。
そして、OH基が表出した加工部材の最表面部と被加工物を接触させた状態で加工部材を変位させることによって、加工部材を被加工物の表面と化学的に作用させた上で、被加工物の表面を機械的(物理的)に加工することができる。
【0016】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。
【0017】
また、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、接触部位にオゾンを供給することによって、被加工物の加工精度を向上させることができる。
【0018】
また、加工部材の清浄化かつ親水化処理を、加工部材と被加工部材の接触部位に近接した位置からオゾンを供給して行うと、より一層、微小な加工部材の最表面にOH基を表出させることができる。
【0019】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。一般的な紫外光光源に比べて、オゾンはより微小な供給が可能であるため、微小な加工部材に近接した位置からオゾンを供給することができる。この結果、オゾンの供給源の設置位置により自由度が高まり、微小な領域や微細な表面形状を有する被加工物を精度良く加工可能となる。なお、ここでいう、被加工物の微小な領域とは、μmオーダー以下のサイズの領域を意味するものである。
【0020】
なお、「金属酸化物で構成された微小な加工部材」としては、例えば、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、Fe
2O
3、MgO、CaO,Na
2O、K
2O等の無機酸化物や、SiC、SiN、Al
2O
3等のセラミックス、及びそれらからなる構成材料で構成された加工部材が挙げられる。更に、被加工物としては、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜等のダイヤモンド関連材料、SiC、GaN、サファイア、SiCセラミックス、Si
3N
4セラミックス、AIN、ガラス等の硬脆材料等が挙げられる。
【0021】
また、加工部材が、Al
2O
3から構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つからなり、被加工物が、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜のうちいずれか1つからなる場合には、より一層充分に被加工部材を高精度に加工することが可能となる。即ち、加工部材の硬度が高く、かつ、熱伝導率に優れるものとなり、より高精度な加工が実現できる。
【0022】
[加工装置について]
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る加工装置は、金属酸化物で構成された微小な加工部材と、所定の被加工物を前記加工部材と接触させて保持する保持機構と、前記加工部材にオゾンを供給するオゾン供給部と、前記加工部材と前記被加工物を接触させた状態で、前記加工部材を変位させる駆動部とを備える。
【0023】
ここで、金属酸化物で構成された微小な加工部材と、所定の被加工物を加工部材と接触させて保持する保持機構と、保持機構にオゾンを供給するオゾン供給部によって、接触部位にオゾンを供給し加工部材を清浄化かつ親水化処理して、加工部材の最表面部にOH基を表出させることができる。
そして、加工部材と被加工物を接触させた状態で、加工部材を変位させる駆動部によって、加工部材を被加工物の表面と化学的に作用させた上で、被加工物の表面を機械的(物理的)に加工することができる。
【0024】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。
【0025】
また、保持機構にオゾンを供給するオゾン供給部によって、被加工物の加工精度を向上させることができる。
【0026】
また、オゾン供給部が前記加工部材と被加工部材の接触部位に近接して配置された場合には、より一層、微小な加工部材の最表面にOH基を表出させることができる。
【0027】
本発明では、微小な加工部材にオゾンを供給して、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。一般的な紫外光光源に比べて、オゾンはより微小な供給が可能であるため、微小な加工部材に近接した位置からオゾンを供給することができる。この結果、オゾンの供給源の設置位置により自由度が高まり、微小な領域や微細な表面形状を有する被加工物を精度良く加工可能となる。なお、ここでいう、被加工物の微小な領域とは、μmオーダー以下のサイズの領域を意味するものである。
【0028】
なお、「金属酸化物で構成された微小な加工部材」としては、例えば、SiO
2、ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2、Fe
2O
3、MgO、CaO,Na
2O、K
2O等の無機酸化物や、SiC、SiN、Al
2O
3等のセラミックス、及びそれらからなる構成材料で構成された加工部材が挙げられる。更に、被加工物としては、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜等のダイヤモンド関連材料、SiC、GaN、サファイア、SiCセラミックス、Si
3N
4セラミックス、AIN、ガラス等の硬脆材料等が挙げられる。
【0029】
また、加工部材が、Al
2O
3から構成される単結晶状態のサファイア、コランダム、サファイアガラス、サファイアクリスタル、多結晶状態のアルミナ、アルミナセラミックスのうちいずれか1つからなり、被加工物が、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、CVDダイヤモンド、DLC膜のうちいずれか1つからなる場合には、より一層充分に被加工部材を高精度に加工することが可能となる。即ち、加工部材の硬度が高く、かつ、熱伝導率に優れるものとなり、より高精度な加工が実現できる。
【0030】
また、上記の目的を達成するために、本発明の加工方法は、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、同加工部材を清浄化かつ親水化処理すると共に、前記加工部材及び前記被加工物の接触部位の周囲の窒素を捕捉して前記加工部材を前記被加工物に接触させた状態で変位させる工程を備える。
【0031】
ここで、金属酸化物で構成された微小な加工部材を被加工物と接触させ、加工部材を清浄化かつ親水化処理することによって、加工部材の最表面部にOH基を表出させる。
そして、OH基が表出した加工部材の最表面部と被加工物を接触させた状態で加工部材を変位させることによって、加工部材を被加工物の表面と化学的に作用させた上で、被加工物の表面を機械的(物理的)に加工することができる。
【0032】
本発明では、微小な加工部材に清浄化かつ親水化処理を施し、加工部材表面を改質(清浄化かつ親水化)し、その改質された領域と被加工物表面との化学的作用によって加工を実現するものである。
【0033】
また、加工部材及び被加工物の周囲の窒素を捕捉することによって、被加工物の加工精度を向上させることができる。