【解決手段】樹脂成形装置(10)は、キャビティ凹部(12)を有する型開閉可能な一対の金型(14)と、キャビティ凹部(12)を含む金型内部(20)の圧力を調節する圧調節部(22)とを備える。一対の金型(14)は、金型外部と金型内部(20)とを連通する複数の連通路(34)を有する。複数の連通路(34)は、金型内部側の一端部がキャビティ凹部(12)の開口部の周りに開口し、金型外部側の他端部が圧調節部(22)と接続される。圧調節部(22)は、複数の連通路(34)を介して型閉じした金型内部(20)の気体を吸引して金型内部(20)を減圧する減圧部(36)と、複数の連通路(34)のそれぞれの気体流量を調節する流量調節部(38)とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0017】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る圧縮成形を行う樹脂成形装置10について、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る樹脂成形装置10を説明するための図である。
図2〜
図4は、
図1に示す動作中の樹脂成形装置10の要部模式的断面図であり、キャビティ凹部12(成形時のキャビティ)の縁付近のみ(紙面右側が中央側に相当する)を抜き出して示している。
図5および
図6は、
図1に示す樹脂成形装置10の作用効果を説明するための図である。本実施形態では、ワークWに樹脂成形部(樹脂R)を成形して、WLP(Wafer Level Package;ウエハレベルパッケージ)製品を製造する樹脂成形装置10(製造装置)として説明する。成形前のワークW(被成形品)は、平面視円形状の基板S(例えば、配線基板)と、基板S上にマトリクス配置に実装された複数の電子部品P(例えば、半導体チップ)とを有する(
図2および
図5参照)。成形後のワークW(成形品)は、更に複数の電子部品Pを封止する樹脂成形部(樹脂R)を有する(
図4参照)。
【0018】
樹脂成形装置10は、例えば8インチや12インチのような大型のウエハなどのワークWに対応する大きさのキャビティ凹部12を有する型開閉可能な一対の金型14(
図2参照)を備える。一対の金型14は、互いに金型面(クランプ面またはパーティング面ともいう)が対向するように配置される上型16(一方の金型)および下型17(他方の金型)から構成される。本実施形態では、下型17にキャビティ凹部12が設けられる。また、樹脂成形装置10は、上型16の金型面にワークWをセット(配置)するために、公知の吸着機構やチャック機構などから構成されるワークWを保持するワーク保持部(図示せず)を備える。また、樹脂成形装置10は、樹脂成形後の成形品の離型性を向上させるために、キャビティ凹部12を含む下型17の金型面に倣ってリリースフィルムFを吸着して保持するように、リリースフィルムFを吸引する吸引部18、19(例えば、真空ポンプ)を備える。
【0019】
型開閉可能な一対の金型14は、上型16および下型17が型締めされて近接することで型閉じし、型開きされて離隔するように構成される。本実施形態では、上型16を固定型、下型17を可動型として、上型16に対して下型17が近接して一対の金型14が型閉じされ、上型16に対して下型17が離隔して一対の金型14が型開きされる。型開閉機構(図示せず)としては、例えば、駆動源(サーボモータなど)および駆動伝達機構(ボールネジなど)を用い、固定プラテンに組み付けられた上型16に対して、可動プラテンに組み付けられた下型17をタイバーにガイドさせて昇降する公知の機構が用いられる。また、一対の金型14は、上型16および下型17のそれぞれにヒータ(図示せず)を内部に備え、所定温度(例えば、180℃)まで加熱可能に構成される。
【0020】
また、樹脂成形装置10は、キャビティ凹部12を含む金型内部20(
図3参照)の雰囲気(エア)の圧力を調節する圧調節部22(
図1参照)と、金型内部20の複数箇所の圧力を計測する圧力計測部23(
図1参照)とを備える。また、樹脂成形装置10は、
図1に示すように、圧調節部22を制御したり、圧力計測部23からの計測結果を読み取りしたりする制御部24と、制御部24に対して所定条件を入力する入力部25と、所定条件を表示したり、計測結果を表示したりする表示部26とを備える。これにより、エアや樹脂から発生するガスを排出(一次的な減圧)し、金型内の気体を排出することで任意の圧力まで減圧する減圧(二次的な減圧)と、エアや不活性ガスなどの導入(圧入)によって金型内における気体への加圧との切り替えが所定の目的に応じて制御可能に構成される。また、減圧・加圧の強さの変更といった所定の目的に応じて制御可能に構成される。
【0021】
複数の金型ブロックから構成される下型17は、ベース60と、ベース60に固定して組み付けられた平面視(金型面視)円形状のキャビティ駒62と、キャビティ駒62が挿通する平面視円形状の貫通孔64aが形成されるクランパ64とを有する。一対の金型14は下型17でキャビティ凹部12を有するが、キャビティ凹部12の底部がキャビティ駒62の上端面で構成され、キャビティ凹部12の側部がクランパ64の内側面(貫通孔64aの内壁面)で構成される。このため、
図1中の一点鎖線で示すように、キャビティ凹部12の開口部が平面視円形状となる。また、クランパ64は、キャビティ駒62を囲み、ベース60に弾性部材66(例えば、バネ)を介して上下動(進退動)可能に組み付けられる。このような下型17では、キャビティ駒62とクランパ64とが相対的に移動可能な関係であり、キャビティ凹部12の開口部からの深さ(すなわち容積)が可変な構成となる。キャビティ駒62の外側面とクランパ64の内側面との間には隙間が形成されるが、下型17は、密閉された金型内部20(密閉空間)を形成するためにその隙間をシールするシール部材68(例えば、Oリング)を有する。
【0022】
また、下型17は、キャビティ凹部12の開口部の周り(金型内部)と金型外部とを連通する複数の連通路70を有する。連通路70は、例えば、クランパ64を穿孔して構成され、キャビティ凹部12の開口部側の一端部がクランパ64の金型面(上端面)で開口し、金型外部側の他端部が管路を介して吸引部18と接続される。また、下型17は、キャビティ凹部12の底部の周り(金型内部)と金型外部とを連通する複数の連通路72を有する。連通路72は、例えば、クランパ64を穿孔して構成され、キャビティ凹部12の底部側の一端部がキャビティ凹部12のコーナー部と連通するようにキャビティ凹部12の底部周りにあるクランパ64の内側面で開口し、金型外部側の他端部が管路を介して吸引部19と接続される。制御部24によって制御された吸引部18、19(例えば、真空ポンプ)の吸引動作によって、キャビティ凹部12の形状に倣って金型面にリリースフィルムFを吸着して保持することができる。
【0023】
複数の金型ブロックから構成される上型16は、
図1に示す平面視のように、ベース28と、ベース28に固定して組み付けられた円形状のセンターブロック30と、センターブロック30を囲み、ベース28に進退動(上下動)可能に組み付けられたクランパ32とを有する。センターブロック30を囲むクランパ32には円形状の貫通孔32aが形成され、この貫通孔32aにセンターブロック30が挿入されるようにベース28に組み付けられる。このため、センターブロック30の外側面とクランパ32の内側面(貫通孔32aの内壁面)との間には隙間が形成されるが(
図2参照)、上型16は、金型内部20を密閉するためにその隙間をシールするシール部材31(例えば、Oリング)を有する。また、上型16は、型閉じした状態において金型内部20を密閉するためにクランパ32の下端面に設けられた上型16と下型17との間をシールするシール部材33(例えば、Oリング)を有する。
【0024】
また、上型16は、
図1に示すように、金型外部と、センターブロック30と対向するキャビティ凹部12を含む金型内部20(
図3参照)とを連通する複数の連通路34(
図1中、透視した状態を破線で示す)を有する。複数の連通路34は、キャビティ凹部12(金型内部20)側の一端部がキャビティ凹部12の開口部の周りに開口し、金型外部側の他端部が圧調節部22や圧力計測部23と接続される。複数の連通路34の一端部は、キャビティ凹部12の開口部の中心周りに所定の位置(例えば、樹脂Rが中心から外側へ流れ易い方向や、流れ難い方向)で開口される。
【0025】
本実施形態では、
図1に示す平面視において、クランパ32の円形状の貫通孔32aの中心周りに沿った所定角度ごとの位置に減圧及び加圧をするために圧調節部22に接続される連通路34が設けられる。また、これらの連通路34と近接させて圧力計測部23(圧力計52)と接続する連通路34を設けることもできる。また、複数の連通路34は、例えば、クランパ32を穿孔して構成され、一端部がセンターブロック30とクランパ32との間の隙間に連通され、他端部が管路を介して圧調節部22や圧力計測部23に連通して接続される。
【0026】
圧調節部22は、制御部24によって制御される、複数の連通路34を介して型閉じした金型内部20の気体を吸引して金型内部20を減圧する減圧部36と、複数の連通路34のそれぞれの気体流量を調節する流量調節部38とを有する。減圧部36は、例えば、真空ポンプから構成され、この真空ポンプが複数の連通路34と接続される。また、流量調節部38は、例えば、複数の流量調節弁40から構成され、これら複数の流量調節弁40のそれぞれが複数の連通路34と接続される。このような圧調節部22によれば、例えば、キャビティ凹部12内で樹脂Rが流れ易い箇所(換言すれば、樹脂Rを流れ易くする必要の無い箇所)の連通路34を弱く吸引(減圧)し、樹脂Rが流れ難い箇所(換言すれば、樹脂Rを流れ易くする必要の有る箇所)の連通路34を強く吸引(減圧)することができる。
【0027】
また、圧調節部22は、制御部24によって制御される、複数の連通路34を介して型閉じした金型内部20へ気体を圧入して金型内部20を加圧する加圧部42と、複数の連通路34のそれぞれで減圧部36と加圧部42との接続切り替えを行う切替部44とを有してもよい。加圧部42は、例えば、圧縮機から構成され、この圧縮機が複数の連通路34と接続される。この加圧部42として、空気を加圧して導入する構成としてもよいし、空気を加圧して圧入する構成であってもよい。窒素のような不活性ガスを加圧して圧入する構成であってもよい。また、切替部44は、例えば、複数の切替弁46から構成され、これら複数の切替弁46のそれぞれが複数の連通路34と接続される。このような圧調節部22によれば、例えば、キャビティ凹部12内で樹脂Rが流れ易い箇所の連通路34や、樹脂Rが流れ難い箇所の連通路34を吸引したり、圧空したりすることができ、金型内部20の所定箇所ごとに減圧(負圧)されたり、加圧(正圧)されたり圧力を調節することができる。なお、加圧部42は必ずしも設ける必要は無く、切替部44を省き、流量調節部38と減圧部36とを直接接続するようにしてもよい。
【0028】
また、圧調節部22は、制御部24に計測結果が読み取られ、複数の連通路34のそれぞれの流量を計測する流量計測部48を有することが好ましい。流量計測部48は、例えば、複数の流量計50から構成され、これら複数の流量計50のそれぞれが複数の連通路34と接続される。このような圧調節部22によれば、各連通路34の気体流量の結果を確認して流量調節部48で連通路34の気体流量を調節することができる。
【0029】
圧力計測部23は、圧調節部22と接続された連通路34の一端部に隣接する金型内部20の複数箇所の圧力を計測することができるように、圧調節部22と接続された連通路34とは別の連通路34と接続される。圧力計測部23は、例えば、複数の圧力計52から構成される。このような圧力計測部23によれば、金型内部20の複数箇所の圧力の結果を確認して圧調節部22の流量調節部48と接続された各連通路34の気体流量を調節することができる。具体的には、圧力計測部23と接続された1本の連通路34を挟む、圧調節部22と接続された2本の連通路34の気体流量を調節することができる。
【0030】
次に、樹脂成形装置10の動作方法について説明すると共に、成形品の製造方法(成形方法)について説明する。まず、
図2に示すように、一対の金型14が型開きした状態では、上型16において、ローダ(図示せず)によって金型内部に搬入されたワークWを、ワーク保持部(図示せず)によって上型16の金型面に吸着保持(セット)する。下型17においては、まず、キャビティ駒62の上端面が待機位置にくるように、クランパ64に対してキャビティ駒62を相対的に移動させておく。これにより、キャビティ駒62の上端面は、ベース60の上端面を基準としてクランパ64の上端面よりも低位となる。また、フィルム搬送部(図示せず)によって金型内部20に搬入されたリリースフィルムFを、吸引部18、19によってキャビティ凹部12を含む下型17の金型面に吸着保持(セット)する。リリースフィルムFとしては、一対の金型14の加熱温度に耐えられる耐熱性を有し、下型17の金型面から容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材を用いる。具体的にリリースフィルムFとしては、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジンなどを用いる。
【0031】
続いて、リリースフィルムFを介してキャビティ凹部12の底部中央に樹脂Rを供給する。一対の金型14が所定温度に加熱されているため、樹脂Rがキャビティ凹部12の底部(キャビティ駒62の上端面)と接する箇所から溶融していくこととなる。樹脂Rとしては、例えば、液状、顆粒状、粉状、シート状のものを用いる。例えば、液状樹脂を充填して射出可能なシリンジを備えたディスペンサによって樹脂Rを供給することができる。なお、キャビティ凹部12内への樹脂Rの供給は、金型外部でリリースフィルムFの中央部上に樹脂Rを配置し、リリースフィルムFとともに金型内部に搬入して行うこともできる。
【0032】
続いて、
図3に示すように、一対の金型14が型開きした状態から型閉じ状態へ上型16と下型17とを近接させていき、クランパ32の下端面に設けられているシール部材33をクランパ64の上端面に当接(すなわち、シールリングタッチ)させる。これにより、キャビティ凹部12を含む金型内部20が密閉され密閉空間が構成される。このとき、圧調節部22の減圧部36を作動させることで、複数の連通路34を介して金型内部20が減圧され、任意の脱気状態とすることができる。
【0033】
この場合、例えば、この密閉空間において全体を均一な減圧状態としたいときには、全ての連通路34から均一な強さでエア(雰囲気)を吸引する。この場合、例えばクランパ32の貫通孔32aに連通路34が1個接続された構成を想定すると、連通路34から吸引されることで、クランパ32の貫通孔32aの内周面とセンターブロック30の外周面との隙間を介して、この連通路34からエアが吸引されることとなる。この際に、この連通路34に近接した位置においてはエアがすぐに吸引され始めるが、連通路34から離れた位置ではエアの吸引が遅れることとなる。このため、連通路34の位置から離れた位置の減圧状態が不十分となり未充填やボイドが発生し易くなっていた。また、生産性向上のためにワークWの大判化が進められており、これに起因し減圧の際に吸引しなければならない容積が大幅に増大し、エアの吸引(減圧)の状態が更に不均一となり易くなっている。これに対して、本実施形態のように、連通路34を複数設けることで、ワークWが大判化しても均一な減圧状態を確保可能となる。
【0034】
続いて、
図4に示すように、上型16と下型17とを更に近接させていき、上型16のセンターブロック30と下型17のクランパ64とでリリースフィルムFを介してワークW(基板S)をクランプする。これにより、キャビティ凹部12の開口部がワークW(基板S)によって閉塞されることでキャビティが形成され、そのキャビティに樹脂Rが充填され樹脂圧が加えられることとなる。また、上型16のクランパ32と下型17のクランパ64とでシール部材33が押し縮められ、金型内部20の密閉性が向上する。なお、図示しないエアベント溝をクランパ64の上端面に形成しておくことで、リリースフィルムFをクランプした後でもキャビティ凹部12(キャビティ)内を減圧することができる。
【0035】
この場合、上型16と下型17とを更に近接させていくことで、キャビティ凹部12の底部中央に供給された樹脂RがワークWに押し付けられ、キャビティ凹部12の底部外周側へ樹脂Rが拡がり始める。このとき、キャビティ凹部12内では、電子部品Pの配置によって樹脂Rが流れ易い(すなわち流動抵抗が低い)箇所と、流れ難い(流動抵抗が高い)箇所とが発生することが考えられる。このような場合であっても圧調節部22を備える樹脂成形装置10によれば、例えば、樹脂Rが流れ易い箇所の連通路34を弱く吸引(減圧)し、樹脂Rが流れ難い箇所の連通路34を強く吸引(減圧)することができる。
【0036】
次いで、上型16と下型17を更に近接させていき(型締めしていき)、キャビティ凹部12を充填した樹脂Rを圧縮する。具体的には、一対の金型14を型締めしていくと、弾性部材66が押し縮められ、クランパ64が付勢されながらベース60側へ移動する。このクランパ64に対してキャビティ駒62は相対的に移動することとなる。このとき、キャビティ凹部12内でキャビティ駒62の上端面の位置が深い待機位置から浅い成形位置となる。次いで、キャビティ凹部12内で充填された樹脂Rを保圧した状態(成形位置の状態)で所定時間熱硬化させる。
【0037】
ここで、
図5および
図6を参照してワークWの形状(電子部品Pの有無による配置)などに起因する樹脂Rの流れ易さに応じた圧調節部22の調節動作について具体的に説明する。
図5および
図6では、上型16に保持されたワークWの面内位置に対応させて、ワークWの中心から外側に向かって樹脂Rが流れる方向を、最も流れ易い方向D1(電子部品Pによって樹脂Rの流れが遮られない方向)、最も流れ難い方向D2(電子部品Pによって樹脂Rの流れが遮られる方向)、中程度に流れ易い方向D3として示している。また、
図5および
図6では、上型16に保持されたワークWの面内位置に対応させて、キャビティ駒62の上端面(キャビティ凹部12の底面)内の樹脂Rの拡がり位置(外形位置)を、初期位置T0(供給位置)、途中位置T1、途中位置T2(末期位置)の順で時系列的に示している。
【0038】
例えば、圧調節部22の減圧部36のみを作動させ、減圧部36と連通する複数の連通路34から金型内部20を減圧(なお、
図5、
図6中、色抜き矢印は減圧の大きさを示している)しながらワークWに樹脂Rを押し付けていく。そうすると、
図5に示すように、ある時間(例えば、途中位置T1や途中位置T2のとき)においては、方向D1へ樹脂Rが最も流れ、そして方向D3、方向D2の順で樹脂Rが流れることとなる(拡がる)。したがって、キャビティ凹部12内で先に充填される箇所と、後に充填される箇所とが発生してしまい、場合によっては充填が遅れた位置においてボイドや未充填箇所が発生し易くなり、成形品の品質が低下してしまうおそれもある。
【0039】
そこで、例えば、圧調節部22全体を作動させ、減圧部36と連通する複数の連通路34の気体流量を流量調節部38で調節して金型内部20を減圧しながらワークWに樹脂Rを押し付けていくと、
図6に示すように、ある時間(例えば、途中位置T1や途中位置T2のとき)においては、方向D1、D2、D3に関わらず樹脂Rが均等に流れている。具体的には、最も流れ易い方向D1にある連通路34からは最も小さく(弱く)減圧し、最も流れ難い方向D2にある連通路34からは最も大きく(強く)減圧し、中程度に流れ易い方向D3にある連通路34からは中程度に減圧する。これにより、キャビティ凹部12では、ほぼ同時に樹脂Rが充填される。すなわち、充填が遅れた位置においてボイドや未充填箇所の発生を防止して、成形品の品質を向上させることができる。
【0040】
次いで、一対の金型14を型開きして、上型16と下型17とを離隔させて、ワークWを金型外部に取り出す(搬送する)。更に後処理としてワークWの樹脂成形部を所定時間熱硬化(ポストキュア)させることによって、ワークWの電子部品Pが樹脂R(樹脂成形部)で樹脂封止された成形品が完成する。
【0041】
このように、本実施形態によれば、キャビティを含む密閉空間に接続される連通路34を複数設けて、この密閉空間において均一な減圧状態としたり、部分的に減圧状態を異ならせたりすることができる構成としたことにより、例えば、円形に樹脂成形を行う際に未充填のような不具合の発生を防止して、成形品の品質を向上させることができる。
【0042】
(実施形態2)
前記実施形態1では、平面視円形状のワークWに対応して、開口部が平面視円形状となるキャビティ凹部12を用いた場合について説明した。本実施形態では、平面視矩形状のワークWに対応して、開口部が平面視矩形状となるキャビティ凹部12を有する一対の金型14を備えて圧縮成形を行う樹脂成形装置10について、
図7〜
図9を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る樹脂成形装置10を説明するための図である。
図8および
図9は、
図7に示す樹脂成形装置10の作用効果を説明するための図である。本実施形態に係る樹脂成形装置10も前記実施形態1と同様に、一対の金型14と、圧調節部22と、制御部24と、入力部25と、表示部26とを備える。また、樹脂成形装置10は、
図1を参照して説明した圧力計測部23を備えてもよい。なお、本実施形態についての以下の説明において、前記実施形態1と同様の構成は基本的に省略し、相違する点を主に説明する。
【0043】
上型16は、
図7に示す平面視のように、ベース28と、ベース28に固定して組み付けられた矩形状のセンターブロック30と、センターブロック30を囲み、ベース28に進退動(上下動)可能に組み付けられたクランパ32とを有する。センターブロック30を囲むクランパ32には矩形状の貫通孔32aが形成され、この貫通孔32aにセンターブロック30が挿入されるようにベース28に組み付けられる。また、上型16は、
図7に示すように、金型外部とセンターブロック30と対向するキャビティ凹部12(
図7中、対向する位置を一点鎖線で示す)を含む金型内部20(
図3参照)とを連通する複数の連通路34(
図7中、透視した状態を破線で示す)を有する。複数の連通路34は、キャビティ凹部12(金型内部20)側の一端部がキャビティ凹部12の開口部の周りに開口し、金型外部側の他端部が圧調節部22や圧力計測部23と接続される。複数の連通路34の一端部は、キャビティ凹部12の開口部周りの所定の位置(例えば、樹脂Rが中心から外側へ流れ易い方向や、流れ難い方向)で開口される。本実施形態では、一例として
図7に示す平面視において、クランパ32の矩形状の貫通孔32aの辺中央部と角部の位置に1本ずつ連通路34が設けられ、圧調節部22と接続される。なお、連通路34は自由に配置することができ、角部のみに配置することもできる。
【0044】
ここで、
図8および
図9を参照してキャビティ凹部12の形状などに起因する樹脂Rの流れ易さに応じた圧調節部22の調節動作について具体的に説明する。
図8および
図9では、一例として、平面視矩形状のワークWに対して外形円形状に液状樹脂が供給されたときの充填状態についての説明図である。液状樹脂は、生産性向上のためにワークWの中央に必要な所定量の樹脂を1点で供給することが行われている。この場合、液状樹脂は型閉じにより金型に押し広げられることで円形状に拡大していくことになる。
【0045】
これらの図において、上型16に保持されたワークWの面内位置に対応させて、ワークWの中心から外側に向かって流れる樹脂Rの方向を、最も流れる距離が短い方向D1、最も流れる距離が長い方向D2として示している。また、
図8および
図9では、上型16に保持されたワークWの面内位置に対応させて、キャビティ駒62の上端面(キャビティ凹部12の底面)内の樹脂Rの拡がり位置(外形位置)を、初期位置T0(供給位置)、途中位置T1、途中位置T2、途中位置T3(末期位置)の順で時系列的に示している。
【0046】
例えば、圧調節部22の減圧部36を作動させ、減圧部36と連通する複数の連通路34から均一に金型内部20を減圧(なお、
図8、
図9中、色抜き矢印は減圧の大きさを示している)しながら樹脂Rを充填させていく。このとき、キャビティ凹部12の中心から外側の辺中央部までの距離(方向D1の距離)と、キャビティ凹部12の中心から外側の角部までの距離(方向D2の距離)とが異なるため、
図8に示すように、方向D1へ流れる樹脂Rが辺部に到達しても、方向D2へ流れる樹脂Rは角部に対して充填が遅れることとなる(位置T2参照)。
【0047】
そこで、例えば、圧調節部22全体を作動させ、減圧部36と連通する複数の連通路34の気体流量を流量調節部38で調節して金型内部20を減圧しながら樹脂Rを充填させると、
図9に示すように、方向D1よりも優先的に方向D2へ樹脂Rが流れる。具体的には、最も距離の短い方向D1にある連通路34からは最も弱く減圧し、最も距離の長い方向D2にある連通路34からは最も強く減圧する。換言すれば、辺中央部の連通路34よりも角部の連通路34において強くエアを吸引し減圧する。これにより、強く減圧された角部に向けて樹脂Rが流れやすくなり、樹脂Rが優先的に充填されることとなる。したがって、キャビティ凹部12では、その辺中央部に向いた方向と角部に向いた方向とで充填状態の差が小さくなり、矩形のキャビティ凹部12に対して円形に供給した液状樹脂が充填される場合であっても均一に充填される。すなわち、ボイドや未充填箇所の発生を防止して、成形品の品質を向上させることができる。
【0048】
なお、辺中央部の連通路34よりも角部の連通路34において強くエアを吸引し減圧する場合には、角部の連通路34のみからエアを吸引し減圧することもできるし、辺中央部の連通路34からはエア加圧しながら角部の連通路34からは減圧するようにしてもよい。
【0049】
(実施形態3)
前記実施形態では、圧縮成形を行う一対の金型14における密閉空間を減圧する場合について説明した。本実施形態では、成形部14Aを囲むチャンバ部14Bで形成される金型内部20に連通する複数の連通路34の気体流量を調節する圧調節部22を備える樹脂成形装置10Aについて、
図10〜
図14を参照して説明する。
図10は、本実施形態に係る樹脂成形装置10Aを説明するための図である。
図11〜
図14は、
図10に示す動作中の樹脂成形装置10Aの要部模式的断面図であり、樹脂成形装置10Aがポット84(プランジャ86)の軸に対して左右対称であるため、左側のキャビティ凹部12を抜き出して示している。
【0050】
本実施形態に係る樹脂成形装置10Aは、ワークWに樹脂成形部(樹脂R)をトランスファ成形することでパッケージ製品を製造するものであって、前記実施形態1と同様に、一対の金型14(上型16および下型17)と、圧調節部22と、制御部24と、入力部25と、表示部26とを備える。また、樹脂成形装置10Aは、
図1を参照して説明した圧力計測部23を備えてもよい。また、樹脂成形装置10Aは、上型16にキャビティ凹部12が設けられ、下型17にワークWを保持するワーク保持部74(凹部)が設けられる。成形前のワークW(被成形品)は、平面視矩形状の基板S(例えば、配線基板)と、基板S上にマトリクス配置に実装された複数の電子部品P(例えば、半導体チップ)とを有する(
図11参照)。成形後のワークW(成形品)は、更に複数の電子部品Pを封止する樹脂成形部(樹脂R)を有する(
図14参照)。
【0051】
上型16は、開口部が平面視矩形状の凹部28aを有するベース28と、凹部28a内でベース28に固定して組み付けられたセンターブロック30とを有する。本実施形態では、センターブロック30の金型面において、カル76を中心にして両側にランナゲート78およびキャビティ凹部12が連通するように設けられる。このように一対の金型14は上型16で複数のキャビティ凹部12を有するが、その開口部が例えば平面視矩形状になるようにセンターブロック30に形成される。
【0052】
また、上型16は、キャビティ凹部12の開口部の周りと金型外部とを連通する複数の連通路70を有する。連通路70は、例えば、センターブロック30を穿孔して構成され、キャビティ凹部12の開口部側の一端部がセンターブロック30の金型面(下端面)で開口し、金型外部側の他端部が管路を介して吸引部18と接続される。ここでの吸引部18は、型閉じ以降に減圧をするためのものである。
【0053】
下型17は、開口部が平面視矩形状の凹部60aを有するベース60と、凹部60a内でベース60に組み付けられたチェイス80と、チェイス80で形成された凹部80a内でチェイス80に組み付けられたインサート82と、インサート82の中央部で一列に並んで設けられ、樹脂Rが供給される複数のポット84と、ポット84内に設けられるプランジャ86とを有する。このプランジャ86は、樹脂成形装置10Aが備える公知の駆動源(図示せず)によって進退動可能な構成となる。また、下型17は、金型内部20を密閉するためにベース60の金型面(上端面)に設けられた上型16(ベース28)と下型17(ベース60)との間をシールするシール部材33(例えば、Oリング)を有する。また、下型17は、金型内部20を密閉するためにチェイス80の金型面(上端面)に設けられた上型16(センターブロック30)と下型17(チェイス80)との間をシールするシール部材90(例えば、Oリング)を有する。
【0054】
また、下型17は、
図10に示すように、金型外部と、インサート82と対向するキャビティ凹部12を含む金型内部20(
図12参照)とを連通する複数の連通路34(
図10中、透視した状態を破線で示す)を有する。複数の連通路34は、キャビティ凹部12(金型内部20)側の一端部がポット84およびその周りの複数のキャビティ凹部12を一括りとした全体の周りに開口し、金型外部側の他端部が圧調節部22と接続される。複数の連通路34は、例えば、ベース60を穿孔して構成され、一端部がベース60の凹部60aの内壁面に連通され、他端部が管路を介して圧調節部22に連通して接続される。
【0055】
このような一対の金型14は、キャビティ凹部12を含み、キャビティ凹部12に充填された樹脂Rを熱硬化させる成形部14Aと、成形部14Aを囲むように設けられ、金型外部および金型内部とを仕切るチャンバ部14Bとを有する。成形部14Aは、上型16におけるセンターブロック30と、下型17におけるチェイス80、インサート82、ポット84とを有して構成される。また、チャンバ部14Bは、上型16のベース28と、下型17のベース60と、それらでクランプされるシール部材33とを有して構成され、密閉された金型内部20(ベース内周領域)を形成することができる。本実施形態では、チャンバ部14B(より具体的には、下型17のベース60)においてキャビティ凹部12の開口部の周りに複数の連通路34の一端部が開口される。これによれば、例えば、トランスファ成形を行う成形部14Aを有する一対の金型14であっても、圧調節部22によってキャビティ凹部12内で樹脂Rが流れ易い箇所の連通路34を弱く吸引(減圧)し、樹脂Rが流れ難い箇所の連通路14を強く吸引(減圧)し易くなる。
【0056】
次に、樹脂成形装置10Aの動作方法について説明すると共に、成形品の製造方法(成形方法)について説明する。まず、
図11に示すように、一対の金型14が型開きした状態では、下型17において、ローダ(図示せず)によって金型内部に搬入されたワークWをワーク保持部74に配置(セット)する。また、プランジャ86を退避させたポット84内に樹脂Rを供給(セット)する。このとき、一対の金型14が所定温度に加熱されているため、ポット84内に供給された樹脂Rは溶融していくこととなる。
【0057】
続いて、
図12に示すように、一対の金型14が型開きした状態から型閉じ状態へ上型16と下型17とを近接させていき、下型17のベース60の上端面に設けられているシール部材33を上型16のベース28の下端面に当接(すなわち、シールリングタッチ)させる。これにより、キャビティ凹部12を含む金型内部20が密閉される。このとき、予め圧調節部22の減圧部36(
図1参照)を作動させておくことで、複数の連通路34を介して金型内部20が減圧され、任意の脱気状態とすることができる。
【0058】
さらに上型16と下型17とを更に近接させていくことで、下型17のチェイス80の上端面に設けられているシール部材90を上型16のセンターブロック30の下端面に当接(すなわち、シールリングタッチ)させることで、シール部材90の内部のより狭い範囲におけるエアの減圧を吸引部18によって開始する。
【0059】
続いて、上型16と下型17とを更に近接させていくことで、
図13に示すように、上型16のセンターブロック30と下型16のインサート82とでリリースフィルム(図示せず)を介してワークW(基板S)をクランプする。これにより、キャビティ凹部12の開口部がワークW(基板S)によって閉塞されることでキャビティが形成される。なお、センターブロック30の下端面において連通路70とキャビティ凹部12とを連結するエアベント溝(図示せず)を設けることで、上型16のセンターブロック30と下型16のインサート82とによるクランプして型面間に隙間がなくなった後でもキャビティ凹部12(キャビティ)内を減圧することができる。
【0060】
続いて、
図14に示すように、ポット84内のプランジャ86を進出させて樹脂Rを押し出し、カル76およびランナゲート78を介してキャビティ凹部12まで樹脂Rを圧送してキャビティ凹部12を樹脂Rで充填する。このとき、キャビティ凹部12内では、電子部品Pの配置によって樹脂Rが流れ易い(すなわち流動抵抗が低い)箇所と、流れ難い(流動抵抗が高い)箇所とが発生することが考えられる。このような場合であっても、圧調節部22によって、例えば、樹脂Rが流れ易い箇所の連通路34を弱く吸引(減圧)し、樹脂Rが流れ難い箇所の連通路34を強く吸引(減圧)しておくことができる。したがって、各キャビティ凹部12でのボイドや未充填箇所の発生を防止して、各成形品の品質バラツキを低減させることができる。
【0061】
この場合、圧調節部22によって、例えば、樹脂Rが流れ易い箇所に対しては、連通路34を介して、気体を圧入して金型内部20を加圧し、充填状態を均一としたり異ならせたりすることもできる。
【0062】
次いで、キャビティ凹部12内で充填されている樹脂Rを保圧した状態で所定時間熱硬化させる。次いで、一対の金型14を型開きして、上型16と下型17とを離隔させて、ワークWを金型外部に取り出す(搬送する)。更に後処理としてワークWの樹脂成形部を所定時間熱硬化(ポストキュア)させることによって、ワークWの電子部品Pが樹脂R(樹脂成形部)で樹脂封止された成形品が完成する。
【0063】
ところで、
図11に示す状態において、ポット84内に供給された樹脂Rは、その組成や製法によっては溶融したときに水蒸気等を含む多量のガスを発生させる。このガスに含まれる成分がキャビティ凹部12の開口部等に付着することで離型性が低下し、成形品質に悪影響を及ぼす場合がある。これに対し、キャビティ凹部12を挟んで反対側の位置にある連通路34からはガスの排出が完了するまでエアの吸引をすることなく、ポット84に近接した位置の連通路34からこのガスを排出することができる。次いで、ガスの排出が完了した後のタイミングからはキャビティ凹部12を挟んで反対側の位置にある連通路34からもエアの吸引をする。これにより、型面(特にキャビティ凹部12)への悪影響を低減することができる。この場合には、キャビティ凹部12を挟んで反対側の位置にある連通路34からは空気や不活性ガスを圧入することで、樹脂Rから発生したガスをキャビティ凹部12に向けて流さないようにして、キャビティ凹部12に対するガスの接触を防止することもできる。このような対策を行うことにより、例えば、酸化イットリウムや酸化ジルコニウムを含む低密着性の金型材質(母材又は表面処理含む)に対しても離型性の低下防止の観点から有効である。
【0064】
(実施形態4)
前記実施形態3では、プランジャ86を挟んでワークWを配置する場合について説明した。本実施形態では、キャビティ凹部12の開口部の周りに複数の連通路34の一端部およびポット84が設けられる樹脂成形装置10Bについて、
図15〜
図16を参照して説明する。
図15は、本実施形態に係る樹脂成形装置10Bを説明するための図である。
図16は、動作中の樹脂成形装置10Bの要部模式的平面図であり、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)の順に、ポット84からプランジャ86で圧送される樹脂Rがキャビティ凹部12内のワークW上を流れていく様子を示す。
【0065】
樹脂成形装置10Bは、ワークWに樹脂成形部(樹脂R)をトランスファ成形することでWLP製品を製造するものであって、前記実施形態1と同様に、一対の金型14(上型16および下型17)と、圧調節部22と、制御部24と、入力部25と、表示部26とを備える。本実施形態では、上型16にキャビティ凹部12が設けられ、下型17にワークWを保持するワーク保持部74(凹部)が設けられる。また、樹脂成形装置10Bは、キャビティ凹部12を含む上型16の金型面に倣ってリリースフィルムFを吸着して保持するように、リリースフィルムFを吸引する吸引部(図示せず)を備える。成形前のワークW(被成形品)は、平面視円形状の基板S(例えば、キャリアプレート、ウェハ又は配線基板)と、基板S上にマトリクス配置にバンプを介してフリップチップ実装された複数の電子部品P(例えば、半導体チップ)とを有する。成形後のワークW(成形品)は、更に複数の電子部品Pをモールドアンダーフィルして封止する樹脂成形部(樹脂R)を有し、電子部品Pの表面(バンプが形成された面とは反対の面)が露出される。なお、上述した樹脂成形装置10Bにより、平面視円形状以外の基板S上にマトリクス配置にフリップチップ実装を用いずに複数の電子部品Pを搭載したワークWにおいてモールドアンダーフィルしない樹脂成形(樹脂封止)を行ってもよい。
【0066】
上型16は、ベース60と、ベース60に進退動可能に組み付けられた平面視円形状のキャビティ駒62と、キャビティ駒62が挿入される平面視円形状の貫通孔64aが形成されるクランパ64とを有する。一対の金型14は上型16でキャビティ凹部12を有するが、キャビティ凹部12の底部がキャビティ駒62の下端面で構成され、キャビティ凹部12の側部がクランパ64の内側面(貫通孔64aの内壁面)で構成される。このため、キャビティ凹部12の開口部が平面視円形状となる。また、上型16の金型面には、クランパ64の下端面においてキャビティ凹部12と連通するカル76およびランナゲート78が形成される。クランパ64は、キャビティ駒62を囲み、ベース60に弾性部材66(例えば、バネ)を介して上下動(進退動)可能に組み付けられる。このような上型16では、キャビティ駒62とクランパ64とが相対的に移動可能な関係であり、キャビティ凹部12の開口部からの深さ(すなわち容積)が可変な構成となる。キャビティ駒62の外側面とクランパ64の内側面との間には隙間が形成されるが、キャビティ凹部12を含む上型16の金型面に倣ってリリースフィルムFを吸着保持するための吸引路として用いられる。上型16のキャビティ駒62と下型17のインサート82とでワークWをクランプする際にリリースフィルムFが電子部品Pの表面に密着するため、離型後において電子部品Pの表面が露出することとなる。
【0067】
本実施形態では、下型17において、キャビティ凹部12の開口部の周りに沿って複数の連通路34の一端部およびポット84が設けられる。
図16では、キャビティ凹部12内のワークW上を流れる樹脂Rの様子を示しているが、ワークWの周りの白抜きの矢印のある位置に連通路34の一端部が開口していることを示している。また、その白抜きの矢印の向きによって、キャビティ凹部12を含む金型内部20に対する連通路34からの吸引(減圧)、圧空(加圧)を示している。このような樹脂成形装置10Bによれば、エアの減圧や加圧のエアの流れの向きや、これらの強さや、動作のタイミングなどを制御することでキャビティ凹部12の樹脂充填性を高めることができる。なお、キャビティ凹部12の開口部周りには、1つに限らず、キャビティ凹部12を挟んで対向する位置に2つ設けてもよいし、複数のポット84(プランジャ86)を所定間隔(例えば、90°ごと)で設けてもよい。
【0068】
次に、樹脂成形装置10Bの動作方法について説明すると共に、成形品の製造方法(成形方法)について説明する。
図16(A)に示す初期段階においては、例えばすべての連通路34からキャビティ凹部12内のエアを吸引し、金型内部20を減圧する。続いて、
図16(B)に示す充填初期段階においては、ポット84と反対側の連通路34からエアを吸引し、それ以外の連通路34から圧空する。これにより、ポット84からの樹脂RがワークWの中央部を通るように流れて、
図16(C)に示すように、ワークWを直径方向に横断するようにしてポット84と反対側まで樹脂Rが流れる。
【0069】
上述のようなエアの流れを作らない場合には、樹脂Rは、ワークWの外周を流れながら充填されていく。これは、ワークWの外周では電子部品P(遮蔽物)が搭載されていない領域が広くあり、流れ易いからである。このような場合であっても、ワークWの外周に樹脂Rが優先的に充填されることで、ワークWを囲うように充填された樹脂Rがキャビティ凹部12の中央に充填されていくこととなり、キャビティ凹部12の中央にボイドや未充填が発生し易くなることが確認されている。これに対し、本実施形態のような制御を行うことで、樹脂Rはキャビティ凹部12の中央にまず充填されることで、キャビティ凹部12の中央におけるボイドや未充填の発生が確実に防止される。
【0070】
これにより、ワークWの直径方向に実装されている各電子部品Pの間に樹脂Rが行き渡ることとなる。続いて、
図16(D)に示すように、全ての連通路34からエアを吸引するように切り替え、
図16(E)、
図16(F)に示すように、ワークWの中央部を横断した樹脂Rと交差する方向へその樹脂Rを圧送することで、その方向の電子部品P間を通ってキャビティ凹部12が均一に充填される。
【0071】
このように、樹脂成形装置10Bによれば、例えば、大型の円形状のワークWに対して樹脂成形する場合であっても、複数の連通路34と接続される圧調節部22によって、ワークWの中央部に樹脂Rを集中させた後、その中央部の樹脂Rから外周部に均一に拡げてキャビティ凹部12内を充填させることができる。したがって、ボイドや未充填箇所の発生を防止して、成形品の品質を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、次のとおり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0073】
例えば、前記実施形態1では、複数の電子部品が基板全体に実装されたワークの中心に樹脂を供給し、その中心から外側に樹脂を拡げるようにキャビティ凹部内を樹脂で充填させる場合について説明した。これに限らず、基板の中心に電子部品を実装せずにその空いたスペースに樹脂を供給し、外側に拡げるようにキャビティ凹部内を樹脂で充填させることで、充填性を向上させることができる。
【0074】
また、上述の実施形態においては、キャビティ凹部12を含む金型内部20に連通する連通路34について、エアの減圧や加圧を任意に制御可能な構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、フィルムFを吸着して保持するために配置された連通路70、72についても連通路34と同様に複数設け、個別に制御可能とすることができる。これによれば、板面が大判化したことによる、フィルムFの吸着強さのアンバランスを防止することができる。
【0075】
また、フィルムFを吸着して保持するために配置された連通路70、72と、キャビティ凹部12を含む金型内部20に連通する連通路34との両方についてそれぞれ複数設け、個別に制御可能とすることで、連動させて相乗効果を得ることもができる。このような構成によれば、ワークWの大判化によって減圧の際に吸引しなければならない容積が大幅に増大し短時間に強く減圧する必要が生じ、かつ、広い型面を覆うフィルム吸着する必要が発生したとしても、通路34による減圧の状態が偏ることなく均一に減圧が可能となる。これにより、フィルムFを全体的に均一に吸着することができる。これによれば、例えば、キャビティにおける減圧と吸着のバランスが崩れ、一部のフィルムFが吸着面の反対の面に引き寄せられて型面から剥離してしまうことを防止できる。