【実施例】
【0054】
実施例 1: 進行した非小細胞肺癌を有する患者における B7.1/HLA-A 遺伝子改変腺癌細胞株を用いた同種異系のワクチン接種
本実施例は、進行した非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者における B7.1 HLA-A 遺伝子改変腺癌細胞株を用いる同種異系のワクチン接種のために使用されるプロトコールを記載する。本実施例は使用される実験プロトコールを記載する。
【0055】
以下の実施例は、(a) 免疫療法に用いられる、CD80 および HLA A でトランスフェクトされた同種異系の肺腫瘍細胞が、IFN-y についての ELI スポットによって評価される腫瘍特異的 CD8-CTL の活性化および増殖(expansion)を誘発することができるか否かを評価すること; (b) 非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者における、B7.1 および HLA A1 または A2 でトランスフェクトされた同種異系の腫瘍細胞ワクチンの投与の安全性および毒性を評価すること; および (c) NSCLC を有する患者の臨床転帰における、かかる B7.1 ワクチンの抗腫瘍効果を評価することを目的とした。
【0056】
患者の選択
最初に、新たに診断されたかまたは再発性転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)を有する15人の患者を試験した。これら 15 人の患者の解析を、実施例 2 に記載する。さらなる4人の患者を追加して全員で 19 人の患者とし、該 19 人の患者についてのさらなる結果を実施例 3 に記載した。該患者は、化学療法、放射線治療、手術またはこれらすべての組み合わせが既に失敗していた患者である。適格性の基準は以下の通りであった: 年齢 > 18 歳、東部協同腫瘍研究グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)の一般状態(performance status) 0-2、測定可能な疾患、署名によるインフォームドコンセント、および組織学的に確認された NSCLC (癌性胸水を有するステージ IIIB、ステージ IV、または再発性)。脳転移を有する患者は、脳転移が既に処置された場合に、試験へ組み入れた。患者が化学療法、放射線治療または生物学的修飾剤(modifying agent)を受けているか、または先行する 4 週間の期間内にある場合には、該患者を試験に適格でないものとした。全ての患者は、シルベスター総合癌センター(Sylvester Comprehensive Cancer Center)/マイアミ大学の外来患者診療所において処置された。ECOG 基準によって一般状態を評価しながら、体重および生命徴候を含む完全な病歴および物理的試験を行った。治験参加の前に以下の試験を行った: 全血球数; 血小板数; 化学 (尿酸、カルシウム、リン、血清グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(SGOT)および血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(SGPT)を含むトランスアミナーゼ、アルカリフォスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、総ビリルビンおよび直接ビリルビン、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、アルブミン、総タンパク質、電解質、およびグルコース); および心電図(EKG)。HLA 分類を得た。ワクチン接種されている間、腫瘍応答をコンピュータ断層撮影(CT)スキャンによって評価しながら、患者を月に2回追跡調査した。腫瘍測定は、関連部位の CT スキャンを含むX線撮影調査の結果から得た。
【0057】
ワクチン細胞株および遺伝的改変
1994 年に Dr. N. Savaraj (マイアミ大学、医学研究科) によって、肺癌患者の生検からヒト肺腺癌細胞株が樹立され、AD100 と命名された。患者は、転移性の肺腺癌に起因する腸骨稜の骨びらんからくる骨盤痛の初期症状を 1993 年に示した 74 歳の白人男性であった。培養用の癌細胞を、骨盤骨破壊の領域から骨髄穿刺によって得た。該患者は、骨盤への放射線治療で処置されたが、診断の1ヶ月後に死亡した。この患者から得た細胞株は、標準培地(以下に記載される)中において培養され続けており、かつ、マイコプラズマ、ウイルスまたは他の外来性物質の混入が無い。該細胞株は均質であり、プラスチックに対して接着性であり、およそ 26 時間の分裂速度で増殖する。
【0058】
遺伝的改変
AD100 を、プラスミド cDNA である pBMG-Neo-B7.1 および pBMG-His-HLA A2 を用いて、または B45-Neo-CM-Al-B7.1 を用いてトランスフェクトした (Yamazaki et al.、Cancer Res.、59: 4642、1999)。トランスフェクトされた細胞を、G418 およびヒスチジノールを用いて選択した。正しい配列の検証は、制限解析ならびに関連遺伝子産物の発現、すなわちベクター配列の G418 またはヒスチジノール耐性、トランスフェクトされた cDNA の HLA Al、A2、および B7.1 の発現に基づいた。細胞の複製を阻止するため、例えばコバルト(Co)照射器における 12,000 Rads を用いて、細胞に放射線を照射し、使用するまで 5x107 細胞の一定量において 10% DMSO 中で凍結保存した。組織培養に再播種すると、該細胞は約 14 日間生存しているように見えたが、コロニーを形成することができず、該細胞は複製できないことが示された。したがって、該細胞はワクチン細胞として使用するのに安全であると考えられた。それらをワクチンとして使用するための最小限の要件は、ワクチン細胞の代表的バッチについての図 1A に示される通り、細胞の少なくとも 70% における HLA A1 または A2 および B7.1 の共発現であった。トランスフェクトされていない AD100 株は、FACS において抗 HLA A1 もしくは A2 または B7.1 を用いる染色に関して陰性であった。図 1A は、免疫化に使用される CD80 および HLA A1 または A2 でトランスフェクトされた AD100 ワクチン細胞の、フローサイトメトリー解析による品質管理を示す。
【0059】
免疫化
局所的な皮膚反応の程度を減少させるため、体の複数の部位において皮内注射を行った。HLA A1 または A2 であった患者は対応する HLA-対応(matched)ワクチンを受け取り、他方、HLA A1 でも HLA A2 でもなかった患者は HLA Al でトランスフェクトされたワクチン(即ち、HLA-非対応(unmatched)ワクチン)を受け取った。所与のワクチン接種日において、患者は、投与用に2つから5つの一定分量に分割された総用量 5x107 の放射線照射された細胞(12,000 rad)を、四肢において、最も近い隣接する注射部位から針の侵入部位まで少なくとも 5 cm の間隔を空けて、各一定分量の2つから5つの皮内注射として受け取った。治療の下で腫瘍の進行が起こらなかったことを条件として、治療期間の間に、2週間ごとに1回、合計で9回の免疫化(4.5x108 細胞)を行った(表 1)。後続のワクチン接種については、注射部位を別の肢へ時計回りに回転させた。ワクチン接種の一つのコースは、3回の隔週の注入を含んだ。画像評価(CTスキャン)による安定な疾患または応答性の NSCLC の証拠を有し、かつ、無毒性から中程度までの毒性 (グレード < 2) を有する患者を、同じ用量におけるさらなるコースによって処置した。第二の注入のコースは、第一のコースを完了させる3回目のワクチン接種の2週間後に開始した。CT スキャンによる腫瘍進行が無く、かつ、重篤なまたは生命を脅かす毒性 (グレード > 3) が無い場合、第三のコースを、第二の治療コースの3回目のワクチン接種の2週間後に開始して、同じ用量の治療により行った。各コースが行われる前および行われた後における血液検査による臨床毒性および免疫学的評価を実施した。試験の期間中、患者を毎週、臨床的に追跡調査し、これには血球数および基礎的化学のモニタリングが含まれた (表 1)。
【0060】
表 1 は、NSCLC (IIIB/IV) 患者の処置および評価のスケジュールを示す。上記の通り、患者を2週間間隔で9回免疫化した。3つの免疫化の各々の前および後において、免疫学的アッセイを行った。
【0061】
【表1】
【0062】
免疫学的試験
皮膚試験の遅延型過敏(DTH)およびインターフェロン-γ IFN-γについての酵素結合免疫スポット(enzyme-linked immunospot)(ELISPOT)アッセイを含む免疫学的試験を行った。CD4 細胞によって媒介される免疫応答を、105Al、A2 またはトランスフェクトされていない AD100-B7 ワクチン細胞の皮内注射後の DTH 反応によって試験した。3つの免疫化の各コースの前および後において、精製された CD8 細胞を患者から得た。Spin-sep prep (Stem Cell Technologies; Vancouver、Canada)を使用して、抗CD56、抗CD4 および他の抗体を用いる負の枯渇(negative depletion)によって CDS 細胞を濃縮した。純度は 80% よりも高く(図 1B)、主な混入細胞は B 細胞であった(示さず)。解析のために、試験患者の全てのワクチン接種が完了するまで、10% ジメチルスルホキシド(DMSO)および 20% ウシ胎仔血清(FCS)を含有する培地中において CD8 細胞を凍結させた。免疫前およびワクチン接種後の ELISPOT 頻度についての解析を、同じ日に、同じマイクロタイタープレート中において行った。アッセイは四つ組みで行い、2x104 の精製された患者の CD8 細胞を、それぞれ、103 A1 もしくは A2 でトランスフェクトされた又はトランスフェクトされていない AD100 を用いて、K562 を用いて、または培地のみを用いて3日間刺激し、IFN-y を産生する細胞の頻度を ELISPOT によって決定した。免疫化の前ならびに 3、6 および 9 回目の免疫化の後に、免疫アッセイを行った。
【0063】
統計解析
患者の特徴を、パーセンテージを用いた計算として、または平均値および範囲として表す。カプラン・マイヤーの積-極限(product-limit)法によって推定される全生存を、試験への参加から何らかの原因で死亡するまでの時間として定義する。死亡しなかった場合には、患者との最後の接触日において経過観察を打ち切った。患者の生存期間が年齢(連続的)、性別、人種(非ヒスパニック系白人対その他)、腫瘍の病態(腺癌対その他)およびワクチンの HLA 適合と関連するか否かを決定するために、単変量および多変量の比例ハザード回帰を用いた。対応する臨床応答の解析にはロジスティック回帰を用いた。ハザード比および生存している患者のパーセンテージについては、90% の信頼区間(CI) L
90- U
90 を報告する。推定されるパラメータ、例えばハザード比が L
90 を超えることは、95% の信頼度を与えるものと理解できる。
【0064】
実施例 2: 同種異系のワクチンを用いた全細胞免疫化に対する、進行した肺癌患者の特異的 CD8 T細胞応答
本実施例は、同種異系のワクチンを用いた全細胞免疫化についての 15人の患者群の試験結果を記載する。
【0065】
進行した NSCLC ステージ IIIB/IV を有する患者について、HLA の型を分類した。HLA A1 陽性患者は AD-A1-B7 ワクチンを受け取り; HLA A2 陽性患者は AD-A2-B7 ワクチンを受け取り; HLA A1 陽性でも A2 陽性でもない患者は AD-A1-B7 または AD-A2-B7 ワクチンのいずれかを受け取った。精製された患者の CD8 細胞を HLA A1 もしくは A2 でトランスフェクトされたかまたはトランスフェクトされていない AD100 を用いてインビトロで再刺激した後、IFN-y を分泌する CD8 細胞の頻度を ELISPOT によって決定した。対照は、K562 を用いた刺激ならびに刺激細胞を用いない CD8 細胞のインキュベーションを含んだ。
【0066】
免疫化された腫瘍患者の ELISPOT 応答を、それぞれ HLA A1 または A2 でトランスフェクトされた AD100 細胞にインビトロで3日間曝露された HLA A1 または A2 患者から得られた IFN-γ を分泌する CD8 細胞の数を示す、HLA 対応(matched)応答として表す (図 2A)。HLA ミスマッチ(mismatched)応答は、A1 または A2 患者の CD8 細胞をそれぞれ A2 または A1 でトランスフェクトされた AD100 に曝露した場合に形成されたスポットの数を示す (図 2B)。対応応答は、6±4 (平均値の標準誤差、SEM) の IFN-γを分泌する免疫前 CD8 細胞 (2万あたり) から、6回の免疫化の後、最大で 90±35 (SEM) の IFN-γを分泌する細胞まで 15倍増大し、次の3回の免疫化の間このレベルを維持した。ミスマッチ応答は、24±18 から最大 142±42 まで、5.7倍増大した。この9人の患者の群には、3回の免疫化の前および後のいずれにおいても応答を示さず(0 スポット)、その時点において腫瘍が進行した一人の患者が含まれ、該患者は治験から外れた。
【0067】
残りの 5 人の患者は、HLA A1 および A2 のいずれに関しても陰性であった。A1 または A2 でトランスフェクトされた AD 100 への曝露に対するこれらの患者の CD8 応答を、図 2C において非対応(unmatched)応答として示す。IFN-γを分泌する CDS 細胞の頻度は、免疫前の 4.8±1.8 から3回の免疫化後の 105±24 まで 21倍増大し、治験の間を通して一定であった。この頻度の増大は、トランスフェクトされていない 野生型 AD100 に曝露された場合の全患者の CD8 細胞の頻度の増大と同等である (
図2D)。最終的に、応答の特異性は、K562 に対する応答の増大 (図 2E) または曝露されていない CD8 細胞の増大が無いことから明らかになる。K562 に対する CD8 応答と、野生型形態における AD100 もしくは遺伝的改変後の AD100 に対する CD8 応答とは、ワクチン接種後の各時点において有意に異なっている (図 2F)。
【0068】
表 2 に示される CD8 応答は、A1 または A2 陽性患者についての、対応(matched)ワクチンに対する応答を報告する。非 Al、A2 患者については、AD100-A2 に対する応答である。15 人の患者のうち一人は、第一の免疫化のコースを完了する前における治験と関係のない腎不全のため、解析することができなかった。処置された15人の患者のうち、5人の患者が臨床応答を有した: 一人は部分的応答(PR)を有し、4人の患者は安定な疾患(SD)を有した。これらの臨床応答を有する患者のうち4人(PR+3SD)は、以下の期間、さらなる治療を伴うことなく、その疾患の安定化を伴って生存している: 31、28、25 および 12ヶ月。
【0069】
死亡した患者は、初めは SD を 5 ヶ月間有し、その後進行し、数コースの対症的化学療法にもかかわらず 15 ヶ月後に死亡した。対照的に、イレッサ(Iressa)
(商標)を用いた治療の後に安定な疾患を達成した一人の患者を除いて、ワクチン接種に応答しなかった他の10人の患者のうち9人が死亡している。表 2 は、治験前の処置、免疫化に対する臨床応答ならびに免疫応答を含む、全ての患者についてのデータを要約している。処置されている間に進行性の疾患を有した患者は、表 2 に示す通り、試験から外れた。
【0070】
表 2 は、同種異系の B7/HLA A でトランスフェクトされた NSCLC ワクチンを用いて処置された、進行したステージ IIIB/IV の NSCLC を有する15人の患者の臨床応答、免疫学的 CD8 応答、生存および前処置の概要を示す。表 2 中における略語は以下の通りである: PD - 進行性の疾患; NE- 免疫応答については評価できないが、右側の生存期間解析には含めた; PR- 部分的応答; SD- 安定な疾患; C- 化学療法; R- 放射線; S- 手術。生存は、試験への参加からの生存時間を示す; + は患者が生存していることを示す; n.d. 不実施、進行のために試験から外れた患者。
【0071】
【表2】
【0072】
5人の患者が臨床応答を有し、トランスフェクトされたかまたはされていない AD100 へのエキソビボでの曝露によって測定される連続的な免疫化の後に IFN-スポットを形成する CD8 細胞の頻度が増大した一方、K562 に対する反応性は低いまま変化しなかった (図 2E)。臨床的に応答した患者のうち3人(図 2; 1004、1007、1010)においては、18 週間の処置期間の終了後、治験への参加後 35 から 75 週において血液サンプルを得、該サンプルは AD100 に応答する CD8 細胞の相当の力価を依然として示した (図 2G)。実際、2人中2人の患者(1004、1007)において、18 週の時点で免疫化が終了した後でさえ、力価はさらに増大した。
【0073】
解析の時点における全ての患者の生存期間中央値は 18 ヶ月であり、この患者群について予測される1年未満の生存期間中央値を上回った(図 3)。図 3 において 90% 信頼区間を示す。MHC 適合および臨床応答による生存の解析により、HLA 非対応(unmatched)の患者が p=0.07 の統計的に有意ではない生存率の改善を示した一方、臨床的応答者は非応答者と比較して有意な(p=0.008)生存率の改善を有することが明らかとなった。
【0074】
安全性
治験に参加した 15 人の患者のうち、死または入院を必要とする事象として定義される、処置に関連する重篤な有害事象を経験した者はいなかった。処置に関連する副作用は、3日から4日のうちに消散する局所的紅斑および腫脹(swelling)から成った。一人の患者が、処置に関連していた可能性がある一過性の関節痛を訴えた。一人の患者が、最後の免疫化から 30 日以内に肺不全によって死亡した; これまでに心膜炎のエピソードを有した一人の患者は、最後の免疫化のコースの間に心膜液貯留を経験し、心膜開窓術を必要とした。体液中においては、腫瘍細胞は検出されなかった; 患者は免疫化に応答し、依然として安定な疾患状態にある。上記の通り、一人の患者が、1つの免疫化のコースの完了前に腎不全を有した。これらの事象のいずれも、独立した安全性監視委員会によって処置に関連する可能性が高いとみなされることはなかった。
【0075】
実施例 3: 同種異系のワクチンを用いる全細胞免疫化に対する、進行した肺癌患者のさらなる特徴付け
本実施例は、実施例 2 に記載した試験の続きであり、さらなる患者および試験期間を含む。実験は、基本的に実施例 2 および Raez et al., J. Clin. Oncol. 22: 2800-2807 (2004) に記載される通りに行った。
【0076】
患者の特徴
19 人の試験患者の特徴を表 3 に示す。東部協同腫瘍研究グループの一般状態は、18 人の患者(74%)において 0 から 1 であった。13人の患者が A1 (3人の患者) または A2 (10 人の患者) のいずれかの HLA 対応ワクチンを受け取った一方、非Al かつ非A2 であった6人の患者は非対応ワクチン(即ち HLA-A1 ワクチン)を受け取った。HLA A 対応患者はワクチン細胞による直接的抗原提示によって CD8 応答を媒介し得るが、非対応の患者は、ワクチン細胞の死および抗原提示細胞による抗原取り込み後の間接的な抗原提示を介して CD8 応答を開始し得ると考えられた。試験への参加前に、全ての患者は以下の処置をすでに受けていた: 手術を受けた者が9人(47%)、放射線治療を受けた者が6人(32%)、化学療法を受けた者が 17 人(89%)。化学療法で処置された患者のうち、10 人(53%)は1より多くの化学療法による処置が成功していなかった。
【0077】
【表3】
【0078】
臨床転帰
18人の患者が合計で 30 コースのワクチン、合計で 90 回のワクチン接種を受けた(表 4)。5人の患者は完全なコースを3つ受け、2人の患者は完全なコースを2つ受けた。最初のワクチン接種の後に重篤な有害事象(SAE)が生じたために試験から外れた一人の患者(完了したコースなし)を除き、残りの 11 人の患者は完全なコースを1つ受け、その後、疾患の進行のために試験から外れた。4人の患者はワクチン接種後に SAE を経験したが、そのいずれもワクチンに関連するとは判断されなかった。
【0079】
【表4】
【0080】
第一のワクチン接種のコースの間、58歳の女性が心膜開窓術を必要とする悪性の心膜液貯留を発症した; 該患者は試験から外れ、ホスピスへ移り、1 週間後に死亡した。該患者は以前、試験への参加前に5つの対症的化学療法による処置が成功していなかった。76歳の男性患者も心膜開窓術を必要とする心膜液貯留を発症したが、事前スキャンの精査により、発症しつつある心膜液貯留が試験への参加前に明らかにされた。SAE が発症する前に3つのコースのワクチンを受け取ったこの患者は、安定な疾患を継続して有している。該患者は現在も生存しており、31 ヶ月後もさらなる治療を伴わず健全である。
【0081】
55歳の男性は、1 週間前に同意書にサインし、予備的な皮膚試験を受けた後、最初のワクチン接種の日において、化学療法に誘導された腎障害の悪化が発見された。該患者の腎機能はその後悪化し続け、該患者は 3 ヶ月後に死亡した。SAE を経験した4人目の患者は、脳転移を有する 56歳の女性であった。第二のワクチン接種のコースの間に、該患者は呼吸不全を発症し、その後試験から外れ、該疾患の進行から 30 日以内に死亡した。この患者は以前に、4つの対症的化学療法による処置が成功していなかった。
【0082】
他の副作用に関しては、一人の患者が注入部位における一過性の痛み を訴えた。4人の患者が、ワクチン接種部位において1週間以内に消散するいくらかの紅斑を発症した。一人の患者が、最初のコースの後にいくつかの関節において中程度の間接痛を経験した。以下を含む検査値の有意な変化を有する患者は見られなかった: 全血球数および血小板数、クレアチニン/BUN、カルシウム、および肝機能試験。表 5 は、試験において応答を有した6人の患者についての応答までの時間、応答の期間、および生存期間を示す。
【0083】
【表5】
【0084】
一人の患者が 13 ヶ月続く部分的な応答を有し、5人の患者が 1.6 から 39+ ヶ月の範囲の安定な疾患を示した(表 5)。臨床応答率は 32% (19 人中6人の患者)であった。2004年2月の時点で、これらの患者は 23 から 40+ ヶ月の範囲の生存期間を有し、5人の患者が依然として生存していた。
【0085】
部分的な応答を有した患者がポジトロン放出断層撮影スキャンによって確認された新たな悪性の病変を発症した後、その疾患が臨床的に非侵襲性であると判断されたため、該患者は 2 ヶ月の間観察下に置かれた。いくつかの病変はその後、サイズが減少するかまたは消滅した。この患者は、ワクチン接種完了後36 ヶ月において、対症的化学療法を必要とすることなく安定な疾患を有し続けている。処置に対する応答を有した6人の患者のうち、その後の対症的化学療法を必要としたのは一人だけであった。残りの5人の患者は、さらなる処置を必要とすることなく安定な疾患を有し続けている。
【0086】
治療に応答しなかった他の 13 人の患者のうち、2004年2月の時点で生存していたのは2人だけであった。これらの患者のうち一人がゲフィチニブ(イレッサ
(商標))を用いて疾患安定化を経験し、もう一方の患者は対症的化学療法を受けている。
【0087】
年齢、性別、人種、病態およびワクチンの HLA 対応についてのロジスティック回帰分析により、これらの因子のいずれも臨床応答(即ち、部分的な応答または安定な疾患)に対して統計上有意に関連してはいない(全ての場合において P > 0.10)ことが示された。
【0088】
図 4 は、19 人の試験患者についての全生存のカプラン・マイヤー推定を示す(縦のチェックマークは打ち切られた(censored)経過観察を示す)。推定生存期間中央値は 18 ヶ月である (90% CI、7 から 23 ヶ月)。1年、2年、および 3年全生存の推定は、それぞれ 52%(90% CI、32% から 71%)、30% (90% CI、11% から 49%)、および 30% (90% CI、11% から 49%)である。2004年2月の時点で、試験への参加後 1 から 23 ヶ月で 12 人の患者が死亡した (表 2)。依然として生存している7人の患者については、試験参加からの経過観察は現時点で 10 から 40 ヶ月の範囲であり、経過観察期間の中央値が 36 ヶ月である。
【0089】
単変量比例ハザード回帰分析により、HLA 対応ワクチンを受け取る患者において死亡率がより高く(ハザード比 = 4.5; 90% CI、1.1 から 17.2)、腺癌を有する患者において死亡率がより低い(ハザード比 = 0.3; 90% CI、0.1 から 1.0)可能性が示唆された。しかし、5つの共変数(HLA 対応、年齢、性別、人種、病態)を含む多変量解析により、全体の死亡率に対するワクチンの HLA 対応の有害作用は割り引かれた; 対応する補正ハザード比は 1.9 (P =0.51) であった。腺癌対他の病態の補正ハザード比は通常の有意性レベルにおける確率の範囲内である 0.2 (P =0.11) であった。
【0090】
ワクチン接種に対する免疫応答
このコホートの患者は大いに前処理されており、かつ、免疫抑制性であると考えられている大きな腫瘍量を有していた。したがって、腫瘍ワクチン接種プロトコールによってこれらの患者において特異的免疫応答を誘導し得るか否かを確証することは重要であった。CD8 CTL 応答は腫瘍拒絶にとって重大な意味を持つと考えられるため、研究は免疫系のこの部門(arm)に焦点をあてた。非特異的ナチュラルキラー(NK)活性と CD8 CTL 活性とを区別するため、二重のストラテジーを採用した。第一に、抗 CD56 を抗体の負の選択カクテルに含めることによって CD8 細胞を精製して NK 細胞を除去した。第二に、CD8 細胞を NK の標的である K562 に曝露した。NK の混入は、K562 への曝露に応答する細胞の高い力価をもたらす。
【0091】
一人を除く全ての患者が 6 週間(3回のワクチン接種)後において測定可能な CD8 応答を有し、該応答は 12 週間後に増大し、かつ、18 週間後までに安定化する傾向があった (表 6)。野生型 A1 または A2 でトランスフェクトされた AD100 への患者 CD8 細胞のインビトロでの曝露は有意差を生じなかった。2人の患者(患者番号 1012 および 1019)は、早期の疾患進行または有害事象により、解析に利用できる経過観察サンプルが無かったため、免疫学的に評価することができなかった。一人の患者は非常に穏やかな応答しか有さなかったが、他のほとんどの患者は、ワクチン接種に対して、強力な、大いに統計的に有意な応答を示した (ワクチン細胞への曝露に対する免疫化前および免疫化後の力価、および K562 対照に対する応答の欠如を参照されたい; 図 5、上部パネル)。一人を除く全ての患者が 6 週間(3回のワクチン接種)後において測定可能な CD8 応答を有し、該応答は 12 週間後に増大し、かつ、18 週間後までに安定化する傾向があった (表 6)。野生型 A1 または A2 でトランスフェクトされた AD100 への患者 CD8 細胞のインビトロでの曝露は、有意差を生じなかった。2人の患者(患者番号 1012 および 1019)は、早期の疾患進行または有害事象により解析に利用できる経過観察サンプルが無かったため、免疫学的に評価することができなかった。一人の患者は非常に穏やかな応答しか有さなかったが、他のほとんどの患者は、ワクチン接種に対して、強力な、大いに統計的に有意な応答を示した (ワクチン細胞への曝露に対する免疫化前および免疫化後の力価、および K562 対照に対する応答の欠如を参照されたい; 図 5、上部パネル)。
【0092】
【表6-1】
【0093】
【表6-2】
【0094】
患者がワクチンに対し HLA 対応(matched)であったか否かによって CD8 応答における統計的有意差は無かった (表 6)。ワクチン接種前のほとんどの患者は、ワクチン細胞に対して低い免疫応答しか有さないかまたは免疫応答を有さず、K562 への曝露に対しても同様に低い活性しか示さなかった。一人の患者(番号1016)は、AD100 に対してワクチン接種前の強い CD8 活性を有し、かつ、K562 に対しては最小の活性しか有さず (図 5、最後のパネル)、腫瘍に対する既存の免疫活性が示唆される。別の患者(番号1002)は、その CD8 細胞のワクチン接種前の高い K562 反応性を有し、AD100 に対しては活性が低かった。ワクチン接種は AD100 に対する反応性を増大させ、かつ、存在する場合には K562 に対する CD8 反応性を減少させる傾向があった。
【0095】
6人の臨床的に応答する患者の免疫応答(
図5B、下部パネル)は、AD100 刺激に対する CD8 力価がワクチン接種の休止後 150 週まで上昇し続けることを示している。
【0096】
本明細書に記載の試験に参加した患者における疾患の進行したステージを考慮すると、いくつかの臨床的利益の証拠は予測されず、かつ有望なものであった。さらに、試験した B7-ワクチンは CD8 CTL 応答を誘導したため、本試験において見られた臨床転帰の原因として CD8 応答が関連している可能性がある。最小の疾患の状態において、さらなる試験を行う。再発の確率を減少させ、潜在的に生存期間を延ばすため、初期のステージの NSCLC (ステージI/II) を有する患者に、手術後にワクチン接種する。
【0097】
本実施例において記載する結果は、ワクチン接種によって腫瘍の進行を遅らせることができ、かつ、患者がワクチンの HLA A1 または A2 遺伝子座に対して同種異系であるか否かに関わらずこの効果が生じることを示す。これらの発見はまた、間接的な抗原提示が抗腫瘍活性を促進するのに効果的であること、および同種異系の MHC 分子が該効果を増強することを支持する。
【0098】
実施例 4: AD100-A1-B7.1 細胞の樹立および増殖
NSCLC を有する患者に由来するヒト肺腺癌細胞株(AD100 と命名された)が、1994年にマイアミ大学において樹立された。この細胞株は、標準培地中において培養され続けており、かつ、マイコプラズマ、ウイルスまたは他の外来性物質の混入が無い。該細胞株は、均質であり、プラスチックに対して接着性であり、およそ 26 時間の分裂速度で増殖する。
【0099】
AD100 細胞を、プラスミド cDNAである pBMG-Neo-B7.1 および pBMG-His-HLA A2 を用いて、または B45-Neo-CM-A1-B7.1 を用いてトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞を、G418 およびヒスチジノールを用いて選択した。正しい配列の検証は、制限解析ならびに関連遺伝子産物の発現、すなわちベクター 配列の G418 またはヒスチジノール耐性、トランスフェクトされた cDNA の HLA A1、A2、および B7.1 の発現に基づいた。それらをワクチンとして使用するための最小限の要件は、ワクチン細胞の代表的バッチについての 図 1a に示される通り、細胞の少なくとも 70% における HLA A1 または A2 および B7.1 の共発現であった。
【0100】
ADl00-Al-67.1 細胞は前もって一定分量に調製し、凍結することができる。細胞を含むクライオバイアル(cryovial)を、37℃のウォーターバスおよび緩やかな回旋を用いて素早く完全に解凍する。次いで、前もって準備され、氷上に維持された無菌の 15 ml の円錐型遠心管へ細胞を直ちにに移す。この 15 ml の円錐型遠心管へ 9ml の 完全培地 1 (IMDM; FBS 熱非働化保証 - 終濃度 9%; ゲンタマイシン - 終濃度 0.04 mg/ml)を一度に1から2滴、ゆっくりと添加し、その間、細胞を培地と均一に混合するために管を穏やかに旋回させる。この工程には 10 から 15 分を要する。全ての培地を添加した後、ブレーキを“低”にセットした状態で、室温にて 300xg (1200 rpm) で 10 分間、細胞を遠心する。次いで上清を穏やかに吸引除去し、細胞を、室温に平衡化した 10 ml の完全培地 2 (IMDM; FBS 熱非働化保証 - 終濃度 9%; ゲンタマイシン - 終濃度 0.04 mg/ml; ジェネテシン G-418 - 終濃度 1 mg/ml) 中に再懸濁させる。
【0101】
その後、トリパンブルー(Trypan Blue) を 1:10 希釈にて用いて細胞の計数および生死判別を行う。次いで細胞を、35 ml の完全培地 2 を含む T-175 組織培養フラスコあたり 2x10
6 細胞の量で播種する。次いで、播種されたフラスコを 3 から 5 日間、5% CO
2 を有する 37℃のインキュベーター中でインキュベートする。
【0102】
稼働中の細胞バンクのための細胞の培養
細胞がフラスコへ接着したか否かの評価を行う培養3日目までは、細胞を妨害すべきではない。培養3日目において、接着した細胞のパーセンテージを見積もる必要がある。細胞の≧70% がフラスコへ接着している場合には、培地を交換する必要がある。吸引ピペットを用いて古い培地を除去し、37℃まで事前に温められた 50 ml の新鮮な完全培地 1 を各フラスコへ添加すべきである。次いで、さらなる培養のため、5% CO
2 を有する 37℃のインキュベーターへフラスコを戻す。もし、培養3日目において細胞を観察した際に、接着しているのが細胞の≦70% であるとみなされる倍場合には、培地を交換せずに5日目まで細胞をそのままにしておく必要がある。培養 3-5 日後において、37℃のインキュベーターからフラスコを取り出し、集密度(confluency)のパーセンテージを決定する。細胞を、90-95% コンフルエントであるとみなされる時まで培養する必要がある。該細胞は、集密度がフラスコあたり 90-95% に達したときに分割しなければならない。
【0103】
稼働中の細胞バンクのための、トリプシン EDTA を用いる細胞の回収
細胞が 90-95% の集密度に到達した後、上清を吸引により除去し、予め 37℃に温めた 12 ml のトリプシン-EDTA を各フラスコへ添加することによって細胞を回収する。該細胞を、この溶液中において 37℃でおよそ 20 分間インキュベートする。インキュベーションの後、細胞がもはやフラスコに接着していないことを確実にするため、その表面を横切ってフラスコを勢いよく振る。次いで 13 ml の完全培地を添加してトリプシン-EDTA 反応を中和する。次いで、フラスコから剥がれた細胞を含む上清を回収し、無菌の 50 ml または 250 ml 円錐型遠心管へ移す。全てのフラスコからの細胞懸濁液を合わせて、同時に洗浄すべきである。次いで、細胞を、ブレーキを“低”にセットした状態で、室温にて 300xg (1200 rpm) で 10 分間遠心する。次いで、上清を吸引除去し、細胞を 15-30ml の(37℃に)予め温められた完全培地 2 中に再懸濁させる。
【0104】
その後、トリパンブルーを 1:10 の希釈で用いて細胞の計数および生死判別を行う。
【0105】
次いで、新しい T-175 組織培養フラスコに、(37℃に)予め温められた完全培地 2 を用いて、フラスコあたり 2.0x10
6 細胞の密度で播種する。各 T-175 組織培養フラスコ内の完全培地 2 の総容積は 35 ml とすべきである。
【0106】
上記の回収および拡大(expanding)工程を、201 T-175 フラスコに一度に播種できるまで、およそ 7 日毎に繰り返す。この閾値が満たされた場合には、最後の拡大のために完全培地 2 を用いて細胞を播種する。最初の 3-5 日の培養の後、細胞が接着して栄養供給できる状態になった場合に、完全培地 1 への変更を用いる。細胞が 90-95% の集密度に達したときに、上記の通りに細胞を回収する。次いで、細胞を、少なくとも 200 ml の (4℃) 洗浄培地 (0.9% の塩化ナトリウム; 0.5% の HAS; および 0.0067% の USP 炭酸水素ナトリウム) 中にて2回洗浄する。2回目の洗浄の後、細胞ペレットを洗浄培地中に再懸濁させて最終容積 200 ml とする。1:70 希釈のトリパンブルーを用いて細胞の計数および生死判別を再度行う。次いで、コバルト照射装置を用いて 12,000 rads で細胞に放射線照射する。これにて、細胞は凍結保存できる状態となる。
【0107】
拡大した AD100-A1-B7.1 細胞の凍結保存
少なくとも 80-120 個のクライオバイアルを、細胞識別、バッチ番号、細胞濃度、実験者のイニシャル(tech's initial)および日付を用いてラベルするべきである。次いで、細胞を、4℃において 300xg (1200rpm)で 10 分間、ブレーキをオンにした状態で遠心する。その後、上清を吸引除去し、ペレット化した細胞を氷上に置く。次いで、細胞を穏やかに混合しながらゆっくりと氷冷の洗浄培地中に再懸濁させて 200xl0
6/mlの濃度とする。氷冷の凍結培地 (0.9% の塩化ナトリウム; 0.5% の HAS; 0.0067% の USP 炭酸水素ナトリウム; および 20% DMSO) を 1:1 の比でゆっくりと添加して 100xl0
6/ml の細胞濃度および 10% の DMSO 濃度を得る。次いで、細胞を氷上で 0.5 ml (50xl0
6 細胞) ずつ事前に準備されたクライオバイアルに分注し、その後 -80℃にて 18-24 時間保存する。24 時間後、凍結した細胞を液体窒素保存タンクへ移す。
【0108】
本願において、様々な出版物が引用されている。これら出版物の開示事項は、本発明が関連する技術水準をより完全に説明するために、各々が引用により取り込まれると具体的にかつ個々に示されるのと同程度に、引用によりその全体が本願に取り込まれる。本明細書において引用される特許、公開された出願および科学文献は、当業者の知識を証明するものであり、各々が引用により取り込まれると具体的にかつ個々に示されるのと同程度に、引用によりその全体が本願に取り込まれる。本明細書において引用されるいかなる参考文献と本明細書の特定の教示との間のいかなる矛盾も、後者を支持することで解消されるものとする。同様に、技術分野において理解されている単語または語句の定義と本明細書において具体的に教示される該単語または語句の定義との間のいかなる矛盾も、後者を支持することで解消されるものとする。
【0109】
実施例 5. 1. フェーズ 1 試験の設計および結果
各々が 2 週間の間隔で離れている3回のワクチン接種が、処置の一つのコースを構成した。第一のコースの終わりに、安定な疾患または応答性の NSCLC の証拠(コンピュータ断層撮影スキャンによる)を有し、かつ、無毒性から中程度までの毒性(グレード≦2)を有する患者を、第二のコースのワクチン接種によって処置した。毒性のために第二または第三のコースの処置を拒否した患者はいなかった。
【0110】
腫瘍の進行または重篤な毒性(グレード≧3)が無い場合、第三のコースのワクチン接種を行った。グレード≧3 の薬剤に関連する毒性を経験した患者はおらず、そのため、進行しなかった全ての患者は第三のコースのワクチン接種に適格であった。
【0111】
したがって、全部で3つのコース、または全部で9回のワクチン接種が本試験において可能であった。各ワクチン接種の前および後に臨床評価および毒性評価を行い、かつ、各コースの前および後に免疫学的評価を行った。
【0112】
A. 治験において試験した全ての患者の生存状態および履歴
最新の生存曲線を 図 7 に示す。完全な患者の履歴および経過観察を表 7 に示す。
【0113】
B. 応答者の現在の状態
6人の臨床的応答者のうち3人が死亡し、最も近いのは 2007年2月であった (以下の患者 # 14、および表 1)。2007年3月の時点において、3人が生存し続けている。該6人の臨床的応答者の平均生存期間は、現時点で 59+ ヶ月である (中央値 = 〜 66+ (60 または 72+) ヶ月)。最初の6人の臨床的応答者の詳細な状態を、以下に示す (患者 # は表 7 を参照):
【0114】
【表7】
【0115】
C. 最新の生存曲線(治験の開始から現在または最後の生存者まで)
図 7 を参照されたい。
【0116】
D. 応答した患者または有害作用を有した患者のパーセンテージ
表 8 に示される通り、19 人の患者が治験に参加した。一人の患者がワクチン接種を受ける前に試験から外れたが、該患者は依然として 19 人の患者の中に数えられていることに注意すべきである。
【0117】
19 人の患者のうち6人(32%)が、部分的な応答(PR)または安定な疾患(SD)のいずれかを伴って臨床的に応答した。
【0118】
19 人の患者のうち3人(16%)が、ワクチンに関連する可能性があると判断される有害事象(グレード 1 または 2)を経験した。これらの有害事象は以下から構成された: 発疹 (1 人の患者)、間接における中程度の間接痛 (1 人の患者)、および胸痛 (1 人の患者)。さらに、19 人の患者のうち4人(21%)が、ワクチン接種部位においていくらかの一過性の紅斑を発症した。該紅斑は1週間以内に消散したため、有害事象であるとは考えなかった。
【0119】
19 人の患者のうち、薬剤に関連する重篤な有害事象(SAE)を経験した者はいなかった(0%)。全ての SAE は、ワクチンに関連しないものであると判断された。19 人の患者のうち4人(21%)が、薬剤に関連しない SAE を経験した。
【0120】
【表8-1】
【0121】
【表8-2】
【0122】
E. 異なるレベルのワクチンに対する患者の応答
さらなる詳細については 図 8 におけるグラフを参照されたい。第二のまたは第三のコースのワクチン接種を受けた患者は、臨床応答および生存の両方の点において、よりいっそう良好な状態であった。8 または 9 回のワクチン接種を受けた5人全ての患者が、臨床的応答者であった。臨床的応答者のうち、6人中 5人(83%)が、最初の治療において 8 または 9 回のワクチン接種を受けた。非応答者のうち、13人中 12 人(92%)が 0-3 回のワクチン接種を受けた。
【0123】
F. 応答者の NSCLC 細胞型(腺癌、気管支肺胞、扁平上皮および未分化)の病態に関する分解
6 人の臨床的応答者について、病態は以下の通りであった: 4 人が腺癌を有し、1 人が気管支肺胞癌を有し、1 人が扁平細胞癌を有した。パーセンテージに基づくと、腺癌を有する 11人の患者のうち 4人(36%)が応答し、気管支肺胞癌を有する 3人の患者のうち 1人(33%)が応答し、扁平細胞癌を有する 3 人の患者のうち 1人(33%)が応答し、かつ、未分化癌を有する 2人の患者のうち応答した者はいなかった(0%)。さらなる詳細については表 1 を参照されたい。
【0124】
G. 治験および患者における対応および非対応 HLA の比較
5つの共変数(HLA 対応、性別、人種、病態)を含む多変量解析は、全体の死亡率に関して HLA 対応の統計的有意性を示さなかった。
【0125】
19 人の患者のうち、13 人が対応であり(3 人が A1、10 人が A2)、6 人が非対応であった。6 人の臨床的応答者のうち、3 人が HLA 対応であり、3 人が非対応であった。対応患者のうち、3 人中 1 人(33%)の A1 対応患者が臨床的応答者であり、10 人中 2 人(20%)の A2 対応患者が臨床的応答者であった。非対応患者のうち、6 人中 3人(50%)が臨床的応答者であった。
【0126】
年齢、性別、人種、病態およびワクチンの HLA 対応についてのロジスティック回帰分析により、これらの因子のいずれも、臨床応答に統計上有意に関連しない(全ての場合において P≧0.10)ことが示された事に注意すべきである。
【0127】
単変量比例ハザード回帰分析により、HLA 対応ワクチンを受け取る患者において死亡率がより高く(ハザード比 = 4.5; 90% CI、1.1 から 17.2)、腺癌を有する患者において死亡率がより低い(ハザード比 = 0.3; 90% CI、0.1 から 1.0)可能性が示唆された。しかし、5つの共変数(HLA 対応、年齢、性別、人種、病態)を含む多変量解析により、全体の死亡率に対するワクチンの HLA 対応の有害作用は割り引かれた; 対応する補正ハザード比は 1.9 (P=0.51) であった。腺癌対他の病態の補正ハザード比は通常の有意性レベルにおける確率の範囲内である 0.2 (P=0.11) であった。
【0128】
BPV-1-B7.1-HLA A1 ベクター配列
【化1】
【0129】
【化2】
【0130】
【化3】
【0131】
【化4】
【0132】
【化5】
【0133】
【化6】
【0134】
【化7】
【0135】
【化8】
【0136】
【化9】
【0137】
【化10】
【0138】
【化11】
【0139】
【化12】
【0140】
【化13】
【0141】
【化14】
【0142】
【化15】
【0143】
【化16】
【0144】
【化17】