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  • 特開2016128453-ナロキソンを含む鼻腔内医薬剤形 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-128453(P2016-128453A)
(43)【公開日】2016年7月14日
(54)【発明の名称】ナロキソンを含む鼻腔内医薬剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20160617BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160617BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20160617BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20160617BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20160617BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20160617BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20160617BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20160617BHJP
【FI】
   A61K31/485
   A61K9/08
   A61K9/12
   A61K9/72
   A61K47/02
   A61P25/04
   A61P25/36
   A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-5172(P2016-5172)
(22)【出願日】2016年1月14日
(62)【分割の表示】特願2014-509762(P2014-509762)の分割
【原出願日】2012年5月11日
(31)【優先権主張番号】11166076.7
(32)【優先日】2011年5月13日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599108792
【氏名又は名称】ユーロ−セルティーク エス.エイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ストラング,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オクシェ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】モティエール,リュシ エレン ジャンヌ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB25
4C076DD23
4C076FF67
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086CB23
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZA08
4C086ZC39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オピオイド過量投与および/またはその症状の治療において、迅速な作用発現および比較的長時間の作用を伴う鼻腔内医薬剤形の提供。
【解決手段】オピオイドの作用を相殺するナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、0.65〜0.8mgナロキソンHCl又は1.3〜1.6ナロキソンHClに相当する量で、液体積≦250μl、好ましくは≦200μlの水性0.9%(重量/体積)NaCl溶液中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、約0.65mgナロキソンHClと約
0.8mgナロキソンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mg
ナロキソンHClとの間に相当する量で、体積≦約250μl、好ましくは≦約200μ
lの適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻腔内医薬剤形。
【請求項2】
単一の適用ステップが2つの鼻孔への投与を含む場合、前記投薬単位が、ナロキソンま
たは薬学的に許容されるその塩を、約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロ
キソンHClとの間に相当する量で含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
単一の適用ステップが1つの鼻孔への投与を含む場合、前記投薬単位が、ナロキソンま
たは薬学的に許容されるその塩を、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキ
ソンHClとの間に相当する量で含む、請求項1に記載の剤形。
【請求項4】
前記適用流体の体積が、約200μl〜約35μl、好ましくは約200μl〜約50
μl、より好ましくは約200μl〜約100μlの範囲内である、請求項1から3のい
ずれかに記載の剤形。
【請求項5】
前記適用流体が、水および水性食塩溶液、好ましくは水性NaCl溶液、より好ましく
は水性0.9%(重量/体積)NaCl溶液を含む群から選択される、請求項1から4の
いずれかに記載の剤形。
【請求項6】
鼻内噴霧剤、鼻粘膜付着剤形および粘膜用霧状化器具を含む剤形の群から選択される、
請求項1から5のいずれかに記載の剤形。
【請求項7】
オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用する
ための、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を適用流体中に溶解して含む鼻腔内
医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの
間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、
または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給されるかであり、1つの鼻孔当たりの前
記適用流体の体積が≦約250μl、好ましくは≦約200μlである、前記鼻腔内医薬
剤形。
【請求項8】
約1.3mgナロキソンHClもしくは約1.4mgナロキソンHClもしくは約1.
5mgナロキソンHClまたは約1.6mgナロキソンHClに相当する量のナロキソン
または薬学的に許容されるその塩が鼻腔内投与される、請求項7に記載の使用するための
剤形。
【請求項9】
1つの鼻孔当たりの前記適用流体の体積が、約200μl〜約35μl、好ましくは約
200μl〜約50μl、より好ましくは約200μl〜約100μlの範囲内である、
請求項7または8に記載の使用するための剤形。
【請求項10】
1つの鼻孔当たりの前記適用流体の体積が、約150μl〜約100μlの範囲内であ
る、請求項7から9のいずれかに記載の使用するための剤形。
【請求項11】
前記量が1つの鼻孔への投与によって供給される、請求項7から10のいずれかに記載
の使用するための剤形。
【請求項12】
前記適用流体が、水および水性食塩溶液、好ましくは水性NaCl溶液、より好ましく
は水性0.9%(重量/体積)NaCl溶液を含む群から選択される、請求項7から11
のいずれかに記載の使用するための剤形。
【請求項13】
前記量または前記量の半分を適用流体中に溶解して投薬単位中に含み、該含む量は、前
記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または2つの鼻孔への投与によって供
給されるかに依拠する、請求項7から12のいずれかに記載の使用するための剤形。
【請求項14】
前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または2つの鼻孔への投与によっ
て供給されるかによって、単一の投薬単位または2つの投薬単位を含み、単回使用用であ
る、請求項13に記載の使用するための剤形。
【請求項15】
少なくとも2つの投薬単位、好ましくは少なくとも3つの投薬単位、より好ましくは少
なくとも4つの投薬単位、最も好ましくは少なくとも5つの投薬単位を含み、複数回使用
用である、請求項13に記載の使用するための剤形。
【請求項16】
鼻内噴霧剤、鼻粘膜付着剤形および粘膜用霧状化器具を含む剤形の群から選択される、
請求項7から15のいずれかに記載の使用するための剤形。
【請求項17】
ナロキソンを唯一の医薬活性化合物として含む、請求項7から16のいずれかに記載の
使用するための剤形。
【請求項18】
オピオイド過量投与が、オピオイドの不正使用によって、または医療としてのオピオイ
ド療法中のオピオイドの誤用事故によって生じる、請求項7から17のいずれかに記載の
使用するための剤形。
【請求項19】
オピオイド過量投与の症状が、呼吸抑制、場合により術後のオピオイドによる呼吸抑制
、意識レベルの変化、縮瞳、低酸素血症、急性肺損傷および誤嚥性肺炎を含む群から選択
される、請求項7から18のいずれかに記載の使用するための剤形。
【請求項20】
前記量が、有効量のナロキソンを供給するために初期力価測定時間中に再投与される、
請求項7から19のいずれかに記載の使用するための剤形。
【請求項21】
ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む筋肉内用剤形および/または静脈内
用剤形と組み合わされる、請求項7から20のいずれかに記載の使用するための剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、≧0.5mgナロキソンH
Clに相当する量で、好ましくは約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキ
ソンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHCl
との間に相当する量で、体積≦250μlの適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻
腔内医薬剤形に関する。好ましくは、剤形は、オピオイド過量投与および/または少なく
とも1つのその症状の治療において使用するためのものである。
【背景技術】
【0002】
オピオイドの乱用、とりわけ薬物嗜癖者によるヘロインなどのオピオイドの静脈内注射
は薬物の過量投与に結びついていることが多く、過量投与の原因は、オピオイド耐性の低
下(たとえば乱用者が収監されているときまたは補充療法/解毒療法の後)、摂取される
薬物量の誤推定、より濃縮された形態の薬物、または経時で薬物耐性が発現しているにも
かかわらず「恍惚感」を得たいとする乱用者の所望である場合がある。嗜癖者における過
量投与の率は19%〜30%の間であると推定されている(Darke Sら「The ratio of no
n-fatal to fatal heroin overdose、Addiction、2003年8月、98(8): 1169〜71)。
【0003】
かかる過量投与のインシデントによって嗜癖者が死亡に至る場合がある(いわゆる「致
死的過量投与」)。ヘロインの過量投与による嗜癖者の年間死亡率は0.8%であると報
告されている(Hallら、「How many dependent heroin users are there in Australia?
」Med J Aust. 2000年11月20日、173(10):528〜31 2000年)。非致死的過量投与対致死的
過量投与の比は23.8対1から37.5対1の間であると推定されている(Darkeら、
上記を参照)。したがって、非致死的過量投与は、薬物嗜癖者の間で、とりわけ薬物を非
経腸的にすなわち注射によって乱用している薬物嗜癖者においては相当数のイベントであ
り、救急医療関係者による適切な即時治療が必要である。
【0004】
ナロキソン、オピオイド拮抗薬は、オピオイドの作用を相殺することが知られており、
オピオイド過量投与の救急症例および迅速なオピエート解毒に使用される。
【0005】
かかる症例に使用されるナロキソンの作用発現は可能な限り迅速でなければならないた
め、ナロキソンは、救急医療関係者が過量投与の対象に静脈内投与または筋肉内投与する
のが主流である。
【0006】
ナロキソンを含む経口剤形は初回通過代謝の量が多いため、バイオアベイラビリティが
低く、したがってかかる目的には好適でないようである。
【0007】
血流内へのまたは筋肉内への注射によるナロキソンの投与には、第一に、熟練した医療
関係者(静脈内注射に)または熟練したケアラー(筋肉内注射に)が必要である。第二に
、嗜癖者の体質および静脈内投与による薬物乱用の期間によって、ナロキソンを静脈内投
与するための、嗜癖者の身体の静脈内への進入路を見つけるのが特に困難である場合があ
る。
【0008】
確かなことに、大勢の薬物嗜癖者が、HIV、B型肝炎およびC型肝炎などの、血液が
媒介する病原体が引き起こす疾患に罹患しており、針刺し事故は安全性に対する重大な懸
念であるため、医療関係者または熟練したケアラーにとっては、血液が媒介する病原体に
曝露するリスクがある。2000年に米国だけで385,000件の針刺し損傷が発生し
たと推定されている(Wilburn、「Needlestick and sharps injury prevention, Online
J Issues Nurs 2004年9月30日、9(3):5)。
【0009】
さらに、静脈内投与されたナロキソンの排出半減期は比較的短いため、この経路でナロ
キソンを再投与する必要があり、中には数回までもが必要な症例もある。
【0010】
過量投与の嗜癖者を治療するためにナロキソンの鼻腔内投与に関して研究がなされてき
た。しかしその結果はむしろ議論を呼ぶものである。たとえば、Loimerらは、オピエート
嗜癖者においてナロキソンの経鼻投与は静脈内の経路と同じくらい効果的であると報告し
た(Loimer N.ら「Nasal administration of naloxone is as effective as the intrave
nous route in opiate addicts」、the International Journal of Addictions, 29(6),
819〜827, 1994年を参照)。一方Dowlingらは、鼻腔内投与されたナロキソンは相対的バ
イオアベイラビリティがわずか4%しかないと報告し、鼻腔内の吸収は迅速であるが、1
時間を超えて測定可能な濃度を保持しないと結論づけた(Dowlingら、「Population phar
macokinetics of intravenous, intramuscular, and intranasal naloxone in human vol
unteers」、Ther Drug Monit、30巻、No 4、2008年8月)。
【0011】
したがって、過量投与になっている薬物嗜癖者に、医療に未熟練の人が、たとえば家族
または他のケアラーが容易に投与することができるナロキソンの剤形の一般的必要性があ
る。
【0012】
さらに、健康管理関係者が投与する場合でも、かかる剤形によってi)血液が媒介する
病原体に曝露される危険性が最小限になるべきであり、ii)注射可能な静脈を特定した
り筋肉内注射のために対象の衣服を脱がせたりする必要がないため、投与時間が低減され
るべきである。また、かかる剤形は、作用発現が迅速であるべきで、理想的には数時間に
わたって相殺効果を保持するべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の1つの目的は、ナロキソンのバイオアベイラビリティがかなり高
く、迅速な作用発現および比較的長時間の作用を伴う、ナロキソンを含む医薬剤形を提供
することである。
【0014】
本発明の別の目的は、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の
治療において使用するためのかかる剤形を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、かかる剤形の投薬単位用に特定の体積中に溶解した特定の
量でナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を使用することにある。
【0016】
これらのおよび他の目的は、以下の説明から明らかになるとおり、各独立請求項の主題
によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい実施形態のうちのいくつかに関連
する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、1つの態様において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるそ
の塩を、≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、体積≦250μlの適用流体中
に溶解して含む投薬単位を含む鼻腔内医薬剤形に関する。
【0018】
好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は≧0.
6mgに相当する。
【0019】
別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、
約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間または約1.3
mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する。
【0020】
特に好ましい実施形態において、本発明は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその
塩を適用流体中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHCl
と約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つの
鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給さ
れるかであり、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦250μlである、鼻腔内医薬剤
形に関する。
【0021】
さらに好ましい実施形態において、適用流体の体積は≦200μlである。
【0022】
特に好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、
0.6mgナロキソンHCl〜12mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは
0.6mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましく
は0.6mgナロキソンHCl〜3.75mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も
好ましくは0.6mgナロキソンHCl〜2.0mgナロキソンHClに相当する範囲内
である。前記範囲は、0.5mgナロキソンHCl〜20mgナロキソンHClに相当す
る範囲内、もしくは0.5mgナロキソンHCl〜15mgナロキソンHClに相当する
範囲内、または0.5mgナロキソンHCl〜10mgナロキソンHClに相当する範囲
内とすることもできる。最も好ましいのは、約0.65mgナロキソンHClと約0.8
mgナロキソンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキ
ソンHClとの間に相当する範囲である。
【0023】
別の好ましい実施形態において、約1.3mgナロキソンHClもしくは約1.4mg
ナロキソンHClもしくは約1.5mgナロキソンHClまたは約1.6mgナロキソン
HClに相当する量のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が鼻腔内投与され、前
記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与に
よって供給されるかであり、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積は≦250μlである。
【0024】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体の体積は、200μl〜35μl、好
ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましく
は150μl〜100μlの範囲内である。前記範囲は、250μl〜35μl、もしく
は250μl〜75μl、または200μl〜75μlの範囲とすることもできる。特に
好ましいのは、体積が200μlもしくは150μlもしくは100μlまたは50μl
である。場合によっては、体積75μlを使用することもできる。
【0025】
また別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量
は、0.6mgナロキソンHCl、もしくは0.7mgナロキソンHCl、もしくは0.
8mgナロキソンHCl、もしくは1.2mgナロキソンHCl、もしくは1.4mgナ
ロキソンHCl、または1.6mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積は、20
0μl〜50μl、好ましくは200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜1
00μlの範囲内である。以下も好ましいとすることができる。ナロキソンまたは薬学的
に許容されるその塩の量が、0.9mgナロキソンHCl、もしくは1.0mgナロキソ
ンHCl、もしくは1.1mgナロキソンHCl、もしくは1.8mgナロキソンHCl
、もしくは2.0mgナロキソンHCl、または2.2mgナロキソンHClに相当し、
上記の体積範囲が適用可能である。
【0026】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容さ
れるその塩の最終濃度は、適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1
mlにつき100mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは適用流体1mlに
つき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClに相当
する範囲内、より好ましくは適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体
1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する範囲内である。
【0027】
好ましくは、本明細書に特許請求するとおりの鼻腔内剤形の投薬単位は、1つの鼻孔に
投与される。したがって、好ましくは、上記の量のナロキソンまたは薬学的に許容される
その塩は、1つの鼻孔への投与によって供給される。
【0028】
鼻孔が2つ存在するため、下記で定義される1つの適用ステップは、2つの投薬単位の
各々を2つの鼻孔の1つずつに連続投与することからなるものとすることができる。次に
述べる好ましい実施形態は、かかる適用ステップ、すなわち2つの鼻孔への連続投与に関
する。最も好ましくは、2つの鼻孔への連続投与によるかかる適用ステップは、約1.3
mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量のナロキソン
の鼻腔内投与となる。
【0029】
特に好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、
0.6mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは0
.6mgナロキソンHCl〜3mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは
0.6mgナロキソンHCl〜1.8mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も好ま
しくは0.6mgナロキソンHCl〜1.0mgナロキソンHClに相当する範囲内であ
る。前記範囲は、0.5mgナロキソンHCl〜10mgナロキソンHClに相当する範
囲内、もしくは0.5mgナロキソンHCl〜7.5mgナロキソンHClに相当する範
囲内、または0.5mgナロキソンHCl〜5mgナロキソンHClに相当する範囲内と
することもできる。
【0030】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体の体積は、200μl〜35μl、好
ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましく
は150μl〜100μlの範囲内である。前記範囲は、250μl〜35μl、もしく
は250μl〜75μl、または200μl〜75μlの範囲とすることもできる。特に
好ましいのは、体積が200μlもしくは150μlまたは100μlである。場合によ
っては、体積75μlを使用することもできる。
【0031】
また別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量
は、0.6mgナロキソンHCl、もしくは0.7mgナロキソンHCl、または0.8
mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積は、200μl〜50μl、好ましくは
200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。以下
も好ましいとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0
.9mgナロキソンHCl、もしくは1.0mgナロキソンHCl、または1.1mgナ
ロキソンHClに相当し、上記の体積範囲が適用可能である。
【0032】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容さ
れるその塩の最終濃度は、適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体1
mlにつき100mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは適用流体1mlに
つき3mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClに相当
する範囲内、より好ましくは適用流体1mlにつき3mgナロキソンHClから適用流体
1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する範囲内である。
【0033】
鼻孔が2つ存在するため、下記で定義される1つの適用ステップは、2つの鼻孔のうち
1つのみへの単一の投与からなるものとすることができる。次に述べる好ましい実施形態
は、かかる適用ステップ、すなわち1つの鼻孔のみへの単一の投与に関する。最も好まし
くは、1つの鼻孔のみへのかかる適用ステップは、約1.3mgナロキソンHClと約1
.6mgナロキソンHClとの間に相当する量のナロキソンの鼻腔内投与となる。
【0034】
特に好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量は、
1.2mgナロキソンHCl〜12mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは
1.2mgナロキソンHCl〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましく
は1.2mgナロキソンHCl〜3.75mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も
好ましくは1.2mgナロキソンHCl〜2.0mgナロキソンHClに相当する範囲内
である。前記範囲は、1.0mgナロキソンHCl〜20mgナロキソンHClに相当す
る範囲内、もしくは1.0mgナロキソンHCl〜15mgナロキソンHClに相当する
範囲内、または1.0mgナロキソンHCl〜10mgナロキソンHClに相当する範囲
内とすることもできる。
【0035】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体の体積は、200μl〜35μl、好
ましくは200μl〜50μl、より好ましくは200μl〜100μl、最も好ましく
は150μl〜100μlの範囲内である。前記範囲は、250μl〜35μl、もしく
は250μl〜75μl、または200μl〜75μlの範囲とすることもできる。特に
好ましいのは、体積が200μlもしくは150μlまたは100μlである。場合によ
っては、体積75μlを使用することもできる。
【0036】
また別の好ましい実施形態において、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量
は、1.2mgナロキソンHCl、もしくは1.4mgナロキソンHCl、または1.6
mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積は、200μl〜50μl、好ましくは
200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内である。以下
も好ましいとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、1
.8mgナロキソンHCl、もしくは2.0mgナロキソンHCl、または2.2mgナ
ロキソンHClに相当し、上記の体積範囲が適用可能である。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容さ
れるその塩の最終濃度は、適用流体1mlにつき6mgナロキソンHClから適用流体1
mlにつき100mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは適用流体1mlに
つき6mgナロキソンHClから適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClに相当
する範囲内、より好ましくは適用流体1mlにつき6mgナロキソンHClから適用流体
1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する範囲内である。
【0038】
上記のすべての実施形態に関連するまた別の好ましい実施形態において、適用流体は、
水、任意選択で医薬溶媒を含む水性溶液剤、医薬溶媒および共溶媒を含む水性溶液剤、お
よび水性食塩溶液を含む群から選択される。好ましくは、水性食塩溶液は、NaCl溶液
、より好ましくは濃度約1.0%重量/体積のNaClの精製水溶液、最も好ましくは濃
度約0.9%重量/体積のNaClの精製水溶液である。好ましくは、適用流体のpH値
は、pH≦約6.0、好ましくはpH≦約5.8、より好ましくはpH≦約5.6、最も
好ましくはpH≦約5.5に相当する。
【0039】
別の好ましい実施形態において、剤形は、少なくとも2つの投与単位、好ましくは少な
くとも3つの投与単位、より好ましくは少なくとも4つの投与単位、最も好ましくは少な
くとも5つの投与単位を含む。剤形は1つの投与単位のみを、または厳密に2つ、3つ、
4つまたは5つの投与単位を含むこともできる。一般的に、剤形は、上記の量または前記
量の半分を適用流体中に溶解して投薬単位中に含むことができ、その量は、前記全量が1
つの鼻孔への投与によって供給されるか、2つの鼻孔への投与によって供給されるかに依
拠する。したがって、前記量が1つの鼻孔に投与される場合、剤形は、好ましくは前記全
量を適用流体中に溶解して投薬単位中に含む。前記量が2つの鼻孔に投与される場合、剤
形は、好ましくは前記全量の半分を適用流体中に溶解して投薬単位中に含む。
【0040】
好ましくは、単一の適用ステップが2つの鼻孔への投与を含む場合、前記投薬単位は、
ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、約0.65mgナロキソンHClと約0
.8mgナロキソンHClとの間に相当する量で含む。約0.65mg、約0.70mg
、約0.75mgまたは約0.80mgが特に好ましいとすることができる。
【0041】
好ましくは、単一の適用ステップが1つの鼻孔への投与を含む場合、前記投薬単位は、
ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、約1.3mgナロキソンHClと約1.
6mgナロキソンHClとの間に相当する量で含む。約1.30mg、約1.35mg、
約1.40mg、約1.45mg、約1.50mg、約1.55mgまたは約1.60m
gが特に好ましいとすることができる。
【0042】
前記量が1つの鼻孔に投与される場合、剤形は単一の投薬単位のみを含むものでもよく
、したがって単回使用用とすることができる。前記量が2つの鼻孔に投与される場合、剤
形は2つの投薬単位を含んでもよく、やはり単回使用用とすることができる。しかし、前
記剤形は少なくとも2つの投薬単位、好ましくは少なくとも3つの投薬単位、より好まし
くは少なくとも4つの投薬単位、最も好ましくは少なくとも5つの投薬単位を含むことも
でき、したがって複数回使用用とすることができる。
【0043】
さらに別の好ましい実施形態において、剤形は、鼻内噴霧剤(噴霧器具と呼ぶこともで
きる)、鼻粘膜付着剤形および粘膜用霧状化器具(Mucosal Atomizer Device)を含む剤
形の群から選択される。鼻内噴霧剤が、本発明には特に好ましいとすることができる。前
記鼻内噴霧剤は、とりわけ、シリンジ駆動の噴霧器具またはポンプ駆動の噴霧器具とする
ことができる。
【0044】
好ましくは、剤形はナロキソンを唯一の医薬活性剤として含む。したがって、剤形に含
まれうるさらなる医薬活性剤(複数可)(たとえばエピネフリンなど)はない。
【0045】
また別の好ましい実施形態において、剤形の、ヒトにおける活性剤ナロキソンのバイオ
アベイラビリティは高く、静脈内投与したナロキソンのバイオアベイラビリティを100
%としてこれを基準に算出した場合のバイオアベイラビリティが、好ましくは約20%〜
約40%、より好ましくは約25%〜約35%である。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態において、剤形の、ヒトにおける活性剤ナロキソンの作用
発現は迅速であり、すなわちtmaxが短く、好ましくは迅速な作用発現は、投与して約
5分〜約18分以内、好ましくは投与して約5分〜約12分以内、より好ましくは投与し
て約5分〜約10分以内、最も好ましくは投与して約6分以内である。
【0047】
また別の好ましい実施形態において、剤形の、ヒトにおける活性剤ナロキソンの血漿内
半減期は長く、すなわち排出パターンが緩慢であり、好ましくは血漿内半減期は投与して
約1.5時間〜約9時間、より好ましくは血漿内半減期は投与して約2.5時間〜約9時
間、最も好ましくは血漿内半減期は投与して約4時間〜約9時間である。ヒトにおける活
性剤ナロキソンの血漿内半減期は、本発明による剤形を投与して約1時間、約1.5時間
、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間または約9
時間とすることもできる。
【0048】
本発明は、第2の態様において、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つの
その症状の治療に関する。
【0049】
したがって、前記態様において、上記のすべての好ましい実施形態を含む上記の剤形は
、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使用する
ためのものである。
【0050】
特に好ましい実施形態では、本発明は、オピオイド過量投与および/または少なくとも
1つのその症状の治療において使用するための、ナロキソンまたは薬学的に許容されるそ
の塩を適用流体中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHC
lと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つ
の鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの鼻孔への投与によって供給
されるかであり、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦約250μl、好ましくは≦約
200μlである、鼻腔内医薬剤形に関する。
【0051】
したがって、本発明は、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状
の治療方法であって、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が、体積≦250μl
の適用中≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、鼻腔内投与される治療方法にも
関する。
【0052】
オピオイド過量投与の原因は、ヘロイン、ブプレノルフィン、メタドン、フェンタニル
、オキシコドン、モルヒネおよびヒドロモルホンの乱用である場合がある。したがって、
オピオイド過量投与はオピオイドの不正使用によって生じる場合がある。しかし、オピオ
イド過量投与は、オピオイド療法中にオピオイドの誤用事故によって生じることもある。
【0053】
好ましい実施形態において、オピオイド過量投与の症状は、呼吸抑制、場合により術後
のオピオイドによる呼吸抑制、意識レベルの変化、縮瞳、低酸素血症、急性肺損傷および
誤嚥性肺炎を含む群から選択される。
【0054】
さらに好ましい実施形態において、剤形は、有効量のナロキソンを供給するために初期
力価測定時間中に再適用される。したがって、オピオイド過量投与および/または少なく
とも1つのその症状を治療するために使用される場合、有効量のナロキソンを供給するた
めに、初期力価測定時間中に上記の量を再投与することができる。好ましくは、前記初期
力価測定時間は、最初の適用ステップから約15〜約30分の間である。オピオイド過量
投与および/または少なくとも1つのその症状を治療するのに有効な量のナロキソンを供
給するために、本発明による剤形を、2回、3回、4回、5回または6回さえも再適用す
るのが好ましいとすることができる。
【0055】
別の好ましい実施形態において、本発明による剤形は、ナロキソンまたは薬学的に許容
されるその塩を含む筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形と組み合わされる。前記筋
肉内用剤形および/または静脈内用剤形は、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩
を、約0.4mg〜約2mgの範囲の量で含むのが好ましいとすることができる。
【0056】
本発明は、1つの態様において、≧1.0mgナロキソンHClに相当する量、好まし
くは約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間の量、また
は約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間の量で、鼻腔内
医薬剤形の投薬単位中の体積≦250μlの適用流体中に溶解した、ナロキソンまたは薬
学的に許容されるその塩の使用にも関する。
【0057】
好ましい実施形態において、上記のすべての量のナロキソンおよびすべての体積の適用
流体は、鼻腔内医薬剤形の投薬単位中に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】実施例1で説明する試験の相を表す。SD:無作為の連続コードによる試験薬P1〜P4:期間1〜4、その各々が無作為の連続コードによる単一用量の試験薬に次いで≧14日のウォッシュアウト(期間1、2および3のみ)という点で同一。
図2】実施例1で説明する試験の薬物動態パラメーターを示す。
図3】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、36時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図4】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図5】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、36時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図6】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図7】ExcelまたはWinNonlinを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン(Excelのみ)、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図8】ExcelまたはWinNonlinを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン(Excelのみ)、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図9】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン[図3と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した]、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、36時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図10】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン[図4と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した]、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図11】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン[図5と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した]、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、36時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図12】Excelを使用し、静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン[図6と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した]、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図13】WinNonlinを使用し、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンならびに静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン(Excelを使用[図7と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した])について、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図14】WinNonlinを使用し、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンならびに静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン(Excelを使用[図8と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した])について、4時間にわたって評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図15】ExcelまたはWinNonlinを使用し、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて4時間にわたって、ならびに静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン(Excelを使用[図7と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した])について評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した8mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
図16】ExcelまたはWinNonlinを使用し、鼻腔内に(IN)適用した1.2mgナロキソンおよびINに適用した1.6mgナロキソンについて、4時間にわたって、ならびに静脈内に(IV)適用した0.4mgナロキソン(Excelを使用[図8と比較して、1件の異常値を示した対象は除外した])について評価した曲線(実施例1:鼻腔内に適用した16mgナロキソンHClのデータに基づく)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、部分的には、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を体積≦250μ
lの適用流体中に溶解して含む鼻腔内医薬剤形が、かなりのバイオアベイラビリティ、迅
速な作用発現および比較的緩慢な排出パターンを示すという驚くべき発見に属する。
【0060】
したがって、オピオイド過量投与における使用のために、かかる鼻腔内剤形は、投薬単
位中にオピオイドの作用を相殺するのに有効な量のナロキソンを含むことができ、当該剤
形は、上記の薬物動態パラメーター、すなわちかなりのバイオアベイラビリティ、迅速な
作用発現および比較的緩慢な排出パターンを備えた使いやすく安全な剤形である。
【0061】
本発明の実施形態のいくつかをより詳細に説明する前に、次の定義を提起しておく。
【0062】
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「a」および「an」
は、文脈上明らかに他の意味が示されていない限り、対応する複数形も含む。
【0063】
本発明の内容における「約(about)」および「ほぼ(approximatel
y)」という用語は、当業者が理解して、引き続き当該の特徴の技術的な効果を確保する
であろう、ある区間の正確度(interval of accuracy)を意味する。この用語は、通常、
示された数値からの±10%および好ましくは±5%の差を示す。
【0064】
「含む(comprising)」という用語は制約を与えるものではないことを理解
される必要がある。本発明においては、「からなる(consisting of)」と
いう用語は「からなる(comprising of)」という用語の好ましい具現化で
あると考えられる。以下で、ある群が少なくともある数の実施形態を含むと定義される場
合、この群は、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を包含することも意図される
【0065】
本明細書で言及される「ナロキソン」は、業務用として入手可能な麻薬拮抗薬であり、
外因的に投与されたオピオイドの遮断のために必要である。これはすべてのオピオイド受
容体部位(μ、κおよびδ)で作用する。経口投与後、ナロキソンは迅速に吸収される(
5〜30分以内に)が、初回通過代謝の量が多いため、経口バイオアベイラビリティが<
3%と非常に低い。経口での低用量では、ナロキソンは全身的に有効にはならないが、胃
腸管内の局所的なオピオイド受容体に主に作用する。オピオイド過量投与の症例において
、ナロキソンは乱用されたオピオイドの効果を逆行し、したがって、過量投与を治療する
ために使用される。
【0066】
ナロキソンの「薬学的に許容される塩」という用語は、たとえば塩酸塩、硫酸塩、重硫
酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、重酒石酸塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸
塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フメレート(fumerate)塩、コハク酸塩などのこと
である。ナロキソンは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムを含むアルカリ金属の金属
塩などの塩基性付加塩として存在することもできる。好ましい塩は、ナロキソンの塩酸塩
である。
【0067】
本明細書で使用する「鼻腔内剤形」という用語は、活性剤を鼻内に放出する医薬剤形と
して定義される。放出されると、その後活性剤は鼻粘膜を介して体循環の中へと輸送され
る。通常、特定の投薬単位または計量した体積が、1つの投与ステップにつき鼻の1つの
鼻孔に鼻腔内剤形から適用される。完成した投薬単位または完璧に計量した体積を供給す
るために、投与前に鼻腔内剤形の少なくとも1つの準備ステップを実施することが必要な
場合がある。鼻内噴霧剤の場合、これはたとえば、噴霧剤のポンプが、計量した適用され
るべき体積で完璧に充填されるまで、少なくとも1回、鼻内噴霧剤を鼻の外にポンプで放
出することを意味する。
【0068】
本明細書で使用する「投薬単位」という用語は、単一の投与ステップで1つの鼻孔に投
与される特定の量の活性剤のことである。以下に記載するとおり、かかる量は、オピオイ
ド過量投与を治療する初期ステップにおいて、たとえば1つの鼻孔当たり0.6mgナロ
キソンHClとすることができる。好ましくは、前記量は、単一の適用ステップで全量が
投与によって1つの鼻孔のみに供給される場合、投薬単位中約1.3mgナロキソンHC
lと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当するものとすることができる。または、
前記量は、単一の適用ステップで全量が2つの鼻孔への投与によって供給される場合、投
薬単位中約0.65mgナロキソンHClと約0.8mgナロキソンHClとの間に相当
するものとすることができる。ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩が適用流体中
に溶解して特定の最終濃度になるため、単一の投与ステップにつき投与される量は、投与
されるべき特定の体積に相当する。本発明において、前記体積は好ましくは≦200μl
である。
【0069】
本発明の鼻腔内剤形は、たとえば鼻内噴霧剤とすることができる。鼻内噴霧剤は、ほと
んどの場合≦200μlの最終体積を含むだけにはならないことは当業者には明らかであ
る。むしろ、前記鼻内噴霧剤は、たとえば1.5mlを含むことができ、1つの投与ステ
ップにつき、すなわち適用ごとに計量した体積として、たとえば100μlの体積が投与
される。上記のとおり、噴霧剤の準備が適用前に必要となる場合がある。
【0070】
2つの鼻孔が存在するため、鼻腔内剤形は、2つの連続ステップに分かれた投与レジメ
ン、すなわち1つの鼻孔に投与されることになる、活性剤の半分量の第1の投与ステップ
、その後のもう1つの鼻孔内への残り半分の投与で投与することができることを、当業者
は承知している。この「分かれた」方式の投与は、1つの鼻孔当たり、より小さい体積を
使用することができるため、本発明にとって好ましい。
【0071】
したがって、特に好ましい実施形態において、本発明は、ナロキソンまたは薬学的に許
容されるその塩を含む鼻腔内医薬剤形であって、約1.3mgナロキソンHClと約1.
6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が2つの鼻孔への
投与によって供給され、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦250μlである、鼻腔
内医薬剤形に関する。したがって、1つの鼻孔当たり約0.65mgナロキソンHClと
約0.8mgナロキソンHClとの間に相当する量を投与して、上記の全量に到達させる
ことができる。
【0072】
しかし、単一の投与ステップで1つの鼻孔内に活性剤を投与することもできる。2つの
鼻孔に分かれた投与の場合と同様に、1つの鼻孔当たりに同一体積を使用するため、この
場合、投与流体中の活性剤の濃度は、同じ量の活性剤を供給するために濃度を2倍にする
必要があることが当業者には自明である。
【0073】
したがって、別の特に好ましい実施形態において、本発明は、ナロキソンまたは薬学的
に許容されるその塩を含む鼻腔内医薬剤形であって、1.3mgナロキソンHClと約1
.6mgナロキソンHClとの間に相当する量が鼻腔内投与され、前記量が1つの鼻孔へ
の投与によって供給され、1つの鼻孔当たりの適用流体の体積が≦250μlである、鼻
腔内医薬剤形に関する。したがって、1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキ
ソンHClとの間に相当する量を、1つの鼻孔のみに投与することができる。
【0074】
一般的に、医薬剤形は、特定の効果を達成するために、活性剤を特定の量で含む。した
がって、活性剤は、たとえば、錠剤、すなわち経口剤形中に10mgの量で含まれうる。
かかる錠剤を、1つの適用ステップで患者に投与することによって、10mgの有効量が
患者の身体中に供給される。既に上述したとおり、活性剤の鼻腔内投与については、2つ
の鼻孔が存在するため、状況が異なる。この点で、当然ながら、鼻腔内投与される活性剤
の最終的な量は、投与レジメンが1つの鼻孔のみへの単一の投与ステップを含むのか、2
つの鼻孔への2つの連続投与ステップを含むのかに関係なく、常に治療的に活性な量であ
る。単一の投与ステップでも、2つの連続投与ステップでも、どちらの方式も、所望され
る治療的に活性な量、たとえば1.2mgまたは1.3mgナロキソンHClと約1.6
mgナロキソンHClとの間に相当する量を供給するという意味で、本明細書においては
「1つの適用ステップ」と呼ぶ。
【0075】
本明細書で使用する「適用流体」という用語は、好ましくは、活性剤を溶解した状態で
含む溶液のことである。しかし、本明細書で使用する「適用流体」は、液相全体にわたっ
て分散した固相中に活性剤の少なくとも一部(および任意選択でさらなる成分)を含む懸
濁液のことを指すこともできる。したがって、懸濁液について述べる場合、「溶解した」
という用語は「分散した」の意味で使用される。下記のとおり、使用される製剤は、ゲル
またはゲル様の製剤とすることもできる。したがって、「適用流体」という用語は、ゲル
またはゲル様の相のことでもある。
【0076】
本明細書で使用する「バイオアベイラビリティ」という用語は、体循環中の活性剤の広
がりおよび活性剤が体循環に入る率を表す。種々の剤形に関する活性剤のバイオアベイラ
ビリティは、とりわけ、分析対象の剤形(たとえば鼻腔内剤形)から得られるAUCt値
(下記参照)を静脈内用剤形から得られるAUCt値と比較することによって評価するこ
とができる。したがって、%で表されるバイオアベイラビリティは、分析対象の剤形のA
UCt値および静脈内用剤形のAUCt値を除算し、係数100を乗じて計算することが
できる。
【0077】
「Cmax値」とは、活性剤ナロキソンの最高血漿中濃度を指す。
【0078】
「tmax値」とは、Cmax値に到達する時点を指す。換言すれば、tmaxは最高
血漿中濃度が観察される時点である。
【0079】
「AUC(曲線下面積)」値は、血漿中濃度−時間曲線下面積に相当する。AUC値は
、血液循環中に吸収される活性剤ナロキソンの合計量に比例し、このため、バイオアベイ
ラビリティの尺度となる。
【0080】
「AUCt値」とは、投与時から測定可能な最終濃度までの血漿中濃度−時間曲線下面
積の値である。AUCt値は、通例、線形台形法を使用して計算される。
【0081】
「λZ」とは終末相速度定数のことであり、終末対数−線形相中にあると判定されるそ
れらの箇所を使用して推定する。
【0082】
「t1/2」とは「t1/2z」とも呼ばれ、見かけの終末相半減期であり、通常ln
2対λZの比率から求められる。
【0083】
最終測定点と無限大との間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、観察される最終血漿中濃
度(Clast)対λZの比率から計算することができる。次いで、これをAUCtに加
算して「AUCinf」を得る。これは、投与時から無限大までの血漿中濃度−曲線下面
積である。
【0084】
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載する鼻腔内医薬剤形は、投与されると
、短いtmaxで示されるとおり体循環中に早期に出現し、これに加えて体循環中のナロ
キソンの血漿半減期が比較的長いということを発見した。さらに、本発明による剤形は、
約25%と約35%との間の範囲の適度に高いバイオアベイラビリティも示す。
【0085】
科学的な理論に縛られるものではないが、本発明者らは、現在のところ、早期tmax
および/もしくは比較的長い排出半減期(すなわちナロキソンの持続作用)ならびに/ま
たはかなり高いバイオアベイラビリティという前記顕著な効果は、血管分布の度合いが高
い鼻粘膜でナロキソンの全量が迅速に吸収されるためであろうと考える。この効果を達成
するためには、ナロキソンを小体積で投与し、それにより、嚥下(これはバイオアベイラ
ビリティが低い経口投与に該当することになる、上記を参照)、鼻孔からの漏出などによ
る損失を回避することが必須であると思われる。したがって、好ましくは0.5ml未満
の小体積の適用流体、より好ましくは0.25ml未満の小体積の適用流体が投与に使用
されるべきである。一般的に、体積は、30μl〜400μl、35μl〜350μl、
40μl〜300μl、50μl〜250μl、60μl〜200μl、70μl〜15
0μlまたは80μl〜120μlの範囲とすることができる。
【0086】
本発明は、緊急事態における即時医療という背景において、明言するとオピオイド過量
投与の場合において経験されるべきものである。ほとんどの場合、過量投与の原因はオピ
オイドの静脈内投与による乱用であり、乱用者が意識消失する場合がある。本発明を手近
に用意しておけば、オピオイドの過量投与を相殺するために、安全で効果的な方法で、す
なわち鼻腔内投与によって、ナロキソンを投与することができる。
【0087】
さらに、ナロキソンは、過量投与の状況に直面した場合即時に、オピオイド嗜癖者の家
族、友人またはケアラーが投与することができる。したがって、救急医療関係者が到着す
る前でも治療を開始することができ、このため、過量投与の致死的転帰または過量投与に
よる主な続発症のリスクが明らかに低減される。したがって、かかる状況において、家族
、友人または他のケアラーは、オピオイドの過量投与の可能性のある対象とともに生活す
る場合、本発明による鼻腔内剤形を備えておくべきである。
【0088】
ナロキソンは、オピオイドの効果を相殺するのに十分な濃度で乱用者の体循環中に存在
する必要があるため、有効量のナロキソンが1つの適用ステップで供給されなければなら
ない。しかし、乱用者および過量投与の重症度によってこの有効量は変化する。したがっ
て、有効量に到達するまで、比較的短時間内に適用ステップを繰り返すことによる力価測
定を実施することが必要な場合がある。
【0089】
通常、有効量のナロキソンは、対象の呼吸数を評価することによって決定することがで
き、呼吸数の増加はナロキソンの相殺効果を示す。かかる増加が最初のナロキソン用量の
投与後約5〜約10分時点で検出可能にならない場合、第2の用量を投与してから、再び
対象の呼吸数を評価するべきである。ナロキソンが有効用量に到達するために2つ以上の
適用ステップが必要である場合、通常これを「力価測定」という。本件の場合、かかる力
価測定ステップは、通例、最初の15〜20分以内に実施される。
【0090】
オピオイド過量投与および/またはその症状を治療する場合、ナロキソンの静脈内投与
用の特に好ましい標準的な開始量は約0.4mgIVに相当する(本願の実施例2も参照
)。驚くべき本発見(たとえばナロキソンの鼻腔内投与時のバイオアベイラビリティに関
する)によると、オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療に
おいて使用するための、鼻腔内投与されるナロキソンの最も好ましい開始量は、したがっ
て、約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量
に該当する(前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つの
鼻孔への投与によって供給される)。約1.3mgナロキソンHCl、約1.4mgナロ
キソンHCl、約1.5mgナロキソンHClおよび約1.6mgナロキソンHClに相
当する量のナロキソンが、標準的な開始量として特に好ましいとすることができる。
【0091】
有効量のナロキソンの別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される
約1.2mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0092】
したがって、1.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与
流体1mlにつき6mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用流
体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき
6mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻孔内
に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき6mgナロキソンHClに相当する
濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0093】
または、1.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体
1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用流体を
1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき8m
gナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の鼻孔内に投与
してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で
含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0094】
他に、1.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1
mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を
1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき12
mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投
与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃
度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0095】
有効量の別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約1.6mg
ナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0096】
したがって、1.6mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与
流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用流
体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき
8mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻孔内
に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき8mgナロキソンHClに相当する
濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0097】
または、1.6mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体
1mlにつき10.7mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用
流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつ
き10.7mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の
鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき10.7mgナロキソンHC
lに相当する濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる
【0098】
他に、1.6mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1
mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を
1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき16
mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投
与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃
度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0099】
有効量のさらに別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約2.
4mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0100】
したがって、2.4mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与
流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用
流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつ
き12mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻
孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき12mgナロキソンHClに相
当する濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0101】
または、2.4mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体
1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用流体
を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき1
6mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の鼻孔内に
投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する
濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0102】
他に、2.4mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1
mlにつき24mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を
1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき24
mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投
与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき24mgナロキソンHClに相当する濃
度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0103】
有効量のさらに別の標準的な開始点は、1つの適用ステップで鼻腔内投与される約3.
2mgナロキソンHClに相当する量とすることができる。
【0104】
したがって、3.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与
流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積200μlの適用
流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつ
き16mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を第1の鼻
孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき16mgナロキソンHClに相
当する濃度で含む別の100μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0105】
または、3.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体
1mlにつき21.4mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積150μlの適用
流体を1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつ
き21.4mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積75μlの適用流体を第1の
鼻孔内に投与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき21.4mgナロキソンHC
lに相当する濃度で含む別の75μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる
【0106】
他に、3.2mgの量のナロキソンHClを供給するために、ナロキソンを投与流体1
mlにつき32mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積100μlの適用流体を
1つの鼻孔内に投与することができる。または、ナロキソンを投与流体1mlにつき32
mgナロキソンHClに相当する濃度で含む体積50μlの適用流体を第1の鼻孔内に投
与してから、ナロキソンを投与流体1mlにつき32mgナロキソンHClに相当する濃
度で含む別の50μlの適用流体を第2の鼻孔内に投与することができる。
【0107】
4mgナロキソンHCl、6mgナロキソンHCl、8mgナロキソンHCl、10m
gナロキソンHCl、12mgナロキソンHCl、14mgナロキソンHClまたは16
mgナロキソンHClに相当する量で開始するのも好ましいとすることができ、前記量は
、好ましくは、1つの適用ステップで、2つの鼻孔に2つの連続投与をするために2×1
00μlの適用流体で供給される。開始点として、鼻腔内投与される1mgまたは2mg
ナロキソンHClに相当する量は除外するのが好ましいとすることができるであろう。
【0108】
当然のことながら、上記の第2の投与ステップ、すなわち第2の鼻孔への連続投与は、
本発明において、力価測定のための反復投与とはみなされない。正確に言うと、上記のと
おり、第1の鼻孔への投与と第2の鼻孔への投与とは1つの適用ステップとみなされる。
【0109】
概して好ましいとすることができるのは、各投与ステップが100μlの適用流体を含
む、2つの鼻孔への2つの連続投与ステップからなる1つの適用ステップで、ナロキソン
を投与することである。さらに、好ましいとすることができるのは、かかる適用ステップ
では、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の濃度が、適用流体1m
lにつき6mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき80mgナロキソンHClとに
相当する濃度間、好ましくは適用流体1mlにつき10mgナロキソンHClと適用流体
1mlにつき70mgナロキソンHClとに相当する濃度間、より好ましくは適用流体1
mlにつき20mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき60mgナロキソンHCl
とに相当する濃度間、最も好ましくは適用流体1mlにつき20mgナロキソンHClと
適用流体1mlにつき50mgナロキソンHClとに相当する濃度間であるということで
ある。この構成において、適用流体中のナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の特
に好ましい濃度は、適用流体1mlにつき18mgナロキソンHClと適用流体1mlに
つき20mgナロキソンHClとに相当する濃度間である。
【0110】
開始用量がナロキソンの有効用量として不十分である場合、別の適用ステップが必要に
なることがある。この場合、有効量になるまで力価測定を実施する(上記を参照)。した
がって、第2の用量を投与する場合があり、前記第2の用量は、好ましくは投与した最初
の第1の用量に相当する。すなわち1.2mgナロキソンHCl、1.6mgナロキソン
HCl、2.4mgナロキソンHClまたは3.2mgナロキソンHClに相当するもの
とすることができる。好ましい実施形態において、前記第2の用量は、約1.3mgナロ
キソンHClと約1.6mgナロキソンHClとの間に相当する量に該当するものとする
ことができる(前記量が1つの鼻孔への投与によって供給されるか、または前記量が2つ
の鼻孔への投与によって供給される)。
【0111】
第1の用量についてと同様に、第2の用量の投与は、単一の投与ステップのみ、すなわ
ち1つの鼻孔への投与を含んでもよく、1つの適用ステップを提供するための、2つの鼻
孔への2つの連続投与ステップを含んでもよい。
【0112】
一部の症例において、所望の効果を達成するために、ナロキソンの第3の用量または第
4もしくは第5の用量さえをも別々の適用ステップで適用することが必要な場合がある。
【0113】
当然のことながら、上記のすべての適用ステップは、初期治療段階中に、通常最初の約
15〜約30分以内に実施されるステップとして経験されるものである。既に上述したと
おり、本発明者らは、驚くべきことに、緩慢な排出パターンが本発明によって達成される
ことを発見した。したがって、ナロキソンの反復投与は必要でない場合がある。
【0114】
しかし、過量投与の症例によっては、相殺効果を維持するために、ナロキソンを鼻腔内
にまたは異なる経路で再投与することが必要な場合がある。かかる再投与は、たとえば最
初の投与から約2時間後、3時間後、4時間後、5時間後または6時間後に必要な場合が
ある(最初の投与は初期力価測定中にいくつかの適用ステップを含んでもよい)。
【0115】
ナロキソンを鼻腔内経路で再投与する場合、上記と同じ用量および体積を使用すること
ができる。したがって、前記再投与の用量は、好ましくは、投与された第1の用量に相当
する。
【0116】
別の好ましい実施形態において、本明細書に記載する鼻腔内医薬剤形のうち少なくとも
1つは、ナロキソンを含む筋肉内用剤形および/または静脈内用剤形と組み合わされる。
したがって、鼻腔内医薬剤形は、ナロキソンを含む筋肉内用剤形および/または静脈内用
剤形の投与の前または後に投与することができる。かかる組合せ投与は、治療すべき対象
の状態によって必要な場合があり、通例、熟練した医療関係者によって判断されるであろ
う。本鼻腔内投与を筋肉内投与および/または静脈内投与と組み合わせる場合、約0.4
mg〜約2mgのナロキソンが筋肉内および/または静脈内に投与されるのが好ましいと
することができる。
【0117】
本発明の実施例の部分から推論することができるとおり、小体積中に溶解したナロキソ
ンを含む鼻腔内剤形のtmaxは短く、バイオアベイラビリティは高く、排出半減期は比
較的長い。
【0118】
ナロキソンを含む経口剤形と比較して、本発明の鼻腔内剤形が示すバイオアベイラビリ
ティは、少なくとも約10倍高いようである。さらに、tmaxは経口剤形のtmaxと
比較してより短いようである。
【0119】
静脈内投与したナロキソンのバイオアベイラビリティを100%とし(基準として使用
する)、これと比較すると、本発明の剤形のバイオアベイラビリティは適度に高いようで
ある。静脈内投与したナロキソンは、約1〜2分以内に迅速な作用発現をするが、本発明
の剤形による作用発現よりわずかに速いだけのようである。
【0120】
本発明の実施例の部分に記載する試験によって立証されたとおり、静脈内投与したナロ
キソンの排出半減期は約60〜90分である。静脈内投与したナロキソンの排出半減期が
このようにやや短いため、オピオイド過量投与の症状、たとえば呼吸抑制などの再発を回
避するために、反復投与または持続注入が必要となる。
【0121】
明らかに、この静脈内の再投与または持続注入には、繰り返される針刺し損傷の危険を
扱うのに適格な医療関係者の必要性またはかかる関係者による持続注入の監視の必要性な
どの欠点が伴う。本発明の鼻腔内剤形の排出半減期は約数時間であるため、このような欠
点は本発明の剤形によって克服することができる。
【0122】
したがって、本発明の医薬剤形は、過量投与および/またはその症状、たとえば呼吸抑
制などを逆行させるために、オピオイド過量投与の場合において投与するのに特に好適で
あると思われる。
【0123】
好ましくは、鼻腔内剤形は、鼻内噴霧剤、鼻粘膜付着剤形または粘膜用霧状化器具であ
り、これらはすべて、熟練した医療関係者だけでなく、医療に未熟練の人でも容易に投与
することができる。本適応症にとって、鼻腔内剤形は仰臥位でも体を起こした姿勢でも機
能することが可能な器具に対応することが好ましく、かかる器具は本発明において明らか
に好ましい(上記の器具も参照)。
【0124】
鼻腔内剤形中に使用される製剤は、溶液剤、懸濁剤または鼻用ゲル/ゲル様製剤とする
ことができる。ゲルまたはゲル様製剤は、ナロキソンの追加の徐放が意図される場合に特
に使用することができる。
【0125】
鼻腔内用製剤中に使用される標準的な医薬品添加剤は当業者に公知であり、本発明によ
る製剤に使用することができる。これには当業者に公知の吸収/浸透エンハンサーおよび
結合剤、担体などが含まれる。当業者は、他の標準的な試剤、たとえば等張化剤、緩衝剤
、溶媒、共溶媒、粘稠剤またはゲル化剤を製剤中に使用することができることをさらに承
知している。
【0126】
鼻内噴霧剤の使用は特に好ましい。したがって、たとえばナロキソンまたは薬学的に許
容されるその塩を、≧0.6mgナロキソンHClに相当する量で、体積≦200μlの
適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻内噴霧剤を使用することができる。特に好ま
しいとすることができるのは、鼻内噴霧剤の投薬単位1つにつき体積100μlの適用流
体中0.6mgナロキソンHClの使用である。したがって、2つの鼻孔への2つの連続
投与を含む1つの適用ステップを行うと、1.2mgの量のナロキソンHClを供給する
ことになる。最も好ましいのは、約0.65mgナロキソンHClと0.8mgナロキソ
ンHClとの間または約1.3mgナロキソンHClと約1.6mgナロキソンHClと
の間に相当する量である。
【0127】
または、鼻内噴霧剤の投薬単位1つにつき体積100μlの適用流体中0.8mgナロ
キソンHClを使用することができる。したがって、2つの鼻孔への2つの連続投与を含
む1つの適用ステップを行うと、1.6mgの量のナロキソンHClを供給することにな
る。鼻内噴霧剤は合計で少なくとも600μlを含むことができ、これは少なくとも5つ
の投与単位およびたとえば準備のために必要な残余の体積として十分であると思われる。
明らかに、初期力価測定用または後の段階での適用のための再適用が、かかる噴霧剤を使
用して可能になるべきである。
【0128】
一般的に、投薬単位1つにつき次の体積を本発明による鼻内噴霧剤中に特に使用するこ
とができる。約25μl、約50μl、約70μl、約90μl、約100μl、約12
0μl、約130μlまたは約140μl。
【0129】
血漿曲線を説明するパラメーターは、臨床試験において、最初に複数の試験対象者に1
回限定で活性剤ナロキソンを鼻腔内投与することによって得ることができる。次いで各試
験対象者の血漿値の平均値を取り、たとえば平均AUC、Cmaxおよびtmax値が得
られる。本発明の内容において、AUC、Cmaxおよびtmaxなどの薬物動態パラメ
ーターは平均値を表す。さらに、本発明の内容において、AUC、Cmax、tmaxの
値などのin vivoパラメーターは、ヒト患者および/または健常なヒト対象への単
一用量の投与後に得られるパラメーターまたは値を表す。
【0130】
平均tmax、CmaxおよびAUCなどの薬物動態パラメーターを健常なヒト対象に
ついて測定する場合、これらは通常、ほぼ10〜25人の健常なヒト対象の試験集団にお
いて経時で血漿値の動きを測定することによって得られる。European Agen
cy for the Evaluation of Medicinal Produ
cts(EMEA)またはFood and Drug Administration
(FDA)などの規制機関は、通例、たとえば20〜24人の試験対象者から得たデータ
を承認するであろう。好ましくは、得られるパラメーターは単一用量投与の試験に関する
【0131】
この文脈において「健常な」ヒト対象という用語は、身長、体重および血圧などの生理
学的なパラメーターに関する値が平均的な、通例コーカシアン起源の標準的な男性または
女性のことを指す。本発明において、健常なヒト対象は、International
Conference for Harmonization of Clinical
Trials(ICH)の推奨に基づき、これに準拠する組み入れ基準および除外基準
によって選択される。本発明においては、健常な対象は、実施例の部分で概説する組み入
れ基準および除外基準によって特定することができる。
【0132】
さらに好ましい本発明の実施形態は、以下に関する。
【0133】
1.適用流体中に溶解して、適用流体1mlにつき5mgナロキソンHClと適用流体
1mlにつき100mgナロキソンHClとに相当する濃度間、好ましくは適用流体1m
lにつき5mgナロキソンHClと適用流体1mlにつき70mgナロキソンHClとに
相当する濃度間の最終濃度にした、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む鼻
腔内医薬剤形。
【0134】
2.体積200μlと50μlとの間の適用流体、好ましくは体積200μlの適用流
体、より好ましくは体積100μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与される、1に記
載の剤形。
【0135】
3.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき6.5mgナロキソンHClと適用流体1
mlにつき33mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0136】
4.体積200μlの適用流体、好ましくは100μlの適用流体が1つの鼻孔当たり
に投与される、3に記載の剤形。
【0137】
5.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき8.5mgナロキソンHClと適用流体1
mlにつき44mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0138】
6.体積150μlの適用、好ましくは75μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに投与
される、5に記載の剤形。
【0139】
7.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき13mgナロキソンHClと適用流体1m
lにつき66mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0140】
8.体積100μlの適用流体、好ましくは50μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに
投与される、7に記載の剤形。
【0141】
9.前記最終濃度が、適用流体1mlにつき18.5mgナロキソンHClと適用流体
1mlにつき94mgナロキソンHClとに相当する濃度間である、1に記載の剤形。
【0142】
10.体積70μlの適用流体、好ましくは35μlの適用流体が1つの鼻孔当たりに
投与される、9に記載の剤形。
【0143】
11.オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使
用するためのものである、1から10のいずれかに記載の剤形。
【0144】
別のさらに好ましい本発明の実施形態は、以下に関する。
【0145】
1.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を、≧0.5mgナロキソンHClに
相当する量で、好ましくは≧0.6mgナロキソンHClに相当する量で、体積≦250
μl、好ましくは体積≦200μlの適用流体中に溶解して含む投薬単位を含む鼻腔内医
薬剤形。
【0146】
2.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0.6mgナロキソンHCl
〜12mgナロキソンHClに相当する範囲内、好ましくは0.6mgナロキソンHCl
〜6mgナロキソンHClに相当する範囲内、より好ましくは0.6mgナロキソンHC
l〜3.75mgナロキソンHClに相当する範囲内、最も好ましくは0.6mgナロキ
ソンHCl〜2.0mgナロキソンHClに相当する範囲内である、1に記載の剤形。
【0147】
3.適用流体の体積が、200μl〜35μl、好ましくは200μl〜50μl、よ
り好ましくは200μl〜100μl、最も好ましくは150μl〜100μlの範囲内
である、1または2に記載の剤形。
【0148】
4.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩の量が、0.6mgナロキソンHCl
または1.2mgナロキソンHClに相当し、適用流体の体積が200μl〜50μl、
好ましくは200μl〜100μl、より好ましくは150μl〜100μlの範囲内で
ある、1から3のいずれかに記載の剤形。
【0149】
5.剤形のヒトにおける活性剤ナロキソンのバイオアベイラビリティが、静脈内投与し
たナロキソンのバイオアベイラビリティを100%としてこれを基準に算出した場合に2
0%〜40%である、1から4のいずれかに記載の剤形。
【0150】
6.剤形のヒトにおける活性剤ナロキソンの作用発現が、投与して5分〜18分以内で
ある、1から5のいずれかに記載の剤形。
【0151】
7.剤形のヒトにおける活性剤ナロキソンの血漿内半減期が、投与して1.5時間〜9
時間である、1から6のいずれかに記載の剤形。
【0152】
8.適用流体が、水および水性食塩溶液、好ましくはNaClの水溶液、より好ましく
は濃度が0.9%重量/体積までのNaClの水溶液を含む群から選択される、1から7
のいずれかに記載の剤形。
【0153】
9.少なくとも2つの投与単位、好ましくは少なくとも3つの投与単位、より好ましく
は少なくとも4つの投与単位、最も好ましくは少なくとも5つの投与単位を含む、1から
8のいずれかに記載の剤形。
【0154】
10.鼻内噴霧剤、鼻粘膜付着剤形および粘膜用霧状化器具を含む剤形の群から選択さ
れる、1から9のいずれかに記載の剤形。
【0155】
11.オピオイド過量投与および/または少なくとも1つのその症状の治療において使
用するためのものである、1から10のいずれかに記載の剤形。
【0156】
12.オピオイド過量投与の症状が、呼吸抑制、意識レベルの変化、縮瞳、低酸素血症
、急性肺損傷および誤嚥性肺炎を含む群から選択される、12に記載の剤形。
【0157】
13.有効量のナロキソンを供給するために、剤形が初期力価測定時間中に再適用され
る、11または12に記載の剤形。
【0158】
14.ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩を含む筋肉内用剤形および/または
静脈内用剤形と組み合わされる、11から13のいずれか1つに記載の剤形。
【0159】
15.≧0.5mgナロキソンHClに相当する量で、鼻腔内医薬剤形の投薬単位中の
体積≦250μlの適用流体中に溶解した、ナロキソンまたは薬学的に許容されるその塩
の使用。
(実施例)
【0160】
本発明の実施形態の実施例を以下に概説する。しかし、実施例は本発明の範囲を限定す
るものと解釈されてはならない。
【実施例1】
【0161】
次に、4−wayクロスオーバー試験において、鼻腔内および舌下でのナロキソンのバ
イオアベイラビリティを測定するための、健常な志願者における単施設、非盲検、無作為
化試験の結果を説明する。
【0162】
試験の概要
目的:健常な被験者に対して、1mgの静脈内投与したナロキソンと比較して、8mg
および16mgの鼻腔内投与したナロキソンおよび16mgの舌下投与したナロキソンの
絶対バイオアベイラビリティを評価する。
【0163】
試験方法:単施設、非盲検、無作為化、4−wayクロスオーバー試験、8mgおよび
16mgナロキソンを鼻腔内に、16mgナロキソンを舌下に、1mgのナロキソンを静
脈内に使用。4連続Williamsデザインを使用した。
【0164】
被験者数:計画:12被験者、PK測定のための完全解析:12被験者、安全性解析対
象集団:12被験者、終了:10被験者、中止:2被験者[被験者自身の選択による]。
【0165】
組み入れの指標および基準:被験者は、≧18歳および≦55歳の男性および/または
女性で、病歴、身体検査(鼻咽頭および口腔を含む)、心電図(ECG)および臨床検査
診断において、臨床的に重要な所見がないことで健康であると判断された人とした。
【0166】
試験治療、用量および投与方法:
1:ナロキソン8mgおよび16mgを、400μlとして鼻腔内投与した(1つの鼻
孔当たり200μl)。これはほぼ0.11mg/kg体重(8mgについて)および0
.22mg/kg体重(16mgについて)に相当する。
【0167】
投与は次のとおりである。
【0168】
鼻内噴霧剤のポンプを、キャップを外し、下方に押下して準備した。これを少なくとも
6回または微細な噴霧剤が出てくるまで繰り返す。準備は投薬の直前に実施する。
【0169】
被験者は立位または体を起こした姿勢で、静かに鼻をかんで鼻孔の通りをよくするもの
とする。被験者は前方にわずかに頭を傾け、閉じようとする鼻孔側の鼻の外側を指で押し
て1つの鼻孔を緩やかに閉じるものとする。
【0170】
器具を、開いている鼻孔内に挿入し、鼻孔内に2回噴霧する。被験者は鼻孔から静かに
息を吸うものとし、器具を取り出し、もう1つの鼻孔でこのステップを繰り返す。
【0171】
2:1ml溶液中のナロキソン16mgを舌下投与し、舌下に5分保持した。
【0172】
ナロキソン塩酸塩粉末をMallenckrodt Chemicalから得た(ロッ
ト番号E09611)。溶液を0.9%塩化ナトリウム溶液中に調製した(pHを5.6
に調整した)。
【0173】
参照治療、用量および投与方法:1mlのボーラスとして30秒間にわたって投与する
静脈内用ナロキソン1mg。
【0174】
10mlバイアル入りナロキソン塩酸塩1mg/mlを、Bristol−Meyer
s Squibb Holdings Pharma,Ltd、米国から得た。
【0175】
治療および試験期間:スクリーニング期間を、期間1の投薬前14日以内に設けた。4
種の単一用量、非盲検治療とし、各治療の間に最低限14日のウォッシュアウトを設けた
。被験者は、第4の投薬の評価が45日目に終了した後、または早期試験中止時に試験終
了の医学的評価を受けた(図1を参照)。
【0176】
治療スケジュール:4つの試験期間の各々に単一用量の試験薬、試験薬の各投薬後に少
なくとも14日のウォッシュアウト期間(期間1、2および3のみ)。
【0177】
評価基準:
解析対象集団:登録集団を、インフォームドコンセントの書式に署名した任意の被験者
と定義した。安全性解析対象集団を、いずれかの試験治療を受け、これに続く少なくとも
1つの安全性評価を受けた任意の被験者と定義した。薬物動態測定のための完全解析対象
集団を、試験治療を受け、これに続く少なくとも1つの有効なPK測定を受けた被験者と
定義した。
【0178】
薬物動態/血液採取時間:薬物動態用の血液採取を、各投薬に関して次の時間に実施し
た:0時間(投薬直前)、1、2、4、10、30、40分および1、2、4、6、8、
12、16、24時間。
【0179】
薬物動態測定:ナロキソンおよび6β−ナロキソールのAUCt、AUCINF、Cm
ax、tmax、λZおよびt1/2zについて、個々の被験者の薬物動態測定値を、有
効な薬物動態解析プログラムによるノンコンパートメント法を使用して導いた。
【0180】
安全性:安全性を、有害事象、臨床検査の結果、バイタルサインおよびECGを使用し
て評価した。
【0181】
生体分析方法:ナロキソンおよび6β−ナロキソールの血漿中濃度を、LC−MS/M
S法によって、以前に検証済みのアッセイを使用して定量した。加えて、被験者の血漿試
料を、他の関連するナロキソン代謝産物についてアッセイした(GLPおよび/または非
GLP法によって)。
【0182】
統計方法:血漿中濃度および薬物動態測定値を、各治療の各分析物について、記述によ
り要約した(n数、平均、SD、幾何平均(AUCt、AUCINFおよびCmaxにつ
いて適宜)、SE(濃度のみ)、中央値、最小値および最大値を決定した)。鼻腔内治療
および舌下治療の絶対バイオアベイラビリティを計算した。
【0183】
試験の詳細
試験デザイン:試験は、単一用量、非盲検、4治療、4期、無作為化クロスオーバー試
験とし、健常な成人男性および女性被験者において、2種の用量の経鼻投与したナロキソ
ンおよび1種の用量の舌下投与したナロキソンの薬物動態を、静脈内投与したナロキソン
と比較して評価するためのものとした。被験者に、無作為のコードによって4治療の各々
を施し、各投薬間に少なくとも14日のウォッシュアウト期間を置いた。被験者を最初の
投薬日前14日以内にスクリーニングした。その後、適格の被験者に、各試験期間の投薬
の前夜に試験単位に入院してもらった。被験者に、終夜絶食の後の翌朝、試験薬を投与し
た。各試験期間の試験薬の投与後36時間にわたって薬物動態用の血液試料を採取したが
、被験者を24時間時点の血液試料の採取後に退院させた。被験者は、試験単位に再来し
て36時間後のPK血液試料を提供した。試験期間中、バイタルサインをモニターし、有
害事象(AE)を記録した。被験者は、スクリーニング時に手続きをしたように、最後の
外来通院時または試験の早期終了/中止時に試験終了手続きをした。
【0184】
試験集団の組み入れ基準:
− 任意の人種群の男性および女性。
【0185】
− 年齢は上下限を含めて≧18歳および≦55歳。
【0186】
− BMIは上下限を含めて18〜32kg/mの範囲内、体重は上下限を含めて5
0〜100kgの範囲内。
【0187】
− 女性は、授乳中でなく、妊娠しておらず、スクリーニング時の血清妊娠検査が陰性
で、各用量の試験薬を投与する前24時間以内の尿妊娠検査が陰性でなければならない。
WOCBPは、ホルモン避妊薬、殺精子薬を追加したバリア型避妊具または子宮内避妊器
具の使用に同意しなければならない。閉経後の女性被験者は、閉経後>1年で、血清FS
Hが高く、閉経後の状態に矛盾しない値でなければならない。
【0188】
− 概して、病歴、身体検査、臨床検査試験、バイタルサインおよびECGに著しく異
常な所見がないことによって証明される、良好な健康状態。
【0189】
− 書面によるインフォームドコンセントを提出すること。HIPAAの基準が同意書
に組み込まれていない場合、インフォームドコンセントの書式に別に補遺したものに署名
しなければならない。
【0190】
− 外来への再来院を含む実施計画書のすべての規則に進んで従うことができること。
【0191】
試験集団の除外基準:
− ナロキソンまたは関連する化合物に対していずれかの過敏性の既往歴がある。
【0192】
− American Academy of Pain medicine、Ame
rican Pain SocietyおよびAmerican Society of
Addiction Medicineの嗜癖の基準:「次の1つまたは複数を含む行
動を特徴とする:薬物使用、強迫的使用、有害であるにもかかわらず継続使用することに
対する制御障害、および欲求」、しかしこの試験ではタバコ依存は含めない基準に合致す
る対象。
【0193】
− OOWSL4スコアが投薬前I時間以内に>4である。
【0194】
− 薬物の吸収、分布、代謝、および/または排泄を妨げうる状態の既往歴または任意
の現在の状態。
【0195】
− 任意のタイプの鼻炎、ポリープ、任意の病因による完全閉塞もしくは部分閉塞(た
とえば鼻中隔の著しい弯曲、最近の外傷または手術)、活動性出血もしくは最近の反復性
鼻出血の既往歴または任意の潰瘍を含む、鼻腔内の薬物吸収を妨げうる鼻の状態。
【0196】
− 鼻腔内または口腔内の任意の異物(装身具を含む)またはいずれかの腔内の、また
は中隔もしくは舌を貫通する任意の穿孔(装身具用のピアス孔を含む)。
【0197】
− 以下を含む、鼻鏡検査での異常な粘膜:
萎縮性粘膜、穿孔、多発性ポリープ、いずれかの側の鼻道の完全閉塞、血管腫。
【0198】
− 任意のタイプの潰瘍、感染症または最近の外傷もしくは手術を含む、口腔内の(舌
下の)薬物吸収を妨げうる口の状態。過去2週間以内に定期的な歯の清掃を行った、また
は試験期間中に歯の清掃の予定がある。
【0199】
− 歯肉炎を含む口腔不衛生。
【0200】
− 以下を含む、検査での異常な経口粘膜:
萎縮性粘膜、悪性腫瘍もしくは良性腫瘍(線維腫および血管腫を含む)または嚢胞、水疱
性病変(たとえば天疱瘡または多形紅斑)、舌炎、アフタ性潰瘍、扁平苔癬、白板症、感
染症[細菌性、真菌性、ウイルス性(たとえばヘルペス)]。鼻腔内用製品(処方、非処
方または鼻腔内投与される他のいずれかのもの)の、投薬前4週間以内の任意の使用。
【0201】
− 最初の投薬の前4週間以内または試験期間中の、任意の処方薬(閉経後の女性用の
ホルモン補充療法(HRT)または避妊薬剤を除外)の使用。半減期の短い薬物(たとえ
ばテトラサイクリン)および/または著しい薬物相互作用が知られていない薬物(たとえ
ばフィナステリド)については個別に例外を設定してもよい。
【0202】
− 任意の投薬の前7日間または後2日間の、ビタミンおよびハーブサプリメントまた
はミネラルサプリメントを含む任意の非処方薬剤の使用。半減期の短い薬剤については個
別に例外を設定してもよい。
【0203】
− この試験の最初の投薬の前30日間の薬物臨床試験への参加。
【0204】
− 最初の投薬の前4週間以内の重大な任意の疾病。
【0205】
− 試験薬投与前30日間または試験期間中の献血または血液生成物の提供。
【0206】
− 試験薬投与前少なくとも10時間および投与後4時間絶食することの拒否、または
各拘束中の全体にわたってカフェインまたはキサンチンを含有する飲料を断つことの拒否
【0207】
− >21単位/週(12ozのビール=4ozのワイン=1.5ozのショット=1
単位)に相当する量を超えるアルコール摂取。
【0208】
− 試験薬投与から48時間以内のアルコール飲料の摂取。
【0209】
− 試験薬投与の45日以内の喫煙履歴(スクリーニング時に尿中コチニンが陰性でな
ければならない)。
【0210】
− 尿中薬物スクリーニング、血中アルコール、または抗HBcおよび抗HCVを含む
血清学的検査のスクリーニングで陽性の結果。
【0211】
− 試験責任医師が、除外基準には特に述べられていない何らかの理由で、対象が不適
格であると考える。
【0212】
投与の方法:各投薬日の午前に、被験者に試験薬剤を投与した。被験者に、終夜少なく
とも10時間の絶食の後に投薬した。投薬後、被験者には体を起こした座位で最低限4時
間過ごしてもらった。鼻腔内用の用量を、定量鼻内噴霧器具によって投与した。1つの鼻
孔当たり200μlを投与して全体積を400μlとした。各鼻腔内投与のために、頭を
前方にわずかに傾けた。被験者に、投与後は鼻をかんだりくしゃみをしたりしないように
指示した。鼻腔内の投薬を受けた被験者について、投薬の5分以内に発生したいかなるく
しゃみも原資料に記録した。
【0213】
舌下用の用量のナロキソンを、被験者に溶液(0.4ml)を舌下に5分間保持しても
らうことによって投与し、その後、口を水で入念にすすぎ、吐き出されたすすぎ残留物を
処分した。被験者の姿勢は立位または体を起こした座位とした。被験者に、すすぎ水を決
して嚥下しないように指示した。被験者は、すすぎ後の1時間水を飲むことも避けた。被
験者が座っている間に静脈内用のナロキソンを30秒のボーラスとして投与することにな
る。
【0214】
結果:
安全性:治療により発現した有害事象(TEAE)の発生率は、すべての治療群にわた
って類似していた。すなわち、8mg鼻腔内用ナロキソン[3件のTEAE]、16mg
鼻腔内用ナロキソン[5件のTEAE]、16mg舌下用ナロキソン[1件のTEAE]
、1mg静脈内用ナロキソン[4件のTEAE]であった。最も多く見られたTEAEは
、SOC(器官別大分類)の胃腸障害および神経系障害において発現した。胃腸障害のT
EAEは16mg鼻腔内群、1mg静脈内群および16mg舌下群のみに観察され、神経
系TEAEは8mgおよび16mg鼻腔内群および1mg静脈内群のみに観察された。
【0215】
死亡、重篤な有害事象、または他の重要な有害事象はなかった。1人の被験者が、著し
く異常に高いトリグリセリド値(8.355mmol/l)を試験の44日目に記録した
。しかしこの被験者は、試験薬を投与する前の−9日目に、正常範囲を超えるトリグリセ
リド値(4.189mmol/l)を記録していた。
【0216】
別の被験者から、著しく異常に低いカリウム値(3.3mmol/l)、著しく異常に
高いSGPT値(371U/l)および著しく異常に高い総ビリルビン値(39.33u
mol/l)が試験の44日目に報告された。この被験者のカリウム、SGPTおよび総
ビリルビン値は、試験薬を投与する前は正常であった。これらの検査所見は日常的な検査
評価中に観察されたものであり、疑わしい有害事象として試験責任医師によって報告され
たものではなかった。したがって、因果関係評価は実施されなかった。調査した薬物の投
与と折よく関連したため、試験依頼者はこの事象を、WHOアルゴリズムに従って、関係
ある「かもしれない」と評価した。
【0217】
ECGにおいて臨床的に関連のある変化は発現しなかった。
【0218】
3人の被験者には脈拍数に著しく異常な変化があり、1人の被験者には血圧に著しく異
常な変化があった。血管迷走神経発作のTEAEは、3人の被験者について、鼻腔内にナ
ロキソンを適用した後(2人の被験者:1人の被験者は8mgを投与後、1人の被験者は
16mgを投与後)および静脈内にボーラス(1mg)投与した後(1人の被験者)、報
告された。異常なバイタルサインの変化における全体的な傾向はこの試験では観察されな
かった。
【0219】
併用療法を、10件のTEAEについて6人の被験者に施した。これら10件のTEA
Eのうち3件は血管迷走神経発作であり、被験者を仰臥位に寝かせて回復させた。これら
の被験者に追加の薬剤は使用しなかった。1人の被験者には追加の頭痛用の薬剤を2回投
与した。追加の薬剤を、痔核切除、蕁麻疹、胃食道逆流症、悪心および尿路感染症の各単
一の事象について投与した。
【0220】
薬物動態:ナロキソンの鼻腔内投与後、体循環中に薬物がきわめて早期に出現し、投薬
後6分もの速さでピーク血漿中濃度に達した(中央値は18分)。平均絶対バイオアベイ
ラビリティは、8mgおよび16mgの用量でそれぞれ32%および27%と記録され、
これは鼻腔内用ナロキソンのAUCを、基準とする静脈内用ナロキソンのAUCで除算し
、100%を乗じて得た。基準とする静脈内用では排出半減期が短い(<1h)のとは対
照的に、平均半減期は、8mgおよび16mgの鼻腔内用用量でそれぞれ数時間が記録さ
れた。これらのデータは、鼻腔内経路によりナロキソンの吸収が相当なレベルであること
と、適度に緩慢な排出パターンとが備わっていることを示している。これに対し、舌下経
路で投与した場合、ナロキソンの平均絶対バイオアベイラビリティは静脈内用の基準に対
してほぼ2%であった。これは以前経口投与後に記録されたものと類似している。
【0221】
ナロキソンの平均薬物動態パラメーターは図2に記載されている。
【実施例2】
【0222】
実施例1で得られたデータに基づいて、静脈内投与または鼻腔内投与されるナロキソン
の量を次のとおり予測した。
【0223】
ナロキソンの静脈内投与の標準的な開始点は、約0.4mg(IV)の範囲内である。
実施例1の1mgIVナロキソン、8mgINナロキソンおよび16mgINのAUC値
に基づいて、1mgIVに対する用量比例の範囲はINナロキソンについて3mg〜4m
gの範囲内であると推定することができる。0.4mgIVナロキソンについては、鼻腔
内投与されるナロキソンの標準的な開始量が1.2mg〜1.6mgの範囲ということに
なる。
【0224】
鼻腔内に(IN)投与した8mgナロキソンまたは16mgナロキソンについての実施
例1の試験の元データ、および静脈内に(IV)投与した1mgナロキソンの元データに
基づいて、血漿中濃度を次の量について予測した:0.4mgナロキソンIV、1.2m
gナロキソンINおよび1.6mgナロキソンIN。
【0225】
第1の方法(Excel)を使用して、IN投与した8mgナロキソンおよび1mgナ
ロキソンIVの元データに基づいたCmax値およびAUCt値を、提示した各用量に合
わせて変倍した平均プロファイルにノンコンパートメント解析を実施することによって計
算し、次の結果を得た。
【0226】
【表1】
【0227】
対応する曲線を図3(合計時間枠36時間で)および図4(時間枠4時間で)に示す。
【0228】
Excelを使用して、IN投与した16mgナロキソンおよびIV投与した1mgナ
ロキソンの元データに基づいたCmax値およびAUCt値も、提示した各用量に合わせ
て変倍した平均プロファイルにノンコンパートメント解析を実施することによって計算し
、次の結果を得た。
【0229】
【表2】
【0230】
対応する曲線を図5(合計時間枠36時間で)および図6(時間枠4時間で)に示す。
【0231】
第2の方法(WinNonlinモデリング)を使用して、IN投与した8mgナロキ
ソンの元データをコンパートメント薬物動態モデルに当てはめ、次いでモデルに基づいて
濃度のシミュレーションを行った。対応するCmax値およびAUCt値は次のとおりで
ある(合計時間枠36時間で)。
【0232】
【表3】
【0233】
対応する曲線を図7に、時間枠4時間で、Excelを使用して予測した濃度(上記参
照)と一緒に示す。
【0234】
WinNonlinを使用して、IN投与した16mgナロキソンの元データもコンパ
ートメント薬物動態モデルに当てはめ、次いでモデルに基づいて濃度のシミュレーション
を行った。対応するCmax値およびAUCt値は次のとおりである(合計時間枠36時
間で)。
【0235】
【表4】
【0236】
対応する曲線を図8に、時間枠4時間で、Excelを使用して予測した濃度(上記参
照)と一緒に示す。
【0237】
図7から特に導出することができるとおり、1.2mgおよび1.6mgの量について
それぞれ予測したINナロキソンの血漿中濃度は、0.4mgのIV投与と比較して増加
が緩やかでプラトーが長い。しかしIN曲線の初期勾配はかなり急でもある。さらに、I
N曲線は、IV曲線と比較して、Cmax後の下り勾配がかなり緩やかである。
【実施例3】
【0238】
特に図4、6、7および8から明らかであるように、0.4mgの量のナロキソンIV
について予測した血漿中濃度曲線にはピークが2回あり、第1のピークの数分後にCma
xピークに相当する第2のピークがある。
【0239】
IVプロファイルがこのようにかなり異常であるため、静脈内投与した0.4mgの量
のナロキソンについて血漿中濃度曲線を予測する際に、「ダブルピークIVプロファイル
」の原因であるらしく見える1件の異常値を示した対象を除外することにした。1.2m
gナロキソンINおよび1.6mgナロキソンINについてExcelおよびWinNo
nlinを使用して計算したものは実施例2で示したデータに相当する。
【0240】
Excelを使用して、異常値を示した対象を除外した1mgナロキソンIVのデータ
に基づいたCmax値およびAUCt値を、0.4mgIVの用量に合わせて変倍した平
均プロファイルにノンコンパートメント解析を実施することによって計算し、次の結果を
得た(再度8mgINのデータに基づいたIN値で示した)。
【0241】
【表5】
【0242】
対応する曲線を図9(合計時間枠36時間で)および図10(時間枠4時間で)に示す
【0243】
次の表に、異常値を示した対象を除外した1mgナロキソンIVのデータに基づいてC
maxおよびAUCtを計算した値を、16mgINのデータに基づいて1.2mgIN
および1.6mgINについて計算したCmax値およびAUCt値との比較として示す
【0244】
【表6】
【0245】
対応する曲線を図11(合計時間枠36時間で)および図12(時間枠4時間で)に示
す。
【0246】
既に実施例2に記載したとおり、IN投与した8mgナロキソンの元データもコンパー
トメント薬物動態モデルに当てはめ、次いでモデルに基づいて濃度のシミュレーションを
行った(WinNonlinモデリング)。対応する曲線を、異常値を示した対象を除外
した0.4mgIVの曲線(Excelによる)と一緒に図13に時間枠4時間で示す。
図14は、16mgナロキソンINのデータに基づいたモデリングに対応する曲線を、異
常値を示した対象を除外した0.4mgIVの曲線(Excelによる)と一緒に示す。
【0247】
最後に、図15および図16は、上記の実施例3のデータを時間枠4時間でまとめたも
のである。
【0248】
特に図15は、1.2mgおよび1.6mgの量についてそれぞれ予測したINナロキ
ソン血漿中濃度は、0.4mgのIV投与と比較して増加が緩やかでプラトーがかなり長
いことを示している。IN曲線は、IV曲線と比較して、Cmax後の下り勾配が緩やか
であることも明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2016年2月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【外国語明細書】
2016128453000001.pdf