【実施例】
【0052】
実施例1:開腹手術及び空腸吻合手術を受けたウマの手術性癒着の防止のための溶液処方剤中の選択フコイダンの安全性及び効果
フコイダン
フコイダンは褐海草Undaria ponnatifida(オーストラリア産)から抽出された。
【0053】
フコイダン分析方法及び材料
フコイダンの外観を決定するために視覚検査が実行された。濃度3%のフコイダン溶液を使用し、USPCSA法<781>に従って旋光度による比施光度が決定された。USP CSA法に従って強熱残留物(硫酸化)が調べられた。ウベローデ粘度計を使用して
動粘性が決定された。個別の糖モノマー含有量及び総炭水化物含有量は誘導体化によって決定され、電子衝撃イオン化モードを利用して質量選択検出器とインターフェースするガスクロマトグラフィによって分析された。分子量分布はゲル透過クロマトグラフィによって決定された。フコイダンの硫酸含有量は誘導結合プラズマ分光分析によって決定された。乾燥による損失は約105℃にて決定された。濃度0.1%のフコイダン溶液のpHはUSPCSA法によって決定された。
【0054】
ウマ腹腔出術時のフコイダンの効果及び安全性を調べる方法及び材料
12頭のウマが胃腸管または腹部とは無関係な理由により使用された。ウマは乱塊化され、それぞれ2種類の実験群の一方に振り分けられた。実験群(1)にはフコイダン溶液が投与され、実験群(2)には対照LRSが投与された(n=6頭/群)。フコイダン溶液と対照LRSは、2.5gのフコイダンを含有する50mLのフコイダン濃縮液または50mLのLRSを、LRSの5Lバッグ内でそれぞれ混合し、手術前にほぼ体温にまで暖めて準備された。
【0055】
ウマは周術期にフルニキンメグルミニン及び抗菌剤で治療された。短時間の腹腔診査が20cmの腹部正中線腹腔切開を介して実施された。空腸部での口腔部から腹骨に至る10及び5の弓形道管で、1cmの全厚周囲楔形部分が切除され、2層の単純連続パターンの2-0ポリグラクチン910を使用して吻合手術が実行された。口腔吻合部位は機械的
試験のために利用され、反口側部位は組織評価のために利用された。白線の縫合に先立って、5Lのフコイダン溶液または対照LRSが腹腔部に注入された。#2ポリグラクチン910を単純な連続パターンで使用して白線は接着された。白線縫合の頭方で連続パターンは8cmのところで遮断され、この部分は機械的試験のために使用された。尾方の12cmが組織評価のために使用された。皮下組織は2-0ポリグラクチン910を単純連続
パターンで使用して接着された。
【0056】
手術後に餌の提供が48時間かけて少しずつ再開された。物理的検査は12時間毎に実行された。ウマは疝痛の兆しをモニターされ、手術後の還流(一度に1L以上の還流を対象)は8時間毎にチェックされた。切開は浮腫、触診による痛痒、排液、及び裂開に関して主観的に等級付けられた。全血球算定、プラズマ化学、及び血液凝固プロフィールが手術前及び手術後の1日目、2日目、6日目並びに10日目に実行された。ウマは手術後10日目に安楽死処分された。死体解剖及び病状の結果は後述されている。
【0057】
ウマは手術後10日目に安楽死処分された。治癒及び癒着または感染を評価するために死体解剖が行われた。白線の頭方半分と口腔吻合部は殺菌生理食塩水で包まれ、直後の機械的試験のために冷蔵された。白線の尾方半分と口腔外吻合部は組織評価のために10%の中性緩衝(バッファ)されたホルマリン内で固定された。
【0058】
白線は緊張状態で試験され、破断荷重が記録され(ニュートン、N)、白線長に対して補正された(N/cm)。吻合破裂圧力(mmHg)が記録され、破裂壁引張力(ダイン/cm)が計算された。吻合及び切開はヘマトキシリンとエオシンで染色され、炎症程度が等級化された。分散の一方向分析で継続的データが分析された。有効係数レベルはp<0.05と確認された。
【0059】
フコイダン分析結果
フコイダンは次の特徴を備えていることが判明した。外見は白色からオフホワイトの間
であり、比旋光度は負の68.4°であり、強熱残分は約25.9%であり、動粘度は約2.05mm
2/sであり、炭水化物含有量は約60.5%であり、総炭水化物含有量の百分率としてのフコース含有量は約52%であり、総炭水化物含有量の百分率としてのガラクトース含有量は約48%であり、総炭水化物の百分率としての残りの糖モノマー含有量(総糖モノマー含有量−フコース及びガラクトースの含有量)は約1%未満であり、分子量分布は約0から5000g/molの間では約8.4%であり、約5000から60000g/molの間では約13.4%であり、60000から200000g/molの間では約26.5%であり、200000から1600000g/molの間では約38.7%であり、約1600000g/mol以上では約13.2%であり、硫酸塩含有量は約30.6%であり、乾燥損失は約3.7%であり、0.1%溶液のpHは約6.9であった。
【0060】
ウマ腹腔手術時のフコイダンの効率及び安全性の結果
手術前または10日間の研究期間中、心拍数または肛門温度において実験群間では差異が見られなかった。仙痛発作の回数では実験群間に差異はなかった。手術後に還流があったのはフコイダン溶液群では2頭のウマで、LRS対照群では3頭のウマであった。術後還流量はLRS対照群のウマ(手術後の最初の24時間内の1頭では9.5L、手術後3日目の別の1頭では4L、手術後の最初の72時間内のさらに別の1頭では5L)と較べてフコイダン群のウマ(手術後の1日目から4日目の1頭では23L、手術後の2日目から5日目の別の1頭では139L)ではさらに多く、全部のウマは正常に回復した。死体解剖では手術後の還流の原因を示す徴候はなかった。還流と馬糞にはサルモネア種は存在しなかった。対照群の1頭は切開感染を発症したが、フコイダン群では切開感染を発症したウマはいなかた(治療群の間に統計的な差異はなかった)。全ウマに腹膜炎の徴候はなかった。フィブリノーゲン濃度、血小板算定、活性化部分トロンボプラスチン時間、γグルタミル基トランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼまたはクレアチニン濃度に関しては実験群間に差異は観察されなかった。白血球数及び好中球数、アンチトロンビンIII、プロトロンビン時間、及びヘマトクリットにおける実験群間の相違は、数回調べられたが、それらの測定値は一般的に正常範囲内であった。フコイダンは硫酸化多糖体(例えばヘパリン)であったが、フコイダンでの治療は血液凝固パラメータに負の影響は及ぼさなかった。
【0061】
対照LRS群の1頭は脾臓と切開感染部位の身体壁との間で癒着を有していた。その他の癒着は存在しなかった(フコイダン群では癒着は存在しなかった)。肉眼剖検によると実験群間で吻合及び切開治癒に差はなかった。フコイダン溶液群のウマはLRS対照群のウマに較べて大幅に高い吻合破裂圧を有した(265±52mmHgに対して206±12mmHg、p=0.03)。このことは、フコイダンが吻合部位の治癒を向上させたことを示す。LRS対象群のウマと較べて、フコイダン溶液群のウマがさらに高い腸管破裂壁引張度を有する傾向も存在した(1104000±270000ダイン/cmに対して941000±189000ダイン/cm)。しかし、これは統計的な意味付けには不足であった(p=0.29)。実験群間で白線を破断させる引張荷重に差異はなかった(フコイダン溶液群とLRS群ではそれぞれ67±15N/cmと64±21N/cm、p=0.81)。分析によれば、吻合部または白線切開部で組織学的な炎症程度に差異はなかった。
【0062】
フコイダン濃度とフコイダン溶液は臨床セッティングでの利用が簡単で容易であった。フコイダンは対照LRS群の動物数の約17%から、フコイダン群の癒着を有した動物の数を0に減少させた。機械的試験ではフコイダン溶液が吻合治癒または切開治癒を妨害せず、例え妨害が存在したとしても、術後10日目の吻合強度や切開強度は対照群の場合よりも大きいことを示した。フコイダン溶液はウマの開腹時及び吻合時に安全に腹腔内投与された。よってフコイダン溶液は吻合治癒を改善したと結論付けられる。
【0063】
実施例2:腸剥離を患うポニーの手術後癒着防止のための溶液処方形態フコダインの安全性及び効果
フコダイン
【0064】
フコダインは褐海草Undaria pinnatifida(オーストラリア産)から抽出された。
【0065】
フコダイン分析方法及び材料
【0066】
フコイダンの外見を決定するために視覚的検査が行われた。個々の糖モノマー含有量及び総炭水化物含有量は、誘導化法及び電子衝撃イオン化モードを利用した質量選択性検出器とインターフェースしたガスクロマトグラフィによる分析によって決定された。分子量分布はゲル透過クロマトグラフィで決定された。フコイダンの硫酸塩含有量は誘導結合プラズマ分光によって決定された。アセチル基含有量は1HNMRで決定された(アセチル基の量的決定を行うため、1.6ppmと2.5ppmでのピークが一体化され、その割合はアセチル化度として報告された)。
【0067】
ポニー腹腔部手術時のフコイダン効果及び安全分析方法及び材料
【0068】
漿膜磨耗法と空腸の4箇所で腸線縫合を利用した腹腔癒着を発症させるために新生ポニーに対して手術が実行された。手術部位の縫合前に、600mLの治療溶液が腹腔内に投与され、手術部位と切開部は縫合閉鎖された。治療群には対照乳酸加リンゲル液USP(LRS)(n=6)及びLRS(n=6)に溶解されたフコイダン(0.03%)が投与された。10日後に再腹腔鏡検査が実行され、1頭あたりの癒着数及び各癒着部の特徴(単純又は複雑)が評価された。重傷度スコアが癒着部に付与され、全重傷度スコアがそれぞれの治療群に付与された。2つの治療群間で動物体重と血液学パラメータ(白血球細胞差、血液凝固及びフィブリノーゲンを含む全血液算定)を比較し、有害性の徴候を観察することで治療の有害性が調査された。
【0069】
フコイダン分析結果
【0070】
フコイダンの総炭水化物含有量はフコイダンの51.1±5.5%w/wと決定された。フコイダンの個々のグリコキシ含有量を次の表に示す。
【表1】
フコイダンの分子量分布は以下の表のごとく決定された。
【表2】
【0071】
硫酸フコイダン含有量は約32.9±0.9%w/wであった。フコイダンアセチル基含有量は、アセチルとフコースの割合が0から0.3%となるように決定された。
【0072】
ポニー腹腔手術時のフコイダンの効果及び安全性結果
【0073】
フコイダン溶液は臨床セッティングにおいて使用が簡単で容易である。手術を受け、600mLの0.03%w/vフコイダン溶液で治療されたポニーはそれぞれ平均数の癒着と、全重傷度スコア2.2±1.2及び3.5±1.5を有した。これらの数値は両方とも対照LRS群の6.2±2.5及び14.5±3.8と比べて大きく低減している。フコイダン溶液で治療された実験群で観察された13部位の癒着のうちで複雑性のものは皆無であり、一方、対照実験群で観察された37部位の癒着のうちで20部位が複雑性のものであった。死亡に至った動物はおらず、ポニーは安楽死処分された。いずれの動物にも有害性の徴候はなかった。臨床的に意義を有していないと考えられた正常範囲内の統計的には意味のある小さな相違を除いて、治療群間で血液パラメータの相違は存在しなかった。フコイダン溶液で治療されたポニーは、4日目、6日目、8日目及び10日目に正常範囲を超えた分葉好中球数を有した。0日における分葉好中球値はこの動物においては得られなかったが、杵状好中球数はこの当初時点で正常範囲を超えており、よって治療の結果とは見做されなかった。フコイダン溶液は利用が容易であり、ポニーの腹腔部の手術性癒着による漿膜剥離における癒着の形成を安全に防止した。
【0074】
実施例3:子宮角手術を受けたラビットの手術性癒着防止のための溶液処方物内フコイダンの安全性及び効果
フコイダン
【0075】
複数のフコダイン抽出物が褐海草Undaria pinnatifida(オーストラリア産)から準備
された。
【0076】
フコイダン分析方法及び材料
【0077】
フコイダンの外見を決定するために視覚的検査が行われた。分子量分布はゲル透過クロマトグラフィで決定された。フコイダンの硫酸塩含有量は誘導結合プラズマ分光によって決定された。アセチル基含有量は1HNMRにより決定された(アセチル基の量的決定を行うため、1.6ppmと2.5ppmでのピークが一体化され、その比がアセチル化度として報告された)。
【0078】
ラビット腹腔手術時のフコイダンの効果及び安全性決定方法及び材料
【0079】
ラビットは55mg/kgの塩酸ケタミンと5mg/kgのロンパムとで筋肉注射によ
り麻酔された。無菌手術の準備に続き、正中線開腹手術が実行された。同母ウマ兄弟が肱置され、漿膜面の剥離によって点状出血するまで外傷化処理された。両子宮角の虚血症が側副血液供給の除去によって発症した。子宮角への残りの血液供給は子宮筋の子宮−膣動脈の上行枝への供給であった。その後に子宮角は通常の解剖学的部位に戻され、正中線は3-0バイクリル糸により縫合された。切開部が閉じられたとき、巾着縫合が切開部に置
かれたカテーテル周囲に施された。カテーテルを通じては何も投与されなかった(手術対照)(n=5)。あるいは45mLの対照乳酸加リンゲル液USP(対照LRS)(n=5)または0.03%w/vの乳酸加リンゲル液USP(フコイダン溶液)が腹部に投与された。その後に最終縫合により閉鎖された。
【0080】
7日後にラビットは殺処分され、様々な器官に対する子宮角の癒着面積の百分率が決定された。加えて、癒着の固着度が次の基準に従って等級化された。
0=癒着無し
1=弱程度で容易に切除できる癒着
2=中程度で切除不能であるが器官は破損させない
3=強度の癒着で、切除不能であり、除去すると器官が損傷
【0081】
加えて、上記の全データを考慮した全等級が各ラビットに与えられた。以下の等級基準が採用された。
【表3】
【0082】
ラビットは以前の治療のことは知らされていない2人の独立した観察者によって等級化(スコア化)された。個別の動物に対する2人の等級付けに相違があれば高い方の等級が付与された。
【0083】
全等級は等級順序分析及び等級分散分析により分析された。様々な器官に関与した子宮角の面積百分率はスチューデント検定あるいは分散の一方向分析と比較された。
【0084】
フコイダン分析結果
【0085】
フコイダンの外見、硫酸塩含有量及びアセチル基含有量分析の結果は以下の表に提供されている。
【表4】
【0086】
フコイダン分子量分布分析の結果は以下の表に示されている。
【表5】
【0087】
ラビット腹腔手術時のフコイダンの効果、安全性及び使用容易性の結果
【0088】
フコイダン溶液は手術での利用が容易である。以下の表は手術対照及び対照LRS溶液と比較した種々なフコイダン抽出物のまとめである。
【表6】
【0089】
フコイダン溶液で治療された動物に有害性の徴候はなかった。
【0090】
実施例4:種々フコイダン:分析;ラビットにおける安全性;手術を受けたラビットでの効果及び安全性;手術を受けたビットにおけるカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較した効果及び安全性
フコイダン
フコイダン抽出物は褐色海草Laminaria japonica(マコンブ)(中国産)、Laminaria hyperborean(欧州産)及びUndaria pinnatifida(ワカメ)(韓国産)から準備された。以下で詳細に説明するように、3種全てのフコイダンが分析された。3種全てのフコイダンは溶液として準備され、ラビットに対して16.7及び50mg/kg体重が投与されて安全性が試験された。3種全てのフコイダンは溶液として準備され、ラビットに対して5mg/kg体重が投与され、効果及び安全性が試験された。1種のフコイダン(Laminaria hyperborean)は溶液(5mg/kg体重)として準備され、ラビットに対する効果
及び安全性を調べるためにゲルとして準備されたカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較された。
【0091】
フコイダン分析−方法及び材料
フコイダンの外見を決定するために視覚的検査が行われた。硫酸塩含有量は誘導結合プラズマによって決定された。タンパク質含有量は紫外線−可視光線(UV−VIS)検出により決定された。フコース、ガラクトース及び他の糖モノマー含有量、並びに総炭水化物含有量はUV−VIS検出機能を備えた超高性能液体クロマトグラフィによって決定された。分子量分布は回折率検出機能を備えたゲル透過クロマトグラフィによって決定された。
【0092】
フコイダン分析−結果
フコイダンの外見、硫酸塩含有量及びタンパク質含有量分析の結果は以下の表に提供されている。
【表7】
【0093】
フコイダンの総炭水化物、フコースモノマー及びガラクトースモノマー含有量分析の結果は以下の表に提供されている。
【表8】
【0094】
フコイダン分子量分布分析の結果は以下の表に提供されている。
【表9】
【0095】
ラビットにおけるフコイダン安全性−方法及び材料
乳酸加リンゲル液USP(LRS)内の種々フコイダンの有害性は、ニュージーランドホワイトラビットの1回の腹腔内注入に続く14日間の観察期間によって特徴付けられた。
【0096】
研究のためのラビットの実験群振り分けは以下の表に要約されている。
【表10】
*2匹の雄ラビット及び2匹の雌ラビットは当初には実験群5に割り振られた。しかし、調達に関わる理由によって、2匹の雄ラビットは実験群1及び実験群3に再割り振りされ、1匹の雌ラビットは実験群2に再割り振りされた。
【0097】
実験中に動物はその潜在的な死亡可能性及び臨床的徴候に関してモニターされた。体重及び食物摂取量が記録された。血液サンプルが臨床病理評価(血液学、臨床化学及び血液凝固)のために集められた。毒性動態学評価に供するため、集められた血液サンプルは将来の分析に備えて保存された。観察期間後に死体解剖が行われ、目視観察結果が記録された。
【0098】
ラビットにおけるフコイダンの安全性−結果
この研究では死亡例がなかった。実験中、3種の異なるフコイダン試験物の投与(16.7または50mg/kg)に関連すると考えられる不都合な臨床徴候は存在しなかった。また、治療群と対照群との間で体重増加に目立った相違はなかった。時折見受けられた食欲不振は治療開始前に全部の被験動物に起きており、投与量には無関係であった。
【0099】
3種の異なるフコイダン試験物の投与(16.7または50.0mg/kg)に続く食物摂取に対する試験物関連の影響はなかった。
【0100】
フコイダン試験物による効果/影響を示すと考えられる血液パラメータに変化はなかった。細胞モルフォロジー試験は有害性に関して何の発見もなかった。試験物効果/影響を示すと考えられる血液凝固パラメータの変化は存在せず、血清化学パラメータで見られた変化は、16.7または50.0mg/kg量の3種の異なるフコイダン試験物の治療効果を暗示しなかった。
【0101】
治療に関連することを示すと考えられる器官重量に変動はなかった。
【0102】
フコイダン試験物のいずれかによる治療効果を示すと考えられる治療された動物における目視による疾患の発生は認められなかった。
【0103】
結論すれば、Laminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaから抽出された3種の異なるフコイダン試験物による16.7及び50.0mg/kgの投
与量での治療はラビットを死に至らしめず、治療に関係する変化も認められず、動物に対する試験物のいずれかの効果/影響を示すと考えられる目視による疾患の発見もなかった。
【0104】
腹腔手術を受けたラビットにおけるフコイダンの効果及び安全性−方法及び材料
子宮角と腹腔側壁との間に癒着形成を発生させるためにニュージーランドホワイトラビットに対して手術が行われた。手術部位を閉じる前に16.7mL/kg体重の治療溶液が腹腔内に投与され、その後に手術部位及び切開部が縫合によって閉じられた。治療群に対する試験物は、乳酸加リンゲル液USP(LRS)内のLaminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaから抽出されたkg体重あたり0.03%w/vのフコイダン(5mgフコイダン)と、LRS単独(対照)(n=4/実験群)であった。14日後に動物は安楽死処分され、標準等級化法に従って子宮角と腹腔側壁との間に形成された癒着(子宮癒着等級)及び腹腔の他の部位(腹腔癒着値)が評価された。治療の有害性は、動物の体重と切開幅を実験群間で比較し、血液学的、血液生化学的及び血液凝固パラメータ値を実験群間で手術前と手術後24時間及び7日目に比較し、有害性の明確な徴候を観測することで調べられた。
【0105】
腹腔手術を受けたラビットにおけるフコイダンの効果及び安全性−結果
対照LRSと比較した子宮癒着値の低下がLaminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaフコイダン溶液群(18.4±7.8に対して3.1±1.7、1.3±1.0及び2.3±0.5)で確認された。対照LRSと比較した腹腔癒着値の低下がLaminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaフコイダン溶液群(2.5±1.0に対して0.9±0.3、0.8±0.3及び0.3±0.3)で確認された。死亡及び安楽死処分された動物は皆無であった。フコイダン溶液とLRSとの間で動物の体重または切開厚に相違はなかった。動物で目立つ有害性が観測されたものもなかった。どの時点においても実験群間で完全血液算定、血液特異性または血液凝固パラメータに相違は観察されなかった。対照LRSとUndaria pinnatifidaとの間でア
ラニントランスアミラーゼ(ALT)量の相違は23.0±1.8に対して16.8±1.0IU/Lであった。ALT量の相違は臨床学的には意味を有しなかった。実験群間で他の血液化学パラメータの相違はどの時点でも観察されなかった。結論すれば、Laminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaから抽出して準備された16.7mLの0.03%w/vフコイダン溶液(5mgフコイダン)/kg体重は、手術性癒着のラビット子宮角モデルにおいて癒着の形成を防止するのに有効であった。また、有害性の徴候は皆無であった。
【0106】
腹部手術を受けたラビットにおけるカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較したフコイダンの効果及び安全性−方法及び材料
カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)溶液は粘性ゲルであり、ウマの腹腔手術時に獣医によっては腹腔壁を閉じる直前にSCMC溶液を腹腔内(IP)に点滴するか、手術時に腸内にSCMC溶液の一部を注入し、閉鎖の直前に残りのSCMC溶液を腹腔内に点滴し、手術後の癒着形成を低減させようとする。この研究の目的は、閉鎖する直前に試験物を腹腔内に投与し、または手術時に試験物の一部を子宮角に注入し、さらに閉鎖の直前に残りの試験物を腹腔内に投与し、またはこれら2つの試験物を組み合わせて投与した後で、SCMC溶液とフコイダン溶液の効果及び安全性を比較するために手術性癒着の生体内モデルを使用することであった。SCMC型7H35FPHがハーキュリーズ社から調達された。子宮角と腹腔側壁との間で癒着形成させるためにニュージーランドホワイトラビットに対して手術が行われた。それぞれの動物は全部で16.7mLの試験物/kg体重が与えられた。(試験物の組み合わせ物を受けた動物は全部で16.7mLの各試験物/kg体重を与えられた。)3種の異なる試験物がこの研究に使用された。すなわち、乳酸加リンゲル液USP(LRS)単独(対照溶液)と、167mgのSCMS
/kg体重(SCMC溶液)に均等であるUSPに対する1%w/vSCMC(水中)と、5mgフコイダン/kg体重(フコイダン溶液)に均等である0.03%w/vフコイダン(Laminaria hyperborean)(LRS内)とである。6つの治療群がこの研究に関与
した(n=6/治療群)。これら3治療群は、腹腔壁の閉鎖に先立って腹腔内に点滴されたLRS、フコイダンまたはSCMCであった。2つの治療群では、フコイダン溶液またはSCMC溶液が分割され、5mLの試験物が子宮角に与えられ、残りは閉鎖前に点滴された。1治療群では、SCMCとフコイダンの両方が投与され、5mLのSCMC溶液は子宮角に適用され、残りは閉鎖前にフコイダンと共に点滴された。14日後に動物は安楽死処分され、子宮角と腹腔側壁との間で形成された癒着(子宮癒着)または腹腔の他の場所の癒着(腹腔癒着)は標準等級法によって評価された。治療群間で手術前、手術後24時間時点及び7日後に、動物重量及び切開厚を比較し、血液学的に比較し、血液生化学的に比較し、血液凝固パラメータを比較し、有害性の明確な臨床徴候を観察することで治療の有害性が調べられた。
【0107】
腹腔手術を受けたラビットにおけるカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較したフコイダンの効果及び安全性−結果
対照LRS及び両方のSCMC溶液(20.0±2.8、19.3±4.1及び17.3±5.0)での治療間の子宮癒着等級には相違が観察されなかった。SCMC溶液とフコイダン溶液の組み合わせによる治療は、対照LRS及び両方のSCMC溶液による治療と比較して、大きな子宮癒着等級(6.1±5.2)の低下をもたらした。両方のフコイダン溶液での治療は、全部の他の治療群と比較して大きな子宮癒着等級(2.4±1.1及び3.0±1.8)の低下をもたらした。対照LRSと、両方のSCMC溶液による治療と、SCMC溶液とフコイダン溶液の組み合わせによる治療(それぞれ2.6±2.4、2.4±1.4、2.3±1.3及び2.1±1.1)間で腹腔癒着等級に差異はなかった。両方のフコイダン溶液による治療は全部の他の治療群と比較して腹腔癒着等級(0.3±0.5及び0.2±0.4)に大きな低下があった。それら2つのフコイダン溶液による治療間では子宮癒着等級または腹腔癒着等級に差異はなかった。治療群と対照LRS治療群間で動物体重または切開厚に差異はなかった。また、動物での有害性の目立つ徴候はなかった。どの時点でも対照LRS群と治療群との間で完全血液算定、特異性及び血液化学パラメータに差異はなかった。
【0108】
対照LRS群、両方のSCMC溶液治療群及びSCMC溶液とフコイダン溶液の組み合わせ治療群で、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の増加が手術前及び手術後24時間の値で観察されたが、2つのフコイダン治療群内では観察されなかった。結論すれば、SCMC溶液治療は癒着に対して効果がなかった。SCMC溶液とフコイダン(Laminaria hyperboreanから抽出)溶液の組み合わせによる治療は、子宮癒着値に約70
%の低下をもたらしたが、腹腔癒着値には低下効果はなく、ラビットの子宮角側壁の手術性癒着モデルにおいてはフコイダン(Laminaria hyperboreanから抽出)溶液による治療
は癒着形成に約90%の低下効果を発揮した。閉鎖直前のフコイダン溶液の腹腔点滴に効果の差異は観察されなかった。また、フコイダン溶液の一部を子宮角に使用し、閉鎖直前に残りを腹腔に投与することにも差異はなかった。フコイダン溶液の単独またはSCMCとの組み合わせに有害性の徴候はなかった。
【0109】
実施例5:腹膜炎を患うウマにおける選択されたフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフ
コイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表11】
【0110】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。腹痛、腹圧痛及び腹壁防御のごとき症状を含む腹膜炎を患うウマにフコイダン溶液が30分をかけて静脈点滴により静脈注入された。フコイダン溶液による治療によってウマの腹膜炎及び腹膜炎症状は軽減された。
【0111】
実施例6:腹膜炎を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフ
コイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表12】
【0112】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。腹痛、腹圧痛及び腹壁防御のごとき症状を含む腹膜炎を患うウマにフコイダン溶液50mLが腹腔内注入された。フコイダン溶液での治療によってウマの腹膜炎及び腹膜炎症状は軽減された。
【0113】
実施例7:虚血症を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってその
フコイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表13】
【0114】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。虚血症を患うウマにフコイダン溶液50mLが30分をかけて静脈点滴された。フコイダン溶液での治療によってウマの虚血症は軽減された。
【0115】
実施例8:再灌流傷害を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフ
コイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表14】
【0116】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。再灌流治療を受ける虚血症を患うウマにフコイダン溶液または対照リンゲル液USPが30分をかけて50mLが再灌流治療の直前に静脈点滴された。フコイダン溶液を注入されたウマは対照リンゲル液USPを注入されたウマと較べて再灌流傷害が軽減された。
【0117】
実施例9:エンドトキシン血症を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフ
コイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表15】
【0118】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。敗血症性ショック等のエンドトキシン血症の症状を含んだエンドトキシン血症を患うウマにフコイダン溶液50mLが30分をかけて静脈注入された。フコイダン溶液での治療によってウマのエンドトキシン血症及びエンドトキシン血症の症状が緩和した。
【0119】
実施例10:ケロイド形質を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってその
フコイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表16】
【0120】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。隆起傷跡のごときケロイド形質の症状を含んだケロイド形質を患うヒトの患部に1回あたりフコイダン溶液0.5mLを皮下注射した。フコイダン溶液による治療によって隆起傷跡は症状程度が軽減された。
【0121】
実施例11:ケロイド(ケロイド傷跡)を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってその
フコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表17】
【0122】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。ケロイド(ケロイド傷跡)を有するヒトの患部に1回あたりフコイダン溶液0.5mLを皮下注射した。フコイダン溶液による治療でケロイド傷跡は症状程度が軽減された。
【0123】
実施例12:脂漏性皮膚炎(頭垢)を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってその
フコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表18】
【0124】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。脂漏性皮膚炎(頭垢)を有するヒトに5日間毎日、脂漏性皮膚炎の患部に局所的にフコイダン溶液5mLが塗布された。フコイダン溶液による治療によって脂漏性皮膚炎の症状程度は軽減された。
【0125】
実施例13:接触性皮膚炎を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってフコ
イダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表19】
【0126】
フコイダンクリームは、5gのフコイダンを50mLのダーマベース・クリームと完全に混合することで準備された。接触性皮膚炎を患い、赤くて痛痒い症状を有するヒトの患部に5日間毎日局所的にフコイダンクリーム5mLが塗布された。フコイダンクリームによる治療によって接触性皮膚炎はその症状と共に程度が軽減された。
【0127】
実施例30:酒さを患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってその
フコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表20】
【0128】
フコイダンクリームは、5gのフコイダンを50mLのダーマベース・クリームと完全に混合することで準備された。初期段階の酒さを患い、禿げた頭部に赤くて痛痒い皮膚の症状を有するヒトに、5日間毎日酒さ患部に局所的にフコイダンクリーム5mLが塗布された。フコイダンクリームでの治療によって、その症状を含んだ酒さの症状程度が軽減された。
【0129】
変更すべきでないと明記されていない限り、あるいは変更が不可であることが文脈から明白でない限り、全実施例の特性、特徴その他の混在、調和、組み合わせ及び順序は所望する態様に変更できる。請求項における“または”は“及び”を含み、“及び”は“または”を含む。非限定用語は限定的であると解釈すべきでない(例えば、“含む”、“有する”及び“含んで成る”とは“比限定的に含む”を意味する。)。特に明記されていない限り、請求項内で使用される物体は単数または複数である。