(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-128892(P2016-128892A)
(43)【公開日】2016年7月14日
(54)【発明の名称】投影露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20160617BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20160617BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/30 518
H01L21/30 515D
H01L21/30 516D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-3636(P2015-3636)
(22)【出願日】2015年1月9日
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
2H097
5F146
【Fターム(参考)】
2H097GB00
5F146BA03
5F146CB47
5F146DA01
5F146DA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロレンズアレイを一方向に走査しながら、マスクのマスクパターンを基板上に投影露光する投影露光装置において、マイクロレンズに欠陥や不良が存在する場合にも顕著な露光ムラが生じない投影露光装置を提供する。
【解決手段】投影露光装置1は、基板Wの一端から他端に向けた走査方向Scに沿ってマイクロレンズアレイ2を移動させる走査露光部10と、走査露光部10によるマイクロレンズアレイ2の移動中に、マイクロレンズアレイ2を走査方向Scと交差するシフト方向に移動させるマイクロレンズアレイシフト部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光をマイクロレンズアレイを介して基板上に投影する投影露光装置であって、
前記基板の一端から他端に向けた走査方向に沿って前記マイクロレンズアレイを移動させる走査露光部と、
前記走査露光部による前記マイクロレンズアレイの移動中に、前記マイクロレンズアレイを前記走査方向と交差するシフト方向に移動させるマイクロレンズアレイシフト部とを備えることを特徴とする投影露光装置。
【請求項2】
前記走査露光部が前記基板の一端から他端まで前記マイクロレンズアレイを移動させる間に前記マイクロレンズアレイシフト部が前記マイクロレンズアレイを移動させるシフト量は、前記走査露光部のみで前記マイクロレンズアレイを移動させた場合に生じる露光量低下領域の幅に応じて設定されることを特徴とする請求項1記載の投影露光装置。
【請求項3】
前記走査方向に直交する露光位置全体の平均露光量に対して最大露光量と最小露光量との差が2%以下になるように、前記シフト量を設定することを特徴とする請求項2記載の投影露光装置。
【請求項4】
露光光をマイクロレンズアレイを介して基板上に投影する投影露光方法であって、
前記基板の一端から他端に向けた走査方向に沿って前記マイクロレンズアレイを移動させながら走査露光を行う際に、前記マイクロレンズアレイを前記走査方向と交差する方向に移動させることを特徴とする投影露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイを用いた投影露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクパターンを基板に投影露光する露光装置として、マスクと基板の間にマイクロレンズアレイを介在させたものが知られている(下記特許文献1参照)。この従来技術は、
図1に示すように、基板Wを支持する基板ステージJ1と基板Wに露光されるパターンが形成されたマスクMを備え、設定間隔に配置された基板WとマスクMとの間に、マイクロレンズを2次元的に配置したマイクロレンズアレイMLAが配置されている。この従来技術によると、マスクMの上方から露光光Lが照射され、マスクMのパターン(開口)を通過した光がマイクロレンズアレイMLAによって基板W上に投影され、マスクMに形成されたパターンが基板表面に転写される。ここで、大面積の基板W上を露光するには、マイクロレンズアレイMLAと図示省略した露光光源が固定配置され、一体にしたマスクMと基板Wに対して紙面に垂直な走査方向ScにマイクロレンズアレイMLAを相対的に移動させることにより、露光光Lが基板W上を走査露光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−216728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような投影露光装置においては、マイクロレンズアレイに欠陥や不良が存在すると、その欠陥や不良によって露光量が部分的に低下する現象が生じるので、マイクロレンズアレイを一方向に走査しながら露光を行うと、露光量が部分的に低下した領域が走査方向に沿ってすじ状に形成され、顕著な露光ムラになってしまう問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、マイクロレンズアレイを一方向に走査しながら、マスクのマスクパターンを基板上に投影露光する投影露光装置において、マイクロレンズに欠陥や不良が存在する場合にも顕著な露光ムラが生じないようにすること、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明による投影露光装置は、以下の構成を具備するものである。
露光光をマイクロレンズアレイを介して基板上に投影する投影露光装置であって、前記基板の一端から他端に向けた走査方向に沿って前記マイクロレンズアレイを移動させる走査露光部と、前記走査露光部による前記マイクロレンズアレイの移動中に、前記マイクロレンズアレイを前記走査方向と交差するシフト方向に移動させるマイクロレンズアレイシフト部とを備えることを特徴とする投影露光装置。
【発明の効果】
【0007】
このような特徴を有する本発明の投影露光装置は、マイクロレンズアレイを走査方向と交差する方向にシフトしながら投影露光するので、マイクロレンズアレイに欠陥や不良が存在する場合にも顕著な露光ムラが生じること無く基板全面を投影露光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の一実施形態に係る投影露光装置を側方視した説明図((a)が走査露光開始時の状態を示し、(b)が走査露光終了時の状態を示す)である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る投影露光装置を平面視した説明図((a)が走査露光開始時の状態を示し、(b)が走査露光終了時の状態を示す)である。
【
図4】マイクロレンズアレイの形態例と露光ムラの解消方法を示した説明図である((a)がマイクロレンズを走査方向のみに移動する走査露光の例、(b)がマイクロレンズを走査方向とシフト方向に移動する走査露光の例)。
【
図5】
図4(a)と
図4(b)の走査露光の結果を示したグラフ((a)がマイクロレンズを走査方向のみに移動する走査露光の例、(b)がマイクロレンズを走査方向とシフト方向に移動する走査露光の例)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図2及び
図3は本発明の一実施形態に係る投影露光装置を示している。
図2が側面視の説明図であり、
図3が平面視の説明図であって、(a)が走査露光開始時の状態を示し、(b)が走査露光終了時の状態を示している。図において、X軸方向が基板の幅方向、Y軸方向が基板の長手方向、Z軸方向が上下方向を示している。
【0010】
投影露光装置1は、露光光Lをマイクロレンズアレイ2を介して基板W上に投影する装置であって、走査露光部10とマイクロレンズアレイシフト部20とを備えている。
【0011】
より具体的には、投影露光装置1は、基板Wを支持する基板支持部3と所定の形状に開口されたマスクパターンを有するマスクMを支持するマスク支持部4を備えており、基板支持部3に支持された基板Wとマスク支持部4に支持されたマスクMの間にマイクロレンズアレイ2を配置して、露光光Lをマイクロレンズアレイ2を介して基板W上に照射することで走査投影露光を行うものである。
【0012】
走査露光部10は、前述したマイクロレンズアレイ2と光源11を備えており、これらの位置関係を固定して走査方向Sc(図示Y軸方向)に沿って移動させる。この走査露光部10は、基板Wの一端から他端に向けた走査方向Scに沿ってマイクロレンズアレイ2を移動させるための走査ガイド12を備えている。この走査ガイド12は、基板Wの長手方向に沿って基板支持部3のX軸方向両側に設けられている。
【0013】
走査露光部10の光源11から出射された露光光Lは、マスクMの開口部を透過して、マイクロレンズアレイ2を介して基板W上に照射されるが、マイクロレンズアレイ2によって、マスクパターンの一部を透過する露光光Lが基板W上に結像される。結像光学系であるマイクロレンズアレイ2は、例えば、等倍の両側テレセントリックレンズであることが好ましい。走査露光部10を走査方向Scに移動させて走査投影露光を行うことで、マスクMのマスクパターンが基板Wの有効露光面上に転写される。
【0014】
マイクロレンズアレイシフト部20は、走査露光部10による走査方向Scに向けたマイクロレンズアレイ2の移動中に、走査方向Scと交差するシフト方向Sfにマイクロレンズアレイ2を移動させる。マイクロレンズアレイシフト部20は、このようなマイクロレンズアレイ2の移動を行うために、シフトガイド21を備えている。シフトガイド21は、シフト方向Sf(図示X方向)に延設され、それ自身が走査ガイド12に沿って走査方向Scに移動しながら、マイクロレンズアレイ2をシフト方向Sfに移動させる。
【0015】
マイクロレンズアレイシフト部20によって移動自在に支持されるマイクロレンズアレイ2の長さ(図示X方向の長さ)は、基板Wの有効露光幅Xaより設定されたシフト量以上に長く構成されており、シフトガイド21はそのマイクロレンズアレイ2をシフト方向Sfに設定されたシフト量だけ移動させるために必要なX軸方向の長さを備えている。
【0016】
このような構成を備える投影露光装置1は、
図2及び
図3の(a)に示した走査露光開始時から
図2及び
図3の(b)に示した走査露光終了時の状態に至るまで、基板Wの一端から他端に向けて光源11とマイクロレンズアレイ2を移動しながら、マスクパターンの投影露光を行う。
【0017】
この投影露光装置1で用いられるマイクロレンズアレイ2は、
図4に示すように、レンズ単体2U毎の有効露光領域以外は遮光膜で覆われており、有効露光領域には六角形状の視野絞り(六角視野絞り2S)が形成されている。そして、このマイクロレンズアレイ2のレンズ単体2Uは、図示のX軸方向にピッチ間隔p
xで配列され、図示のY軸方向にピッチ間隔p
yで配列されており、六角視野絞り2Sにおける三角形部分のX軸方向幅S1をオーバーラップさせるように3列を1組として、X−Y軸方向に複数個配列されている。
【0018】
このように3列1組に配列することで、六角視野絞り2Sにおける三角形部分のX軸方向幅S1での露光量と六角視野絞り2Sにおける矩形部分のX軸方向幅S2での露光量が均一になり、レンズ単体2U同士の繋ぎ目に露光ムラが生じない。レンズ単体2Uにおける六角視野絞り2Sの寸法例を示すと、ピッチ間隔p
x=p
y=150μm、三角形部分のX軸方向幅S1=20μm、矩形部分のX軸方向幅S2=30μm。
【0019】
図4(a)に示すように、マイクロレンズアレイ2を走査方向Scにのみ移動させながら走査露光を行うと、レンズ単体2Uの一つ又は複数に欠陥部Dが存在する場合に、その欠陥部Dにおいて部分的に透過光量が低下するので、走査方向Scに沿って顕著なすじ状の露光ムラmが形成される。これに対して、本発明の投影露光装置1は、
図4(b)に示すように、マイクロレンズアレイ2を走査方向Scに移動させるだけなく、シフト方向Sfにも移動させて走査露光を行っているので、欠陥部Dを透過する光による露光領域がシフト方向Sfに分散されることになり、顕著なすじ状の露光ムラmの発生を回避することができる。
【0020】
図5は、
図4(a)と
図4(b)の走査露光の結果を示したグラフであり、X軸方向に沿った露光位置の露光量を示している。
図4(a)に示したように、マイクロレンズアレイ2を走査方向Scにのみ移動させる走査露光では、
図5(a)に示すように、欠陥部Dが存在しない露光位置では均一な露光量が得られるが、欠陥部Dが存在する露光位置には、幅m1の露光量低下領域がすじ状に形成される。
【0021】
これに対して、
図4(b)に示した例のように、マイクロレンズアレイ2を走査方向Scに移動させるだけなくシフト方向Sfにも移動させて走査露光を行うと、
図5(b)に示すように、六角視野絞りの三角形部分のオーバーラップにズレが生じることになるので、露光位置全体の露光量に若干のばらつきが生じる。しかしながら、マイクロレンズアレイ2のシフト方向Sfの移動によって露光量低下領域が均されることになり、顕著なすじ状の露光ムラが解消されることになる。
【0022】
ここで、基板の有効露光領域全体を露光する場合におけるマイクロレンズアレイ2のシフト量は、前述した露光量低下領域の幅m1によって適宜設定することができる。基本的には、露光量低下領域の幅m1と同等のシフト量で効果的にすじ状の露光ムラを解消することができる。具体的な結果として、最大露光量と最小露光量との差が露光位置全体の平均露光量の2%以下になるように、シフト量を設定することが好ましい。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1:投影露光装置,2:マイクロレンズアレイ,
2U:レンズ単体,2S:六角視野絞り,
3:基板支持部,4:マスク支持部,
10:走査露光部,11:光源,12:走査ガイド,
20:マイクロレンズアレイシフト部,21:シフトガイド,
L:露光光,W:基板,M:マスク,Sc:走査方向,Sf:シフト方向,
Xa:有効露光幅,D:欠陥部,m:露光ムラ,p
x,p
y:ピッチ間隔