(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-13120(P2016-13120A)
(43)【公開日】2016年1月28日
(54)【発明の名称】青果物粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20151228BHJP
【FI】
A23L1/212 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-21084(P2015-21084)
(22)【出願日】2015年2月5日
(62)【分割の表示】特願2014-136420(P2014-136420)の分割
【原出願日】2014年7月2日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】永瀧 達大
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4B016
【Fターム(参考)】
4B016LE02
4B016LG01
4B016LG05
4B016LG08
4B016LP01
4B016LP03
4B016LP05
4B016LP08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糖分を多く含む野菜や果物であっても焦付きやべたきを防ぎつつ、短時間で効率的に粉末を製造することが可能な青果物粉末の製造方法の提供。
【解決手段】青果物を切断してダイス状青果物とする切断工程S4と、切断したダイス状青果物を乾燥する乾燥工程S5と、乾燥したダイス状青果物を殺菌する殺菌工程S6と、殺菌したダイス状青果物を粉砕して青果物粉末とする粉砕工程S7とを有する青果物粉末の製造方法であって、切断工程S4で調製されるダイス状青果物が、実質的に5mm角のダイス状物を主として含むダイス状青果物である青果物粉末の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物を切断してダイス状青果物とする切断工程と、
切断したダイス状青果物を乾燥する乾燥工程と、
乾燥したダイス状青果物を殺菌する殺菌工程と、
殺菌したダイス状青果物を粉砕して青果物粉末とする粉砕工程と、
を有する青果物粉末の製造方法であって、
前記切断工程で調製されるダイス状青果物が、実質的に5mm角のダイス状物を主として含むダイス状青果物であることを特徴とする青果物粉末の製造方法。
【請求項2】
殺菌工程における殺菌処理が、過熱水蒸気を用いた殺菌処理であることを特徴とする請求項1記載の青果物粉末の製造方法。
【請求項3】
切断工程で調製されるダイス状青果物が、1辺が4mm以上6mm以下のダイス状物を少なくとも50%含むことを特徴とする請求項1又は2記載の青果物粉末の製造方法。
【請求項4】
青果物が、糖質を3%以上含む青果物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の青果物粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明は、野菜や果物の粉末の製造方法に係り、詳しくは糖分の多い野菜や果物の粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜や果物等の粉末を飲食料品に添加して付加価値を高めることが行われている。このような野菜粉末の製造方法としては、例えば、にんじん等の根菜類を適当な大きさに切断して一次加工品とし、一次加工品を加熱し蒸して、くさみ等を除去して二次加工品とし、さらに、この二次加工品を乾燥して三次加工品とし、三次加工品を微粉末に粉砕して根菜類粉末を得る方法(特許文献1参照)や、緑黄色野菜を洗浄し、乾燥,粉砕して粉末状としたものを、筒状の小袋に充填し封止する小袋入り緑黄色野菜粉末の製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、これら提案されている方法は、単に野菜粉末を有効利用するために粉末状とする方法にすぎず、その製造効率や、製造された製品の品質の追及はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−23996号公報
【特許文献2】実開平7−13188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、糖分を多く含む野菜や果物であっても焦げつきやべたつきを防ぎつつ、短時間で効率的に粉末を製造することが可能な青果物粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来より、野菜や果物の粉末(青果物粉末)を製造する際に行われる加熱殺菌処理は、より効果的な殺菌を行うため、野菜や果物に粗い粉砕処理を施した後に行っていた。これは、比較的大きな状態で対象物を殺菌すると、殺菌に時間を要し、また、十分な殺菌が行われない場合があることに起因する。しかしながら、多くの糖分を含むニンジン等の野菜や果物は、粉砕の副産物として生じる細かな粉末が焦げやすく、製品の品質の低下を招き、また、この粉末が水分を吸収した状態で加熱するとべたつきが生じ、製造機械に付着して、製造効率の低下や製造機械の故障を招くという問題があった。
【0007】
他方で、このような食品粉砕物の一般的な殺菌方法としては、水蒸気を用いた方式と、過熱水蒸気を用いた方式とがある。前者の水蒸気を用いた方式は、殺菌処理そのものに時間がかかると共に対象物が水分を吸収し乾燥を行う必要があるため、このような問題のない後者の過熱水蒸気を用いた方式が採用されることが多い。しかしながら、この後者の過熱水蒸気を用いた方式は、比較的大きな対象物に対しては内部まで十分に殺菌が行われないという問題があった。実際、本発明者らも、この過熱水蒸気を用いた方式で、商品として販売されている8mm角のダイス状ニンジンを殺菌することを試みたが、サイズが大きいため、表面しか殺菌ができず、十分な殺菌が行えなかった。さらに、過熱水蒸気方式であっても、この8mm角のダイス状ニンジンは、殺菌中に含ませた芯部の水分が抜けきれずに、殺菌後の水分値が高くなっていた。
【0008】
このような状況下、本発明者らは、焦げつき等の問題を解決すると共に効率的な殺菌処理を可能として高品質の野菜等の粉末を効率的に製造すべく鋭意検討した結果、実質的に5mm角のダイス状青果物とした状態で殺菌処理を施すことにより、焦げつきやべたつきを生じることなく効率的に十分な殺菌を行うことができることを見いだし、本発明を完成するに至った。さらに、この実質的に5mm角のダイス状青果物は、乾燥工程における乾燥時間も大幅に短縮することができることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明は、青果物を切断してダイス状青果物とする切断工程と、切断したダイス状青果物を乾燥する乾燥工程と、乾燥したダイス状青果物を殺菌する殺菌工程と、殺菌したダイス状青果物を粉砕して青果物粉末とする粉砕工程と、を有する青果物粉末の製造方法であって、前記切断工程で調製されるダイス状青果物が、実質的に5mm角のダイス状物を主として含むダイス状青果物であることを特徴とする青果物粉末の製造方法に関する。
【0010】
好ましくは、殺菌工程における殺菌処理は、過熱水蒸気を用いた殺菌処理である。
好ましくは、切断工程で調製されるダイス状青果物は、1辺が4mm以上6mm以下のダイス状物を少なくとも50%含む。
好ましくは、青果物が、糖質を3%以上含む青果物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の青果物粉末の製造方法によれば、高品質の青果物粉末を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の青果物粉末の製造方法の作業フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の青果物粉末の製造方法としては、青果物を切断してダイス状青果物とする切断工程と、切断したダイス状青果物を乾燥する乾燥工程と、乾燥したダイス状青果物を殺菌する殺菌工程と、殺菌したダイス状青果物を粉砕する粉砕工程とを有し、前記切断工程で調製されるダイス状青果物が、実質的に5mm角のダイス状物を主として含むダイス状青果物である方法であれば特に制限されるものではなく、本発明の製造方法の原料となる青果物としては、野菜、果物を挙げることができ、糖類を多く含む野菜や果物を原料として用いる場合に特に本発明の効果を享受することができる。
【0014】
すなわち、本発明の製造方法においては、殺菌時に、粉末状となっていない(粉末を含んでいない)ことから、焦げつきやべたつきを防止することができ、また、過熱水蒸気を用いた短時間の殺菌であっても十分に殺菌でき、結果として効率的に高品質の青果物粉末を製造することができる。
【0015】
具体的に本発明の原料となる青果物としては、糖質を3%以上含む青果物であることが好ましく、5%以上含む青果物であることがより好ましく、このような糖質を多く含む野菜としては、ニンジン、カボチャ、サツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ヤマイモ等の芋類、ブロッコリ、レンコン、ゴボウ、トウモロコシ、レンコン、タマネギ、ダイズ、アズキ、グリーンピース、ソラマメなどの豆類等を例示することができ、果物は、基本的に多くの糖質を含んでいることからほぼすべての果物が該当する。
【0016】
本発明の製造方法は、上記のように、切断工程、乾燥工程、殺菌工程、粉砕工程を有するものであり、生の青果物を直接粉末にすることもできるが、切断工程の前又は後に、青果物にボイル或いはスチーム等の処理を施す加熱工程を有することが好ましい。すなわち、本発明においては、ボイル或いはスチーム等の処理により加熱されかつダイス状に切断されたダイス状青果物を乾燥工程以降の工程に供することが好ましい。
【0017】
本発明の加熱工程は、青果物を丸ごと又は皮を除去した後に行ってもよいし、青果物をスライスした後に行ってもよいし、ダイス状に切断した後に行ってもよいが、加熱時間、処理の容易さ、歩留り、栄養素の保持等を考慮すると、青果物をスライスした状態で行うことが好ましい。
【0018】
本発明の切断工程は、青果物を実質的に5mm角のダイス状にする工程であり、例えば、青果物を直接ダイス状に切断してもよいし、一旦スライスして青果物のスライス状物を調製した後に、さらに切断してダイス状に加工してもよい。切断工程におけるロスを抑制することができる点からは、後者の方法が好ましい。
【0019】
ここで、本発明における「実質的に5mm角のダイス状物を主として含むダイス状青果物」とは、1辺が4mm以上6mm以下のダイス状物、好ましくは4.5mm以上5.5mm以下のダイス状物を少なくとも50%含むダイス状青果物を意味し、かかるダイス状物を少なくとも60%含むダイス状青果物であることが好ましく、少なくとも70%含むダイス状青果物であることがより好ましく、少なくとも80%含むダイス状青果物であることがさらに好ましい。かかるダイス状青果物は、例えば5mm幅に調整した切断装置によってダイス状に切断して調製することができる。なお、青果物はその形状が不定形なことから、青果物を無駄なく使用しようとすると、青果物端部はきれいなダイス状とすることができないため、実質的に5mm角のダイス状物の割合が上記程度となる。
【0020】
本発明においては、乾燥工程及び殺菌工程の前工程において、この特定の大きさのダイス状青果物を調製するので、乾燥工程における乾燥時間を短縮することができ、また、殺菌工程においても効率のよい過熱水蒸気を用いた殺菌方式を用いて、効率的かつ焦げつき等の問題を生じることなく、高品質の粉末を製造することが可能となる。
【0021】
本発明の乾燥工程は、実質的に5mm角のダイス状に切断されたダイス状青果物(以下、本発明のダイス状青果物ということがある)を乾燥する工程であり、例えば150℃未満の温度で乾燥する工程であり、50〜140℃で乾燥することが好ましく、60〜130℃で乾燥することがより好ましく、70〜130℃で乾燥することがさらに好ましい。本発明のダイス状青果物においては、各ダイス状物の間に最適な隙間が生じており、その隙間を乾燥した空気(熱風)が効率よく通過することから、一般的な食品乾燥装置を用いた場合であっても、短時間で乾燥を行うことができる。
【0022】
本発明の殺菌工程は、乾燥後の本発明のダイス状青果物を殺菌する工程であり、例えば高温で加熱殺菌する方法が挙げられ、具体的には、熱風を用いる方法、高圧水蒸気を用いる方法、過熱水蒸気を用いる方法等を例示することができる。これらの中でも、本発明のダイス状青果物に対してより効率的に殺菌処理を施すことができることから、過熱水蒸気を用いる方法が好ましく、具体的に例えば、過熱水蒸気の気流中に本発明のダイス状青果物を投入して移送しながら加熱殺菌する気流方式が好ましい。気流式過熱水蒸気殺菌は、過熱水蒸気を用いて加圧・加熱を行う殺菌工程と、その後の冷却工程を経て殺菌が行われるものであり、殺菌工程で対象物に給水された水分は、冷却工程で加圧下から常圧下へ、高温加熱下から低温下へ移行する際に、蒸発させて除去される。
【0023】
本発明の粉砕工程は、殺菌後のダイス状青果物を粉砕する工程であって、乾式の粉砕機を用いることが好ましく、例えば、高速回転粉砕機、ボールミル、ジェット粉砕機等を用いることができる。製造する粉末(微粉末)の大きさは、適宜調整することができるが、例えば、0.1〜100μm程度であり、1〜50μm程度であることが好ましく、1〜10μm程度であることがより好ましい。
【0024】
上記乾燥工程したダイス状物、殺菌したダイス状物の水分量としては、粉砕処理の容易さや細菌やカビなどの微生物の繁殖抑制の点から、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、7%以下であることがさらに好ましい。粉砕した青果物粉末の水分量も同程度であることが好ましい。
【0025】
このようにして得られた青果物粉末は、焦げつきやべたつきのない粉末であり、また、乾燥・殺菌時間が短時間となっているため、風味や栄養素の喪失も抑制されている。本発明の青果物粉末は、例えば、飲食品に添加して用いることができる。
【0026】
かかる飲食品としては、経口摂取に適した任意のものを挙げることができ、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等の各種形態を挙げることができる。
【0027】
本発明の青果物粉末を添加した飲食品としては、具体的に清涼飲料などの各種飲料、パン・菓子類、麺類などの各種食品、調理品等を挙げることができる。飲料としては、例えば、野菜ジュース、果物ジュース、青汁、それらに添加剤やその他の植物加工品等を添加してジュース、シェイク、スムージーにしたもの、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもと(固形状の組成物であって、飲用時に水などの溶媒と混合して液体状の飲料とするもの)等の形態としたものを挙げることができる。また、パン・菓子類としては、食パン、菓子パン、フランスパン、イギリスパン、マフィン、蒸しパン、ドーナツ、ワッフル等のパン類や、バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、ホットケーキ等のケーキ類、シャーベット、アイス等の冷菓、ゼリー、クッキー等を挙げることができる。麺類としては、うどんや素麺等を挙げることができる。調理品としては、カレー、シチュー、味噌汁、野菜スープなどのスープやそれらのもと、粉末調味料等を挙げることができる。
【0028】
本発明の青果物粉末を添加した飲食品は、粉末状(粉末、顆粒などの粉の形態)であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適すると共に、この飲食品が水と混合した時に色が鮮やかとなることから好ましい。また、本発明の青果物粉末を添加した飲食品が固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用するなど経口摂取することができるが、摂取する者の好み等に応じて、固体のまま経口摂取してもよい。また、水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックス等に添加して使用してもよい。さらに、栄養機能表示食品、特定保健用食品として用いることができる。
【0029】
本発明の青果物粉末を添加した飲食品は、青果物粉末のみからなるものであってもよいし、これらに加えてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、ビタミン類、タンパク質、水溶性食物繊維、オリゴ糖、ミネラル類、ムコ多糖類、乳製品、豆乳製品、植物又は植物加工品、乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、麹菌、酵母などの微生物を挙げることができる。さらに必要に応じて通常食品分野で用いられる、糖類、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、製造用剤、酸化防止剤、pH調整剤等を配合することができる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、飲食品の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0030】
続いて、本発明の好ましい一実施形態を説明する。ここに、
図1は、本発明の青果物粉末の製造方法の作業フロー図である。本実施形態では、青果物としてニンジンを例にとって説明する。
【0031】
図1に示すように、まず、ニンジンを洗浄する(ステップ1)。ニンジンは皮を剥いてもよいが皮ごと使用してもよい。洗浄後、5mm幅に調整した切断装置によってニンジンを5mm厚にスライスする(ステップ2)。続いて、スライスしたニンジンを網等に収容しボイルする(ステップ3)。スライスしてボイルすることにより、短時間でニンジンを茹でることができる。また、必要以上に細かくなっていないので、ニンジンが網外に流出することなく、歩留りよく生産することが可能となる。
【0032】
次に、ボイルしたニンジンをダイス状に切断する(ステップ4)。具体的には、5mm幅に調整した切断装置によって、ニンジンスライスを直角2方向から切断し、実質的に5mm角のダイス状ニンジンとする。このダイス状ニンジンを60℃程度で水分6%前後まで乾燥する(ステップ5)。この時、ダイス状ニンジンは、乾燥に最適な形状となっているため短時間で乾燥することができる。
【0033】
続いて、ダイス状ニンジンの殺菌を行う(ステップ6)。ここでも、ダイス状ニンジンは、殺菌に最適な形状となっているため、吸湿や焦げつき等を生じることなく、短時間で内部まで十分に殺菌を行うことができる。最後に、ダイス状ニンジンを粉砕機で粉砕して、ニンジン粉末を得る(ステップ7)。
【実施例】
【0034】
[試験例1]
ニンジンを用いて乾燥効率に関する試験を行った。具体的には、まず、切断装置を用いてニンジンを5mm幅にスライスした後、90℃で120秒ボイルした。脱水後、さらに切断装置を用いて5mm幅で直角二方向から切断し、実質的に5mm角のダイス状ニンジンを製造した。このダイス状ニンジン約2kgを樹脂ネットに入れ、BOX型温風乾燥機を用いて60℃、風量30Hzにて乾燥し、所定時間経過後の水分値を測定した。水分値測定は、常圧加熱乾燥法を用いた。具体的には、3gの試料を採取し、105℃にて5時間乾燥を行い、乾燥前後の質量から水分値を求めた。
【0035】
[比較例1−1]
また、比較として、5m幅ニンジンスライスを用いて、試験例1と同様に、乾燥を行い、所定時間経過後の水分値を測定した。
【0036】
[比較例1−2]
ニンジンのスライス幅を3mmとして、3mm×5mm×5mmのダイス様ニンジンとした以外は、試験例1と同様にして、所定時間乾燥後の水分値を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示すように、本発明の試験例1に係る実質的に5mm角のダイス状ニンジンは、目標とする水分値6%程度に3.5時間の乾燥で達成した。これに対して、比較例1−1の5mmスライスや比較例1−2の3×5×5mmダイスは、乾燥時間3.5時間では、水分値30%前後と不十分な結果となった。本発明の試験例1に係る5mm角のダイス状ニンジンは、最適な空隙を有していたため、最も乾燥効率がよい結果となったと考えられる。また、比較例1−1の5mmスライスは、原料が重なり合うために乾燥効率が低下したと考えられる。さらに、比較例1−2の3×5×5mmダイス(5mm以下のダイス)は、空隙がないために、通風ができず乾燥効率が低下したと考えられる。
【0039】
[試験例2]
実質的に5mm角のダイス状の乾燥ニンジンを用いて、気流式過熱水蒸気殺菌を行い、殺菌後の水分量を測定した。殺菌後の水分量は、6.62%であった。
【0040】
[比較例2]
8×8×5mmダイスの乾燥ニンジンを用いて、気流式過熱水蒸気殺菌を行い、殺菌後の水分量を測定した。殺菌後の水分量は、10.38%であった。
【0041】
上記のように、本発明の試験例2に係る実質的に5mm角のダイス状ニンジンは、殺菌後も水分値を低く保つことができた。これに対して、比較例2の8×8×5mmダイスのニンジンは、サイズが大きいために芯部水分が除去されず、殺菌後の水分値が高くなった。水分値が高くなると、微生物の繁殖や品質劣化の要因になると共に、後の粉砕工程で適切に粉砕することができなくなることから、青果物粉末を製造には、水分値の低い本発明の実質的に5mm角のダイス状青果物が非常に有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の青果物粉末の製造方法によれば、高品質の青果物粉末を効率よく製造することから産業上の有用性は高い。