特開2016-131427(P2016-131427A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-131427(P2016-131427A)
(43)【公開日】2016年7月21日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20160624BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20160624BHJP
   H01T 23/00 20060101ALI20160624BHJP
   H05F 3/04 20060101ALI20160624BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20160624BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20160624BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20160624BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20160624BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20160624BHJP
【FI】
   B60L3/00 J
   H01T19/04
   H01T23/00
   H05F3/04 B
   H01M2/10 S
   B60K1/00
   B60L11/18 Z
   H02M7/48 Z
   H02M7/48 M
   H02M3/155 C
   H02M3/155 Y
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-4288(P2015-4288)
(22)【出願日】2015年1月13日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】兼原 洋治
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】大城 裕太
【テーマコード(参考)】
3D235
5G067
5H007
5H040
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235CC13
3D235DD27
3D235EE63
5G067AA18
5G067DA01
5G067DA14
5H007AA17
5H007BB06
5H007CA01
5H007CB05
5H007CC12
5H007CC23
5H007DA05
5H007DB01
5H007EA02
5H007FA00
5H007HA03
5H007HA07
5H040AA35
5H040AS04
5H040AT06
5H040CC01
5H040CC11
5H040JJ03
5H040JJ04
5H040LL01
5H040NN03
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125AC14
5H125FF03
5H125FF04
5H730AA20
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB86
5H730DD03
5H730DD41
5H730FG05
5H730XX00
5H730ZZ01
5H730ZZ12
(57)【要約】
【課題】駆動モータに接続された電力装置の静電気を中和除電することができる車両を提供する。
【解決手段】インバータとコンバータとの少なくともいずれか一方を有する電力制御装置と、前記電力制御装置から電力が供給されることにより走行するためのトルクを出力する駆動モータと、路面に対して絶縁状態に保持されている車体とを備えた車両において、前記電力制御装置を収容するケース本体部25と、前記ケース本体部25に絶縁されて連結された所定部材26と、前記所定部材26に帯電した正の電位に応じて外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記所定部材の正の電位を中和除電して低下させる自己放電式除電器28とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータとコンバータとの少なくともいずれか一方を有する電力制御装置と、前記電力制御装置から電力が供給されることにより走行するためのトルクを出力する駆動モータと、路面に対して絶縁状態に保持されている車体とを備えた車両において、
前記電力制御装置を収容するケース本体部と、
前記ケース本体部に絶縁され、または電気抵抗が大きい状態で連結された所定部材と、
前記所定部材に帯電した正の電位に応じて外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記所定部材の正の電位を中和除電して低下させる自己放電式除電器と
を備えていることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記所定部材は、前記ケース本体部を閉じる蓋であって、
前記自己放電式除電器は、前記蓋の外表面に取り付けられている
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両において、
前記所定部材は、樹脂材料により構成されている
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両において、
前記自己放電式除電器は、前記所定部材の中央部に取り付けられている
ことを特徴とする車両。
【請求項5】
駆動モータの電源と、路面に対して絶縁状態に保持されている車体とを備えた車両において、
前記電源が載置されかつ前記車体に連結される固定フレームと、
前記電源を囲いかつ前記固定フレームに連結されるカバー部材と、
前記固定フレームと前記車体との連結部と、前記固定フレームと前記カバー部材との連結部との少なくともいずれか一方の部分に帯電した正の電位に応じて外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記一方の部分の正の電位を中和除電して低下させる自己放電式除電器と
を備えていることを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5に記載の車両において、
前記カバー部材の内面と前記電源との間を空気が流動するように構成されている
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動モータに電力を供給する電力制御装置を備えた車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された補機類に電力を供給するバッテリが記載されている。このバッテリの蓋は、樹脂材料により構成されており、その蓋には、バッテリに接触する人に帯電した静電気を車体に流すための静電気誘導部材が貼り付けられている。この静電気誘導部材は、静電気を要因として生じた火花が生じても、バッテリの内部に滞留したガスや、バッテリから排出されたガスに引火しない位置に貼り付けられている。
【0003】
なお、特許文献2には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのパワー素子を備えたパワーモジュールが記載されている。このパワーモジュールは、搬送時にゲートとソースとが接触し続けるように、ゲートとソースとのいずれか一方が弾性力により他方に押圧されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−177128号公報
【特許文献2】特開平1−268160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、駆動モータに電力を供給する電源装置は、動作することに伴って静電気を生じる場合がある。一方、車輪は、通常、ゴムなどの絶縁体により構成されている。したがって、電源装置に静電気が帯電することになる。その帯電した静電気が影響して電源装置から出力される電力の制御性が低下または悪化する可能性がある。
【0006】
この発明は上記の技術的課題に着目して成されたものであり、駆動モータに接続された電力装置の静電気を中和除電することができる車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、インバータとコンバータとの少なくともいずれか一方を有する電力制御装置と、前記電力制御装置から電力が供給されることにより走行するためのトルクを出力する駆動モータと、路面に対して絶縁状態に保持されている車体とを備えた車両において、前記電力制御装置を収容するケース本体部と、前記ケース本体部に絶縁され、または電気抵抗が大きい状態で連結された所定部材と、前記所定部材に帯電した正の電位に応じて外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記所定部材の正の電位を中和除電して低下させる自己放電式除電器とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明では、前記所定部材は、前記ケース本体部を閉じる蓋であって、前記自己放電式除電器は、前記蓋の外表面に取り付けられてもよい。
【0009】
この発明では、前記所定部材は、樹脂材料により構成することができる。
【0010】
この発明では、前記自己放電式除電器は、前記所定部材の中央部に取り付けてもよい。
【0011】
また、この発明は、駆動モータの電源と、路面に対して絶縁状態に保持されている車体とを備えた車両において、前記電源が載置されかつ前記車体に連結される固定フレームと、前記電源を囲いかつ前記固定フレームに連結されるカバー部材と、前記固定フレームと前記車体との連結部と、前記固定フレームと前記カバー部材との連結部との少なくともいずれか一方の部分に帯電した正の電位に応じて外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電により、前記一方の部分の正の電位を中和除電して低下させる自己放電式除電器とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明では、前記カバー部材の内面と前記電源との間を空気が流動するように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ケース本体部にインバータやコンバータが収容されており、そのケース本体部に絶縁されて連結された所定部材に、その所定部材の正の電位に応じて外気に負の空気イオンを生じさせる自己放電式除電器を備えている。この自己放電式除電器により所定部材の正の電位が低下させられることにより、ケース本体部の内気との電位差が増大するので、ケース本体部の内気から所定部材に静電気が伝達される。ついで、内気とインバータやコンバータとの電位差が増大することにより、インバータやコンバータから内気に静電気が伝達される。すなわち、インバータやコンバータを起動して生じる正の静電気は、ケース本体部の内気を介して所定部材に伝達された後に、自己放電式除電器により中和除電される。そのため、インバータやコンバータに静電気が帯電することを抑制することができるので、インバータやコンバータの制御性などに静電気が影響することを抑制することができる。その結果、駆動モータの出力トルクの変動などの車両の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0014】
また、所定部材の静電気を除電することにより、ケース本体部に帯電した静電気を少なからず除電することができる。そのため、ケース本体部に収容されたインバータやコンバータの静電気が、ケース本体部との接触部を介して除電することができる。その結果、ケース本体部の内気を介してインバータやコンバータの静電気を除電する効果に加えて、ケース本体部との接触部を介してインバータやコンバータの静電気を除電することにより、車両の走行性能が低下することをより一層抑制することができる。
【0015】
さらに、この発明によれば、駆動モータの電源が載置される固定フレームと、その固定フレームに連結されるカバー部材とを備え、固定フレームと車体との連結部、または固定フレームとカバー部材との連結部に、その部分に帯電した正の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により、その部分の正の電位を中和除電して低下させる自己放電式除電器が設けられている。この自己放電式除電器により上記いずれかの連結部の電位を低下させることにより、カバー部材とその内気との電位差が増大するので、内気からカバー部材に静電気が伝達される。ついで、内気と電源との電位差が増大することにより、電源から内気に静電気が伝達される。すなわち、電源を起動して生じる正の静電気は、カバー部材の内気を介してカバー部材に伝達され、カバー部材と固定フレームとの連結部や、固定フレームと車体との連結部に設けられた自己放電式除電器により中和除電される。そのため、電源に静電気が帯電することを抑制することができるので、電源から出力される電力などに静電気が影響することを抑制することができる。その結果、駆動モータの出力トルクの変動などの車両の走行性能が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明におけるインバータおよびコンバータを収容するケースにシートを貼り付ける構成を説明するための図である。
図2】この発明におけるインバータおよびコンバータを収容する他のケースにシートを貼り付ける構成を説明するための図である。
図3】車両にHVバッテリユニットを搭載した例を示す図である。
図4】そのHVバッテリユニットにシートを貼り付ける構成を説明するための図である。
図5】他のHVバッテリユニットにシートを貼り付ける構成を説明するための図である。
図6】駆動モータに電力を供給する構成を説明するための電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明で対象とすることができる車両は、エンジンとモータとを駆動力源としたハイブリッド車両や、モータのみを駆動力源とした電気自動車などの駆動モータ(以下、単にモータと記す)を備えた車両である。このモータの一例は、通電される電流の大きさやその周波数に応じて出力トルクや回転数が制御されるように構成された三相型の同期電動機であり、外力によって強制的に回転させられた場合に、発電することができるように構成されている。なお、車輪は、ゴムなどの絶縁体(または、電気伝導率が小さい材料)により構成されており、車体と路面とが絶縁状態に保持されている。
【0018】
図6に、モータ1に電力を供給する電気回路図の一例を示している。図6に示す例では、バッテリ2とキャパシタ3とが並列に設けられており、これらバッテリ2とキャパシタ3とが電源Eとして機能する。その電源Eには、電源Eの出力電圧を増大することができるコンバータCが接続されている。このコンバータCは、電流の変動を抑制するためのリアクトル4と、二つのスイッチ5,6とにより構成されており、電源Eの正極にリアクトル4の一端が接続されている。リアクトル4の他端は、直列に接続された二つのスイッチ5,6の中間点に接続されている。これらのスイッチ5,6は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBTと記す)7,8と、それらIGBT7,8の電流の流れを一方に定めるダイオード9,10とによって構成されている。各IGBT7,8は、PWM制御されるものであって、図6における上側のIGBT7のオンデューティーを大きくすることにより、コンバータCの出力側の電圧(以下、インバータ入力電圧と記す)を低下させ、図6における下側のIGBT8のオンデューティーを大きくすることにより、インバータ入力電圧を増大させるように構成されている。
【0019】
そのコンバータCの出力側に、インバータIが接続されている。このインバータIは、電源Eから出力された直流電流を交流電流に変換し、またはモータ1により発電された交流電流を直流電流に変換するものであって、三つの並列回路により構成されている。それら各回路は同様に構成されていて、それぞれ二つのIGBT11,12,13,14,15,16とダイオード17,18,19,20,21,22とにより構成されており、その出力電流が、モータ1のU相,V相,W相に接続されている。したがって、それぞれのIGBT11,12,13,14,15,16のオンデューティーを協調して制御することにより、各相に通電される電流の周波数を変化させて、モータ1の回転数を制御するように構成されている。なお、上記の各IGBT7,8,11,12,13,14,15,16には、電子制御装置(以下、ECUと記す)23が接続されており、図示しない各センサにより検出された信号に応じて、IGBT7,8,11,12,13,14,15,16を制御するように構成されている。
【0020】
図1に、上記インバータIおよびコンバータCを収容するケース24の一例を示している。このケース24は、上方が開口した第1本体部25と、その第1本体部25の開口部を閉じる第1蓋部26とにより構成されており、インバータIおよびコンバータCが第1本体部25にボルトなどにより連結され、その第1本体部25が図示しない車体にボルトなどにより固定されている。これら第1本体部25と第1蓋部26とは、金属材料により構成されている。また、第1本体部25と第1蓋部26とは、ゴムリングなどのシール部材27を挟んで図示しないボルトにより連結されている。したがって、第1蓋部26と第1本体部25および車体とは、電気的に絶縁状態、または電気抵抗が大きい状態になっており、また、ケース24の内部は、略密封された状態になっている。なお、上記第1蓋部26は、この発明を実施した場合における「所定部材」に相当する。
【0021】
上述したように構成されたインバータIおよびコンバータC(以下、これらを併せて電力制御装置Sと記す)は、起動することにより正(+)の静電気を生じる場合がある。この静電気は、IGBT7,8,11,12,13,14,15,16を制御する際に通電と非通電とが繰り返し実行されることによる電気的な作用などを要因として生じるものと考えられる。このように静電気が生じ、かつその静電気が帯電すると、アクセル操作を行ってから駆動力が変化するまでのレスポンスや、モータ1の出力トルク、あるいはブレーキ操作を行ってからモータ1による制動力が増大するまでのレスポンスなどが低下する場合、すなわち走行性能が低下する場合がある。これは、静電気が電力制御装置Sの制御性や出力電力に影響するためと考えられる。
【0022】
そのため、電力制御装置Sの正(+)の静電気を除電するために、コロナ放電を生じることにより外気に負のイオンを生じさせて、正(+)の静電気を中和除電する自己放電式除電器28をケース24に取り付けている。コロナ放電は、従来知られているように電位が高くなることにより生じるものであるから、絶縁状態に維持されて電位が比較的高くなる部位に自己放電式除電器28を取り付けることが好ましい。したがって、図1に示す例では、アースとなる車体に絶縁状態または電気抵抗が大きい状態で連結され、帯電する静電気の電位が高くなる第1蓋部26の中央部の外表面に、自己放電式除電器28を取り付けている。なお、図1には、自己放電式除電器28を取り付ける位置を、「●」で例示している。
【0023】
ここに示す自己放電式除電器28は、金、銀、銅、アルミニウムなどの電気伝導率が高い材料のシートで構成することができ、そのシートの電位に応じてコロナ放電するように構成されている。コロナ放電は、従来知られているように鋭利もしくは尖っている部位から生じるので、シートは、鋭利なエッジが形成された多角形状が好ましい。また、その外周面である切断面は、ギザギザの切断面になるように形成することが好ましい。さらに、シートの表面にローレット加工などによって鋭利もしくは尖った凹凸を形成することが好ましい。なお、以下の説明では、自己放電式除電器28を、シート28と記す。
【0024】
また、この発明における自己放電式除電器は、上述したシート28に限らず、例えば、電気伝導率が高い塗料やメッキを第1蓋部26に塗布して形成してもよい。または、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子、導電性プラスチックなどにより構成してもよい。
【0025】
ここで、第1蓋部26に帯電した正(+)の静電気を自己放電すること、すなわち電気的に中和除電することによる作用について説明する。上述したように電力制御装置Sが起動して静電気を生じると、その静電気の一部は、ケース24の内気を介して、第1本体部25および第1蓋部26に伝達される。一方、静電気の他の一部は、ケース24の内気や電力制御装置Sに帯電する。また、第1本体部25に伝達された静電気は、車体に流れることにより低い電位に保たれる。他方、上述したように第1蓋部26は、第1本体部25および車体に対して絶縁状態になっているので、第1蓋部26に伝達された静電気は、第1蓋部26に帯電する。そのように第1蓋部26に正(+)の静電気が停電すると、その電位に応じてシート28でコロナ放電が生じ、それに伴ってシート28およびその近傍の部分の正(+)の電位が低下する。具体的には、コロナ放電により外気に負のイオンが生成されて、その負のイオンにより正(+)の静電気が中和除電される。すなわち、第1蓋部26に帯電した正(+)の電位が低下させられる。なお、シート28により電位が低下する範囲は、シート28を中心として、直径が約150〜200mmの範囲である。
【0026】
そのように第1蓋部26の電位が低下すると、ケース24の内気との電位差が増大することにより、その内気から第1蓋部26に静電気が伝達されて、内気の正(+)の電位が低下する。また、電力制御装置Sが起動すると、電気抵抗などによりその電力制御装置Sが発熱するので、ケース24の内気は比較的高温になり、その結果、ケース24の内気は対流していると考えられる。したがって、上記のように第1蓋部26に接触する内気が除電され、その後に帯電した新たな内気が第1蓋部26の内面に流動して除電されることになる。そのため、ケース24の内気全体の電位が低下する。
【0027】
そのように内気の正(+)の電位が低下することにより、内気と電力制御装置Sとの電位差が増大して、電力制御装置Sから内気に静電気が伝達されて、その電力制御装置Sの正(+)の電位が低下する。つまり、電力制御装置Sの静電気が除電される。
【0028】
また、上述したように車体と路面とが絶縁状態になっているので、車体および第1本体部25の正(+)の電位は少なからず増加する。また、第1本体部25と第1蓋部26とはボルトによって連結されているので、第1本体部25と第1蓋部26とは、少なからず通電している。そのため、上記のように第1蓋部26の電位が低下すると、第1蓋部26と第1本体部25との電位差が増大して、第1本体部25の正(+)の静電気が第1蓋部26に伝達される。つまり、第1本体部25の正(+)の電位が低下する。そのように第1本体部25の電位が低下することにより、第1本体部25に連結された電力制御装置Sの正(+)の静電気が第1本体部25に伝達されて、電力制御装置Sの正(+)の電位が低下する。つまり、電力制御装置Sの静電気が除電される。
【0029】
上述したように第1蓋部26にシート28を貼り付けることにより、ケース24の内気を介して電力制御装置Sの正(+)の静電気を除電することができる。そのため、電力制御装置Sの制御性などに静電気が影響することを抑制することができる。その結果、車両の走行性能が低下することを抑制することができる。特に、第1蓋部26の中央部分にシート28を貼り付けることにより、ケース24の内気のうち、より多く対流している部分の静電気を除電することができるので、より大きな効果を奏することができる。また、第1蓋部26を除電することにより、ボルトを介して第1本体部25の電位を低下させることができ、その結果、第1本体部25に連結された電力制御装置Sの正(+)の静電気も併せて除電することができる。そのため、上述した効果と同様に車両の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0030】
図2は、電力制御装置Sを収容するケースの他の構成を説明するための図である。ここに示すケース29は、図1と同様に形成された第2本体部30と、その第2本体部30の開口部のうちの一部を閉じる金属材料により形成された第2蓋部31と、第2本体部30の開口部のうちの他の部分を閉じる樹脂材料により形成された第3蓋部32とにより構成されている。なお、第2蓋部31は、図1と同様に図示しないシールを介して第2本体部30に連結されている。また、第2本体部30には、電源Eやモータ1などに接続されるワイヤーハーネスを取り付けるための樹脂材料により形成された連結部33が形成されている。さらに、各蓋部31,32の上面を覆うように樹脂材料により形成された第1カバー部材34が設けられており、その第1カバー部材34の背面には、振動などを吸収するための発泡ゴム35が取り付けられている。
【0031】
このように構成されたケース29では、図1における第1蓋部26と同様に第2本体部30に連結された第2蓋部31に加えて、第3蓋部32および連結部33ならびに第1カバー部材34にも静電気が帯電し易く、また第2蓋部31に対しても絶縁状態となっている。したがって、それら各部31,32,33,34の電位が高くなる。なお、第2蓋部31、第3蓋部32、連結部33、および第1カバー部材34が、この発明を実施した場合における「所定部材」に相当する。そのため、例えば、図2に「●」を付している位置にシート28を貼り付け、第3蓋部32および連結部33ならびに第1カバー部材34の静電気を中和除電することにより、図1に示す例を同様に、電力制御装置Sの静電気を除電することができ、車両の走行性能が低下することを抑制することができる。
【0032】
つぎに、バッテリ2およびキャパシタ3(以下、これらを併せて電源Eと記す)の静電気を除電する構成について説明する。図3は、電源Eをユニット化したHVバッテリユニットUを車両36に搭載した状態を示している。この車両36は、後部座席37の下方側にHVバッテリユニットUが設けられており、後部座席37の足下の前方側からHVバッテリユニットUを冷却する空気を取り込み、後述するケースの内部をその空気が流動した後に、車両36の後方側にある排出口38から車外に空気を排出するように構成されている。そのように空気を強制的に流動させるためのクーリングブロワ39が、HVバッテリユニットUに取り付けられている。
【0033】
図4は、そのHVバッテリユニットUの構成を説明するための図である。このHVバッテリユニットUには、個々に立方体のケースに覆われた複数のバッテリモジュール40が、直列に接続されて設けられている。そのHVバッテリユニットUや上記クーリングブロワ39が、図示しない車体に固定される第1プレート41に取り付けられている。この第1プレート41には、複数のフランジ42が形成されており、そのフランジ42が車体にボルトなどにより固定されている。
【0034】
また、HVバッテリユニットUを囲うように樋状の第2カバー部材43が第1プレート41に連結されており、その第2カバー部材43の内側とHVバッテリユニットUとの間に、クーリングブロワ39から空気が送り込まれて、HVバッテリユニットUが冷却されるように構成されている。
【0035】
このように構成されたHVバッテリユニットUは、電力を出力し、またはモータ1から供給される電力を充電することによる電気的な作用などにより静電気が生じる場合がある。また、クーリングブロワ39を駆動することによる摩擦などにより静電気が生じる場合がある。その静電気の一部は、第2カバー部材43の内気を介して、第2カバー部材43に伝達される。第2カバー部材43に伝達された静電気は、第1プレート41を介してアースとなる車体に伝達される。一方、第2カバー部材43と第1プレート41との連結部や、第1プレート41と車体との連結部の断面積が小さく電気抵抗が大きいため、第2カバー部材43から第1プレート41を介して車体に一部の静電気が流れたとしても、他の静電気は第2カバー部材43や第1プレート41に帯電する可能性がある。そのように第2カバー部材43や第1プレート41に静電気が帯電すると、HVバッテリユニットUとの電位差が小さくなり、HVバッテリユニットUから静電気が放出されずに帯電する可能性がある。その結果、HVバッテリユニットUに静電気が帯電すると、アクセル操作を行ってから駆動力が変化するまでのレスポンスや、モータ1の出力トルク、あるいはブレーキ操作を行ってからモータ1による制動力が増大するまでのレスポンスなどが低下する場合、すなわち走行性能が低下する場合がある。これは、静電気がHVバッテリユニットUの出力電圧や入力電圧などに影響するためと考えられる。したがって、第2カバー部材43と第1プレート41とを連結する部分、および第1プレート41と車体とを連結する部分に自己放電式除電器となるシート28を貼り付けている。なお、図には、シート28を貼り付ける位置を「●」で例示している。
【0036】
ここで、HVバッテリユニットUに帯電した正(+)の静電気を自己放電すること、すなわち電気的に中和除電することによる作用について説明する。上述したようにHVバッテリユニットUやクーリングブロワ39が駆動して静電気を生じると、第2カバー部材43の内部を流動する空気を介して第2カバー部材43に伝達され、その第2カバー部材43から第1プレート41を介して一部の静電気が車体に伝達される。一方、上述したように第2カバー部材43や第1プレート41に帯電した静電気の電位が増大してシート28からコロナ放電が生じると、第2カバー部材43の外側の空気(外気)に負のイオンが生じて、その負のイオンにより正(+)の静電気が中和除電される。すなわち、第2カバー部材43および第1プレート41に帯電した正(+)の電位が低下させられる。
【0037】
そのように第1プレート41の電位が低下すると、第2カバー部材43と第1プレート41との電位差に応じて第2カバー部材43から静電気が第1プレート41に伝達される。また、第2カバー部材43の電位が低下すると、第2カバー部材43の内気との電位差が生じることにより、その内気から第2カバー部材43に静電気が伝達されて、内気の正(+)の電位が低下する。上述したように第2カバー部材43の内気は、クーリングブロワ39により強制的に流動しているので、第2カバー部材43に接触する内気が除電され、その後に気流の流れ方向における上流側で帯電した内気が第2カバー部材43の内面に流動して除電されることになる。そのため、第2カバー部材43の内気の電位が低下する。
【0038】
そのように空気の正(+)の電位が低下することにより、内気とHVバッテリユニットUとの電位差が生じて、HVバッテリユニットUから内気に静電気が伝達されて、そのHVバッテリユニットUの正(+)の電位が低下する。つまり、HVバッテリユニットUの静電気が除電される。
【0039】
上述したように第2カバー部材43および第1プレート41にシート28を貼り付けることにより、第2カバー部材43の内気を介してHVバッテリユニットUの正(+)の静電気を除電することができる。そのため、HVバッテリユニットUの制御性などに静電気が影響することを抑制することができる。その結果、車両の走行性能が低下することを抑制することができる。また、第1プレート41と車体との連結部にシート28を取り付けることにより、HVバッテリユニットUにより生じた静電気が車体に伝達されることを抑制することができる。上述したようにゴムなどにより車輪が構成されて、路面と車体とが絶縁されているため、車体に静電気が伝達されることを抑制することにより、車体の電位が増大して、アースの電位が変動することを抑制することができる。
【0040】
図5は、セダンタイプの車両などにおけるトランクルーム内に設けられるHVバッテリユニットUの構成を説明するための図を示している。ここに示すHVバッテリユニットUは、図4と同様に形成された第2プレート44に取り付けられ、そのHVバッテリユニットUを囲うように第3カバー部材45が、第2プレート44に連結されている。また、クーリングブロア46は、第3カバー部材45の上面に取り付けられている。そして、第3カバー部材45と第2プレート44との連結部、および第2プレート44と車体との連結部にシート28が貼り付けられている。
【0041】
このように構成されたHVバッテリユニットUも、図4に示す例と同様に第3カバー部材45と第2プレート44との連結部、および第2プレート44と車体との連結部にシート28を取り付けているので、図4に示す例と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…モータ、 2…バッテリ、 3…キャパシタ、 24…ケース、 25,30…本体部、 26,31,32…蓋部、 28…シート(自己放電式除電器)、33…連結部、 34,43,45…カバー部材、 36…車両、 40…バッテリモジュール、 41,44…プレート、 C…コンバータ、 E…電源、 I…インバータ、 S…電力制御装置、 U…HVバッテリユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6