(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-132232(P2016-132232A)
(43)【公開日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】金型冷却構造
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20160627BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20160627BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C45/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-10184(P2015-10184)
(22)【出願日】2015年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000147888
【氏名又は名称】エスバンス 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川口 将生
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CN05
4F202CN14
4F202CN22
(57)【要約】
【課題】 成形用金型によって成形品を製造する際の冷却水の圧力損失を抑制し且つ冷却効率を高めて成形サイクルを短縮することができ、また、冷却水への不純物の混入を抑制することができる金型冷却構造を提供する。
【解決手段】 金型1内に設けられた主冷却水通路3と、この主冷却水通路3に直交して先端部がキャビティ近傍部に達するまで穿設された複数の副冷却水通路4とを備え、且つ副冷却水通路4内を仕切板6によって往路4aと復路4bとに区画してなる金型冷却構造において,上記主冷却水通路3を副冷却水通路4の長さ方向の中央部に連通させて冷却水の圧力損失を抑制し且つ冷却効率を高めていると共に、仕切板6の長さ方向の中間部分に、副冷却水通路4の基部内4c側から上記主冷却水通路3との連通部側に不純物が混入するを阻止する円板形状の阻止板10を装着している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の内部に型合わせ面に対して略平行に穿設された主冷却水通路と、金型底面からこの主冷却水通路に直交して先端部がキャビティ近傍部に達するまで穿設された複数の副冷却水通路と、金型底面から外部に開口している副冷却水通路の基端開口部から副冷却水通路内に挿入されて副冷却水通路内を冷却水の往路と復路とに仕切っている仕切板と、副冷却水通路の基端開口部を封止している栓部材とを備えた金型冷却構造において、上記主冷却水通路を副冷却水通路の長さ方向の中央部または該中央部から先端側寄り部分に連通させている一方、この連通部の下方近傍部に位置する上記仕切板部分に、上記栓部材側から副冷却水通路の基部内を通じて上記連通部側に不純物等が入り込むのを阻止する円板形状の阻止板を装着していることを特徴とする金型冷却構造。
【請求項2】
主冷却水通路及び副冷却水通路の直径を、従来の略同一金型に設けられている主冷却水通路及び副冷却水通路よりも大径に形成していることを特徴とする請求項1に記載の金型冷却構造。
【請求項3】
主冷却水通路を副冷却水通路の基端から先端に向かってこの副冷却水通路の長さの450%〜80%に達する部分に連通させていることを特徴とする請求項1に記載の金型冷却構造。
【請求項4】
仕切板と栓部材とを別体に形成して仕切板の基端部両側端縁に副冷却水通路の基端部内周面に圧接させる突縁部を設けていることを特徴とする請求項1に記載の金型冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時において金型を冷却する金型冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
成形用金型のキャビティ内に溶融樹脂を充填したのち、金型を冷却することによって所望形状の成形品を得る場合、従来から、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されているように、金型内部に主冷却水通路を型合わせ面に略平行となるように穿設し、この主冷却水通路に基端部を直交した状態となるように連通させ、且つ、先端部を上記キャビティの近傍部位に達するように配設している副冷却水通路を主冷却水通路の長さ方向に一定間隔毎に設けてなる金型冷却構造を採用している。
【0003】
そして、このように構成した金型冷却構造によれば、主冷却水通路の上流側(一側部)から供給された冷却水は、この主冷却水通路の数カ所に設けている副冷却水通路内を順次流通しながら金型を冷却する。この際、副冷却水通路の先端部はキャビティ近傍部に達す位置にまで設けられているので、冷却水は主冷却水通路から仕切板によって内部を往路と復路に区画されている副冷却水通路の往路内を基端側から先端側に向かって流通したのち復路内を先端側から基端側に向かって流動しながらキャビティ内の成形品を冷却することができる。
【0004】
なお、上記のように構成した金型冷却構造において、副冷却水通路内を往路と復路とに区画している上記仕切板の取付構造としては、特許文献1においては仕切板の基端に栓部材を一体に設けた構造にして仕切板を副冷却水通路内に挿入し、栓部材を金型底面から外部に向かって開口している副冷却水通路基端部の螺子孔に螺合させた構造としている一方、特許文献2においては、仕切板と栓部材とを別体にして、まず、仕切板を副冷却水通路内にこの副冷却水通路内を往路と復路とに区画し得るように保持しながら挿入したのち、栓部材を金型底面から外部に向かって開口している副冷却通路基端部の螺子孔に螺合させた構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−155871号公報
【特許文献2】特開2004−195686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記金型冷却構造においては、いずれも、主冷却水通路を副冷却水通路の基端部内に連通させているので、主冷却水通路から副冷却水通路に流入した冷却水の仕切板に沿って往路内を先端側に流動する流路の距離が長くなって圧力損失が増大するばかりでなく、冷却水が副冷却水通路の往路内を基端側から先端側に向かって流通する際に、キャビティから離れた金型の底部側から冷却が開始されてキャビティ部分との熱交換率が低下し、その上、冷却水が副冷却水通路を順次、流通しながらキャビティを冷却する際のキャビティの一側部と他側部との冷却温度差が比較的大きくなって成形品に変形や収縮が生じる虞れがあると共に、キャビティ内の溶融樹脂を安定した品質の成形品となるまで冷却するには冷却サイクルが長くなって良質の成形品を効率よく製造することが困難であるといった問題点がある。
【0007】
また、上記金型冷却構造においては、冷却水が主冷却水通路から副冷却水通路を流通する際に、副冷却水通路の基端部内には冷却水が流動しない淀み部が設けられることになって、この淀み部に栓部材のシール材等から発生する不純物が混入すると共に淀み部から副冷却水通路を流動する冷却水にも不純物が混入して冷却水を汚損し、冷却設備側の清掃、メンテナンスを頻繁に行わなければならなくなるといった問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、成形用金型によって成形品を製造する際の冷却温度差を少なくして成形品の品質の向上を図ることができると共に冷却水の圧力損失を抑制し且つ冷却効率を高めて成形サイクルを短縮することができ、また、冷却水への不純物の混入を抑制して冷却設備側の清掃、メンテナンスの頻度を減少させることができる金型冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の金型冷却構造は、請求項1に記載したように、金型の内部に型合わせ面に対して略平行に穿設された主冷却水通路と、金型底面からこの主冷却水通路に直交して先端部がキャビティ近傍部に達するまで穿設された複数の副冷却水通路と、金型底面から外部に開口している副冷却水通路の基端開口部から副冷却水通路内に挿入されて副冷却水通路内を冷却水の往路と復路とに仕切っている仕切板と、副冷却水通路の基端開口部を封止している栓部材とを備えた金型冷却構造において、上記主冷却水通路を副冷却水通路の長さ方向の中央部または該中央部から先端側寄り部分に連通させている一方、この連通部の下方近傍部に位置する上記仕切板部分に、上記栓部材側から副冷却水通路の基部内を通じて上記連通部側に不純物等が入り込むのを阻止する円板形状の阻止板を装着していることを特徴とする。
【0010】
このように構成した金型冷却構造において、請求項2に係る発明は、主冷却水通路及び副冷却水通路の直径を、従来の略同一金型に設けられている主冷却水通路及び副冷却水通路よりも大径に形成していることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明は、主冷却水通路を副冷却水通路における基端から先端に向かってこの副冷却水通路の長さの45%〜80%の範囲内に位置する通路部に連通させていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、仕切板と栓部材とを別体に形成して仕切板の基端部両側端縁に副冷却水通路の基端部内周面に圧接させる突縁部を設けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、金型の内部に型合わせ面に対して略平行に穿設された主冷却水通路と、金型底面からこの主冷却水通路に直交して先端部がキャビティ近傍部に達するように穿設された複数の副冷却水通路と、副冷却水通路内冷却水の往路と復路とに仕切っている仕切板と、副冷却水通路の基端開口部を封止している栓部材とを備えた金型冷却構造において、上記主冷却水通路を副冷却水通路の長さ方向の中央部または該中央部から先端側寄り部分に直交状態に連通させているので、主冷却水通路から副冷却水通路内に流入した冷却水を、副冷却水通路の長さ方向の中央部または該中央部から先端側寄り部分において主冷却水通路に連通している往路からこの往路の先端部側に流動させ、さらにこの先端部から副冷却水通路内の復路に流動させながらキャビティを冷却することができ、仕切板に沿って冷却水を流動させる副冷却水通路の長さが短くなって圧力損失を低減させることができると共に副冷却水通路内を流通する冷却水の流路が短くなって主冷却水通路の上流側に連通している副冷却水通路を流通する冷却水と下流側に連通している副冷却水通路を流通する冷却水との温度差を小さくすることができる。
【0014】
従って、キャビティの一側部と他側部との冷却温度差が小さくなって高品質の成形品を製造することができると共に、キャビティを冷却する冷却水の熱交換率が向上してキャビティ内の溶融樹脂を安定した品質の成形品となるまで冷却するための冷却サイクルを短縮させることができ、高品質の成形品を効率よく製造することができる。
【0015】
また、主冷却水通路と副冷却水通路とが直交状態で連通した連通部の下方近傍部に位置する上記仕切板部分に、上記栓部材側から副冷却水通路の基部内を通じて上記連通部側に不純物等が入り込むのを阻止する円板形状の阻止板を装着しているので、副冷却水通路内を流通する冷却水に栓部材側から不純分等が混入するのを防止することができ、綺麗な冷却水を流通させて冷却設備側の清掃、メンテナンスの頻度を減少させることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、主冷却水通路及び副冷却水通路の直径を、従来の略同一金型に設けられている主冷却水通路及び副冷却水通路よりも大径に形成しているので、短時間で冷却に必要な多量の冷却水を流通させることができ、成形サイクルを短縮して生産コストの低廉化を図ることができる。
【0017】
なお、上記主冷却水通路と副冷却水通路とが直交状態で連通している位置は、請求項3に記載したように、副冷却水通路における基端から先端に向かってこの副冷却水通路の長さの45%〜80%の範囲内に位置する通路部に連通させておくことが望ましく、副冷却水通路の長さの45パーセント以上に位置する連通部に主冷却水通路を連通させておくと副冷却水通路の先端までの流通路が短くなって圧力損失を抑制できると共に熱交換率が高くなり、副冷却水通路の長さの80パーセント以下に達する位置に主冷却水通路を連通させておくと、副冷却水通路を流通する冷却水の流路長さを確保し、キャビティ内の溶融樹脂を冷却するための冷却水量の低減化を図ることができると共に、冷却サイクルを短くすることができ、また、主冷却水通路がキャビティに接近しすぎることなく、主冷却水通路を容易に形成することができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、副冷却水通路内に配設した仕切板と副冷却水通路の基端開口部を密閉している栓部材とを別体に形成していると共に、仕切板の基端部両側端縁に副冷却水通路の基端部内周面に圧接させる突縁部を設けているので、仕切板をその一方の片面が主冷却水通路に直角に対向するように調整しながら挿入して仕切板の基端部両側端縁に設けている突縁部を副冷却水通路の基端部内周面に圧接させることによって仕切板により区画された副冷却水通路内の往路を主冷却水通路の上流側に、復路を主冷却水通路の下流側に正確に指向させた状態で挿着、固定することができ、栓部材を副冷却水通路の基端開口部に螺合等によって密閉しても、この栓部材と供回りするのを阻止して精度のよい冷却水流通路を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、
図1は可動金型1と固定金型2とからなる射出成形用金型における可動金型1内に設けている金型冷却構造を示すもので、この金型冷却構造は、可動金型1の内部にこの可動金型1と上記固定金型2との型合わせ面(パーティングライン)に対して略平行に穿設された主冷却水通路3と、可動金型1の底面から上記主冷却水通路3に直交して先端部が可動金型1と固定金型2との対向面間によって形成されるキャビティ5の近傍部に達するように穿設された副冷却水通路4と、副冷却水通路4内を主冷却水通路3の上流側に連通する往路4aと主冷却水通路3の下流側に連通する復路4bとに仕切っている仕切板6と、可動金型1の底面から外部に開口している副冷却水通路4の基端開口部を封止している栓部材7とを備えた構造を有する。
【0021】
上記主冷却水通路3は、
図3に示すように、可動金型1の一側面から外部に開口させている冷却水の流入口3aと流出口3bとを有し、流入口3aから流出口3bに到るこの主冷却水通路3の流路は、可動金型1内を流入口3aから流出口3bに向かって水平方向にジグザグ状に屈曲してなる流路に形成されている。なお、このように形成した主冷却水通路3は、金型の大きさによって1〜複数本( 図においては3本) 設けられ、上記流入口3aに冷却水供給管(図示せず)を、流出口3bに排出管(図示せず)をそれぞれ接続して、主冷却水通路3に冷却水を流通させるように構成している。
【0022】
さらに、主冷却水通路3は、上記副冷却水通路4の長さ方向の中央部に直交状態で連通するように、可動金型1における型合わせ面近傍部の内部に型合わせ面に平行して設けられているが、上記中央部から先端側寄り部分に直交状態で連通させておいてもよい。具体的には、この主冷却水通路3は副冷却水通路4における基端から先端に向かってこの副冷却水通路4の長さの45パーセントの位置に達する部分から80パーセントの位置に達する部分との間の副冷却水通路4の通路部に直交状態で連通するように設けておくことが好ましい。
【0023】
主冷却水通路3が副冷却水通路4における基端からこの副冷却水通路4の長さの45パーセントの位置以上の通路部に連通させておくと、主冷却水通路3から副冷却水通路4の先端までの長さ(高さ)が短くなって圧力損失を抑制できると共に熱交換率を高くすることができ、主冷却水通路3が副冷却水通路4における基端からこの副冷却水通路4の長さの80パーセントの位置以下の通路部に連通させておくと、副冷却水通路を流通する冷却水の流路長さを確保し、キャビティ内の溶融樹脂を冷却するための冷却水量の低減化を図ることができると共に、冷却サイクルを短くすることができ、また、主冷却水通路がキャビティに接近しすぎることなく、主冷却水通路を容易に形成することができる。
【0024】
また、主冷却水通路3及び副冷却水通路4の直径を、従来の略同一金型に設けられている主冷却水通路とこの主冷却水通路を基端側に直交状態連通させている副冷却水通路よりもそれぞれ大径に形成して冷却サイクルに必要な主冷却水通路3及び副冷却水通路4内を流通する冷却水の流量を確保している。なお、主冷却水通路3は副冷却水通路4よりも若干小径に形成されている。
【0025】
副冷却水通路4内には、上述したように、主冷却水通路3の上流側に連通する往路4aと主冷却水通路3の下流側に連通する復路4bとに仕切っている仕切板6が配設されている。この仕切板6は副冷却水通路4の長さよりも短い長さの縦長長方形状の板材からなり、可動金型1の底面に開口している副冷却水通路4の基端開口部から副冷却水通路4に挿入されてその平坦な両面を副冷却水通路4に連通した主冷却水通路3に直交するように対向させた状態で固定されている。
【0026】
なお、仕切板6は、副冷却水通路4内に対する脱着が容易となるようにその幅を基端部を除いて副冷却水通路4の直径寸法よりも若干小幅、例えば、その両端面と副冷却水通路4の孔壁との間に好ましくは0.5mm以下程度の隙間が設けるように形成されている。また、この仕切板6の基端部の幅を先端側よりも幅広くしてその両端縁に小幅の突縁部6a、6aを形成してあり、この突縁部6a、6aの端面間の幅を副冷却水通路4の内径寸法に等しくして仕切板6を副冷却水通路4内に打ち込むようにして挿入することにより突縁部6a、6aの端面を副冷却水通路4の基端部内周面(孔壁)に圧接させて仕切板6が不測に副冷却水通路4の周方向に回動するのを阻止し、その両面を主冷却水通路3に直角に対面させた状態で副冷却水通路4内に固定している。
【0027】
副冷却水通路4の基端開口部を封止している上記栓部材7は、仕切板6と別体に形成されてあり、この栓部材7の外周面に刻設している螺子部8を副冷却水通路4の基端開口部の内周面に刻設している螺子孔部9に螺合させることによって、副冷却水通路4の基端開口部に取付けている。なお、栓部材7の螺子部8と副冷却水通路4の基端開口部の螺子孔部9との螺合部は適宜なシール材によって密封している。
【0028】
さらに、上記仕切板6の長さ方向の中間部分に、上記主冷却水通路3に直交状態で連通した副冷却水通路4の連通部の下方に近接させて、この連通部から下方の副冷却水通路4の基部内4cを上記連通部に対して仕切るように区画し、栓部材側から副冷却水通路4の基部内4cを通じて上記連通部側に不純物等が入り込むのを阻止する円板形状の阻止板10を装着している。
【0029】
この阻止板10は、直径が仕切板6の幅に等しい円板を半円形状の板片に二分割してこれらの板片の分割端面を仕切板6の両面にそれぞれ固着することにより形成されてあり、従って、その外周端面と副冷却水通路4の内壁との間に僅かな隙間(好ましくは0.5mm 以下の隙間)が形成されてその隙間を通じて冷却水が副冷却水通路4の基部内4cに滞留してこの基部内4cが冷却水の淀み部となるが、阻止板10の直径を副冷却水通路4の内径に等しくその外周端面を副冷却水通路4の内壁に密接させるように構成しておいてもよい。図中、11はキャビティ5内に溶融樹脂を充填するための固定金型2側に設けられたスプルーである。
【0030】
以上のように構成したので、射出成形時において、スプルー11を通じてキャビティ5内に充填された溶融樹脂を冷却する際に、主冷却水通路3に冷却水を供給すると、まず、この主冷却水通路3の最も上流側に配設している副冷却水通路4の往路4a内に冷却水が流入してこの往路4a内を仕切板4に沿ってキャビティ5側に向かって流通し、さらに、仕切板6の先端部を越えながら副冷却水通路4の先端部内から往路4a内を折り返し流動してキャビティ5を冷却しながら主冷却水通路3に還流し、この主冷却通路部分から次の副冷却水通路4に流入して上記同様にこの副冷却水通路4内の往路4aから復路4bを流動して再び主冷却水通路3に還流する。このように主冷却水通路3を通じてこの主冷却水通路3の長さ方向に所定間隔毎に設けている複数の副冷却水通路4に冷却水を順次、ジグザグ状に還流させながらキャビティ5を冷却する。
【0031】
この際、主冷却水通路3を副冷却水通路の長さ方向の中央部に直交状態で連通させているので、主冷却水通路3から副冷却水通路4の往路4a内に流入してこの副冷却水通路4内の往路4aを仕切板6に沿って副冷却水通路4の先端まで流動する距離が短くなり、従って、圧力損失を低減させることができるばかりでなく、副冷却水通路4内に流通する冷却水をキャビティ5近傍部の金型部分に集中的に作用させることができて熱交換率が向上し、キャビティ5内の溶融樹脂を冷却する冷却サイクルを短縮することができると共に、上流側の副冷却水通路4内を流通する冷却水と下流側の副冷却水通路4内を流通する冷却水との温度差を小さくすることができて品質のよい成形品を効率よく製造することができる。
【0032】
また、主冷却水通路3と副冷却水通路4との直角に交差している連通部の下方近傍部に位置する上記仕切板6の中間部分に、上記栓部材側から副冷却水通路の基部内を通じて上記連通部側に不純物等が入り込むのを阻止する円板形状の阻止板を装着しているので、上記冷却サイクル時において、冷却水を主冷却水通路3から副冷却水通路4に、さらにこの副冷却水通路4から下流側の主冷却水通路3に、上記阻止板から先端側に向かって突設している仕切板6によって仕切られた往路4aと復路4b内を通じて円滑に還流させることができる共に、冷却水流動阻止板10と副冷却水通路4の内壁との間の隙間を通じて冷却水が副冷却水通路4の基部内4cに滞留して淀みが生じ、この淀んだ水に栓部材を密閉しているシール材の断片或いはグリース状物等の不純物が混入しても、上記阻止片によって副冷却水通路4の基部内4cから主冷却水通路3と副冷却水通路4との連通部に混入するのを防止することができ、綺麗な冷却水を流通させて冷却設備側の清掃、メンテナンスの頻度を減少させることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 可動金型
2 固定金型
3 主冷却水通路
4 副冷却水通路
4a 往路
4b 復路
4c 副冷却水通路の基部内
5 キャビティ
6 仕切板
7 栓部材
10 冷却水流動阻止板