特開2016-132393(P2016-132393A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-132393(P2016-132393A)
(43)【公開日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】雪かき装置
(51)【国際特許分類】
   B61K 13/00 20060101AFI20160627BHJP
   E01H 8/04 20060101ALI20160627BHJP
   B61F 19/10 20060101ALI20160627BHJP
【FI】
   B61K13/00 Z
   E01H8/04
   B61F19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-9240(P2015-9240)
(22)【出願日】2015年1月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幹根
(72)【発明者】
【氏名】北村 猛哲
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康司
(57)【要約】
【課題】取り扱いが便利であるとともに、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値を超えたことを容易に知ることができ、雪かき装置や取付部等の変形、破損を未然に防止できる雪かき装置を提供する。
【解決手段】車両前端11の取付部111に装着され、車両1が走行しながら進路5上に積雪した雪を押しのけるように形成された除雪板2を有する雪かき装置20である。除雪板2の外周面には、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部3と、積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部4とを形成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前端の取付部に装着され、車両が走行しながら進路上に積雪した雪を押しのけるように形成された除雪板を有する雪かき装置であって、
前記除雪板の外周面には、前記進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部と、前記積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部とを形成したことを特徴とする雪かき装置。
【請求項2】
請求項1に記載された雪かき装置において、
前記使用可能表示部及び前記使用不可能表示部は、上下方向で互いに隣接して車両前面から車両側面まで帯状に形成されていることを特徴とする雪かき装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された雪かき装置において、
前記使用可能表示部には、雪とコントラストのつきやすい濃い色を着色し、かつ、前記使用不可能表示部には、当該濃い色と区別しやすい明るい色を着色したことを特徴とする雪かき装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された雪かき装置において、
前記除雪板には、積雪した雪をかき取り可能に形成された雪かき部を有し、前記使用可能表示部は前記雪かき部に主に形成されていることを特徴とする雪かき装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された雪かき装置において、
前記車両前端の取付部には、進路上に置かれた障害物を排除する排障部を有する排障装置と前記雪かき装置とを交換可能に装着されることを特徴とする雪かき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に装着され、当該車両が走行しながら進路上に積雪した雪の除雪を行うように形成された雪かき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両に装着され、車両が走行しながら進路上に積雪した雪の除雪を行うように形成された雪かき装置は、除雪板を車両前端にボルト等の締結具で取り付けたり、溶接して取り付けたりする構造を採用している。
例えば、特許文献1には、鉄道車両の雪かき器(雪かき装置)が記載されている。図10に示すように、特許文献1に記載された鉄道車両の雪かき器100は、鉄道車両101の前頭に装着する雪かき器において、除雪板部分102、103を2枚以上の複数重ね合せ構造とし、必要に応じて上下方向へ引き延ばして除雪面積を増大することが可能な構造としたことを特徴としている。上記雪かき器100によれば、鉄道車両101が多少積雪量の多い線区を走行する場合でも、除雪能力を大幅に向上できる効果を奏することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−19622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された鉄道車両の雪かき器(雪かき装置)では、除雪板部分を2枚以上の複数重ね合せ構造とし、必要に応じて上下方向へ引き延ばして除雪面積を増大することが可能な構造であるので、構造が複雑となり、重量も重くなって取り扱いが不便となる問題があった。
また、進路上に積雪した雪が想定した積雪量を超えてしまうと、雪を押しのける抵抗によって発生する力が過大になり、除雪板部分を含む雪かき装置、又は雪かき装置が取り付けられている車両前端の取付部に多大な力が作用する。そのため、雪かき装置や取付部等が変形したり損傷したりする問題があった。また、鉄道車両の場合には、さらに脱線に至る恐れもあった。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、取り扱いが便利であるとともに、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値を超えたことを容易に知ることができ、雪かき装置や取付部等の変形、破損を未然に防止できる雪かき装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る雪かき装置は、以下の構成を備えている。
(1)車両前端の取付部に装着され、車両が走行しながら進路上に積雪した雪を押しのけるように形成された除雪板を有する雪かき装置であって、
前記除雪板の外周面には、前記進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部と、前記積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部とを形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、除雪板の外周面には、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部と、積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部とを形成したので、進路上に積雪した雪が、除雪板の使用可能範囲内であるか又は使用不可能範囲に到達しているかを、車両外方から目視することができる。そのため、除雪板を車両外方から目視して、積雪量が使用不可能表示部の範囲に到達している場合には、雪かき装置を使用しないという判断を迅速かつ簡単に行うことができ、雪かき装置や車両前端の取付部等の変形、破損を未然に防止できる。
また、除雪板には、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部と、積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部とを形成するだけでよいので、雪かき装置の構造が複雑とならず、また、重量も特に重くなることはない。そのため、雪かき装置における取り扱い上の利便性を維持させることができる。
よって、本発明によれば、取り扱いが便利であるとともに、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値を超えたことを容易に知ることができ、雪かき装置や取付部等の変形、破損を未然に防止できる雪かき装置を提供することができる。
【0008】
(2)(1)に記載された雪かき装置において、
前記使用可能表示部及び前記使用不可能表示部は、上下方向で互いに隣接して車両前面から車両側面まで帯状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、使用可能表示部及び使用不可能表示部は、上下方向で互いに隣接して車両前面から車両側面まで帯状に形成されているので、使用可能表示部が積雪によって完全に隠れたか否かを正確に識別することが、車両外方の各方向から容易となる。
その結果、積雪量が所定の基準値を超えたことを見逃す恐れが低減され、雪かき装置や取付部等の変形、破損をより一層確実に防止できる。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載された雪かき装置において、
前記使用可能表示部には、雪とコントラストのつきやすい濃い色を着色し、かつ、前記使用不可能表示部には、当該濃い色と区別しやすい明るい色を着色したことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、使用可能表示部には、雪とコントラストのつきやすい濃い色を着色し、かつ、使用不可能表示部には、当該濃い色と区別しやすい明るい色を着色したので、使用可能表示部が積雪によって完全に隠れたか否かを識別することが、より一層容易となる。
その結果、積雪量が所定の基準値を超えたことを見逃す恐れが更に低減され、雪かき装置や取付部等の変形、破損をより一層確実に防止できる。
【0012】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された雪かき装置において、
前記除雪板には、積雪した雪をかき取り可能に形成された雪かき部を有し、前記使用可能表示部は前記雪かき部に主に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、除雪板には、積雪した雪をかき取り可能に形成された雪かき部を有し、使用可能表示部は雪かき部に主に形成されているので、強度が必要な雪かき部を、除雪能力に対応した大きさでコンパクトに形成することができる。そのため、雪かき部に想定外の負荷がかかるのを未然に防止するとともに、雪かき装置全体の軽量化を促進することができる。
その結果、雪かき装置の軽量化に伴って、取扱い上の利便性をより一層高めると同時に、雪かき装置や取付部等の変形、破損をより一層確実に防止できる。
【0014】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された雪かき装置において、
前記車両前端の取付部には、進路上に置かれた障害物を排除する排障部を有する排障装置と前記雪かき装置とを交換可能に装着されることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、車両前端の取付部には、進路上に置かれた障害物を排除する排障部を有する排障装置と雪かき装置とを交換可能に装着されるので、雪かき装置の取扱い上の利便性をより一層高めることができる。例えば、首都圏を走行する電車のように、通常の運転時には排障装置を装着し、大雪時にのみ雪かき装置を装着する場合には、好都合である。
なお、除雪板と排障部とを交換することによって、雪かき装置から排障装置30へ簡単に切り替えることが、より一層好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、取り扱いが便利であるとともに、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値を超えたことを容易に知ることができ、雪かき装置や取付部等の変形、破損を未然に防止できる雪かき装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る雪かき装置を装着した鉄道車両の正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る雪かき装置を装着した鉄道車両の側面図である。
図3図1に示す雪かき装置の拡大正面図である。
図4図2に示す雪かき装置の拡大側面図である。
図5図3に示すA−A断面図である。
図6図3に示すB−B断面図である。
図7図3に示す雪かき装置を排障装置と取り替えた場合の拡大正面図である。
図8図3に示す雪かき装置を排障装置と取り替えた場合の拡大側面図である。
図9図3に示す雪かき装置と積雪量との関係を表す説明図である。
図10】特許文献1に記載された雪かき器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態に係る雪かき装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る雪かき装置の全体構成を説明し、その後、本雪かき装置と、取り替え可能に装着される排障装置との異同を説明する。最後に、本雪かき装置と積雪量との関係を説明する。
【0019】
<雪かき装置の全体構成>
まず、本実施形態に係る雪かき装置の全体構成について、図1図6を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る雪かき装置を装着した鉄道車両の正面図を示す。図2に、本発明の実施形態に係る雪かき装置を装着した鉄道車両の側面図を示す。図3に、図1に示す雪かき装置の拡大正面図を示す。図4に、図2に示す雪かき装置の拡大側面図を示す。図5に、図3に示すA−A断面図を示す。図6に、図3に示すB−B断面図を示す。
【0020】
図1図6に示すように、本実施形態に係る雪かき装置20は、除雪板2と車台カバー部23と左右連結部24と前連結部28とを備え、左右連結部24と前連結部28とを介して鉄道車両(車両)1の車両前端11に位置する取付部111に装着されている。
【0021】
除雪板2は、線路(進路)5上の所定高さに形成された雪かき部21と、雪かき部21の上方に形成された袴部22とから構成されている。雪かき部21は、側面視で上下方向中間部211が車両後方へ凹む略円弧状断面を有するように形成されている。また、雪かき部21は、平面視で車両前中央から車両後側方へ略V字状断面を有するように形成されている。雪かき部21の車両側端212は、車輪6の間隔より幅広く形成されている。雪かき部21の下端213は、水平状に形成されている。雪かき部21の上端214は、車両前中央が最も低く、車両後方へ行くにしたがって高く形成されている。そのため、雪かき部21は、線路5上に積雪した雪をかきとり、車両前中央から車両後側方へ排出するように形成されている。
【0022】
雪かき部21の上端214は、袴部22にボルト締め又は溶接等によって連接されている。袴部22は、上方が前方へ倒伏する傾斜面として形成され、平面視で車両前端11に沿って略コ字状に延設されている。また、袴部22における雪かき部21との連接部221には、略三角状の傾斜面が形成されている。この袴部22によって、雪かき部21がかき取った雪が車両内方へ侵入するのを防止できる。なお、袴部22の上端222は、水平状に形成されている。
【0023】
除雪板2の外周面には、線路5上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部3と、線路5上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部4とが形成されている。使用可能表示部3及び使用不可能表示部4は、上下方向で互いに隣接して車両前面から車両側面まで帯状に形成されている。使用可能表示部3と使用不可能表示部4との境界線KLは、水平状に形成されている。使用可能表示部3は、主に雪かき部21に形成され、使用不可能表示部4は、主に袴部22に形成されている。
【0024】
使用可能表示部3には、雪とコントラストのつきやすい濃い色を着色し、かつ、使用不可能表示部4には、当該濃い色と区別しやすい明るい色を着色している。雪とコントラストのつきやすい濃い色は、有彩色でも無彩色でもよい。例えば、濃い有彩色では、濃紺色、濃緑色、濃褐色などが該当し、濃い無彩色では、黒色、黒っぽい灰色などが該当する。濃い色と区別しやすい明るい色も、有彩色でも無彩色でもよい。例えば、明るい有彩色では、薄黄色、薄赤(ピンク)色、薄橙色などが該当し、明るい無彩色では、白色、白っぽい灰色などが該当する。なお、使用可能表示部3及び使用不可能表示部4の着色は、一色で形成しても、複数の色を用いて形成してもよい。また、使用可能表示部3及び使用不可能表示部4は、意匠上の見栄えを考慮した模様状に着色してもよい。
【0025】
車台カバー部23は、車台前方に突出する車両連結部112を挟んで車両前端11の左右両側に配置され、袴部22の上端222と分割可能にボルト締め等の締結手段によって連結されている。各車台カバー部23は、袴部22の倒伏する傾斜面と略同一面上に形成され、平面視で略L字状に延設されている。車台カバー部23の上端内方には、鍔部231が形成されている。なお、車台カバー部23と袴部22とを、上述のように分割可能に形成してもよいが、一体に形成してもよい。
【0026】
左右連結部24は、車台カバー部23と取付部111とを車両前方及び側方で連結する部材である。左右連結部24には、車台カバー部23の鍔部231と連接された縦壁部241と、車両前端11に位置する取付部111に装着される横壁部242とを備えている。横壁部242には、異なる外径を有する2種類の締付孔26b、27bが穿設されている。左右連結部24は、上記2種類の締付孔26b、27bに挿通する2種類の締付ボルト26a、27aを介して取付部111に締結されている。ここで、2種類の締付ボルト26a、27aの内、小径の締付ボルト26aは、後述する排障装置30の締付ボルト26aと同一の外径であって、取付部111における排障装置30の締結位置と同一の位置に締結されている。なお、大径の締付ボルト27aは、雪かき部21に作用する外力に対応して補強用に適宜追加されている。
【0027】
前連結部28は、除雪板2の袴部22と取付部111とを連結する略L字状部材である。前連結部28は、車両中央付近の左右対称位置に各1つ配置されている。前連結部28は、除雪板2の車両中央付近の垂れ下りを防止するように形成されている。
【0028】
<雪かき装置と排障装置との異同>
次に、本雪かき装置と、取り替え可能に装着される排障装置との異同を、図7図8を用いて説明する。図7に、図3に示す雪かき装置を排障装置と取り替えた場合の拡大正面図を示す。図8に、図3に示す雪かき装置を排障装置と取り替えた場合の拡大側面図を示す。
【0029】
図7図8に示すように、排障装置30は、線路(進路)上に置かれた障害物を排除する装置であって、排障板31と左右連結部32と前連結部33とを備え、左右連結部32と前連結部33とを介して鉄道車両(車両)1の車両前端11に位置する取付部111に装着されている。
【0030】
排障板31は、線路(進路)5上の所定高さに形成された排障部311と、排障部311の上方に形成された車台カバー部312とから構成されている。排障部311は、軽量化して取り付け作業等を容易化するため、車両前面中央に配置される中央排障部3111と車両前面側方に配置される側方排障部3112とを、分割可能に締付ボルト29aによって連結されている。排障部311の下端313は、雪かき装置20の雪かき部21の下端213より高い位置に設定されている。また、排障板31は、雪かき装置20の除雪板2と異なり、上方が前方へ倒伏する平坦な傾斜面で形成され、また、車両前端11に沿って略コ字状に延設されている。また、排障板31の車台カバー部312は、雪かき装置20の車台カバー部23と略同様の大きさで形成され、車台前方に突出する車両連結部112を挟んで車両前端11の左右両側に配置されている。排障部311と車台カバー部312とは、分割可能にボルト締め等の締結手段によって連結されている。そのため、雪かき装置20の除雪板2と排障部311とを交換することによって、雪かき装置20から排障装置30へ簡単に切り替えることができる。この場合、排障部311と車台カバー部312との締結手段と、袴部22と車台カバー部23との締結手段の一部又は全部とを共通化することによって、排障装置30と雪かき装置20との交換作業の利便性を更に向上させることができる。なお、袴部22と車台カバー部23との締結手段には、雪かき部21に作用する外力に対応して補強手段を適宜追加すると良い。また、雪かき装置20において、車台カバー部23と袴部22とを一体に形成する場合には、排障装置30における排障部311と車台カバー部312とを、一体に形成してもよい。
【0031】
左右連結部32は、車台カバー部312と取付部111とを車両前方及び側方で連結する部材である。左右連結部32は、雪かき装置20の左右連結部24と略同様の大きさに形成され、小径の締付ボルト26aのみを使用する点が相違する。また、前連結部33は、排障板31の側方排障部3112と取付部111とを連結する略L字状部材である。前連結部33は、雪かき装置20の前連結部28と略同様の大きさに形成され、取付部111に締結する位置及び締付ボルトは共通している。
【0032】
以上のように、雪かき装置20と排障装置30とは、除雪板2と排障部311との形状が相違し、雪かき装置20に大径の締付ボルト27aを適宜追加するものの、車台カバー部23、312、左右連結部24、32及び前連結部28、33の形状を共通化させ、更に左右連結部24、32及び前連結部28、33を取付部111に締結する位置及び締付ボルト26aが共通化されている。そのため、排障装置30と雪かき装置20との交換作業の利便性が向上されている。
【0033】
<雪かき装置と積雪量との関係>
次に、本雪かき装置と積雪量との関係について、図9を用いて説明する。図9に、図3に示す雪かき装置と積雪量との関係を表す説明図を示す。図9(a)は、線路上に積雪が無い通常の状態を示す。図9(b)は、線路上に所定の基準値以下の積雪があり、雪かき装置を装着して運転可能な状態を示す。図9(c)は、線路上に所定の基準値以上の積雪があり、雪かき装置を装着して運転不可能な状態を示す。
【0034】
図9(a)に示すように、除雪板2の外周面には、使用可能表示部3及び使用不可能表示部4が、上下方向で互いに隣接して車両前面から車両側面まで帯状に形成されている。線路上には積雪が無いので、車両外方から使用可能表示部3及び使用不可能表示部4の全体を目視することができる。
【0035】
次に、図9(b)に示すように、線路上に所定の基準値以下の積雪がある場合、使用可能表示部3の上方部は、雪に覆われていないので、車両外方から目視することができる。使用可能表示部3には、雪とコントラストのつきやすい濃い色が着色されているので、雪に覆われていない使用可能表示部3の上方部の範囲が狭くても、使用可能表示部3を簡単に識別することができる。したがって、使用可能表示部3が積雪によって完全に隠れたか否かを識別することが、より一層容易となる。
【0036】
次に、図9(c)に示すように、線路上に所定の基準値以上の積雪がある場合、使用可能表示部3は完全に雪に覆われ、車両外方から使用不可能表示部4のみを目視することができる。使用不可能表示部4には、使用可能表示部3に着色された濃い色と区別しやすい明るい色が着色されているので、使用可能表示部3と使用不可能表示部4とを簡単に識別することができる。したがって、使用可能表示部3が積雪によって完全に隠れたか否かを識別することが、より一層容易となる。
【0037】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る雪かき装置20によれば、除雪板2の外周面には、線路5上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部3と、積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部4とを形成したので、進路上に積雪した雪が、除雪板2の使用可能範囲内であるか又は使用不可能範囲に到達しているかを、車両外方から目視することができる。そのため、除雪板2を車両外方から目視して、積雪量が使用不可能表示部4の範囲に到達している場合には、雪かき装置20を使用しないという判断を迅速かつ簡単に行うことができ、雪かき装置20や車両前端11の取付部111等の変形、破損を未然に防止できる。
また、除雪板2には、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値以下であることを表わす使用可能表示部3と、積雪量が所定の基準値以上であることを表す使用不可能表示部4とを形成するだけでよいので、雪かき装置20の構造が複雑とならず、また、重量も特に重くなることはない。そのため、雪かき装置20における取り扱い上の利便性を維持させることができる。
よって、本実施形態によれば、取り扱いが便利であるとともに、進路上に積雪した雪の積雪量が所定の基準値を超えたことを容易に知ることができ、雪かき装置20や取付部111等の変形、破損を未然に防止できる雪かき装置20を提供することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、使用可能表示部3及び使用不可能表示部4は、上下方向で互いに隣接して車両前面から車両側面まで帯状に形成されているので、使用可能表示部3が積雪によって完全に隠れたか否かを正確に識別することが、車両外方の各方向から容易となる。
その結果、積雪量が所定の基準値を超えたことを見逃す恐れが低減され、雪かき装置20や取付部111等の変形、破損をより一層確実に防止できる。
【0039】
また、本実施形態によれば、使用可能表示部3には、雪とコントラストのつきやすい濃い色を着色し、かつ、使用不可能表示部4には、当該濃い色と区別しやすい明るい色を着色したので、使用可能表示部3が積雪によって完全に隠れたか否かを識別することが、より一層容易となる。
その結果、積雪量が所定の基準値を超えたことを見逃す恐れが更に低減され、雪かき装置20や取付部111等の変形、破損をより一層確実に防止できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、除雪板2には、積雪した雪をかき取り可能に形成された雪かき部21を有し、使用可能表示部3は雪かき部21に主に形成されているので、強度が必要な雪かき部21を、除雪能力に対応した大きさでコンパクトに形成することができる。そのため、雪かき部21に想定外の負荷がかかるのを未然に防止するとともに、雪かき装置全体の軽量化を促進することができる。
その結果、雪かき装置20の軽量化に伴って、取扱い上の利便性をより一層高めると同時に、雪かき装置20や取付部111等の変形、破損をより一層確実に防止できる。
【0041】
また、本実施形態によれば、車両前端11の取付部111には、進路上に置かれた障害物を排除する排障部311を有する排障装置30と雪かき装置20とを交換可能に装着されるので、雪かき装置20の取扱い上の利便性をより一層高めることができる。例えば、首都圏を走行する電車のように、通常の運転時には排障装置30を装着し、大雪時にのみ雪かき装置20を装着する場合には、好都合である。
なお、除雪板2と排障部311とを交換することによって、雪かき装置20から排障装置30へ簡単に切り替えることができる。
【0042】
以上、本発明の雪かき装置に係る実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、雪かき装置20は、鉄道車両1に使用する場合を説明したが、必ずしも鉄道車両に限る必要はなく、例えば、自動車等に使用してもよい。
また、本実施形態では、使用可能表示部3には、雪とコントラストのつきやすい濃い色を着色し、かつ、使用不可能表示部4には、当該濃い色と区別しやすい明るい色を着色したが、必ずしも上記着色に限る必要はない。例えば、使用可能表示部3と使用不可能表示部4との間に明確な境界線を形成したり、段差を設けたり、傾斜角を設けたりすることによって両者を区別し、目視による判定を容易にすることもできる。更に、上記目視による判定に加えて、雪かき装置20に圧力センサー等を設置し、雪の抵抗を検出して警報を発することによって注意を促すことも可能である。
また、雪かき装置20の着雪を簡単に落とす方法として、除雪板2等の外周面にフッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)の塗料を塗布することも考えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 鉄道車両(車両)
2 除雪板
3 使用可能表示部
4 使用不可能表示部
5 線路(進路)
6 車輪
11 車両前端
20 雪かき装置
21 雪かき部
22 袴部
23 車台カバー部
24 左右連結部
28 前連結部
26a、27a 締付ボルト
26b、27b 締付孔
30 排障装置
111 取付部
112 車両連結部
KL 境界線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10