【実施例】
【0025】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0026】
以下、本発明の効果が最も顕著に現れる亜鉛めっきを主体とした実施例により本発明を説明する。試験として、まず試験片に対して脱脂、酸浸漬などの適当な前処理を行い、亜鉛めっき(ハイパージンク;日本表面化学株式会社製)を施し、低濃度の硝酸に浸漬することによる適切な前処理を施した後に、三価クロム化成皮膜処理液による処理を行った。処理液のpH調整は硫酸、硝酸、塩酸から選択される適切な酸及び水酸化ナトリウムにより行った。
めっきの膜厚は8〜10μm、耐食性評価はJIS Z 2371に従う塩水噴霧試験で行った。また、耐傷性評価は処理後の試験片に対しカッターナイフでX字に傷をつけたものをJIS Z 2371に従う塩水噴霧試験で行った。ここで、各条件あたり試験片数を5点もしくは10点投入して塩水噴霧試験の耐食性及び耐傷性を確認した。この際に、規定時間時の状態として「全品腐食無しなら○」「一部点数に腐食が発生なら△」「全品腐食発生なら×」と評価した。
各処理液の安定性については処理後に放置し沈殿の発生や濁りが無いかを確認した。安定性の評価基準で、「沈殿の発生や濁りが無いなら〇」とした。
【0027】
(実施例1)
亜鉛めっきを施した鉄板(表面積1dm
2)を、硝酸クロムをクロム濃度として3g/L、乳酸チタンをチタンとして1g/L、バナジン酸アンモニウムをバナジウムとして3g/L、有機酸としてマロン酸を5g/Lおよびシュウ酸を5g/L含み、硝酸根が20g/Lになるように硝酸ソーダを添加し、温度30℃、pH2.0に調整した三価クロム化成皮膜処理液に30秒浸漬し、耐食性、耐傷性および外観を評価した。さらに処理液を室温で48時間放置した後の安定性を評価し、その時点で再度試験を行い、耐食性、耐傷性、外観を評価した。
【0028】
(実施例2〜5)
実施例1のバナジウムの代わりに表1に示す遷移金属化合物を使用して実施例1と同条件で試験を行った。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例6〜16)
実施例1のシュウ酸の代わりに表2に示す有機酸を使用して実施例1と同条件で試験を行った。
【0031】
【表2】
【0032】
(実施例17〜27)
実施例1のマロン酸の代わりに表3に示す有機酸を使用して実施例1と同条件で試験を行った。
【0033】
【表3】
【0034】
(実施例28〜37)
実施例1の化成皮膜処理液中の各濃度条件を表4に示すように変化させて試験を行った。
【0035】
【表4】
【0036】
(実施例38〜41)
実施例38〜41については、実施例1において、pH1.5(実施例38)、pH2.0(実施例39)、pH2.5(実施例40)、pH3.0(実施例41)で実施した。
【0037】
(実施例42〜44)
実施例42〜44については、実施例1において、温度20℃(実施例42)、40℃(実施例43)、50℃(実施例44)で実施した。
【0038】
(実施例45〜47)
実施例45〜47については、実施例1において、20秒(実施例45)、60秒(実施例46)、90秒(実施例47)で実施した。
【0039】
(比較例1)
比較例1:亜鉛めっきを施した鉄板(表面積1dm
2)を、市販の亜鉛めっき用三価クロム化成皮膜処理剤(TR−173A:製品名、日本表面化学株式会社製、三価クロム、硝酸イオン、有機酸及びコバルトを含み、チタンおよび他の遷移金属化合物を含まない。TR−173A:200mL/L)を温度30℃、pH2.0に調整した処理液に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、耐食性、耐傷性および外観を評価した。
【0040】
(比較例2)
比較例2として、三価クロム黒色化成皮膜処理液から乳酸チタンを抜いた処理液を用いた以外は実施例1と同条件で試験を行った。
【0041】
(比較例3〜7)
比較例3〜7として、乳酸チタンを表5に示すチタン化合物に置き換えた以外は実施例1と同条件で試験を行った。
【0042】
【表5】
【0043】
(比較例8)
比較例8として、三価クロム黒色化成皮膜処理液からバナジン酸アンモニウムを抜いた以外は実施例1と同条件で試験を行った。
【0044】
(比較例9)
比較例9として、三価クロム黒色化成皮膜処理液から乳酸チタン、バナジン酸アンモニウムを抜いた以外は実施例1と同条件で試験を行った。
【0045】
(比較例10〜20)
比較例10〜20として、比較例9のマロン酸を表6に示す有機酸に置き換えた以外は比較例9と同条件で試験を行った。
【0046】
【表6】
【0047】
実施例1〜47、比較例1〜20について、外観及び耐食性、耐傷性を評価した。評価結果を表7に示す。
【0048】
【表7-1】
【0049】
【表7-2】
【0050】
実施例1〜47、比較例1〜20について、処理液を48時間放置後の外観及び耐食性、耐傷性を評価した。評価結果を表8に示す。
【0051】
【表8-1】
【0052】
【表8-2】
【0053】
実施例1及び比較例3についてそれぞれの三価クロム化成皮膜処理液1Lに対し、適宜、処理液を補給しながら1000枚の亜鉛めっきを施した鉄板(表面積1dm
2)を処理した。当該処理後の処理液について、耐食性、耐傷性、処理外観、処理液の安定性の評価結果を表9〜11に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
【表10】
【0056】
【表11】