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特開2016-132852シュープレスベルト及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-132852(P2016-132852A)
(43)【公開日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】シュープレスベルト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/00 20060101AFI20160627BHJP
【FI】
   D21F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-18827(P2015-18827)
(22)【出願日】2015年1月16日
(71)【出願人】
【識別番号】000180597
【氏名又は名称】イチカワ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山中 千枝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】高森 裕也
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CE79
4L055FA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シュープレスベルトの機械的特性、特に耐摩耗性に優れたシュープレスベルト及びシュープレスベルトの製造方法の提供。
【解決手段】抄紙機に使用されるシュープレスベルト1であって、樹脂層22により構成され、かつフェルトと接触する外周層表面222有し、外周層表面222が、イソシアネート化合物を含有する組成物25を、半製品外周層表面221に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層22の一部が改質された表面処理層24によって形成されているシュープレスベルト1。イソシアネート化合物の塗布量が10〜200g/mであり、表面処理層24の厚さが5〜300μmであるシュープレスベルト。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機に使用されるシュープレスベルトであって、樹脂層により構成され、かつフェルトと接触する外周層表面及びシューと接触する内周層表面を有し、外周層表面及び内周層表面の何れか一方又は両方が、イソシアネート化合物を含有する組成物を、半製品外周層表面及び半製品内周層表面の何れか一方又は両方に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層によって形成されている、前記シュープレスベルト。
【請求項2】
イソシアネート化合物が、ポリメリックMDIを含有するイソシアネート化合物である、請求項1に記載のシュープレスベルト。
【請求項3】
イソシアネート化合物の塗布量が、10g/m以上200g/m以下である、請求項1又は2に記載のシュープレスベルト。
【請求項4】
表面処理層の厚みが、5μm以上300μm以下である、請求項1〜3に記載のシュープレスベルト。
【請求項5】
樹脂層がポリウレタン樹脂層である、請求項1〜4に記載のシュープレスベルト。
【請求項6】
抄紙機に使用されるシュープレスベルトの製造方法であって、フェルトと接触する側の半製品外周層表面及びシューと接触する側の半製品内周層表面の何れか一方又は両方を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を半製品外周層表面及び半製品内周層表面の何れか一方又は両方に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有する前記シュープレスベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機に使用されるシュープレスベルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料から水分を除去する抄紙機は、一般的にワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートを備える。これらワイヤーパート、プレスパート、及びドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。
【0003】
湿紙は、ワイヤーパート、プレスパート、及びドライヤーパートそれぞれに備えられた抄紙用具に次々と受け渡されながら搬送されると共に水分が除去され、最終的にはドライヤーパートで乾燥される。これら各々のパートでは、湿紙を脱水し(ワイヤーパート)、搾水し(プレスパート)、そして乾燥する(ドライヤーパート)といった各機能に対応した抄紙用具が使用されている。
【0004】
プレスパートでは、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設された1つ以上のプレス装置を具備することが一般的である。各プレス装置には、無端状のフェルトが配置され、あるいは有端状のフェルトを抄紙機上で連結し無端状に形成したフェルトが配置される。そしてプレス装置は、対向する一対のロールからなるロールプレス機構、あるいはロールに対向する凹型形状のシューとの間に無端状のシュープレスベルトを介在させたシュープレス機構を有している。湿紙を載置したフェルトは、湿紙の搬送方向に沿って移動しつつ、ロールプレス機構あるいはシュープレス機構を通過し、加圧されることにより、フェルトにその水分を連続的に吸収させるか、あるいはフェルト内を通過させて外部へ排出させることで、湿紙から水分を搾水している。
【0005】
シュープレスベルトは、樹脂に補強基材が埋設され、この樹脂がフェルトと接触する外周層及びシューと接触する内周層を構成している。そして、シュープレスベルトは、加圧されたロールとシューとの間を繰返し走行する為、シュープレスベルトの樹脂には、耐摩耗性、耐クラック性、耐屈曲疲労性、耐熱性等の機械的特性が要求され、これらの要求特性を向上させるために、シュープレスベルトの樹脂についていくつかの検討がなされている(例えば特許文献1〜4)。
【0006】
特許文献1〜3においては、ポリウレタンについて、特定のイソシアネートと硬化剤を選択することにより、耐熱性、耐クラック性、耐屈曲疲労性、耐摩耗性等の機械的特性を向上させたベルトが検討されている。特許文献4においては、ベルトの樹脂表面に溶射技術を利用してコーティング層を形成することで、摩耗耐性、熱耐性、酸化耐性、化学的耐性等の機械的特性を向上させたベルトが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2012−511611号公報
【特許文献2】特開2008−111220号公報
【特許文献3】特開2002−146694号公報
【特許文献4】特表2008−536016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1乃至3に記載されるシュープレスベルトは、単独で選択される樹脂によって製造されたシュープレスベルトの機械的特性には限界があり、また前記特許文献4に記載されるシュープレスベルトは、溶射技術の加工難易度が高く、加工の均一性に不安があり、また溶射によるエネルギーにより樹脂劣化を招く虞がある。そして、このような状況下、紙の生産性向上に起因した運転速度の高速化やプレス部の高圧化等に伴い、益々抄紙機の運転条件が過酷となる中、更なるシュープレスベルトの機械的特性のより一層の向上が求められている。
【0009】
従って、本発明の目的は、シュープレスベルトの機械的特性、特に耐摩耗性や耐薬品性に優れたシュープレスベルト及びシュープレスベルトの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、シュープレスベルト表面が、イソシアネート化合物を含有する組成物をシュープレスベルトの半製品表面に塗布し、硬化処理を行うことによって、樹脂層の一部が改質された表面処理層によって形成されることにより、優れた耐久性、特に耐摩耗性や耐薬品性を発揮することを見いだし、本発明に至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下に関する。
(1) 抄紙機に使用されるシュープレスベルトであって、樹脂層により構成され、かつフェルトと接触する外周層表面及びシューと接触する内周層表面を有し、外周層表面及び内周層表面の何れか一方または両方が、イソシアネート化合物を含有する組成物を、半製品外周層表面及び半製品内周層表面の何れか一方又は両方に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層によって形成されている、前記シュープレスベルト。
(2) イソシアネート化合物が、ポリメリックMDIを含有するイソシアネート化合物である、(1)に記載のシュープレスベルト。
(3) イソシアネート化合物の塗布量が、10g/m以上200g/m以下である、(1)又は(2)に記載のシュープレスベルト。
(4) 表面処理層の厚みが、5μm以上300μm以下である、(1)〜(3)に記載のシュープレスベルト。
(5) 樹脂層がポリウレタン樹脂層である、(1)〜(4)に記載のシュープレスベルト。
【0012】
(6) 抄紙機に使用されるシュープレスベルトの製造方法であって、フェルトと接触する側の半製品外周層表面及びシューと接触する側の半製品内周層表面の何れか一方又は両方を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を半製品外周層表面及び半製品内周層表面の何れか一方又は両方に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有する前記シュープレスベルトの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成により、シュープレスベルトの機械的特性、特に耐摩耗性や耐薬品性に優れたシュープレスベルト及びシュープレスベルトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトの一例を示す機械横断方向断面図である。
図2図2は、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトの別の一例を示す機械横断方向断面図である。
図3図3は、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトの更に別の一例を示す機械横断方向断面図である。
図4図4は、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトの更に別の一例を示す機械横断方向断面図である
図5図5は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態の一部を説明する概略図である。
図6図6は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態の一部を説明する概略図である。
図7図7は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態の一部を説明する概略図である。
図8図8は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態の一部を説明する概略図である。
図9図9は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態の一部を説明する概略図である。
図10図10は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態の一部を説明する概略図である。
図11図11は、本発明のシュープレスベルトの耐摩耗性評価の評価装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明のシュープレスベルト及びシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明のシュープレスベルトについて説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態に係るシュープレスベルトの一例を示す機械横断方向断面図であり、図1(a)は、半製品のシュープレスベルト1’の状態を、図1(b)は完成品のシュープレスベルト1の状態を示す。なお、図中、各部材は、説明の容易化のため適宜大きさが強調されており、実際の各部材の比率及び大きさが示されているものではない。ここで、上記機械横断方向については(Cross Machine Direction)、「CMD」ともいい、また、機械方向(Machine Direction)については、「MD」ともいう。
【0017】
図1に示すシュープレスベルト1は、抄紙機のプレスパートにおいて、フェルトと協働して湿紙を搬送し、湿紙から水分を搾水するために用いられるものである。シュープレスベルト1は、無端状の帯状体をなしている。即ち、シュープレスベルト1は環状のベルトである。そして、シュープレスベルト1は、通常、その周方向が抄紙機の機械方向(MD)に沿うようにして配置されるものである。
【0018】
図1(a)に示す半製品のシュープレスベルト1’は、補強繊維基材層21と、補強繊維基材層21の外表面側にある一方の主面に設けられた第1の樹脂層の前駆体(フェルトと接触する側の半製品外周層表面221を有する樹脂層)22aと、補強繊維基材層21の内表面側にある他方の主面に設けられた第2の樹脂層(シューと接触する内周層表面232を有する樹脂層)23とを有し、これらの層が積層されて形成されている。
【0019】
補強繊維基材層21は、補強繊維基材211と、樹脂212とによって構成されている。樹脂212は、補強繊維基材211中の繊維の間隔を埋めるように補強繊維基材層21中に存在している。即ち、樹脂212の一部は、補強繊維基材211に含浸しており、一方で、補強繊維基材211は、樹脂212中に埋設されている。
【0020】
補強繊維基材211としては、特に限定されないが、例えば、経糸と緯糸とを織機等により製織した織物が一般的に使用される。また、製織せずに、経糸列と緯糸列の重ね合わせによる格子状素材を使用することもできる。
補強繊維基材211を構成する繊維の繊度は、特に限定されないが、例えば300〜10000dtex、好ましくは、500〜6000dtexとすることができる。
また、補強繊維基材211を構成する繊維の繊度は、その繊維を用いる部位によって異なっていてもよい。例えば、補強基材211の経糸と緯糸とでそれらの繊度が異なっていてもよい。
【0021】
補強繊維基材211の素材としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、脂肪族ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612等)、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、羊毛、綿、金属等を1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
樹脂212の材料としては、ウレタン、エポキシ、アクリル等熱硬化性樹脂、又はポリアミド、ポリアリレート、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、好適にはウレタン樹脂を使用することができる。
【0023】
樹脂212に用いられるウレタン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、芳香族或いは脂肪族ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、活性水素基を有する硬化剤と共に硬化させて得られるウレタン樹脂とすることができる。また、水系ウレタン樹脂を使用することができる。この場合、架橋剤を水系ウレタン樹脂と共に併用して、水系ウレタン樹脂を架橋することも可能である。
【0024】
また、樹脂212に、酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、マイカなどの、無機充填剤を1種又は2種以上を組み合わせて含有させてもよい。
【0025】
なお、補強繊維基材層21中における樹脂212の組成及び種類は、補強繊維基材層21中の部位ごとに異なるものであってもよいし、同一であってもよい。
【0026】
第1の樹脂層の前駆体22aを構成する樹脂材料としては、上述したような補強繊維基材層21に用いることのできる樹脂材料を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。第1の樹脂層22を構成する樹脂材料と、補強繊維基材層21を構成する樹脂とは、種類及び組成について、同一であっても異なるものであってもよい。
【0027】
特に、第1の樹脂層の前駆体22aを構成する樹脂材料としては、機械的強度、耐摩耗性、柔軟性の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
また、第1の樹脂層の前駆体22aは、補強繊維基材層21と同様に、無機充填剤を1種又は2種以上含むものであってもよい。
なお、第1の樹脂層の前駆体22a中における樹脂材料及び無機充填剤の組成及び種類は、第1の樹脂層の前駆体22a中の部位ごとに異なるものであってもよいし、同一であってもよい。
【0028】
また、第1の樹脂層の前駆体22aは、水を透過しない性質を有することが望ましい。即ち、第1の樹脂層の前駆体22aは、水不透過性であることが好ましい。
【0029】
第2の樹脂層(シューと接触する内周層表面232を有する樹脂層)23は、補強繊維基材層21の一方の主面に設けられた、主として樹脂材料で構成される層である。
第2の樹脂層23は、補強繊維基材層21に接合する主面とは反対側の主面において、シューと接触するための内周層表面232を構成している。シュープレスベルト1は、使用時において、シューと接触する内周層表面232がシューにより加圧され、シューに対向するロールと協働して、湿紙、フェルト、シュープレスベルトを加圧することで、湿紙から水分を脱水している。
【0030】
第2の樹脂層23を構成する樹脂材料としては、上述したような補強繊維基材層21に用いることのできる樹脂材料を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。第2の樹脂層23を構成する樹脂材料は、第1の樹脂層の前駆体22a又は補強繊維基材層21を構成する樹脂材料と、種類及び組成について、同一であっても異なるものであってもよい。
【0031】
特に、第2の樹脂層23を構成する樹脂材料としては、機械特性、耐摩耗性、柔軟性の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
また、第2の樹脂層23は、補強繊維基材層21と同様に無機充填剤を1種又は2種以上含むものであってもよい。
なお、第2の樹脂層23中における樹脂材料及び無機充填剤の組成及び種類は、第2の樹脂層23中の部位ごとに異なるものであってもよいし、同一であってもよい。
【0032】
図1(b)に示すシュープレスベルト1は、図1(a)に示した半製品のシュープレスベルト1’の半製品外周層表面221上に、イソシアネート化合物を含有する組成物25を塗布し、硬化処理を行うことによって、少なくとも半製品外周層表面221を含む第1の樹脂層の前駆体22aの一部が改質された改質表面処理層24を形成している。即ち、第1の樹脂層22は、改質表面処理層24と第1の樹脂層の前駆体22aによって形成されている。
【0033】
なお、前記硬化処理とは、例えば、風乾、加熱処理を行った後、ヒドロキシル基またはアミノ基を持つ化合物で残存イソシアネート化合物を失活させ、更にこれを風乾、加熱処理を行うことをいう。
【0034】
改質表面処理層24は、第1の樹脂層の前駆体22aに接合する境界面とは反対側の主面において、フェルトと接触する外周層表面222を構成している。即ち、シュープレスベルト1は、改質表面処理層24の外周層表面222において、フェルトを介して湿紙を担持し、湿紙を搬送し、湿紙から水分を脱水することができる。
【0035】
イソシアネート化合物を含有する組成物の塗布層25における、イソシアネート化合物を含有する組成物としては、特に限定されないが、例えばポリメリックMDI、モノメリックMDI、TDI、PPDI、HDI、IPDIおよびこれらの変性物が使用でき、好ましくは、ポリメリックMDIを使用することができる。
また、ヒドロキシル基またはアミノ基を持つ化合物は特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ペンタフルオロプロパノール、プロパンジオール、ブタンジオール、水およびアンモニア水が使用でき、好ましくは、エタノール、プロパノール、水を使用することができる。
【0036】
イソシアネート化合物を含有する組成物は、半製品外周層表面に対し、10〜200g/m、好ましくは、30〜150g/m塗布することができる。こうすることで、積層体1aの外周層表面が改質され、硬度が上昇し、摩耗抵抗が低下することで、耐摩耗性を向上することができる。
【0037】
またこの場合、改質表面処理層の厚みを5〜300μm、好ましくは10〜250μmとすることができ、例えば、シュープレスベルトの厚み方向において、外周層表面部は耐摩耗性に優れ、内部は耐クラック性に優れるといった機械的特性を有するシュープレスベルトを形成することも可能である。
【0038】
上述したようなシュープレスベルト1の寸法は、特に限定されず、その用途に合わせて適宜設定することができる。
例えば、シュープレスベルト1の巾は、特に限定されないが、700〜13500mm、好ましくは2500〜12500mmとすることができる。
また例えば、シュープレスベルト1の長さ(周長)は、特に限定されないが150〜600cm、好ましくは、200〜500cmとすることができる。
【0039】
また、シュープレスベルト1の厚さは、特に限定されないが、例えば、1.5〜7.0mm、好ましくは2.0〜6.0mmとすることができる。
また、シュープレスベルト1は、部位ごとにそれぞれ厚さが異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0040】
以上のようなシュープレスベルト1は、後述する本発明のシュープレスベルトの製造方法により製造可能である。
【0041】
以上、本実施形態に係るシュープレスベルト1は、耐摩耗性や耐薬品性を向上させることができる。
【0042】
上述したシュープレスベルト1の変形例として、例えば図2に示すシュープレスベルト1は、図1(b)に示すシュープレスベルト1の第2の樹脂層23を第2の樹脂層の前駆体とし、そしてシューと接触する内周層表面232をシューと接触する側の半製品内周層表面231とすることで、この半製品内周層表面231上に、イソシアネート化合物を含有する組成物27を塗布し、硬化処理を行うことによって、少なくとも半製品内周層表面231を含む第2の樹脂層の一部が改質された改質表面処理層26を形成している。即ち第2の樹脂層23は、改質表面処理層26と第2の樹脂層の前駆体によって形成されている。イソシアネート化合物を含有する組成物の塗布層27における、イソシアネート化合物を含有する組成物としては、特に限定されないが、イソシアネート化合物を含有する組成物の塗布層25と同種のものを使用できる。
【0043】
改質表面処理層26は、第2の樹脂層の前駆体に接合する境界面とは反対側の主面において、シューと接触する内周層表面232を構成している。シュープレスベルト1は、使用時において、シューと接触する内周層表面232がシューにより加圧され、シューに対向するロールと協働して、湿紙、フェルト、シュープレスベルトを加圧することで、湿紙から水分を脱水している。
【0044】
また上述したシュープレスベルト1の変形例として、例えば図3に示すシュープレスベルト1は、図1(b)に示すシュープレスベルト1の外周層表面222に排水溝241を形成し、排水溝ランド部242において、少なくとも半製品外周層表面221を含む第1の樹脂層の前駆体22aの一部が改質された改質表面処理層24を形成している。
【0045】
更にまた上述したシュープレスベルト1の変形例として、例えば図4に示すシュープレスベルト1は、図3に示したシュープレスベルト1の半製品外周層表面221、溝壁223及び溝底224上に、イソシアネート化合物を含有する組成物を塗布し、硬化処理を行うことによって、少なくとも半製品外周層表面221、溝壁223及び溝底224を含む第2の樹脂層の前駆体23aの一部が改質された改質表面処理層24を形成している。
【0046】
図3及び図4に例示したシュープレスベルト1は排水溝を形成することで、湿紙からより多くの水分を脱水することができる。排水溝の形態としては特に限定されないが、通常一般的に、シュープレスベルトの機械方向に平行で連続的な複数の溝が形成される。例えば溝巾が、0.5〜2.0mm、溝深さが0.4〜2.0mm、溝本数が5〜20本/inchと設定することができる。また溝の断面形状は、矩形型、台形型、U字型、或いはランド部及び溝底部と溝壁の接する部位に丸みを持たせる等、適宜設定することができる。
また、これらの排水溝の形態は、溝の巾、深さ、本数、断面形状について、同一のものとしてもよいし、異なるものを組み合わせて形成してもよい。更にまた、これらの排水溝については、不連続として形成してもよいし、機械横断方向に平行な複数の溝として形成されてもよい。
【0047】
以上、図2図4に例示された、本実施形態に係るシュープレスベルト1は、図1に例示されたシュープレスベルト1と同様、改質表面処理層において、耐摩耗性や耐薬品性を向上させることができる。
【0048】
また、前述した実施形態においては、シュープレスベルト1における改質表面処理層24及び改質表面処理層26は、第1の樹脂層22及び第2の樹脂層23の外周面全面に設けられているものとして説明したが、これに限定されず、ロールとシューとによって加圧される領域のみが上述した所定の改質表面処理層を有するものであってもよい。
また、適宜シュープレスベルトには、用いられる抄紙機の構成に合わせて、タブ等を設けることができる。
【0049】
次に、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態について説明する。図5乃至図10は、本発明のシュープレスベルトの製造方法の好適な実施形態を説明する概略図である。
【0050】
本発明の実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法は、フェルトを介して湿紙を担持し、湿紙を搬送し、湿紙から水分を脱水するためのシュープレスベルトの製造方法であって、半製品外周層表面及び半製品内周層表面の何れか一方又は両方を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を半製品外周層表面及び半製品内周層表面の何れか一方又は両方に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有する。
【0051】
本発明の第1実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法として、半製品外周層表面を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を、半製品外周層表面に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有するシュープレスベルトの製造方法について説明する。
【0052】
まず、半製品外周層表面を有する樹脂層形成工程においては、樹脂層を形成する。本工程においては、具体的には、環状かつ帯状の補強繊維基材211が樹脂材料中に埋設された補強繊維基材層21と、その両面に樹脂層としての第1の樹脂層の前駆体22aと第2の樹脂層23とが積層した積層体1’aを形成する。
【0053】
このような積層体1’aの形成はいかなる方法であってよいが、本実施形態においては、第2の樹脂層23を形成し、第2の樹脂層23の一方の表面に補強繊維基材211を配置し、補強繊維基材211に樹脂材料を塗布、含浸、貫通させ、補強繊維基材層21と第2の樹脂層23とが一体化した積層体を形成し、次に補強繊維基材層21と第2の樹脂層23の接着面に対向する補強繊維基材層21の表面に、第1の樹脂層の前駆体22aを形成する。
【0054】
具体的には、例えば、まず、図5に示すように、第2の樹脂層23は、離型剤を表面に塗布したマンドレル38に、マンドレル38を回転させながら樹脂材料をマンドレル表面に0.8〜3.5mmの厚みに形成されるように塗布し、該樹脂材料塗布層を40〜140℃に昇温し、0.5〜1時間かけて前硬化させて形成される。
【0055】
そして、その上から補強繊維基材を配置し(図示せず)、図6に示すように該マンドレル38を回転させながら補強繊維基材層21を形成する樹脂材料を0.5〜2.0mm塗布し、補強繊維基材に含浸、貫通させると共に前記第2の樹脂層23と接着させ、補強繊維基材層21と第2の樹脂層23とが一体化された積層体が形成される。
【0056】
しかる後に、図7に示すように該マンドレル38を回転させながら第1の樹脂層の前駆体22aを形成する樹脂材料を、前記補強繊維基材層21の表面に1.5〜4mmの厚みに形成されるように塗布、含浸させ、該樹脂材料塗布層を70〜140℃にて2〜20時間かけて加熱硬化させて、積層体1’aが形成される。
【0057】
なお、樹脂材料の塗布はいかなる方法で行うものであってもよいが、本実施形態においては、マンドレル38を回転しつつ注入成形用ノズル40から樹脂材料を吐出して、各層に樹脂材料を付与することにより行い、同時に付与された樹脂材料をコーターバー39を用いて各層に均一に塗布する。
また、加熱方法は特に限定されないが、例えば、遠赤外線ヒーター等による方法を用いることができる。
また、樹脂材料は、上述した無機充填剤との混合物として付与されるものであってもよい。また、各層の各部位を形成するための樹脂材料及び無機充填剤の種類及び組成は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0058】
次に、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する。
具体的には、図7に示した積層体1’aの第1の樹脂層の前駆体22aの表面、即ち半製品外周層表面221上に、イソシアネート化合物を含有する組成物を塗布する(図8)。イソシアネート化合物含有組成物の塗布は、特に限定されず、いかなる方法で行うものであってよい。
【0059】
なお、イソシアネート化合物を含有する組成物を半製品外周層表面221に均一に塗布するために、コーターバー39の表面を、液体を吸収する材、例えばスポンジ状の材を用いることもできる。
【0060】
イソシアネート化合物を含有する組成物の塗布層25における、イソシアネート化合物を含有する組成物としては、特に限定されないが、例えばポリメリックMDI、モノメリックMDI、TDI、PPDI、HDI、IPDIおよびこれらの変性物が使用でき、好ましくは、ポリメリックMDIを使用することができる。
【0061】
次に、イソシアネート化合物を含有する組成物が塗布された積層体を硬化処理する。これにより、第1の樹脂層22が、半製品外周層表面221を含む第1の樹脂層の前駆体22aの一部が改質された改質表面処理層24と第1の樹脂層の前駆体22aによって形成される。即ち、第1の樹脂層22と補強繊維基材層21と第2の樹脂層23とが、外表面からこの順で積層した積層体1aを得ることができる。樹脂材料の硬化処理は、特に限定されないが、本実施形態においては、風乾、加熱処理を行った後、ヒドロキシル基またはアミノ基を持つ化合物を塗布し、残存イソシアネート化合物を失活させ、更にこれを風乾、加熱処理を行う。
【0062】
ヒドロキシル基またはアミノ基を持つ化合物の塗布方法は特に限定されないが、本実施形態においては図9に示すように、積層体1aをマンドレル38によって回転しつつ、塗布装置41によって塗布する。塗布装置41には塗布ロール42、槽43が設置され、槽43に蓄えられたヒドロキシル基またはアミノ基を持つ化合物がロール42、そしてロール42から外周層表面222上に転写、塗布することができる。
なお、ヒドロキシル基またはアミノ基を持つ化合物を外周層表面222に均一に塗布するために、塗布ロール42の表面を、液体を吸収する材、例えばスポンジ状の材を用いることもできる。
【0063】
イソシアネート化合物を含有する組成物は、半製品外周層表面に対し、10〜200g/m、好ましくは、30〜150g/m塗布することができる。こうすることで、積層体1aの外周層表面が改質され、硬度が上昇し、摩耗抵抗が低下することで、耐摩耗性を向上することができる。
【0064】
またこの場合、改質表面処理層の厚みを5〜300μm、好ましくは10〜250μmとすることができ、例えば、シュープレスベルトの厚み方向において、外周層表面部は耐摩耗性に優れ、内部は耐クラック性に優れるといった機械的特性を有するシュープレスベルトを形成することも可能である。
【0065】
以上、本発明の第1実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法として、半製品外周層表面を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を、半製品外周層表面に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有する製造方法について説明した。
【0066】
また、本発明の第2実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法として、半製品内周層を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を、半製品内周層表面に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有する製造方法について説明する。
【0067】
まず、半製品内周層表面を有する樹脂層形成工程においては、樹脂層を形成する。本工程においては、具体的には、環状かつ帯状の補強繊維基材が樹脂材料中に埋設された補強繊維基材層と、その両面に樹脂層としての第1の樹脂層と第2の樹脂層の前駆体とが積層した積層体を形成する。
これは基本的に、第1実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法と同様で、第1実施形態に係るシュープレスベルトの第1の樹脂層の前駆体を第1の樹脂層とし外周層表面を形成し、第2の樹脂層を第2の樹脂層の前駆体とし半製品内周層表面を形成して得られた積層体である。
【0068】
次に、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する。
得られた積層体をマンドレルから掛け外し、2本の平行に配置されたロールに半製品内周層表面がロール表面に接するように展張し掛け入れる。次にイソシアネート化合物を含有する組成物を塗布装置によって半製品内周層表面に塗布し、硬化処理することによって第2の樹脂層が、半製品内周層表面を含む第2の樹脂層の前駆体の一部が改質された改質表面処理層と第2の樹脂層の前駆体によって形成される。即ち、第1の樹脂層と補強繊維基材層と第2の樹脂層とが、外表面からこの順で積層したシュープレスベルトを得ることができる。
【0069】
なお、イソシアネート化合物を含有する組成物及びこの塗布、硬化処理については、特に限定されず、例えば第1実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法で説明したように、イソシアネート化合物を含有する組成物を半製品外周層表面に塗布、硬化した方法と同一とすることができる。
【0070】
以上、本発明の第2実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法として、半製品内周層を有する樹脂層を形成する工程と、イソシアネート化合物を含有する組成物を、半製品内周層表面に塗布し、硬化処理を行うことにより、樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程と、を有する製造方法について説明した。
【0071】
上記本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係るシュープレスベルトの製造方法は、外周層表面又は内周層表面が独立して、改質表面処理層を有するシュープレスベルトの製造方法について説明したが、これらを組み合わせて、外周層表面及び内周層表面の両面に改質表面処理層を有するシュープレスベルトの製造方法とすることもできる。
【0072】
また、図10に示すように、シュープレスベルトの外周層表面222に、溝加工装置45を用いて排水溝241を形成することもできる。なお、排水溝241の形成は、改質表面処理層24の形成前、形成後のどちらでも可能である。
【0073】
排水溝241の形成が、改質表面処理層24の形成前の場合、イソシアネート化合物を含有する組成物を半製品外周層表面221(溝ランド部の表面)上にのみ塗布することや、半製品外周層表面221(溝ランド部の表面)、溝壁223及び溝底224上に塗布することも可能である。
【0074】
また、上記実施形態におけるシュープレスベルトの製造方法は、マンドレル(1本のロール)または2本の平行に配置されたロールを任意に使用して製造することができる。また、各工程で反転作業を付加することにより、各樹脂層、改質表面処理層の形成順序は任意とすることもできる。
【0075】
以上、本発明について好適な実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成を付加することもできる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
1.シュープレスベルトの製造
実施例1〜4、比較例1〜4のシュープレスベルトを以下の方法により製造した。
【0078】
(1)半製品外周層を有する樹脂層形成工程
適宜駆動手段により回転可能な直径1500mmのマンドレルの表面に、マンドレルを回転させながら、樹脂材料を、マンドレルの回転軸に対して平行に移動可能な注入成形用ノズルによって1.4mm厚に塗布、硬化処理し、第2樹脂層を形成した(図5)。硬化処理は、マンドレルを回転させたまま室温で10分間放置し、更にマンドレルに付属している加熱装置によって127℃で0.5時間加熱硬化させた。
【0079】
次に、緯糸がポリエチレンテレフタレート繊維の5000dtexのマルチフィラメント糸の撚糸で、経糸がポリエチレンテレフタレート繊維の550dtexのマルチフィラメント糸で、経糸が緯糸で挟まれ、緯糸と経糸の交差部がウレタン系樹脂接着により接合されてなる格子状素材(経糸密度は1本/cm、緯糸密度は4本/cm)を、緯糸がマンドレルの軸方向に沿うように、第2樹脂層の外周表面に隙間なく一層配置した。そして、この格子状素材の外周に、ポリエチレンテレフタレート繊維の6700dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmピッチで巻きつけて糸巻層を形成し、これら格子状素材と糸巻層とで補強繊維基材を形成した。その後、補強繊維基材の隙間を塞ぐように第2樹脂層の樹脂材料と同一の樹脂材料を塗布し、補強繊維基材層と第2樹脂層とが一体化された積層体を形成した(図6)。
【0080】
次に、補強繊維基材層の上から、マンドレルを回転させながら、補強繊維基材層及び第2樹脂層の樹脂材料と同一の樹脂材料をマンドレルの回転軸に対して平行に移動可能な注入成形用ノズルによって約2.5mm厚に塗布、含浸し、硬化処理を行い、第1樹脂層の前駆体と補強繊維基材層と第2樹脂層とが一体化された積層体を形成した(図7)。硬化処理は、マンドレルを回転させたまま室温で40分間放置し、更にマンドレルに付属している加熱装置によって127℃で16時間加熱硬化させた。
その後、全厚が5.2mmとなるように、第1樹脂層の前駆体の外周層表面を研磨し、半製品のシュープレスベルトを得た。
【0081】
(2)第1樹脂層の一部が改質された表面処理層を形成する工程
得られた半製品の第1樹脂層の前駆体の表面、即ち半製品外周層表面上に、イソシアネート化合物を含有する組成物を塗布し、110℃で6時間加熱処理を行った(図8)。その後、塗布用スポンジを用いてプロパノールを塗布した(図9)。塗布後、室温で6時間乾燥させ、60℃で2.5時間加熱処理を行った。
【0082】
(3)外周層表面に排水溝を形成する工程
次に、溝加工装置によって外周層表面に、MD方向の排水溝(溝幅0.8mm、溝深さ0.8mm、ピッチ幅2.54mm)を多数形成してシュープレスベルトを得た(図10)。
【0083】
以上の工程を経て、実施例として、外周層表面が改質された表面処理層を有するシュープレスベルトを得た。なお、比較例は上記(1)半製品外周層を有する樹脂層形成工程、(3)外周層表面に排水溝を形成する工程を経て、外周層表面が改質された表面処理層を有さないシュープレスベルトとした。
表1に、各実施例のシュープレスベルトの樹脂層に用いた樹脂材、イソシアネート化合物含有組成物の樹脂材及び塗布量について示す。なお、各比較例はそれぞれの各実施例について、第1樹脂層に改質された表面処理層を有さないものとした。
【0084】
【表1】
【0085】
2.耐摩耗性評価
図11に示す耐摩耗性評価の評価装置を用い、シュープレスベルトサンプル46をプレスボード47の下部に取り付け、その下の面(測定対象面)に、外周に摩耗子49を備える回転ロール48を押し付けながら回転させた。このとき、回転ロールによる圧力を6.6kg/cm、回転ロールの回転速度を100m/分とし、45秒間回転させた。回転後にベルトサンプルの厚みの減少量(摩耗量)を測定した。
【0086】
3.耐薬品性評価
シュープレスベルトの外周層表面から深さ方向に1mm、MD方向1cm、CMD方向1cmの樹脂サンプルを切り出した(外周層表面に排水溝を形成する前のシュープレスベルトで実施)。切り出した樹脂サンプルについて、ジメチルホルムアミド(DMF)50ccに2日間、20℃雰囲気下で浸漬した。浸漬後速やかに寸法測定し、以下の式で体積変化率を求めた。
【数1】
【0087】
耐摩耗性、耐薬品性の評価結果を表2に示す。なお、評価結果は各比較例に対する相対値とした。
【表2】
【0088】
表2に示すように、実施例1〜4に係るシュープレスベルトは、外周層表面に改質処理層を形成することで、耐摩耗性、耐薬品性が向上したことがわかる。
【符号の説明】
【0089】
1:シュープレスベルト(完成品)、1’:シュープレスベルト(半製品)、1a:積層体(改質表面処理層形成後)、1’a:積層体(改質表面処理層形成前)、21:補強繊維基材層、211:補強繊維基材、212:樹脂、22:第1樹脂層、22a:第1樹脂層前駆体、221:半製品外周層表面、222:外周層表面、223:溝壁、224:溝底、23:第2樹脂層、231:半製品内周層表面、232:内周層表面、24:改質表面処理層、241:排水溝、242:排水溝ランド部、25:イソシアネート化合物含有組成物塗布層、26:改質表面処理層、27:イソシアネート化合物含有組成物塗布層、38:マンドレル、39:コーターバー、40:注入成形用ノズル、41:塗布装置、42:塗布ロール、43:槽、45:溝加工装置、46:シュープレスベルトサンプル、47:プレスボード、48:回転ロール、49:摩耗子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11