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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-132978(P2016-132978A)
(43)【公開日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】杭構築装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/34 20060101AFI20160627BHJP
【FI】
   E02D5/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-10742(P2015-10742)
(22)【出願日】2015年1月22日
(71)【出願人】
【識別番号】502147476
【氏名又は名称】株式会社ドリームテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 修一
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA44
2D041CA01
2D041CB05
2D041DA02
2D041EB03
(57)【要約】
【課題】排土の混入を抑制して高品質な基礎杭を簡易に構築する杭構築装置を提供する。
【解決手段】杭構築装置は、長尺のロッドの先端部に取付けられ、地盤を掘削するオーガヘッドを備え、当該オーガヘッドの筐体内に注入されたセメントミルクを、掘削された柱状の杭穴に吐出して基礎杭を構築する杭構築装置であって、前記オーガヘッドが、前記ロッドの先端部に取付けられ、当該先端部から拡開状の略円錐台形状で中空に形成される基礎部と、前記基礎部の略円錐台形状の拡開基底部に同一径の円筒体として一体的に固着される中心部と、前記中心部の円筒体と同一径の基底部を有する略円錐台形状で中空に形成され、当該円錐台の先端中心部分に先端刃が配設され、当該先端刃に対して円錐台周辺方向に離隔して掘削刃が配設され、当該掘削刃と連接して当該円錐台の傾斜側面上をスパイラル状に周回する土石案内板が配設され、当該円錐台の先端部分に開口部が配設される先端部とを備えて構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のロッドの先端部に取付けられ、地盤を掘削するオーガヘッドを備え、当該オーガヘッドの筐体内に注入されたセメントミルクを、掘削された柱状の杭穴に吐出して基礎杭を構築する杭構築装置であって、
前記オーガヘッドが、
前記ロッドの先端部に取付けられ、当該先端部から拡開状の略円錐台形状で中空に形成される基礎部と、
前記基礎部の略円錐台形状の拡開基底部に同一径の円筒体として一体的に固着される中心部と、
前記中心部の円筒体と同一径の基底部を有する略円錐台形状で中空に形成され、当該円錐台の先端中心部分に先端刃が配設され、当該先端刃に対して円錐台周辺方向に離隔して掘削刃が配設され、当該掘削刃と連接して当該円錐台の傾斜側面上をスパイラル状に周回する土石案内板が配設され、当該円錐台の先端部分に開口部が配設される先端部とを備え、
前記オーガヘッドの筐体内に注入されたセメントミルクが、当該筐体内を連通する空間を介して、前記基礎部から前記中心部を経由して前記先端部の開口部から吐出されることを特徴とする
杭構築装置。
【請求項2】
請求項1に記載の杭構築装置において、
前記先端部が、前記基礎部よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状であることを特徴とする
杭構築装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の杭構築装置において、
前記基礎部、前記中心部、および前記先端部の長手方向の長さのうち、前記中心部が最も長いことを特徴とする
杭構築装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の杭構築装置において、
前記筐体のうち少なくとも前記中心部が、外周に螺旋状に周回する形状の溝部を有することを特徴とする
杭構築装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の杭構築装置において、
前記掘削刃が、前記先端刃の近傍と、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設され、
前記土石案内板が、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設される前記掘削刃に連接することを特徴とする
杭構築装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントで形成される基礎杭を構築する杭構築装置に関し、特に、排土の混入を抑制して簡易に基礎杭を構築する杭構築装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の構造物の基礎に用いられる基礎杭は、地面に深く打ち込まれて構築され、構造物を確実に支えるために重要な役割を担っている。基礎杭は、地面に対する構造物の安定性を確保するために、土質の硬軟に依存せずに強固に構築されることや高い強度を発揮すること等、要求される事項も多い。
【0003】
このような基礎杭を構築する杭構築装置については、これまでのところ、各種の技術が提案されている。
【0004】
例えば、従来の杭構築装置としては、内部にセメントミルクの供給通路を有する掘削オーガの先端部(オーガヘッド)に、掘削爪とセメントミルクの吐出口を備え、該掘削オーガを回転させながら掘進し、その後セメントミルクを該吐出口より吐出しつつ、該掘削オーガを引上げ、掘削部の区間をセメントミルクで充填するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、掘削オーガの先端部にスクリュー翼片を備え、スクリュー回転による掘削の効率化を図るものもある(例えば、特許文献2、および特許文献3参照)。この他にも、掘削オーガの先端部に一定長さの円錐形圧土面を形成すると共に、該円錐形圧土面の一部に縦軸方向に一条または数条の略三角形の凹入溝を設けるものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−106253号公報
【特許文献2】特開昭52−87803号公報
【特許文献3】特開昭56−146584号公報
【特許文献4】実開平4−126934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の杭構築装置は、上記特許文献1に示されるように、全長数メートル規模の掘削オーガの内部にセメントミルクの供給通路が配設される場合には、長い距離の当該供給通路中でセメントミルクを固化させないように、セメントミルクを滞りなく流動させる必要があるため、当該セメントミルクの流動制御も必要となり、製造コストが嵩張ると共に施工効率も低下する虞がある。
【0008】
また、従来の杭構築装置は、上記特許文献2〜4に示されるように、掘削オーガの先端部にスクリュー翼片や上記凹入溝を備える場合には、掘削で掻き上げられて周囲に撒き散らされた排土が、その自重により落下し、下方で吐出されるセメントミルクの液中に混入する虞があり、その結果として、当該排土が混入したセメントから基礎杭が構築されることによって、形成される基礎杭の品質が低下する虞がある。
【0009】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、排土の混入を抑制した高品質の基礎杭を簡易に構築する杭構築装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示する杭構築装置は、長尺のロッドの先端部に取付けられ、地盤を掘削するオーガヘッドを備え、当該オーガヘッドの筐体内に注入されたセメントミルクを、掘削された柱状の杭穴に吐出して基礎杭を構築する杭構築装置であって、前記オーガヘッドが、前記ロッドの先端部に取付けられ、当該先端部から拡開状の略円錐台形状で中空に形成される基礎部と、前記基礎部の略円錐台形状の拡開基底部に同一径の円筒体として一体的に固着される中心部と、前記中心部の円筒体と同一径の基底部を有する略円錐台形状で中空に形成され、当該円錐台の先端部分に先端刃が配設され、当該先端刃の周囲であって、少なくとも当該先端刃の近傍と前記中心部の外周側面の延長線上の各々に掘削刃が配設され、当該掘削刃のうちの少なくとも1つから当該円錐台の傾斜側面上に沿ってスパイラル状の土石案内板が配設され、当該円錐台の先端部分に開口部が配設される先端部とを備え、前記オーガヘッドの筐体内に注入されたセメントミルクが、当該筐体内を連通する空間を介して、前記基礎部から前記中心部を経由して前記先端部の開口部から吐出されるものである。
【0011】
このように、長尺のロッドの先端部に取付けられ、地盤を掘削するオーガヘッドを備え、当該オーガヘッドの筐体内に注入されたセメントミルクを、掘削された柱状の杭穴に吐出して基礎杭を構築する杭構築装置であって、前記オーガヘッドが、前記ロッドの先端部に取付けられ、当該先端部から拡開状の略円錐台形状で中空に形成される基礎部と、前記基礎部の略円錐台形状の拡開基底部に同一径の円筒体として一体的に固着される中心部と、前記中心部の円筒体と同一径の基底部を有する略円錐台形状で中空に形成され、当該円錐台の先端部分に先端刃が配設され、当該先端刃の周囲であって、少なくとも当該先端刃の近傍と前記中心部の外周側面の延長線上の各々に掘削刃が配設され、当該掘削刃のうちの少なくとも1つから当該円錐台の傾斜側面上に沿ってスパイラル状の土石案内板が配設され、当該円錐台の先端部分に開口部が配設される先端部とを備えることから、前記先端刃が杭穴の最深部に対して杭穴の中心部を最初に掘削することにより、掘削方向の中心位置が最初に位置決めされて固定されることによって、土壌に対する掘削方向の直進性が確保された上で前記掘削刃が掘削を進められ、さらに、当該掘削により生じた排土が、前記先端部の傾斜側面によって周囲の壁面との間に形成される傾斜領域によって、掘削時に滑らかに杭穴の壁面方向への圧入作用を生じると共に、前記土石案内板により側方に押し付けられる力を受けることによって、周囲の壁面に押し付けられることとなり、安定、確実且つ強固な壁面が形成され、安定した形状で杭穴が形成され、高品質な基礎杭を簡易に築造することができる。
【0012】
本願に開示する杭構築装置は、必要に応じて、前記先端部が、前記基礎部よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状であるものである。このように、前記先端部が、前記基礎部よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状であることから、掘削時に前記オーガヘッドが下方へ進行する場合には、前記先端部の鋭い頂点角度により、前記先端部が進行方向である下方に向かって鋭く土壌を掘り進める力が作用して掘削の効率性が高まることとなり、また、当該掘削後に前記オーガヘッドが上方に引き揚げられる場合には、前記基礎部の穏やかな頂点角度により、掘削された杭穴の壁面との距離が狭く保たれることから、掘削により生じた排土を当該壁面に強固に押し付ける力が増強され、排土の落下が抑制されて、セメントミルクに排土の混入が抑制されることとなり、安定した形状で杭穴が形成されると共にセメントミルクの純度が維持されることによって、高品質な基礎杭を築造することができる。
【0013】
本願に開示する杭構築装置は、必要に応じて、前記基礎部、前記中心部、および前記先端部の長手方向の長さのうち、前記中心部が最も長いものである。このように、前記中心部の長手方向の長さが最も長いことから、杭穴の外壁面に前記中心部が接触する表面積が高められることにより、掘削時には外壁面が円柱状に整えられた杭穴が形成されると共に、掘削後には排土の落下が抑制されることとなり、安定した形状で形成される杭穴とセメントミルクの純度の維持によって、高品質な基礎杭を築造することができる。
【0014】
本願に開示する杭構築装置は、必要に応じて、前記筐体のうち少なくとも前記中心部が、外周に螺旋状に周回する形状の溝部を有するものである。このように、前記筐体のうち少なくとも前記中心部が、外周に螺旋状に周回する形状の溝部を有することから、前記中心部が、掘削時に下方に進行する場合には、杭穴の外壁面との接触面積が減少することで当該外壁面から受ける土圧抵抗が減少することによって、滑らかに下方へ掘削が進行できることとなり、また、掘削時に前記溝部の窪み形状に沿って前記杭穴に凸状の螺旋形状が形成されることによって、掘削後に上方へ引き揚げる場合には、前記杭穴の凸状の螺旋形状と、前記中心部の凹状の溝部とが、嵌合した状態を維持して上方に引き揚げられることとなり、前記引き揚げ時に杭穴の円柱形状が崩れることなく、安定した形状の基礎杭を簡易に築造することができる。
【0015】
本願に開示する杭構築装置は、必要に応じて、前記掘削刃が、前記先端刃の近傍と、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設され、前記土石案内板が、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設される前記掘削刃に連接するものである。このように、前記掘削刃が、前記先端刃の近傍と、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設され、前記土石案内板が、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設される前記掘削刃に連接することから、前記先端刃の近傍に配設される掘削刃によって、杭穴の最深部の中心近傍の掘削能力が高められると同時に強固な位置決めが行われ、前記中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設される掘削刃によって、杭穴の周囲の壁面が常に一定の形状で枠取りされて整形されることとなり、形状が安定した杭穴が形成されると同時に、排土が壁面に押し付けられることによりセメントミルクへの排土混入が抑制されることによって、高品質な基礎杭を築造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る杭構築装置の断面図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態に係る杭構築装置の先端部の一例を示す説明図を示す。
図3】本発明の第1の実施形態に係る杭構築装置の先端部の一例を示す説明図を示す。
図4】本発明の第1の実施形態に係る杭構築装置の動作として、掘削時に下方に進行する動作を説明する説明図を示す。
図5】本発明の第1の実施形態に係る杭構築装置の動作として、セメントミルクを吐出して上方に引き揚げられる動作を説明する説明図を示す。
図6】本発明の第1の実施形態に係る杭構築装置のロッドに取付けられた全体図を示す。
図7】本発明の第2の実施形態に係る杭構築装置を説明する説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る杭構築装置を、前記図1図6に基づいて説明する。
【0018】
第1の実施形態に係る杭構築装置は、図1の断面図に示すように、長尺のロッド100の先端部100aに取付けられ、地盤を掘削するオーガヘッド1を備え、このオーガヘッド1の筐体内に注入されたセメントミルクを、この筐体内の導通路1aを経由して、掘削された柱状の杭穴200に吐出して基礎杭300を構築する杭構築装置であって、このオーガヘッド1が、このロッド100の先端部100aに取付けられ、この先端部100aから拡開状の略円錐台形状で中空に形成される基礎部11と、この基礎部11の略円錐台形状の拡開基底部に同一径の円錐体として一体的に固着される中心部12と、この中心部12の円筒体と同一径の基底部を有する略円錐台形状で中空に形成され、この円錐台の先端中心部分に先端刃13aが配設され、この先端刃に対して円錐台周辺方向に離隔して掘削刃13bが配設され、この掘削刃と連接してこの円錐台の傾斜側面上をスパイラル状に周回する土石案内板13cが配設され、この円錐台の先端部分に開口部13dが配設される先端部13とを備えて構成され、このオーガヘッド1の筐体内に注入されたセメントミルクが、この筐体内を連通する空間(導通路1a)を介して、この基礎部11からこの中心部12を経由してこの先端部13の開口部13dから吐出される。
【0019】
この基礎部11を形成する略円錐台形状は、図1(a)に示すように、円錐台斜面と杭穴200の壁面とのなす角θが、この先端部13を形成する略円錐台形状の円錐斜面と杭穴200の壁面とのなす角θよりも小さいこと(θ<θであること)が好ましい。この場合には、この基礎部11は、この先端部13よりも、杭穴200の周囲の壁面近傍で構成されることとなる。
【0020】
また、この中心部12については、図1(a)に示すように、この基礎部11、この中心部12、およびこの先端部13の長手方向の長さ(各々、L、L、およびL)のうち、この中心部12の長さ(L)が最も長く構成されることが好ましい。この場合には、この中心部12の長さ(L)が最も長いことから、杭穴200の円周壁面にこの中心部12が密着する表面積が高められることにより、掘削時には壁面形状が整えられた杭穴200が形成されると共に、掘削後には排土の落下が抑制されることとなり、高精度な杭穴200の形成とセメントミルクの純度の維持によって、高品質な基礎杭300を築造することができる。
【0021】
また、この先端部13は、図2(a)に示すように、この円錐台の先端部にある開口部13dからセメントミルクを吐出する。この開口部13dは、図2(b)の断面図に示すように、先端刃13aで区切られた2つの半円形領域のうち一方は、開閉自在な吐出弁13eとしてセメントミルクを吐出する。この半円形領域のうちの他方は、閉じた領域とする。この吐出弁13eを配設することによって、排土が逆流してセメントミルクに混入することが抑制されることとなり、純度の高いセメントミルクの吐出を実現することができる。なお、この他、この半円形領域のうちの他方に対しても、同様の吐出弁13eを配設することが可能である。
【0022】
セメントミルクとは、セメントと水とが混合された液状材料を指し、この液状材料に各種の混和剤などの添加剤を含有するものも、本実施形態の対象とし
【0023】
長尺のロッド100は、セメントミルクを供給する流路があれば、特に限定されず、例えば、H形鋼、L形鋼、I形鋼、または山形鋼などを用いることができる。
【0024】
この杭穴200は、この先端部13によって、地面を掘削されて形成され、この中心部12の円筒体と同一径の円形状の断面を有する円柱形状を有する。この基礎杭300は、この掘削により形成された円柱形状の杭穴200に、セメントミルクが吐出されることにより築造される。
【0025】
なお、この土石案内板13cは、この先端部13の円錐台の傾斜側面上をスパイラル状に周回する形状であれば、その周回の程度は限定されない。例えば、上記の実施形態では、この土石案内板13cは、この先端部13の円錐台の傾斜側面上を、この円錐台の断面円の円中心を回転中心軸として回転が1周(360°)に満たない形状としたが、この他にも、この回転が1周(360°回転)を超える形状とする構成も可能であり、例えば、この回転が1周(360°回転)である形状とする構成や、2周(720°回転)である形状とする構成も可能である。例えば、図3(a)および(b)に示すように、この土石案内板13cは、この先端部13の円錐台の傾斜側面上を、この円錐台の断面円の円中心を回転中心軸として1周(360°回転)である形状とする構成も可能である。
【0026】
上記の構成を有する本実施形態に係る杭構築装置の動作を、図4及び図5の説明図に基づいて、以下説明する。
【0027】
本実施形態に係る杭構築装置の動作として、図4(a)に示すように、先ず、下方に向かって地面を掘削する。この掘削では、図4(b)に示すように、この先端部13の先端部分に取付けられた先端刃13aが、最初に、この杭穴200の最深部の中心近傍に対して局所的に掘削する。この後、この先端刃13aの周辺に配設された掘削刃13bが、この杭穴200の最深部の全面にわたって均一に掘削し、この最深部に円形状の平面が形成される。
【0028】
すなわち、この先端刃13aの近傍に配設される掘削刃13bによって、この杭穴200の最深部の中心近傍の掘削能力が高められると同時に、この最深部の中心位置に対する位置決めが確実に行われ、この後に、この中心部の円筒体の外周円の延長線上に配設される掘削刃13bによって、この杭穴200の外周壁面が一定の形状で枠取りされて整形されることとなり、さらに、この土石案内板13cによって、この掘削に伴って生じた排土が、外周壁面に向かって(図4(b)中に示される三角形領域中のA方向に向かって)押し付けられることとなり、柱状形状の杭穴200が安定した形状で形成される。
【0029】
また、前記先端部13が、この基礎部11よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状であることから、掘削時には、この先端部13の鋭い頂点角度により、この先端部13が進行方向である下方に向かって鋭く土壌を掘り進める力が作用して掘削の効率性が高まることとなり、安定した形状の杭穴200が形成される。
【0030】
このようにして形成された杭穴200に対して、本実施形態に係る杭構築装置は、図5に示すように、この先端部13の先端部分にある開口部13dから、セメントミルクを下方に向かって吐出しながら、上方に引き揚げられる。
【0031】
また、前記先端部13が、前記基礎部よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状であることから、上述した図1(a)に示すように、円錐台斜面と杭穴200の壁面とのなす角θが、この先端部13を形成する略円錐台形状の円錐斜面と杭穴200の壁面とのなす角θよりも小さいことにより、この基礎部11は、この先端部13よりも、杭穴200の周囲の壁面近傍で構成されることから、この基礎部11の穏やかな頂点角度により、掘削された杭穴200の壁面との距離が狭く保たれることから、掘削により生じた排土をこの壁面に強固に押し付ける力が作用して、排土の落下が抑制されて、セメントミルクに排土の混入が抑制されることとなり、高精度な杭穴200が形成されると共にセメントミルクの純度が維持されることによって、高品質な基礎杭300を築造することができる。
【0032】
また、上述した図2(b)に示した前記吐出弁13eによって、この開閉自在な吐出弁13eからセメントミルクが吐出されると共に逆流が防止されることから、掘削により生じた排土のセメントミルクへの混入が抑制されることとなり、排土の混入を抑制した純度の高いセメントミルクの吐出を実現することができる。
【0033】
さらに、本実施形態に係る杭構築装置が、ロッドに取付けられている全体図を、図6に示す。図6(a)では、本実施形態に係る杭構築装置が、下方に向かって地面を掘削する様子を示しており、図6(b)では、この掘削後に上方に向かって引き揚げられる様子を示している。本実施形態に係る杭構築装置は、このロッド100にセメントミルクを供給するホース101と、このホース101にセメントミルクを供給する掘削車両102を備える構成である。
【0034】
このように、本実施形態に係る杭構築装置は、このロッド100にセメントミルクを供給する外部の装置には、既存の装置がそのまま利用できることから、汎用性が高いものとなり、装置コストを抑えて基礎杭300を構築することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、この先端部13が、この基礎部11よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状としたが、これに限定されず、この基礎部11が、この先端部13よりも急峻な傾斜側面を有する円錐台形状とする構成も可能である。また、本実施形態では、この基礎部11、この中心部12、およびこの先端部13の長手方向の長さのうち、この中心部12が最も長い構成としたが、これに限定されず、この基礎部11またはこの先端部13が最も長い構成とすることも可能である。
【0036】
また、前記掘削刃13bおよび前記土石案内板13cの配置も、上記に限定されない。例えば、前記掘削刃13bは、前記先端刃13aの近傍のみ配設されることや、前記中心部12の円筒体の外周円の延長線上のみ配設されることも可能である。また、例えば、前記土石案内板13cは、前記先端刃13aの近傍に配設される前記掘削刃13bに連接することも可能である。
【0037】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態に係る杭構築装置を、前記図7に基づいて、説明する。
【0038】
第2の実施形態に係る杭構築装置は、上述した第1の実施形態に係る杭構築装置と同様に、前記オーガヘッド1、前記導通路1a、前記基礎部11、前記中心部12、および前記先端部13を備え、さらに、図7に示すように、前記筐体のうち少なくとも前記中心部12が、外周に螺旋状に周回する形状の溝部12aを有する構成である。
【0039】
この溝部12aは、前記中心部12の外周を、1周だけ周回してもよく、また、複数周にわたって周回してもよい。
【0040】
このように、外周に螺旋状に周回する形状の溝部12aが少なくともこの中心部12に配設されることにより、この中心部12が、掘削時に下方に進行する場合には、杭穴200の外壁面との接触面積が減少することでこの外壁面から受ける土圧抵抗が減少することによって、滑らかに下方へ掘削が進行できることとなり、また、掘削時にこの溝部12aの窪み形状に沿ってこの杭穴200に凸状の螺旋形状が形成されることによって、掘削後に上方へ引き揚げる場合には、この杭穴200の凸状の螺旋形状と、この中心部12の凹状の溝部12aとが、嵌合した状態を維持して上方に引き揚げられることとなり、この引き揚げ時に杭穴200の円柱形状が崩れることなく、安定した形状の基礎杭300を簡易に築造することができる。
【符号の説明】
【0041】
100 ロッド
100a 先端部
101 ホース
102 掘削車両
200 杭穴
300 基礎杭
1 オーガヘッド
1a 導通路
11 基礎部
12 中心部
12a 溝部
13 先端部
13a 先端刃
13b 掘削刃
13c 土石案内板
13d 開口部
13e 吐出弁

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7