【実施例1】
【0014】
実施例1に係る流体圧制御装置につき、
図1(a)、(b)を参照して説明する。先ず
図1は、本発明の適用された流体圧制御装置の油圧回路図である。
【0015】
本実施例1の流体圧制御装置は、作動流体としての作動油をタンク10から吸引して吐出する油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2に回転駆動力を伝達する駆動機構1と、油圧ポンプ2に逆止弁12及び主管3を介し接続され油圧ポンプ2の吐出圧力で作動油が供給される油圧被供給回路4とを主に備える。なお油圧被供給回路4は、例えば後述する自動車、産業機械等のアクチュエータ等を駆動するための回路である。
【0016】
更に流体圧制御装置は、主管3から分岐した分岐管5に接続される電磁切換弁6と、この電磁切換弁6に切換管13,30を介し接続され、作動油を油圧ポンプ2の吐出圧力よりも増圧し吐出する増圧装置7と、この増圧装置7及び油圧被供給回路4の間に逆止弁14及び高圧管15等を介し接続される蓄圧装置としてのアキュムレータ8とを備える。流体圧制御装置の他の構成部材については追って説明する。
【0017】
なお、本実施例の流体圧制御装置は、例えば自動車や建設機械、運搬車両、産業機械等の油圧装置として適用され、一例として自動車のブレーキ、ステアリング、トランスミッション等、あるいはトラック、油圧ショベル、フォークリフト、クレーン、ごみ収集車若しくはプレス機械などの各アクチュエータに適用される装置である。
【0018】
次に、増圧装置7は、平面視略T字状の収容空間を内部に有するケース73と、このケース73の収容空間に収まる形状であって、比較的大径の大径部及び小径の小径部からなるピストン75と、から構成されている。更にピストン75がケース73内面に図示しないシール部材を介しケース73内を摺動可能に配置される。すなわちケース73内部は、ピストン75によって、比較的大径の油室72、小径の油室74、そして前記大径部分から小径部分を差し引いた径の油室71からなる3つの油室に、それ等の体積(容積)を可変に仕切られている。
【0019】
また油室74は、上記した逆止弁14及び高圧管15を介しアキュムレータ8に接続され、またこれとは別に、逆止弁17及び切換管30を介し後述する電磁切換弁6に連通するように接続されている。油室74に接続される逆止弁14は、油室74からアキュムレータ8へ向かう作動油の順方向の流れを許容し、アキュムレータ8から油室74へ向かう作動油の逆方向の流れを規制する。更に油室74に接続される別の逆止弁17は、電磁切換弁6から油室74へ向かう作動油の順方向の流れを許容し、油室74から電磁切換弁6へ向かう作動油の逆方向の流れを規制する。
【0020】
更に油室71は、タンク10内と管路31を介し接続され、ピストン75の移動に関わらず外部に圧力開放しており、ピストン75の往復動に伴う油室71の体積(容積)に応じて、作動油がタンク10から油室71に吸引し、若しくは油室71からタンク10に吐出するようになっている。
【0021】
なお、本実施例1の油室72は本発明の駆動室を構成し、油室74は本発明の連通室を構成し、また油室71は本発明の開放室を構成する。
【0022】
また電磁切換弁6は、その消磁状態若しくは励磁状態で作動油の流路を切換え可能に配設されている。詳述すると電磁切換弁6は、
図1(a)に示す消磁状態において、分岐管5と油室74に接続される切換管30とを連通するとともに、油室72に接続される切換管13と終端がタンク10に開口する排出管16とを連通する。また電磁切換弁6は、
図1(b)に示す励磁状態において、分岐管5と油室72に接続される切換管13とを連通するとともに、油室74に接続される切換管30と排出管16とを連通する。
【0023】
なお、上記した油圧ポンプ2から、分岐管5、電磁切換弁6、切換管30、逆止弁17、油室74、逆止弁14及び高圧管15を経てアキュムレータ8に至る管路は、共通して、本発明の直接管路及び増圧管路を構成する。
【0024】
次にアキュムレータ8は、特に図示しないが、高圧管15に連通する筒胴部と、前記筒胴部内に配設されたゴム等からなる膜体とからなり、前記膜体内部には例えば窒素等の蓄圧気体が所定量封入されており、後述するように作動油が前記筒胴部内に流入すると、その圧力に応じて前記膜体が収縮することで、高圧流体を蓄えておくことができる。
【0025】
また流体圧制御装置は、上述した構成部材のほか、主管3から分岐した排出管21を介し作動油をタンク10に排出可能なリリーフ弁20と、同様に高圧管15から分岐した排出管23を介し作動油をタンク10に排出可能なリリーフ弁24が設けられ、更にアキュムレータ8と油圧被供給回路4とを接続する高圧管19に、当該管路を開閉可能な電磁式の切換弁9及び逆止弁18が介設されている。
【0026】
次に、本実施例1の流体圧制御装置における作動油の流動について説明する。
【0027】
先ず
図1(a)に示されるように、アキュムレータ8に予圧が加わっていない初期状態では、図示しない制御部により電磁切換弁6は消磁状態となっている。この状態で油圧ポンプ2から吐出された作動油は、該油圧ポンプ2の吐出圧力で、その一部が主管3を介し油圧被供給回路4に供給されるとともに、残りが分岐管5、電磁切換弁6を介し油室74に流入する。
【0028】
さらに油室74に流入した作動油は、油圧ポンプ2を駆動源とする流量でアキュムレータ8の前記筒胴部内に流入して前記膜体が収縮し、アキュムレータ8及び高圧管15内は、油圧ポンプ2の吐出圧力に相当する予圧状態に達する。すなわちこの初期状態では、作動油は油圧ポンプ2から直接管路を通じてアキュムレータ8に流入する。なお、この初期状態では切換弁9は閉状態であり、高圧管19を介した作動油の油圧被供給回路4への供給は遮断されている。
【0029】
続いて、アキュムレータ8の予圧後状態で、電磁切換弁6は、前記制御部により
図1(a)の消磁状態と
図1(b)の励磁状態とを繰り返す。より詳しくは、電磁切換弁6の励磁状態では、油圧ポンプ2から吐出された作動油は、分岐管5、電磁切換弁6を介し油室72に流入する。油室72内に流入した作動油は、油圧ポンプ2の吐出圧力でピストン75を図示左方、すなわち油室74に向けて押圧する。
【0030】
油室74内の作動油は、いわゆるパスカルの定理により、その圧力が油圧ポンプ2の吐出圧力よりも増圧されて吐出され、逆止弁14及び高圧管15を介してアキュムレータ8の前記筒胴部内に流入して前記膜体が更に収縮し、アキュムレータ8及び高圧管15内は、上記した予圧よりも高圧状態に達した作動油が蓄積される。すなわちこの予圧後状態では、作動油は油圧ポンプ2から増圧管路を通じてアキュムレータ8に流入する。
【0031】
このように、前記した直接管路及び増圧管路は、油圧ポンプ2から、分岐管5、電磁切換弁6、切換管30、逆止弁17、油室74、逆止弁14及び高圧管15を経てアキュムレータ8に至る共通の管路であることで、直接管路と増圧管路の配管部材を共通化できるため、管路を複雑化することなく部品点数を抑えることができる。
【0032】
また、油圧ポンプ2の吐出圧力で連通室としての油室74に流入する作動油を利用して、ピストン75を油室72側の縮み終端に向けて予め移動させておくことができるため、油室72に移動したピストン75が作動油を増圧しながら油室74側の伸び終端に移動するストローク代を得ることができる。
【0033】
また、油室72及び油室74のいずれにも作動油を油圧ポンプ2の吐出圧力で供給できるため、ピストン75の往復動の切り換えを瞬時に行うことができるばかりか、1つ油室71をピストンの移動に関わらず外部に圧力開放する開放室とすることができる。これに対し
図7に示す従来技術では、作動油をタンク110から吸引管131を介し負圧を利用して増圧室174に供給しているため、吸引管131の延長に制限が生じることとなる。
【0034】
更に、油室74とアキュムレータ8との間に逆止弁14が介在することで、アキュムレータ8に導入された作動油が油室74に逆流することがなく、増圧装置7によって増圧された作動油が増圧装置7内に留まることが無いため、増圧工程に影響を及ぼすことなく増圧機能を発揮し、アキュムレータ8に蓄えられた高い圧力を維持することができる。また、逆止弁14が増圧装置7とは独立して設けられているため、アキュムレータ8が高い圧力を維持していても増圧装置7に影響を及ぼすことなく、増圧装置7はアキュムレータ8の圧力状態に関係なく増圧機能を発揮することができる。
【0035】
また、電磁切換弁6と油室74との間に逆止弁17が介在することで、油室74に導入された作動油が電磁切換弁6に逆流することがなく、この作動油を確実にアキュムレータ8に導入することができる。
【0036】
次に、所定条件で油圧被供給回路4に高圧力の作動油が要求された場合に、前記制御部により切換弁9が開放されるとともに、高圧管15及びアキュムレータ8内の高圧力の作動油が油圧被供給回路4に流入する。
【0037】
次に
図6に示されるように、アキュムレータ8への蓄圧時間について、従来技術と比較しながら説明する。
図6で横軸Tは蓄圧時間を示し、縦軸Pはアキュムレータ8内の圧力を示している。
【0038】
本発明の流体圧制御装置によれば、
図6の実線に示されるように、アキュムレータ8に作動油の圧力が加わっていない初期状態(T=0,P=0)から、油圧ポンプ2の吐出流量を利用して極めて短い時間(T1)で、アキュムレータ8内に油圧ポンプ2の吐出圧力に相当する予圧(Ps)まで蓄圧される。続いて電磁切換弁6により増圧装置7のピストン75が往復動し、アキュムレータ8内に1ストローク当たり所定量の作動油が流入することで、内部圧力は漸次高まり、最終的に従来の装置よりも短い到達時間(T2)で、アキュムレータ8内が一定の高圧状態(Ph)となる。
【0039】
これに対し従来の流体圧制御装置によれば(
図7参照)、
図6の点線に示されるように、アキュムレータ8に作動油の圧力が加わっていない初期状態(T=0,P=0)から、内部圧力を高めるには、増圧装置7のピストン75を多数回往復動させる必要があるため、最終的にアキュムレータ8内が高圧状態(Ph)となるまでに、本発明の流体圧制御装置の到達時間(T2)と比較して非常に長い到達時間(T3)を要する(T3>T2)。
【0040】
このように、油圧ポンプ2から吐出された作動油を、増圧装置7の連通室としての油室74に供給し、油室74の初期状態の圧力を、油圧ポンプ2の吐出圧力相当の予圧まで早期に到達させ、更に増圧装置7により増圧してアキュムレータ8に供給できるため、全体としてアキュムレータ8に作動油を供給する蓄圧時間を大幅に短縮することができる。また、油圧ポンプ2から吐出される圧力がアキュムレータ8の予圧よりも大きい場合、油圧ポンプ2の吐出圧力を利用して、油室74を経由して作動油がアキュムレータ8に供給され、更に作動油を増圧装置7により増圧してアキュムレータ8に供給できるため、全体としてアキュムレータ8に作動油を供給する蓄圧時間をより大幅に短縮することができる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係る流体圧制御装置につき、
図2(a)、(b)を参照して説明する。尚、前記実施例1と同一構成で重複する説明を省略する。
【0042】
本実施例2の増圧装置7のケース73内部は、比較的大径の油室72、小径の油室74’、そして前記大径部分から小径部分を差し引いた径の油室71’からなる3つの油室に、それ等の体積(容積)を可変に仕切られている。
【0043】
本実施例2の増圧装置7の油室71’は、逆止弁14及び高圧管15を介しアキュムレータ8に接続され、またこれとは別に、逆止弁17及び切換管32を介し後述する電磁切換弁6に連通するように接続されている。油室71’に接続される逆止弁14は、油室71’からアキュムレータ8へ向かう作動油の順方向の流れを許容し、アキュムレータ8から油室71’へ向かう作動油の逆方向の流れを規制する。更に油室71’に接続される別の逆止弁17は、電磁切換弁6から油室71’へ向かう作動油の順方向の流れを許容し、油室71’から電磁切換弁6へ向かう作動油の逆方向の流れを規制する。
【0044】
更に油室74’は、タンク10内と管路33を介し接続され、ピストン75の移動に関わらず外部に圧力開放しており、ピストン75の往復動に伴う油室74’の体積(容積)に応じて、作動油がタンク10から油室74’に吸引し、若しくは油室74’からタンク10に吐出するようになっている。
【0045】
なお、本実施例2の油室72は本発明の駆動室を構成し、油室71’は本発明の連通室を構成し、また油室74’は本発明の開放室を構成する。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0047】
例えば、前記実施例1では、アキュムレータ8に予圧が加わっていない初期状態では、電磁切換弁6が消磁状態で、油圧ポンプ2からアキュムレータ8までの直接管路が連通するように配管されているが、例えば実施例1の変形例として
図3に示されるように、電磁切換弁6’の消磁・励磁状態における配管の連通態様を、実施例1とは逆に配設してもよく、電磁切換弁6’が励磁状態で、油圧ポンプ2からアキュムレータ8までの直接管路が連通するように配管してもよい。
【0048】
同様に、実施例2の変形例として
図4に示されるように、電磁切換弁6’の消磁・励磁状態における配管の連通態様を、実施例2とは逆に配設してもよく、電磁切換弁6’が励磁状態で、油圧ポンプ2からアキュムレータ8までの直接管路が連通するように配管してもよい。
【0049】
また前記実施例2の他の変形例として
図5に示されるように、増圧装置7の油室74’に、ピストン75を油室72側に付勢するスプリング等からなる付勢手段76が設けられていてもよい。このように、付勢手段76がピストン75を油室72に向け付勢することで、連通室に向けて移動したピストン75を早期かつ確実に油室72に移動させ、ピストン75の次動作に備えることができる。
【0050】
またこのように、付勢手段76が常時圧力開放した油室74’に設けられていることで、付勢手段76が作動油の圧力に影響を受けることなく、その付勢力をピストン75に与えることができる。
【0051】
また前記実施例1,2では、流体圧制御装置として作動油を利用した油圧機器を例に説明したが、油以外の全ての液体や気体の流体においても本発明が適用できることは言うまでもなく、従って水圧機器や空圧機器等を用いた装置についても本発明を適用できる。
【0052】
更に前記実施例1,2では、切換弁6,6’,9は電磁式の弁として説明したが、これに限らず、例えば手動式の切換弁であっても構わない。