【解決手段】本発明のズームレンズ鏡筒10は、所定のズーミング操作を受け付けてズーミングを行うズームリング18、電磁気力によりズームリング18の駆動を抑制するロック状態とズームリング18の駆動を抑制しないロック解除状態とを切り替えるロック切替機構20と、を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載された発明では、切欠きにロック部材を係合させることにより機械的に移動筒の固定筒に対する移動をロックしており、このため、ロック部材や切欠きに摩耗等が生じると、しっかりとロックできなくなってしまうという問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載された発明では、広角端(すなわち、鏡筒を最も収縮させた状態)において移動筒の固定筒に対する移動をロックすることができるのみであり、その他の状態、例えば、望遠時においては移動筒の固定筒に対する移動をロックすることができなかった。
【0007】
本発明は、上記の要望に鑑みなされたものであり、ズーム機構の駆動を抑制するための機構において摩耗等によるロック不良を防止することのできるズームレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のズームレンズ鏡筒は、所定のズーミング操作を受け付けてズーミングを行うズーム機構と、電磁気力によりズーム機構の駆動を抑制するロック状態とズーム機構の駆動を抑制しないロック解除状態とを切り替えるロック切替機構と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ロック切替機構により電磁気力を利用してズーム機構のロック状態とロック解除状態とを切り替えることができるため、ロック切替機構に摩耗等の機械的劣化が生じることがなく、ロック不良を防止すると共に、ロック状態においてユーザが意図しないタイミングでズーム機構が駆動することを防ぐことができる。また、本発明によれば、電磁気力によりロック状態とロック解除状態とを切り替えることができるため、所望の望遠状態でズーム機構をロック状態とすることができる。
【0010】
本発明において、ロック切替機構は、コイルと、磁石とを備え、コイルが短絡状態であるか開放状態であるかに応じて、ロック状態とロック解除状態とを切り替えるのが好ましい。
このような構成の本発明によれば、コイルを短絡状態と開放状態とで切り替えることによりズーム機構をロック状態とロック解除状態とを切り替えることができ、電力を必要とすることなくズーム機構をロックすることができる。
【0011】
また、本発明において、ロック切替機構は、短絡状態においてズーム機構をロック状態とするのが好ましい。
このような構成の本発明によれば、コイルが短絡状態になるとショートブレーキ状態となるため、ズーム機構をロックすることができる。
【0012】
また、本発明において、ロック切替機構は、短絡状態においてコイルに生じる逆起電力により、ズーム機構をロック状態とするのが好ましい。
このような構成の本発明によれば、短絡状態に切り替えることにより、コイルの磁場によりコイルに逆起電力が生じるため、ズーム機構の駆動を抑制するロック状態とすることができ、また、開放状態に切り替えることにより、逆起電力が生じないため、ズーム機構の駆動を抑制しないロック解除状態とすることができる。
【0013】
本発明において、ロック切替機構は、コイル及び磁石を含むモータであるのが好ましい。
このような構成の本発明によれば、モータをショート状態にすることによりズーム機構の駆動を抑制することができるため、電源等が必要とならない。
【0014】
また、本発明において、モータは、ブラシレスモータであるのが好ましい。
このような構成の本発明によれば、ブラシレスモータはモータの回転軸の回転に対する抵抗力を所望の値に変化させることができるため、例えば、ズーム機構の操作に応じて抵抗力を調整することにより、ズーム操作に対する抵抗を一定にし、よりよい操作感を提供することができる。
【0015】
また、本発明において、ロック切替機構は、ロック切替機構が通電状態であるか非通電状態であるかに応じて、ロック状態とロック解除状態とを切り替えることが好ましい。
このような構成の本発明によれば、通電状態であるか非通電状態に応じて、すなわち、電気的にロック状態とロック解除状態とを切り替えることができる。
【0016】
また、本発明において、ロック切替機構は、非通電状態においてズーム機構をロック状態とすることが好ましい。
ロック切替機構をロック状態とするのは、移動時などズームレンズ鏡筒及びカメラ等の光学機器を駆動していない状態であることが多い。これに対して、このような構成の本発明によれば、ロック切替機構をロック解除状態とする際には、ズームレンズ鏡筒及びカメラ等の光学機器を駆動しており、これらの電源を使用することができ、このため、新たな電源を設ける必要がなくなる。また、光学機器の使用時のみにロック切替機構に通電させることとなるため、必要な電力を抑えることができる。
【0017】
また、本発明において、ロック切替機構は、通電状態と非通電状態とで粘度が変化する流体を有し、流体の粘度を通電状態と非通電状態とで変化させることにより、ロック状態とロック解除状態とを切り替えることが好ましい。
このような構成の本発明によれば、流体の粘度を通電状態と非通電状態とで変化させることにより、ロック状態とロック解除状態とを切り替えているため、部材の摩耗等の問題を回避できる。
【0018】
また、本発明において、流体は、通電状態において粘度が低くなり、非通電状態において粘度が高くなることが好ましい。また、本発明において、流体は、MR流体であるのが好ましい。
このような構成の本発明によれば、非通電状態で流体の粘度が高くなりロック状態とすることができるため、電力を必要とせずにロック状態とすることができる。また、新たに電源を設ける必要がない。
【0019】
本発明の光学機器は、上記のズームレンズ鏡筒を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ズーム機構の駆動を抑制するための機構において摩耗等によるロック不良を防止することのできるズームレンズ鏡筒を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
以下、本発明のズームレンズ鏡筒及び光学機器の第1実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、光学機器として一眼レフカメラに適用した場合について説明する。
【0023】
図1及び
図2は、本実施形態による一眼レフカメラ1の構成を示し、
図1は広角時、
図2は望遠時を示す。
図1及び
図2に示すように、本実施気体の一眼レフカメラ1は、撮像素子を有するカメラボディ2に、ズームレンズ鏡筒10が装着されて構成される。
【0024】
ズームレンズ鏡筒10は、例えば、焦点距離16〜300mmの高倍率望遠レンズであり、マウントを介してカメラボディに接続された固定筒12と、固定筒12内に収容された第1の移動筒14と、第1の移動筒14内に収容された第2の移動筒16とを備える。これら固定筒12、第1の移動筒14、及び、第2の移動筒16の内側には、それぞれ一又は複数のレンズ群(図示せず)が取付枠を介して保持されている。
【0025】
また、ズームレンズ鏡筒10は、固定筒12の外周に取り付けられた環状のズームリング18(ズーム機構)と、ズームリング18にリンクしたカム機構を有する。撮影者がズームリング18を固定筒12に対して所定の方向に回転させることにより、カム機構により第1の移動筒14が固定筒12に対して光軸方向に繰り出されるとともに、第2の移動筒16が第1の移動筒14に対して繰り出され、鏡筒の全長が長くなる。この第1の移動筒14及び第2の移動筒16の移動に伴い、各レンズ群の位置関係が変更され、広角状態から望遠状態へと変更される。
【0026】
また、ズームリング18を固定筒12に対して所定の方向と反対方向に回転させることにより、カム機構により第1の移動筒14が固定筒12に向かって退行すするとともに、第2の移動筒16が第1の移動筒14に向かって退行し、鏡筒の全長が短くなる。この第1の移動筒14及び第2の移動筒16の移動に伴い、各レンズ群の位置関係が変更され、望遠状態から広角状態へと変更される。すなわち、本実施形態のズームレンズ鏡筒10は、ズームリング18に対して所定のズーミング操作(回転操作)を行うことにより、ズーミング(光学的ズーミング)を行うことができる。
【0027】
なお、このような固定筒12に対して第1の移動筒14及び第2の移動筒16を進退させるカム機構は従来から周知の機構を採用することができる。また、本実施形態では、2つの移動筒を備えたズームレンズ鏡筒について説明するが、これに限らず、1つ又は3つ以上の移動筒を備えたズームレンズ鏡筒にも本発明を適用できる。また、本実施形態では、広角状態から望遠状態へ変更される場合に鏡筒の全長が長くなる構成を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、広角状態から望遠状態へ変更される場合に鏡筒の全長が短くなるよう構成されていてもよいし、広角状態から望遠状態へ変更される場合に鏡筒の全長が変化しないよう構成されていてもよい。
【0028】
さらに、本実施形態のズームレンズ鏡筒10は、ズームレンズ鏡筒10の自重(より具体的には、第1移動筒14及び当該第1移動筒14に保持されるレンズ群、並びに、第2移動筒16及び当該第1移動筒16に保持されるレンズ群)による伸縮を防止するためのロック切替機構20を備える。
図3及び
図4は、本実施形態のズームレンズ鏡筒10におけるロック切替機構20の構成を示す図であり、
図3はロック状態、
図4はロック解除状態を示す。
図3及び
図4に示すように、ロック切替機構20は、モータ22及びスイッチ26を含む回路24と、モータモータ22の回転軸22Aに取り付けられた第1の歯車30と、第1の歯車30と噛みあう第2の歯車32と、第2の歯車32とシャフト34を介して接続された第3の歯車36と、ズームリング18の内側に取り付けられ、第3の歯車36と噛みあう内歯車38とを備える。第1の歯車30は、第2の歯車32に比べて歯数が少なく、第1の歯車30及び第2の歯車32は減速機28を構成している。かかる構成により、ズームリング18の回転力は、減速機28を介してモータ22の回転軸22Aに伝達され、また、モータ22の回転軸22Aに生じる回転力に対する抵抗力は、減速機28を介してズームリング18に伝達される。
【0029】
本実施形態では、モータ22として、小型の直流モータを用いている。モータ22は、回転軸22Aに接続されたコイル22Cと、コイル22Cの周囲に配置された磁石22Bとを有する。回路24は、スイッチ26を備え、スイッチ26の両極から延びる電線がモータ22の一対のブラシ22Dに接続されている。コイル22Cは、一対の整流子22Eが接続されており、コイル22Cが回転すると、各整流子22Eは、一対のブラシ22Dのそれぞれに交互に接触する。
【0030】
図3に示すように、スイッチ26を閉鎖することにより(スイッチをONにすることにより)、回路24は短絡状態となり、モータすなわち、コイル22Cが短絡状態となる。この際、ズームリング18が回転しようとし、これに伴い磁石22Bにより生じた磁界中でモータ22のコイル22Cが回転しようとすると、コイル22Cに磁束の変化が生じることとなる。このようにコイル22Cに磁束の変化が生じると、電磁誘導によって逆起電力が発生する。この逆起電力により、コイル22Cを回転使用とする方向とは逆方向に回転を妨げるような力が発生し、ブレーキ力として作用する(以下、このようなブレーキをショートブレーキという)。このように、スイッチ26を閉鎖した状態では、モータ22の回転軸22Aにはブレーキ力が作用し、回転軸22Aは所定の回転力以上の力が作用しなければ回転することができなくなる。そして、モータ22の回転軸22Aに生じるブレーキ力は、減速機28を介してズームリング18に伝達される。このように、スイッチ26を閉鎖状態、すなわちロック切替機構20を短絡状態とすることによりに、ロック切替機構20は、ズーム機構の駆動を抑制するロック状態に切り替える。なお、ズーム機構の駆動には、自重によってズーム機構が動くことのみならず、ユーザによるズーミング操作によりズーム機構が動作することや、振動によってズーム機構が動くことも含まれる。
【0031】
図4に示すように、スイッチ26を開放することにより(スイッチをOFFにすることにより)、コイル22Cも開放状態モータとなりショートブレーキが解除される。これにより、モータ22の回転軸22Aは負荷がほとんど作用することなく回転することができる。このように、スイッチ26を開放することにより、ズームリング18は、駆動を抑制されることなく回転させることが可能な状態(ロック解除状態)となる。
【0032】
なお、本実施形態では、スイッチ26のONとOFFとの切り替え、すなわち、ロック切替機構20のロック状態とロック解除状態との切り替えは、具体的には、レンズ外観に設けけられたズームロック操作スイッチ(以下、単に「操作スイッチ」とも記載する)により実現される。例えば、操作スイッチがONとなった場合に、ロック切替機構20がロック状態となり、操作スイッチがOFFとなった場合に、ロック切替機構20がロック解除状態となる。
【0033】
また、後述するように、例えば、一眼レフカメラ1をズームレンズ鏡筒10が上方又は下方に向くような姿勢にした際に、移動筒14、16の重量によりズームリング18に回転力が作用する。減速機28の歯車比は、減速機28により増幅されてズームリング18に伝達されるショートブレーキ状態のモータ22の回転軸22Aに生じる抵抗力が、移動筒14、16の重量により生じるズームリング18の回転力よりも大きくなるように設定されている。
【0034】
以下、上記説明した一眼レフカメラ1において、所望の望遠状態にズームレンズ鏡筒10をズーミングした状態で当該一眼レフカメラ1を持ち運ぶ場合に、ズームレンズ鏡筒10の伸縮をロックする方法について説明する。
【0035】
通常使用時には、
図4を参照して説明したようにスイッチ26を開放する。上述の通り、スイッチ26を開放すると、モータ22はショートブレーキが解除され、モータ22の回転軸22Aは、負荷がほとんど作用することなく回転することができる。この状態で、ズームリング18を回転させることにより、固定筒12に対して第1の移動筒14及び第2の移動筒16が進出又は後退し、所望の望遠状態へズーミングすることができる。
【0036】
次に、所望の望遠状態にズーミングした状態でロックする場合には、
図3を参照して説明したようにスイッチ26を閉鎖する。上述の通り、スイッチ26を閉鎖することにより、モータ22がショートブレーキ状態となり、回転軸22Aを回転させようとすると抵抗力が作用する。そして、この抵抗力が減速機28により増大されて、ズームリング18に伝達される。
【0037】
このため、例えば、一眼レフカメラ1が、ズームレンズ鏡筒10が下方を向くような状態となり、第1の移動筒14及び第2の移動筒16の自重により、ズームリング18に回転力が作用しても、上記の抵抗力によりズームリング18が回転することが防止される。これにより、ズームレンズ鏡筒10が、第1の移動筒14及び第2の移動筒16の自重により伸長することを防止できる。
【0038】
また、一眼レフカメラ1が、ズームレンズ鏡筒10が上方を向くような状態となった場合であっても、同様に、ズームリング18に抵抗力が伝達されるため、ズームレンズ鏡筒10が第1の移動筒14及び第2の移動筒16の自重により収縮することを防止できる。
【0039】
なお、このようにスイッチ26を閉鎖した場合であっても、ズームリング18にモータ22による抵抗力よりも大きい回転力を加えることにより、ズーミング操作を行うことは可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の一眼レフカメラ1によれば、スイッチ26を開放することによりモータ22のコイル22Cを開放状態とした場合には、モータ22はショートブレーキが解除された状態となり、ズームリング18には抵抗力が作用しないが、スイッチ26を閉鎖することによりモータ22のコイル22Cを短絡状態とした場合には、ショートブレーキによりズームリング18には回転に対して抵抗力が作用する。このため、ズームレンズ鏡筒10を所望の望遠状態とした状態であっても、一眼レフカメラ1が上方又は下方に向けられて第1の移動筒14及び第2の移動筒16の自重によりズームリング18に回転力が作用しても、スイッチ26を閉鎖することにより、ズームリング18に抵抗力が生じて回転することが防止される。これにより、ズームレンズ鏡筒10を所望の望遠状態で、固定筒12に対して第1の移動筒14及び第2の移動筒16が移動するのを防止ができる。
【0041】
また、本実施形態では、モータ22のコイル22Cを短絡状態することにより、電磁気力によりズームリング18に負荷を加えている。このため、ロック切替機構に摩耗等の機械的劣化が生じることがなく、ロック不良を防止すると共に、ロック状態においてユーザが意図しないタイミングでズームリング18が駆動することを防ぐことができる。
【0042】
また、本実施形態では、モータ22をショートブレーキ状態にすることによりズームリング18に負荷を加える構成としているため、電力を必要とすることなくズームリング18の駆動を抑制することができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、ズームリング18の回転を機械的に固定せず、モータ22のショートブレーキにより抵抗力を加えているため、ロック状態であってもズームリング18に大きな力を加えることによりズーム操作が可能である。これは、天体撮影等のカメラを上方に向けて撮影を行う場合や、高所から下方を撮影する場合などのカメラを下方に向けて撮影を行う場合においても、ズームレンズ鏡筒10の自重により望遠状態が変化しなくなるため、有効である。
【0044】
なお、本発明の一眼レフカメラは、上記の実施形態に限定されない。例えば、モータとしてブラシレスモータを用いることができる。このように、モータ22としてブラシレスモータを用いることにより、モータ22の回転軸22Aの回転に対する抵抗力を所望の値に変化させることができる。
【0045】
通常、複数のレンズ群を備えたズームレンズ鏡筒では、ズームリング18の回転と倍率とが略比例関係になるように、固定筒に対して複数の移動筒を駆動する。しかしながら、倍率と複数の固定筒との位置関係とは、必ずしも比例関係とはならず、望遠状態と、広角状態とではズームリングの回転角度と移動筒の移動距離との関係は異なってくる。このため、従来のズームレンズ鏡筒では、ズームリングを回転させる際の回転操作に対する抵抗が、望遠状態と広角状態とでは異なってしまうという問題があった。
【0046】
これに対して、モータ22としてブラシレスモータを用いれば、モータ22の回転軸22Aの回転に対する抵抗力を所望の値に変化させることができるため、ズームリングの回転に応じて抵抗力を調整することにより、例えば、ズームリング18にかかる回転操作に対する抵抗を一定にし、よりよい操作感を提供することができる。
【0047】
また、本実施形態では、ロック解除状態では、スイッチ26を開放し、モータ22のショートブレーキを解除するのみであったが、例えば、
図5に示すように、第1の歯車30と第2の歯車32と噛み合いを解除してもよい。この場合には、スイッチ26は開放する必要はない。
【0048】
なお、上記の第1実施形態では、コイル及び磁石が組み込まれたモータを用いた場合について説明したが、これによらず、コイル及び磁石を適宜な位置に配置し、コイルが短絡状態の時に磁石の磁場によりコイルに接続された回路に逆起電力が発生するような構成であればよい。
【0049】
<実施形態2>
また、ズーム機構のロック状態とロック解除状態とを切り替える機構はモータに限られず、ズーム機構の駆動を抑制する状態と、ズーム機構の駆動を抑制しない状態とを切り替え可能であればよく、例えば、MR流体のような通電状態と非通電状態とにおいて粘度が変化するような流体を用いることができる。以下、ズーム機構の駆動を抑制する機構としてMR流体を用いた場合の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様な構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図6は、第2実施形態のズームレンズ鏡筒110の構成をロック切替機構の構成を示し、ロック解除状態を示す。
図6に示すように、第2実施形態のズームレンズ鏡筒110の備えるロック切替機構24は、第1実施形態のモータ22に代えて負荷付与装置122が設けられ、回路124にスイッチ126に加えて電源127が設けられている点で第1実施形態と異なっている。なお、電源127は、レンズをフォーカシングするためのモータなどを駆動する電源と兼ねることができる。
【0051】
負荷付与装置122は、ハウジング122Dと、ハウジング122D内に充填されたMR流体122Eと、回転軸122Aと、回転軸122Aに取り付けられた複数の羽根状部材122Bと、ハウジング122D内に設けられた一対の電極122Cとを備える。
【0052】
ハウジング122Dには開口が形成されており、この開口を通して回転軸122Aの一端がハウジング122Dの外方に突出している。回転軸122Aの外部に突出した端部には、第1の歯車30が取り付けられている。
【0053】
複数の羽根状部材122Bは板状の部材からなり、回転軸122Aのハウジング122D内の部分に、外周に所定の角度間隔をあけて取り付けられている。羽根状部材122Bの枚数及び大きさは、ズーミング操作をロックするのに必要な荷重に応じて設定されればよく、特に限定されるものではない。
【0054】
負荷付与装置122の一方の電極122Cにはスイッチ126から延びる電線が接続されており、他方の電極122Cには電源127から延びる電極が接続されている。スイッチ126を閉鎖することにより、一対の電極122Cの間に電位差が生じ、磁場が発生する。
【0055】
MR流体122Eは、磁性微粒子を含む流体である。MR流体122Eは磁力が作用していない状態では、磁性微粒子が互いに引き寄せられ、ランダムに結合していることにより粘性が高いが、磁力が作用すると磁性微粒子が一定方向に整列し、所定の方向の抵抗(粘度)が低くなるような流体である。
【0056】
負荷付与装置122をロック状態にするためには、回路124のスイッチ126を開放する。これにより、負荷付与装置122は非通電状態となり、ハウジング122D内には磁力が作用しない。このため、負荷付与装置122の回転軸122Aを回転しようとすると、MR流体122Eの粘性により、羽根状部材122Bに抵抗力が作用する。これにより、スイッチ126を開放した状態では、所定の回転力以上の力が作用しなければ、負荷付与装置122の回転軸122Aを回転することができなくなる。そして、負荷付与装置122の回転軸122Aに生じる抵抗力は、減速機28を介してズームリング18に伝達される。このように、スイッチ126が閉鎖状態である場合、すなわちロック切替機構24が通電状態である場合に、ロック切替機構24は、ズーム機構の駆動を抑制するロック状態となる。
【0057】
これに対して、負荷付与装置122をロック解除状態にするためには、回路124のスイッチを閉鎖する。これにより、負荷付与装置122は非通電状態となり、ハウジング122D内に磁場が生じる。このようにハウジング122D内に磁場が生じると、回転軸122Aを中心に羽根状部材122Bが回転しても、羽根状部材122BにはMR流体122Eによる抵抗力がほとんど作用しなくなる。これにより、負荷付与装置122の回転軸122Aは負荷がほとんど作用することなく回転することができる。このように、スイッチ126が開放状態である場合、すなわちロック切替機構24が非通電状態である場合に、ロック切替機構24は、ズーム機構の駆動を抑制しないロック解除状態となる。
【0058】
なお、本実施形態では、MR流体を用いた場合を説明したが、これに限らず、通電状態と非通電状態とで粘度が変化する流体であればよく、ER流体等も用いることができる。
【0059】
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様な効果が得られる。
また、第2実施形態のロック切替機構も、非通電時においてロック状態となるため、ロック解除のための電源として、レンズをフォーカシングするためのモータなどの電源を共用することができるため、新たに電源を設ける必要がない。
また、第2実施形態では、MR流体122Eの粘度を通電状態と非通電状態とで変化させることにより、ロック状態とロック解除状態とを切り替えているため、部材の摩耗等の問題を回避できる。
【0060】
<実施形態3>
なお、上記の第1及び第2実施形態では、ズームリング18を回転させることによりズーミングを行う場合について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されない。
【0061】
図7は、本発明の第3実施形態によるズームレンズ鏡筒210のロック切替機構の構成を示す図であり、ロック解除状態を示す。第3実施形態のズームレンズ鏡筒210は、固定筒212を保持した状態で、移動筒214を被写体側に向かって引き出す又は結像側に押し込む操作により、各レンズ群の位置関係が変更され、広角状態から望遠状態へと変更される。すなわち、本実施形態のズームレンズ鏡筒210は、移動筒214を光軸方向に伸縮することによりズーミング(光学的ズーミング)を行うことができる。
【0062】
本実施形態のズームレンズ鏡筒210のロック切替機構220は、第1実施形態と同様に、モータ22を含む回路24と、モータ22の回転軸22Aに取り付けられた第1の歯車30と、第1の歯車30と噛みあう第2の歯車32と、第2の歯車32とシャフト34を介して接続された第3の歯車36と、を備える。さらに、第3実施形態のズームレンズ鏡筒210のロック切替機構220では、ピニオン238が移動筒214の外周面に設けられており、第3の歯車36がこのピニオン238と噛み合っている。なお、本実施形態においても、第1の歯車30は、第2の歯車32に比べて歯数が少なく、第1の歯車30及び第2の歯車32は減速機28を構成している。
【0063】
本実施形態においても、スイッチ26を閉鎖することによりモータ22は通電状態となり、回転軸22Aには外部から作用する回転力に対する抵抗力が生じるショートブレーキ状態となる。この抵抗力は、減速機28で増幅されて第3の歯車36からピニオン238に伝達される。このため、スイッチ26を閉鎖することにより、移動筒214を固定筒212に対して被写体側又は結像側に移動しようとしても、所定の大きさ以上の力を加えなければ移動筒214を移動することができない、すなわち、ズーム機構の駆動が抑制されたロック状態となる。
【0064】
また、スイッチ26を開放することにより、モータ22は非通電状態となり、ショートブレーキが解除される。このため、スイッチ26を開放することにより、移動筒214を固定筒212に対して被写体側又は結像側に容易に移動することができる、すなわち、ズーム機構の駆動が抑制されていないロック解除状態とすることができる。
【0065】
なお、本実施形態では、一眼レフカメラに本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、ミラーレスカメラや、ビデオカメラなどのズームレンズ鏡筒を備えた光学機器であれば本発明を適用することができる。