【解決手段】物体側の被写体像を拡大し結像させる光学系であって、少なくとも物体側から順に配置された、フォーカシング時に結像面に対して固定された正の屈折力を有する第1レンズ群と、フォーカシング時に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、前記第2レンズ群は遠距離物体から近距離物体へのフォーカシング時に物体側に移動し、所定の条件式を満足する観察用光学系及びそれを備えた撮像装置。
物体側の被写体像を拡大し結像させる光学系であって、少なくとも物体側から順に配置された、フォーカシング時に結像面に対して固定された正の屈折力を有する第1レンズ群と、フォーカシング時に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、前記第2レンズ群は遠距離物体から近距離物体へのフォーカシング時に物体側に移動し、以下の条件式を満足することを特徴とする観察用光学系。
(1) 0.800 ≦ f2/f ≦ 5.000
ただし、
f2:第2レンズ群の焦点距離
f:遠距離物体合焦状態での光学系全系の焦点距離
前記第1レンズ群内に光軸に対して垂直に移動させて手振れ補正を行う手振れ補正群を具備し、以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の観察用光学系。
(4) 0.400 ≦ fv/f ≦ 5.000
ただし、
fv:手振れ補正群の焦点距離
請求項1から5のいずれか一項に記載の観察用光学系と、前記観察用光学系よりも物体側に配置した結像光学系とを有し、観察用光学系と前記結像光学系とによって形成される結像が、前記観察用光学系のみによって形成される結像と異なる倍率であることを特徴とする拡大縮小観察用光学系。
請求項1から5のいずれか一項に記載の観察用光学系と、該観察用光学系によって形成された結像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする撮像装置。
物体側の被写体像を拡大して結像させる手振れ補正観察用光学系であって、少なくとも、物体側から順に配置された、フォーカシング時に結像面に対して固定された正の屈折力を有する第1レンズ群と、フォーカシング時に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群とを有し、前記第1レンズ群が、光軸上の厚さ値より直径値が小さい少なくとも1個のロッドレンズと、該ロッドレンズより像側に配置されて光軸に対し直交する方向に移動して手振れ補正を行う手振れ補正群とを含むことを特徴とする手振れ補正観察用光学系。
【背景技術】
【0002】
近年、観察用光学系及びそれを備えた撮像装置は、限られた狭い空間に挿入して撮像するために、物体側レンズ群の小径化が望まれている。
【0003】
また、このような観察用光学系及びそれを備えた撮像装置においては、高解像度化も達成しなければならない課題の一つである。高解像度化は、被写体像をより精密に確認するためのみならず、関係者間での情報の共有、または遠隔操作での被写体の確認等にも必要とされることからも、高解像度化が望まれている。
【0004】
上述した従来の観察用光学系及びそれを備えた撮像装置における対物レンズの小径化は、高解像度化に関し、以下の三つの問題がある。
第一は、Fナンバーが大きく暗い光学系にすると、小径化を容易に実現することができる。しかし、Fナンバーが大きく暗い光学系を用いると、回折限界によって光学系の解像性能が制限され、高解像度の画質を達成できないという問題が生じる。
【0005】
第二は、対物レンズによって形成される空間中間結像が小さいことである。例えば、対物レンズ及びリレーレンズ系を小径にし、かつそれに対応して空間中間結像も小径にすることで所定領域へ挿入される部分の全体を小径にすることが考えられる。一方で、高解像度化を実現するためには、対物レンズによる空間中間結像の解像度をリレーレンズ系の横倍率と、撮像素子に必要な解像度との積にする事が必要である。そのため、対物レンズに求められる解像度が高くなるため、結果的にレンズ枚数を多くしかつ有効径を大きくしなければならないという問題が生じる。
【0006】
第三は、従来の観察用光学系では、物体側より順に、対物レンズ、単数又は複数のリレーレンズ系、接眼レンズ、結像レンズ、撮像素子の順で結像をリレーさせている。前記単数又は複数のリレーレンズ系は、小径部分の長さが一定以上長くして被写体に近接した撮像することを可能にするためである。しかし、複数の空間中間結像を形成した場合、各空間中間結像間で解像度が劣化することは避けられず、最終的には望んでいる高解像度の画質が得られないという問題が生じる。
【0007】
従来の観察用光学系として、試料からの光を集光する対物光学系と、該対物光学系により集光された光を所定の位置に結像させる結像光学系との間の光軸上に配置され、前記対物光学系側を前側、結像光学系側を後側として、前側から光軸方向に沿って順に前群光学系と後群光学系とを備えるとともに、これら光学系を光軸方向に相対的に移動させるレンズ駆動手段を備え、前記前群光学系および前記後群光学系は、それらの焦点距離の符号が異なり、かつ、焦点距離の絶対値がほぼ等しいフォーカス調整ユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
従来の他の観察用光学系として、物体側より順に、負のレンズ群と正のレンズ群の少なくとも二つのレンズ群よりなり、少なくとも一つのレンズ群を移動させることによって作動距離を変え得るようにし、f
p を正のレンズ群の焦点距離、Dを作動距離を変化させるために移動するレンズ群の移動量とするとき、条件(1) 50mm<f
p <100mm及び条件式(2) 5mm<D<20mmを満足する実体顕微鏡の対物光学系が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
従来の他の観察用光学系として、顕微鏡対物レンズであるが、物体側から順に、正の屈折力を持つ第1レンズ群G
1 と負の屈折力を持つ第2レンズ群G
2 とを有し、前記第1レンズ群G
1 と物体面との間に配置される透明物体の光学的光路長の変化に応じて前記第2レンズ群G
2 が光軸方向に沿って移動可能に構成され、全系の焦点距離をfとし、前記第1レンズ群G
1 の焦点距離をf
1 、前記第2レンズ群G
2 の焦点距離をf
2 、前記第1レンズ群G
1 の最も物体側の面の曲率半径をr
1 、前記透明物体の光学的光路長を0.1だけ変化させた時の前記第2レンズ群G
2 の移動量をΔdとするとき、(1) 1<f
1 /f<5(2) −10<f
2 /f<−1(3) −1<f/r
1 ≦0(4) 0.06<Δd/f<3を満足する顕微鏡対物レンズが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1発明の第1実施例の観察光学系の光学断面図である。(a)は遠距離物体合焦状態を示し、(b)は近距離物体合焦状態を示す。
【
図2】第1発明の第1実施例の観察光学系の遠距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図3】第1発明の第1実施例の観察光学系の近距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図4】第1発明の第1実施例の観察光学系の望遠端で遠距離物体合焦状態の横収差図である。横軸は、瞳面上での主光線からの距離を示す。実線はd線を示し、短破線はg線を示し、長破線はC線を示す。(a)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(b)は軸上像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(c)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図である。(d)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(e)は軸上像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(f)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行った横収差図である。
【
図5】第1発明の第2実施例の観察光学系の光学断面図である。(a)は遠距離物体合焦状態を示し、(b)は近距離物体合焦状態を示す。
【
図6】第1発明の第2実施例の観察光学系の遠距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図7】第1発明の第1実施例の観察光学系の近距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図8】第1発明の第2実施例の観察光学系の望遠端で遠距離物体合焦状態の横収差図である。横軸は、瞳面上での主光線からの距離を示す。実線はd線を示し、短破線はg線を示し、長破線はC線を示す。(a)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(b)は軸上像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(c)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図である。(d)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(e)は軸上像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(f)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行った横収差図である。
【
図9】第1発明の第3実施例の観察光学系の光学断面図である。(a)は遠距離物体合焦状態を示し、(b)は近距離物体合焦状態を示す。
【
図10】第1発明の第3実施例の観察光学系の遠距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図11】第1発明の第3実施例の観察光学系の近距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図12】第1発明の第4実施例の観察光学系の望遠端で遠距離物体合焦状態の横収差図である。横軸は、瞳面上での主光線からの距離を示す。実線はd線を示し、短破線はg線を示し、長破線はC線を示す。(a)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(b)は軸上像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(c)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図である。(d)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(e)は軸上像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(f)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行った横収差図である。
【
図13】第1発明の第4実施例の観察光学系の光学断面図である。(a)は遠距離物体合焦状態を示し、(b)は近距離物体合焦状態を示す。
【
図14】第1発明の第4実施例の観察光学系の遠距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図15】第1発明の第4実施例の観察光学系の近距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図16】第1発明の第4実施例の観察光学系の望遠端で遠距離物体合焦状態の横収差図である。横軸は、瞳面上での主光線からの距離を示す。実線はd線を示し、短破線はg線を示し、長破線はC線を示す。(a)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(b)は軸上像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(c)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図である。(d)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(e)は軸上像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(f)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行った横収差図である。
【
図17】第1発明の第5実施例の観察光学系の光学断面図である。(a)は遠距離物体合焦状態を示し、(b)は近距離物体合焦状態を示す。
【
図18】第1発明の第5実施例の観察光学系の遠距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図19】第1発明の第1実施例の観察光学系の近距離物体合焦状態の縦収差図である。(a)は球面収差図であり、(b)は非点収差図であり、(c)は歪曲収差図である。
【
図20】第1発明の第5実施例の観察光学系の望遠端で遠距離物体合焦状態の横収差図である。横軸は、瞳面上での主光線からの距離を示す。実線はd線を示し、短破線はg線を示し、長破線はC線を示す。(a)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(b)は軸上像点における手振れ補正を行っていない横収差図であり、(c)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行っていない横収差図である。(d)は最大像高の70%の像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(e)は軸上像点における手振れ補正を行った横収差図であり、(f)は最大像高の−70%の像点における手振れ補正を行った横収差図である。
【
図21】第3発明の撮像装置の実施例の光学断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の観察用光学系及びそれを備えた撮像装置について説明する。
本発明に係る観察用光学系は、物体側の被写体像を拡大し結像させる光学系であって、少なくとも物体側から順に配置された、フォーカシング時に結像面に対して固定された正の屈折力を有する第1レンズ群と、フォーカシング時に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群とからなり、前記第2レンズ群は遠距離物体から近距離物体へのフォーカシング時に物体側に移動し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1) 0.800 ≦ f2/f ≦ 5.000
ただし、
f2:第2レンズ群の焦点距離
f:遠距離物体合焦状態での光学系全系の焦点距離
である。
【0021】
条件式(1)は、第2レンズ群の焦点距離と遠距離物体合焦状態における光学系全系の焦点距離の比に関する。この数値が下限を下回ると、第2レンズ群のパワーが強くなり、各物体距離での球面収差や像面湾曲等の収差補正が不十分となる。また、この数値が上限を超えると、第2レンズ群のパワーが弱くなって、フォーカスに要する移動量が大きくなり、第2レンズ群近傍の径の小型化が困難となる。
【0022】
上述の構成によれば、本発明に係る観察用光学系は、遠距離物体合焦状態での光学系全系の焦点距離と第2レンズ群との比を任意の範囲で設定することによって、第2レンズ群のフォーカシングでの移動量を適正に保つことができるため、観察用光学系全体を小型化する事ができる。また、本発明に係る観察用光学系は、フォーカシングを備えることにより、被写体との光軸間隔が変化した際にフォーカシングにより簡易にピント調整をすることができるため、高解像度を実現することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る観察用光学系は、フォーカシング時に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群よりも物体側にフォーカシング時に結像面に対して固定された第1レンズ群を配置していることにより、物体側の小径部分の光路長を長く確保することもできる。
【0024】
本発明に係る観察用光学系は、上述のように構成することにより、物体側の光学有効径が小径でありながら、小径部分の光路長を長く確保でき、高解像度化が可能な観察用光学系及びそれを備えた撮像装置を構成することができる。
【0025】
本発明に係る観察用光学系は、上述の構成のように、フォーカシングに際し第2レンズ群のみを可動としていることにより、フォーカシング時に全体繰出しや複数群可動を行う従来の構成と比べて高速なフォーカシングが可能である。これにより、高速なフォーカス調整が可能な観察用光学系およびそれを備えた撮像装置を構成することができる。
【0026】
条件式(1)は、より有効な効果を得るため、好ましくは0.900 ≦ f2/f ≦ 4.000であり、より好ましくは1.000 ≦ f2/f ≦ 3.500である。
【0027】
本発明に係る観察用光学系はまた、以下の条件式を満足することが好ましい。
(2) 0.200 ≦ b2f ≦ 0.900
ただし、
b2f:第2レンズ群の遠距離物体合焦状態での横倍率
【0028】
条件式(2)は、第2レンズ群の遠距離物体合焦状態における横倍率に関する。この数値が下限を下回ると、第2レンズ群のパワーが強くなり、各物体距離での球面収差や像面湾曲等の収差補正が不十分となる。また、この数値が上限を超えると、第2レンズ群のパワーが弱くなって、フォーカスに要する移動量が大きくなり、第2レンズ群近傍の径の小型化が困難となる。
【0029】
条件式(2)は、より有効な効果を得るため、好ましくは0.300 ≦ b2f ≦ 0.700、より好ましくは 0.350 ≦ b2f ≦ 0.550である。
【0030】
本発明に係る観察用光学系はまた、以下の条件式を満足することが好ましい。
(2) 0.200 ≦ b2f ≦ 0.900
ただし、
b2f:第2レンズ群の遠距離物体合焦状態での横倍率
【0031】
条件式(2)は、第2レンズ群の遠距離物体合焦状態における横倍率に関する。この数値が下限を下回ると、第2レンズ群のパワーが強くなり、各物体距離での球面収差や像面湾曲等の収差補正が不十分となる。また、この数値が上限を超えると、第2レンズ群のパワーが弱くなって、フォーカスに要する移動量が大きくなり、第2レンズ群近傍の径の小型化が困難となる。
【0032】
条件式(2)は、より有効な効果を得るため、好ましくは0.300 ≦ b2f ≦ 0.700であり、より好ましくは0.350 ≦ b2f ≦ 0.550である。
【0033】
本発明に係る観察用光学系はまた、以下の条件式を満足することが好ましい。
(3) 0.500 ≦ (1−b2f
2)×b3f
2 ≦ 2.000
b3f:第3レンズ群の遠距離物体合焦状態での横倍率
なお、第3レンズ群が無い場合は、b3fは1.000
【0034】
条件式(3)は、第2レンズ群の光軸上の移動量に対する像面変動の比に関する。この数値が下限を下回ると、物体距離を変動させるための第2レンズ群の移動量が大きくなり、第2レンズ群近傍の径の小型化が困難となる。また、この数値が上限を超えると、第2レンズ群のパワーが強くなり、各物体距離での球面収差や像面湾曲等の収差補正が不十分となる。
【0035】
条件式(3)は、より有効な効果を得るため、好ましくは0.600 ≦ (1−b2f
2)×b3f
2 ≦ 1.800、より好ましくは0.700 ≦ (1−b2f
2)×b3f
2 ≦ 1.600である。
【0036】
本発明に係る観察用光学系はまた、前記第1レンズ群内に光軸に対して垂直に移動させて手振れ補正を行う手振れ補正群を具備し、以下の条件式を満足することが好ましい。
(4) 0.400 ≦ fv/f ≦ 5.000
ただし、
fv:手振れ補正群の焦点距離
【0037】
条件式(4)は、手振れ補正群の焦点距離と遠距離物体合焦状態における光学系全系の焦点距離の比に関する。この数値が下限を下回ると、手振れ補正群のパワーが強くなって、手振れ補正時の球面収差やコマ収差の収差補正が不十分となる。また、この数値が上限をこえると、手振れ補正群のパワーが弱くなって、手振れ補正群の光軸に対する垂直方向の手振れ補正量が大きくなり、外径が大きくなる。
【0038】
観察用光学系はこのように、手振れ補正レンズ群を容易に組み入れて、手振れによる被写体像のブレを効率的に抑制することが可能な観察用光学系およびそれを備えた撮像装置を構成することができる。
【0039】
条件式(4)は、より有効な効果を得るため、好ましく 0.500 ≦ fv/f ≦ 4.000、より好ましくは0.600 ≦ fv/f ≦ 3.500である。
【0040】
本発明に係る観察用光学系はまた、以下の条件式を満足することが好ましい。
(5) 0.500 ≦ (1−bvf)×baf ≦ 1.500
ただし、
bvf:手振れ補正群の遠距離物体合焦状態での横倍率
baf:手振れ補正群よりも像側に位置するレンズ群の遠距離物体合焦状態での横倍率
【0041】
条件式(5)は、手振れ補正群の光軸に対する垂直方向の移動量に対する像面の移動量の比に関する。この数値が下限を下回ると、手振れ補正群のパワーが弱くなって、手振れ補正群の光軸に対する垂直方向の手振れ補正量が大きくなり、外径が大きくなる。また、この数値が上限を超えると、手振れ補正群のパワーが強くなり、手振れ補正時の球面収差やコマ収差の収差補正が不十分となる。
【0042】
条件式(5)は、より有効な効果を得るため、好ましく0.700 ≦ (1−bvf)×baf ≦ 1.300、より好ましくは0.900 ≦ (1−bvf)×baf ≦ 1.100である。
【0043】
また、本発明に係る拡大縮小観察用光学系は、第1発明の観察用光学系と、前記観察用光学系よりも物体側に配置した結像光学系とを有し、観察用光学系と前記結像光学系とによって形成される結像が、前記観察用光学系のみによって形成される結像と異なる大きさであることを特徴とする。
【0044】
本発明に係る観察用光学系は、上述の構成のみでも拡大撮像可能な光学系として使用することができるが、この拡大縮小観察用光学系によれば、物体側に任意の画角の対物レンズと組み合わせて光学像のリレーをさせることによって、より大きな拡大倍率もしくは縮小倍率を実現することができる。
【0045】
また、本発明に係る撮像装置は、上述の観察用光学系と、該観察用光学系によって形成された結像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0046】
本発明に係る観察用光学系は、観察用光学系を構成することのみならず、撮像装置にも適用することができる。
【0047】
また、本発明に係る手振れ補正観察用光学系は、物体側の被写体像を拡大して結像させる手振れ補正観察用光学系であって、少なくとも、物体側から順に配置された、フォーカシング時に結像面に対して固定された正の屈折力を有する第1レンズ群と、フォーカシング時に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第2レンズ群とを有し、前記第1レンズ群が、光軸上の厚さ値より直径値が小さい少なくとも1個のロッドレンズと、該ロッドレンズより像側に配置されて光軸に対し直交する方向に移動して手振れ補正を行う手振れ補正群とを含むことを特徴とする。
【0048】
入口が狭く奥まった場所を撮影する観察用光学系においては、挿入する物体側のレンズ有効径が小さいことが望まれる。また、撮影する環境としては、観察用光学系及び撮像装置を撮影者が持ちながら撮影することが多い。そのような環境の中で高解像度の画像を得るためには、観察用光学系にフォーカシング時に光軸に沿って移動する第2レンズ群すなわちフォーカシング群、及び手振れ補正群を備えている必要がある。これに対し、本発明に係る手振れ補正観察用光学系は、第2レンズ群はフォーカシング時、例えば被写体もしくは撮影者が光軸方向に移動した際にピントを調整することで高解像度化に寄与し、手振れ補正群は例えば撮影者が当該観察用光学系を持つことによって生じる光軸に対し略直行する方向への手振れを補正することで高解像度化に寄与することができる。
【0049】
手振れ補正観察用光学系は、また、第1レンズ群にロッドレンズを含むことにより、奥まった場所を撮影するために光路長を長くすることができる。さらに、手振れ補正観察用光学系は、また第2レンズ群は第1レンズ群よりも像側に位置し、第1レンズ群のロッドレンズよりも像側に防振群を含むことにより、第1レンズ群の光学有効径の肥大化を低減することができる。
上述のように、当該手振れ補正観察用光学系は、入口が狭く奥まった場所を撮影する場合にも、高解像度化を実現することができる。
【実施例1】
【0050】
以下、本発明の数値実施例を示す。
以下の表において、FNO.はFナンバー、fは全系の焦点距離(mm)、Wは半画角(°)、rは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、Ndはd線の屈折率、vdはd線基準のアッベ数を示す。
【0051】
図1,5,9,13,17の各光学断面図において、数字1,2,3,・・・・は面番号を示し、G1が前レンズ群を示し、G2は後レンズ群を示す。IMGは、空間中間結像を示す。G3は手振れ補正レンズ群を示し、G4は合焦レンズ群を示し、G5は撮像レンズ群を示す。後レンズ群G2は手振れ補正レンズ群G3を含む。
図2,3,6,7,10,11,14,15,18、19の各収差図において、(a)は球面収差(SA(mm))を示し、(b)は非点収差(AST(mm))を示し、(c)は歪曲収差(DIS(%))を示す。
球面収差図において、縦軸はFナンバー(図中、FNO.で示す)を示し、実線はd線(d−line)、短破線はg線(g−line)、長破線はC線(C−line)の収差を示す。非点収差図において、縦軸は半画角(図中、Wで示す)を示し、実線はサジタル平面(図中、Sで示す)、破線はメリディオナル平面(図中、Mで示す)を示す。歪曲収差 図において、縦軸は半画角(図中、Wで示す)を示す。
図4,8,12,16,20は、観察光学系の望遠端で遠距離物体合焦状態の横収差図である。横軸は、瞳面上での主光線からの距離を示す。実線はd線を示し、短破線はg線を示し、長破線はC線を示す。
【0052】
非球面は次式で定義される。
z=ch
2/[1+{1-(1+k)c
2h
2}
1/2]+A4h
4+A6h
6+A8h
8+A10h
10・・・
但し、cは曲率(1/r)、hは光軸からの高さ、kは円錐係数、A4、A6、A8、A10・・・は各次数の非球面係数を示す。
【0053】
本発明による観察用光学系の実施例1を図面を参照して説明する。
図1は光学断面図、
図2,3はそれぞれ遠距離物体合焦状態、近距離物体合焦状態での縦収差図である。表1,2はその数値データである。
【0054】
実施例1の観察用光学系ILは、
図1に示すように、前レンズ群G1、後レンズ群G2、合焦レンズ群G4、及び撮像レンズ群G5を有する。
【0055】
(表1)諸元表
FNO.=14.626
f = 9.755
Y =17.000
(表2)可変間隔表
【実施例2】
【0056】
本発明による観察用光学系の実施例2を図面を参照して説明する。
図5は光学断面図、
図6,7はそれぞれ遠距離物体合焦状態、近距離物体合焦状態での縦収差図である。表3,4はその数値データである。
【0057】
実施例2の観察用光学系ILは、
図5に示すように、前レンズ群G1、後レンズ群G2、合焦レンズ群G4、及び撮像レンズ群G5を有する。
【0058】
(表3)諸元表
FNO.=14.565
f = 9.822
Y =17.000
(表4)可変間隔表
【実施例3】
【0059】
本発明による観察用光学系の実施例3を図面を参照して説明する。
図9は光学断面図、
図10,11はそれぞれ遠距離物体合焦状態、近距離物体合焦状態での縦収差図である。表5,6はその数値データである。
【0060】
実施例3の観察用光学系ILは、
図9に示すように、前レンズ群G1、後レンズ群G2、合焦レンズ群G4、及び撮像レンズ群G5を有する。
【0061】
(表5)諸元表
FNO.=14.575
f = 9.757
Y =17.000
(表6)可変間隔表
【実施例4】
【0062】
本発明による観察用光学系の実施例4を図面を参照して説明する。
図13は光学断面図、
図14,15はそれぞれ遠距離物体合焦状態、近距離物体合焦状態での縦収差図である。表7,8はその数値データである。
【0063】
実施例4の観察用光学系ILは、
図13に示すように、前レンズ群G1、後レンズ群G2、合焦レンズ群G4、及び撮像レンズ群G5を有する。
【0064】
(表7)諸元表
FNO.=15.102
f =10.073
Y =17.000
(表8)可変間隔表
【実施例5】
【0065】
本発明による観察用光学系の実施例5を図面を参照して説明する。
図17は光学断面図、
図18,19はそれぞれ遠距離物体合焦状態、近距離物体合焦状態での縦収差図である。表9〜11はその数値データである。
【0066】
実施例5の観察用光学系ILは、
図5に示すように、前レンズ群G1、後レンズ群G2、及び合焦レンズ群G4を有する。すなわち、実施例5は、実施例1〜4の撮像レンズ群G5に対応するレンズ群を有しない。
【0067】
(表9)諸元表
FNO.=12.220
f =34.796
Y =14.200
(表10)非球面データ(表示していない非球面係数は0.00である。)
(表11)可変間隔表
【0068】
[条件式対応値]
各実施例の請求項記載の数式に対応する条件式の対応値を表12に示す。
(表12)条件式対応値
【0069】
各実施例の観察用光学系において、手振れ補正状態での防振群の光軸と垂直な方向への移動量は全て0.330mmである。また、その時の物体面上の光軸移動量は下記に記載の通りである。
実施例1 0.063mm
実施例2 0.063mm
実施例3 0.065mm
実施例4 0.067mm
実施例5 0.076mm
【0070】
第3発明の撮像装置の実施例は、
図21の断面説明図に示すように、照明光源101から出射した照明光が、照明光路102を経由して被写体(図示せず)へ照射される。被写体で反射された被写体光は、対物レンズ系OLによって空間中間結像IMGを形成する。空間中間結像IMGは、結像レンズ系ILによって撮像装置105内の撮像素子106上に再結像する。撮像素子106から出力された撮像信号は表示装置107に入力され、表示装置107が被写体像を表示する。