【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.2014年9月14日 INTERSPEECH2014 アブストラクト集 第89頁にて発表 2.2014年9月14日 INTERSPEECH 2014の会場においてUSBメモリで配布された予稿集にて発表 3.2014年9月14日 http://www.interspeech2014.org/doc/ABSBOOK_15Sep2014.pdf http://www.isca−speech.org/archive/interspeech_2014/にて発表 4.2014年9月15日 INTERSPEECH2014にて発表 5.2014年9月22日 上智大学情報理工学科 日本音声学会 共催講演会 交流会にて発表
【課題】シンプルな構成で、声道を容易にイメージでき、操作が簡単で、目的とする音を生成しやすく、目的とする音の生成及び確認と舌の形状とを操作に伴い簡単に確認できる声道模型を提供すること。
【解決手段】声道模型10は、透明の部材によって囲まれることでL字型の中空部として形成される声道部30と、互いに対して整列して配設され個別に操作可能な複数の本体部材81を有し、声道部30に配設される舌本体ユニット80とを有する。本体部材81が口腔部33として機能する声道部30の一部を塞ぐ閉塞状態と口腔部33が開く開放状態との間を本体部材81が往復するように、本体部材81は個別に移動可能である。
前記本体部材は、前記周面開口部を介して前記声道部の軸方向に直交する方向に沿って前記口腔部として機能する前記声道部の一部の内周面をスライド移動することを特徴とする請求項3に記載の声道模型。
前記本体部材が前記開放状態において前記声道部に対して吊り下げられるように、前記声道部は、前記周面開口部の縁部に配設され、前記開放状態において前記動作本体部を保持する保持部材を有することを特徴とする請求項6に記載の声道模型。
前記動作本体部は、前記口腔部の内部に対向する面部に配設され、前記口腔部として機能する前記声道部の一部の軸方向に沿って前記動作本体部を貫通して配設され、前記動作本体部の中心軸上に配設され、声道模型の高さ方向において窪んでいる動作溝部を有することを特徴とする請求項7に記載の声道模型。
前記本体部材が前記声道部に取り付けられた状態で前記開放状態が維持されるように、前記付勢力を規制する規制機構をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の声道模型。
前記周面開口部は、前記口腔部として機能する前記声道部の一部の上面と咽頭部として機能する前記声道部の他部の側面との少なくも一方に配設される、または前記口腔部として機能する前記声道部の一部の下面に配設されることを特徴とする請求項10に記載の声道模型。
前記本体部材は、前記声道部の内部に対向する面部に配設され、前記声道部の一部の軸方向に沿って前記本体部材を貫通して配設され、前記本体部材の中心軸上に配設され、内部から離れる方向において窪んでいる動作溝部を有することを特徴とする請求項11に記載の声道模型。
下唇として機能し、前記口腔部として機能する前記声道部の一部の端部に配設されている開口部に配設され、前記舌本体ユニットの前方に配設される下唇部材をさらに具備し、
前記下唇部材が前記開口部を塞ぐ閉塞状態と前記開口部が開く開口状態との間を前記下唇部材が往復するように、前記下唇部材は直接操作されることによって移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の声道模型。
前記下唇部材は、前記周面開口部を介して声道模型の高さ方向に沿って前記口腔部として機能する前記声道部の一部の端部の内周面をスライド移動することを特徴とする請求項15に記載の声道模型。
前記下唇部材が前記開口状態において前記声道部に対して吊り下げられるように、前記声道部は、前記周面開口部の縁部に配設され、前記開口状態において前記下唇部材を保持する保持部材を有することを特徴とする請求項17に記載の声道模型。
前記下唇部材は、前記口腔部の内部に対向する面部に配設され、前記口腔部として機能する前記声道部の一部の軸方向に沿って前記下唇部材を貫通して配設され、前記下唇部材の中心軸上に配設され、声道模型の高さ方向において窪んでいる下唇溝部を有することを特徴とする請求項18に記載の声道模型。
前記下唇部材よりも後方に配設され、前記舌本体ユニットよりも前方に配設され、透明の部材によって形成され、前記声道部に着脱自在となるように前記声道部に固定される歯部材をさらに具備することを特徴とする請求項19に記載の声道模型。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
[構成]
図1Aと
図1Bと
図2Aと
図2Bと
図2Cと
図2Dと
図2Eとを参照して第1の実施形態について説明する。なお一部の図面では、図示の明瞭化のために、一部の部材の図示を省略している。
以下において声道模型10の高さ方向をZ方向または上下方向と称し、声道模型10の幅方向をX方向または左右方向と称し、声道模型10の長さ方向をY方向または前後方向と称する。Z方向とY方向とX方向とは、互いに直交している。
【0012】
[声道模型10(以下、模型10と称する)]
図1Aと
図1Bとに示すような模型10は、例えば、音響音声学や音声科学を学ぶ学習者が音声の生成理論を学ぶための音響教育応用や言語学習者のための言語教育(応用言語学)や言語障がい者のための言語治療(臨床応用)に用いられる。
【0013】
本実施形態の模型10は、定常母音、例えば「後舌母音」を生成可能である。「後舌母音」は、例えば、「a」や「o」である。模型10は、定常母音だけでなく、子音の一部を生成可能である。この子音は例えば日本語母語話者にとって習得が難しい英語の/r/音であり、模型10はこのような子音を生成可能である。具体的には、模型10は、例えば、「bunched/r/(盛り舌によるr音)」を生成可能である。模型10は、例えば、子音に分類される接近音(approximant)と呼ばれる音を生成する。接近音は、例えば、英語の前記した「r」や、「l」や「w」や「y」などの音を含む。
【0014】
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、模型10は、L字の筒形状を有している。これに伴い模型10は、模型10の内部(中空部)として機能するL字型の声道部30を有することとなる。このような模型10は、複数の薄い平板部材によって囲まれることで形成される。平板部材は、声道部30が模型10の外部から可視できるように、例えば、透明アクリルなどの透明の部材によって形成されている。このように模型10は、透明の部材によって囲まれることでL字型の中空部として形成される声道部30を有することとなる。
【0015】
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、声道部30は、L字の一辺を形成し、Z方向に沿って配設されている咽頭部31と、L字の他辺を形成し、Y方向に沿って配設されている口腔部33とを有している。咽頭部31の一方は下方にて開口しており、咽頭部31の他方は口腔部33の一方と連通している。口腔部33の他方は、前方に向かって開口しており、開口部33aが形成されている。口腔部33は声道部30の一部となり、咽頭部31は声道部30の他部となる。開口部33aは、口腔部33として機能する声道部30の一部の端部に配設される。
【0016】
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、咽頭部31は、前記した透明な平板部材である前面板21aとL字形状の左側面板23aの一部とL字形状の右側面板23bの一部と背面板23cの一部と底面板21dとによって形成されている。咽頭部31は平板部材によって筒状に形成され、咽頭部31の内部は中空となっている。
図1Aと
図1Bと
図2Aと
図2Bと
図2Dとに示すように、口腔部33は、前記した透明な平板部材である上面板25aとL字形状の左側面板23aの他部と右側面板23bの他部と背面板23cの他部と、Z方向に沿って配設されている棒状の1対の保持部材25eとによって形成されている。上面板25aは、口蓋として機能する。一方の保持部材25eは左側面板23aに固定されており、他方の保持部材25eは右側面板23bに固定されている。
図2Aに示すように、Y方向及び口腔部33において、保持部材25eは、左側面板23aと右側面板23bとよりも短い。この短い分の長さは、例えば、後述する下唇部材60の厚みと歯部材70の厚みとの和である。
【0017】
図2Bと
図2Dとに示すように、口腔部33は、前記した平板部材と保持部材25eとによって、前方及び下方が開口している略U字型の長溝部として形成される。言い換えると、声道部30は、口腔部33として機能する声道部30の一部の周面に配設され、声道部30の内部と外部とに連通する周面開口部33bを有することとなる。本実施形態では、周面開口部33bは、例えば、口腔部33として機能する声道部30の一部の下面に配設されることとなる。周面開口部33bは、X方向における保持部材25e同士の間の空間部や、この空間部の前方かつ上面板25aの下方における空間部を示す。
図2Bと
図2Cと
図2Dと
図2Eとに示すように、周面開口部33bは、後述する下唇部材60や本体部材81が周面開口部33bを通じて閉塞状態と開放状態(開口状態)との間を往復するために、配設されている。
【0018】
なお
図1Aに示すように、後述する下唇部材60と歯部材70と本体部材81とが模型10に取り付けられる。この状態では、
図1Aと
図2Bと
図2Cと
図2Dと
図2Eとに示すように、口腔部33は、前記した平板部材と保持部材25eと下唇部材60と本体部材81と後述する歯部材70とによって筒形状に形成される。
【0019】
図2Aに示すように、口腔部33において、前面板21aは、後述する動作本体部83aの高さ分だけ口腔部33に向かって突出している。
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、模型10は、模型10が例えば図示しない台などに対して倒れずに載置され、咽頭部31(模型10におけるL字の一辺)が台に対して立設し、口腔部33(模型10におけるL字の他辺)が台の平面に対して平行となるように、咽頭部31(模型10のL字の一辺)の底部に配設されているL字形状の台座部40を有している。台座部40は、例えば、透明アクリルなどの部材によって形成されている。台座部40は、平板状の前面板41a及び底面板41bを有している。底面板41bは、底面板21dに対して平行に配設され、台に載置される。前面板41aは、底面板21dと底面板41bと対して立設されるように、底面板21dと底面板41bとに固定されている。前面板41aは、前面板41aと背面板23cとによって咽頭部31における狭窄部31aを形成するように、前面板21aよりも背面板23c側に配設されている。狭窄部31aは、底面板21dの図示しない開口部を介して咽頭部31と連通している。
前記した各板は、例えばねじなどによって互いに対して取り外し可能に連結されている。
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、模型10は、舌の一部として機能する舌根部50と、例えば下唇として機能する下唇部材60とを有している。模型10は、例えば下歯として機能する歯部材70と、口腔部33として機能する声道部30の一部に配設され、舌の他部として機能する舌本体ユニット80とをさらに有している。舌根部50は咽頭部31に配設され、下唇部材60と歯部材70とは口腔部33に配設されている。上唇として機能する部材は、本実施形態では省略されている。
【0020】
[舌根部50]
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、舌根部50は、前面板21aと左側面板23aの一部と右側面板23bの一部と背面板23cの一部とに密着するように咽頭部31に着脱自在に固定され、接近音を生成する際に配設される。舌根部50が配設されるため、咽頭部31は細く開くこととなる。
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、舌根部50は、底面板21dに対して浮いている。舌根部50は、例えば直方体形状を有している。舌根部50は、例えば、舌根部50が模型10の外部から可視できるように、例えば、透明アクリルなどの透明の部材によって形成されている。
図2Aに示すように舌根部50は、Z方向に沿って配設され、狭窄部31aと連通する溝部51を有している。溝部51は、背面板23cによって覆われる。溝部51は、咽頭腔部として機能する。
【0021】
[下唇部材60]
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、下唇部材60は、開口部33aに配設されている。下唇部材60は、Y方向において、歯部材70と舌本体ユニット80と保持部材25eとの前方に配設されている。この前方は、狭窄部31aから開口部33aに向かって音が出力される側を示す。
【0022】
図2Bと
図2Cとに示すように、下唇部材60は、例えば矩形形状及び平板形状を有するブロック部材として機能する。下唇部材60は、下唇部材60の後述する状態及び動作が模型10の外部から判別できるように、透明ではなく、着色されている。下唇部材60は、例えば、プラスチックやアクリルなどによって形成されている。
【0023】
下唇部材60は、下唇部材60が開口部33aを塞ぐ閉塞状態(
図1Bと
図2C参照)と開口部33aが開く開口状態(
図1Aと
図2B参照)との間を下唇部材60が往復するように、直接操作されることによって例えばZ方向に沿って移動可能である。詳細には、
図2Bと
図2Cとに示すように、下唇部材60は、周面開口部33bを通じて閉塞状態と開口状態との間を往復する。そして前記往復において、下唇部材60は、周面開口部33bを介して模型10の高さ方向に沿って口腔部33として機能する声道部30の一部の内周面をスライド移動する。
【0024】
図2Bと
図2Cとに示すように、下唇部材60は、上方部60aと下方部60bとを有している。上方部60aは、閉塞状態と開口状態とにおいて口腔部33の内部に配設される。上方部60aは、閉塞状態と開口状態との間を往復する。下方部60bは、閉塞状態において口腔部33の内部に収納され、開口状態において周面開口部33bを通じて声道部30の外部に露出する。下方部60bは、上方部60aと一体で、上方部60aを含む下唇部材60の移動を操作する。下唇部材60は、開口状態から閉塞状態への下唇部材60の移動を下方部60bにおいて直接操作される。下唇部材60は、下方部60bの操作が解放された際、自重によって閉塞状態から開口状態に移動する。このように下唇部材60の下方部60bは、前記したスライド動作時において、下唇部材60を直接操作する操作部として機能する。下唇部材60の上方部60aは、下唇部材60の動作部として機能する。
【0025】
なお
図2Bと
図2Cとに示すように、下方部60bの高さは、上方部60aが上面板25aに当接した(開口部33aが閉塞状態に切り替わった)際に、下方部60bの端部が右側面板23bの下端部と同じ高さ位置となるように、予め規定されている。
図2Bに示す開口状態において口腔部33に収納されている上方部60aは、開口状態では、前記した下方部60bの高さだけ上面板25aから離れていることとなる。
図2Aに示すように、開口状態において口腔部33に収納されている上方部60aの高さ位置は、開口状態では、前面板21aの上端部の高さ位置と略同一である。
【0026】
図2Bと
図2Cとに示すように、X方向において、下唇部材60の幅は、左側面板23aと右側面板23bとの間の距離と略同一である。下唇部材60と左側面板23aとの間と、下唇部材60と右側面板23bとの間とに微小な隙間部が配設されることによって、隙間部から音が漏れないように、下唇部材60は左側面板23aと右側面板23bとに対して当接している。この状態で前記移動において、下唇部材60は、Z方向に沿って左側面板23aと右側面板23bと歯部材70とをスライド可能となっている。
【0027】
図2Bと
図2Cとに示すように、下唇部材60は、スライド動作のために、例えば下唇部材60の両側面部に配設されている側面溝部61を有している。側面溝部61は、Z方向に沿って配設されている。例えばネジなどの一方の保持部材91がX方向に沿って左側面板23aを貫通して下唇部材60の左側面部の側面溝部61に挿入され、他方の保持部材91がX方向に沿って右側面板23bを貫通して下唇部材60の右側面部の側面溝部61に挿入されることによって、下唇部材60は口腔部33の端部にて支持される。言い換えると、下唇部材60が左側面板23aと右側面板23bとに対して着脱自在となるように、下唇部材60は、下唇部材60の両側面部から左側面板23aと右側面板23bとに保持部材91によって取り付けられている。なお保持部材91は、左側面板23aと右側面板23bとに位置決め固定されている。
【0028】
図1Aと
図2Bに示すように、開口状態において、側面溝部61が下唇部材60の自重によってZ方向において保持部材91に保持される(引っ掛かる)ために、下唇部材60は開口部33aに対して側面溝部61によって保持部材25eに吊り下げられた状態となる。言い換えると、下唇部材60が開口状態において声道部30に対して吊り下げられるように、声道部30は、声道部30の端部に配設され、開口状態において下唇部材60を保持する保持部材91を有することとなる。下唇部材60が保持部材91に吊り下げられた状態は、前記した開口状態であり、下唇部材60が下唇部材60の初期位置に静止している状態であり、下唇部材60が保持部材91に載置されている状態を示す。下唇部材60は、開口状態(初期位置における配置)を、自重によって維持される。
【0029】
下唇部材60は、前記したスライド移動や自重を考慮して、所望する耐摩耗性と所望する重さを有する部材によって形成されていればよい。
【0030】
図1Aと
図2Bとに示すように、下唇部材60は、口腔部33の内部に対向する面部に配設され、口腔部33として機能する声道部30の一部の軸方向であるY方向に沿って下唇部材60を貫通して配設され、下唇部材60の中心軸上に配設されている下唇溝部63を有している。本実施形態では、口腔部33の内部に対向する面部とは、下唇部材60の上面部を示す。下唇溝部63は、Z方向において窪んでおり、上面板25aに対して開口している。
【0031】
[歯部材70]
図1Aと
図2Aとに示すように、歯部材70は、Y方向において、下唇部材60よりも後方に配設され、舌本体ユニット80よりも前方に配設されている。後方は、前方とは逆側を示す。歯部材70は、Y方向において、下唇部材60と舌本体ユニット80との間に介在し、下唇部材60と舌本体ユニット80とに当接するように隣り合っている。歯部材70は、下唇部材60と舌本体ユニット80とを仕切る壁部として機能する。
【0032】
歯部材70は、例えば矩形形状及び平板形状を有するブロック部材として機能する。歯部材70は、例えば歯部材70が下唇部材60と舌本体ユニット80とに対して視覚的に見分けがつくように、例えば、着色されたアクリルなどの透明の部材によって形成されている。歯部材70は、例えば黒に着色される。
【0033】
図1Aに示すように、歯部材70は、口腔部33に収納されている。歯部材70は、声道部30に着脱自在となるように声道部30に固定される。このため例えば、歯部材70は、左側面板23aと右側面板23bとに対して着脱自在となるように、例えばネジなどの固定部材93によって左側面板23aと右側面板23bとから歯部材70の両側面部に固定されている。歯部材70の厚みと幅とは、下唇部材60の厚みと幅と略同一である。歯部材70の高さ位置は、開口状態(開放状態)において口腔部33に収納されている下唇部材60の上方部60aの高さ位置と略同一である。
歯部材70は、上歯として機能するために、口腔部33における上面板25aに配設されてもよい。歯部材70は、上面板25aに着脱自在となるように、例えば図示しないネジなどの固定部材によって上面板25aに固定される。つまり歯部材70は、上面板25aから口腔部33に向かって吊り下げられるように、上面板25aに取り付けられる。上歯として機能する歯部材70は、下歯として機能する歯部材70に対して、Z方向において離れて配設される。
【0034】
[舌本体ユニット80]
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、舌本体ユニット80は、Y方向に沿って互いに対して整列して配設され個別に操作可能な複数の本体部材81を有している。本体部材81同士は、互いに対して別体となっている。本実施形態では、本体部材81の数は、5となっているが、特に限定されない。本体部材81は、舌の上面として機能する。
【0035】
図1Aと
図1Bと
図2Aとに示すように、本体部材81は、Y方向において、前面板21aと歯部材70との間に配設されている。最も前方に配設されている本体部材81は歯部材70と当接するように隣り合い、最も後方に配設されている本体部材81は前面板21aの上端部と当接するように隣り合っている。本体部材81同士は、互いに対して直接当接するように隣り合っており、Y方向に沿って連続して配設されている。本体部材81と左側面板23aとの間と、本体部材81と右側面板23bとの間と、本体部材81同士の間と、本体部材81と歯部材70の間と、本体部材81と前面板21aの上端部との間とに微小な隙間部が配設されることによって、隙間部から音が漏れないように、前記配置において互いに対して当接している。
なお前記した配設は、特に限定されない。例えば、本体部材81と歯部材70との間に例えば透明な部材が介在していてもよいし、本体部材81と前面板21aとの間に例えば透明な部材が介在していてもよいし、本体部材81同士の間に例えば透明な部材が介在し、本体部材81は非連続に配設されていてもよい。
【0036】
本実施形態では、例えば各本体部材81の形状とサイズとは、全て互いに対して同一となっている。
【0037】
図2Dと
図2Eとに示すように、本体部材81は、例えばT字形状及び平板形状を有するブロック部材として機能する。本体部材81は、本体部材81の後述する状態及び動作が模型10の外部から判別できるように、透明ではなく、着色されている。本体部材81は、例えば、プラスチックなどによって形成されている。
【0038】
本体部材81は、本体部材81が口腔部33を塞ぐ閉塞状態(
図1Bと
図2E参照)と、口腔部33が開く開放状態(
図1Aと
図2D参照)との間を本体部材81が往復するように、例えばZ方向に沿って個別に移動可能である。詳細には、
図2Dと
図2Eとに示すように、本体部材81は、周面開口部33bを通じて閉塞状態と開放状態との間を往復する。そして前記往復において、本体部材81は、模型10の高さ方向に沿って口腔部33として機能する声道部30の一部の内周面をスライド移動する。ここでいう高さ方向は、声道部30の口腔部33の軸方向(Y方向)に直交する方向となる。
【0039】
図2Dと
図2Eとに示すように、本体部材81は、動作本体部83aと操作部83bとを有している。動作本体部83aは、閉塞状態と開放状態とにおいて声道部30の内部に配設される。動作本体部83aは、閉塞状態と開放状態との間を往復する。操作部83bは、閉塞状態において声道部30の内部に収納され、開放状態において周面開口部33bを通じて声道部30の外部に露出する。操作部83bは、動作本体部83aと一体で、動作本体部83aを含む本体部材81の移動を操作する。操作部83bは、開放状態から閉塞状態への本体部材81の移動を直接操作する。本体部材81は、操作部83bの操作が解放された際、自重によって閉塞状態から開放状態に移動する。
【0040】
図2Dと
図2Eとに示すように、T字形状の本体部材81において、動作本体部83aは、X方向に沿って配設され、幅が太い太幅部として機能する。T字形状の本体部材81において、操作部83bは、Z方向に沿って配設され、動作本体部83aよりも幅が細い細幅部として機能する。
【0041】
動作本体部83aの厚みと幅とは、下唇部材60の厚みと幅(左側面板23aと右側面板23bとの間の距離)と略同一である。操作部83bの厚みは下唇部材60の厚みと略同一であり、操作部83bの幅は下唇部材60の幅よりも小さい。動作本体部83aの高さと操作部83bの高さの和である本体部材81の高さは、下唇部材60の高さと略同一である。動作本体部83aの高さは、下唇部材60の上方部60aの高さと略同一である。操作部83bの高さは、下唇部材60の下方部60bの高さと略同一である。
【0042】
なお
図2Dと
図2Eとに示すように、操作部83bの高さは、動作本体部83aが上面板25aに当接した(口腔部33が閉塞状態に切り替わった)際に、操作部83bの下端部が保持部材25e(右側面板23bの下端部)と同じ高さ位置となるように、予め規定されている。
図2Dに示す開放状態において口腔部33に収納されている動作本体部83aは、開放状態では、前記した操作部83bの高さだけ上面板25aから離れていることとなる。
図2Aに示すように、開放状態において口腔部33に収納されている動作本体部83aの上端部の高さ位置は、開放状態では、前面板21aの上端部の高さ位置と略同一である。
【0043】
図2Dと
図2Eとに示すように、X方向において、動作本体部83aの幅は、左側面板23aと右側面板23bとの間の距離と略同一である。このため前記移動において、本体部材81は、Z方向に沿って左側面板23aと右側面板23bと本体部材81とをスライド可能となっている。なお最も前方に配設されている本体部材81は歯部材70をさらにスライドし、最も後方に配設されている本体部材81は前面板21aの上端部をさらにスライドする。
【0044】
本体部材81は個別に操作可能であるため、前記スライドは本体部材81毎に実施される。
【0045】
図1Aと
図2Dとに示すように、開放状態において、動作本体部83aの両端部が本体部材81の自重によってZ方向において保持部材25eに保持される(引っ掛かる)ために、本体部材81は口腔部33に対して動作本体部83aによって保持部材25eに吊り下げられた状態となる。言い換えると、本体部材81が開放状態において声道部30に対して吊り下げられるように、声道部30は、周面開口部33bの縁部に配設され、開放状態において動作本体部83aを保持する保持部材25eを有することとなる。本体部材81が保持部材25eに吊り下げられた状態は、前記した開放状態であり、本体部材81が本体部材81の初期位置に静止している状態であり、本体部材81が保持部材25eに載置されている状態を示す。本体部材81は、開放状態(初期位置における配置)を、自重によって維持される。
【0046】
本体部材81は、前記したスライド移動や自重を考慮して、所望する耐摩耗性と所望する重さを有する部材によって形成されていればよい。
【0047】
図1Aと
図2Dとに示すように、動作本体部83aは、口腔部33の内部に対向する面部に配設され、口腔部33として機能する声道部30の一部の軸方向であるY方向に沿って動作本体部83aを貫通して配設され、動作本体部83aの中心軸上に配設されている動作溝部85を有している。本実施形態では、口腔部33の内部に対向する面部とは、動作本体部83aの上面部を示す。動作溝部85は、Z方向において窪んでおり、上面板25aに対して開放している。
図1Aに示すように、動作溝部85は、下唇溝部63と同一直線上に配設されている。動作溝部85は、下唇溝部63と同じ形状及び同じサイズを有している。
【0048】
[下唇部材60の動作(
図1Aと
図1Bと
図2Bと
図2Cとを参照)]
下唇部材60が直接把持または指などに接触され、下唇部材60が上面板25aに向かって移動するように下唇部材60が直接操作される(持ち上げられる/上方に向かって押圧される)と、側面溝部61がZ方向に沿って上面板25aに向かって保持部材91をスライドする。このとき、側面溝部61は、保持部材91によってガイドされる。前記に伴い、下唇部材60がZ方向に沿って上面板25aに向かって下唇部材60の周辺に配設されている周辺部材(例えば左側面板23aや右側面板23bや歯部材70等)をスライドする。このとき、下唇部材60は、周辺部材によってガイドされる。下唇部材60が上昇し、下唇部材60が上面板25aに当接すると、開口部33aは閉塞状態に切り替わる。
【0049】
下唇部材60の操作が解放される(指が下唇部材60から離れる)と、下唇部材60は、下唇部材60の自重によって、下降する。そして、側面溝部61がZ方向に沿って下方に向かって保持部材91をスライドする。このとき、側面溝部61は、保持部材91によってガイドされる。前記に伴い、下唇部材60がZ方向に沿って下方に向かって周辺部材をスライドする。このとき、下唇部材60は、周辺部材によってガイドされる。保持部材91が側面溝部61の上端部に当接すると、下唇部材60は、前記した吊り下げられた状態となる。そして、開口部33aは、開口状態に切り替わる。このように下唇部材60は、自重によって初期位置に戻る。
【0050】
[本体部材81の動作(
図1Aと
図1Bと
図2Dと
図2Eとを参照)]
操作部83bが直接把持または指などに接触され、本体部材81が上面板25aに向かって移動するように操作部83bが直接操作される(持ち上げられる/上方に向かって押圧される)と、本体部材81の動作本体部83aがZ方向に沿って上面板25aに向かって本体部材81の周辺に配設されている周辺部材(例えば左側面板23aや右側面板23bや本体部材81等)をスライドする。このとき、動作本体部83aは、周辺部材によってガイドされる。本体部材81が上昇し、動作本体部83aが上面板25aに当接すると、口腔部33は閉塞状態に切り替わる。
【0051】
操作部83bの操作が解放される(指が本体部材81から離れる)と、本体部材81は、本体部材81の自重によって、下降する。そして、本体部材81の動作本体部83aがZ方向に沿って下方に向かって本体部材81の周辺に配設されている周辺部材(例えば左側面板23aや右側面板23bや本体部材81等)をスライドする。このとき、動作本体部83aは、周辺部材によってガイドされる。動作本体部83aの両端部が保持部材25eに当接すると、本体部材81は、前記した吊り下げられた状態となる。そして、口腔部33は、開放状態に切り替わる。このように本体部材81は、自重によって初期位置に戻る。
【0052】
[「後舌母音に分類される母音「a」」と「bunched/r/(盛り舌によるr音)」との生成について]
「後舌母音に分類される母音「a」」と「bunched/r/(盛り舌によるr音)」とが生成される場合について説明する。
ここで、
図2Aに示すように、本体部材81を、Y方向において、歯部材70から咽頭部31に向かって本体部材81a,81b,81c,81d,81eと称する。
「bunched/r/(盛り舌によるr音)」が生成される場合、例えば、下唇部材60と本体部材81d,81eとが用いられる。
【0053】
図3Aに示す開口部33aの開口状態と口腔部33の開放状態(下唇部材60と全ての本体部材81が吊り下げられている状態)とにおいて、声道部30の形状によって、模型10は「後舌母音に分類される母音「a」」を生成可能となっている。
この状態から、模型10が操作者によって把持され、
図3Bに示すように下唇部材60と本体部材81d,81eとが上昇するように操作者に同時に操作される(持ち上げられる)と、開口部33aと口腔部33とは開口状態(開放状態)から閉塞状態に切り替わる。
図3Bに示す声道部30の形状によって、模型10は「bunched/r/(盛り舌によるr音)」を生成可能となっている。
下唇部材60と本体部材81d,81eとの操作が同時に解放されると、
図3Aに示すように下唇部材60と本体部材81d,81eとは自重によって同時に下降し、開口部33aと口腔部33とは閉塞状態から開口状態(開放状態)に切り替わる。
前記において、下唇部材60と2つの本体部材81d,81eとが一体的に往復動作する。
【0054】
前記した
図3Aに示す開口(開放)状態、
図3Bに示す閉塞状態、
図3Aに示す開口(開放)状態といった一連の往復動作によって調音(構音)が実施され、模型10は「ara」(ただしrはbunched/r/、すなわち盛り舌によるr音)という音を生成可能となる。
一連の往復動作によって調音(構音)が実施された状態で操作者の操作によって例えば気流が声道部30を咽頭部31の底から詳細には狭窄部31aと舌根部50の溝部51と動作溝部85と下唇溝部63とを介して口腔部33の開口部33aに向かうように流れることによって、模型10は「ara」(ただしrはbunched/r/、すなわち盛り舌によるr音)という音を生成可能となる。
【0055】
なお
図3Cに示すように、下唇部材60のみが上昇するように操作者に操作される(持ち上げられる)と、開口部33aは開口状態から閉塞状態に切り替わる。このとき口腔部33は開放状態(全ての本体部材81が吊り下げられている状態)である。
図3Cに示す声道部30の形状によって、模型10は「後舌母音に分類される母音「o」」を生成可能となっている。
図3Aに示す開口(開放)状態、
図3Cに示す閉塞状態、
図3Aに示す開口(開放)状態といった一連の往復動作によって調音(構音)が実施され、模型10は「aoa」を生成可能となる。そして、模型10は、「aoa」を発声可能となる。
【0056】
図3Cに示す閉塞状態では、下唇部材60が上面板25aに当接して開口部33aは完全に閉塞されていてもよいし、下唇部材60が上面板25aに当接せず上面板25aに近接し開口部33aはほぼ閉塞されていてもよい。
【0057】
[動作のまとめ]
前記動作において、模型10の平板部材が透明の部材によって形成されているため、声道部30が模型10の外部から可視される。よって、操作者や、操作者によって操作される模型10を観察する観察者は、声道部30を容易にイメージすることとなる。
本体部材81が持ち上げられるといった簡単な操作で、調音(構音)が実施され、目的とする音である「ara」(ただしrはbunched/r/、すなわち盛り舌によるr音)や「aoa」を生成可能となる。
この模型10が例えば音響音声学や音声科学を学ぶ学習者が音声の生成理論を学ぶための音響教育応用や言語教育や言語治療に用いられる場合、言語教育における教師や学生・生徒、言語治療における治療者や患者といった使用者にとって、模型10はシンプルな構成となっており、声道部30は容易にイメージ可能となる。また利用者とって、前記したように操作は簡単で、調音(構音)が実施され、この状態で目的とする音である「ara」(ただしrはbunched/r/、すなわち盛り舌によるr音)や「aoa」を生成しやすくなっている。そして利用者に対して、目的とする音である「ara」(ただしrはbunched/r/、すなわち盛り舌によるr音)「aoa」の生成及び耳による確認と舌本体ユニット80の形状とを操作に伴い簡単に確認させることになる。
【0058】
特に、本体部材81は自重によって初期位置に素早く戻るために、操作者は本体部材81を持ち上げることに専念することとなる。このように操作は、簡単となっている。本体部材81はプラスチックであり軽いため、素早く持ち上がり、口腔部33は素早く閉塞状態に切り替わる。この持ち上がりと自重による戻りが素早く実施されるために、目的とする音が明瞭且つ容易に生成される。
【0059】
[効果]
このように本実施形態では、シンプルな構成で、声道を容易にイメージでき、操作が簡単で、目的とする音を生成しやすく、目的とする音の生成及び確認と舌本体ユニット80の形状とを操作に伴い簡単に確認できる模型10を提供できる。
【0060】
本実施形態では、模型10の平板部材が透明の部材によって形成され、舌本体ユニット80の本体部材81は着色されている。このため本実施形態では、舌本体ユニット80の本体部材81の動きを視覚的に様々な位置から容易に確認できる。そして、本実施形態では、音の生成に伴う舌本体ユニット80の動きを確認でき、舌本体ユニット80の動きに伴って生成される音を確認でき、舌本体ユニット80の動きと音の変化との直接的な関係を簡単に確認できる。
【0061】
本実施形態では、本体部材81が直接操作されるために、音を聞きながらリアルタイムで体験でき、使用者に興味を沸かせることができる。本実施形態では、パソコンにおけるシミュレーションを基に音を生成するようなタイプではなく、模型10を操作することによって音を生成するタイプである。よって本実施形態では、例えばデモンストレーションにおいて観察者に確実に興味を沸かせることができ、使用者自らに手動で簡単に体験させることができる。本実施形態では、声道部30の形状は平板部材によって規定されているため、誰が操作しても常に一定の音質の音を手軽に生成できる。
【0062】
本実施形態では、模型10自体が小型であるため、簡単に持ち運び及び収納できる。本実施形態では、模型10であるため操作性が低下してしまうことも防止できる。
【0063】
本実施形態では、本体部材81が直接操作されるため、操作に伴う動作を確実に実感できる。本実施形態では、本体部材81の操作が解放されることにより口腔部33が開放状態となり、本体部材81が持ち上げられることによって口腔部33が閉塞状態となる。このため、使用者は、本体部材81を視認しなくても、本体部材81を操作する手によって、本体部材81の位置を確認できる。
【0064】
本実施形態では、本体部材81が個別に移動及び直接操作できるために、様々な音を手軽に生成させることができる。本実施形態では、往復動作によって、調音(構音)を実施でき、この状態で音を生成できる。
本実施形態では、周面開口部33bが配設されているために、声道部30の内部において本体部材81をスライドでき、スライドによって往復動作を簡単に実施できる。 本実施形態では、周辺部材によって、本体部材81は確実に滑らかにスライドできる。これにより本実施形態では、本体部材81を開放状態と閉塞状態との間を滑らか往復させることができる。
【0065】
本実施形態では、操作部83bは開放状態において周面開口部33bを通じて声道部30の外部に露出しており、この操作部83bによって開放状態において本体部材81を直接操作できる。本実施形態では、動作本体部83aが上面板25aに当接したことを操作者は実感でき、当接によって口腔部33が閉塞状態に切り替わったことを操作者は実感できる。
【0066】
本実施形態では、本体部材81は、自重によって閉塞状態から開放状態に移動する。このため、この移動における本体部材81の操作を省くことができる。本体部材81は自重によって初期位置に素早く戻るために、操作者は本体部材81を持ち上げることに専念できる。本体部材81はプラスチックであり軽いため、本体部材81を素早く持ち上げることができ、持ち上がりと自重による戻りを素早く実施でき、目的とする音を明瞭且つ容易に生成できる。
【0067】
本実施形態では、保持部材25eによって、本体部材81は開放状態において声道部に対して吊り下げられる。このため本実施形態では、全ての本体部材81に対して、常に初期位置を簡単且つ同位置に保つことができる。
【0068】
本実施形態では、下唇部材60と歯部材70との代わりに本体部材81が配設されていてもよい。
【0069】
本実施形態では、この模型10に、頭部87aをイメージする別の模型を着脱自在に装着させてもよい。これにより本実施形態では、頭部87a内における声道部30の位置をより確実にイメージできる。
【0070】
本実施形態では、閉塞状態において、例えば本体部材81は上面板25aに当接して口腔部33は完全に閉塞されているが、これに限定される必要はない。例えば本体部材81は上面板25aに当接せず上面板25aに近接し、口腔部33はほぼ閉塞されていてもよい。つまり本体部材81は、開放状態に比べて上昇した状態であってもよい。この状態では、口腔部33は、開放状態に比べて、閉じられていることを示す。この場合、本体部材81は、例えば指などによって支持され、上昇位置を制御されている。言い換えると、口腔部33の閉塞具合は、生成する音に応じて、所望に制御される。なお前記した内容は、下唇部材60と開口部33aとについても同様である。
【0071】
本実施形態では、各本体部材81の形状とサイズとは、全て互いに対して同一となっているが、これに限定される必要はない。各本体部材81の厚みは、互いにばらばらとなっていてもよい。また本体部材81は個別に操作されるが、出力される音に応じて2つの本体部材81が同時に操作されるように、複数の本体部材81を1つのユニットとして操作してもよい。これにより、本実施形態では、操作性を向上できる。
【0072】
本実施形態では、動作溝部85には、図示しない嵌込部材が嵌め込まれてもよい。嵌込部材は、動作溝部85と同じ形状で動作溝部85全体を埋めてもよいし、動作溝部85よりも小さく動作溝部85の一部を埋めてもよい。この内容は、下唇溝部63についても同様である。本実施形態では、嵌込部材によって、閉鎖音を生成可能となる。例えば、嵌込部材が下唇溝部63に埋設されることによって、模型10は例えば「aba」という閉鎖音を生成可能である。例えば、嵌込部材が動作溝部85に埋設されることによって、模型10は例えば「ada」や「aga」という閉鎖音を生成可能である。
【0073】
本実施形態では、開口(開放)状態において、1つの機構(例えば咽頭部31に配設されている舌根部50)によって、模型10は母音の「a」を生成可能となっている。しかしながら他の母音が生成される場合、例えば、咽頭部31における機構は所望に変更されるなど、母音に合わせて適宜変更される。
図4Aに示すように、例えば舌根部50が取り外されてもよい。この場合、舌根部50が取り外されるため、咽頭部31は広く開くこととなる。開口部33aの開口状態と口腔部33の開放状態(下唇部材60と全ての本体部材81が吊り下げられている状態)とにおいて、声道部30の形状によって、模型10は「中性母音である「シュワ」」を生成可能となる。
図4Aに示す状態から、模型10が操作者によって把持され、
図4Bに示すように本体部材81a,81b,81c,81d,81eが上昇するように操作者に同時に操作される(持ち上げられる)と、口腔部33は開放状態から閉塞状態に切り替わる。このとき開口部33aは開口状態(下唇部材60が吊り下げられている状態)である。
図4Bに示す声道部30の形状によって、模型10は「前舌母音に分類される母音「i」」を生成可能となる。この閉塞状態では、本体部材81が上面板25aに当接して口腔部33は完全に閉塞されている。
図4Aに示す状態から、模型10が操作者によって把持され、
図4Cに示すように本体部材81a,81b,81c,81d,81eが上昇するように操作者に同時に操作される(持ち上げられる)と、口腔部33は開放状態から閉塞状態に切り替わる。このとき開口部33aは開口状態(下唇部材60が吊り下げられている状態)である。
図4Cに示す声道部30の形状によって、模型10は「前舌母音に分類される母音「e」」を生成可能となる。この閉塞状態では、本体部材81が上面板25aに当接せず上面板25aに近接し、口腔部33はほぼ閉塞されている。
【0074】
図4Aに示す開口(開放)状態、
図4Bに示す閉塞状態、
図4Aに示す開口(開放)状態といった一連の往復動作によって調音(構音)が実施され、模型10は「シュワiシュワ」を生成可能となる。そして、模型10は、「シュワiシュワ」を発声可能となる。
図4Aに示す開口(開放)状態、
図4Cに示すほぼ閉塞状態、
図4Aに示す開口(開放)状態といった一連の往復動作によって調音(構音)が実施され、模型10は「シュワeシュワ」を生成可能となる。そして、模型10は、「シュワeシュワ」を発声可能となる。
図4Bに示す閉塞状態、
図4Cに示すほぼ閉塞状態、
図4Bに示す閉塞状態といった一連の往復動作によって調音(構音)が実施され、模型10は「iei」を生成可能となる。そして、模型10は、「iei」を発声可能となる。
【0075】
このように、本実施形態の模型10は、定常母音、例えば
図3A,3Cに示す「後舌母音」や
図4Aに示す「中性母音」や
図4B,4Cに示す「前舌母音」を生成可能である。模型10は、定常母音だけでなく、子音の一部を生成可能である。この子音は例えば日本語母語話者にとって習得が難しい英語の/r/音であり、模型10はこのような子音を生成可能である。具体的には、模型10は、例えば、
図3Bに示す「bunched/r/(盛り舌によるr音)」を生成可能である。
【0076】
[第2の実施形態]
[構成]
以下に
図5と
図6Aと
図6Bと
図6Cとを参照して、第1の実施形態とは異なる点のみ記載する。
【0077】
第1の実施形態では、本体部材81は、自重によって閉塞状態から開放状態に移動しているが、これに限定される必要はない。本体部材81は、本体部材81の操作が解放された際、付勢部材100の付勢力によって閉塞状態から開放(開口)状態に移動する。
【0078】
このため本実施形態では、口腔部33において、
図5に示すように、上面板25aが取り外され、底面板25dが配設されている。そして周面開口部33bは、例えば、口腔部33として機能する声道部30の一部の上面に配設されることとなる。本体部材81は、例えば、周面開口部33bを塞ぐように口腔部33の上方に配設される。
【0079】
図5に示すように、本体部材81は、本体部材81の両側面側に配設され、Z方向に沿って配設され、口腔部33を形成する板状部材(左側面板23a,右側面板23b)に本体部材81を支持する1対の支持部材87を有している。支持部材87は、例えば棒状部材である。T字の本体部材81の上端部の両端部において、支持部材87は、この両端部をZ方向において貫通し、X方向において本体部材81の側面に隣り合う。そして、
図6Aと
図6Bとに示すように、一方の支持部材87の下端部は左側面板23aにてZ方向に形成されている板側溝部25fに係合し、他方の支持部材87の下端部は右側面板23bにてZ方向に形成されている板側溝部25fに係合する。支持部材87の下端部は、ネジである。
【0080】
図6Aと
図6Bに示すように、本体部材81は、スライド動作のために、例えば本体部材81の両側面部に配設されている側面溝部89を有している。側面溝部89は、Z方向に沿って配設されている。一方の固定部材95がX方向に沿って左側面板23aを貫通して本体部材81の左側面部の側面溝部89に挿入され、他方の固定部材95がX方向に沿って右側面板23bを貫通して本体部材81の右側面部の側面溝部89に挿入されることによって、本体部材81は口腔部33にて支持される。言い換えると、本体部材81が左側面板23aと右側面板23bとに対して着脱自在となるように、本体部材81は、本体部材81の両側面部から左側面板23aと右側面板23bとに固定部材95によって取り付けられている。なお固定部材95は、左側面板23aと右側面板23bとに固定されている。
【0081】
図5と
図6Aとに示すように、模型10は、本体部材81に配設され、本体部材81を閉塞状態から開放(開口)状態に向かって付勢する付勢部材100をさらに有している。付勢部材100は、支持部材87を巻回している。付勢部材100の一端部はT字の支持部材87の上端部の端部に当接し、付勢部材100の他端部は左側面板23a(右側面板23b)に当接している。付勢部材100は、本体部材81を上方に向かって付勢する付勢力を有している。付勢部材100は、例えばバネである。
【0082】
図6Aに示す開放状態において、支持部材87の頭部87aが本体部材81の上面に当接し、固定部材95が側面溝部89の下端部に当接するように、付勢部材100は上方に向かって伸びて本体部材81を上方に付勢している。開放(開口)状態において、本体部材81は、付勢部材100によって持ち上げられた状態となる。この状態は、前記した開放(開口)状態であり、本体部材81が本体部材81の初期位置に静止している状態を示す。このとき支持部材87の下端部が板側溝部25fに係合しているため、支持部材87が付勢力によって板側溝部25fから抜けることを防止されている。
【0083】
図6Bに示すように、閉塞状態において、付勢部材100は下方に向かって縮む。
【0084】
図6Bに示すように、本実施形態の本体部材81は、本体部材81が下方に向かって直接押圧されることによって開放(開口)状態から閉塞状態への移動を直接操作される。
【0085】
図6Bに示すように、本体部材81が底面板25dに向かって移動するように本体部材81が直接操作される。詳細には、本体部材81は、付勢力以上の力で底面板25dに向かって直接押圧される。これにより、付勢部材100は下方に向かって縮み、側面溝部89がZ方向に沿って底面板25dに向かって固定部材95をスライドする。このとき、側面溝部89は、固定部材95によってガイドされる。前記に伴い、本体部材81がZ方向に沿って底面板25dに向かって本体部材81の周辺に配設されている周辺部材(例えば左側面板23aや右側面板23b等)をスライドする。このとき、本体部材81は、周辺部材によってガイドされる。そして、本体部材81が底面板25dに当接すると、口腔部33と開口部33aとは閉塞状態に切り替わる。
【0086】
図6Bに示すように、本体部材81の操作が解放される(例えば指が本体部材81から離れる)と、付勢部材100は上方に向かって伸び、本体部材81は付勢部材100の付勢力によって上昇する。そして、側面溝部89がZ方向に沿って上方に向かって固定部材95をスライドする。このとき、側面溝部89は、固定部材95によってガイドされる。前記に伴い、本体部材81がZ方向に沿って上方に向かって周辺部材をスライドする。このとき、本体部材81は、周辺部材によってガイドされる。支持部材87の頭部87aが本体部材81の上面に当接し、固定部材95が側面溝部89の下端部に当接すると、本体部材81は、前記した持ち上げられた状態となる。そして、口腔部33と開口部33aとは、開放(開口)状態に切り替わる。このように本体部材81は、付勢力によって初期位置に戻る。
【0087】
支持部材87の頭部87aが本体部材81の上面に当接し、固定部材95が側面溝部89の下端部に当接すると、開放(開口)状態が維持される。模型10は、本体部材81が声道部30に取り付けられた状態で開放(開口)状態が維持されるように、付勢力を規制する規制機構を有することとなる。規制機構は、支持部材87の頭部87aと本体部材81の上面と固定部材95と側面溝部89の下端部とを有する。本体部材81は、開放(開口)状態(初期位置における配置)を、付勢部材100と規制機構とによって維持される。
【0088】
図5に示すように、本実施形態では、前面板21aと舌根部50は取り外され、本体部材81は、咽頭部31の前方にさらに配設される。この本体部材81において、付勢部材100は、本体部材81を前方に向かって付勢する付勢力を有している。
【0089】
図6Cに示すように、本体部材81が背面板23cに向かって移動するように本体部材81が直接操作される。詳細には、本体部材81は、付勢力以上の力で背面板23cに向かって直接押圧される。これにより、付勢部材100は後方に向かって縮み、側面溝部89がY方向に沿って背面板23cに向かって固定部材95をスライドする。このとき、側面溝部61は、固定部材95によってガイドされる。前記に伴い、本体部材81がY方向に沿って背面板23cに向かって本体部材81の周辺に配設されている周辺部材(例えば左側面板23aや右側面板23b等)をスライドする。このとき、本体部材81は、周辺部材によってガイドされる。そして、本体部材81が背面板23cに当接すると、咽頭部31は閉塞状態に切り替わる。
【0090】
本体部材81の操作が解放される(例えば指が本体部材81から離れる)と、付勢部材100は前方に向かって伸び、本体部材81は付勢部材100の付勢力によって前方に移動する。そして、側面溝部89がY方向に沿って前方に向かって固定部材95をスライドする。このとき、側面溝部89は、固定部材95によってガイドされる。前記に伴い、本体部材81がY方向に沿って前方に向かって周辺部材をスライドする。このとき、本体部材81は、周辺部材によってガイドされる。支持部材87の頭部87aが本体部材81の上面に当接し、固定部材95が側面溝部89の一端部に当接すると、本体部材81は、咽頭部31から押し出された状態となる。そして、咽頭部31は、開放状態に切り替わる。このように本体部材81は、付勢力によって初期位置に戻る。このとき、前記同様に、本体部材81は、開放状態(初期位置における配置)を、付勢部材100と規制機構とによって維持される。付勢機構は、支持部材87の頭部87aと本体部材81の上面と固定部材95と側面溝部89の下端部とを有する。
【0091】
なお本体部材81が咽頭部31の前方にさらに配設されていなければ、本体部材81は、口腔部33の上方の代わりに、第1の実施形態と同様に口腔部33の下方にのみ配設されてもよい。このため、周面開口部33bは、口腔部33として機能する声道部30の一部の上面と咽頭部31として機能する声道部30の他部の側面との少なくも一方に配設される、または口腔部33として機能する声道部30の一部の下面に配設されることとなる。
【0092】
本実施形態でも第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
本実施形態では、舌根部50が取り外されているが、咽頭部31における本体部材81が咽頭部31に挿入されることで、本体部材81は舌根部50として機能することとなる。このため、本実施形態では、舌根部50の着脱性を、第1の実施形態よりも向上できる。また本実施形態では、例えば
図3Aに示す「後舌母音に分類される母音「a」」と
図4Aに示す「中性母音である「シュワ」」とを切り替えて出力でき、出力できる音の種類を増やすことができる。また本実施形態では、例えば、
図3Aに示す「後舌母音に分類される母音「a」」と
図4Aに示す「中性母音である「シュワ」」との切り替えといった、舌根部50を用いて出力される音と舌根部50を用いないで出力される音との切り替えを素早く実施できる。
【0093】
本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。