特開2016-134493(P2016-134493A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016134493-透明導電膜のアニール処理方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-134493(P2016-134493A)
(43)【公開日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】透明導電膜のアニール処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20160627BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20160627BHJP
【FI】
   H01L21/28 B
   G02F1/1333
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-7995(P2015-7995)
(22)【出願日】2015年1月19日
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】梶山 康一
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
2H189
4M104
【Fターム(参考)】
2H189AA17
2H189LA03
2H189LA28
2H189LA30
4M104BB36
4M104DD34
4M104DD36
4M104DD37
4M104DD48
4M104DD80
4M104GG04
4M104GG05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オンセルのタッチパネルをディスプレイパネルに装備する際に、基板に成膜した透明導電膜を、ディスプレイパネルやパネル内の構成要素に悪影響を及ぼすこと無くアニール処理する。
【解決手段】基板に成膜された透明導電膜をアニール処理する方法であって、透明導電膜に赤外域の短パルス光を照射する。短パルス光Lは、フラッシュランプ2を光源とする光であり、フィルタ3を透過して基板表面Aの透明導電膜に照射される。短パルス光Lは、0.1〜10μsecのパルス持続時間を有する光であり、フィルタ3を通過することで赤外域の波長帯域を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に成膜された透明導電膜をアニール処理する方法であって、
前記透明導電膜に赤外域の短パルス光を照射することを特徴とする透明導電膜のアニール処理方法。
【請求項2】
前記短パルス光は、フラッシュランプから出射され、可視域以下の波長をカットするフィルタを通過した光であることを特徴とする請求項1に記載された透明導電膜のアニール処理方法。
【請求項3】
前記短パルス光のパルス持続時間は、0.1〜10μsecであることを特徴とする請求項1又は2に記載された透明導電膜のアニール処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された透明導電膜のアニール処理方法で処理された透明導電膜を備えるオンセルのタッチパネルを装備したディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜のアニール処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、タッチパネル、太陽電池などの電極として、広く用いられている。透明導電膜は、ITO(酸化インジウム・スズ)、酸化亜鉛、酸化スズ、亜鉛とスズの複合酸化物などが材料として用いられ、スパッタリング、真空蒸着、クラスタービーム蒸着、パルスレーザー蒸着などの成膜法により基板上に形成される。
【0003】
透明導電膜に求められる性質は、透明性と導電性であるが、成膜によって得られた透明導電膜の抵抗率が高い場合には、基板に成膜された透明導電膜を加熱炉に入れてアニール処理(加熱処理)することで、抵抗率の低抵抗化を図ることが一般になされている。この際、透明導電膜が成膜された基板が熱に弱い場合には、比較的低温の加熱でアニール処理を行うか、或いは、透明導電膜にフラッシュランプを用いたフラッシュ光を照射してアニール処理を行うことが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−187336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術のように、フラッシュランプのフラッシュ光で透明導電膜をアニール処理する場合には、フラッシュランプから出射される光が広い波長帯域を有することで、各種の問題が確認されている。
【0006】
その一つとして、タッチパネルをディスプレイパネルに装備する際に、オンセルと呼ばれる形態を採用する場合の問題がある。オンセルは、タッチパネルとディスプレイパネルとの一体化を図る上で、ディスプレイパネルの基板に透明導電膜からなるタッチ電極を形成するもので、液晶パネルの場合には、カラーフィルター基板の外表面に透明導電膜が成膜される。この際、成膜後の透明導電膜にフラッシュランプの光を照射してアニール処理を行おうとすると、照射光の中の紫外線成分や可視光成分がディスプレイパネル内の高分子膜に照射されることになり、液晶パネルの場合には配向膜の配向特性が乱れる原因になり、有機ELパネルの場合には高分子フィルム基板を採用する場合に基板を劣化させるなどの問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、オンセルのタッチパネルをディスプレイパネルに装備する際に、基板に成膜した透明導電膜を、ディスプレイパネルやパネル内の構成要素に悪影響を及ぼすこと無くアニール処理することができるアニール処理方法を提供すること、などが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による透明導電膜のアニール処理方法は、以下の構成を具備するものである。
基板に成膜された透明導電膜をアニール処理する方法であって、
前記透明導電膜に赤外域の短パルス光を照射することを特徴とする透明導電膜のアニール処理方法。
【発明の効果】
【0009】
このような透明導電膜のアニール処理方法によると、可視域や紫外域の光がアニール処理中にディスプレイパネル内に照射されることがないので、オンセルタッチパネルの基板に成膜された透明導電膜をアニール処理する場合にも、ディスプレイパネル内の構成要素に悪影響を及ぼすこと無くアニール処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る透明導電膜のアニール処理方法の一例を示した説明図である。
図2】フラッシュランプの発光スペクトルを示したグラフである((a)がフラッシュランプから出射される光(フィルタなし)の発光スペクトル、(b)がフィルタを通過した光(フィルタあり)の発光スペクトル)。
図3】本発明の実施形態に係る透明導電膜のアニール処理方法の他の例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る透明導電膜のアニール処理方法の一例を示している。支持部1に支持されたディスプレイパネルPの基板表面Aには、タッチ電極となる透明導電膜(図示省略)が成膜されている。この透明導電膜に対して短パルス光Lを照射することでアニール処理を行う。
【0012】
短パルス光Lは、フラッシュランプ2を光源とする光であり、フィルタ3を透過して基板表面Aの透明導電膜に照射されている。短パルス光Lは、例えば、0.1〜10μsecのパルス持続時間を有する光であり、フィルタ3を通過することで赤外域の波長帯域を有している。
【0013】
図2(a)に示すように、フラッシュランプ2は300〜1100nmの広い波長帯域を有している。このため、フラッシュランプ2から出射した光を直接ディスプレイパネルPの基板表面Aに照射すると、300〜800nmの波長帯域の光(紫外域から可視域の光)が照射されることになり、ディスプレイパネルP内に入射した光が配向膜などに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
これに対して、本発明の実施形態に係るアニール処理方法では、図2(b)に示すように、フィルタ3によって800nm以下の波長帯域をカットした赤外域の光を照射する。これによると、ディスプレイパネルP内に紫外域から可視域の光が入ることが無く、赤外域の光で基板表面Aに成膜された透明導電膜を加熱することができるので、ディスプレイパネルP内の配向膜などに悪影響を及ぼすこと無くアニール処理を行うことができる。
【0015】
アニール処理の対象となる透明導電膜は、例えば、オンセルタッチパネルのタッチ電極となるITO膜である。液晶パネルの場合には、カラーフィルタ基板の基板表面AにITO膜を成膜し、アニール処理した後にITO膜上に偏光板を配置する。
【0016】
ITO膜は、一般にスパッタリングで成膜されるが、オンセルタッチパネルの場合には、成膜時には液晶パネルに液晶が封入された状態になっているので、液晶の劣化を考慮して高温下で成膜を行うことができない。このため、ITO膜の電気抵抗値と光透過率を最適化することができない問題がある。この問題を解消するために、ITO膜を成膜した後にアニール処理を行って、電気抵抗値の低抵抗化を図ると共に光透過率を改善する。
【0017】
ITO膜は、本来1000nm以上の光を反射するが、ここでの反射はプラズマ振動によって起こっていることから、赤外域の光を照射することでITO膜内に振動した電子が流れ、この電子の流れでジュール熱が発生して加熱されることになる。そして、照射する光を0.1〜10μsecのパルス持続時間の短パルス光Lにすることで、液晶パネル内の液晶を加熱すること無く、ITO膜を加熱することができる。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態に係る透明導電膜のアニール処理方法の他の例を示している。この例では、光源としてレーザ光源20を用いて、スキャナ30で短パルス光Lをスキャンすることで、基板表面Aに短パルス光Lを照射して、基板表面Aに成膜された透明導電膜にアニール処理を行っている。ここでのレーザ光源20としては、赤外域にピーク波長を有するYAGレーザなどを用いることができる。このような例によっても前述した例と同様に、ディスプレイパネルP内の配向膜などに悪影響を及ぼすこと無く、基板表面Aに成膜された透明導電膜をアニール処理することができる。
【0019】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る透明導電膜のアニール処理方法によると、基板に成膜された透明導電膜に赤外域の短パルス光Lを照射してアニール処理を行うので、基板表面Aに成膜された透明導電膜をディスプレイパネルP内の構成要素に悪影響を及ぼすこと無くアニール処理することができる。そして、アニール処理を行う光を短パルス光Lにしているので、液晶が既に封入されている液晶パネルの基板表面Aに成膜された透明導電膜をアニール処理する場合にも、液晶を加熱すること無く透明導電膜を加熱することができる。
【符号の説明】
【0020】
1:支持部,2:フラッシュランプ,3:フィルタ,
20:レーザ光源,30:スキャナ,
P:ディスプレイパネル,L:短パルス光,A:基板表面
図1
図2
図3