(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-134513(P2016-134513A)
(43)【公開日】2016年7月25日
(54)【発明の名称】配電用自動電圧調整器
(51)【国際特許分類】
H01F 29/04 20060101AFI20160627BHJP
【FI】
H01F29/04 502Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-8590(P2015-8590)
(22)【出願日】2015年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】庄司 健一
(57)【要約】
【課題】タップ位置を確認するための覗き窓を遮光板で覆った状態と覆わない状態とを簡単に選択することができる配電用自動電圧調整器を提供する。
【解決手段】配電用自動電圧調整器のケース1に設けられた覗き窓2の透明板を覆う保護カバー5をケースに取り付ける。保護カバー5は、覗き窓2を通して行うタップ位置表示器の観察を可能にするための開口部を有してケース1に対して固定された枠体501と、枠体501にヒンジ502を介して取り付けられて枠体501の開口部を閉じる第1の位置と該開口部を開口させる第2の位置との間を回動し得る遮光板503と、遮光板503に支持された手動操作可能なラッチ505とを備え、遮光板503が第1の位置にあるときにラッチ505により遮光板503を枠体501に対して固定することができるようにした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ付き変圧器と、前記タップ付き変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器と、前記負荷時タップ切換器と連動してタップ位置を表示するタップ位置表示器とがケース内に収容されて該ケース内に絶縁油が充填され、前記タップ位置表示器の側方に位置させた状態で前記ケースの側壁に形成された孔の周縁に取り付けられた環状の窓枠取付座と該窓枠取付座の外端面に取り付けられた環状の窓枠と該窓枠と前記窓枠取付座との間に挟まれた状態で保持されて前記ケースの内外を仕切る透明板とを備えた覗き窓が設けられ、前記タップ位置表示器に表示されたタップ位置を前記ケースの外側から前記透明板を通して観察し得るように構成されている配電用自動電圧調整器において、
前記覗き窓の透明板を覆う保護カバーが前記ケースに取り付けられ、
前記保護カバーは、前記覗き窓を通して行うタップ位置表示器の観察を可能にするための開口部を有して前記ケースに対して固定された枠体と、前記枠体にヒンジを介して取り付けられて前記枠体の開口部を閉じる第1の位置と該開口部を開口させる第2の位置との間を回動し得る遮光板と、前記遮光板又は枠体に支持された手動操作可能なラッチとを備え、
前記遮光板が第1の位置にあるときに前記ラッチにより前記遮光板を枠体に対して固定することができるように構成されていること、
を特徴とする配電用自動電圧調整器。
【請求項2】
前記ラッチは前記遮光板に支持されていて、前記遮光板側から枠体側に向かう方向と枠体側から遮光板側に向かう方向とにスライドし得るように設けられ、
前記枠体には、前記遮光板が前記第1の位置にあるときに前記枠体側にスライドさせられた前記ラッチを受入れるラッチ受けが取り付けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項3】
前記ラッチ及びラッチ受けはそれぞれ前記遮光板の下部及び枠体の下部に取り付けられて、前記遮光板を枠体に対して固定する際に前記ラッチが下方に変位させられる請求項2に記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項4】
前記ラッチは前記枠体に支持されていて、前記枠体側から遮光板側に向かう方向と遮光板側から枠体側に向かう方向とにスライドし得るように設けられ、
前記遮光板には、前記遮光板が前記第1の位置にあるときに前記遮光板側にスライドさせられた前記ラッチを受入れるラッチ受けが取り付けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項5】
前記ラッチは前記枠体に支持されていて、前記枠体側から遮光板側に向かう方向と遮光板側から枠体側に向かう方向とにスライドし得るように設けられ、
前記遮光板が第1の位置にある状態で前記ラッチが遮光板側にスライドさせられた際に前記ラッチが遮光板の外面に接して該遮光板を前記第1の位置に固定するように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項6】
前記ラッチは前記枠体の上部に取り付けられて、前記遮光板を枠体に対して固定する際に下方に変位させられる請求項4又は5に記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項7】
前記ヒンジは、前記遮光板を前記第2の位置側に付勢するバネを備えたバネ付のヒンジからなっていて、前記ラッチをラッチ受けから外したときに前記バネの付勢力により前記遮光板が第1の位置から第2の位置側に回動させられるように構成されている請求項1ないし6の何れかに記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項8】
タップ付き変圧器と、前記タップ付き変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器と、前記負荷時タップ切換器と連動してタップ位置を表示するタップ位置表示器とがケース内に収容されて該ケース内に絶縁油が充填され、前記タップ位置表示器の側方に位置させた状態で前記ケースの側壁に形成された孔の周縁に取り付けられた環状の窓枠取付座と該窓枠取付座の外端面に取り付けられた環状の窓枠と該窓枠と前記窓枠取付座との間に挟まれた状態で保持されて前記ケースの内外を仕切る透明板とを備えた覗き窓が設けられ、前記タップ位置表示器に表示されたタップ位置を前記ケースの外側から前記透明板を通して観察し得るように構成されている配電用自動電圧調整器において、
前記覗き窓の透明板を覆う保護カバーが前記ケースに取り付けられ、
前記保護カバーは、前記覗き窓を通して行うタップ位置表示器の観察を可能にするための開口部を有して前記ケースに対して固定された枠体と、前記枠体にヒンジを介して取り付けられて前記枠体の開口部を閉じる第1の位置と該開口部を開口させる第2の位置との間を回動し得る遮光板と、前記遮光板及び枠体の少なくとも一方に固定された永久磁石を有して該永久磁石が生じる磁気吸引力により前記第1の位置にある遮光板を前記枠体に対して固定するマグネットキャッチと、前記遮光板を回動させる際につかむことができる位置に位置させて前記遮光板に固定された取っ手とを備えていること、
を特徴とする配電用自動電圧調整器。
【請求項9】
前記窓枠は、該窓枠の周方向に間隔をあけて配置されて該窓枠を貫通して前記窓枠取付座にねじ込まれた複数のボルトにより前記窓枠取付座に締結され、
前記枠体は、前記窓枠を窓枠取付座に締結しているボルトにより前記窓枠と共締めされた状態で前記ケースに対して固定されている請求項1ないし8の何れかに記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項10】
前記窓枠取付座の外周に沿わせて配置されて前記窓枠取付座に対して締め付けられた締め付けバンドにより窓枠取付座に固定された枠体固定金具が設けられ、該枠体固定金具に前記枠体が固定されている請求項1ないし8の何れかに記載の配電用自動電圧調整器。
【請求項11】
前記枠体は、前記ケースの側壁に溶接されて前記枠体を貫通したスタッドボルトと該スタッドボルトに螺合されたナットとにより前記ケースに対して固定されている請求項1ないし8の何れかに記載の配電用自動電圧調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップ位置表示器を備えた配電用自動電圧調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電用自動電圧調整器は、特許文献1に示されているように、タップ付変圧器と、タップ付変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器と、負荷時タップ切換器と連動して現在のタップ位置を表示するタップ位置表示器とを備えており、これらが絶縁油と共にケース内に収容されている。配電用自動電圧調整器の操作時及び点検時に、現在のタップ位置を確認することができるようにするため、ケースの側面に覗き窓が設けられ、この覗き窓を通してタップ位置表示器を観察することにより現在のタップ位置を知ることができるようになっている。覗き窓は、タップ位置表示器の側方に位置させた状態でケースの側壁に形成された孔の周縁に取り付けられた環状の窓枠取付座と、該窓枠取付座の外端面に取り付けられた環状の窓枠と該窓枠と窓枠取付座との間に挟まれた状態で保持されてケースの内外を仕切る透明板とにより構成されている。
【0003】
この種の配電用自動電圧調整器においては、覗き窓が露呈されていると、覗き窓の透明板を通してケース内に入射する熱や光により絶縁油の炭化水素が活性化されて絶縁油の酸化が進行するため、透明板の内側に絶縁油の酸化物が付着して透明板が汚れてしまうという問題がある。覗き窓の透明板が汚れると、覗き窓を通してタップ位置表示器を目視することができなくなるため、タップ位置を確認することができなくなる。
【0004】
そこで特許文献2に示されているように、タップ位置の確認を行わないときに覗き窓を遮光板で覆っておくことにより、覗き窓の透明板を通して熱や光が入射するのを防ぐ提案がなされている。特許文献2に示された配電用自動電圧調整器では、遮光板を固定する固定金具を窓枠取付座の外周に締め付けバンドにより固定して、この固定金具に180度間隔で取り付けた2本のスタッドボルトと、両スタッドボルトに螺合した2個の蝶ナットとにより、遮光板を覗き窓に固定するようにしている。
【0005】
特許文献2に示された配電用自動電圧調整器ではまた、覗き窓を遮光板により覆った状態と、覗き窓を遮光板により覆わない状態とを容易に選択し得るようにするために、2本のスタッドボルトの内の一方を遮光板に設けた貫通孔に嵌合させるとともに、他方のスタッドボルトを遮光板の外周部に設けた切り欠きに嵌合させた状態で両スタッドボルトに螺合された蝶ナットを締め付けることにより、遮光板を覗き窓に固定するようにしている。
【0006】
このように構成しておくと、2本のスタッドボルトにそれぞれ螺合されている蝶ナットを緩めた状態で、一方のスタッドボルトを中心に遮光板を回転させて、遮光板の外周部の切り欠きを他方のスタッドボルトから外すことにより、遮光板を覗き窓の前方から退避した位置まで変位させることができ、また退避位置にある遮光板を回転させて、遮光板の外周部の切り欠きをスタッドボルトに嵌合させた後、2つの蝶ナットを締め付けることにより、遮光板を覗き窓の前方に位置させて覗き窓を覆った状態にすることができるため、現地でタップ位置を確認する際の遮光板の取扱いを容易にすることができる。
【0007】
特許文献2にはまた、覗き窓の窓枠に固定したスタッドボルトと該スタッドボルトに螺合した蝶ナットとにより遮光板を覗き窓に取り付けるようにした遮光板の取り付け構造についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−179680号公報
【特許文献2】特開2010−80470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に示された遮光板の取り付け構造によった場合には、現地でタップ位置を確認する際に、蝶ナットを何度も回転させて緩めてから、遮光板を回転させる必要があり、またタップ位置の確認作業を終了した後は、遮光板を回転させて覗き窓の前方に位置させた後、蝶ナットを締め付ける作業を行う必要があるため、タップ位置を確認する際の作業が面倒であるとの指摘がされることがあった。
【0010】
また従来の構造では、装柱されている配電用自動電圧調整器のタップ位置を確認する場合に、蝶ナットを緩め過ぎると、蝶ナットや遮光板を地上に落下させてしまうおそれがあり、非常に危険である。また、蝶ナットなどの部品が地上に落下すると、危険なだけでなく、落下した部品を取りに行くために多くの手間を要するため、柱上作業時には、部品を落下させるおそれがある作業を行う必要がないようにしておくことが好ましい。
【0011】
本発明の目的は、タップ位置を確認するための覗き窓を遮光板で覆った状態と覆わない状態とを選択する作業を、蝶ナットを緩めたり締め付けたりする等の面倒な作業を伴うことなく、簡単に行うことができるようにするとともに、蝶ナットなどの部品が落下するおそれを無くすことができるようにした配電用自動電圧調整器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、タップ付き変圧器と、タップ付き変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器と、負荷時タップ切換器と連動してタップ位置を表示するタップ位置表示器とがケース内に収容されて該ケース内に絶縁油が充填された配電用自動電圧調整器を対象とする。本発明が対象とする配電用自動電圧調整器においては、タップ位置表示器の側方に位置させた状態でケースの側壁に形成された孔の周縁に取り付けられた環状の窓枠取付座と、該窓枠取付座の外端面に取り付けられた環状の窓枠と、該窓枠と窓枠取付座との間に挟まれた状態で保持されてケースの内外を仕切る透明板とを備えた覗き窓が設けられて、タップ位置表示器に表示されたタップ位置をケースの外側から透明板を通して観察し得るように構成されている。
【0013】
本発明においては、覗き窓を通して熱や光が入射して絶縁油が劣化するのを防ぐために、覗き窓の透明板を覆う保護カバーがケースに取り付けられている。この保護カバーは、覗き窓を通して行うタップ位置表示器の観察を可能にするための開口部を有してケースに対して固定された枠体と、枠体にヒンジを介して取り付けられて枠体の開口部を閉じる第1の位置と該開口部を開口させる第2の位置との間を回動し得る遮光板と、遮光板又は枠体に支持された手動操作可能なラッチとを備え、遮光板が第1の位置にあるときに前記ラッチにより遮光板を枠体に対して固定することができるように構成されている。
【0014】
上記のように構成しておくと、ラッチを手動操作して第1の位置にある遮光板の固定を解除した後、遮光板を第1の位置から第2の位置に回動させるだけで枠体の開口部を開口させてタップ位置の確認を可能にすることができる。また遮光板を第2の位置から第1の位置に回動させてラッチにより第1の位置に固定するだけで覗き窓の透明板を遮光板により覆った状態にして、透明板を通して熱や光が入射するのを防ぐことができる。
【0015】
上記のように構成すると、ネジを緩めたり締め付けたりする作業を伴うことなく、ラッチを操作するだけで遮光板の開閉を行うことができるため、タップ位置を確認する作業を簡単にすることができる。また遮光板はヒンジを介して枠体に支持され、ラッチは遮光板又は枠体に保持されているため、装柱状態にある配電用自動電圧調整器のタップ位置の確認を行う際に、部品が地上に落下するおそれを無くすことができる。
【0016】
上記の構成では、遮光板を第1の位置に保持する保持手段としてラッチを用いたが、遮光板及び枠体の少なくとも一方に固定された永久磁石を有して、該永久磁石が生じる磁気吸引力により遮光板を枠体側に引きつけて保持するマグネットキャッチと、遮光板を回動させる際につかむことができる位置に位置させて遮光板に固定された取っ手とを設けて、該マグネットキャッチにより、第1の位置にある遮光板を枠体に対して固定するように構成しても良い。
【0017】
上記のように、遮光板を第1の位置に保持する手段としてマグネットキャッチを用いた場合には、第1の位置にある遮光板を、取っ手を持って引くことにより第2の位置に回動させることができ、また第2の位置にある遮光板を第1の位置に向けて回動させるだけで遮光板を第1の位置に戻すことができるため、ラッチを操作する手間を省いて、遮光板を回動させる操作を簡単にすることができる。
【0018】
本発明の各構成要素は、種々の態様をとることができるが、本発明の各構成要素がとり得る種々の態様については、発明の実施形態についての説明中で詳細に説明する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ネジを緩めたり締め付けたりする作業を伴うことなく、遮光板の開閉を行うことができるため、タップ位置を確認する作業を簡単にすることができる。また遮光板はヒンジを介して枠体に支持され、遮光板を第1の位置に保持するラッチまたは永久磁石は、遮光板又は枠体に保持されていて落下することがないため、装柱状態にある配電用自動電圧調整器のタップ位置の確認を行う際に、部品が地上に落下するおそれを無くして、タップ位置の確認作業を安全に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態において、配電用自動電圧調整器のケースに設ける覗き窓を示した要部の正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、ケースに設けられた覗き窓に取り付けられた保護カバーの遮光板を第1の位置(覗き窓の透明板を覆う位置)に位置させた状態を示したもので、(A)は要部の正面図、(B)は要部の右側面図、(C)は枠体を断面して示した要部の底面図である。
【
図4】本発明の一実施形態において、ケースに設けられた覗き窓に取り付けられた保護カバーの遮光板を第2の位置(覗き窓の透明板を覆わない位置)に位置させた状態を示したもので、(A)は要部の正面図、(B)は要部の右側面図、(C)は枠体を断面して示した要部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下
図1ないし
図4を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1及び
図2において1は、本実施形態に係る配電用自動電圧調整器の金属製のケースである。ケース1は、筒状または箱形に形成されていて、ケース1内には、タップ付き変圧器と、タップ付き変圧器のタップを切り換える負荷時タップ切換器と、負荷時タップ切換器と連動してタップ位置を表示するタップ位置表示器とが絶縁油と共に収容されている。ケース1の側面には、タップ位置表示器が表示している現在のタップ位置を確認するための覗き窓2が設けられている。
【0022】
覗き窓2は、タップ位置表示器の側方に位置させた状態でケース1の側壁に形成された孔201の周縁に取り付けられた環状の窓枠取付座202と、窓枠取付座202の外端面に取り付けられた環状の窓枠203と、窓枠203と窓枠取付座202との間に挟まれた状態で保持されてケース1の内外を仕切る透明板204とを備えている。
【0023】
図示の例では、ケース1の側壁に形成された孔201が円形に形成され、孔201を取り囲むように、円環状に形成された窓枠取付座202が孔201の周辺部に孔201と整合した状態で配置されて、該窓枠取付座202がケース1の側壁に円周溶接されることにより、ケース1に固定されている。窓枠取付座202の内周寄りの部分が、該取付座の外端面側から切削されることにより、ケース1の側壁と反対側に開口した拡大径部202aが形成され、拡大径部202aが形成されたことにより、窓枠取付座202の軸線方向のほぼ中間部の内周に段部202bが形成されている。
【0024】
窓枠取付座202の拡大径部202aの内周に円板状の透明板204が嵌合され、透明板204と段部202bとの間に環状のパッキン205が挿入されている。窓枠203は、窓枠取付座202と同じ輪郭形状を有する円環状の金属板からなっていて、窓枠取付座202の外端面上に、窓枠取付座202と整合した状態で配置され、窓枠203と透明板204との間にパッキン206が挿入されている。
【0025】
窓枠203には、その周方向に等間隔をあけて複数(図示の例では6個)の貫通孔203a,203a,…が等角度間隔で形成され、窓枠取付座202には、窓枠203に形成された複数の貫通孔203a,203a,…にそれぞれ整合するネジ孔202a,202a,…が形成されている。貫通孔203a,203a,…をそれぞれ貫通させたボルト207,207,…がネジ孔202a,202a,…にねじ込まれることにより、窓枠203が窓枠取付座202に締結されている。透明板204は、窓枠203と窓枠取付座202との間に挟み込まれた状態で保持され、パッキン205及び206により、透明板204と窓枠取付座202の段部202bとの間及び窓枠203と透明板204との間がそれぞれ液密にシールされている。
【0026】
図1及び
図2に示されているように、覗き窓2の透明板204が露呈されていると、熱や光が透明板204を通してケース1内に入射するため、ケース内の絶縁油の炭化水素が活性化されて絶縁油の酸化が進行し、透明板の内側に絶縁油の酸化物が付着して透明板が汚れてしまう。覗き窓の透明板が汚れると、覗き窓を通してタップ位置表示器を目視することができなくなるため、タップ位置を確認することができなくなる。このような事態が生じるのを防ぐため、本実施形態では、
図3及び
図4に示したように、覗き窓2の透明板204を覆う保護カバー5がケース1に取り付けられる。
【0027】
本実施形態で用いる保護カバー5は、覗き窓2を通して行うタップ位置表示器の観察を可能にするための開口部501aを有してケースに対して固定された枠体501と、枠体501にヒンジ502を介して取り付けられて、
図3に示すように枠体501の開口部501aを閉じる第1の位置と、
図4に示したように開口部501aを開口させる第2の位置との間を回動し得る遮光板503と、遮光板503に支持された手動操作が可能なラッチ505とを備えて、遮光板503が
図3に示す第1の位置にあるときに、ラッチ505により遮光板503を枠体501に対して固定した状態に保持することができるように構成されている。
【0028】
更に詳細に説明すると、枠体501は、主枠部501Aと、主枠部501Aの裏面に溶接された枠板501Bとにより構成されている。主枠部501Aは、長方形状の輪郭形状を有して中央部に長方形の窓部501A1aが形成された額縁状の主板部501A1と、主板部501A1の幅方向の両端からケース1側に直角に折れ曲がった1対の側板部501A2,501A2と、側板部501A2,501A2の主板部501A1と反対側の端部から外側に主板部501A1の板面と平行な平面に沿って突出した一対の耳板部501A3,501A3とを一体に有し、耳板部501A3,501A3には、主板部501A1の幅方向に長手方向を向けた長孔501A3a,501A3a(
図3A参照)が形成されている。
【0029】
主枠部501Aの裏面に溶接された枠板501Bは、主枠部501Aの窓部501A1aよりも大きい長方形状の輪郭形状を有し、窓部501A1aよりも小さい長方形の輪郭形状を有する窓部501B1aを有する板からなっていて、窓部501B1aを主枠部501Aの窓部501A1aと整合させた状態で枠部501Aの主板部501A1の裏面に添わせて配置されて、主板部501A1に溶接されている。
【0030】
遮光板503は、主枠部501Aの窓部501A1aに嵌合することができる大きさの長方形状の金属板からなっていて、主枠部501Aの窓部501A1aと整合した状態で配置され、遮光板503の一方の長辺の中央部が、主枠部501aの長手方向の中央にヒンジ502を介して支持されることにより、遮光板503が枠体501に開閉自在に支持されている。
【0031】
枠板501Bの窓部501B1aは、主枠部501Aの窓部501A1aよりも小さく形成されているため、枠板501Bの窓部501B1aの周縁部が主枠部501Aの窓部501A1aの周縁部よりも内側に突出した状態で配置され、主枠部501Aの窓部501A1aの周縁部より内側に突出した枠板501Bの窓部の周縁部が、遮光板503の周縁部を受け止めて、該遮光板503を第1の位置(枠体の開口部を閉じる位置)に位置決めする位置決め部となっている。この例では、枠板501Bの窓部501B1aの内側の空所が、枠体501の開口部501aとなっている。枠体501の開口部501aは、覗き窓2の透明板204を通して行うタップ位置の確認作業に支障を来さない大きさに設定しておく。
【0032】
本実施形態では、遮光板503の下側の短辺部の中央にラッチ支持金具506がネジ7により固定され、このラッチ支持金具506により、角柱状に形成されたラッチ(閂)505が、遮光板503側から枠体501側に向かう方向と、枠体501側から遮光板側に向かう方向とに(図示の例では上下方向に)スライドし得るように設けられている。ラッチ505をスライド自在に支持するラッチ支持金具506には、ラッチ505のスライド方向に伸びるガイド孔506aが形成され、ラッチ505を操作するために該ラッチに固定されたつまみ507が、ガイド孔506aを通して外部に突出させられている。
【0033】
枠体501には、遮光板503が第1の位置にあるときに枠体側(下方に)にスライドさせられたラッチ505を受入れる門形のラッチ受け509が、ネジ8により取り付けられ、ラッチ505がラッチ受け509内に受け入れられることにより、遮光板503が第1の位置に保持されるようになっている。上記ラッチ505と、ラッチ支持金具506及びラッチ受け509とにより周知のラッチ錠が構成されている。
【0034】
上記枠体501と、枠体501にヒンジ502を介して開閉自在に支持された遮光板503と、ラッチ505と、ラッチ支持金具506と、ラッチ受け509とにより、保護カバー5が構成されている。配電用自動電圧調整器が装柱される場合には、保護カバー5が風雨に曝されるため、保護カバー5の各部は、耐候性を有する塗装が施された金属や耐腐食性を有するステンレス鋼等の金属により形成される。
【0035】
保護カバー5は、窓枠203を窓枠取付座202に固定するボルトのうち、対称位置に配置される2本のボルト207,207を、枠体501の耳板部501A3,501A3に形成された長孔501A3a,501A3aを通して窓枠取付座202に形成されたネジ孔にねじ込んで、耳板部501A3,501A3を窓枠203と共締めすることにより覗き窓2に固定されている。ボルト207,207を通すために耳板部501A3,501A3に設けられた孔は長孔となっているため、保護カバー5の左右位置の調整が可能である。
【0036】
上記のように構成しておくと、つまみ507を持ってラッチ505を手動操作して第1の位置にある遮光板の固定を解除した後、遮光板を第1の位置から第2の位置に回動させるだけで枠体の開口部を開口させてタップ位置の確認を可能にすることができる。また遮光板を第2の位置から第1の位置に回動させてラッチにより第1の位置に固定するだけで覗き窓の透明板を遮光板により覆った状態にして、透明板を通して熱や光が入射するのを防ぐことができる。
【0037】
上記実施形態のように構成すると、ネジを緩めたり締め付けたりする作業を伴うことなく、ラッチ505を手動操作するだけで遮光板503の開閉を行うことができるため、タップ位置を確認する作業を簡単にすることができる。また遮光板503はヒンジ502を介して枠体に支持され、ラッチ505は遮光板503に保持されているため、装柱状態にある配電用自動電圧調整器のタップ位置の確認を行う際に、部品が地上に落下するおそれを皆無にすることができる。
【0038】
装柱状態にある自動電圧調整器のタップ位置を確認する作業は、高所での作業となるため、遮光板の操作は、片手で行うことができるようにしておくことが好ましいが、従来の構造では、蝶ナットや遮光板が落下するのを防ぐために、蝶ナットを緩めたり締め付けたりする作業を行う際に、遮光板を片手で支えておく必要があったため、タップ位置の確認作業のすべてを片手作業で行うことは困難であった。これに対し、上記のように構成しておくと、ラッチ505の操作及び遮光板503を開閉する操作を片手で行うことができるため、遮光板503を第1の位置から第2の位置に回動させてタップ位置の確認を可能にする操作と、遮光板503を第1の位置に戻して覗き窓2を遮光板503で覆う操作とをすべて片手で行うことができ、高所での作業を安全に行わせることができる。
【0039】
上記の実施形態のように、ラッチ505及びラッチ受け509をそれぞれ遮光板503の下部及び枠体501の下部に取り付けて、遮光板503を枠体501に対して固定する際にラッチ505を下方に変位させるように構成しておくと、ラッチ505が重力により下方に付勢された状態でラッチ受け509に受け入れられた状態に保持されるため、ラッチを鎖錠位置(ラッチ受けに受け入れられた位置)に保持する手段を持たない簡単なラッチ錠を用いて、遮光板を第1の位置に確実に保持することができる。
【0040】
上記の実施形態では、ラッチ505を遮光板503に支持して、ラッチを遮光板503側から枠体501側に向かう方向と枠体501側から遮光板503側に向かう方向とにスライドさせることにより、遮光板の第1の位置への固定と、この固定の解除とを行わせるようにしたが、ラッチ505を枠体501にスライド自在に支持して、ラッチ505を枠体501側から遮光板503側に向かう方向と遮光板503側から枠体501側に向かう方向とにスライドさせることにより、遮光板の第1の位置への固定と、この固定の解除とを行わせるようにように構成してもよい。この場合は、遮光板503が第1の位置にあるときに遮光板503側にスライドさせられたラッチ505を受入れるラッチ受け509を、枠体501に取り付けておく。
【0041】
上記の実施形態ではラッチ505を受け止めるラッチ受け509を設けているが、本発明において、ラッチ受け509を設けることは必須ではない。例えば、
図3及び
図4に示したように、ラッチ505を遮光板503に支持する場合に、ラッチ505を遮光板503の裏面側に支持して、ラッチ505を枠体501の下部の裏面に係合させることによっても、遮光板503を第1の位置に保持する(閉じた状態に保持する)ことができる。この場合、遮光板503の表面側からラッチ505を操作することができるようにするため、ラッチ505を操作するつまみ507は、遮光板503を貫通させて設けた長孔を通して、遮光板503の表面側に導出しておく。この場合、ラッチ505を変位させる過程でつまみ507を貫通させる長孔を閉じた状態に保持しておくために、該長孔を塞いた状態に保持しつつ、つまみ507と共に変位する覆い板をつまみ507に固定しておくことが好ましい。
【0042】
またラッチ505を枠体501に支持して、ラッチを枠体側から遮光板側に向かう方向と遮光板側から枠体側に向かう方向とにスライドさせる場合には、遮光板503が第1の位置にある状態でラッチ505を遮光板503側にスライドさせた際に、ラッチ505が遮光板503の外面に接して該遮光板を第1の位置に固定するように構成することにより、ラッチ受けを省略することができる。
【0043】
ラッチ505を枠体501に支持して、ラッチを枠体側から遮光板側に向かう方向と遮光板側から枠体側に向かう方向とにスライドさせるようにする場合には、ラッチ505を枠体501の上部に取り付けて、遮光板503を枠体501に対して固定する際にラッチを下方に変位させるように構成しておくのが好ましい。このように構成しておくと、ラッチ505が遮光板503を枠体501に固定した状態で、ラッチ505を重力により下方に付勢した状態に保持することができるため、ラッチが振動等により遮光板を固定する位置から外れるのを防ぐことができる。
【0044】
上記の各実施形態において、遮光板503を枠体501に支持するヒンジ502として、遮光板503を第2の位置側(枠体の開口部を開く側)に付勢するバネを備えたバネ付のヒンジを用いることもできる。このようにバネ付のヒンジを用いると、ラッチ505をラッチ受けから外したとき、又は遮光板503を枠体に接する位置から外して、ラッチ505による遮光板の拘束を解いたときに、ヒンジに設けられたバネの付勢力により遮光板503を第1の位置から第2の位置側に回動させて遮光板を半開きの状態にすることができるため、遮光板503を第2の位置側に回動させる操作を容易に行わせることができる。
【0045】
図3及び
図4に示した実施形態では、窓枠203を窓枠取付座202に締結しているボルト207により枠体501を窓枠取付座202に締結することより、保護カバー5を覗き窓2に固定するようにしたが、本発明において、保護カバー5をケース1に対して固定する方法は任意である。例えば、窓枠取付座202の外周に沿わせて配置されて窓枠取付座202に対して締め付けられた状態で窓枠取付座202に固定される締め付けバンドにより窓枠取付座202に固定される枠体固定金具を設けて、この枠体固定金具に枠体501をボルト止めするようにしてもよい。
【0046】
またケース1の側壁に溶接されて、枠体501を貫通させられたスタッドボルトと、該スタッドボルトに螺合されたナットとにより、枠体501をケースに対して固定するようにしてもよい。
【0047】
上記の実施形態では、ラッチ505につまみ507を設けて、このつまみを手で持ってラッチのスライド操作を行うようにしたが、ラッチ支持金具506に回転自在なつまみ又はレバーを取り付けると共に、このつまみ又はレバーの回転をラッチ505のスライド変位に変換する機構を設けて、このつまみ又はレバーを回転させることにより、ラッチ505をスライドさせるように構成することもできる。
【0048】
上記の実施形態では、遮光板503を第1の位置に保持する保持手段としてラッチを用いたが、遮光板を第1の位置に保持する保持手段はラッチに限定されない。例えば、遮光板及び枠体の少なくとも一方に固定された永久磁石を有して、該永久磁石が生じる磁気吸引力により遮光板を枠体側に引きつけて保持するマグネットキャッチを上記保持手段として用いることができる。
【0049】
マグネットキャッチとしては、永久磁石と該永久磁石に吸引される強磁性体とを備えて、永久磁石及び強磁性体がそれぞれ遮光板及び枠体の一方及び他方に固定された状態で使用されるもの、又は、互いに吸引し合う2個の永久磁石を備えて、該2個の永久磁石の一方及び他方が遮光板及び枠体にそれぞれ固定された状態で使用されるものを用いることができる。また、遮光板及び(又は)枠体が鉄等の強磁性材料からなっている場合には、遮光板が第1の位置にあるときに、強磁性材料からなっている遮光板又は枠体を吸引して保持するように設けた永久磁石のみによりマグネットキャッチを構成することができる。
【0050】
上記のように、遮光板を第1の位置に保持する保持手段としてマグネットキャッチを用いた場合には、第1の位置にある遮光板を、該遮光板に取り付けられた取っ手を持って引くことにより、遮光板を第2の位置に回動させることができ、第2の位置にある遮光板を第1の位置に向けて回動させるだけで遮光板を第1の位置に戻すことができるため、ラッチを操作する手間を省いて、遮光板を回動させる操作を簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 配電用自動電圧調整器のケース
2 覗き窓
201 円形の孔
202 窓枠取付座
202a ネジ孔
203 窓枠
203a 貫通孔
204 透明板
205 パッキン
206 パッキン
207 ボルト
5 保護カバー
501 枠体
501a 枠体の開口部
502 ヒンジ
503 遮光板
505 ラッチ
506 ラッチ支持金具
507 つまみ
509 ラッチ受け