【解決手段】本発明に係る車両用引出装置10では、引出し13を横方向に挟む固定レール部材20が1対の固定レール22,23を備えると共に、上側の固定レール22より上方に固定支持突部25を有する。また、引出し13は、固定支持突部25に対して摺動する上側引出レール32と、1対の固定レール22,23の間に挟まれて下側の固定レール23に対して摺動する引出摺動突部38と、を備えている。そして、引出し13が全開位置で前下がりとなったとき、引出摺動突部38が、固定支持突部25より後側に配置されて上側の固定レール22に上方から押さえられ、固定レール部材20の固定補助突部26が、固定支持突部25より後側で引出し13に上方から当接する。
車両内の引出収容部に配設された1対の固定ベースが引出しを横方向に挟んで前後方向にスライド可能に支持することで、前記引出しが開閉される車両用引出装置において、
各前記固定ベースは、前後方向に延びた1対の固定レールを上下2段にして備えると共に、前記固定ベースの前端部且つ上側の前記固定レールより上方に位置して前記引出し側へ突出した固定支持突部を有し、
前記引出しは、前後方向に延びて下面が前記固定支持突部に対して摺動する引出レールと、前記引出しの後端部に位置して前記固定ベース側に突出すると共に前記1対の固定レールの間に挟まれて下側の前記固定レールに対して摺動する引出摺動突部と、を備え、
前記引出摺動突部は、前記引出しが全開位置で前記固定支持突部を支点として前下がりとなる全開前下がり状態になったときに、前記固定支持突部より後側に配置されて上側の前記固定レールに上方から押さえられ、
前記固定ベースには、前記引出しが前記全開前下がり状態になったときに、前記固定支持突部より後側で前記引出しに上方から当接する固定補助当接部が設けられている車両用引出装置。
前記引出しのうち前記引出摺動突部より後側部分には、前記全開前下がり状態で、上側の前記固定レールに上方から押さえられる引出補助当接部が設けられている請求項1に記載の車両用引出装置。
前記固定補助当接部と前記引出補助当接部とは、前記引出しが前記全開前下がり状態になったときに、前記引出しの後端位置で上下に並べて配置される請求項2に記載の車両用引出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したスライド機構1では、引出し3が全開状態になったときの固定側ローラ2Aと引出側ローラ3Bとの間の間隔が大きくなるため、引出し3の後端部(詳細には、全開位置で固定側ローラ2Aより後側に配置される部分)がデッドスペースになるという問題があった。特に、車両用の引出装置においては、車両内の限られたスペースに引出し3を収容する必要があるため、デッドスペースの発生は深刻な問題となり得た。一方、デッドスペースを小さくするために、全開状態での固定側ローラ2Aと引出側ローラ3Bとの間隔を小さくすると、全開状態の引出し3を支えるための固定レール2Bに加わる力が大きくなる。その結果、引出し3の耐荷重が低下するという別の問題が生じ得た。
【0005】
本発明は、デッドスペースを小さくしつつ引出しの耐荷重の低下を抑制することが可能な車両用引出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、車両内の引出収容部に配設された1対の固定ベースが引出しを横方向に挟んで前後方向にスライド可能に支持することで、前記引出しが開閉される車両用引出装置において、各前記固定ベースは、前後方向に延びた1対の固定レールを上下2段にして備えると共に、前記固定ベースの前端部且つ上側の前記固定レールよりも上方に位置して前記引出し側へ突出した固定支持突部を有し、前記引出しは、前後方向に延びて下面が前記固定支持突部に対して摺動する引出レールと、前記引出しの後端部から前記固定ベース側に突出すると共に前記1対の固定レールの間に挟まれて下側の前記固定レールに対して摺動する引出摺動突部と、を備え、前記引出摺動突部は、前記引出しが全開位置で前記固定支持突部を支点として前下がりとなる全開前下がり状態になったときに、前記固定支持突部より後側に配置されて上側の前記固定レールに上方から押さえられ、前記固定ベースには、前記引出しが前記全開前下がり状態になったときに、前記固定支持突部より後側で前記引出しに上方から当接する固定補助当接部が設けられている車両用引出装置である。
【0007】
請求項2の発明は、前記引出しのうち前記引出摺動突部より後側部分には、前記全開前下がり状態で、上側の前記固定レールに上方から押さえられる引出補助当接部が設けられている請求項1に記載の車両用引出装置である。
【0008】
請求項3の発明は、前記固定補助当接部と前記引出補助当接部とは、前記引出しが前記全開前下がり状態になったときに、前記引出しの後端位置で上下に並べて配置される請求項2に記載の車両用引出装置である。
【0009】
請求項4の発明は、前記引出摺動突部を側方から見た形状を、前記1対の固定レールの間の間隔より小径な円形状にすると共に、前記引出しに、前記引出摺動突部の上端寄り位置を前後方向に横切るように延びて前記1対の固定レールの間に挟まれる下側引出レールを形成し、前記引出補助当接部を、前記下側引出レールのうち前記引出摺動突部より後側に配置された部分で構成した請求項2又は3に記載の車両用引出装置である。
【0010】
請求項5の発明は、前記固定支持突部は、側面視円形状に形成され前記引出レールの後端寄り位置の下面には、前記固定支持突部と略同径の円弧状をなして上方に膨出すると共に、後端縁が前端縁より下方に配置された前進規制円弧面が設けられている請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の車両用引出装置である。
【0011】
請求項6の発明は、前記固定補助当接部を、前記固定支持突部の斜め後ろ上方に配置して、前記固定支持突部との間に前記引出レールを挟むように構成し、前記引出レールのうち前記前進規制円弧面を下面とする前進規制部より後側部分を厚肉にした請求項5に記載の車両用引出装置である。
【0012】
請求項7の発明は、前記引出収容部は、インストルメントパネルの下部に配置される請求項1乃至6のうち何れか1の請求項に記載の車両用引出装置である。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1〜3,7の発明]
請求項1の発明では、引出しの開閉に伴って、固定ベースに備えた固定支持突部の上を引出レールの下面が摺動し、上下方向で1対の固定レールに挟まれた引出摺動突部が下側の固定レールの上を摺動する。そして、引出しが全開位置で固定支持突部を支点として前下がりとなる全開前下がり状態になると、固定支持突部より後側で、引出摺動突部が上側の固定レールに上方から押さえられる。ここで、固定支持突部は上側の固定レールより上方に配置されているので、固定支持突部と引出レールの当接部分と、引出摺動突部と上側の固定レールの当接部分とは、上下方向にずれて配置される。従って、全開位置における固定支持突部と引出摺動突部との間の間隔が引出しのスライド方向で短くなっても、固定支持突部と引出摺動突部との間の距離を稼ぐことができる。その結果、全開状態の引出しにかかる荷重を支える上側の固定レールに加わる荷重の上昇が抑えられ、引出しの後端部に生じるデッドスペースを小さくすることが可能となる。特に、インストルメントパネルの下部のように、引出収容部のスペースを大きくとることが困難な場合には、デッドスペースを小さくすることは有効である(請求項7の発明)。しかも、本発明では、引出しが全開前下がり状態となったときに、固定補助当接部が、固定支持突部より後側で引出しに上方から当接する。このように、本発明では、全開前下がり状態で上方に持ち上がろうとする引出しの後端部を、上側固定レールだけでなく、固定補助当接部によっても支持する構成となっているので、全開状態の引出しの耐荷重の低下が抑制される。
【0014】
しかも、請求項2の発明のように、引出しが全開前下がり状態となったときに、引出摺動突部よりも後側で上側の固定レールに上方から押さえられる引出補助当接部を引出しに備えた構成とすれば、全開前下がり状態における引出しの支持箇所が増え全開状態の引出しの耐荷重を大きくすることが可能となる。
【0015】
さらに、請求項3の発明のように、引出しが全開前下がり状態となったときに、固定補助当接部と引出補助当接部とが、引出しの後端位置で上下に並べて配置される構成とすれば、引出しの後端部が揃いデッドスペースを小さくすることが可能となる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の発明では、引出摺動突部を側方から見た形状が、1対の固定レールの間の間隔より小径な円形状になっているので、1対の固定レールの間で引出摺動突部をスムーズに移動させることが可能となる。また、引出しには、引出摺動突部の上端寄り位置を前後方向に横切るように延びた下側引出レールが設けられているので、引出しが前後方向に移動する際の上下方向のガタつきを防止することが可能となる。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の発明では、引出レールの下面に、上方に膨出すると共に後端縁が前端縁よりも下方に配置された前進円弧規制面が設けられているので、前進規制円弧面より後側に固定支持突部が摺動することが規制される。これにより、引出しの前進が規制される。また、固定支持突部が側面視円形状に形成されると共に、前進規制円弧面が固定支持突部と略同径の円弧状をなしているので、引出しが全開前下がり状態になったときに、固定支持突部と引出レールとが面当接し、引出しの支持の安定化を図ることが可能となる。
【0018】
[請求項6の発明]
請求項6の発明では、引出レールのうち固定補助当接部と当接する部分、即ち、前進規制部より後側部分が厚肉になっているので、全開前下がり状態となった引出しの耐荷重を大きくすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をグローブボックスに適用した一実施形態を
図1〜
図12に基づいて説明する。
図1には、車両90のインストルメントパネル91が示されている。インストルメントパネル91の上部には、計器類表示窓92が備えられている。そして、インストルメントパネル91の助手席側の下部(具体的には、助手席の着座者の膝周辺に位置する部分)に、本実施形態に係る車両用引出装置10(以下、単に、引出装置10という。)が設けられている。
【0021】
図2に示すように、引出装置10は、前方に開口したアウターケース11と、アウターケース11内に収容される引出し13とで構成されている。
図3に示すように、インストルメントパネル91には、車室側に開口した引出収容空間91Sが形成されていて、アウターケース11は、引出収容空間91S内に収容された状態でインストルメントパネル91に固定されている。そして、アウターケース11内に引出し13が収容された状態で、引出し13が引出収容空間91Sの開口91A(
図1参照)を閉塞している。この状態で、引出し13の前面13Fは、インストルメントパネル91の前面91Mと略面一になっている。なお、インストルメントパネル91の前面91Mは、前上がりに傾斜している。
【0022】
図4に示すように、アウターケース11は、ケース本体12に、1対の固定レール部材20,20(
図4には、一方の固定レール部材20のみが示されている。)を固定してなる。本実施形態では、アウターケース11が本発明の「引出収容部」に相当し、固定レール部材20が本発明の「固定ベース」に相当する。
【0023】
ケース本体12は、天井壁12Aと底壁12Cの両側部同士が1対の対向側壁12B,12Bで連絡された構成になっている。そして、1対の固定レール部材20,20は、1対の対向側壁12B,12Bの互いの対向面に固定されている。なお、詳細には、対向側壁12B,12Bの上下方向の中間位置には、下端部同士が互いに接近するように段差部12BDが形成され、固定レール部材20は、対向側壁12Bのうち段差部12BDよりも上側部分に固定される。また、ケース本体12における天井壁12Aと底壁12Cの後端部同士は、後端壁12D,12Dで連絡されている。
【0024】
図5に示すように、引出し13は、引出し本体14に1対の引出レール部材30,30(
図5には、一方の引出レール部材30のみが示されている。)を固定してなる。具体的には、引出し本体14は、上方が開放したケース部14Aの前端部に取手部14Bを取り付けた構成になっていて、1対の引出レール部材30,30は、引出し本体14のうち横方向で対向する対向側壁14H,14Hの外側を向く面に固定されている。なお、取手部14Bは引出し13の前面を構成し、後下がりに傾斜している。また、取手部14Bの前面には、操作者の指が掛けられる指掛け凹部15が形成されている。
【0025】
引出し13がアウターケース11内に収容された状態で、1対の固定レール部材20,20は、引出し13を横方向に挟み、固定レール部材20と引出レール部材30とは、
図6に示すように、対向配置される。そして、固定レール部材20が引出レール部材30を前後方向にスライド可能に支持することで、引出し13が開閉可能となっている。即ち、本実施形態では、固定レール部材20及び引出レール部材30によって、アウターケース11に対して引出し13を出入可能にするスライド機構50が構成されている。なお、固定レール部材20及び引出レール部材30は、共に樹脂成形品で構成されている。以下、固定レール部材20及び引出レール部材30について、詳説する。
【0026】
図6に示すように、固定レール部材20は、ケース本体12の対向側壁12B(
図4参照)に宛がわれる固定ベースプレート21と、固定ベースプレート21から引出レール部材30側に向かって突出した1対の固定レール22,23と、を備えている。
【0027】
図7(A)に示すように、固定ベースプレート21は、前後方向に直線状に延びた帯板部21Aと、帯板部21Aの前端部(
図7(A)では、左側の端部)から上方に張り出した上方張出部21Bと、で構成されている。帯板部21Aは、前端縁が後下がりに傾斜した台形状になっている。上方張出部21Bは、帯板部21Aの前端より前方に配置される前端頂点部21Fと、前端頂点部21Fの斜め後ろ上方に配置される上端頂点部21Uと、を有する略四角形状をなし、前端縁が帯板部21Aの前端縁の延長線上に配置されている。
【0028】
1対の固定レール22,23は、帯板部21Aから突出して前後方向に直線状に延び、上下2段に並べて配置されている。詳細には、上側の固定レール22は、帯板部21Aの上端縁から突出し、下側の固定レール23は、帯板部21Aの下端寄り位置から突出している。また、下側の固定レール23の後端部からは、起立壁24が上方に突出している。なお、以下では、上側の固定レール22を上側固定レール22と、下側の固定レール23を下側固定レール23と、適宜区別して呼ぶことにする。
【0029】
固定ベースプレート21の上方張出部21Bからは、引出レール部材30側に向かって固定支持突部25と固定補助突部26(本発明の「固定補助当接部」に当接する。)が突出している。具体的には、固定支持突部25は、上方張出部21Bの前端頂点部21Fから突出し、固定補助突部26は、上方張出部21Bの上端頂点部21Uから突出している。固定支持突部25の断面形状は円形状になっている。また、固定補助突部26の断面形状は固定支持突部25よりも小径な円形状となっている。
【0030】
図6に示すように、引出レール部材30は、引出し本体14の対向側壁14H(
図5参照)の側面に宛がわれる引出ベースプレート31を備え、この引出ベースプレート31から固定レール部材20側に向かって、上側引出レール32、下側引出レール36及び引出摺動突部38が突出した構成となっている。
【0031】
図7(B)に示すように、引出ベースプレート31を側方から見た形状は、前後方向に長くなった長方形の前端部の下隅部が三角形状に切除された形状になっている。引出ベースプレート31の高さは、上述した固定レール部材20の固定ベースプレート21よりも低く、固定ベースプレート21における帯板部21Aよりも高くなっている。
【0032】
上側引出レール32及び下側引出レール36は共に、前後方向へ直線状に延び、上下2段に並べて配置されている。具体的には、上側引出レール32は、引出ベースプレート31の上端縁から突出し、下側引出レール36は、引出ベースプレート31における上下方向の中間位置から突出している。また、引出摺動突部38は、引出レール部材30の後端部の下端寄り位置に配置されている。そして、下側引出レール36が引出摺動突部38の上端寄り位置を横切るように配置され、引出摺動突部38の頂部38Aが下側引出レール36よりも上方に配置されている。
【0033】
上側引出レール32の後端寄り部分には、上方に膨出する円弧状の前進規制円弧面34Mを下面に有する前進規制部34が形成されている。この前進規制円弧面34Mは、固定支持突部25と略同径であって、後端縁が前端縁よりも下方に配置されるように形成されている。そして、上側引出レール32のうち前進規制部34より前側部分に、略水平な下面を有する直線摺動部33が形成される一方、前進規制部34より後側部分に、直線摺動部33よりも上下方向に厚肉となった厚肉部35が形成されている。なお、引出摺動突部38は、前進規制部34よりも後側、即ち、厚肉部35の下方に配置されている。
【0034】
次に、引出装置10における引出し13の開閉操作について説明する。
図8には、引出し13の全体がアウターケース11内に収容された状態、即ち、引出し13が全閉位置に配置された状態の固定レール部材20及び引出レール部材30の側断面図が示されている。同図に示されるように、引出レール部材30の下側引出レール36及び引出摺動突部38は、固定レール部材20の1対の固定レール22,23の間に配置されている。また、引出レール部材30の上側引出レール32は、固定レール部材20の固定支持突部25と固定補助突部26の間に配置されている。そして、上側引出レール32が固定支持突部25に下方から受け止められている。このとき、引出し13は、自重によって後端部が下がった状態となり、引出摺動突部38が下側固定レール23に下方から受け止められる。ここで、引出摺動突部38の外径は1対の固定レール22,23の間の間隔よりも若干小さくなっていて、引出摺動突部38は、上側固定レール22との間に隙間を有して配置される。なお、引出摺動突部38は、固定レール部材20の起立壁24によって後方への移動が規制され、これにより、引出し13が
図8に示す状態から更に後側へ引っ込むことが抑制されている。
【0035】
引出し13を開くには、取手部14Bの指掛け凹部15(
図2参照)に指を掛けて、引出し13を前方へ引き出す。引出し13が前方に引き出されると、
図8から
図9への変化に示すように、上側引出レール32が固定支持突部25の上部を摺動すると共に、引出摺動突部38が下側固定レール23上を摺動する。ここで、上述したように、引出摺動突部38は、1対の固定レール22,23の間の間隔より小径な円形になっているので、引出摺動突部38が1対の固定レール22,23から摺動抵抗を受けることが抑えられ、1対の固定レール22,23の間で引出摺動突部38をスムーズに移動させることが可能となる。また、引出し13には、引出摺動突部38の上端寄り位置を前後方向に横切るように延びた下側引出レール36が設けられているので、引出し13が前後方向に移動する際の上下方向のガタつきを防止することが可能となる。
【0036】
引出し13が、
図9に示した状態から更に前方に引き出されると、
図10に示すように、固定支持突部25が上側引出レール32の前進規制円弧面34Mと当接する。ここで、前進規制円弧面34Mは、後端縁が前端縁より下方に配置されているので、固定支持突部25が前進規制円弧面34Mより後側に移動することが抑制され、引出し13の前方への移動が規制される。この状態で、引出し13から手を放すと、引出し13は、自重により、固定支持突部25を支点として若干前下がりに配置され、
図11に拡大して示すように、引出摺動突部38の頂部38Aが上側固定レール22に上方から押さえられる。なお、
図10に示した引出し13(引出レール部材30)の位置が、本発明の「全開位置」となっている。
【0037】
引出し13の開操作に関する説明は以上である。引出し13の閉操作については、開操作と逆になっているので、説明を省略する。
【0038】
ところで、全開位置に配置された引出し13が、引出し13内の荷物等から大きな荷重を受けて更に前下がりになると、引出摺動突部38からその荷重を受ける上側固定レール22が破損したり、上側固定レール22の変形により引出し13がアウターケース11から脱落するという問題が生じ得る。そこで、本実施形態の引出装置10では、以下に説明するように、引出装置10(上側固定レール22)の破損や、引出し13の脱落防止が図られている。
【0039】
即ち、引出し13が、
図11に示す状態から更に前下がりとなった全開前下がり状態になると、
図12に示すように、上側引出レール32の後端部、即ち、厚肉部35が固定補助突部26に上方から押さえられる。このように、本実施形態の引出装置10では、上方に持ち上がろうとする引出し13の後端部を、上側固定レール22だけでなく、固定補助突部26によっても支持する構成となっているので、引出し13の支持の高耐荷重化が図られ、引出装置10の破損や、引出し13の脱落が抑制される。しかも、上側引出レール32のうち固定補助突部26と当接する厚肉部35は前進規制部34よりも厚肉に形成されているので、全開前下がり状態となった引出し13の支持の高耐荷重化が図られる。
【0040】
また、本実施形態の引出装置10では、引出し13が全開前下がり状態になったときに、下側引出レール36の後端部、即ち、引出摺動突部38より後側の部分が上側固定レール22に上方から押さえられる。このように、本実施形態では、引出し13の引出摺動突部38だけでなく下側引出レール36についても上側固定レール22に上方から押さえられるので、全開前下がり状態における引出し13を支持する力を分散することが可能となり、引出装置10の破損や、引出し13の脱落の更なる抑制が図られる。本実施形態では、下側引出レール36のうち引出摺動突部38より後側の部分によって、本発明に係る引出補助当接部37が構成されている。
【0041】
ここで、固定補助突部26と引出補助当接部37は、
図12に示されるように、引出し13の後端位置で上下に並べて配置され、引出レール部材30の後端を上方から押さえる。これにより、引出し13の後端部が上下にまっすぐ構成できるので、引出収容空間91Sのデッドスペースをより小さくすることが可能となる。
【0042】
また、上述したように、上側引出レール32の前進規制円弧面34Mは、固定支持突部25と略同径になっている。従って、引出し13が固定支持突部25を支点として回動する際に、上側引出レール32と固定支持突部25とを常に面当接させることが可能となる。これにより、固定支持突部25による引出し13の支持の安定化が図られている。
【0043】
なお、
図12の例では、上側固定レール22の前端部が撓むことにより、引出摺動突部38の頂部38A及び下側引出レール36の引出補助当接部37が上側固定レール22に当接する構成となっているが、上側固定レール22の前端部を上方に曲がった構成にしておき、上側固定レール22が撓むことなく、引出摺動突部38の頂部38Aと引出補助当接部37とが共に上側固定レール22と当接する構成であってもよい。
【0044】
本実施形態の引出装置10の構成に関する説明は以上である。次に、引出装置10の作用効果について説明する。
【0045】
本実施形態の引出装置10では、引出し13が全開位置で固定支持突部25を支点として前下がりとなる全開前下がり状態になると、固定支持突部25より後側で、引出摺動突部38が上側固定レール22に上方から押さえられる。ここで、固定支持突部25は上側固定レール22より上方に配置されているので、固定支持突部25と上側引出レール32の当接部分と、引出摺動突部38と上側固定レール22の当接部分とは、上下方向にずれて配置される。従って、全開位置における固定支持突部25と引出摺動突部38との間の間隔が引出スライド方向で短くなっても、固定支持突部25と引出摺動突部38との間の距離を稼ぐことができる。そのため、全開状態の引出し13にかかる荷重を支える上側固定レール22に加わる荷重の上昇が引出し13を上方から押さえる力が弱くなることが抑えられ、引出し13の後端部に生じるデッドスペースを小さくすることが可能となる。しかも、本実施形態では、全開前下がり状態で上方に持ち上がろうとする引出し13の後端部を、上側固定レール22だけでなく、固定補助突部26によっても支持する構成となっている。これにより、全開状態の引出し13の耐荷重の低下が抑制される。このように、本実施形態の引出装置10によれば、引出し13の後端部に生じるデッドスペースを小さくしつつ引出し13の耐荷重の低下を抑制することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の引出装置10では、引出し13が全開前下がり状態となったときに、引出摺動突部38よりも後側の引出補助当接部37が上側固定レール22に上方から押さえられるので、全開前下がり状態における引出し13の支持箇所が増え全開状態の引出しの耐荷重を大きくすることが可能となり、引出し13の高耐荷重化が図られる。しかも、固定補助突部26と引出補助当接部37とは、引出し13が全開前下がり状態となったときに、引出し13の後端位置で上下に並べて配置されるので、引出し13の後端部が揃いデッドスペースを小さくすることが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態の引出装置10では、固定レール部材20及び引出レール部材30における互いの摺接部分は、樹脂製の円形突部(固定支持突部25及び引出摺動突部38)及びレール(固定レール22,23及び上側引出レール32)で構成されているので、ローラやベアリング等を用いる必要がなくなり、安価に製造することが可能となる。
【0048】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0049】
(1)上記実施形態では、本発明をグローブボックスに適用した例を示したが、コンソールボックスやその他の小物入れに適用してもよい。
【0050】
(2)上記実施形態において、引出し13が全開前下がり状態となったときに、固定補助突部26と引出補助当接部37とが、引出し13の後端位置で上下に並べて配置される構成であったが、固定補助突部26と引出補助当接部37とが前後にずれて配置される構成であってよい。
【0051】
(3)上記実施形態において、引出補助当接部37を備えない構成としてもよい。