【解決手段】レール50に沿って前後方向に配置された左側側梁120a及び右側側梁120bと、枕木に沿って左右方向に配置された横梁110を有し、側梁120に横梁110が接合された鉄道車両用の鉄道車両用台車枠100と、鉄道車両用台車枠100に備えられて車体を支持する車体支持装置40と、鉄道車両用台車枠100に取付けられ車軸21を受ける軸受22を備えた軸箱支持装置23と、車輪20及び車軸21を備える台車200において、横梁110に、スリット115が設けられ、左側側梁120aと右側側梁120bとの位置関係がねじれの関係となった際に、左側側梁120aと右側側梁120bとの相対位置の変位をスリット115によって吸収し、車輪20の輪重抜けを防ぐ構成とする。
レールに沿って前後方向に配置された左側梁及び右側梁と、枕木に沿って左右方向に配置された横梁を有し、前記側梁に前記横梁が接合された鉄道車両用の台車枠と、前記台車枠に備えられて車体を支持する車体支持装置と、前記台車枠に取付けられ車軸を受ける軸受けを備えた軸箱支持装置と、車輪及び車軸を備える鉄道車両用台車において、
前記横梁に、ねじり剛性低減部が設けられ、
前記左側梁と前記右側梁との位置関係がねじれの関係となった際に、前記左側梁と前記右側梁との相対位置の変位を前記ねじり剛性低減部によって吸収し、前記車輪の輪重抜けを防ぐこと、
を特徴とする鉄道車両用台車。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用台車枠は、レール方向(台車枠の前後方向)に沿って配置された左右2本の側梁と、枕木方向(台車枠の左右方向)に沿って配置された前後2本の横梁とが連結されて構成されている。こうした形状の鉄道車両用台車枠には、従来から様々な構造のものが提案されている。
【0003】
特許文献1には、鉄道車両用台車に関する技術が開示されている。車両進行方向にほぼ沿って伸びると共に枕木方向に離間して配置された一対の側枠と、側枠に設けられた輪軸の端部を保持する軸箱と、軸バネを介して軸箱を支持する軸箱支持装置と、枕木方向に沿って伸び、一対の側枠の中間部間を連結する横梁とを備える鉄道車両用台車を、左右の側枠を枕木方向にほぼ沿った回転軸回りに相対回転可能とする軸受部が設けられる。こうすることで、車両の乗り心地及び高速走行性能を確保しつつ、軌道に対する車輪の追従性を増している。
【0004】
特許文献2には、鉄道車両用台車枠に関する技術が開示されている。左右の側梁に一本の横梁が接合され、横梁は前後方向に幅広の扁平形状に形成され、側梁を貫通して接合される左右の接合部と、その左右の接合部の間にあって中央に長円形状の貫通孔が形成された中間部とを有している。この中間部にモータが取付けられる場合には、ブラケットによる前後方向の位置調整が必要ないように前後方向の幅寸法が接合部よりも大きく形成されている。また、左右の側梁の内側にブレーキをそれぞれ取付ける左右方向の寸法を有する。この為、機器取付け性に優れた鉄道車両用台車枠を提供可能となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術を用いた台車枠を鉄道車両用台車に用いた場合、平面性捻れが発生した時にそれを吸収できずに車輪の輪重抜けなどが発生する虞がある。例えば、列車の繰り返し通過や自然現象に起因して、レールに予測不可能な不整が生じる場合がある。また、曲線の出入り口には左右レールの高度差が連続的に変化するカント遁減区間が設けられている。この様な箇所では、レールの高さが左右で不均衡となり、台車に捻れが生じる平面性捻れが懸念される。特許文献1に記載の技術は、この平面性捻れに対応するために軸受けを設けているが、軸受けを側梁に設ける構造であるため、側梁の構造が複雑化してメンテナンスが困難となると予想される。
【0007】
そこで本発明は、簡素な構成で平面性捻れに対応し車輪の輪重抜け防止が可能な鉄道車両用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による鉄道車両用台車を、以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)レールに沿って前後方向に配置された左側梁及び右側梁と、枕木に沿って左右方向に配置された横梁を有し、前記側梁に前記横梁が接合された鉄道車両用の台車枠と、前記台車枠に備えられて車体を支持する車体支持装置と、前記台車枠に取付けられ車軸を受ける軸受けを備えた軸箱支持装置と、車輪及び車軸を備える鉄道車両用台車において、前記横梁に、ねじり剛性低減部が設けられ、前記左側梁と前記右側梁との位置関係がねじれの関係となった際に、前記左側梁と前記右側梁との相対位置の変位を前記ねじり剛性低減部によって吸収し、前記車輪の輪重抜けを防ぐこと、を特徴とする。
【0010】
上記(1)に記載の態様によれば、鉄道車両用台車に用いられる台車枠は横梁と側梁とから構成されており、横梁にはねじり剛性低減部が設けられている。ここで横梁に生じるねじり剛性とは、側梁に連結される横梁にねじれ方向に力が加わった際に、これに抗する力のことを言う。例えば左側梁の先端部がZ軸方向上側に傾いた際に、右側梁の先端部がZ軸方向下側に傾くことで、左側梁と右側梁が異なる挙動を示し、これに伴って側梁に連結される横梁にはねじれ方向に力が加わる。このように、ねじり剛性低減部が横梁に設けられることで、台車に対して平面性捻れが発生した際に台車枠が追従し易くなる。日本国内においては、レールの継ぎ目等の位置を左右で合わせるよう敷設したり、レールの点検を頻繁に行って整備したりと、平面性捻れの発生は生じにくい。しかし、海外ではこうした配慮が為されていない国もあり、車両からの重量を受け止めるべく設計された台車の剛性が仇となるケースも想定される。
【0011】
また、課題で示したように、列車の繰り返し通過や自然現象に起因、或いはカント遁減区間など、平面性捻れの発生し易い箇所もある。このため、左右の側梁を繋ぐ横梁のねじり剛性をねじり剛性低減部を設けることで減少させている。この結果、右側のレールと左側のレールの高さが部分的に異なるような、レール側の問題を台車で吸収することが可能となり、列車の乗り心地の改善や安全性の向上に寄与することができる。
【0012】
(2)(1)に記載の鉄道車両用台車において、前記ねじり剛性低減部が、前記横梁の側面に設けられたスリットであり、前記スリットは、前記横梁の側面であって長手方向に長く形成され、前記スリットの両端部には、前記スリットの高さより大きい直径を有する穴が形成されていること、が望ましい。
【0013】
(3)(2)に記載の鉄道車両用台車において、前記横梁は、前記左側梁及び前記右側梁に溶接されて固定されており、前記スリットは、前記左側梁と前記右側梁との間の距離より、短く形成されていること、が望ましい。
【0014】
上記(2)の態様により、ねじり剛性低減部としてスリットを用いることで、横梁の構造を複雑化させずに、簡素な構成で台車のねじり剛性を低減することが可能である。横梁に設けられたスリットは、2本並ぶ側梁の間の距離より短く形成されている、即ちスリットは側梁間に設けられており、その外側に横梁と側梁とを接合する部分が来ることになる。スリットの両端部に設けられた穴は、応力集中を防ぐ為にスリットの高さ(隙間の幅)より直径の大きな穴が形成されている。この結果、結合部分が例えば溶接による接合を用いる場合に、スリット部分の処理などが容易になる。又、上記(3)の態様により、溶接箇所の影響を受けることなくスリットによってねじり剛性低減の効果が得られる。
【0015】
(4)(1)に記載の鉄道車両用台車において、前記横梁は、前記左側梁又は前記右側梁と接合される両端部に、前記左側梁又は前記右側梁の前後方向に幅広に形成された長円断面を有し、前記左側梁又は前記右側梁の前後方向に幅広に形成された中央部には、長円形状の貫通孔が上下に貫通する様に設けられること、が好ましい。
【0016】
横梁が接合部の前後方向の幅よりも中間部の前後方向の幅寸法が大きくなるように膨らんだ形状である。この為、中間部ではモータの取付位置が車軸に近くなり、接合部では車輪との間に配置されるユニットブレーキの設置スペースが広くなるなど、機器の取付けに優れた鉄道車両用台車の提供が可能となる。その上で、横梁にスリットが設けられているので、適度にねじり剛性が低減されて、右側のレールと左側のレールの高さが部分的に異なるような、レール側の問題を台車で吸収することが可能となり、列車の乗り心地の改善や安全性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の、鉄道車両用台車枠の部分斜視図である。
【
図2】第1実施形態の、鉄道車両用台車枠の全体斜視図である。
【
図3】第1実施形態の、鉄道車両用の台車の平面図である。
【
図4】第1実施形態の、鉄道車両用の台車の側面図である。
【
図5】第1実施形態の、横梁をFEM解析した結果を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態の、横梁の変形を強調したFEM解析結果を示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態の、鉄道車両用台車枠の斜視図である。
【
図8】第2実施形態の、横梁の変形を強調したFEM解析結果を示す斜視図である。
【
図9】第3実施形態の、鉄道車両用台車枠の斜視図である。
【
図10】第3実施形態の、横梁の変形を強調したFEM解析結果を示す斜視図である。
【
図12】第5実施形態の、鉄道車両用台車枠の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の鉄道車両用台車枠100の部分斜視図を示す。
図2に、鉄道車両用台車枠100の全体斜視図を示す。鉄道車両用台車枠100は、横梁110と側梁120とが組み合わされてなる。左側側梁120aと右側側梁120bとを貫通する様に設けられているのが横梁110であり、横梁110と側梁120とは溶接によって接続されている。横梁110は、
図1に示すように側梁120と接合される横梁端部111(左端部111a及び右端部111b)と、左側側梁120aと右側側梁120bの間に設けられる横梁中央部112とを有する。
【0019】
横梁端部111は幅広の長円形状に形成されており、側梁120と接合された場合に、側梁120の前後方向(即ちレール50に沿った方向)に幅広となるように配置される。横梁中央部112は、横梁端部111よりも前後方向に曲線的に拡幅されて幅広に形成され、その横梁中央部112に軌道面に対して直交する方向に貫通する貫通孔113が設けられている。また、横梁110にはスリット115が設けられている。スリット115は横梁側面、即ちレール50表面に対して垂直に交わる面に設けられている。スリット115は、所定の長さに形成されてその両端に穴116が設けられる。つまり、スリット115の両端部分はキーホール形状となっている。
【0020】
スリット115の幅は、
図1又は
図2に示すように横梁中央部112の直線部分に両端に設けられる穴116が配置できる長さとなっている。
図3に、鉄道車両用の台車200の平面図を示す。
図4に、鉄道車両用の台車200の側面図を示す。鉄道車両に用いる台車200は、レール50側から、レール50の上を走る車輪20とそれを支える車軸21、車軸21を受ける軸受22、そして軸受22が支持される軸箱支持装置23に、台車200の重量を受ける鉄道車両用台車枠100、そして軸箱支持装置23と車体との間で荷重を伝達する車体支持装置40が備えられる。側梁120には、軸箱支持装置23が取付けられる。これは、台車200がレール50上に配置された場合に、ちょうどレール50と平行に位置する配置である。車体支持装置40の上には図示しない車体が配置される。
【0021】
第1実施形態の鉄道車両用台車枠100を備えた台車200は上記構成であるので、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0022】
第1実施形態の台車200は、平面性捻れが発生した際にも鉄道車両用台車枠100が追従することで変位を吸収するので、列車の乗り心地の改善や安全性の向上に寄与することができる。これは第1実施形態の鉄道車両用台車枠100が、レール50に沿って前後方向に配置された左側側梁120a及び右側側梁120bと、枕木に沿って左右方向に配置された横梁110を有し、側梁120に横梁110が接合された鉄道車両用の鉄道車両用台車枠100と、鉄道車両用台車枠100に備えられて車体を支持する車体支持装置23と、鉄道車両用台車枠100に取付けられ車軸21を受ける軸受22を備えた軸箱支持装置40と、車輪20及び車軸21を備える台車200において、横梁110に、ねじり剛性低減部(スリット115)が設けられ、左側側梁120aと右側側梁120bとの位置関係がねじれの関係となった際に、左側側梁120aと右側側梁120bとの相対位置の変位をねじり剛性低減部(スリット115)によって吸収し、車輪20の輪重抜けを防ぐ構成となっているためである。
【0023】
軌道の捻れによる車輪20の輪重抜けを小さくするためには、上下の合成バネ係数Kができるだけ小さいことが望ましい。ここで上下の合成バネ係数Kは鉄道車両用台車枠100のねじり剛性K1と軸箱支持装置23のバネ係数K2の直列バネ系である。
【数1】
よって合成バネ係数Kには数式1に示される関係が成り立つ。
【数2】
そして合成バネ係数Kは数式2に示されるように整理され、数式2より輪重抜け防止の観点から合成バネ係数Kをできるだけ小さくするには鉄道車両用台車枠100のねじり剛性K1はできるだけ小さいことが望ましい事が分かる。
【0024】
図5に、横梁110をFEM解析した結果を示す。
図6に、横梁110の変形を強調したFEM解析結果を示す。
図5では、有限要素法による構造解析の結果を示しており、図面左側の左端部111aに捻れの力がかかる想定で解析を行っている。これは、
図2に示したように左側側梁120aと右側側梁120bとに逆向きの力が働いたとの想定である。
図5又は
図6に示される様に、スリット115の両端に設けられた穴116の周囲に応力が集中している様子が分かる。解析の結果、スリット無しの横梁に比べて捻れ易くなっている事が確認できた。
【0025】
このように、鉄道車両用台車枠100に用いる横梁110にスリット115を設けることで横梁110が捻れ易くなり、左右2本のレール50の異なるところに継ぎ目があるなどの事情で、鉄道車両用台車枠100に例えば
図2に示すような捻り荷重が生じた場合にも、鉄道車両用台車枠100がレール50に追従し易くなるので、輪重抜けを防ぐことができる。つまり、鉄道車両用台車枠100の捻れ剛性の最適化を図ることが可能となる。
【0026】
また、
図5に示すようにスリット115の両端に穴116を設けることで、スリット115に応力が集中して横梁110にダメージを生じることを防ぐことが可能となる。なお、スリット115及び穴116にはシール材などを用いて水の侵入を防ぐことが好ましい。
【0027】
なお、
図1、
図2、
図5及び
図6には、横梁110の横梁中央部112の両方にスリット115を設けているが、横梁中央部112の片側だけにスリット115を設けた場合にも、同様の効果が期待出来る。鉄道車両に用いる台車200には牽引装置受けなど取付けるために、横梁110に台座などが設けられる場合がある。このような場合には、スリット115を設けると構造上不都合なこともある。前述したような平面性捻れ対策としては一方の横梁110にスリット115が設けられるだけでも効果が得られるため、2本設けられる横梁中央部112の少なくとも一方にスリット115が設けられていれば、乗り心地の改善や列車の安全性の向上に寄与することができる。
【0028】
また、第1実施形態の横梁110は、プレス成型した2つの部材を合わせて中空状の横梁110が形成される。この為、スリット115はその合わせ面に沿って配置される可能性がある。この為、例えばスリット115の両端部分、即ち穴116が設けられる部分を、横梁110の合わせ面を上下に避けて配置されても良い。すなわち、スリット115の延長線上を避けて穴116を配置する構成であっても良い。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態の構成とほぼ同じであるが、横梁110Bに設けたスリット115の幅が異なる。以下にその点について説明する。
【0030】
図7に、第2実施形態の鉄道車両用台車枠100の斜視図を示す。
図8に、横梁110Bの変形を強調したFEM解析結果を示す。
図7は第1実施形態の
図1に相当し、
図8は第1実施形態の
図6に相当する。第2実施形態の横梁110Bは、第1実施形態の横梁110に比べてスリット115の幅が長く設定されている。第1実施形態では横梁110の横梁中央部112の直線部分に収まるようにスリット115の幅が設定されているのに対して、第2実施形態の横梁110Bは横梁中央部112と横梁端部111との接続部分114の端部までスリット115の幅が広げられている。
【0031】
なお、スリット115の端部には穴116が設けられている点は同様である。そして、横梁110Bに横梁110と同様に荷重をかけた場合に、第1実施形態の横梁110よりも可撓性が高くなっている。具体的には、
図6と
図8を比較した場合、横梁110の変形具合が高くなっているのに加えて、図中に示すハッチングが濃くなっている。これは、第1実施形態に比べて第2実施形態の横梁110に高い応力が発生している事を意味する。また、
図6で応力σ1(N/mm
2)を中心値として応力を示しているが、
図8で示す応力σ2(N/mm
2)はσ1に比べて1.5倍程度の値となっている。この結果、より鉄道車両用台車枠100がレール50に追従し易くなる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3実施形態は第1実施形態の構成とほぼ同じであるが、横梁110Cに設けたスリット115の幅が異なる。以下にその点について説明する。
【0033】
図9に、第3実施形態の鉄道車両用台車枠100の斜視図を示す。
図10に、横梁110Cの変形を強調したFEM解析結果を示す。
図7は第1実施形態の
図1に相当し、
図8は第1実施形態の
図6に相当する。第3実施形態の横梁110Cは、第1実施形態の横梁110や第2実施形態の横梁110Bに比べてスリット115の幅が長く設定されている。第1実施形態では横梁110の横梁中央部112の直線部分に収まるようにスリット115の幅が設定されているのに対して、第3実施形態の横梁110Cは、接続部分114を超えて横梁端部111に達し、側梁120の手前までスリット115の幅が広げられている。
【0034】
なお、スリット115の端部には穴116が設けられている点は同様である。そして、横梁110Cに横梁110と同様に荷重をかけた場合に、第1実施形態の横梁110よりも可撓性が高くなっている。具体的には、第1実施形態の解析結果を示す
図5の応力σ1に比べて、第3実施形態の解析結果を示す
図10では、中心値として示される応力σ3(N/mm
2)は、2.5倍程度の値となっている。この結果、より鉄道車両用台車枠100がレール50に追従し易くなる。
【0035】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4実施形態は第1実施形態の構成とほぼ同じであるが、横梁110Dの構造が異なる。以下にその点について説明する。
【0036】
図11に、第4実施形態の横梁110Dの斜視図を示す。横梁110Dは、第1横梁部材130aと第2横梁部材130bの2つを合わせて形成され、鉄道車両用台車枠100Dに用いられる。第1横梁部材130a及び第2横梁部材130bは、断面が略U字状になるようプレス成形されたもので、その内側には仕切部材135が設けられている。このような第1横梁部材130aと第2横梁部材130bには、それぞれスリット115が設けられている。スリット115の両端には穴116が設けられている。
【0037】
スリット115は、第1実施形態同様に横梁中央部132に形成され、横梁中央部132の左右に形成される接続部分134の手前までの幅に形成されている。つまり、横梁中央部132の側面の平面部分にスリット115が収まるように形成されている。第4実施形態の横梁110Dはこの様な構成であるので、第1実施形態の横梁110と同様の効果が得られる。すなわち、鉄道車両用台車枠100に用いる横梁110Dにスリット115を設けることで横梁110Dが捻れ易くなり、左右2本のレール50の異なるところに継ぎ目があるなどの事情で、鉄道車両用台車枠100Dに例えば
図2に示すような鉄道車両用台車枠100Dを捻る方向に荷重が生じた場合にも、鉄道車両用台車枠100がレール50に追従し易くなるので、台車200の輪重抜けを防ぐことができる。
【0038】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5実施形態は第1実施形態の構成と似ているが、横梁110Eの構造が異なる。以下にその点について説明する。
【0039】
図12に、第5実施形態の鉄道車両用台車枠100Eの斜視図を示す。第5実施形態の鉄道車両用台車枠100に用いる横梁110Eは、第1実施形態の横梁110とは異なり円筒状の鋼材を用いている。横梁110Eは2本1組で側梁120に溶接されており、横梁110Eの中央部辺りにはスリット115が設けられている。スリット115の両端には穴116が設けられている。
【0040】
以上、本発明に係る鉄道車両用台車の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態乃至第3実施形態で説明する横梁110の構成であるが、スリット115を片側だけに設けることを妨げない。上述した様に、本発明は横梁110の捻れ剛性を低下させて平面性捻れに対応させる事を目的としている。よって、横梁110、110B、110Cの横梁中央部112の何れか一方にスリット115を設けた場合でも所定の捻れ剛性低下を実現することが可能である。故に、スリット115を片側だけに設ける、両側に設ける、といった構成を選択することを妨げない。又、第1実施形態乃至第3実施形態の構成を組み合わせることを妨げない。
【0041】
同様に、第4実施形態の横梁110Dや、第5実施形態の横梁110Eに関しても片側だけにスリット115を設けることを妨げない。また、横梁110がこの他の形状をしている場合にも、スリット115を設けて捻れ剛性を低下させるといった本発明の適用を妨げない。また、台車200の形状や構成についても、適宜変更することを妨げない。また、第1実施形態乃至第5実施形態では、
図1、
図7、
図9に示すように、横梁110に設けたスリット115の長さを調整することにより鉄道車両用台車枠100のねじり剛性を変化させることが可能であることを示している。すなわち、軌道のねじれが大きい劣悪な条件では、
図9のような長いスリット115を鉄道車両用台車枠100の横梁110に採用し、逆に軌道のねじれがそれ程大きくない場合は、
図1のような短いスリット115を横梁110に採用することが考えられる。