【解決手段】扁平筒状の平胴部6の各々の端部が内側に折り込まれ、重ねられ、貼り合わされることによって平胴部6の各々の端部に底部10が形成された両底貼りの袋本体2と、扁平管状に形成され、袋本体2の内部から袋本体2の第1の底部10aを貫通して袋本体2の外部に延びる、粉体の充填口となるバルブ体4と、を有する紙製のバルブ袋1である。バルブ体4の内面に、内面を被覆する樹脂層が形成され、樹脂層を形成する樹脂が、エチレン・酢酸ビニル共重合体、及び低密度ポリエチレンからなる群より選択された少なくとも1種の樹脂であり、樹脂層の厚さが40μm以上160μm以下であり、樹脂層の静電電位の絶対値が0.00kV以上0.70kV以下であることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記バルブ袋は上下の端部がともに封着されており、しかもバルブ体を経由させて密閉系で粉体を充填することができるため、粉体の充填時に粉体が舞い難く、粉体を高速で充填することが可能となる点において優れている。しかし、前記バルブ袋に、顔料や染料等の色材を充填する場合には、以下に掲げるような課題があった。
【0006】
顔料や染料等の色材(例えば有機顔料や有機染料等)は、着色力や鮮明性に優れるため、様々な分野において着色材として利用される一方で、乾燥、粉砕、包装等の工程において、製造設備や包装袋等に付着してこれらを汚染してしまう汚染性が問題となっている。特に、ナノ粒子等の微粒子状の色材は静電気を帯びやすく、静電吸着により製造設備や包装袋に付着しやすいため、色材による汚染は極めて深刻な問題となっている。
【0007】
バルブ袋に色材を充填する方法としては、例えばバルブ体にノズル式充填機のノズルを挿入し、ノズルから色材を吐出させることにより、バルブ袋に色材を充填する方法等が採用される。しかし、この方法を採用した場合、バルブ体の内部に付着した色材やノズルに付着した色材が周囲に飛散したり、或いはバルブ体を封止する際に作業者の手に付着した色材が別の場所に再付着したりするために、色材による製造設備や包装袋の汚染が避けられないという問題があった。
【0008】
本発明は、前記した従来技術の課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明は、色材による製造設備や包装袋の汚染を有効に防止することが可能なバルブ袋、およびこれを用いた色材包装体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、バルブ体の内面を樹脂層により被覆し、その樹脂層を、
(1)エチレン・酢酸ビニル重合体か低密度ポリエチレンという極めて限定された2種類の樹脂のいずれかにより形成すること;
(2)単に内容物と紙製のバルブ体との接触を防止する目的で、バルブ体の表面に形成される樹脂製のラミネート層等と比較して厚く構成すること;
(3)絶縁抵抗ではなく、静電電位に着目し、その値を所定の範囲内に精密に制御すること;によって、前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のバルブ袋は、扁平筒状の平胴部の各々の端部が内側に折り込まれ、重ねられ、貼り合わされることによって前記平胴部の各々の端部に底部が形成された両底貼りの袋本体と、扁平管状に形成され、前記袋本体の内部から前記袋本体の第1の底部を貫通して前記袋本体の外部に延びる、粉体の充填口となるバルブ体と、を有する紙製のバルブ袋であって、前記バルブ体の内面に、前記内面を被覆する樹脂層が形成され、前記樹脂層を形成する樹脂が、エチレン・酢酸ビニル共重合体、及び低密度ポリエチレンからなる群より選択された少なくとも1種の樹脂であり、前記樹脂層の厚さが40μm以上160μm以下であり、前記樹脂層の静電電位の絶対値が0.00kV以上0.70kV以下であることを特徴とするバルブ袋;である。
【0011】
また、本発明のバルブ袋は、前記樹脂層の静電電位の絶対値が0.00kV以上0.30kV以下であること;
前記樹脂層を形成する樹脂が、酢酸ビニル単位含有量20質量%以上46質量%以下のエチレン・酢酸ビニル共重合体であること;
前記樹脂層の厚さが40μm以上120μm以下であること;
前記樹脂層の表面がミラー加工されていること;が好ましい。
【0012】
[2]色材包装体の製造方法:
また、本発明の色材包装体の製造方法は、粉状又は粒状の色材を包装袋に充填した後、前記包装袋を封止して色材包装体を得る色材包装体の製造方法であって、前記包装袋として、前記[1]に記載のバルブ袋を用い、前記バルブ袋の前記バルブ体にノズル式充填機のノズルを挿入し、前記ノズルから前記色材を吐出させることにより、前記バルブ袋に前記色材を充填し、前記バルブ体から前記充填ノズルを引き抜いた後、前記バルブ体を封止して色材包装体を得る色材包装体の製造方法;である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバルブ袋、および色材包装体の製造方法は、色材による製造設備や包装袋の汚染を有効に防止することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、同一構造の部材については図面において同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0016】
[1]バルブ袋:
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、バルブ袋1は、両底貼りの袋本体2と、粉体の充填口となるバルブ体4と、を有する紙製の袋である。
【0017】
[1−1]袋本体:
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、袋本体2は、扁平筒状の平胴部6の各々の端部が内側に折り込まれ、重ねられ、貼り合わされることによって平胴部6の各々の端部8a,8bに底部10a,10bが形成された両底貼りの袋状部材である。
【0018】
袋本体の材質は特に限定されない。但し、紙により構成されていることが好ましく、通気性を有する紙を2枚重ねにしたクルパック紙(クラフト伸張紙の一種。特殊なシワ加工により伸張性、特に縦方向の破断伸びを向上させてある)により構成されていることが更に好ましい。破断伸びの程度について特に規定はないが、一般的なクラフト紙(重包装用プレーン)の破断伸びは2.2乃至3%程度であるのに対し、クルパック紙の破断伸びは5乃至10%程度である。
【0019】
[1−2]バルブ体:
図1、
図2Aおよび
図2Bに示すように、バルブ体4は、扁平管状に形成され、袋本体2の内部から袋本体2の第1の底部10aを貫通して袋本体2の外部に延びる、粉体の充填口となる部材である。バルブ体4は、いわゆる外弁式のバルブ体である。本発明に言う「バルブ体」には、外弁式のバルブ体の他、内弁式のバルブ体も含まれる。但し、密封性を向上させ易い外弁式のバルブ体を用いることが好ましい。
【0020】
バルブ体の材質は特に限定されない。但し、紙により構成されていることが好ましく、クラフト紙により構成されていることが更に好ましい。
【0021】
[1−3]樹脂層:
バルブ体の内面には、その内面を被覆する樹脂層が形成されている。本発明のバルブ袋は、この樹脂層を形成する樹脂の種類、樹脂層の厚さ、および静電電位を精密に制御することによって、樹脂層に静電気を帯電させ難くし、樹脂層に対する色材の付着を効果的に防止したものである。
【0022】
[1−3−1]樹脂の種類:
樹脂層を形成する樹脂は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、及び低密度ポリエチレン(LDPE)からなる群より選択された少なくとも1種の樹脂とする。「少なくとも1種」であるから、EVAとLDPEの混合物をバルブ体の内面に塗工して樹脂層を形成してもよいし、EVAのシートと、LDPEのシートとの積層体からなるラミネートシートを圧着させることによって樹脂層を形成してもよい(ラミネート加工)。
【0023】
EVAの種類は特に限定されない。但し、共重合体中の酢酸ビニル単位の含有量(「EVコンテント」と称される場合がある。)が18質量%以上46質量%以下のEVAであることが好ましい。EVAはエチレン単位の含有量が大きい程、純粋なポリエチレンの性質に近づき、高い誘電率、優れた電気絶縁性を示す一方、酢酸ビニル単位の含有量が大きくなると、ポリエチレンに固有の誘電率や電気絶縁性を失う。共重合体中の酢酸ビニル単位の含有量を18質量%以上、好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上とすることにより、誘電率や電気絶縁性が低下し、樹脂層が静電気を帯び難くなるため、バルブ体内面に対する色材の付着をさらに抑制することができる。共重合体中の酢酸ビニル単位の含有量の上限は特に限定されないが、46質量%以下とすることが好ましく、40質量%以下とすることが更に好ましい。
【0024】
LDPEは他のポリエチレン(例えばHDPE、LLDPE等)と比較して柔軟性に優れた樹脂層を形成することができ、また、ラミネート加工による樹脂層の形成に適した素材である点において好ましい。LDPEの種類も特に限定されない。LDPEの密度の下限は特に限定されないが、0.88g/cm
3以上とすることが好ましく、0.90g/cm
3以上とすることが更に好ましい。密度の上限も特に限定されず、0.94g/cm
3以下とすることが好ましく、0.93g/cm
3以下とすることが更に好ましい。
【0025】
[1−3−2]厚さ:
樹脂層の厚さは40μm以上160μm以下とする。樹脂層の厚さを40μm以上、好ましくは60μm以上とすることにより、樹脂層の厚さが大きくなる。このため、クラフト紙等で形成されたバルブ体内面の凹凸を埋め、前記内面の表面粗さを小さくし、前記内面を十分に平滑化することができ、バルブ体内面に対する色材の付着をさらに抑制することができる。樹脂層の厚さの上限は160μm以下であれば特に限定されないが、140μm以下とすることが好ましく、120μm以下とすることが更に好ましい。なお、この樹脂層の厚さは、単に内容物と紙製のバルブ体との接触を防止する目的で、バルブ体の表面に形成される樹脂製のラミネート層が10μm以上30μm以下程度であるのと比較して、かなり厚い。本発明のバルブ袋は、前記ヒートシール用の樹脂層よりも、樹脂層を顕著に厚く形成することにより、バルブ体への色材の付着を効果的に防止した点に特徴がある。
【0026】
[1−3−3]静電電位の絶対値:
樹脂層の静電電位の絶対値は0.00kV以上0.70kV以下とする。ここで、「絶対値」とは、静電電位が正(+)の値であっても、負(−)の値であってもよいことを意味する。前記樹脂層の静電電位の絶対値を0.00kV以上、好ましくは0.01kV以上とすることにより、また、前記樹脂層の静電電位の絶対値を0.70kV以下、好ましくは0.65kV以下とすることにより、バルブ体内面に対する色材の付着をさらに抑制することができる。
【0027】
塗工により樹脂層を形成する場合には樹脂層の表面が粗面となりやすく、樹脂層の表面に顔料が付着しやすい傾向にある。従って、塗工により樹脂層を形成する場合には、静電電位の絶対値を前記範囲の中でも低めの値とすることが好ましい。具体的には、静電電位の絶対値を0.5kV以下とすることが好ましく、0.3kV以下とすることが更に好ましく、0.1kV以下とすることが特に好ましい。
【0028】
一方、樹脂層をラミネート加工により形成し、かつ、ミラー加工を施すような場合には、樹脂層の表面を比較的平滑な状態とすることができるため、樹脂層の表面に顔料が付着し難い。従って、樹脂層をラミネート加工により形成する場合には、静電電位の絶対値を前記範囲の中で比較的高めの値としても許容される。具体的には、静電電位の絶対値を静電電位の絶対値を0.1kV以上とすることが好ましく、0.2kV以上とすることが更に好ましい。
【0029】
なお、「静電電位」とは、摩擦等の外的要因で物質に発生する静電気の電圧を意味し、電流の流れにくさの指標である「絶縁抵抗」とは、概念が全く異なる。本発明は、帯電防止用途で汎用されるパラメータである絶縁抵抗ではなく、静電電位をパラメータとして採用し、その値を精密に制御することにより、バルブ体への色材の付着を効果的に防止した点に特徴がある。静電電位は、市販の静電電位測定計(例えば、商品名「KSD−1000」、春日電機製)等により測定することができる。
【0030】
静電電位の値は、樹脂層を構成する樹脂がEVAである場合には、例えば酢酸ビニル単位含有量(VAコンテント)によって制御することができる。一般に、EVAの酢酸ビニル単位含有量は10乃至46質量%程度であるが、EVAの酢酸ビニル単位含有量を18質量%以上とすることが好ましい。また、樹脂層を構成する樹脂として、各種ポリエチレンの中からLDPEを選択することで、静電電位を本発明で規定する範囲に制御することができる。
【0031】
[1−3−4]表面:
樹脂層の表面には、表面の平滑性を調整するための加工が施されていてもよい。表面の平滑性を調整するための加工としては、例えばミラー加工、マット加工、セミマット加工等が挙げられる。ミラー加工とは表面を鏡面のように仕上げる加工であり、マット加工とは表面を梨地に仕上げる加工であり、セミマット加工は表面を梨地ではあるが若干、光沢(平滑性)を付与するように仕上げる加工である。平滑性は、マット加工、セミマット加工、ミラー加工の順に向上する。本発明においては、樹脂層の表面がミラー加工されていることが好ましい。樹脂層表面の平滑性を向上させることにより、色材を充填する際に樹脂層の表面に色材が付着し難くなるという効果がある。
【0032】
[1−3−5]形成方法:
樹脂層の形成方法は特に限定されない。例えば、バルブ体の構成材料(紙製シート等)のバルブ体の内面に相当する部分に、樹脂層を形成する樹脂(EVAまたはLDPE)を塗工する方法;バルブ体の内面に相当する部分に、樹脂層を形成する樹脂(EVA又はLDPE)からなるラミネートシートを圧着させる方法(ラミネート加工);等を挙げることができる。EVAについては、例えば糊状のEVAを加熱し、溶融させ、その溶融させた状態のEVAをバルブ体の構成材料(紙等)に塗工する方法で樹脂層を形成することができる。一方、LDPEについては、例えばLDPEからなるラミネートシートをバルブ体の構成材料(紙等)に圧着させる方法で樹脂層を形成することができる。
【0033】
[1−4]その他の部材:
本発明のバルブ袋は、
図1に示すバルブ袋1のように、底部10a,10bを覆うように化粧紙14a,14bを貼り合わせてもよい。
【0034】
また、本発明のバルブ袋は、
図1に示すバルブ袋1のように、バルブ体4が配置される底部10aと反対側の底部10bに、バルブ袋1を開封するための開封テープ12を有していてもよい。開封テープ12を引っ張ることにより、底部10bが破断され、底部10bを容易に開封することができる。
【0035】
[1−5]製造方法:
本発明のバルブ袋を製造する方法は特に限定されない。但し、本発明のバルブ袋は、例えば
図3A乃至
図3Eに示すような方法で製造することができる。
【0036】
(1)第1工程:
図3Aに示すように、紙製の筒状体50を扁平に折り潰し、三角形状の折込部54が形成されるように、筒状体50の端部52a,52bを折り開く。
(2)第2工程:
図3Bに示すように、折り開いた筒状体50の端部52a,52bにバルブ体56を固定する。バルブ体56の内面には、EVAやLDPE等の溶融樹脂を塗工し、或いはEVAやLDPEのラミネートシートを圧着させる(ラミネート加工)等の方法により、予め樹脂層を形成しておく。
(3)第3工程:
図3Cに示すように、バルブ体56を覆うように、筒状体50の一方の端部52a(図面上側)を折り重ねる。
(4)第4工程:
図3Dに示すように、筒状体50の他方の端部52b(図面下側)も、同様に折り重ねて、底部58を形成する。
(5)第5工程:
図3Eに示すように、形成された底部58を覆うように化粧紙60を貼り合わせる。
【0037】
なお、
図3A乃至
図3Eにおいては、バルブ袋の一方の底部を形成する工程のみを図示しているが、他方の底部も同様に形成することができる。但し、他方の底部にはバルブ体を配置しないため、第2工程(バルブ体の固定)を実施する必要はない。
【0038】
[2]色材包装体の製造方法:
本発明の色材包装体の製造方法は、粉状又は粒状の色材を包装袋に充填した後、前記包装袋を封止して色材包装体を得るものである。
【0039】
そして、本発明の色材包装体の製造方法は、包装袋として、本発明のバルブ袋を用いる点に特徴がある。本発明のバルブ袋を用いることにより、色材による製造設備や包装袋の汚染を有効に防止することができる。
【0040】
本発明の色材包装体の製造方法によれば、前記バルブ袋の前記バルブ体にノズル式充填機のノズルを挿入し、前記ノズルから前記色材を吐出させることにより、前記バルブ袋に前記色材を充填し、前記バルブ体から前記充填ノズルを引き抜いた後、前記バルブ体を封止することにより色材包装体を得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例および比較例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
紙片の表面に、樹脂層を形成することにより、バルブ体を模したサンプルを作製した。紙片としては、坪量78g/mのクラフト紙1種(商品名「MS−75」、王子製紙製)を幅92mmにカットしたものを用いた。樹脂層を形成する樹脂としては、酢酸ビニル単位含有量が46質量%のEVA(商品名「エバフレックスEV45X」、三井・デュポンポリケミカル製)を用いた。前記紙片の表面に加熱溶融したEVAを塗工し、厚さ60μmの樹脂層を形成することにより、実施例1のサンプルを得た。
【0043】
(実施例2)
紙片としては、坪量78g/mのクラフト紙1種(商品名「MS−75」、王子製紙製)を幅92mmにカットしたものを用いた。樹脂層を形成する樹脂として、密度0.923g/cm
3のLDPE(商品名「ノバテックLD LC520」、日本ポリエチレン製)を用いた。前記樹脂からなるラミネートシートを前記紙片に圧着させ(ラミネート加工)、厚さ40μmの樹脂層を形成することにより、実施例2のサンプルを得た。前記ラミネート加工は、前記樹脂を温度360℃で加熱溶融させ、Tダイ押出し機から押し出して押出しフィルムとし、その直後に、前記押出しフィルムをガイドロールで冷却しながらクラフト紙の表面に展開して圧着させ、その圧着物を巻き取ることにより行った(冷却巻き取り加工)。この際、ガイドロールとしては鏡面ロールを用いた。前記鏡面ロールで樹脂シートを圧着させることにより、樹脂層の表面がミラー加工された。
【0044】
(実施例3)
樹脂層を形成する樹脂として、酢酸ビニル単位含有量が25質量%のEVA(商品名「エバフレックスEV310」、三井・デュポンポリケミカル製)を用いたこと、樹脂層の厚さを50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のサンプルを得た。
【0045】
(実施例4)
樹脂層を形成する樹脂として、酢酸ビニル単位含有量が33質量%のEVA(商品名「エバフレックスV5772ETR」、三井・デュポンポリケミカル製)を用いたこと、樹脂層の厚さを100μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のサンプルを得た。
【0046】
(実施例5)
樹脂層を形成する樹脂として、酢酸ビニル単位含有量が19質量%のEVA(商品名「エバフレックスEV410」、三井・デュポンポリケミカル製)を用いたこと、樹脂層の厚さを120μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のサンプルを得た。
【0047】
(比較例1)
塗工層の表面にセミマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを20μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例1のサンプルを得た。
【0048】
(比較例2)
樹脂層を形成する樹脂として、密度0.91g/cm
3のLDPE(商品名「ノバテックLD LC600A」、日本ポリエチレン社製)を用いたこと、塗工層の表面にセミマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを15μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例2のサンプルを得た。
【0049】
(比較例3)
塗工層の表面にマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを17μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例3のサンプルを得た。
【0050】
(比較例4)
塗工層の表面にセミマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを10μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例4のサンプルを得た。
【0051】
(比較例5)
樹脂層の厚さを30μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5のサンプルを得た。
【0052】
(比較例6)
樹脂層を形成する樹脂として、酢酸ビニル単位含有量が14質量%のEVA(商品名「エバフレックスEV550」、三井・デュポンポリケミカル製)を用いたこと、樹脂層の厚さを80μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例6のサンプルを得た。
【0053】
(比較例7)
樹脂層を形成する樹脂として、酢酸ビニル単位含有量が12質量%のEVA(商品名「エバフレックスP1207」、三井・デュポンポリケミカル製)を用いたこと、樹脂層の厚さを70μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例7のサンプルを得た。
【0054】
(比較例8)
塗工層の表面にマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを30μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例8のサンプルを得た。
【0055】
(比較例9)
樹脂層を形成する樹脂として、密度0.918g/cm
3のLDPE(商品名「ノバテックLD LC800A」、日本ポリエチレン製)を用いたこと、塗工層の表面にマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを15μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例9のサンプルを得た。
【0056】
(比較例10)
塗工層の表面にセミマット加工を施したこと、樹脂層の厚さを15μmとしたこと以外は実施例2と同様にして、比較例10のサンプルを得た。
【0057】
(標準サンプル)
坪量78g/mのクラフト紙1種(商品名「MS−75」、王子製紙製)を幅92mmにカットしたもの(樹脂層を全く形成していないもの)を標準サンプルとした。
【0058】
[測定方法、評価方法]
実施例1乃至5、比較例1乃至10のサンプルについては、以下の方法により静電電位を測定し、また、顔料による汚染性(非汚染度)を評価した。その結果を表1乃至表3に示す。
【0059】
<静電電位>
(1)ポリプロピレン(PP)製の不織布で、サンプルの樹脂層の表面を20秒間、激しく擦り、静電気を発生させた。PP製不織布としては、防寒マスクの素材として用いられるPP製不織布を用いた。
(2)静電気を発生させたサンプルを静電電位測定器に近づけ、感知した静電電位のうち、絶対値が最大の電位を静電電位の値とした。静電電位測定器としては、商品名「KSD−1000」(春日電機製)を用いた。
【0060】
なお、サンプルの静電電位の測定に先立って標準サンプルの静電電位も測定した。標準サンプルとしては、PP製のクリアホルダーと、標準サンプルのクラフト紙を幅92mmにカットしたもの(樹脂層を形成していないもの)を用いた。前記クリアホルダーの静電電位が37乃至40kvであること、前記クラフト紙の静電電位が0乃至0.02kvであることを確認した後、サンプルの静電電位を測定した。
【0061】
<顔料による汚染度(非汚染性)>
(1)2Lのポリ袋中に、銅フタロシアニンブルー(PB15:3、青色顔料)300gを投入し、さらに空気を充満させ、激しく振ることにより、顔料粒子に静電気を帯電させた。
(2)静電気を帯電させた顔料粒子中に実施例、比較例のサンプルおよび標準サンプルを突き刺し、引き抜いた後、サンプルを軽く振って、余分に付着した顔料を払い落とし、顔料による汚染度を評価するためのサンプルを作製した。
(3)顔料を付着させた実施例、比較例のサンプルおよび標準サンプル、並びに顔料を全く付着させていない標準サンプルをデジタルカメラで撮影し、その写真データを画像解析に掛け、可視光領域(400乃至700nm)での反射強度を最高と最低の位置付けを明確にして、各試料の当該可視光領域の反射強度を解析することにより反射率のランク付けを10段階に分けた。反射率の最高ランクは顔料を全く付着させていない標準サンプル、最低ランクは顔料を付着させた標準サンプルであった。
(4)顔料を付着させた標準サンプル表面の光の反射強度の値を「非汚染度0」、顔料を全く付着させていないクラフト紙表面の光の反射強度の値を「非汚染度10」とし、個々のサンプル表面の光の反射強度の値を「非汚染度0〜10」の間に割り付け、段階的にランク付けをして、顔料による汚染度(「非汚染度」と記すことにする)を評価した。このランク付けにおいて、非汚染度の評価が6.5以上を良好、6.5未満を不良とした。
【0062】
なお、静電気を帯電させた際の銅フタロシアニンブルーの静電電位を測定したところ、−11kvであった。この測定においては、静電気を帯電させた銅フタロシアニンブルーを静電電位測定器に近づけ、感知した静電電位のうち、絶対値が最大の電位を静電電位とした。静電電位測定器としては、商品名「KSD−1000」(春日電機製)を用いた。
【0063】
【0064】
【0065】