【課題】プラグを用いて包装用フィルムに対しポケット部を成形するに際して、ポケット部に異物が混入することを抑制することのできるポケット成形装置及びブリスター包装機を提供する。
【解決手段】ポケット成形装置6は、高圧エアが導入される内部空間を有するチャンバ50と、チャンバ50に固定された筒状の固定軸部53aと、固定軸部53aの内周側に挿通されると共に、チャンバ50内においてプラグ63を変位させるための可動軸部60と、固定軸部53aの外周側にて相対変位可能に設けられると共に、可動軸部60に固定された筒状の外筒55と、外筒55及び可動軸部60を固定軸部53aに対し相対変位させるためのエアシリンダ72と備えると共に、固定軸部53aの外周部と外筒55の内周部との間にスライド軸受け56を備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来では、一般にチャンバに対し固定され該チャンバ内に貫通した筒状の固定軸部と、該固定軸部に対し相対変位可能に挿通された可動軸部と、チャンバ内に突出した可動軸部の一端部に設けられたプラグと、可動軸部の他端側に連接され該可動軸部を駆動する流体圧シリンダとを備え、固定軸部の内周部と可動軸部の外周部との間に軸受け(ベアリング)が配設された構成となっている。
【0008】
このため、チャンバ内に通じる固定軸部と可動軸部の隙間を介して、軸受けより発生する異物(粉塵や油分等)がチャンバ内、ひいては成形後のポケット部内に入り込むおそれがある。
【0009】
尚、かかる不具合は、チャンバを備える成形装置に限らず、プラグ成形を行うすべての成形装置において発生し得るものである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プラグを用いて包装用フィルムに対しポケット部を成形するに際して、ポケット部に異物が混入することを抑制することのできるポケット成形装置及びブリスター包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.ブリスター包装体の製造過程において、所定の内容物を収容するためのポケット部を、少なくともプラグを用いて(プラグで押圧することによって)包装用フィルムに成形するポケット成形装置であって、
前記包装用フィルム面に対し略直交する所定の軸線方向に沿って所定部位に固定された筒状の固定軸部と、
前記固定軸部の内周側に挿通されると共に、前記軸線方向に沿って前記プラグを変位させるための可動軸部と、
前記固定軸部の外周側にて前記軸線方向に沿って前記固定軸部に対し相対変位可能に設けられると共に、前記可動軸部に固定された筒状の外筒と、
前記外筒及び前記可動軸部を前記軸線方向に沿って前記固定軸部に対し相対変位させるための駆動手段と備えると共に、
前記固定軸部の外周部と前記外筒の内周部との間に軸受けを備えたことを特徴とするポケット成形装置。
【0013】
上記手段1によれば、固定軸部に対し軸受けにより支持された外筒が軸線方向に沿って動作することにより、これに固定された可動軸部に関しても直接、軸受けに支持されることなく、軸線方向に沿って安定して動作することができる。
【0014】
結果として、プラグを変位させるための可動軸部と、これが挿通される固定軸部との間に軸受けを設ける必要がないため、軸受けより発生する異物(粉塵や油分等)が、可動軸部と固定軸部の隙間を介してプラグ側に漏れてくる等の不具合の発生を抑制することができる。ひいては、成形後のポケット部内に異物が混入することを抑制することができる。
【0015】
加えて、特殊な表面処理を施した無給油軸受け等を使用する必要もなく、装置の製造コストの増加抑制を図ることができる。換言すれば、軸受けに油分を加えることができるため、軸受けの摩耗等を抑制し、装置の長寿命化を図ることができる。
【0016】
手段2.ブリスター包装体の製造過程において、所定の内容物を収容するためのポケット部を、少なくともプラグを用いて(プラグで押圧することによって)包装用フィルムに成形するポケット成形装置であって、
前記包装用フィルムに対し吹き付けられる高圧気体が導入される内部空間を有するチャンバと、
前記包装用フィルム面に対し略直交する所定の軸線方向に沿って前記チャンバに固定されると共に、前記チャンバ内に連通した筒状の固定軸部と、
前記固定軸部の内周側に挿通されると共に、前記チャンバ内において前記プラグを前記軸線方向に沿って変位させるための可動軸部と、
前記固定軸部の外周側にて前記軸線方向に沿って前記固定軸部に対し相対変位可能に設けられると共に、前記可動軸部に固定された筒状の外筒と、
前記外筒及び前記可動軸部を前記軸線方向に沿って前記固定軸部に対し相対変位させるための駆動手段と備えると共に、
前記固定軸部の外周部と前記外筒の内周部との間に軸受けを備えたことを特徴とするポケット成形装置。
【0017】
上記手段2によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。特に本手段2においては、軸受けが固定軸部の外周側、すなわちチャンバの外側(チャンバの内部空間に連通しない部位)に設けられることとなるため、軸受けより発生する異物(粉塵や油分等)がチャンバ内に流入する等の不具合の発生をより確実に防止することができる。
【0018】
手段3.前記固定軸部の外周部と前記外筒の内周部との間にシール手段(例えばチャンバ内の気密性を保持するためのシール手段や、チャンバ内への外部からの異物の流入を防ぐためのシール手段)を備えたことを特徴とする手段2に記載のポケット成形装置。
【0019】
仮に可動軸部と固定軸部の間にパッキン等のシール手段を設けた場合には、上記軸受けの場合と同様、シール手段より発生する異物(粉塵等)がチャンバ内、ひいては成形後のポケット部内に入り込むおそれがある。
【0020】
これに対し、本手段3によれば、このような不具合の発生を抑制することができる。さらに、シール手段の摺動面に油分を加えることも可能となるため、シール手段の摩耗等を抑制し、装置の長寿命化を図ることができる。
【0021】
手段4.前記プラグを加熱するためのプラグ加熱手段を前記可動軸部に備えると共に、
前記可動軸部を中空の筒状に構成し、当該可動軸部内に、前記プラグ加熱手段に給電するための配線が配設されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のポケット成形装置。
【0022】
上記手段4によれば、プラグ加熱手段を備えることにより、ポケット部の成形性を向上することができる。
【0023】
尚、例えば上記手段2の構成の下、プラグ加熱手段を備える場合には、当該プラグ加熱手段に給電するための配線を外部よりチャンバ内に引き込むための経路が必要となる。
【0024】
これに対し、プラグ駆動用の可動軸部とは別に、配線用の可動軸部を設けることも考えられる。しかしながら、かかる構成においては、複数の可動軸部、及び、これに対応する複数の軸受けが必要となる。
【0025】
複数の可動軸部が設けられた場合には、プラグ加熱手段の発熱に起因した各種部材の熱膨張等により、複数の可動軸部の軸間距離が変化し歪みが生じる。このため、各可動軸部を支持する軸受け等に大きな負荷がかかり、摩耗等が発生しやすくなる。結果として、異物が発生しやすくなると共に、装置の寿命が短くなりやすい。
【0026】
これに対し、本手段4によれば、プラグ駆動用の可動軸部と、配線用の可動軸部とを1つにまとめているため、上記不具合の発生を抑制することができる。
【0027】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載のポケット成形装置を備えたブリスター包装機。
【0028】
上記手段5のように、上記ポケット成形装置をブリスター包装機に備えることで、ブリスター包装体の製造過程において不良品の発生を低減することができる。
【0029】
一般に、ブリスター包装機は、帯状に搬送される包装用フィルムに対しポケット部を成形するポケット部成形装置と、前記ポケット部に対し内容物を充填する充填手段と、前記ポケット部を塞ぐようにして前記包装用フィルムに対し帯状のカバーフィルムを取着する取着手段と、前記包装用フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状のブリスターフィルムをブリスター包装体単位に打ち抜くシート打抜手段とを備える。また、ブリスター包装機は、所定の検査装置によって不良と判定されたブリスター包装体を排出する排出手段を備える。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず製造対象となるブリスター包装体(ブリスターパック)としてのPTPシートの構成について詳しく説明する。
【0032】
図1,2に示すように、PTPシート28は、例えばPP(ポリプロピレン)よりなり複数のポケット部7を備えた包装用フィルム2と、ポケット部7を塞ぐようにして包装用フィルム2に取着されたアルミニウム製のフィルムよりなるカバーフィルム13とを有している。また、各ポケット部7には内容物としての錠剤Bが1つずつ収容されている。
【0033】
本実施形態におけるPTPシート28は、帯状の包装用フィルム2及び帯状のカバーフィルム13から形成された帯状のPTPフィルム16(
図3参照)が打抜かれることで、シート状に製造されている。
【0034】
PTPシート28の包装用フィルム2には、2つのポケット部7が含まれるペア小片34に切り離すことができるように複数の切離用スリット35が形成されている。なお、PTPシート28の端部にはロットナンバー等の識別情報が刻印されたタグ部38が付設されている。
【0035】
次に、上記PTPシート28を製造するためのブリスター包装機としてのPTPシート製造装置1の概略について
図3を参照しつつ説明する。
【0036】
帯状の包装用フィルム2は、最上流側においてロール状に巻回されている。該包装用フィルム2は、上述したようにPP等の比較的硬質で所定の剛性を有する合成樹脂によって構成され、透明又は半透明を呈している。
【0037】
ロール状に巻回された包装用フィルム2の引出し端は、ガイドロール3に案内されている。包装用フィルム2は、ガイドロール3の下流側において間欠送りロール4に掛装されている。間欠送りロール4は、間欠的に回転するモータM1に連結されており、包装用フィルム2を間欠的に搬送する。
【0038】
ガイドロール3と間欠送りロール4との間には、包装用フィルム2の搬送経路に沿って、加熱手段としての加熱装置5と、ポケット成形装置6とが順に並設されている。そして、加熱装置5によって包装用フィルム2が部分的に加熱されて、該包装用フィルム2が比較的柔軟になった状態において、ポケット成形装置6によって包装用フィルム2にポケット部7が成形される。このポケット部7の成形は、間欠送りロール4による包装用フィルム2の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0039】
間欠送りロール4から送り出された包装用フィルム2は、テンションロール8、ガイドロール9及び連続送りロール10の順に掛装されている。
【0040】
連続送りロール10は、一定回転するモータM2に連結されており、包装用フィルム2を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール8は、包装用フィルム2を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール4と連続送りロール10との搬送動作の相違による包装用フィルム2の撓みを防止して包装用フィルム2を常時緊張状態に保持する。
【0041】
ガイドロール9と連続送りロール10との間には、包装用フィルム2の搬送経路に沿って、ポケット部7に錠剤Bを自動的に充填する充填手段としての錠剤投入装置11が配設されている。錠剤投入装置11から自然落下により供給される錠剤Bは、ポケット部7の深さが錠剤Bの厚みと略等しくなっていることから、一錠毎各ポケット部7に投入される。
【0042】
錠剤投入装置11と連続送りロール10との間には、包装用フィルム2に搬送経路に沿って、錠剤Bが各ポケット部7に確実に充填されているか否か、また錠剤Bの異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うための検査装置12が配設されている。この検査装置12はポケット部7の開口側からの検査を行うものである。
【0043】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム13は、最上流側においてロール状に巻回されている。
【0044】
ロール状に巻回されたカバーフィルム13の引出し端は、ガイドロール14を介して、前記連続送りロール10に案内されている。連続送りロール10には、ヒータを有するシールロール15が圧接されており、両ロール10,15間に包装用フィルム2及びカバーフィルム13が送り込まれている。そして、包装用フィルム2及びカバーフィルム13が、両ロール10,15間を加熱圧接状態で通過することで、包装用フィルム2にカバーフィルム13が貼着され、錠剤Bが各ポケット部7に充填されたPTPフィルム16が製造される。本実施形態では、これら両ロール10,15によって取着手段が構成されている。
【0045】
連続送りロール10から送り出されたPTPフィルム16は、テンションロール17及び間欠送りロール18の順に掛装されている。
【0046】
間欠送りロール18は、間欠的に回転するモータM3に連結されており、PTPフィルム16を間欠的に搬送する。テンションロール17は、PTPフィルム16を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記連続送りロール10と間欠送りロール18との搬送動作の相違によるPTPフィルム16の撓みを防止してPTPフィルム16を常時緊張状態に保持する。
【0047】
連続送りロール10とテンションロール17との間には、PTPフィルム16の搬送経路に沿って、錠剤Bの異常の有無、異物混入の有無等の検査を行うための検査装置19が配設されている。この検査装置19はポケット部7の突出面側からの検査を行うものである。従って、前記検査装置12による検査と相俟って、PTPフィルム16の表裏両面側からの検査を実行することができるようになっている。なお、各検査装置12,19によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0048】
間欠送りロール18から送り出されたPTPフィルム16は、テンションロール21及び間欠送りロール22の順に掛装されている。
【0049】
間欠送りロール22は、間欠的に回転するモータM4に連結されており、PTPフィルム16を間欠的に搬送する。テンションロール21は、PTPフィルム16を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール18,22間でのPTPフィルム16の撓みを防止する。
【0050】
間欠送りロール18とテンションロール21との間には、PTPフィルム16の搬送経路に沿って、スリット成形装置23と、刻印装置24とが順に配設されている。スリット成形装置23は、PTPフィルム16の所定位置に前記切離用スリット35を形成する機能を有する。また、刻印装置24はPTPフィルム16の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0051】
間欠送りロール22から送り出されたPTPフィルム16は、その下流側においてテンションロール25及び連続送りロール26の順に掛装されている。間欠送りロール22とテンションロール25との間には、PTPフィルム16の搬送経路に沿って、シート打抜手段としてのシート打抜装置27が配設されている。シート打抜装置27は、PTPフィルム16をPTPシート単位に打抜く機能を有する。
【0052】
シート打抜装置27によって打抜かれたPTPシート28は、取出しコンベア29によって搬送され、完成品用ホッパ30に一旦貯留される。
【0053】
一方、シート打抜装置27による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部32は、連続送りロール26に挟持されつつ搬送され、裁断装置31へ案内される。
【0054】
裁断装置31は、不要フィルム部32を所定寸法に裁断しスクラップ処理する機能を有する。このスクラップはスクラップ用ホッパ33に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0055】
尚、前記各送りロール4,10,18,22等は、そのロール表面とポケット部7とが対向する位置関係となっているが、各送りロール4,10,18,22等の表面には、ポケット部7が収容される凹部が形成されているため、ポケット部7が潰れてしまうことがない。また、ポケット部7が各送りロール4,10,18,22等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0056】
PTPシート製造装置1の概略は以上のとおりであるが、以下において、ポケット成形装置6の構成について、より具体的に説明する。本実施形態におけるポケット成形装置6は、プラグアシスト圧空成形方式により包装用フィルム2にポケット部7を成形するものである。
【0057】
図4に示すように、ポケット成形装置6は、包装用フィルム2の搬送経路の下方位置において下型45を備えている。下型45は、駆動伝達機構46を介して駆動手段(図示略)に連結されている。これにより、下型45は、包装用フィルム2面と略直交する軸線Z方向(上下方向)に沿って、包装用フィルム2に当接可能な作業位置(上方位置)と、包装用フィルム2から離間した待機位置(下方位置)とに移動可能に構成されている。尚、上記駆動手段としては、流体圧シリンダやカム伝達機構など任意の構成を採用することができる。
【0058】
下型45の上面には、成形するポケット部7の形状に対応した成形凹部45aが複数形成されている。
【0059】
一方、包装用フィルム2の搬送経路の上方位置にはチャンバ50が配設されている。チャンバ50は、駆動伝達機構51を介して駆動手段(図示略)に連結されている。これにより、チャンバ50は、軸線Z方向に沿って、包装用フィルム2に当接可能な作業位置(下方位置)と、包装用フィルム2から離間した待機位置(上方位置)とに移動可能に構成されている。尚、上記駆動手段としては、流体圧シリンダやカム伝達機構など任意の構成を採用することができる。
【0060】
そして、下型45及びチャンバ50がそれぞれ自身の作業位置に移動することで、包装用フィルム2を挟持することができる。
【0061】
チャンバ50は、下側が開口した箱状をなし、前記作業位置にて側壁枠部50aの下縁部が包装用フィルム2に接触した際には、その内部に密閉空間(内部空間)が形成されるように構成されている。
【0062】
チャンバ50の上壁部50bは、平板状に形成されており、その略中央部には軸線Z方向に沿って貫通した貫通孔50cが形成されている。
【0063】
チャンバ50の上壁部50bの上面には、前記貫通孔50cに対応してスタンド軸53が取付固定されている。
【0064】
スタンド軸53は、軸線Z方向に沿って貫通した円筒状の固定軸部53aと、該固定軸部53aの下端部から外周側へ延出形成されたフランジ部53bとを備えている。スタンド軸53は、フランジ部53bがボルト等の締結部材54によりチャンバ50の上壁部50bに固定されている。
【0065】
固定軸部53aの外周側には、該固定軸部53aよりも大径で円筒状の外筒55が組み付けられている。より詳しくは、外筒55は、下側が開口した有天筒状をなし、その下側からその内部に固定軸部53aの上端側が挿し込まれるようにして組み付けられている。
【0066】
外筒55の内周面には、取付溝部55aが形成されており、当該取付溝部55aにスライド軸受け56が取付けられている。本実施形態では、スライド軸受け56としてリニアブッシュベアリングを採用している。勿論、これに限らず、スライド軸受け56として、他の任意の構成を採用してもよい。
【0067】
スライド軸受け56を備えることにより、外筒55は固定軸部53aに対し軸線Z方向に沿って相対変位可能(摺動可能)に支持された状態となる。
【0068】
外筒55の内周面には、上記取付溝部55aよりも上方位置にて取付溝部55bが形成されており、当該取付溝部55bにシール手段としてのパッキン57が取付けられている。パッキン57を備えることにより、チャンバ50内(これに連通する固定軸部53a内などの部位を含む)の気密性を確保することができる。
【0069】
一方、固定軸部53aの内周側には、該固定軸部53aよりも小径で円筒状の可動軸部60が軸線Z方向に沿って非接触状態で挿通されている。
【0070】
可動軸部60の上端部は、外筒55の天壁部55cに固定されている。これにより、可動軸部60は、外筒55の上下動に伴い、上下動可能となる。つまり、可動軸部60も固定軸部53aに対し軸線Z方向に沿って相対変位可能となっている。
【0071】
可動軸部60の下端部は、チャンバ50内に突出している。可動軸部60の下端部には、外周側へ延出形成されたフランジ部60aが形成されている。そして、該フランジ部60aの下側には、プラグ加熱手段として平板状の加熱板61が固定されている。加熱板61の下面には、上記下型45の成形凹部45aに対応して、ポケット部7を成形するための複数のプラグ63が突出形成されている。
【0072】
外筒55の天壁部55cには、可動軸部60の内部に連通するように、軸線Z方向に沿って貫通した貫通孔55dが形成されている。さらに、外筒55の天壁部55cの上面側には、前記貫通孔55dを塞ぐように蓋部65が取付固定されている。
【0073】
また、蓋部65に覆われた外筒55の天壁部55cの上面には、貫通孔55dを囲むように円環状の取付溝部55eが形成され、該取付溝部55eにOリング66が取付けられている。Oリング66を備えることにより、チャンバ50内(これに連通する部位を含む)の気密性を確保することができる。
【0074】
蓋部65には、一対の端子部67が取付けられている。各端子部67は、それぞれ上端部が蓋部65から外部に突出し、下端部が可動軸部60の内部に突出している。端子部67の上端部は、図示しない外部電源に接続されている。
【0075】
各端子部67の下端部には、それぞれ配線68の一端が接続されている。該配線68は、可動軸部60の内部を通り、その他端が前記加熱板61に接続されている。そして、加熱板61は、配線68を介して通電されることにより発熱する。これにより、プラグ63が温められ、ポケット部7の成形性が高められる。
【0076】
外筒55の天壁部55cの上面側には、一対の端子部67を覆うように端子カバー69が取付固定されている。
【0077】
チャンバ50の上壁部50bには、スタンド軸53を囲むように複数の支柱70が立設されている。支柱70の上部には、平板状の支持台71が固定されている。
【0078】
支持台71には、駆動手段としてのエアシリンダ72が取付固定されている。エアシリンダ72は、軸線Z方向に沿って上下動可能なロッド72aを備えている。ロッド72aは、支持台71に形成された貫通孔71aを介して、支持台71の下方へ突出している。
【0079】
ロッド72aの下端部は、上記端子カバー69に接続されている。これにより、エアシリンダ72の駆動(ロッド72aの上下動)に伴い、端子カバー69、外筒55及び可動軸部60が軸線Z方向に沿って上下動可能となる。尚、可動軸部60等を上下動させる駆動手段は、エアシリンダ72に限定されるものではなく、カム機構等、他のアクチュエータを採用してもよい。
【0080】
チャンバ50の上壁部50bには、チャンバ50内へ高圧エアを導入するためのエア導入口75が設けられている。エア導入口75は、図示しないエア供給装置に接続されている。そして、ポケット部7の成形時には、エア供給装置から供給される高圧エアがエア導入口75を通してチャンバ50内へ導入される。
【0081】
さて、上記のように構成されたPTPシート製造装置1により、PTPシート28を製造する手順について、主要な工程を中心として説明する。
【0082】
包装用フィルム2は、まずポケット成形工程を経る。かかるポケット成形工程では、上述した加熱装置5及びポケット成形装置6が使用される。
【0083】
より詳しくは、まず包装用フィルム2は、加熱装置5にて、ポケット部7に対応する部位が部分的に加熱され、非常に伸びやすい軟化状態となる。
【0084】
次に、部分的に軟化された包装用フィルム2は、ポケット成形装置6に搬送され、所定位置で停止する。続いて、ポケット成形装置6において、下型45及びチャンバ50がそれぞれ自身の待機位置(
図4参照)から作業位置に移動し、包装用フィルム2を挟持する。
【0085】
かかる状態で、エアシリンダ72が駆動し、プラグ63が下降する。これにより、プラグ63が包装用フィルム2の軟化部分に押し付けられ、該軟化部分が伸張される。続いて、前記エア供給装置が作動し、エア導入口75を通してチャンバ50内へ高圧エアが吹き込まれる。これにより、包装用フィルム2の軟化部分がさらに伸張され、下型45の成形凹部45aに沿って圧接し、ポケット部7が成形される。
【0086】
その後、プラグ63が上昇し包装用フィルム2から離間すると共に、下型45及びチャンバ50がそれぞれ自身の待機位置に戻り、ポケット成形工程が終了する。
【0087】
ポケット成形工程を経た包装用フィルム2は、錠剤投入装置11による錠剤投入工程に供される。ここでポケット部7に錠剤Bが充填される。
【0088】
錠剤Bが充填された包装用フィルム2は、検査装置12による検査工程を経た後、連続送りロール10及びシールロール15による取着工程に供される。ここで包装用フィルム2にカバーフィルム13が取着され、PTPフィルム16が形成される。
【0089】
その後、PTPフィルム16は、検査装置19による検査工程を経た後、スリット成形装置23によるスリット成形工程に供される。ここでPTPフィルム16にスリット35が形成される。
【0090】
続いて、PTPフィルム16は、刻印装置24による刻印工程に供される。ここで、タグ部38に対応する位置にロットナンバー等の識別情報が刻印される。
【0091】
刻印工程が終了すると、PTPフィルム16は、シート打抜装置27によるシート打抜工程に供される。ここで、PTPフィルム16がPTPシート単位に打抜かれることで、
図1、2に示すPTPシート28が得られる。これにより、PTPシート28の製造工程が完了する。
【0092】
以上詳述したように、本実施形態では、固定軸部53aに対しスライド軸受け56により支持された外筒55が軸線Z方向に沿って動作することにより、これに固定された可動軸部60に関しても直接、軸受けに支持されることなく、軸線Z方向に沿って安定して動作することができる。
【0093】
結果として、プラグ63を変位させるための可動軸部60と、これが挿通される固定軸部53aとの間に軸受けを設ける必要がなく、スライド軸受け56が固定軸部53aの外周側、すなわちチャンバ50の外側(チャンバ50の内部空間に連通しない部位)に設けられることとなるため、スライド軸受け56より発生する異物(粉塵や油分等)がチャンバ50内に流入する等の不具合の発生を抑制することができる。ひいては、成形後のポケット部7内に異物が混入することを抑制することができる。
【0094】
さらに、特殊な表面処理を施した無給油軸受け等を使用する必要もなく、ポケット成形装置6の製造コストの増加抑制を図ることができる。換言すれば、スライド軸受け56に油分を加えることも可能となるため、スライド軸受け56の摩耗等を抑制し、ポケット成形装置6の長寿命化を図ることができる。
【0095】
加えて、本実施形態では、固定軸部53aの外周部と外筒55の内周部との間にパッキン57が設けられているため、パッキン57より発生する異物がチャンバ50内、ひいては成形後のポケット部7内に入り込むおそれを低減することができる。また、パッキン57の摺動面に油分を加えることも可能となるため、パッキン57の摩耗等を抑制し、ポケット成形装置6の長寿命化を図ることができる。
【0096】
また、本実施形態では、可動軸部60を中空の筒状に構成し、当該可動軸部60内に、加熱板61に給電するための配線68が配設されている。これにより、プラグ63駆動用の可動軸部60を配線用に兼用できるため、複数の可動軸部を設ける必要もなく、かかる場合に生じ得る種々の不具合の発生を抑制することができる。
【0097】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0098】
(a)製造対象となるブリスター包装体の構成は、上記実施形態のPTPシート28に限定されるものではない。
【0099】
例えば上記実施形態では、内容物が錠剤Bである場合について具体化しているが、内容物の種別、形状等については特に限定されるものではなく、例えば食品や電子部品等が内容物として充填される構成であってもよい。勿論、これらの内容物に対応して形成されるポケット部7の形状や大きさ等に関しても上記実施形態に限定されるものではない。
【0100】
従って、本発明は、ゼリーやコーヒー、ミルク等の食品のポーションパックを製造するブリスター包装機や、注射器等の医療器材を包装するブリスター包装機、プリンターカートリッジ等の小物部品を包装するブリスター包装機にも適用することができる。
【0101】
また、PTPシート(ブリスター包装体)単位のポケット部7の配列や個数も上記実施形態(2列、10個)に何ら限定されるものではなく、例えば3列12個のポケット部7を有するタイプをはじめ、様々な配列、個数からなるPTPシート(ブリスター包装体)を採用することができる。
【0102】
尚、
図3においては、便宜上、包装用フィルム2の長手方向におけるポケット部7の形成ピッチが等間隔となるように図示しているが、上記実施形態においては、ポケット部7の形成ピッチは等間隔ではなく若干異なっている〔
図4参照〕。勿論、ポケット部7の形成ピッチが等間隔となる構成としてもよい。
【0103】
(b)包装用フィルム2及びカバーフィルム13の材質等は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、包装用フィルム2がPPにより形成されているが、これに限らず、PVC(ポリ塩化ビニル)等の合成樹脂材料は勿論のこと、アルミニウム等の金属材料により形成される構成としてもよい。
【0104】
尚、包装用フィルム2がアルミニウム等の金属材料により形成される場合には、加熱装置5は使用されず、いわゆる冷間成形が行われることとなる。従って、チャンバ50を利用して高圧エアによりポケット部7を成形することもない。
【0105】
(c)上記実施形態では、プラグアシスト圧空成形法が採用されている場合について具体化しているが、必ずしもその成形法に限られるものではなく、少なくともプラグを用いてポケット成形を行う構成となっていればよい。従って、チャンバ50が省略された構成に具現化してもよい。
【0106】
(d)上記実施形態では、チャンバ50の下面全域が開口した構成となっているが、これに限らず、チャンバ50に底壁部を備え、当該底壁部に複数のプラグ63に対応して複数の孔部を形成し、当該孔部からプラグ63が出没する構成としてもよい。
【0107】
(e)上記実施形態では、可動軸部60を中空の筒状に構成し、当該可動軸部60内に、加熱板61に給電するための配線68が配設された構成となっているが、これに限らず、例えばプラグ63を加熱しない構成とする場合には、棒状(中実)の可動軸部を採用してもよい。
【0108】
(f)上記実施形態では、スタンド軸53、外筒55及び可動軸部60等からなるプラグ駆動ユニットがポケット成形装置6に(1つのチャンバ50に対し)1組だけ設けられた構成となっているが、このようなプラグ駆動ユニットを複数組備えた構成としてもよい。
【0109】
(g)上記実施形態に限らず、スタンド軸53とチャンバ50が一体形成された構成としてもよい。また、外筒55と可動軸部60が一体形成された構成としてもおい。
【0110】
(h)上記実施形態では、外筒55の内周面にスライド軸受け56及びパッキン57が取付けられた構成となっているが、これに限らず、スライド軸受け56及びパッキン57の少なくとも一方が固定軸部53aの外周面に取付けられた構成といてもよい。
【0111】
(i)固定軸部53aの外周部において、固定軸部53aの外周部と外筒55の内周部と間から落ちる異物(スライド軸受け56やパッキン57より発生する異物)を受ける受皿部材を設けた構成としてもよい。これにより、異物が飛散するおそれを低減することができる。