特開2016-138530(P2016-138530A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016138530-動力システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-138530(P2016-138530A)
(43)【公開日】2016年8月4日
(54)【発明の名称】動力システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/13 20060101AFI20160708BHJP
   A47L 11/38 20060101ALI20160708BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20160708BHJP
   F02M 31/20 20060101ALI20160708BHJP
   F01P 1/02 20060101ALI20160708BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20160708BHJP
   F02B 63/06 20060101ALI20160708BHJP
【FI】
   F02B77/13 B
   A47L11/38
   B08B3/02 G
   F02M31/20 D
   F01P1/02 A
   F01N1/00 F
   F02B77/13 C
   F02B63/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-14972(P2015-14972)
(22)【出願日】2015年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】591278998
【氏名又は名称】コスモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】緑川 昌廣
(72)【発明者】
【氏名】和田 平
【テーマコード(参考)】
3B201
3G004
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB62
3B201BB90
3G004AA06
3G004BA02
3G004DA07
3G004DA15
(57)【要約】
【課題】 建造物の壁面などを洗浄する圧力水を噴出する動力システムであって、エンジンや流体圧ポンプを組み込んだケーシングの密閉性を高めて騒音の発生を防止するとともに、ケーシングの温度上昇を抑える。
【解決手段】 エンジンEで流体圧ポンプPを駆動すると、冷却流体の供給源である水道からの水が、ケーシングCの胴部2の周囲に設けた冷却空間5を強制的に流通させられる。したがって、強制的に流通する冷却流体によって、ケーシングCが冷却されるとともに、冷却流体の遮音効果によって騒音が外部に漏れるのを防止する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱発生源及び音発生源をケーシングに組み込むとともに、このケーシングの周囲には冷却空間を設け、この冷却空間に冷却流体を導く構成にした動力システム。
【請求項2】
上記熱発生源及び音発生源が一の装置からなるとともに、その一の装置を1又は複数備えた請求項1に記載の動力システム。
【請求項3】
上記熱発生源と音発生源とが別々の装置からなる請求項1に記載の動力システム。
【請求項4】
冷却流体の流体供給源を上記冷却空間に接続した請求項1〜4のいずれか1に記載の動力システム。
【請求項5】
上記熱発生源あるいは音発生源の少なくとも一方がエンジン又はモータ等のパワーユニットである請求項1〜4のいずれか1に記載の動力システム。
【請求項6】
上記パワーユニットを駆動源とするとともに、熱発生源及び音発生源となる流体圧ポンプを備え、
この流体圧ポンプはその吸込み側を上記冷却空間に接続し、吐出側を上記ケーシングの外部に導いた請求項5に記載の動力システム。
【請求項7】
上記ケーシング内を仕切り空間を介して上下に区画し、その下側を上記エンジンを収容する動力室とし、上側をエンジンの燃料を蓄える燃料室とするとともに、
上記仕切り空間を上記冷却空間と連通させ、
冷却流体が導かれた冷却空間と仕切り空間とで燃料室を覆った請求項5又は6に記載の動力システム。
【請求項8】
上記ケーシング内に冷却流体槽を設け、この冷却流体槽の中に、上記エンジンのマフラーを設けるとともに、この冷却流体槽を、上記冷却空間に連通させ、冷却流体槽に導かれた冷却流体で上記マフラーを冷却する構成にした請求項5〜7のいずれかに記載の動力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、壁面洗浄などの目的で水を圧送する動力源となる動力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水を圧送して壁面を洗浄するシステムでは、キャスターを備えた車台にエンジンとそのエンジンを駆動源とする流体圧ポンプを搭載し、流体圧ポンプからの圧力水を、配管を経由してノズルから噴出させるようにしている。
そして、このようなシステムにおいて、従来は、上記エンジン及び流体圧ポンプの騒音が大きいので、それらエンジン及び流体圧ポンプをケーシング等のケーシング内に組み込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−108149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のようにエンジンや流体圧ポンプをケーシングに組み込むことによって、ある程度の騒音を抑えることができる。
しかし、エンジンや流体圧ポンプをケーシングに組み込めば、今度は、そのケーシング内に熱がこもってしまうという別の問題が発生する。例えば、エンジンや流体圧ポンプは、それらを長時間連続運転すれば、かなりの熱を発生するが、その熱がケーシング内にこもってしまう。そのためにエンジンや流体圧ポンプがオーバーヒートしてしまうという問題があった。
【0005】
つまり、エンジンや流体圧ポンプなどの騒音を抑えるために、それらをケーシングで囲うと、熱がこもってオーバーヒートの原因になる。そこで、熱を放散させるためにケーシング内を大気に開放すれば、今度は騒音を抑えられないことなる。
結局、エンジンや流体圧ポンプの騒音を抑えることと、それらの熱を放散させることとは二律背反的な関係にあり、従来は、それらを同時に解決することができないという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、騒音を押えられるとともに、熱がこもらないようにした動力システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ケーシングに熱発生源及び音発生源を組み込むとともに、このケーシングの周囲には冷却空間を設け、この冷却空間に冷却流体を導くようにしている。
【0008】
第2の発明は、例えばエンジンのようにそれ自体が、熱及び音の両方の発生源となる装置となるとともに、その装置がケーシング内に1又は複数組み込まれたものである。
したがって、第2の発明においては、熱および音の両方の発生源となる装置が、ケーシング内に1つだけ組み込まれていてもよいし、それらが複数組み込まれていてもよい。
【0009】
第3の発明は、ケーシング内に組み込まれる上記熱発生源と音発生源とが別々の装置からなるものである。
第4の発明は、冷却流体の流体供給源を上記冷却空間に接続したものである。
【0010】
第5の発明は、上記熱発生源あるいは音発生源の少なくとも一方がエンジン又はモータ等のパワーユニットである。
【0011】
第6の発明は、上記パワーユニットを駆動源とするとともに、熱発生源及び音発生源となる流体圧ポンプを備え、この流体圧ポンプはその吸込み側を上記冷却空間に接続し、吐出側を上記ケーシングの外部に導いている。
【0012】
第7の発明は、仕切り空間を介して上記ケーシング内を上下に区画し、その下側を上記エンジンを収容する動力室とし、上側をエンジンの燃料を蓄える燃料室としている。そして、上記仕切り空間を上記冷却空間と連通させ、冷却流体が導かれた冷却空間と仕切り空間とで燃料室を覆っている。
【0013】
第8の発明は、上記ケーシング内に冷却流体槽を設け、この冷却流体槽の中に、上記エンジンのマフラーを設けている。そして、この冷却流体槽を、上記冷却空間に連通させ、冷却流体槽に導かれた冷却流体で上記マフラーを冷却する構成にしたものである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明の動力システムによれば、ケーシングの周囲に冷却空間を設け、この冷却空間に冷却流体を導くようにしたので、たとえ密閉していても、ケーシング内を冷却流体で冷却することができる。したがって、ケーシングの内の温度が上昇し過ぎることもない。
このように温度上昇を抑えながらケーシングを密閉できるので、音が外部に漏れることはない。しかも、ケーシングの周囲の冷却空間の冷却流体が遮音効果を発揮するので、音の外部漏れ対策が万全になる。
【0015】
第2,3の発明の動力システムによれば、ケーシング内に熱発生源及び音発生源のどのような装置も組み込めるとともに、それらの冷却及び全体の遮音効果を確実に達成することができる。
第4の発明によれば、冷却流体の流体供給源を上記冷却空間に接続したので、冷却空間には流体が補充される。
【0016】
第5の発明の動力システムによれば、ケーシング内のエンジンあるいはモータのように大きな熱や音を発生しても、それらの熱を冷却するとともに、大きな遮音効果も期待できる。
第6の発明の動力システムによれば、流体圧ポンプを冷却するとともにその音を遮断する一方、その流体圧ポンプのポンプ機能を利用して、保持空間における冷却流体を流通させることができる。したがって、いつも冷えた冷却流体を用いることができ、その分、ケーシング内の冷却効果が大きくなる。
【0017】
第7の発明の動力システムによれば、燃料室を動力室の上側に設けることができる。このように燃料室を上に設けておけば、動力室内におけるエンジンの燃料吸い込み効率が良くなる。
しかも、燃料室の周囲を、冷却流体が導かれる冷却空間及び仕切り空間で覆っているので、上にした燃料室に直射日光などが当たっても、燃料室の燃料温度が異常に上昇しない。もし、燃料室の温度が上がり過ぎると、それが沸騰したりするので、非常に危険な状態になる。しかし、上記のように燃料室の周囲に冷却流体を導くようにしているので、沸騰という危険な状態を招くこともない。
【0018】
第8の発明の動力システムによれば、冷却空間に連通する冷却流体槽の中にエンジンのマフラーを設けたので、マフラーも冷却される。このようにマフラーが冷却されるので、ケーシング内の温度上昇を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図示の実施形態は、例えば圧力水を吐出させて建造物の壁面などを洗浄するための動力システムで、その洗浄水を利用しながらケーシングCを冷却するようにしたものである。そして、キャスター1で移動可能にしたケーシングCには、プランジャポンプからなる流体圧ポンプPと、この流体圧ポンプPの駆動源であるエンジンEとを組み込んでいる。
なお、上記流体圧ポンプP及びエンジンEは、この発明のパワーユニットを構成するとともに、熱発生源及び音発生源にもなる。
【0021】
上記のようにしたケーシングCは、筒状の胴部2の前後にふた3,4を設け、これらふた3,4を開閉して流体圧ポンプPやエンジンEのメンテナンスができるようにしている。
【0022】
そして、上記筒状の胴部2はその周囲を二重構造にするとともに、その二重構造の内部を冷却空間5としている。なお、図面上は下側の冷却空間5aと上側の冷却空間5bとが分離しているようにみえるが、これら両冷却空間5a,5bは胴部2の周囲を回って互いに連通している。このようにした冷却空間5には、後で説明するように冷却流体が導入されるようにしている。
【0023】
さらに、上記上側の冷却空間5bから所定の間隔を保持して仕切り空間6を設け、この仕切り空間6の下方を動力室7とし、この動力室7に上記流体圧ポンプPとエンジンEとを組み込んでいる。また、仕切り空間6の上方を燃料室8とし、この燃料室8にエンジンEの燃料を蓄えられるようにしている。
なお、上記動力室7の上方に燃料室8を設けたのは、燃料室8を動力室7内のエンジンEよりも高い位置に保って、エンジンEの燃料吸い込み効率を上げるためである。
【0024】
上記のようにした仕切り空間6を上記冷却空間5に連通し、この仕切り空間6に、冷却空間5の冷却流体が導かれるようにしている。したがって、燃料室8は冷却空間5及び仕切り空間6に囲われるとともに、燃料室8の燃料はこれら冷却空間5と仕切り空間6に導かれた冷却流体で冷却される。
【0025】
また、ケーシングCの動力室7には冷却流体槽9を設け、この冷却流体槽9の中に、エンジンEのマフラーMを設け、このマフラーMを介してエンジンEの排気ガスをケーシングCの外部に排気できるようにしている。このようにした冷却流体槽9は、この発明の流体供給源である水道に連通させている。したがって、マフラーMは水道水によって冷却されることになる。
なお、上記マフラーMは、それを冷却流体槽9の水道水である冷却流体の中に完全に埋没させてもよいし、マフラーMの一部を冷却流体から露出するようにしてもよい。
【0026】
さらに、上記動力室7には熱交換槽10を設けるとともに、この熱交換槽10を上記冷却流体槽9に連通している。したがって、この熱交換槽10には、冷却流体槽9に導かれた水道水である冷却流体が導かれることになる。
このようにした熱交換槽10には、流体圧ポンプPのオイル溜まり11に接続した熱交換パイプ12と、エンジンEのオイルパン13に接続した熱交換パイプ14を導き、これらパイプ12,14内のオイル熱が熱交換槽10の冷却流体で冷やされるようにしている。
【0027】
上記のようにした熱交換槽10は、上記冷却空間5に連通させるとともに、この冷却空間5を、流体圧ポンプPの吸い込み側に連通させている。
したがって、水道水を供給しながら流体圧ポンプPを駆動すれば、冷却流体槽9、熱交換槽10、冷却空間5を通って流体圧ポンプPに吸い込まれるとともに、この流体圧ポンプPに吸い込まれた水道水は、ケーシングCの外部に設けたノズル15から勢いよく吐出される。
なお、この実施形態では、流体供給源を水道にしたが、例えば、水を溜めたタンクなどを流体供給源にしてもよい。
【0028】
この実施形態の動力システムは、流体圧ポンプPを駆動すれば、水道水の供給圧と流体圧ポンプPの吸い込み力とが相まって、水道水を冷却流体槽9、熱交換槽10及び冷却空間5に強制的に流通させることができる。このように、もともと圧力流体を生成するために必要とされた流体圧ポンプPを利用して、冷却流体を強制的に流通させるようにしたので、冷却流体を強制流通させるための圧力源を特別に設ける必要がない。したがって、コスト的にも有利である。
【0029】
上記のように冷却流体を強制的に流通させれば、ケーシングC内全体が冷やされるのはもちろん、冷却流体槽9のマフラーMや、流体圧ポンプP及びエンジンEのオイルも冷やされる。
【0030】
例えば、マフラーMが冷やされれば、その発熱によるケーシングC内の温度上昇を抑えられるので、ケーシングCの周囲に設けた冷却空間5の流体による冷却効果と相まって、ケーシングC全体の温度上昇を抑えられる。
また、流体圧ポンプP及びエンジンEのオイルが冷やされるので、それらのオイルの劣化を防止でき、その分、メンテナンスに要する時間も短くてすむ。
【0031】
さらに、ケーシングCの胴部2の周囲が冷却流体で覆われるので、この冷却流体が遮音効果を発揮して、流体圧ポンプPやエンジンEの騒音が外部に漏れることがない。
つまり、この実施形態の動力システムによれば、騒音の外部漏れと、ケーシングCの温度上昇とを同時に解決することができる。
【0032】
また、燃料室8を、エンジンEを設けた動力室7よりも上に設けたので、エンジンEが燃料室8から燃料を吸い込む際の吸い込み効率を良好に保つことができる。
しかも、この燃料室8は、その周囲を冷却空間5及び仕切り空間6に囲われているので、それら空間5,6の冷却流体で燃料も冷やされることになる。
【0033】
特に、上記のようにエンジンEの燃料吸い込み効率を上げるために、燃料室8を上に持っていくと、この燃料室8が直射日光にさらされることが多くなる。もし、燃料室8が直射日光にさらされると、燃料の温度が異常に上昇し、ときには沸騰することすらある。しかし、この実施形態の動力システムによれば、燃料室8が冷却空間5及び仕切り空間6の冷却流体で冷やされるので、例えば直射日光にさらされたとしても、燃料の温度が異常に上昇したりしない。
したがって、直射日光を恐れることなく、エンジンEの燃料吸い込み効率がもっともよい位置に燃料室8を設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
例えば、圧力水を噴射して建造物の壁面を洗浄する動力システムに最適である。
【符号の説明】
【0035】
C ケーシング
P 流体圧ポンプ
E エンジン
5 冷却空間
5a,5b 冷却空間
6 仕切り空間
7 動力室
8 燃料室
9 冷却流体槽
M マフラー
図1