(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-138540(P2016-138540A)
(43)【公開日】2016年8月4日
(54)【発明の名称】発電装置及び水力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 11/00 20060101AFI20160708BHJP
F03B 3/12 20060101ALI20160708BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20160708BHJP
【FI】
F03B11/00 B
F03B3/12
F03B11/00 Z
H02K7/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-26921(P2015-26921)
(22)【出願日】2015年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】598143239
【氏名又は名称】吉野電業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 邦彦
【テーマコード(参考)】
3H072
5H607
【Fターム(参考)】
3H072AA13
3H072AA27
3H072BB27
3H072CC08
3H072CC42
3H072CC67
5H607BB02
5H607BB05
5H607BB14
5H607BB25
5H607CC05
5H607CC09
5H607DD03
5H607DD15
5H607FF27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ランナーユニットと発電ユニットを直結する軸シール構造を不要とした発電装置及び水力発電装置にある。
【解決手段】流水が駆動する磁石を有するランナー15を備えたランナーユニット10、ランナーユニットに対向して配置された発電機53を有する発電ユニット50、発電機に接続された発電機磁石64を有する結合子、ランナーユニットから発電ユニットへの流水の移動を禁止するランナーユニットと発電ユニットとの間に設けた隔壁30、ランナー磁石18と非接触状態にある発電機磁石で水力発電機を構成する。ランナー磁石と発電機磁石は磁力で引き合い、ランナー及び結合子、ランナー磁石及び発電機磁石とは磁力によって同一方向に回転することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流動する磁石を有する原動ユニット、前記原動ユニットに対向して配置された発電機を有する発電ユニット、前記発電機に接続された発電機磁石を有する結合子、
前記原動ユニットの流体の移動を前記発電ユニットに禁止する前記原動ユニットと前記結合子との間に設けた隔壁、前記原動ユニット磁石と非接触状態にある前記発電機磁石、前記原動ユニット磁石と前記発電機磁石は磁力で引き合い、前記原動ユニット及び前記結合子、前記原動ユニット磁石及び前記発電機磁石とは磁力によって同一方向に回転することを特徴とする発電装置。
【請求項2】
請求項1の発電装置において、前記発電機と前記結合子との間に増速機構を設け、前記原動ユニットの回転数が前記発電機の要求回転数に達しない場合に活用することを特徴とする水力発電装置。
【請求項3】
流水が流動する磁石を有するランナーを備えたランナーユニット、前記ランナーユニットに対向して配置された発電機を有する発電ユニット、前記発電機に接続された発電機磁石を有する結合子、前記ランナーユニットの流水の移動を前記発電ユニットに禁止する前記ランナーユニットと前記発電ユニットとの間に設けた隔壁、前記ランナー磁石と非接触状態にある前記発電機磁石、前記ランナー磁石と前記発電機磁石は磁力で引き合い、前記ランナー及び前記結合子、前記ランナー磁石及び前記発電機磁石とは磁力によって同一方向に回転することを特徴とする水力発電装置。
【請求項4】
請求項3の水力発電装置において、前記隔壁は中央に垂直部を有する凹み部を設け、
前記ランナー磁石と前記発電機磁石とは前記凹み部の前記垂直部に対向して設けることを特徴とする水力発電装置。
【請求項5】
請求項3の水力発電装置において、前記発電機と前記結合子との間に増速機構を設け、前記ランナーケースの回転数が前記発電機の要求回転数に達しない場合に活用することを特徴とする水力発電装置。
【請求項6】
請求項3の水力発電装置において、前記隔壁は水平方向に延びる平板状板であり、
前記ランナー磁石と前記発電機磁石とはそれぞれ前記平板状隔壁に対向して水平方向に設けることを特徴とする水力発電装置。
【請求項7】
請求項3の水力発電装置において、前記発電ユニットの発電機ケースに給気口と排気口を設け、前記給気口と前記排気口を介して換気可能にしたことを特徴とする水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電装置及び水力発電装置に関し、特に河川や水路中に配置する小形水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川や用水路の水流を利用して発電を行なう小水力発電機(マイクロ・ピコ水力発電機)として、特開2013−2535577が知られている。ダクトの内部の発電水路の流入口の直後に、ランナーのロータを設け、外部に設けた発電機とロータ軸間に伝動手段を連係している。ロータのブレードに当った流水が発電水路の内側壁面に沿って流出する。
【0003】
上述した従来のマイクロ水力発電機は、本体の固定装置や発電部分が分離し、設置場所が制限され移動が容易ではない。又、ランナーと発電機が軸で連結するため、発電部分の軸のシールが必要であり、軸のシール部分の劣化が故障に繋がる。更に、低水位では使用することが難しい。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2013−2535577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題点は、原動ユニットと発電ユニットを直結する軸シール構造を不要とした発電装置及び水力発電装置にある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題点は、原動ユニットの回転エネルギーを発電ユニットに効率よく伝達できる発電装置及び水力発電装置にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体が流動する磁石を有する原動ユニット、原動ユニットに対向して配置された、発電機を有する発電ユニット、発電機に接続された発電機磁石を有する結合子、原動ユニットの流体の移動を発電ユニットに禁止する原動ユニットと結合子との間に設けた隔壁、原動ユニット磁石と非接触状態にある発電機磁石、原動ユニット磁石と発電機磁石は磁力で引き合い、原動ユニット及び結合子、原動ユニット磁石及び前記発電機磁石とは磁力によって同一方向に回転することを特徴とする発電装置にある。
【0009】
本発明は、流水が流動する磁石を有するランナーを備えたランナーユニット、ランナーユニットに対向して配置された発電機を有する発電ユニット、発電機に接続された発電機磁石を有する結合子、ランナーユニットの流水の移動を発電ユニットに禁止するランナーユニットと発電ユニットとの間に設けた隔壁、ランナー磁石と非接触状態にある発電機磁石、ランナー磁石と発電機磁石は磁力で引き合い、ランナー及び結合子、ランナー磁石及び発電機磁石とは磁力によって同一方向に回転することを特徴とする水力発電装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原動ユニットと発電ユニットを直結する軸を不要とする発電装置及び水力発電装置が得られた。
【0011】
本発明によれば、原動ユニットと発電ユニットを直結する軸のシールが不要で、機械的な故障が少ない発電装置及び水力発電装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例を示す小形水力発電装置の断面図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿って切断した小形水力発電装置の断面図である。
【
図3】本発明の他の実施例を示す小形水力発電装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例の完全密閉防水形の小形水力発電装置Aについて説明する。
図1は、本発明の一実施例を示す小形水力発電装置Aの断面図である。小形水力発電装置Aは、主として、流体が流動する水力ユニット10とこの水力ユニット10に対向して配置される発電ユニット50とで構成されている。小形水力発電装置Aは、河川や水路等の流水中に水没、埋設して設置する。
【0014】
水力ユニット10と発電ユニット50は、非磁性体の隔壁30により隔離、仕切られている。水力ユニット10の内部の流水は、隔壁30の配置によって発電ユニット50には流出しない。隔壁30は、水力ユニット10の流水が発電ユニット50に流入することは防止し、水力ユニット10からの発電ユニット50への流水を隔壁30で遮水している。水力ユニット10と発電ユニット50とはパッキング40を介して配置され、パッキング40で小形水力発電装置Aは防水される。
【0015】
水力ユニット10であるランナーユニット10はランナーケース11を有し、ランナーケース11は流水の流入口12と流出口13とを有している。ランナーケース11の内部に、
図2に示すように、ブレード14を有するランナー15がランナー15の軸方向に設けられている。ランナー15のブレード14間にはチャンバー16が形成されている。
【0016】
ランナー15の内周に円筒状のランナー磁石収納部17が設けられている。このランナー磁石収納部17の内部に、ブレード14の付け根部に対向するランナー磁石18が同心形状に収納、配置されている。ランナー15のランナー軸19の下方には軸受け20が設けられ、ランナーケース11の内部中央に配置されている。
【0017】
隔壁30は、隔壁外周リング31とこの外周リング31に接続された中央で下方に延びる円筒形状の有底凹み部32とで構成されている。凹み部32は、円筒形の垂直部33とこの垂直部33に接続された平面状の底部34とを一体的に有している。隔壁30は水力ユニット10から発電ユニット50への流水の移動を禁止し、遮水する。
【0018】
発電ユニット50は、主として結合子60とこの結合子60の上方に位置する発電機ケース51に収納された発電機52とで構成されている。
【0019】
結合子60は、
図1及び
図2に示すように、主として、回転体軸61とこの回転体軸61に接続された円筒状の回転体62とで構成されている。この回転体62の全体は、隔壁30の凹み部32の内部に収納されている。回転体62の外周に設けられた円筒形状の発電機磁石収納部63の内部に、
図2に示すように、発電機磁石64が同心形状に収納されている。
【0020】
ランナー磁石18と発電機磁石64は、隔壁30の垂直部33を介して対向して配置される。ランナー磁石18は、隔壁30の垂直部33の周辺に発電機磁石64とは一定の間隔をおいて対向して設けられている。ランナー磁石18と発電機磁石64とは非接触状態に配置されている。ランナー磁石18と発電機磁石64とは、凹み部32の垂直部33に対向して設けている。
【0021】
ランナー磁石18と発電機磁石64は吸引力で引き合う。ランナー磁石18の磁力と発電機磁石64の磁力との間の吸引力で、等間隔の空隙(ギャップ)を有しながら回転体62が回転する。
【0022】
ランナー15と回転体62はランナー磁石18と発電機磁石64とで連動し、ランナー磁石18と発電機磁石64とで磁気カップリング構造となる。この磁気カップリング構造の採用により、ランナー15と回転体62とを連結する軸が不要となり、パッキングの損傷による水漏れが防げる。
【0023】
発電ユニット50は、主として発電機ケース51、発電機載置板52、この発電機載置板52に載置された永久磁石形発電機53及び発電機53の発電機軸54とで構成されている。この永久磁石形発電機53は、永久磁石構造体と固定コイル構造体との公知の構造で構成されている。発電機53から得られた電力は外部非常用街路灯等へ送電することもできる。
【0024】
本発明の水力発電装置Aには、発電機軸54と結合子60の回転軸61との間に、増速機構70が配置されている。増速機構70は4個の歯車71、歯車72、歯車73及び歯車74で構成されている。増速機構70はランナー15の回転数が発電機53の要求回転数に達しない場合を考慮して、ランナー15と発電機53の中間に歯車等を組み合わせて配置する。
【0025】
流水は、ランナーケース11の流入口12から流入し、チャンバー16に満たされ、ブレード14に当たり、ブレード14を押してランナー15を回転させる。流水の圧力エネルギーと運動量でランナー15を連続的に回転させ、ランナー15の回転エネルギーに変換する。隔壁30は、水力ユニット10の流水を発電ユニット50への移動を禁止、遮水している。
【0026】
ランナー磁石16が回転すると、発電機磁石64を有する回転体62も一緒にランナー15と同一方向に回転する。ランナー磁石18と発電機磁石64とは、非接触状態で吸引力によって引き合い同一方向に回転する。
【0027】
回転体62の回転は、増速機構70を介して、発電機軸54に伝達される。発電機軸54の回転により発電機53が回転し発電する。
【0028】
本発明の他の実施例の完全密閉防水形の小形水力発電装置について説明する。
図3は、本発明の他の実施例を示す小形水力発電装置Bの断面図である。小形水力発電装置Bは、主として、流体が流動する水力ユニット100とこの水力ユニット100に対向して配置される発電ユニット150とで構成されている。小形水力発電装置Bは、河川や水路等の流水中に水没、埋設して設置する。
【0029】
水力ユニット100と発電ユニット150は、隔壁130により隔離、仕切られている。水力ユニット100と発電ユニット150とはパッキング140を介して配置され、パッキング140で小形水力発電装置Bは防水される。水力ユニット100であるランナーユニット100はランナーケース111を有し、ランナーケース111は流水の流入口112と流出口113とを有している。
【0030】
ランナーケース111は、ランナー114を有し、このランナー114はランナー軸115で支持されている。ランナー軸115の下方には重力を受けるための振り止め軸受け116が設けられている。ランナー軸115の上方にはランナー軸受け117が設けられている。このランナー軸受け117は隔壁130の下面に取り付けられている。
【0031】
ランナーケース111には隔壁130に対して水平方向に配置された平板状のランナー磁石支持板118が取り付けられている。ランナー磁石支持板118の上部にはリング状のランナー磁石119が取り付けられている。ランナー磁石119は隔壁130と間隔をもって配置される。
【0032】
発電ユニット150は、主として結合子160とこの結合子160の上方に位置する発電機ケース151に収納された発電機153とで構成されている。
【0033】
発電ユニット150は、主として発電機ケース151、発電機載置板152、この発電機載置板152に載置された永久磁石形発電機153及び発電機軸154とで構成されている。発電機153には発電機軸受け163が隔壁150上に設けられている。
【0034】
発電機軸154には結合子160が接続されている。結合子160は発電機磁石支持板161を有し、この発電機磁石支持板161に隔壁130に対して水平方向に配置されたリング状の発電機磁石162が取り付けられている。
【0035】
発電機磁石162とランナー磁石119は、隔壁130を介して対向して間隔をもって非接触状態に配置される。発電機磁石162を取り付けた結合子160とライナー磁石とで磁気カップリング構造を構成している。
【0036】
発電機ケース151は上方に給気管155と排気管156とを有している。給気管155と排気管156を介して発電機ケース151の内部を換気することができる。場合によっては、排気管156に発電機153から外部へ電力を供給してもよい。
【0037】
本発明の一実施例では、原動ユニットとして、流水の圧力のエネルギーと運動量を利用する水力ユニットの回転エネルギーに変換しているが、風の圧力のエネルギーと運動量を利用する風力ユニットの回転エネルギーに変換してもよい。
【0038】
本発明の上記一実施例では水力ユニットを横置きに設置してあるが、水力ユニットを縦置きに設置してもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
10・・水力ユニット 11・・ランナーケース 12・・流入口 13・・流出口 14・・ブレード 15・・ランナー 16・・チャンバー 17・・ランナー磁石収納部 18・・ランナー磁石 19・・ランナー軸 20・・軸受け 30・・仕切板 31・・外周リング 32・・凹み部 33・・垂直部 34・・底部 40・・パッキング 50・・発電ユニット 51・・発電機ケース 52・・発電機載置板 53・・永久磁石形発電機 54・・発電機軸 60・・結合子 61・・回転機軸 62・・回転体 63・・発電機磁石収納部 64・・発電機磁石 70・・増速機構 71・・歯車 72・・歯車 73・・歯車 74・・歯車 100・・水力ユニット 111・・ランナーケース 112・・流入口 113・・流出口 114・・ランナー 115・・ランナー軸 116・・振れ止め軸受け 117・・上部軸受け 118・・ランナー磁石軸受け 119・・ランナー磁石 130・・隔壁 150・・発電ユニット 151・・発電機ケース 152・・発電機載置板 153・・永久磁石形発電機 154・・発電機軸 155・・給気管 156・・排気管 160・・結合子 161・・発電機磁石支持板 162・・発電機磁石 163・・発電機軸受け