【課題】ショックアブソーバ内のオイルに電荷が過剰に帯電することを防止し、これにより電荷の帯電に起因してオイルの粘性が高くなって減衰力が過剰になることを防止すること。
【解決手段】シリンダ12とピストン14とを有するショックアブソーバ16を含み、ショックアブソーバはピストンのロッド部14R及びシリンダにてそれぞれ車体及び車輪キャリアなどに連結され、オイルがピストンに設けられたオリフィスを通過する際の流通抵抗により減衰力を発生するよう構成された車両の減衰力発生装置10。ショックアブソーバ16の構成部材及び構成部材に接続された付属部材の少なくとも一方である特定の部材の表面に、自己放電式除電器90A〜90Eが固定されている。除電器は、特定の部材に帯電する正の電荷を低減することにより、オイルの帯電量を低下させる。
シリンダと、前記シリンダに往復動可能に嵌合し前記シリンダと共働して二つのシリンダ室を形成するピストンとを有するショックアブソーバを含み、前記ショックアブソーバは前記ピストンのロッド部にて車両のばね上部材及びばね下部材の一方に連結され、前記シリンダにて前記ばね上部材及び前記ばね下部材の他方に連結され、前記ショックアブソーバは前記ばね上部材及び前記ばね下部材の相対変位に伴って作動液体が前記ピストンの本体部に設けられたオリフィスを通過して前記二つのシリンダ室の間に移動する際の流通抵抗により減衰力を発生するよう構成された車両の減衰力発生装置において、
前記ショックアブソーバを構成する部材及び前記ショックアブソーバに接続された付属部材の少なくとも一方である特定の部材の表面に自己放電式除電器が設けられ、
前記自己放電式除電器は、前記特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、前記自己放電式除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、前記空気イオンを前記特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、前記特定の部材の帯電量を低下させることにより、前記作動液体の帯電量を低下させるよう構成された空気イオン変換型自己放電式除電器である、
車両の減衰力発生装置。
請求項1に記載の車両の減衰力発生装置において、前記特定の部材は前記ロッド部に接続された付属部材としての樹脂製のダストブーツであり、前記自己放電式除電器は前記ダストブーツの表面に設けられており、前記ロッド部及び前記ダストブーツは、前記ロッド部から前記ダストブーツへ電荷の移動が可能であるよう接続されている、車両の減衰力発生装置。
請求項1に記載の車両の減衰力発生装置において、前記ショックアブソーバは前記ピストンが嵌合する内側シリンダと、該内側シリンダを囲繞する外側シリンダとを有する複筒型のショックアブソーバであり、前記特定の部材は前記外側シリンダであり、前記自己放電式除電器は、前記車両が標準の積載状態にあるときの前記内側シリンダと前記外側シリンダとの間の前記作動液体の液面よりも下方にて前記外側シリンダの表面に設けられている、車両の減衰力発生装置。
請求項1に記載の車両の減衰力発生装置において、前記ショックアブソーバは前記ピストンが嵌合する内側シリンダと、前記内側シリンダを囲繞し前記内側シリンダとの間にリザーバ室を形成する外側シリンダと、ベースバルブ組立体と、前記内側シリンダ及び前記外側シリンダの端部を閉ざし前記ベースバルブ組立体と共働して前記リザーバ室と連通するベースバルブ室を郭定するエンドキャップと、を有する複筒型のショックアブソーバであり、前記特定の部材は前記外側シリンダ及び前記エンドキャップの少なくとも一方であり、電荷が前記内側シリンダから前記特定の部材へ移動可能である、車両の減衰力発生装置。
請求項1に記載の車両の減衰力発生装置において、前記ショックアブソーバは単筒型のショックアブソーバであり、前記特定の部材は前記シリンダであり、前記車両が標準の積載状態にあるときに前記ピストンの本体部が存在する前記相対変位の方向の範囲を所定の範囲として、前記自己放電式除電器は少なくともその一部が前記所定の範囲内に位置するよう前記シリンダの表面に設けられている、車両の減衰力発生装置。
請求項1に記載の車両の減衰力発生装置において、前記ショックアブソーバは、前記ピストンの本体部を迂回して前記二つのシリンダ室を接続するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられた可変オリフィスと、前記可変オリフィスの実効通路断面積を変化させる実効通路断面積可変装置と、を有し、前記ピストンが前記シリンダに対し変位すると、一方の前記シリンダ室内の前記作動液体の少なくとも一部が前記バイパス通路を経て他方の前記シリンダ室へ移動するように構成された減衰力可変式のショックアブソーバであり、前記特定の部材は実効通路断面積可変装置であり、電荷が前記バイパス通路を通過する前記作動液体から前記実効通路断面積可変装置へ移動可能である、車両の減衰力発生装置。
請求項1乃至6の何れか一つに記載の車両の減衰力発生装置において、前記自己放電式除電器は、外周の側面に多数の微小な凹凸を有する導電性の金属箔と、該金属箔の一方の面に付着された粘着剤の層とを有し、前記粘着剤の層による接着により前記特定の部材に固定されている、車両の減衰力発生装置。
【発明の概要】
【0006】
〔発明が解決しようとする課題〕
上記特許文献1に記載されているような従来の静電気除去装置は複雑な構造を有し、静電気除去装置が導線によりバッテリのマイナスの端子及び車体に接続されなければならず、静電気除去装置の設置スペースも必要である。
【0007】
ところで、車両には車体の振動を減衰させる減衰力発生装置が装備されている。減衰力発生装置はシリンダと該シリンダに往復動可能に嵌合するピストンとを有するショックアブソーバを含んでいる。ショックアブソーバは、ピストンのロッド部及びシリンダにてそれぞれ車両のばね上部材及びばね下部材に連結され、ばね上部材及びばね下部材の相対変位に伴ってオイルがピストンに設けられたオリフィスを通過する際の流通抵抗により減衰力を発生する。
【0008】
本願発明者が行った実験的研究により、車両に帯電した電荷が車両に及ぼす悪影響は、ラジオノイズなどが生じ易くなることに留まらないことが判明した。即ち、車両に電荷が帯電すると、ショックアブソーバ内のオイルにも電荷が帯電し、オイルの粘性が高くなって減衰力が過剰になり易いことが解った。
【0009】
なお、上記特許文献1に記載されているような従来の静電気除去装置は、設置場所の制約を受けるため、ショックアブソーバ内のオイルに帯電する電荷を効果的に低減することができる位置に従来の静電気除去装置を設置することができない。そのため、従来の静電気除去装置によっては、電荷の帯電に起因してオイルの粘性が高くなって減衰力が過剰になることを効果的に防止することができない。
【0010】
本発明は、従来認識されていない上記現象及びその原因に着目してなされたものである。そして、本発明の主要な課題は、ショックアブソーバ内のオイルに電荷が過剰に帯電することを防止し、これにより電荷の帯電に起因してオイルの粘性が高くなって減衰力が過剰になることを防止することである。
【0011】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、シリンダと、前記シリンダに往復動可能に嵌合し前記シリンダと共働して二つのシリンダ室を形成するピストンとを有するショックアブソーバを含み、前記ショックアブソーバは前記ピストンのロッド部にて車両のばね上部材及びばね下部材の一方に連結され、前記シリンダにて前記ばね上部材及び前記ばね下部材の他方に連結され、前記ショックアブソーバは前記ばね上部材及び前記ばね下部材の相対変位に伴って作動液体が前記ピストンの本体部に設けられたオリフィスを通過して前記二つのシリンダ室の間に移動する際の流通抵抗により減衰力を発生するよう構成された車両の減衰力発生装置が提供される。
【0012】
前記ショックアブソーバを構成する部材及び前記ショックアブソーバに接続された付属部材の少なくとも一方である特定の部材の表面に自己放電式除電器が設けられる。前記自己放電式除電器は、前記特定の部材に帯電する正の電荷の帯電量に応じて、前記自己放電式除電器の周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、前記空気イオンを前記特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、前記特定の部材の帯電量を低下させることにより、前記作動液体の帯電量を低下させるよう構成された空気イオン変換型自己放電式除電器である。
【0013】
車体などに電荷が帯電するとショックアブソーバ内のオイルのような作動液体に電荷が帯電する理由及び作動液体に電荷が帯電すると作動液体の粘性が高くなる原因は必ずしも明確ではないが、主な理由及び原因は以下の通りであると考えられる。ショックアブソーバはピストンのロッド部及びシリンダにてそれぞれ車両のばね上部材及びばね下部材の一方及び他方に連結されているため、車体などに電荷が帯電すると、電荷がばね上部材及びばね下部材を経てピストン及びシリンダへ移動する。ピストン及びシリンダに帯電する電荷の量が多くなると、それらの電荷の一部がショックアブソーバ内の作動液体へ移動し、その結果作動液体に電荷が帯電する。作動液体に電荷が帯電すると、作動液体の分子の自由度を低下させ、このことが作動液体の粘性を高くすると推定される。
【0014】
上記の構成によれば、ショックアブソーバを構成する部材及びショックアブソーバに接続された付属部材の少なくとも一方である特定の部材の表面に自己放電式除電器が設けられている。この除電器は、その周囲の空気を負の空気イオンに変化させ、空気イオンを特定の部材の正の電荷に引き寄せて中和させることにより除電し、特定の部材の帯電量を低下させる。よって、ショックアブソーバ内の作動液体に帯電する電荷が特定の部材へ移動することにより作動液体の帯電量が低下するので、作動液体の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり減衰力が過剰になることを防止することができる。
【0015】
なお、上記の構成によれば、複雑な構造の静電気除去装置はなくてもよく、よって静電気除去装置を導線によりバッテリのマイナスの端子及び車体に接続しなくてもよい。また、自己放電式除電器は、特定の部材に帯電する電荷を利用して所謂自己放電を行い得る例えば薄い導電体であってよいので、静電気除去装置を設置する場合のような大きいスペースは不要である。
【0016】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、前記特定の部材は前記ロッド部に接続された付属部材としての樹脂製のダストブーツであり、前記自己放電式除電器は前記ダストブーツの表面に設けられており、前記ロッド部及び前記ダストブーツは、前記ロッド部から前記ダストブーツへ電荷の移動が可能であるよう接続されている。
【0017】
上記態様によれば、自己放電式除電器はダストブーツの表面に設けられており、ダストブーツは金属よりも電荷が帯電し易い樹脂にて形成されている。更に、ロッド部及びダストブーツは、ロッド部からダストブーツへ電荷の移動が可能であるよう接続されている。よって、自己放電式除電器によりダストブーツが除電され、ピストンに帯電する電荷がロッド部を経てダストブーツへ移動するので、作動液体に帯電する電荷がピストンへ移動する。従って、作動液体の帯電量を減少させることができるので、作動液体の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり減衰力が過剰になることを防止することができる。
【0018】
本発明の一つの態様においては、前記ショックアブソーバは前記ピストンが嵌合する内側シリンダと、該内側シリンダを囲繞する外側シリンダとを有する複筒型のショックアブソーバであり、前記特定の部材は前記外側シリンダであり、前記自己放電式除電器は、前記車両が標準の積載状態にあるときの前記内側シリンダと前記外側シリンダとの間の前記作動液体の液面よりも下方にて前記外側シリンダの表面に設けられている。
【0019】
上記態様によれば、自己放電式除電器は、複筒型のショックアブソーバにおいて、車両が標準の積載状態にあるときの内側シリンダと外側シリンダとの間の作動液体の液面よりも下方にて外側シリンダの表面に設けられている。よって、自己放電式除電器が、内側シリンダと外側シリンダとの間の作動液体の液面よりも上方にて外側シリンダの表面に設けられている場合に比して、内側シリンダと外側シリンダとの間の作動液体を効率的に除電することができる。従って、内側シリンダを効率的に除電し、内側シリンダ内の作動液体に帯電する電荷を効率的に内側シリンダへ移動させることができるので、内側シリンダ内の作動液体を効率的に除電することができる。
【0020】
本発明の一つの態様においては、前記ショックアブソーバは前記ピストンが嵌合する内側シリンダと、前記内側シリンダを囲繞し前記内側シリンダとの間にリザーバ室を形成する外側シリンダと、ベースバルブ組立体と、前記内側シリンダ及び前記外側シリンダの端部を閉ざし前記ベースバルブ組立体と共働して前記リザーバ室と連通するベースバルブ室を郭定するエンドキャップと、を有する複筒型のショックアブソーバであり、前記特定の部材は前記外側シリンダ及び前記エンドキャップの少なくとも一方であり、電荷が前記内側シリンダから前記特定の部材へ移動可能である。
【0021】
上記態様によれば、自己放電式除電器は、複筒型のショックアブソーバにおいて、特定の部材である外側シリンダ及びエンドキャップの少なくとも一方の表面に設けられており、電荷が内側シリンダから特定の部材へ移動可能である。除電器によって特定の部材が除電されると、電荷が内側シリンダから特定の部材へ移動し、内側シリンダの電位が低下するので、内側シリンダ内の作動液体に帯電する電荷が内側シリンダへ移動する。従って、内側シリンダ内の作動液体の帯電量を減少させることができるので、作動液体の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり減衰力が過剰になることを防止することができる。
【0022】
本発明の一つの態様においては、前記ショックアブソーバは単筒型のショックアブソーバであり、前記特定の部材は前記シリンダであり、前記車両が標準の積載状態にあるときに前記ピストンの本体部が存在する前記相対変位の方向の範囲を所定の範囲として、前記自己放電式除電器は少なくともその一部が前記所定の範囲内に位置するよう前記シリンダの表面に設けられている。
【0023】
上記態様によれば、自己放電式除電器は、単筒型のショックアブソーバにおいて、シリンダの表面に設けられているので、除電器によってシリンダが除電され、シリンダの電位が低下することにより、作動液体に帯電する電荷がシリンダへ移動する。従って、作動液体の帯電量を減少させることができるので、作動液体の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり減衰力が過剰になることを防止することができる。更に、自己放電式除電器が所定の範囲外にてシリンダの表面に設けられている場合に比して、オリフィスが設けられたピストンの本体部の周りに存在する作動液体の除電を効率的に行わせることができる。
【0024】
本発明の一つの態様においては、前記ショックアブソーバは、前記ピストンの本体部を迂回して前記二つのシリンダ室を接続するバイパス通路と、前記バイパス通路に設けられた可変オリフィスと、前記可変オリフィスの実効通路断面積を変化させる実効通路断面積可変装置と、を有し、前記ピストンが前記シリンダに対し変位すると、一方の前記シリンダ室内の前記作動液体の少なくとも一部が前記バイパス通路を経て他方の前記シリンダ室へ移動するように構成された減衰力可変式のショックアブソーバであり、前記特定の部材は実効通路断面積可変装置であり、電荷が前記バイパス通路を通過する前記作動液体から前記実効通路断面積可変装置へ移動可能である。
【0025】
上記態様によれば、自己放電式除電器は、減衰力可変式のショックアブソーバにおいて、バイパス通路に設けられた可変オリフィスの実効通路断面積を変化させる実効通路断面積可変装置の表面に設けられている。更に、電荷がバイパス通路を通過する作動液体から実効通路断面積可変装置へ移動可能である。よって、自己放電式除電器により実効通路断面積可変装置が除電され、作動液体に帯電する電荷が実効通路断面積可変装置へ移動するので、バイパス通路を通過する作動液体に帯電する電荷が減少する。従って、可変オリフィスを通過する作動液体の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり減衰力が過剰になることを防止することができる。
【0026】
本発明の一つの態様においては、前記自己放電式除電器は、外周の側面に多数の微小な凹凸を有する導電性の金属箔と、該金属箔の一方の面に付着された接着剤の層とを有し、前記接着剤の層による接着により前記特定の部材に固定されている。
【0027】
上記態様によれば、特定の部材の表面に除電を行う金属箔を接着により容易に固定することができる。更に、金属箔は、全面に亘り粘着剤の層を介して特定の部材に密着するので、特定の部材から金属箔への電荷の移動を効率的に行わせることができ、除電の効果を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0030】
[第一の実施形態]
図1は、マクファーソンストラット式フロントサスペンションに適用された本発明の第一の実施形態にかかる減衰力発生装置10を車両の後方より見た状態にて示す概略図、
図2及び
図3は、それぞれ
図1に示された減衰力発生装置10を示す斜視図及び分解斜視図である。
【0031】
これらの図に於いて、減衰力発生装置10は、シリンダ12とピストン14とを含むショックアブソーバ16を有している。ピストン14は、軸線12Aに沿ってシリンダ12に対し往復動可能にシリンダ12に嵌合している。シリンダ12及びピストン14は、鋼などの金属にて形成されている。ピストン14のロッド部14Rはシリンダ12の上端を貫通して上方へ延在している。なお、この後説明する部材は、特に構成材料について言及する部材を除き、鋼などの導電性を有する金属にて形成されている。シリンダ12及びピストン14を含む金属製の部材は、耐久性を向上させるべく、塗装されており、表面は非導電性の塗膜にて覆われている。
【0032】
ショックアブソーバ16は、ロッド部14Rの上端部にてアッパサポート18により車両20のばね上部材としての車体22に連結され、シリンダ12の下端部に固定されたブラケット24により車両20のばね下部材としての車輪キャリア26に連結されている。周知のように、アッパサポート18は、ケーシング18Aの内部に配置されたゴムブッシュ装置によりロッド部14Rを支持している。車輪キャリア26は、図には示されていない軸受を介して車輪28のスピンドル30を回転軸線32の周りに回転可能に支持している。なお、ショックアブソーバ16の下端部は、図には示されていないゴムブッシュ装置のような連結手段により車輪キャリア26又はサスペンション部材に相対運動可能に連結されていてもよい。
【0033】
図示の実施形態においては、車輪28は操舵輪であると共に駆動輪であり、スピンドル30にはユニバーサルジョイント34を介して駆動軸36が接続されている。車輪28はスピンドル30のフランジ部に取り付けられたホイール部材38と、ホイール部材38の外周に装着されたゴムなどよりなるタイヤ40とを含んでいる。なお、本発明の減衰力発生装置が適用される車輪は、非操舵輪であってもよく、また従動輪であってもよく、更には後輪であってもよい。
【0034】
車輪キャリア26の下端部には、コントロールアーム(ロアアーム)42の外端がボールジョイント44を介して枢動可能に連結されている。図示の実施形態においては、コントロールアーム42は外端に加えて内端及び後端を有するL形アームであり、内端及び後端はそれぞれゴムブッシュ装置46、48を介して車体のブラケット(図示せず)により揺動可能に支持されている。コントロールアーム42の外端に設けられたボールジョイント44のボール部の中心及びアッパサポート18の中心は互いに共働してキングピン軸50を郭定している。従って、車輪28はキングピン軸50の周りに図には示されていないステアリング装置によりタイロッドを介して駆動され、これにより操舵される。
【0035】
図には示されていないが、ピストン14のロッド部14Rの上端部は、アッパスプリングシート52を貫通して延在している。後に
図3を参照して説明するように、アッパスプリングシート52は上面にてアッパサポート18の下面に当接するようロッド部14Rに固定されている。アッパスプリングシート52とシリンダ12に固定されたロアスプリングシート54との間には、サスペンションスプリングとしての圧縮コイルばね56が弾装されている。
【0036】
以上の説明から解るように、減衰力発生装置10はマクファーソンストラット式フロントサスペンションに適用されており、ショックアブソーバ16、アッパサポート18及び圧縮コイルばね56などは、互いに共働してマクファーソンストラットを構成している。よって、車輪28がバウンド、リバウンドすることにより、車輪キャリア26が上下動すると、コントロールアーム42がゴムブッシュ装置46、48の周りに上下方向へ揺動し、ショックアブソーバ16が伸縮すると共に、圧縮コイルばね56が弾性変形する。
【0037】
図3に示されているように、ロッド部14Rの上端部は、アッパスプリングシート52の下方に位置するスプリングシートクッション58及びダストブーツ60の上端を貫通している。スプリングシートクッション58及びダストブーツ60は、アッパスプリングシート52とロッド部14Rの肩部14Sとの間に挾圧されることにより、ロッド部14Rに固定的に接続されたショックアブソーバ16の付属部材であり、樹脂にて形成されている。スプリングシートクッション58は外周部の上面にてアッパスプリングシート52の下面に当接している。
【0038】
特に、図示の実施形態においては、ダストブーツ60は、シリンダ12及びロッド部14Rの周りにてそれらに沿って延在する円筒部60Cと、上下が逆転された鉢形をなし円筒部60Cの上端と一体をなす取り付け部60Aとを有している。取り付け部60Aはロッド部14Rが挿通される孔60Hを除きダストブーツ60の上端を閉ざしており、孔60Hの壁面にてロッド部14Rに密着している。円筒部60Cは伸縮自在な蛇腹状をなし、軸線12Aに沿う圧縮荷重を受けると、圧縮変形する。
【0039】
図4に模式的に示されているように、ショックアブソーバ16は複筒式のショックアブソーバであり、シリンダ12は互いに同心に軸線12Aに沿って延在する内側シリンダ12Xと外側シリンダ12Yとを含んでいる。内側シリンダ12X及び外側シリンダ12Yは、それぞれ上端及び下端にてエンドキャップ62及び64により一体的に連結されている。ピストン14のロッド部14Rは、エンドキャップ62を貫通してシリンダ12の外へ延在し、エンドキャップ64はシリンダ12の下端を閉ざしている。内側シリンダ12X内にはエンドキャップ64に近接してベースバルブ組立体66が配置され、内側シリンダ12Xに固定されている。
【0040】
ピストン14の本体部14Mは、軸線12Aに沿って往復動可能に内側シリンダ12Xに密に嵌合し、内側シリンダ12X及びエンドキャップ62と共働してシリンダ上室68を形成し、内側シリンダ12X及びベースバルブ組立体66と共働してシリンダ下室70を形成している。ベースバルブ組立体66はエンドキャップ64との間にベースバルブ室72を形成しており、ベースバルブ室72は内側シリンダ12Xと外側シリンダ12Yとの間の環状室74と連通している。
【0041】
シリンダ上室68、シリンダ下室70、ベースバルブ室72及び環状室74には、作動液体としてのオイル76が充填されており、環状室74の上方部には窒素のようなガス78が封入されている。ショックアブソーバ16の伸縮に伴ってシリンダ12内に存在するロッド部14Rの体積が変化するので、環状室74内のガス78はシリンダ12内に存在するロッド部14Rの体積の変化を吸収する。
【0042】
ピストン14の本体部14Mには、伸び行程用の減衰力発生弁80及び縮み行程用の減衰力発生弁82が設けられている。伸び行程用の減衰力発生弁80は、オリフィス80Aを含み、シリンダ上室68からシリンダ下室70へ向かうオイル76の流れのみを許容し、オイル76がオリフィス80Aを通過する際の流通抵抗により伸び行程の減衰力を発生する。同様に、縮み行程用の減衰力発生弁82は、オリフィス82Aを含み、シリンダ下室70からシリンダ上室68へ向かうオイル76の流れのみを許容し、オイル76がオリフィス82Aを通過する際の流通抵抗により縮み行程の減衰力を発生する。
【0043】
ベースバルブ組立体66にも、伸び行程用の減衰力発生弁84及び縮み行程用の減衰力発生弁86が設けられている。伸び行程用の減衰力発生弁84は、オリフィス84Aを含み、ベースバルブ室72からシリンダ下室70へ向かうオイル76の流れのみを許容し、オイル76がオリフィス84Aを通過する際の流通抵抗により伸び行程の減衰力を発生する。同様に、縮み行程用の減衰力発生弁86は、オリフィス86Aを含み、シリンダ下室70からベースバルブ室72へ向かうオイル76の流れのみを許容し、オイル76がオリフィス86Aを通過する際の流通抵抗により縮み行程の減衰力を発生する。
【0044】
図2及び
図3に示されているように、シリンダ12の外側シリンダ12Yの長手方向中央部及び下端部の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器90A及び90Bが周方向に延在するよう接着により固定されている。
図3に示されているように、スプリングシートクッション58の外周部及びダストブーツ60の取り付け部60Aの外周部には、短冊状をなす自己放電式除電器90C及び90Dが周方向に延在するよう接着により固定されている。更に、アッパサポート18のケーシング18Aの上面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Eが径方向に垂直に延在するよう接着により固定されている。
【0045】
なお、
図4に示されたピストン14の位置は、車両が標準の積載状態にあり、車輪28がバウンドもリバウンドもしていないときの位置(以下「標準位置」という)である。図示の実施形態においては、自己放電式除電器90Aは、ピストン14が標準位置にあるときの環状室74内のオイル76の液面よりも下方にてシリンダ12の外側シリンダ12Yの表面に固定されている。
【0046】
自己放電式除電器90A〜90Eは同一の構造を有している。よって、接着前の除電器90Aの断面を示す
図5を参照して除電器90Aについてのみ説明する。除電器90Aは、導電性の金属箔92に導電性の粘着剤94が付着され、粘着剤94を覆う剥離紙96が粘着剤94に取り付けられた複合シートが所定の大きさ及び形状に剪断されることにより形成されている。除電されるべき部材に対する除電器90Aの固定は、剥離紙96を剥取り、金属箔92を粘着剤94にて部材に接着することにより行われる。
【0047】
後に詳細に説明するように、金属箔92の主として側面92A、即ち金属箔の厚さ方向に沿う面が、後述の除電現象における放電面として機能する。よって、金属箔92の側面92Aは、除電現象が効率的に行われるよう、微小な突起部のような多数の凸部92Bを有することが好ましい。また、金属箔92の表面92C(
図5の上面)に表面粗さを増大させる加工が施されることにより、金属箔92の表面に微小な突起部のような多数の凸部が形成されてもよい。
【0048】
後に詳細に説明するように、金属箔92は導電性を有する任意の金属にて形成されてよいが、アルミニウム、金、銀、銅又はそれらの合金にて形成されることが好ましい。特に、この実施形態のように、除電器が金属部材に固定される場合には、除電器の金属箔は、金属部材を構成する金属材料よりも高い導電性を有することが好ましい。更に、金属箔92の側面が十分に放電面として機能するに足る厚さを有すると共に、曲面にも柔軟に対応するよう変形させて固定することができるよう、金属箔の厚さは約50〜200μm程度であることが好ましい。
【0049】
なお、除電器90Aの平面形状は、短冊状の長方形に限定されず、長方形以外の多角形、円形又は楕円形のような任意の形状であってよいが、廃棄される部分がないよう剪断することができる形状、例えば長方形、正方形、ひし形及び六角形などであることが好ましい。また、除電器90Aの大きさは、それが適用される部位に応じて適宜設定されてよいが、除電器90Aが例えば長方形である場合には、短辺が数mm〜十数mm程度であり、長辺が数十mm〜100mm程度であってよい。
【0050】
前述のように、車両20が走行すると、車両には正の電荷が帯電するので、減衰力発生装置10を構成するショックアブソーバ16などの部材にも正の電荷が帯電する。一般に、電荷の帯電量は金属部材よりも樹脂部材において高く、金属部材よりもオイルにおいて低い。減衰力発生装置10の場合には、樹脂製のスプリングシートクッション58及びダストブーツ60の帯電量は、金属製のピストン14及びシリンダ12の帯電量よりも高いが、オイル76の帯電量は、ピストン14及びシリンダ12の帯電量よりも低い。
【0051】
よって、除電器90Aなどによる除電が行われない場合には、ダストブーツ60、ピストン14、シリンダ12、及びオイル76の正の電荷の帯電に起因する電位の関係は、
図6において実線にて示された関係であると考えられる。前述のように、タイヤ40が路面に対し繰り返し接触及び剥離を繰り返すことにより、車輪28には正の電荷が発生して帯電する。シリンダ12は車輪28を支持する車輪キャリア26に連結されているので、シリンダ12の電荷の帯電量はピストン14よりも高い。
【0052】
上記の部材及び部位のうちオイル76の電位が最も低いが、シリンダ12及びピストン14の帯電量が高くなると、それらの部材に帯電する電荷がオイル76へ移動し、その結果オイル76の帯電量も高くなって、その粘性が高くなる。オイル76の粘性が高くなると、オイル76がオリフィス80Aなどを通過する際の流通抵抗も高くなるので、減衰力が本来の値よりも高くなり、車両の乗り心地性が低下する。よって、除電器90Aなどによる除電によって、オイル76の帯電量が低下されることが好ましい。
【0053】
図7は、除電器90Aによる除電のメカニズムを示す模式的な説明図であり、除電器90Aによる除電は、
図7に示されたメカニズムにより行われると推定される。なお、
図7において、「+」及び「−」はそれぞれ正及び負の電荷又はイオンを示し、「0」は電荷が0であること、即ち電気的に中和された状態にあることを示している。また、実線の矢印は空気の流動を示し、破線の矢印は電荷又はイオンの移動を示している。
【0054】
空気は正の電荷を帯びているが、樹脂製のダストブーツ60における正の電荷の帯電量が非常に多くなると、空気が所謂コロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される。正の空気イオンは、ダストブーツ60に帯電する正の電荷との間に作用する斥力により、ダストブーツ60から遠ざかるよう移動する。これに対し、負の空気イオンは、ダストブーツ60に帯電する正の電荷との間に作用するクーロン力によって引き寄せられることにより、ダストブーツ60に近づくよう移動し、ダストブーツ60に帯電する正の電荷は負の空気イオンに近づくよう移動する。
【0055】
その結果、負の空気イオンと正の電荷との間において電気的中和が生じ、負の空気イオン及び正の電荷が消滅し、空気の電荷が0になる。以上の現象は繰り返し連続的に生じるので、ダストブーツ60に帯電する正の電荷が低減されることによりダストブーツ60が除電される。なお、空気がコロナ放電により正の空気イオンと負の空気イオンとに分離される事象などは、ダストブーツ60の帯電量が高いほど活発になり、よって、除電の作用は帯電量が高いほど活発になると推定される。また、除電器90Aによる除電は、
図7に示されているように、一方向に空気が流動する状況に限られない。
【0056】
本願発明者が行った実験的研究の結果によれば、除電器90Aの金属箔92(厚さ200μmのアルミ箔)が前述の寸法の長方形又はこれと同程度の大きさの他の形状である場合には、上記除電の効果が及ぶ面方向の範囲は、金属箔92の中央Pcから半径50mm程度の範囲である。また、上記除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲は、上記面方向の除電の効果が及ぶ範囲内にて金属箔92の貼着面から数mm〜十数mm程度の範囲である。なお、除電の効果が及ぶ範囲は、正の電荷の帯電量などの状況に応じて変化する。
【0057】
車両20の一般的な帯電状況について見て、スプリングシートクッション58及びアッパスプリングシート52の互いに当接する部分のうち、除電器90Cのアルミ箔92の中央Pcに最も近い部位は、ダストブーツ60の上面に沿って除電の効果が及ぶ面方向の範囲内にある。同様に、ダストブーツ60及びロッド部14Rの互いに当接する部分のうち、除電器90Dのアルミ箔92の中央Pcに最も近い部位は、ダストブーツ60の上面に沿って除電の効果が及ぶ面方向の範囲内にある。更に、シリンダ12の外側シリンダ12Yは、除電器90A及び90Bの除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲内にあり、アッパサポート18のケーシング18Aは、除電器90Eの除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲内にある。
【0058】
図6において二点鎖線にて示されているように、除電器90Dによる除電により、ダストブーツ60に帯電する正の電荷が低減されてダストブーツ60の電位が低下される。よって、ピストン14に帯電する正の電荷がダストブーツ60へ移動することによって低減され、ピストン14の電位が低下される。ピストン14の電位は、除電器90C及び90Eによる除電により、それぞれスプリングシートクッション58及びアッパスプリングシート52の電位が低下され、アッパサポート18のケーシング18Aの電位が低下されることによっても、低下される。更に、除電器90A及び90Bによる除電により、外側シリンダ12Yに帯電する正の電荷が低減され、これによりシリンダ12全体の正の電荷が低減されてシリンダ12の電位が低下される。
【0059】
なお、外側シリンダ12Yのように塗装された金属部材の場合には、塗膜にも電荷が帯電するが、除電器に近い塗膜に帯電する電荷は除電器へ移動することによって低減される。また、金属部材に帯電する電荷は、塗膜を通過して除電器へ移動することによって低減される。更に、除電器から離れた部位の塗膜に帯電する電荷は、一旦金属部材へ移動して金属部材内を移動し、金属部材から塗膜を通過して除電器へ移動する。
【0060】
従って、第一の実施形態によれば、ショックアブソーバ16のシリンダ12及びピストン14に接するオイル76に帯電する正の電荷をシリンダ12及びピストン14へ移動させ、これによりオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。なお、ショックアブソーバ16が伸縮する際にピストン14がシリンダ12に対し変位し、オイル76が撹拌されるので、正の電荷の低減は、実質的にオイル76の全体について行われる。よって、オイル76に正の電荷が過剰に帯電することを防止することができるので、オイル76の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して過剰に高くなりショックアブソーバ16の減衰力が過大になることを防止することができる。
【0061】
特に、第一の実施形態によれば、自己放電式除電器90Aは、ピストン14が標準位置にあるときの環状室74内のオイル76の液面よりも下方にてシリンダ12の外側シリンダ12Yの表面に固定されている。よって、除電器90Aが環状室74内のオイル76の液面よりも上方にて外側シリンダ12Yの表面に固定されている場合に比して、外側シリンダ12Yの除電により環状室74内のオイル76の帯電量を効率的に低減することができる。なお、除電器90Aの一部又は全部が、ピストン14が標準位置にあるときの環状室74内のオイル76の液面よりも上方に位置していてもよい。
【0062】
また、第一の実施形態によれば、自己放電式除電器90Bが外側シリンダ12Yの下端部の表面に固定されている。よって、外側シリンダ12Yの下端部の表面に除電器が固定されていない場合に比して、除電器90Bによる外側シリンダ12Yの下端部の除電により、エンドキャップ64を介して内側シリンダ12Xの帯電量を効率的に低減することができる。
【0063】
なお、本願発明者が実際の車両について行った実験により、以下の効果を確認することができた。即ち、自己放電式除電器90A〜90Eが設けられていない場合には、内側シリンダ12X内のオイル76の電位は数百乃至千ボルト程度にまで上昇した。これに対し、第一の実施形態の構成によれば、内側シリンダ12X内のオイル76の電位は数十ボルト程度にまでしか上昇せず、オイル76の適正な粘性を確保することができた。
【0064】
[第二の実施形態]
図8は、マクファーソンストラット式フロントサスペンションに適用された本発明の第二の実施形態にかかる減衰力発生装置10の要部を車両の後方より見た状態にて示す部分断面図、
図9は、
図8に示された単筒式のショックアブソーバの概略を示す断面図である。なお、
図8及び
図9において、
図1乃至
図4に示された部材に対応する部材には、これらの図において付された符号と同一の符号が付されている。
【0065】
第二の実施形態のショックアブソーバ16は、入力分離型のショックアブソーバである。アッパサポート18は、内筒部材18Bと、外筒部材18Cと、内筒部材18B及び外筒部材18Cの間に充填されたゴムブッシュ18Dとを有している。ロッド部14Rの先端には肩部14Sに当接する状態にてストッパリング100が嵌合している。内筒部材18Bは、ストッパリング100とロッド部14Rの先端に螺合するナット102との間に挾まれた状態にて支持され、これによりアッパサポート18はロッド部14Rの先端に連結されている。
【0066】
外筒部材18Cは、フランジ部18Fにて車体22に当接し、ボルト104及びこれに螺合するナット106によりフランジ部18Fにて車体22に連結されている。外筒部材18Cの下方にはバウンドストッパ108が配置されている。バウンドストッパ108は、ゴム製の本体108Aと、本体108Aの上端を一体的に支持する金属製の支持体108Bとよりなり、支持体108Bは溶接などの手段により外筒部材18Cの下面に接合されている。
図8には示されていないが、外筒部材18C及び支持体108Bの少なくとも一方は、内周部の一部にて直接又は導電性を有する弾性材を介して、ストッパリング100又はロッド部14Rと電荷の移動が可能であるよう接触している。
【0067】
この第二の実施形態におけるダストカバー60も樹脂にて形成されている。ダストカバー60の上端には、実質的に円環板状をなすスプリングシートクッション部60Aが一体的に形成されており、スプリングシートクッション部60Aは外筒部材18Cのフランジ部18Fの下面に当接している。外筒部材18Cのフランジ部18Fは第一の実施形態におけるアッパスプリングシート52と同様に機能し、スプリングシートクッション部60Aは第一の実施形態におけるスプリングシートクッション58と同様に機能する。
【0068】
ロアスプリングシート54上にはゴム製のロアスプリングシートクッション110が配置されている。スプリングシートクッション部60A及びロアスプリングシートクッション110は、圧縮コイルばね56のばね力により、それぞれ外筒部材18Cのフランジ部18Fの下面及びロアスプリングシート54の上面に対し押圧された状態にて支持されている。ショックアブソーバ16により発生される減衰力は、ロッド部14Rから内筒部材18B、ゴムブッシュ18D及び外筒部材18Cを経て車体22へ伝達される。これに対し、圧縮コイルばね56のばね力は、スプリングシートクッション部60A及び外筒部材18Cのフランジ部18Fを経て車体22へ伝達され、車体22へのばね力の入力は車体22への減衰力の入力から分離されている。
【0069】
図9に示されているように、この実施形態のショックアブソーバ16は、単筒式のショックアブソーバである。シリンダ12内にてピストン14の本体部14Mとエンドキャップ64との間には、フリーピストン112が配置されている。フリーピストン112は軸線12Aに沿ってシリンダ12に対し変位可能であり、本体部14Mと共働してシリンダ下室70を形成し、エンドキャップ64と共働してガス室114を形成している。ガス室114には窒素のようなガス78が封入されている。ショックアブソーバ16の伸縮に伴ってシリンダ12内に存在するロッド部14Rの体積が変化するので、ガス室114内のガス78はシリンダ12内に存在するロッド部14Rの体積の変化を吸収する。
【0070】
図4に示された複筒式のショックアブソーバの場合と同様に、ピストン14の本体部14Mには、伸び行程用の減衰力発生弁80及び縮み行程用の減衰力発生弁82が設けられている。減衰力発生弁80及び82は、それぞれ第一の実施形態の減衰力発生弁80及び82と同様に構成され、同様に減衰力を発生する。第一の実施形態の場合と同様に、シリンダ12の長手方向中央部の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Aが周方向に延在するよう接着により固定されている。しかし、シリンダ12の下端部の表面には、自己放電式除電器は固定されていない。
【0071】
なお、
図9においても、ピストン14は、車両が標準の積載状態にあるときの位置、即ち標準位置にて示されている。ピストン14が標準位置にあるときに本体部14Mが存在する軸線12に沿う方向の範囲を所定の範囲88として、この実施形態における自己放電式除電器90Aは、所定の範囲88内にてシリンダ12の表面に固定されている。
【0072】
図8に示されているように、スプリングシートクッション部60Aの円筒状の外面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Cが周方向に延在するよう接着により固定されている。第一の実施形態の場合と同様に、ピストン14のロッド部14の上端を支持するアッパサポート18の外筒部材18Cの上面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Eが接着により固定されている。
【0073】
車両の一般的な帯電状況について見て、スプリングシートクッション部60A及び外筒部材18Cの互いに当接する部分のうち、除電器90Cのアルミ箔の中央に最も近い部位は、除電器90Cの除電の効果が及ぶ面方向の範囲内にある。更に、シリンダ12は、除電器90Aの除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲内にあり、アッパサポート18の外筒部材18Cは、除電器90Eの除電の効果が及ぶ厚さ方向の範囲内にある。
【0074】
従って、除電器90Cによる除電により、ダストブーツ60のスプリングシートクッション部60Aに帯電する正の電荷が低減されてスプリングシートクッション部60Aの電位が低下される。よって、ピストン14に帯電する正の電荷が外筒部材18Cを経てダストブーツ60へ移動することによって低減され、ピストン14の電位が低下される。ピストン14の電位は、除電器90Eによる除電により、アッパサポート18の外筒部材18Cの電位が低下されることによっても、低下される。更に、除電器90Aによる除電により、シリンダ12に帯電する正の電荷が低減され、これによりシリンダ12の電位が低下される。
【0075】
よって、第二の実施形態によれば、第一の実施形態の場合と同様に、シリンダ12及びピストン14に接するオイル76に帯電する正の電荷をシリンダ12及びピストン14へ移動させ、これによりオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。従って、オイル76に正の電荷が過剰に帯電することを防止することができるので、オイル76の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して過剰に高くなりショックアブソーバ16の減衰力が過大になることを防止することができる。
【0076】
特に、第二の実施形態によれば、自己放電式除電器90Aは、所定の範囲88内にてシリンダ12の表面に固定されている。よって、所定の範囲88に於けるシリンダ12の電荷を効率的に低減し、これによりピストン14が標準位置にあるときに本体部14Mが存在する領域の周りのオイル76の帯電量を効率的に低減することができる。なお、第二の実施形態においては、除電器90Aは、所定の範囲88内にてシリンダ12の表面に固定されているが、除電器90Aの一部又は全部が、所定の範囲88外に位置していてもよい。その場合にも、シリンダ12の電荷を低減することによって、シリンダ12内のオイル76の帯電量を低減することができる。
【0077】
第一の実施形態の場合と同様に、本願発明者が実際の車両について行った実験により、以下の効果を確認することができた。即ち、自己放電式除電器90A、90D及び90Eが設けられていない場合には、シリンダ12内のオイル76の電位は数百乃至千ボルト程度にまで上昇した。これに対し、第二の実施形態の構成によれば、オイル76の電位は数十ボルト程度にまでしか上昇せず、オイル76の適正な粘性を確保することができた。
【0078】
[第三の実施形態]
図10及び
図11は、複筒型の減衰力可変式のショックアブソーバとして構成された本発明の第三の実施形態にかかる減衰力発生装置10におけるショックアブソーバ16の概略を示す拡大断面図である。特に、
図10は伸び行程を示し、
図11は縮み行程を示している。第三の実施形態のショックアブソーバ16は、所謂ユニフロー型の減衰力可変式ショックアブソーバとして構成されている。
【0079】
図10及び
図11に示されているように、内側シリンダ12Xと外側シリンダ12Yとの間には、これらのシリンダと同心に軸線12Aに沿って延在する金属製の中間シリンダ12Mが配置されている。中間シリンダ12Mは、内側シリンダ12X及び外側シリンダ12Yから径方向に隔置され、上端及び下端において内側シリンダ12Xに溶接などの手段によって固定され、これにより内側シリンダ12Xとの間に環状空間100を形成している。環状空間100の上端部は内側シリンダ12Xに設けられた連通孔98によりシリンダ上室68と接続されている。
【0080】
中間シリンダ12M及び外側シリンダ12Yには、軸線12Aに垂直に延在する金属製の導管102が溶接などの手段によって固定されている。導管102は一端にて環状空間100と連通し、他端にて実効通路断面積可変装置104内に設けられた内部通路106の一端に接続されている。内部通路106は他端にて環状室74と連通し、一端と他端との間に可変オリフィス108を有している。
【0081】
よって、環状空間100、導管102及び内部通路106は、ピストン14のロッド部14Rが存在するシリンダ上室68とリザーバ室としての環状室74とを接続し途中に可変オリフィス108を有するバイパス通路110を形成している。
図10及び
図11において矢印にて示されているように、バイパス通路110は環状空間100から環状室74へ向かうオイル76の流れのみを許容する。
【0082】
実効通路断面積可変装置104のハウジング112は、金属にて形成され、軸線12Aに垂直に延在する実質的に円柱状をなしている。ハウジング112は溶接などの手段によって外側シリンダ12Yに固定されており、ハウジング112内には電磁アクチュエータ114が収容されている。電磁アクチュエータ114は、図には示されていない電子制御装置によって制御され、可変オリフィス108の図には示されていない弁要素を駆動することによって可変オリフィス108の実効通路断面積を変化させる。実効通路断面積可変装置104は、バイパス通路110を通過する作動液体としてのオイル76からハウジング112へ電荷が移動可能であるよう構成されている。
【0083】
なお、実効通路断面積可変装置104は、バイパス通路110の途中に設けられた可変オリフィス108を有し、制御によって可変オリフィス108の実効通路断面積を変化させることができる限り、任意の構造を有していてよい。必要ならば、実効通路断面積可変装置104の具体例として、例えば特開2007−225111号公報、特開平11−30265号公報及び特開平6−3396号を参照されたい。
【0084】
図10及び
図11と
図4との比較から解るように、この実施形態においては、ピストン14の本体部14Mには、縮み行程用の減衰力発生弁82は設けられているが、伸び行程用の減衰力発生弁80は設けられていない。逆に、ベースバルブ組立体66には、伸び行程用の減衰力発生弁84は設けられているが、縮み行程用の減衰力発生弁86は設けられていない。
【0085】
よって、ショックアブソーバ16の伸び行程においては、
図10において矢印にて示されているように、シリンダ上室68内のオイル76がバイパス通路110を経て環状室74へ移動する。更に、オイル76はベースバルブ室72及びベースバルブ組立体66の伸び行程用の減衰力発生弁84を経てシリンダ下室70へ移動する。従って、オイル76がバイパス通路110に設けられた可変オリフィス108を通過する際の流通抵抗及びオイル76が減衰力発生弁84を通過する際の流通抵抗によって、伸び行程の減衰力が発生される。
【0086】
これに対し、ショックアブソーバ16の縮み行程においては、
図11において矢印にて示されているように、シリンダ下室70内のオイル76が減衰力発生弁82を経てシリンダ上室68へ移動する。内側シリンダ12X内に存在するピストン14のロッド部14Rの体積が増大するので、その体積に相当するオイル76がシリンダ上室68からバイパス通路110を経て環状室74へ移動する。従って、オイル76が減衰力発生弁82を通過する際の流通抵抗及びオイル76がバイパス通路110に設けられた可変オリフィス108を通過する際の流通抵抗によって、縮み行程の減衰力が発生される。
【0087】
以上の説明から解るように、ショックアブソーバ16の伸び行程及び縮み行程の何れにおいても、オイル76はシリンダ上室68からバイパス通路110を経て環状室74へ一方向に移動する。従って、可変オリフィス108は伸び行程及び縮み行程に共通の減衰力発生弁として機能し、可変オリフィス108の実効通路断面積が電磁アクチュエータ114によって制御されることにより、伸び行程及び縮み行程の減衰力が変化される。
【0088】
上述の第一及び第二の実施形態の場合と同様に、シリンダ12の外側シリンダ12Yの長手方向中央部及び下端部の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器90A及び90Bが周方向に延在するよう接着により固定されている。実効通路断面積可変装置104のハウジング112の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Iが周方向に延在するよう接着により固定されている。なお、
図10及び
図11には示されていないが、上述の第一の実施形態の場合と同様に、ピストン14のロッド部14の上端を支持するアッパサポートの外筒部材の上面などにも、短冊状をなす自己放電式除電器が接着により固定されている。
【0089】
第三の実施形態によれば、上述の第一の実施形態の場合と同様に、自己放電式除電器90Aなどによって内側シリンダ12X、外側シリンダ12Y及びピストン14を除電することができる。よって、ショックアブソーバ16内のオイル76に帯電する正の電荷を外側シリンダ12Y及びピストン14などへ移動させ、これによりショックアブソーバ16内のオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。
【0090】
特に、第三の実施形態によれば、自己放電式除電器90Iによって実効通路断面積可変装置104のハウジング112が除電され、伸び行程及び縮み行程の何れにおいても、オイル76はシリンダ上室68からバイパス通路110を経て環状室74へ移動する。よって、バイパス通路110を流れるオイル76に帯電する正の電荷を、実効通路断面積可変装置104のハウジング112へ移動させ、これによりバイパス通路110を経て循環するオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。従って、ハウジング112の表面に自己放電式除電器90Iが固定されていない場合に比して、オイル76に電荷が帯電することに起因してショックアブソーバ16の減衰力が過大になることを効果的に防止することができる。
【0091】
[第四の実施形態]
図12は、単筒型の減衰力可変式のショックアブソーバとして構成された本発明の第四の実施形態にかかる減衰力発生装置10におけるショックアブソーバ16の概略を示す拡大断面図である。
【0092】
図12と
図9〜
図11との比較から解るように、第四の実施形態のショックアブソーバ16は、単筒型の減衰力可変式のショックアブソーバとして構成されている。シリンダ上室68には、第一の導管118の一端が接続され、第一の導管118の他端は第一の実効通路断面積可変装置120内に設けられた内部通路122の一端に接続されている。内部通路122は他端にてシリンダ下室70に接続され、内部通路122の一端と他端との間には第一の可変オリフィス124及び第一の逆止弁126が設けられている。逆止弁126は、オイル76がシリンダ上室68からシリンダ下室70へ移動することを許容するが、オイル76がシリンダ下室70からシリンダ上室68へ移動することを阻止する。
【0093】
同様に、シリンダ上室68には、第二の側導管128の一端が接続され、第二の側導管128の他端は第二の実効通路断面積可変装置130内に設けられた内部通路132の一端に接続されている。内部通路132は他端にてシリンダ下室70に接続され、内部通路132の一端と他端との間には第二の可変オリフィス134及び第二の逆止弁136が設けられている。逆止弁136は、オイル76がシリンダ下室70から内部通路132を経てシリンダ上室68へ移動することを許容するが、オイル76がシリンダ上室68から内部通路132を経てシリンダ下室70へ移動することを阻止する。
【0094】
第一の導管118及び内部通路122は、シリンダ上室68とシリンダ下室70とを接続し途中に第一の可変オリフィス124及び第一の逆止弁126を有する第一のバイパス通路138を形成している。同様に、第二の導管128及び内部通路132は、シリンダ上室68とシリンダ下室70とを接続し途中に第二の可変オリフィス134及び第二の逆止弁136を有する第二のバイパス通路140を形成している。
【0095】
第一の実効通路断面積可変装置120のハウジング142は、金属にて形成され、軸線12Aに垂直に延在する実質的に円柱状をなしている。ハウジング142は溶接などの手段によってシリンダ12に固定されており、ハウジング142内には電磁アクチュエータ144が収容されている。電磁アクチュエータ144は、図には示されていない電子制御装置によって制御され、第一の可変オリフィス124の図には示されていない弁要素を駆動することによって第一の可変オリフィス124の実効通路断面積を変化させる。第一の実効通路断面積可変装置120は、第一のバイパス通路138を通過するオイル76からハウジング142へ電荷が移動可能であるよう構成されている。
【0096】
同様に、第二の実効通路断面積可変装置130のハウジング146は、金属にて形成され、軸線12Aに垂直に延在する実質的に円柱状をなしている。ハウジング146は溶接などの手段によってシリンダ12に固定されており、ハウジング146内には電磁アクチュエータ148が収容されている。電磁アクチュエータ148は、図には示されていない電子制御装置によって制御され、第二の可変オリフィス134の図には示されていない弁要素を駆動することによって第二の可変オリフィス134の実効通路断面積を変化させる。第二の実効通路断面積可変装置130は、第二のバイパス通路140を通過するオイル76からハウジング146へ電荷が移動可能であるよう構成されている。
【0097】
ショックアブソーバ16の伸び行程においては、
図10において破線の矢印にて示されているように、シリンダ上室68内のオイル76がピストン14の本体部14Mに設けられた伸び行程用の減衰力発生弁80を経てシリンダ下室70へ移動する。更に、シリンダ上室68内のオイル76が第一のバイパス通路138を経てシリンダ下室70へ移動する。従って、オイル76が減衰力発生弁80を通過する際の流通抵抗及びオイル76が第一のバイパス通路138に設けられた第一の可変オリフィス126を通過する際の流通抵抗によって、伸び行程の減衰力が発生される。伸び行程の減衰力は、第一の可変オリフィス126の実効通路断面積が電磁アクチュエータ144によって制御されることにより変化される。
【0098】
特に、第一の可変オリフィス126の実効通路断面積が減衰力発生弁80の実効通路断面積よりも小さい状況においては、オイル76は減衰力発生弁80を優先的に通過する。しかし、第一の可変オリフィス126の実効通路断面積が減衰力発生弁80の実効通路断面積よりも大きい状況においては、オイル76は第一の可変オリフィス126を優先的に通過する。
【0099】
これに対し、ショックアブソーバ16の縮み行程においては、
図10において実線の矢印にて示されているように、シリンダ下室70内のオイル76がピストン14の本体部14Mに設けられた縮み行程用の減衰力発生弁82を経てシリンダ上室68へ移動する。更に、シリンダ下室70内のオイル76が第二のバイパス通路140を経てシリンダ上室68へ移動する。従って、オイル76が減衰力発生弁82を通過する際の流通抵抗及びオイル76が第二のバイパス通路140に設けられた第二の可変オリフィス134を通過する際の流通抵抗によって、縮み行程の減衰力が発生される。縮み行程の減衰力は、第二の可変オリフィス134の実効通路断面積が電磁アクチュエータ148によって制御されることにより変化される。
【0100】
伸び行程の場合と同様に、第二の可変オリフィス134の実効通路断面積が減衰力発生弁82の実効通路断面積よりも小さい状況においては、オイル76は減衰力発生弁82を優先的に通過する。しかし、第二の可変オリフィス134の実効通路断面積が減衰力発生弁82の実効通路断面積よりも大きい状況においては、オイル76は第二の可変オリフィス134を優先的に通過する。
【0101】
上述の他の実施形態の場合と同様に、シリンダ12の外側シリンダ12Yの長手方向中央部の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Aが周方向に延在するよう接着により固定されている。第一及び第二の実効通路断面積可変装置120及び130のハウジング142及び146の表面には、それぞれ短冊状をなす自己放電式除電器90J及び90Kが周方向に延在するよう接着により固定されている。なお、
図12には示されていないが、上述の他の実施形態の場合と同様に、ピストン14のロッド部14の上端を支持するアッパサポートの外筒部材の上面などにも、短冊状をなす自己放電式除電器が接着により固定されている。
【0102】
第四の実施形態によれば、上述の第二の実施形態の場合と同様に、自己放電式除電器90Aなどによってシリンダ12及びピストン14を除電することができる。よって、シリンダ上室68及びシリンダ下室70内のオイル76に帯電する正の電荷をシリンダ12及びピストン14などへ移動させ、これによりシリンダ上室68及びシリンダ下室70内のオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。
【0103】
特に、第四の実施形態によれば、自己放電式除電器90Jによって第一の実効通路断面積可変装置120のハウジング142が除電され、自己放電式除電器90Kによって第二の実効通路断面積可変装置130のハウジング146が除電される。よって、第一及び第二のバイパス通路138及び140を流れるオイル76に帯電する正の電荷を、それぞれハウジング142及び146へ移動させ、これによりオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。従って、ハウジング142及び146の表面にそれぞれ自己放電式除電器90J及びKが固定されていない場合に比して、オイル76に電荷が帯電することに起因してショックアブソーバ16の減衰力が過大になることを効果的に防止することができる。
【0104】
以上の説明から解るように、上述の各実施形態における除電器90Aなどは、所謂イオン分離式の非アース型の自己放電式除電器である。即ち、除電器90Aなどは、コロナ放電により空気を正の空気イオンと負の空気イオンとに分離し、減衰力発生装置10の構成部材に帯電する正の電荷と負の空気イオンとの電気的中和によって除電を行い、電気的なアースのための配線を必要としない。従って、前述の特許文献に記載された静電気除去装置が使用される場合に比して、減衰力発生装置10における除電のための構造を単純化すると共に、除電を達成するために必要なコストを大幅に低減することができる。
【0105】
特に上述の各実施形態によれば、除電器90Aなどによってシリンダ12の電荷の帯電量を低減すると共に、除電器90Cなどによってピストン14の電荷の帯電量を低減することができる。よって、電荷の帯電量の低減がシリンダ12及びピストン14の一方においてしか行われない場合に比して、オイル76の電荷の帯電量を効果的に低減することができ、これによりショックアブソーバ16の減衰力が過大になることを効果的に防止することができる。
【0106】
また、第一の実施形態においては、除電器90C及び90Dは、それぞれ樹脂製のスプリングシートクッション58の外周部及び樹脂製のダストブーツ60の取り付け部60Aの外周部に固定されている。同様に、第二の実施形態においては、除電器90Dは、樹脂製のダストブーツ60のスプリングシートクッション部60Aの外周部に固定されている。樹脂製の部材に帯電する電荷の量は金属製の部材に帯電する電荷の量よりも多いので、除電器が金属製の部材に固定される場合に比して、部材の除電を効果的に行わせることができる。よって、樹脂製の部材を除電し、ピストン14に帯電する電荷を、ロッド部14Rを経て樹脂製の部材へ移動させることにより、ピストン14の電荷の帯電量を効率的に低減することができる。
【0107】
また、第一及び第二の実施形態によれば、自己放電式除電器が樹脂製のスプリングシートクッション58及び/又はダストブーツ60に設置される場合にも、除電器はそれらの部材に直接接着により固定される。よって、除電器を固定するための特別な部材を追加する必要がないので、減衰力発生装置10の構造の複雑化やコストアップを将来することなく、ショックアブソーバ16のオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。なお、スプリングシートクッション58及び/又はダストブーツ60はゴム製であっても、第一及び第二の実施形態の場合と同様に自己放電式除電器を固定することにより、オイル76の電荷の帯電量を低減できることが確認されている。
【0108】
また、第三及び第四の実施形態によれば、減衰力可変式のショックアブソーバ16において、バイパス通路110に設けられた可変オリフィス108などの実効通路断面積を変化させる実効通路断面積可変装置104などの表面に自己放電式除電器90Iなどが設けられている。従って、可変オリフィス108などを通過する作動液体の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して高くなり減衰力が過剰になることを効果的に防止することができる。
【0109】
更に、上述の各実施形態によれば、除電器90Aなどは、導電性の金属箔92に導電性の粘着剤94が付着されたテープの形態をなし、除電されるべき部材に対する除電器の固定は、金属箔92を粘着剤94にて部材に接着することにより行われる。よって、除電されるべき部材の表面に除電を行う金属箔を接着により容易に固定することができる。更に、粘着剤の層は導電性を有するので、粘着剤の層が導電性を有しない場合に比して、特定の部材から金属箔への電荷の移動を効率的に行わせ、これにより除電の効果を高くすることができる。なお、粘着剤の層の厚さが数十〜数百μm程度であれば、粘着剤の層が導電性を有していなくても、電荷は特定の部材から金属箔へ移動することができる。よって、粘着剤の層は導電性を有していなくてもよい。
【0110】
以上においては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0111】
例えば、上述の各実施形態においては、ショックアブソーバ16を構成する部材及びショックアブソーバに接続された付属部材に、自己放電式除電器90Aなどが固定されているが、何れかの除電器が省略されてもよい。
【0112】
同様に、上述の第二の実施形態においては、ショックアブソーバ16を構成する部材及びショックアブソーバに接続された付属部材に、自己放電式除電器90A、90D及び90Eが固定されているが、除電器90A、90D及び90Eの何れかが省略されてもよい。
【0113】
また、上述の各実施形態における除電器90Aなどは、ショックアブソーバ16の軸線12Aに対し車両の後方側のような特定の位置に固定されている。しかし、除電器が固定される軸線12Aの周りの位置は、上記実施形態の位置でなくてもよい。
【0114】
また、除電器が固定される数や延在方向は、上述の各実施形態における数や延在方向に限定されない。例えば、
図13に修正例として示されているように、ロアスプリングシート54の下方にてシリンダ12に固定される除電器90Aは複数であってもよく、また、除電器90Aは軸線12Aに沿って延在するよう固定されてもよい。更に、第一の実施形態のように、シリンダ12の下端部にブラケット24が固定されている場合には、ブラケット24に自己放電式除電器90Fが固定されてもよい。
【0115】
特に、第一及び第三の実施形態のように、ショックアブソーバ16が複筒式のショックアブソーバである場合には、シリンダ12の上端に近接して外側シリンダ12Yの表面又はエンドキャップ62の表面に自己放電式除電器90Gが固定されてもよい。その場合には、第一の実施形態の場合よりも効率的に、外側シリンダ12Yの上端又はエンドキャップ62を除電し、これにより内側シリンダ12X及びその内部のオイル76の電荷の帯電量を効率的に低減することができる。更に、アッパスプリングシート52の外周部に自己放電式除電器90Hが固定されてもよい。
【0116】
また、第一の実施形態のショックアブソーバ16は、複筒式であるが、単筒式のショックアブソーバであってもよい。同様に、第二の実施形態のショックアブソーバ16は、単筒式であるが、複筒式ショックアブソーバであってもよい。
【0117】
また、上述の第四の実施形態においては、第一の可変オリフィス124及び第二の可変オリフィス134の実効通路断面積は、それぞれ対応する電磁アクチュエータ144及び電磁アクチュエータ148により制御されるようになっている。しかし、例えば第一の可変オリフィス124及び第二の可変オリフィス134が一つのスプール弁により形成され、スプール弁が一つの電磁アクチュエータによって駆動されるよう修正されてもよい。その場合には、実効通路断面積可変装置は一つでよいので、上述の第四の実施形態に比して部品点数を低減し、自己放電式除電器の数も低減することができる。
【0118】
また上述の実施形態においては、サスペンションはマクファーソンストラット式のサスペンションである。しかし、本発明の減衰力発生装置が適用されるサスペンションは、例えばダブルウイッシュボーン式のサスペンション、トレーリングアーム式のサスペンション、車軸式のサスペンションのような他の任意の形式のサスペンションであってもよい。