特開2016-141190(P2016-141190A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016141190-ラックガイド機構 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-141190(P2016-141190A)
(43)【公開日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】ラックガイド機構
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20160711BHJP
【FI】
   B62D3/12 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-16911(P2015-16911)
(22)【出願日】2015年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 温嗣
(57)【要約】
【課題】単体の弾性部材を用いて、通常時における良好な操舵感の確保と非常時におけるピニオン軸とラック軸の速やかな噛合の復元との両立を図れるラックガイド機構を提供する。
【解決手段】ハウジング11と、ハウジング11に移動自在に収容されラック軸6を支持するラックガイド13と、ハウジング11に取り付けられるスクリュー14と、ラックガイド13とスクリュー14との間に介設され、ラックガイド13をラック軸6に付勢する弾性部材15と、を有するラックガイド機構10であって、弾性部材15は、ラックガイド13とスクリュー14とにより常時挟持される円筒部25と、ラックガイド13がスクリュー14側に所定距離、移動したときに、ラックガイド13とスクリュー14とにより挟持されるフランジ部26と、を一体成形により備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに移動自在に収容されラック軸を支持するラックガイドと、
前記ハウジングに取り付けられる蓋部材と、
前記ラックガイドと前記蓋部材との間に介設され、前記ラックガイドを前記ラック軸に付勢する弾性部材と、
を有するラックガイド機構であって、
前記弾性部材は、
前記ラックガイドと前記蓋部材とにより常時挟持される第1弾性部と、
前記ラックガイドが前記蓋部材側に所定距離、移動したときに、前記ラックガイドと前記蓋部材とにより挟持される第2弾性部と、
を一体成形により備えていることを特徴とするラックガイド機構。
【請求項2】
前記第1弾性部は、両端が開口形成され、前記ラックガイドの移動方向を軸方向として前記ラックガイドの収容穴に収容される筒状の円筒部からなり、
前記第2弾性部は、前記第1弾性部の端部において径外方向に延設されるフランジ部からなり、
通常時、前記ラックガイドと前記フランジ部との間に隙間が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のラックガイド機構。
【請求項3】
前記収容穴の内周面と前記円筒部の外周面との間に液状体が介在されていることを特徴とする請求項2に記載のラックガイド機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックガイド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックアンドピニオン式のステアリング装置として、ハウジングと、ピニオンギヤが形成されステアリングホイールの操作力が伝達されるピニオン軸と、ピニオンギヤと噛合するラックギヤが形成されたラック軸と、ラック軸の移動方向を案内し、かつラック軸を弾性復元力によりピニオン軸に向け付勢するラックガイド機構と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ラックガイド機構は、ハウジングに摺動可能に設けられるラックガイドと、ハウジングに螺合されるスクリュー(蓋部材)と、ラックガイドとスクリューとの間に設けられ、常にラック軸がピニオン軸に押し付けられるようにラックガイドを付勢する圧縮コイルばねと、を備えて構成されている。ラック軸がピニオン軸に押圧付勢されることにより、ピニオンギヤとラックギヤとの間のバックラッシュを小さくすることができ、ステアリングホイールの操作力を確実にラック軸に伝達することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−370654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラック軸に大きな外力がかかった場合、ラック軸とピニオン軸とが大きく離反することがある。この離反状態を速やかに元に戻す方法として、圧縮コイルばねの弾性力(ばねレート)を上げる方法が考えられる。しかしながら、この方法は、ラックガイドをラック軸に押圧付勢する力が常に強くなってしまうことから、ラック軸の摺動抵抗が大きくなり、操舵感が悪くなりやすいという問題がある。
【0006】
これに対し、ラックガイドとスクリューとの間に、圧縮コイルばねに加えて、皿ばねを介在させる技術が知られている。図4はその説明図であり、符号51はピニオン軸、符号52はラック軸、符号53はラックガイド、符号54はスクリュー、符号55は圧縮コイルばね、符号56は皿ばね、符号57はハウジングを示している。ハウジング57には雌ねじ58が形成され、この雌ねじ58にスクリュー54の雄ねじ59が螺合している。図4の構造では、通常時、またはラック軸52に比較的弱い外力が作用している範囲においては、圧縮コイルばね55の弾性復元力のみでラックガイド53を付勢する。そして、ラック軸52に大きな外力が作用してピニオン軸51とラック軸52とが大きく離反したときは圧縮コイルばね55の弾性復元力に加えて皿ばね56の弾性復元力をラックガイド53に作用させる。これにより、通常時における良好な操舵感の確保と非常時におけるピニオン軸51とラック軸52の速やかな噛合の復元とを両立している。
【0007】
しかしながら、圧縮コイルばね55の他に皿ばね56を用いる構造は、部品点数の増加となるため、ラックガイド機構の組み付け作業に手間がかかるという問題がある。
【0008】
また、皿ばね56は高さ寸法が低いため、皿ばね56の圧縮量のストローク、すなわちスクリュー54のねじ締め量の調整ストロークが微小なものとなり、皿ばね56の圧縮量の初期設定が難しいという問題がある。
さらに、組み付け時に皿ばね56の外縁が前記雌ねじ58に引っ掛かり、皿ばね56がラックガイド53とスクリュー54とに正しく挟持されないおそれがある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、単体の弾性部材を用いて、通常時における良好な操舵感の確保と非常時におけるピニオン軸とラック軸の速やかな噛合の復元との両立を図れるラックガイド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに移動自在に収容されラック軸を支持するラックガイドと、前記ハウジングに取り付けられる蓋部材と、前記ラックガイドと前記蓋部材との間に介設され、前記ラックガイドを前記ラック軸に付勢する弾性部材と、を有するラックガイド機構であって、前記弾性部材は、前記ラックガイドと前記蓋部材とにより常時挟持される第1弾性部と、前記ラックガイドが前記蓋部材側に所定距離、移動したときに、前記ラックガイドと前記蓋部材とにより挟持される第2弾性部と、を一体成形により備えていることを特徴とする。
【0011】
このラックガイド機構によれば、通常時、または、ラック軸に小さな外力が作用している場合においては、第1弾性部の弾性復元力のみがラックガイドに作用する。これにより、ラック軸は、ラックガイドの摺動面に対して大きな負荷を伴わずに円滑に摺動し、良好な操舵感が得られる。そして、ラック軸に大きな外力が作用した非常時には、第1弾性部の弾性復元力と第2弾性部の弾性復元力の両方がラックガイドに作用する。これにより、ピニオン軸から大きく離反したラック軸を速やかにピニオン軸側に戻すことができる。
第1弾性部と第2弾性部とが一体に成形されることで、部品点数が増えることがなく、ラックガイド機構の組み付け作業が容易となる。
【0012】
また、本発明は、前記第1弾性部は、両端が開口形成され、前記ラックガイドの移動方向を軸方向として前記ラックガイドの収容穴に収容される筒状の円筒部からなり、前記第2弾性部は、前記第1弾性部の端部において径外方向に延設されるフランジ部からなり、通常時、前記ラックガイドと前記フランジ部との間に隙間が設定されていることを特徴とする。
【0013】
このラックガイド機構によれば、弾性部材の形状およびレイアウト構造を簡単なものにできる。従来のように皿ばねを用いる必要がないため、皿ばねの外縁がハウジングの雌ねじに引っ掛かるという不都合も生じない。
【0014】
また、本発明は、前記収容穴の内周面と前記円筒部の外周面との間に液状体が介在されていることを特徴とする。
【0015】
このラックガイド機構によれば、収容穴の内周面と円筒部の外周面との間に液状体が介在することで、両者間の摺動抵抗を減らすことができ、収容穴に収容された際の円筒部の撚れを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通常時における良好な操舵感の確保と非常時におけるピニオン軸とラック軸の速やかな噛合の復元との両立を図るに当たり、単体の弾性部材で済むため、部品点数が増えることがなく、ラックガイド機構の組み付け性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電動パワーステアリング装置の概略構成図である。
図2】本発明に係るラックガイド機構の構成を示す断面図である。
図3】本発明に係るラックガイド機構の構成を示す断面図であり、第2弾性部がラックガイドとスクリューとにより挟持された状態を示す。
図4】従来のラックガイド機構の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施形態では、本発明のラックガイド機構が電動パワーステアリング装置に適用した例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、油圧式のパワーステアリング装置や、マニュアルのステアリング装置に適用してもよい。
【0019】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、2つのラックギヤ(ハンドル側)5b、ラックギヤ(アシスト側)5cが形成され、軸心O1に沿うラック軸6を有するステアリング機構2と、ラック軸6に補助操舵力を与える補助トルク機構3と、を備えたラックアシスト式の装置である。
【0020】
ステアリング機構2は、運転者が操作するステアリングホイール4aと、ステアリングホイール4aの操作により回転するステアリング軸4bと、ステアリング軸4bの下部側に図示しないトーションバーを介して設けられるピニオン軸4cと、両端にタイロッド7,7を介して左右の操舵車輪8、8が連結されるラック軸6と、を備えている。また、ピニオン軸4cのピニオンギヤ(ハンドル側)5aは、ラック軸6のラックギヤ5bに噛合している。そして、運転者がステアリングホイール4aを回転させると、ラック軸6が左右方向に移動して操舵車輪8,8が操舵される。
【0021】
補助トルク機構3は、アシスト用モータ30と、ウォームギヤ機構31と、ピニオンギヤ(アシスト側)32aが形成されたアシスト軸32と、を備え、アシスト軸32のピニオンギヤ(アシスト側)32aがラック軸6のラックギヤ5cに噛合している。ウォームギヤ機構31は、アシスト用モータ30に軸着されたウォーム33と、ウォーム33に噛合するウォームホイール34と、を備えている。ウォームホイール34はアシスト軸32に軸着されている。補助トルク機構3は、ステアリングホイール4aに加えられたトルクが図示しないトルクセンサで検出され、その検出したトルクに応じて図示しない制御装置によりアシスト用モータ30が駆動制御される。これにより、ウォームギヤ機構31およびアシスト軸32を介して、アシスト用モータ30の発生トルクが、補助操舵力としてラック軸6に伝達される。
【0022】
「ラックガイド機構10」
電動パワーステアリング装置1は、ピニオンギヤ5aとラックギヤ5bとのバックラッシュを低減させるため、図2に示すように、ラックガイド機構10を備えている。なお、本発明のラックガイド機構10は、補助トルク機構3におけるピニオンギヤ32aとラックギヤ5cとに対しても適用可能である。
【0023】
ラックガイド機構10は、ラック軸6に向かって開口する収容室12が形成されたハウジング11と、ハウジング11の収容室12に移動自在に収容されラック軸6を支持するラックガイド13と、ハウジング11に螺合して取り付けられ、収容室12の底壁を形成するスクリュー(蓋部材)14と、ラックガイド13とスクリュー14との間に介設され、ラックガイド13をラック軸6に付勢する弾性部材15と、を備えている。
【0024】
「ハウジング11」
ハウジング11は、ピニオン軸4cやラック軸6等の各種の構成部品を収容する筺体部材である。収容室12は、ラック軸6の収容位置から、ピニオン軸4cとは反対側に向けて軸心O2に沿って直線状に延びる略円柱状の貫通孔として形成されている。ラック軸6が収容されている部位を収容室12の一端側、ハウジング11の外部に向けて開口する部位を収容室12の他端側というものとすると、収容室12の他端側におけるハウジング11の内周面11aには、スクリュー14を螺合させるための雌ねじ11bが形成されている。
【0025】
「スクリュー14」
スクリュー14は、略短円柱状の部材であり、外周面に形成された雄ねじ14aが前記雌めじ11bに螺合することで収容室12の他端側を閉塞する。スクリュー14の外面14cには、スクリュー14の回転工具を差し込むための多角状の工具穴14bが形成されている。また、スクリュー14には、軸心O2方向に貫通する貫通孔14eが形成されている。この貫通孔14eは、スクリュー14の螺合後に、ラック軸6の押圧力を計測する測定子を通すための孔である。貫通孔14eは後にブッシュ16により閉塞される。スクリュー14がハウジング11に螺合された後、雄ねじ14aにはロックナット17が螺合される。
【0026】
「ラックガイド13」
ラックガイド13は、略円柱形状を呈した部材である。ラックガイド13は、その外周面がハウジング11の内周面11aに対向するようにして、軸心O2方向に沿って移動自在に収容室12に収容されている。ラックガイド13の外周面には、周方向に延びる環状の溝18が一対形成されており、各溝18には、内周面11aを摺動するOリング19が嵌合されている。
【0027】
ラックガイド13の一端面は、ラック軸6を軸心O2方向に摺動させる摺動面13aとして構成されており、ラック軸6の外周面に倣った略円弧状に形成されている。ラックガイド13の他端面13bには、ラック軸6寄りから順に、後記する円筒部25を収容するための収容穴(以降、円筒部収容穴という)20と、円筒部収容穴20の内径よりも大径に形成され、後記するフランジ部26を収容するためのフランジ部収容穴21とが、軸心O2を穴中心として形成されている。円筒部収容穴20とフランジ部収容穴21との間には環状の段差面22が形成される。
【0028】
「弾性部材15」
弾性部材15は、ラックガイド13とスクリュー14とにより常時挟持される第1弾性部23と、ラックガイド13がスクリュー14側に所定距離、移動したときに、ラックガイド13とスクリュー14とにより挟持される第2弾性部24と、を一体成形により備えている。本実施形態は、第1弾性部23は、両端が開口形成され、ラックガイド13の移動方向(軸心O2方向)を軸方向としてラックガイド13の円筒部収容穴20に収容される筒状の円筒部25として構成されている。第2弾性部24は、第1弾性部23の端部において径外方向に全周で延設されるフランジ部26として構成されている。弾性部材15の材質は例えば、ゴム材や樹脂材等である。
【0029】
円筒部25は、その一端面が円筒部収容穴20の穴底面27に突き当てられるとともに他端面がスクリュー14の内面14dに突き当てられていることにより、常時、軸心O2方向に圧縮された状態として円筒部収容穴20に収容されている。これにより、円筒部25の弾性復元力がラックガイド13に常時作用し、ラックガイド13がラック軸6側に常時押し付けられた状態となる。
【0030】
また、通常時(ラック軸6に大きな外力が加わっておらず、ピニオンギヤ5aとラックギヤ5bとが正常に噛合している状態時)において、ラックガイド13の段差面22とフランジ部26との間には隙間Cが設定されている。この隙間Cは、ラックガイド13の他端面13bとスクリュー14の内面14dとの間隔Dよりも小さく設定されている。フランジ部26の外周面とフランジ部収容穴21の内周面との間に若干の隙間Eが形成されるように、フランジ部26の外径はフランジ部収容穴21の内径よりも小さく設定されている。
【0031】
円筒部収容穴20の内周面と円筒部25の外周面との間には液状体28が介在されている。液状体28は、円筒部25を収容する前の段階で、例えば円筒部25の外周面に予め塗布されている。
【0032】
「作用」
図2に示すように、通常時、または、ラック軸6に外力がかかった場合であっても、ラックガイド13の段差面22がフランジ部26に当接しない範囲でピニオンギヤ5aとラックギヤ5bとが小さく離反した状態時においては、段差面22とフランジ部26との間に隙間Cが存在するため、フランジ部26は弾性変形しない。したがって、円筒部25の弾性復元力のみがラックガイド13に作用し、ラックガイド13をラック軸6側に押し付ける。
【0033】
ラック軸6に大きな外力がかかり、円筒部25の付勢力に抗してピニオンギヤ5aとラックギヤ5bとが大きく離反したときには、図3に示すように、ラックガイド13の段差面22がフランジ部26に突き当たり、フランジ部26がラックガイド13とスクリュー14とにより軸心O2方向に圧縮されるように挟持される。これにより、円筒部25の弾性復元力に加えて、フランジ部26の弾性復元力もラックガイド13に作用することとなり、大きな弾性復元力をもってラックガイド13をラック軸6側に押し付ける。フランジ部26の径外方向への弾性変形分は、フランジ部26の外周面とフランジ部収容穴21の内周面との間に形成された隙間Eに効果的に逃がすことができる。
【0034】
以上のように、弾性部材15を、ラックガイド13とスクリュー14とにより常時挟持される第1弾性部23と、ラックガイド13がスクリュー14に所定距離、移動したときに、ラックガイド13とスクリュー14とにより挟持される第2弾性部24と、を備える構成とすれば、次のような効果が奏される。
通常時、または、ラック軸6に小さな外力がかかった場合においては、第1弾性部23の弾性復元力のみがラックガイド13に作用する。したがって、ラック軸6は、ラックガイド13の摺動面13aに対して大きな負荷を伴わずに円滑に摺動し、良好な操舵感が得られる。そして、ラック軸6に大きな外力がかかった非常時には、第1弾性部23の弾性復元力と第2弾性部24の弾性復元力の両方をラックガイド13に作用させることで、ピニオン軸4cから大きく離反したラック軸6を速やかにピニオン軸4c側に戻すことができる。
【0035】
そして、第1弾性部23と第2弾性部24とを一体に成形したことで、部品点数の増加を抑制でき、ラックガイド機構10の組み付け作業が容易となる。
【0036】
また、第1弾性部23を円筒部25から構成し、第2弾性部24をフランジ部26から構成し、通常時、ラックガイド13とフランジ部26との間に隙間Cを設定した構成とすれば、弾性部材15の形状およびレイアウト構造を簡単なものにできる。従来のように皿ばねを用いる必要がないため、皿ばねの外縁が雌ねじ11bに引っ掛かるという不都合も生じない。
【0037】
また、円筒部収容穴20の内周面と円筒部25の外周面との間に液状体28(例えば、グリス等の油脂類)を介在させれば、次のような効果が奏される。スクリュー14をハウジング11に螺合したときには、弾性部材15の他端がスクリュー14の内面14dに圧着されているので、弾性部材15が供回りする。その際、円筒部25が円筒部収容穴20の内周面に擦れて拠れるおそれがある。これに対し、円筒部収容穴20の内周面と円筒部25の外周面との間に液状体28を介在させれば、円筒部25に生ずる回転抵抗を減らすことができ、円筒部25の撚れの発生を防止できる。
【符号の説明】
【0038】
1 電動パワーステアリング装置
4c ピニオン軸
6 ラック軸
10 ラックガイド機構
11 ハウジング
13 ラックガイド
14 スクリュー(蓋部材)
15 弾性部材
20 円筒部収容穴
21 フランジ部収容穴
23 第1弾性部
24 第2弾性部
25 円筒部
26 フランジ部
28 液状体
図1
図2
図3
図4