【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成27年1月15日、国土交通省が運営するウェブサイト「新技術情報提供システム」にて公開(掲載アドレス… http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Search/NtDetail1.asp?REG_NO=CB−140009&TabType=2&nt=nt)
【解決手段】金属管柱10の補強方法は、外周面に腐食部11を持つ金属管柱10を補強する方法であって、金属管柱10の腐食部11を除去する除去工程と、除去が行われた除去部13の周辺部に液状の樹脂40を塗布する第1塗布工程と、樹脂を含ませた棒状の繊維31を、除去部13を跨ぐように金属管柱10の表面に配置し、前記塗布された液状の樹脂40を介して棒状の繊維31を金属管柱10に接着する接着工程と、金属管柱10に接着された棒状の繊維31の表面に液状の樹脂41を塗布する第2塗布工程とを含む。
前記接着工程では、複数の前記棒状の繊維をシート状に並べて構成される可撓性の繊維強化プラスチックシートを前記金属管柱に巻き付け、前記塗布された液状の樹脂を介して前記繊維強化プラスチックシートを前記金属管柱に接着し、
前記第2塗布工程では、前記金属管柱に接着された前記繊維強化プラスチックシートの表面に液状の樹脂を塗布する
請求項1に記載の金属管柱の補強方法。
前記接着工程では、前記複数の棒状の繊維が前記金属管柱の周方向に並び、かつ、前記棒状の繊維の長さ方向が前記金属管柱の高さ方向と略一致するように、前記繊維強化プラスチックシートが前記金属管柱に巻き付けられる
請求項2に記載の金属管柱の補強方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明柱又は標識柱等には金属製の管柱(金属管柱)が用いられており、金属管柱は、通常、コンクリート基礎にボルト接合されるベースプレートをその下端部に溶接固定し、ベースプレートを地中に埋設することにより設置される。
【0003】
金属管柱は、設置されてから長期間経過すると、特に湿気や雨水が溜まりやすい地表面近くの部分の塗装またはめっきが剥離し、その剥離個所が雨水によって腐食して腐食部を形成することで弱くなることが知られている。腐食部を有する金属管柱は、強風や人が触れただけで腐食部を起点に折れ曲がる恐れがあり、非常に危険である。
【0004】
近年、このような腐食部を有する金属管柱が多くなっており、金属管柱の腐食部を補強する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、金属管柱の腐食部近傍の外周囲を取り巻き、金属管柱との間にモルタル充填空間が形成される補強管を備える補強材が開示されている。この補強材は、さらに、金属管柱の腐食部近傍の内部に上下方向に沿って挿入され、周方向に2分割された一対の半割り管と、金属管柱と同径で、一対の半割り管の周囲に嵌合されたリングとを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の補強材では、補強管に金属管柱が挿入されるため、補強管の内径は金属管柱の外径より大きくてはならない。また同様に、一対の半割り管は金属管柱に挿入されるため、一対の半割り管の外径は金属管柱の内径より小さくてはならない。従って、金属管柱の大きさに応じて異なる補強管及び半割り管を用意する必要があり、汎用性が低いという問題がある。
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、汎用性の高い金属管柱の補強方法及び補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る金属管柱の補強方法は、外周面に腐食部を持つ金属管柱を補強する方法であって、前記金属管柱の腐食部を除去する除去工程と、前記除去が行われた除去部の周辺部に液状の樹脂を塗布する第1塗布工程と、樹脂を含ませた棒状の繊維を、前記除去部を跨ぐように前記金属管柱の表面に配置し、前記塗布された液状の樹脂を介して前記棒状の繊維を前記金属管柱に接着する接着工程と、前記金属管柱に接着された前記棒状の繊維の表面に液状の樹脂を塗布する第2塗布工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記接着工程では、複数の前記棒状の繊維をシート状に並べて構成される可撓性の繊維強化プラスチックシートを前記金属管柱に巻き付け、前記塗布された液状の樹脂を介して前記繊維強化プラスチックシートを前記金属管柱に接着し、前記第2塗布工程では、前記金属管柱に接着された前記繊維強化プラスチックシートの表面に液状の樹脂を塗布してもよい。
【0009】
また、前記接着工程では、前記複数の棒状の繊維が前記金属管柱の周方向に並び、かつ、前記棒状の繊維の長さ方向が前記金属管柱の高さ方向と略一致するように、前記繊維強化プラスチックシートが前記金属管柱に巻き付けられてもよい。
【0010】
また、前記金属管柱の補強方法は、さらに、前記接着工程と前記第2塗布工程との間に、前記繊維強化プラスチックシートの表面において前記金属管柱にバンドを巻き付け、前記繊維強化プラスチックシートを前記金属管柱に押さえ付ける押さえ付け工程を含んでもよい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る金属管柱の補強構造は、上記金属管柱の補強方法によって、前記金属管柱の表面に前記棒状の繊維が接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、汎用性の高い金属管柱の補強方法及び補強構造を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
まず、本発明の実施形態に係る金属管柱の補強方法について、
図1〜2を用いて説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係る金属管柱10の補強方法を説明するための斜視図である。
【0015】
本実施形態に係る金属管柱10の補強方法は、設置されてから長期間経過し、地表面20近くの外周部分に錆等の腐食部11が発生した金属柱管10を補強する方法であって、可撓性の繊維強化プラスチックシート30を用いるものである。
【0016】
金属管柱10は、鋼、アルミニウム及びステンレス等から構成される管状の柱であり、外周面に灯具や看板が取り付けられると共に、その下端が地中に埋設されて、照明柱又は標識柱等を構成する。本実施形態において、金属管柱10の下端にはベースプレート12が溶接固定されており、ベースプレート12はコンクリート基礎にボルト接合されている(図示しない)。本実施形態の金属管柱10は円柱であるが、これに限定されず、多角形柱であってもよい。
【0017】
繊維強化プラスチックシート30は、
図2(a)に示すように、すだれ状のシートであり、樹脂を含侵させて強度(特に曲げ強度)向上が図られた棒状の繊維31をその長手方向と交差する方向、例えば直交する方向に複数本を並列配置し、配置された繊維31を連結部材32により連結して構成されている。従って、繊維強化プラスチックシート30は、繊維31の長さ方向で形状が変化し難く、繊維31の並び方向で形状が変化し易い可撓性のシートとなっている。このように繊維強化プラスチックシート30がすだれ状に構成されたことにより、金属管柱10への巻き付け易さと金属管柱10の強固な補強との両立が可能である。本実施形態において、連結部材32として紐を用い、繊維31として炭素繊維を用いている。
本実施形態の金属管柱10の補強方法では、まず、
図1(a)に示すように、外周部分に腐食部11を持つ金属管柱10が作業者の目視により確認される。
【0018】
次に、
図1(b)に示すように、腐食部11全体が露出するまで金属管柱10周囲の地表面20が掘削されて掘削部21が形成される。例えば、金属管柱10の地中に埋設されていた下部が全て露出し、金属管柱10の下端周囲のベースプレート12の少なくとも一部が露出する深さまで、金属管柱10周囲の地表面20が掘削される。掘削部21は、後述する作業を地表面20が支障しない程度の体積で形成されることが好ましい。
【0019】
次に、
図1(c)に示すように、腐食部11に対して研磨(ケレン)等が行われることにより腐食部11が全て除去される。この除去が行われた金属管柱10の部分である除去部13は
図1(c)で略長方形状であるが、腐食部11の形状に応じ、除去部13も種々の形状となる。このとき、腐食部11は金属管柱10の管厚み方向の浅くに留まり、除去部13として有底凹部が形成されている。
【0020】
次に、
図2(a)に示すように、金属管柱10における除去部13及び除去部13の外縁と同一高さに位置する第1塗布部分と、第1塗布部分の上下に位置する第2塗布部分(擦付け部分)とに液状の樹脂40が塗布される。例えば、金属管柱10における第1塗布部分の上端に隣接して位置する幅10mmの部分と、第1塗布部分の下端に隣接して位置する幅10mmの部分とを第2塗布部分として塗布が行われる。この塗布により、除去部13である有底凹部の空間は樹脂40によって埋められる。このため、除去部13の位置にて繊維強化プラスチックシート30を安定的に配置できる。
【0021】
このとき、樹脂40が塗布される第1塗布部分及び第2塗布部分に対して、金属管柱10の塗装またはめっきを除去するために、
図1(c)の腐食部11の除去が行われた後で、プライマーとしての液状の樹脂が塗布及び乾燥されてプライマー処理が行われることが好ましい。
【0022】
また、第1塗布部分及び第2塗布部分を合わせた塗布部分に確実に樹脂40が塗布されるように、塗布部分の上端と下端との距離は、繊維強化プラスチックシート30の幅(繊維31の長さ)より大きく、遊び領域がある距離であることが好ましい。この場合、繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10に巻き付けた後、繊維強化プラスチックシート30の上端及び下端の少なくともいずれかに樹脂40がはみ出て存在することとなる。
【0023】
次に、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、金属管柱10の塗布部分に繊維強化プラスチックシート30が巻き付けられ、樹脂40を接着剤として繊維強化プラスチックシート30が金属管柱10に接着される。
このとき、繊維強化プラスチックシート30の巻き付けにおいて、繊維31の長さ方向が金属管柱10の高さ方向と略一致するようにされることが好ましい。巻き付け作業を容易に行うことができるからである。
本実施形態では、巻き付け後、繊維強化プラスチックシート30における複数の繊維31間からは樹脂40がはみ出て存在する。なお、複数の繊維31間から樹脂40をはみ出させず、巻き付け後に塗布する後述の樹脂41が複数の繊維31間に入り込むようにすることもできる。
【0024】
上記巻き付けは、金属管柱10の全周を繊維強化プラスチックシート30が覆うように、つまり、繊維強化プラスチックシート30において長手方向(繊維31の並ぶ方向)における両端部が略一致するようにすることが好ましい。金属管柱10の全周を均一に補強できるからである。
【0025】
次に、
図2(c)に示すように、繊維強化プラスチックシート30の表面に液状の樹脂41が塗布され、繊維強化プラスチックシート30の表面が樹脂41により被覆され、保護される。この樹脂41の被覆による保護により、補強箇所の耐候性を向上できる。
【0026】
このとき、繊維強化プラスチックシート30の全面で確実に樹脂41が塗布されるように、繊維強化プラスチックシート30の上端及び下端からはみ出るように、樹脂41が塗布されることが好ましい。
【0027】
なお、上記金属管柱10の補強方法において、プライマーとしての樹脂と、接着剤としての樹脂40と、被覆材としての樹脂41とは、主剤及び硬化剤の混合比を変えた2液混合の同じ樹脂により構成することができる。例えば、プライマーとしての樹脂、樹脂40及び41はエポキシ樹脂を用いることができる。
【0028】
以上のように、本実施形態の金属管柱10の補強方法は、外周面に腐食部11を持つ金属管柱10を補強する方法であって、金属管柱10の腐食部11を除去する除去工程(
図1(c))を含む。そして、同補強方法は、さらに、除去が行われた除去部13の周辺部に液状の樹脂40を塗布する第1塗布工程(
図2(a))を含む。そして、同補強方法は、さらに、樹脂を含ませた複数の棒状の繊維31をシート状に並べて構成される可撓性の繊維強化プラスチックシート30を、除去部13を覆うように金属管柱10に巻き付け、液状の樹脂40を介して繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10に接着する接着工程(
図2(a)及び
図2(b))を含む。そして、同補強方法は、さらに、金属管柱10に接着された繊維強化プラスチックシート30の表面に液状の樹脂41を塗布する第2塗布工程(
図2(c))を含む。
【0029】
このような構成により、可撓性の繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10に巻き付けて金属管柱10の補強を行うため、特許文献1のように、金属管柱10の大きさに応じた大きさの部材を用意する必要がない。従って、特許文献1と比較して、汎用性の高い金属管柱10の補強方法を提供することができる。
【0030】
また、本実施形態の金属管柱10の補強方法の接着工程では、複数の棒状の繊維31が金属管柱10の周方向に並び、かつ、棒状の繊維31の長さ方向が金属管柱10の高さ方向と略一致するように、繊維強化プラスチックシート30が金属管柱10に巻き付けられる。
【0031】
このような構成により、金属管柱10がより折れ曲がり難くなるように繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10に巻き付けることができ、金属管柱10を強固に補強することができる。
また、本実施形態の金属管柱10の補強構造は、上記金属管柱10の補強方法によって、金属管柱10の表面に棒状の繊維31が接着された構造であって、腐食部11を持っていた金属管柱10が強固に補強されている。
(変形例)
【0032】
次に、本実施形態の変形例に係る金属管柱10の補強方法について、
図3を用いて説明する。以下、上記実施形態の金属管柱10の補強方法と異なる点を中心に説明する。
図3は、本変形例に係る金属管柱10の補強方法を説明するための斜視図である。
【0033】
本変形例の金属管柱10の補強方法が上記実施形態の金属管柱10の補強方法と異なる点は、繊維強化プラスチックシート30が金属管柱10に巻き付けられた後で繊維強化プラスチックシート30の表面を樹脂41で被覆する前に、繊維強化プラスチックシート30の上から金属管柱10にバンド50を巻き付ける点である。それ以外の構成は、上記実施形態に係る金属管柱10の補強方法と同じである。
【0034】
バンド50は、可撓性の針金、金属バンド又は樹脂バンド等である。バンド50は、金属管柱10に巻き付けた後、巻き付け状態を固定することにより使用される。
【0035】
本変形例の金属管柱10の補強方法では、まず、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、樹脂40を接着剤として金属管柱10に繊維強化プラスチックシート30が巻き付けられる。
【0036】
次に、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10の外周面に押さえ付けるように、繊維強化プラスチックシート30の上から金属管柱10にバンド50が巻き付けられる。本実施形態において、同じ構成のバンド50が2つ用意され、一方が繊維強化プラスチックシート30の上部を押さえ付け、他方が繊維強化プラスチックシート30の下部を押さえ付けるように金属管柱10に巻き付けられている。
【0037】
このとき、バンド50の巻き付けは、繊維強化プラスチックシート30の隣り合う繊維31の隙間に樹脂40が押し出される強さで行われる。これにより、繊維31と金属管柱10との間だけでなく、複数の繊維31の間にも押し出された樹脂40が存在するようになるため、繊維強化プラスチックシート30をより強固に金属管柱10に接着することができる。
【0038】
次に、
図3(c)に示すように、バンド50及び繊維強化プラスチックシート30の表面に液状の樹脂41が塗布され、バンド50及び繊維強化プラスチックシート30の表面が樹脂41により被覆され、保護される。この樹脂41の被覆による保護により、補強箇所の耐候性を向上できる。
【0039】
以上のように、本変形例の金属管柱10の補強方法は、接着工程(
図2(a)及び
図2(b))と第2塗布工程(
図3(c))との間に、繊維強化プラスチックシート30の表面において金属管柱10にバンド50を巻き付け、繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10に押さえ付ける押さえ付け工程(
図3(a)及び
図3(b))を含む。
【0040】
このような構成により、バンド50の巻き付けにより、金属管柱10における樹脂40が塗布された部分に繊維強化プラスチックシート30を強く押さえ付けることができるため、繊維強化プラスチックシート30をより強固に金属管柱10に接着することができる。
【0041】
また、繊維強化プラスチックシート30の金属管柱10への押さえ付けをローラやコテ等で行う場合と比較し、巻き付けという非常に簡易な方法で行うことができる。このような簡易な押さえ付け方法は、金属管柱10の下端部付近に繊維強化プラスチックシート30を巻き付ける必要のある金属管柱10の補強方法において非常に有用であることは言うまでもない。
【0042】
以上、本発明の金属管柱の補強方法及び補強構造について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0043】
例えば、上記実施形態において、接着工程では繊維強化プラスチックシート30を金属管柱に巻き付けるとした。しかし、繊維強化プラスチックシート30を構成する樹脂を含ませた棒状の繊維31の1本又は複数本を、除去部13を跨ぐように金属管柱10の表面に配置し、液状の樹脂40を介して棒状の繊維31を金属管柱10に接着し、金属管柱10に接着された棒状の繊維31の表面に液状の樹脂41を塗布してもよい。
また、上記実施形態において、除去工程では、腐食部11の除去が行われて有底凹部が除去部13として形成され、第1塗布工程では、有底凹部つまり除去により新たに表面に露出した露出部とその周辺部とに液状の樹脂40が塗布されるとした。しかし、腐食部11が金属管柱10の管厚み方向の深くまで達しており、腐食部11の除去により金属管柱10の管内部に達する貫通孔が形成される場合には、貫通孔が除去部13として形成されるため、第1塗布工程では、除去部13の周辺部にのみ液状の樹脂40が塗布されてもよい。
また、上記実施形態において、1つの繊維強化プラスチックシート30を金属管柱10の周方向に巻き付けるとした。しかし、繊維強化プラスチックシート30を複数のシートに分割し、分割したシートを金属管柱10の周方向に並べて配置し金属管柱10に接着して施工性を向上させてもよい。
また、上記実施形態において、繊維強化プラスチックシート30を一層だけ金属管柱10に配置し接着するとした。しかし、金属管柱10に接着された繊維強化プラスチックシート30の上にさらに繊維強化プラスチックシート30を積層させて配置し、金属管柱10に接着された繊維強化プラスチックシート30に接着させ、補強強度を向上させてもよい。